説明

非接触ICタグ、非接触ICタグを備えた部材のパッケージ及び非接触ICタグを備えた部材を用いる装置

【課題】複数の周波数帯域における通信に対応する非接触ICタグを用いる際に不正アクセスを防止する。
【解決手段】複数の周波数帯域にそれぞれ対応する複数のアンテナ10a,10b,10cを備えた非接触ICタグ100であって、複数のアンテナ10a,10b,10cのうち少なくとも1つに粘着シールを貼付し、粘着シールを剥がすことによって粘着シールが貼付されたアンテナを使用不可能とする。これによって上記課題を解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の周波数に対応するために複数のアンテナを備えた非接触ICタグ、その非接触ICタグを備えた部材のパッケージ及びその非接触ICタグを備えた部材を用いる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物体の識別等に微小な非接触ICタグが用いられるようになっている。非接触ICタグの形状は、ラベル型、カード型、コイン型、スティック型などがあって用途に応じて選択することができる。非接触ICタグは数mm〜数cm程度の大きさで、電波や電磁波によってICタグ用のリーダライタ装置(読取・書込装置)と通信が可能とされる。
【0003】
非接触ICタグ及びリーダライタ装置には、誘導成分を有するアンテナと容量成分を有するコンデンサとから構成される共振回路がそれぞれ設けられる。非接触ICタグに情報を記憶させ、又は、非接触ICタグに記憶された情報を読み出す際には、リーダライタ装置の共振回路のアンテナを非接触ICタグの共振回路のアンテナにアンテナ同士が電磁的に結合される程度に近づけ、非接触電力伝送技術を適用してリーダライタ装置側から電波によってICタグへ電力を供給しつつ、情報を伝達して書き込み又は読み出しを行う。これによって、非接触ICタグを電池を内蔵しないで半永久的に利用可能とすることができる。
【0004】
非接触ICタグの使用周波数は135kHz未満、13.56MHz、2.45GHz及びUHF帯に大きく4つに分けられる。一般的に、周波数が大きくなるほど通信可能な距離も長くなる性質があり、13.56MHzの周波数を用いると最大70〜80cm、2.45GHzの周波数を用いると最大数mの通信距離を得ることができる。また、周波数帯域によって周辺の水分や金属の影響を受け易い等の特性があるので、用途に応じて最適な周波数帯域の非接触ICタグを選定する必要がある。
【0005】
そこで、それぞれの周波数帯域に合わせて複数のアンテナを備えている非接触ICタグが用いられるようになっている(特許文献1)。例えば、物流管理では離れた場所から複数個の非接触ICタグへアクセスして情報を一括して読み出したり、出荷時に出荷先に合わせた情報を非接触ICタグへ一括して書き込んだりするので、比較的長距離の通信が可能な周波数帯が必要とされる。一方、複写機等の画像形成装置のように機密性の高い情報を扱う装置内に非接触ICタグを装着した場合、セキュリティ性を高めるために周辺に電波が漏れないように短距離でのみ通信が可能な周波数帯を用いる必要がある。
【0006】
【特許文献1】特表2003−533143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来技術のように、複数のアンテナを備えたマルチ周波数対応の非接触ICタグを用いた場合、複写機等の装置内に装着した状態において長距離通信用のアンテナを不正に利用して外部から不正にメモリの内容が読み取られたり、書き換えられたりする可能性があり、セキュリティ上の問題がある。また、外部から不正にメモリの内容を変更されると装置の制御が異常になる可能性がある。
【0008】
本発明は、上記従来技術の問題を鑑み、非接触ICタグとの通信を抑制し、不正なアクセスを防ぐことを可能する非接触ICタグ及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、複数の周波数帯域にそれぞれ対応する複数のアンテナを備えた非接触ICタグであって、前記複数のアンテナのうち少なくとも1つに粘着シールが貼付されており、前記粘着シールを剥がすことによって、前記粘着シールが貼付されたアンテナを使用不可能とすることができることを特徴とする。
【0010】
前記粘着シートを剥がすことによって、前記複数のアンテナのうち少なくとも1つを使用不可能とする。これによって、不正アクセスに用いられる可能性が高いアンテナを使用することができないようにすることができる。
【0011】
ここで、前記複数のアンテナには、前記粘着シールが貼付されたアンテナより低い周波数帯域に対応する前記粘着シールが貼付されていないアンテナが含まれる。すなわち、前記複数のアンテナのうち、前記粘着シールが貼付されたアンテナは前記粘着シールが貼付されていないアンテナよりも長距離の通信に用いることができるアンテナとする。これによって、一旦、前記粘着シールを剥がした後は長距離通信を不可能とし、前記粘着シールが貼付されていないアンテナを用いた短距離通信のみを可能にすることができる。
【0012】
また、前記粘着シールは、粘着部と非粘着部とを備えることが好適である。前記粘着シートに非粘着部を設けることによってユーザが容易に前記粘着シートを剥がすことができる。このとき、非粘着部に粘着シートを剥がすことを促す表示をすることも好適である。
【0013】
また、本発明は、複数の周波数帯域にそれぞれ対応する複数のアンテナを備えた非接触ICタグであって、前記複数のアンテナのうち少なくとも1つには外部から電気的に接触することができるコンタクトパッドが設けられていることを特徴とする。
【0014】
前記コンタクトパッドから電流を流すことによって、前記複数のアンテナのうち少なくとも1つを使用不可能とする。これによって、不正アクセスに用いられる可能性が高いアンテナを使用することができないようにすることができる。
【0015】
ここで、前記複数のアンテナには、前記コンタクトパッドが設けられたアンテナより低い周波数帯域に対応する前記コンタクトパッドが設けられていないアンテナが含まれる。すなわち、前記複数のアンテナのうち、前記コンタクトパッドが設けられたアンテナは前記コンタクトパッドが設けられていないアンテナよりも長距離の通信に用いることができるアンテナとする。これによって、一旦、前記アンテナを溶断した後は長距離通信を不可能とし、溶断されていないアンテナを用いた短距離通信のみを可能にすることができる。
【0016】
また、前記コンタクトパッドが設けられたアンテナは、他の導電部分よりも細い形状を有する溶断部を備えることが好適である。このように、他の導電部分よりも細い溶断部を備えることによって、前記コンタクトパッドから電流を流した場合にアンテナを容易に溶断させることができる。
【0017】
また、本発明は、前記粘着シールを備える非接触ICタグを備えた部材、を装着可能な装着部を備える装置であって、前記装着部は、前記粘着シールが剥がされていない場合には前記部材が装着できない構造を有することを特徴とする。
【0018】
このような構成とすることによって、ユーザが前記粘着シールを剥がし忘れることによって、不正アクセスに使用される可能性が高いアンテナが使用できる状態のまま前記部材が使用されることを防ぐことができる。
【0019】
例えば、前記粘着シールを備える非接触ICタグを備えるトナーカートリッジを装着可能な画像形成装置(プリンタ、複写機、複合機等)であれば、前記トナーカートリッジを装着するトナーカートリッジ装着部を備え、前記粘着シールを剥がさない限り前記トナーカートリッジ装着部には前記トナーカートリッジを装着できない構成とする。勿論、前記粘着シールを備える非接触ICタグを備える部材及びそれを用いる装置はトナーカートリッジと画像形成装置に限定されるものではなく、非接触ICタグを用いてデータを管理しつつ制御を行う部材及びそれを用いる装置であれば本発明の適用対象となる。
【0020】
また、前記粘着シールを備える非接触ICタグを備えた部材、を装着可能な装着部を備える装置であって、前記装着部は、前記部材が装着された場合、前記粘着シールが自動的に剥がされる構造を有することを特徴とする。
【0021】
このような構成とすることによって、ユーザが前記粘着シールを剥がし忘れることによって、不正アクセスに使用される可能性が高いアンテナが使用できる状態のまま前記部材が使用されることを防ぐことができる。
【0022】
例えば、前記粘着シールを備える非接触ICタグを備えるトナーカートリッジを装着可能な画像形成装置(プリンタ、複写機、複合機等)であれば、前記トナーカートリッジを装着するトナーカートリッジ装着部を備え、前記トナーカートリッジ装着部に前記トナーカートリッジを装着することによって自動的に前記粘着シールが剥がされる構成とする。勿論、前記粘着シールを備える非接触ICタグを備える部材及びそれを用いる装置はトナーカートリッジと画像形成装置に限定されるものではなく、非接触ICタグを用いてデータを管理しつつ制御を行う部材及びそれを用いる装置であれば本発明の適用対象となる。
【0023】
前記粘着シールが貼付された非接触ICタグを備えた部材と、前記部材を収納する梱包部材と、を備える部材パッケージであって、前記粘着シールが前記梱包部材の一部に固着されており、前記梱包部材から前記部材を取り出す際に前記粘着シールが剥がれることによって前記粘着シールが貼付されたアンテナを使用不可能とすることができることを特徴とする。
【0024】
また、本発明は、前記コンタクトパッドを設けたアンテナを含む非接触ICタグを備えた部材、を装着可能な装着部を備える装置であって、前記装着部は、前記コンタクトパッドを介して前記コンタクトパッドが設けられたアンテナに電流を流す電流供給手段を備えることを特徴とする。
【0025】
これによって、前記電流供給手段から前記コンタクトパッドが設けられたアンテナに電流を流すことによってアンテナを溶断させ、不正アクセスに使用される可能性が高いアンテナを使用できないようにすることができる。
【0026】
ここで、前記装着部は、前記電流供給手段からの電流の供給を制御するための制御用スイッチ素子を備えることが好適である。
【0027】
例えば、前記装着部に前記部材が装着された状態において、前記非接触ICタグに備わる前記コンタクトパッドが設けられていないアンテナを用いて通信が行われた場合に前記制御用スイッチ素子を導通させることによって前記電流供給手段から前記コンタクトパッドが設けられたアンテナに電流を供給する。これによって、単に前記部材が前記装着部に装着されただけでは長距離通信用のアンテナを使用不可能とせず、取り外したときに再度長距離通信を行うことを可能とすると共に、前記部材が前記装着部に装着された状態で一旦通信が行われると長距離通信用のアンテナを使用不可能として不正アクセスを防ぐことができる。
【0028】
また、例えば、前記装着部に前記部材が装着された状態において、前記非接触ICタグに備わる前記コンタクトパッドが設けられているアンテナを用いて通信が行われた場合、不正アクセスが行われたものとして前記制御用スイッチ素子を導通させることによって前記電流供給手段から前記コンタクトパッドが設けられたアンテナに電流を供給することを特徴とする。すなわち、不正アクセスが行われたと考えられる所定の条件を満たした場合、不正アクセスに用いられる可能性が高い長距離通信用のアンテナを溶断させて不正アクセスを抑制する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、複数のアンテナを備えたマルチ周波数対応の非接触ICタグとの通信を抑制し、不正なアクセスを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
<第1の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態における非接触ICタグ100は、図1の内部平面図に示すように、複数のアンテナ10a,10b,10c、半導体チップ12及び基板14を含んで構成される。アンテナ10a〜10c及び半導体チップ12はポリイミド、エポキシ樹脂等の誘電体からなる基板14の表面上に搭載されている。基板14の厚さは数百μm〜数mmのものが用いられる。
【0031】
アンテナ10a,10b,10cは、非接触ICタグ100の共振回路の誘導成分を担う構成要素である。本実施の形態では、アンテナ10a,10b,10cは、それぞれ13.56MHz、2.45GHz及びUHF帯の周波数帯域における通信を行うために設けられている。アンテナ10a〜10cは、半導体チップ12内に形成されている容量成分を有するコンデンサと接続されて非接触ICタグ100の共振回路を構成する。
【0032】
アンテナ10a,10b,10cは、基板14上に形成された銅等の薄い金属層からなる。金属層の厚さは数十μm〜数百μmとされる。例えば、基板14の表面を覆う金属層をリソグラフィ技術等を用いて所望の形状にエッチングすることによって形成することができる。なお、金属層が重なり合う部分は絶縁層を挟んだ多層配線とすることが好ましい。
【0033】
アンテナ10aは、細い金属層20をコイル状に形成したものである。アンテナ10aは、図1において基板14の右側の中央部付近に配置され、配線部22によって半導体チップ12に接続される。
【0034】
アンテナ10bは、基板の左端に配置され、上下方向に延伸するように上下対称の形状に形成される。アンテナ10bは、幅広の端部24を備え、端部24よりも幅の狭い接続部28によって両方の端部24と中央部26とを接続した構成を有する。
【0035】
アンテナ10cは、アンテナ10aとアンテナ10bの間を通って上下対象の形状に形成される。アンテナ10cは、幅広の端部30を備える。端部30は、アンテナ10aの上下に沿って延伸されるように形成される。また、端部30よりも幅の狭い接続部32によって両方の端部30と中央部26とを接続した構成を有する。
【0036】
ここで、アンテナ10b,10cを繋ぐ中央部26は、半導体チップ12を挟んでアンテナ10aの反対側に配置される。中央部26は、配線部34によって半導体チップ12に接続される。
【0037】
半導体チップ12は、半導体基板上に制御回路、内蔵メモリ回路及びコンデンサを含む回路を形成した半導体素子を内蔵する。半導体チップ12は、配線部22,34によってアンテナ10a〜10cと接続される。半導体チップ12は、外部のリーダライタ装置(図示しない)と電磁気的に通信を行う際に内蔵メモリ回路への情報の書き込み及び内蔵メモリ回路からの情報の読み出しを行う。具体的には、リーダライタ装置の共振回路のアンテナを、リーダライタ装置の使用周波数に合ったアンテナ10a〜10cのいずれかにアンテナ同士が電磁的に結合される程度に近づけ、非接触電力伝送技術を適用してリーダライタ装置側から電波によって非接触ICタグ100へ電力を供給しつつ、情報を伝達して書き込み又は読み出しを行う。
【0038】
本実施の形態の非接触ICタグ100は、管理対象となる物品に取り付けられて使用される。例えば、図2に示すように、画像形成装置に装着されて用いられるトナーカートリッジ200に取り付けられ、トナーカートリッジ200の物流管理や画像形成時における制御に利用される。なお、図2ではトナーカートリッジ200と非接触ICタグ100の大きさの比は実際とは異なる。
【0039】
上記のように、物流管理に非接触ICタグ100を用いる場合、ダンボール箱等に梱包された複数のトナーカートリッジ200に取り付けられた非接触ICタグ100に対して離れた場所からアクセスして情報を一括して読み出したり、出荷時に出荷先に合わせた情報を非接触ICタグへ一括して書き込んだりする必要がある。そこで、アンテナ10b,10cを用いて、比較的長距離の通信が可能な周波数帯によってアクセスを行う。一方、画像形成装置にトナーカートリッジ200を装着して用いる場合、機密性の高い情報の漏洩や不正なアクセスを防ぐためにアンテナ10cのみを使用可能として、短い距離でのみ通信が可能な周波数帯のみにおいてアクセスを可能とすることが好ましい。
【0040】
そこで、本実施の形態では、図3に示すように、非接触ICタグ100のアンテナ10b,10cの少なくとも一部、好ましくは中央部26又は配線部34を含む部分、を覆うように粘着シール40を貼り付ける。このとき、粘着シール40を剥がすことによって、図4に示すように、アンテナ10b,10cが半導体チップ12から切断されるように粘着シール40の粘着力を調整する。
【0041】
これによって、物流管理等の長距離通信が必要とされる際には粘着シール40を貼り付けた状態で2.45GHz及びUHF帯の電磁波を用いて非接触ICタグ100にアクセスを可能とし、画像形成装置にトナーカートリッジ200を装着する際に粘着シール40を剥がしてアンテナ10b,10cを使用不可能とすることによって、画像形成装置に装着後は、13.56MHz帯を用いて短距離でのみ非接触ICタグ100にアクセスを可能とすることができる。
【0042】
このとき、粘着シール40には粘着部40aと非粘着部40bとを設けておくことが好ましい。粘着部40aが非接触ICタグ100のアンテナ10b,10cの少なくとも一部、好ましくは中央部26又は配線部34を含む部分、を覆うように粘着シール40を非接触ICタグ100に貼り付ける。粘着シール40を剥がす際には、ユーザは非粘着部40bを摘んで引っ張ることによって粘着シール40を剥がし、非接触ICタグ100のアンテナ10b,10cを容易に使用できないようにすることができる。
【0043】
なお、トナーカートリッジ200の梱包容器に非粘着部40bの一部を固着させておくことも好適である。トナーカートリッジ200を装着する際に、トナーカートリッジ200を梱包容器から取り出すと粘着シール40が非接触ICタグ100から自然に剥がれ、同時にアンテナ10b,10cも非接触ICタグ100から剥がれるようにすることができる。これによって、長距離通信用のアンテナ10b,10cを剥がし忘れることを防ぐことができる。
【0044】
また、画像形成装置のカートリッジ装着部は、非接触ICタグ100の粘着シール40を剥がさなければトナーカートリッジ200を装着できない構造とすることが好適である。例えば、トナーカートリッジ200に溝を設け、カートリッジ装着部にはその溝に嵌め合う突起を設け、トナーカートリッジ200の溝を塞ぐように粘着シール40を貼付しておくことによって、粘着シート40を剥がさない限りトナーカートリッジ200をカートリッジ装着部に装着できないようにすることができる。これによって、粘着シール40を剥がし忘れた状態でトナーカートリッジ200を装着しようとした場合にはトナーカートリッジ200が装着できないので粘着シール40の剥がし忘れを防ぐことができる。
【0045】
また、画像形成装置のトナーカートリッジ装着部は、トナー供給口202のシャッターに貼られた粘着シールを剥がさずにトナーカートリッジ200をトナーカートリッジ装着部に装着すると、粘着シールが自動的に剥がされる構造とすることも好適である。これによって、ユーザが粘着シール40を剥がすのを忘れてしまった場合でも、トナーカートリッジ200をトナーカートリッジ装着部に装着することによって長距離通信用のアンテナ10b,10cが自動的に剥がされるようにすることができる。
【0046】
また、トナーカートリッジ200に非接触ICタグ100を取り付ける場合、図2に示すように、トナーカートリッジ200に設けられたトナー供給口202の近傍に非接触ICタグ100を取り付けることが好ましい。通常、トナーカートリッジ200のトナー供給口202には機械的なシャッターが設けられており、画像形成装置のトナーカートリッジ装着部に装着前には粘着シールによってシャッターが開閉できないようにされている。そこで、非接触ICタグ100をトナー供給口202の近傍に配置することによって、非接触ICタグ100の粘着シール40をトナー供給口202に設けられた機械的なシャッターを止めている粘着シールと共通にする。これによって、トナーカートリッジ200を使用する際にトナー供給口202に貼付された粘着シート40を剥がすことによって同時に非接触ICタグ100の不要なアンテナを取り除くことができる。
【0047】
<第2の実施の形態>
第1の実施の形態では、非接触ICタグを画像形成装置のような短距離での通信機能のみを用いる装置内に装着する前にユーザが長距離での通信に用いられるアンテナを剥がし取ってから装着する構成であった。このような構成では、ユーザがアンテナを剥がし忘れることによって、装着対象となる装置に不具合が発生したり、剥がし忘れたアンテナを利用して装置外部から非接触ICタグへ不正にアクセスされたりする問題を生ずる可能性が残されている。第2の実施の形態では、粘着シールを用いることなく、非接触ICタグを装置に装着したときに不要なアンテナを使用不可能とする。
【0048】
第2の実施の形態における非接触ICタグ102には、図5に示すように、アンテナ10bの両方の端部24にコンタクトパッド50が設けられている。また、アンテナ10b,10cを構成する中央部26には、アンテナ10b,10cのうち最も幅が細い溶断部26aが設けられる。非接触ICタグ102は、トナーカートリッジ200の所定の位置に取り付けられる。
【0049】
一方、画像形成装置のトナーカートリッジ装着部には非接触ICタグ102の溶断部26aを溶断するための電流供給手段104が設けられる。電流供給手段104は、図6の概念図に示すように、トナーカートリッジ装着部に非接触ICタグ102を備えたトナーカートリッジ200を装着した際に、非接触ICタグ102に設けられたコンタクトパッド50に板バネ電極52が接触するように設けられている。また、電流供給手段には、板バネ電極52に接続されている電源54が設けられている。
【0050】
このような構成により、トナーカートリッジ装着部に備えたトナーカートリッジ200を装着すると、アンテナ10bの一方の端部24に設けられたコンタクトパッド50から、接続部28及び中央部26を介して、他方の端部24に設けられたコンタクトパッド50へと電流が流れる。ここで、中央部26に設けられた溶断部26aに流れる電流によって発生するジュール熱によって溶断部26aが溶断されるように電源54の出力を設定する。これによって、溶断部26aが溶断されて、アンテナ10b,10cが半導体チップ12から切り離される。
【0051】
したがって、画像形成装置にトナーカートリッジ200を装着することによって、物流管理等において必要とされる長距離通信用のアンテナ10b,10cを確実に使用不可能とし、アンテナ10aを用いた13.56MHz帯による短距離通信のみを可能とすることができる。
【0052】
また、図7の概念図に示すように、電流供給手段に制御用スイッチ素子56を設けることによって、トナーカートリッジ200を装着した際に直ちに非接触ICタグ102へ電流を流すのではなく、制御用スイッチ素子56に制御信号を入力することによって必要に応じて非接触ICタグ102へ電流を流す構成とすることもできる。
【0053】
画像形成装置の主制御部(図示しない)は、例えば、トナーカートリッジ200の非接触ICタグ102に対して通常のアクセスとは異なる手順でアクセスが行われた場合、不正なアクセスが行われたものとして制御用スイッチ素子56を導通状態にして長距離通信用のアンテナ10b,10cを溶断させる。例えば、トナーカートリッジ200が装着された状態において、長距離通信用のアンテナ10b,10cを用いて通信が行われた場合には制御用スイッチ素子56を導通状態にして長距離通信用のアンテナ10b,10cを溶断させる。
【0054】
このように、不正アクセスが検出されたときのみ長距離通信用のアンテナを溶断させることによって、装着時に非接触ICタグ102への不正アクセスがなかった場合にはトナーカートリッジ200を取り外した後に再び長距離通信用のアンテナを用いて非接触ICタグ102へのアクセスを可能とすることができる。
【0055】
また、画像形成装置の主制御部は、トナーカートリッジ200が装着された後に非接触ICタグ102の短距離通信用のアンテナ10aを用いたアクセスが初めて実行された際に制御用スイッチ素子56を導通状態して長距離通信用のアンテナ10b,10cを溶断させてもよい。例えば、トナーカートリッジ200を試しに画像形成装置に装着した場合等、画像形成処理を行う前にトナーカートリッジ200を取り外せば長距離通信用のアンテナは溶断されることがなく、再び長距離通信用のアンテナを用いて非接触ICタグ102へアクセスすることができる。
【0056】
また、非接触ICタグ100,102には、短距離通信用のアンテナ10aに対して比較的出力の大きい長距離用のRF共振回路と出力の小さい短距離用のRF共振回路を備えることも好適である。このように、短距離通信用のアンテナ10aに対して複数の共振回路を設け、画像形成装置からのアクセス状況に応じて複数の共振回路のいずれか1つを選択して用いることによって、共振周波数のずれなどによるアクセスの劣化を避けることができる。
【0057】
なお、本実施の形態では非接触ICタグを備えるトナーカートリッジ及びそれを用いる画像形成装置を例に説明を行ったがこれに限定されるものではなく、非接触ICタグを用いてデータを管理しつつ制御を行う部材及びそれを用いる装置において不正アクセスを防ぐことが必要である場合には本発明の技術的思想を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】第1の実施の形態における非接触ICタグの構成を示す図である。
【図2】第1の実施の形態における非接触ICタグを備えた部材を示す図である。
【図3】第1の実施の形態における粘着シートを備えた非接触ICタグを示す図である。
【図4】第1の実施の形態における粘着シートを剥がした後の非接触ICタグを示す図である。
【図5】第2の実施の形態における非接触ICタグの構成を示す図である。
【図6】第2の実施の形態における非接触ICタグへ電流を供給する電流供給手段を示す図である。
【図7】第2の実施の形態における非接触ICタグへ電流を供給する電流供給手段を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
10a,10b,10c アンテナ、12 半導体チップ、14 基板、20 金属層、22 配線部、24 端部、26 中央部、26a 溶断部、28 接続部、30 端部、32 接続部、34 配線部、40 粘着シール、40a 粘着部、40b 非粘着部、50 コンタクトパッド、52 板バネ電極、54 電源、100,102 非接触ICタグ、200 トナーカートリッジ、202 トナー供給口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の周波数帯域にそれぞれ対応する複数のアンテナを備えた非接触ICタグであって、
前記複数のアンテナのうち少なくとも1つに粘着シールが貼付されており、
前記粘着シールを剥がすことによって、前記粘着シールが貼付されたアンテナを使用不可能とすることができることを特徴とする非接触ICタグ。
【請求項2】
請求項1に記載の非接触ICタグであって、
前記複数のアンテナには、前記粘着シールが貼付されたアンテナより低い周波数帯域に対応する前記粘着シールが貼付されていないアンテナが含まれることを特徴とする非接触ICタグ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の非接触ICタグであって、
前記粘着シールは、粘着部と非粘着部とを備えることを特徴とする非接触ICタグ。
【請求項4】
複数の周波数帯域にそれぞれ対応する複数のアンテナを備えた非接触ICタグであって、
前記複数のアンテナのうち少なくとも1つには、外部から電気的に接触することができるコンタクトパッドが設けられていることを特徴とする非接触ICタグ。
【請求項5】
請求項3に記載の非接触ICタグであって、
前記複数のアンテナには、前記コンタクトパッドが設けられたアンテナより低い周波数帯域に対応する前記コンタクトパッドが設けられていないアンテナが含まれることを特徴とする非接触ICタグ。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の非接触ICタグであって、
前記コンタクトパッドが設けられたアンテナは、他の導電部分よりも細い形状を有する溶断部を備えることを特徴とする非接触ICタグ。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の非接触ICタグを備えた部材、を装着可能な装着部を備える装置であって、
前記装着部は、前記粘着シールが剥がされていない場合には前記部材が装着できない構造を有することを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の非接触ICタグを備えた部材、を装着可能な装着部を備える装置であって、
前記装着部は、前記部材が装着された場合、前記粘着シールが自動的に剥がされる構造を有することを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の非接触ICタグを備えた部材と、
前記部材を収納する梱包部材と、を備える部材パッケージであって、
前記粘着シールが前記梱包部材の一部に固着されており、前記梱包部材から前記部材を取り出す際に前記粘着シールが剥がれることによって前記粘着シールが貼付されたアンテナを使用不可能とすることができることを特徴とする部材パッケージ。
【請求項10】
請求項4〜6のいずれか1つに記載の非接触ICタグを備えた部材、を装着可能な装着部を備える装置であって、
前記装着部は、前記コンタクトパッドを介して前記コンタクトパッドが設けられたアンテナに電流を流す電流供給手段を備えることを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項10に記載の装置であって、
前記装着部は、前記電流供給手段からの電流の供給を制御するための制御用スイッチ素子を備えることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項11に記載の装置であって、
前記装着部に前記部材が装着された状態において、前記非接触ICタグに備わる前記コンタクトパッドが設けられていないアンテナを用いて通信が行われた場合に前記制御用スイッチ素子を導通させることによって前記電流供給手段から前記コンタクトパッドが設けられたアンテナに電流を供給することを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項11に記載の装置であって、
前記装着部に前記部材が装着された状態において、前記非接触ICタグに備わる前記コンタクトパッドが設けられているアンテナを用いて通信が行われた場合、不正アクセスが行われたものとして前記制御用スイッチ素子を導通させることによって前記電流供給手段から前記コンタクトパッドが設けられたアンテナに電流を供給することを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−86863(P2007−86863A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−271796(P2005−271796)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】