説明

非晶質基材上に結晶配向した導電性酸化物層およびその形成方法

【課題】非晶質基材上に結晶性で配向性の良いLaNiO、LaNiO、SrRuOなどの導電性酸化物層を設けた基体を得ることを目的とする。
【解決手段】非晶質基材上にLa−Ni−O系材料の第1層を第一の温度で製膜した後、La−Ni−O系材料の第1層の上に前記La−Ni−O系材料の第2層を前記第一の温度より高い第二の温度条件で製膜し、La−Ni−O系材料の第2層がLa−Ni−O系材料の第1層より結晶配向性が高いことを特徴とする非晶質基材上に結晶質La−Ni−O系材料層を形成する方法。La−Ni−O系材料の上にSrRuOなどの導電性酸化物層を設けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非晶質基材上に結晶配向した導電性酸化物層およびその形成方法に関し、とりわけ、非晶質基材上にLaNiO、LaNiOなどのLa−Ni−O系材料の結晶配向層を形成に関する。及び得られる非晶質基材上に結晶配向したSrRuO3導電性酸化物層に関する。
【背景技術】
【0002】
非晶質基材の上に導電性酸化物結晶層を形成する方法としては下記の如きものが検討され報告されている。
【0003】
・アモルファス基体上にRuO等の導電体層をスパッタリング法、CVD法、ゾルーゲル法、電子ビーム蒸着法、有機金属分解法およびレーザーアブレーション法により付ける方法(特許文献1)
・ガラス基体上にSrRuO3、LaNi、LaNi10等の導体膜をゾルーゲル法にてコーティングした例(特許文献2)
・非晶体上にペロブスカイト導電層及びガラス基板上にLaNiOをゾル−ゲル法にて製膜した例(特許文献3)
・基体を450℃以下に保って付けた非晶質または熱力学的に準安定相である酸化物膜を熱処理して熱力学的に安定相に転換させる方法(特許文献4)
・非晶質基体上にNaCl型または蛍石型のバッファー層を用いてSrRuO等の導電性膜を(100)配向させる例(特許文献5)
・アモルファス基板の上に製膜したLaNiO膜を500〜800℃で酸素を含む雰囲気中で加熱して(100)配向する(特許文献6)
・Si単結晶上のアモルファス層上に(100)配向したSrRuO等を配向制御層として用いる方法(特許文献7)
・ガラス等の基板上の下部電極とペロブスカイト化合物で構成される誘電体薄膜の間にバッファー層として(100)配向したSrRuO等の薄膜を設ける例(特許文献8)
・ガラス等の基板上に下部電極としてLaNiO、SrRuO膜を用い、その上に圧電体膜としてペロブスカイト型酸化物からなる膜を製膜する例(特許文献9、10)
しかしながら、いずれも満足な結晶配向性を持った膜が得られているとは言い難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06-068529
【特許文献2】特開平08-045781
【特許文献3】特許3127245 (特開2001-073117)
【特許文献4】特開2001-139313
【特許文献5】特開2004-002150
【特許文献6】特開2004-095635
【特許文献7】特開2006-245141
【特許文献8】特開2007-019302
【特許文献9】特開2007-281238
【特許文献10】特開2008-004782
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような従来技術の現状に鑑み、非晶質面上に結晶性で配向性の良いLaNiO、LaNiO、SrRuOなどの導電性酸化物層を設けた基体を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討し、スパッタリング中での基板温度、ガス雰囲気・圧力及びスパッタリングターゲット材の組成などに注目し、プロセスを工夫する過程で、良好な結晶配向性を示す製膜条件を見つけた。具体的には、非晶質基材上にLaNiO、LaNiOなどのLa−Ni−O系材料層を形成するにあたり、第一段階より第二段階で製膜温度を高くして、第一段階より第二段階で形成するLa−Ni−O系材料層の結晶配向性を高くすることで、非晶質基材上に良好な結晶配向性を示すLaNiO、LaNiOなどのLa−Ni−O系材料層を形成することが可能であることを見出した。さらに結晶配向したLa−Ni−O系材料をバッファー層として用いることにより品質の良いSrRuOなどの導電性酸化物層を簡単に形成することができる。
【0007】
こうして、本発明は下記を提供する。
【0008】
(1)非晶質基材上にLa−Ni−O系材料の第一層を第一の温度条件で製膜した後、La−Ni−O系材料の第一層の上に前記La−Ni−O系材料の第二層を前記第一の温度より高い温度で製膜し、La−Ni−O系材料の第二層がLa−Ni−O系材料の第一層より結晶配向性が高いことを特徴とする非晶質基材上に結晶質La−Ni−O系材料層を形成する方法。
【0009】
(2)La−Ni−O系材料の第一層を550℃以下の温度で形成する、上記(1)に記載の方法。
【0010】
(3)La−Ni−O系材料がLaNiO又はLaNiOである、上記(1)又は(2)に記載の方法。
【0011】
(4)非晶質基材がシリコン基材表面に形成した非晶質酸化ケイ素膜、石英ガラス、ほう硅酸ガラス又はアルミノ硅酸ガラスである上記(1)〜(3)に記載の方法。
【0012】
(5)LaNiO又はLaNiO層の(200)のX線回折ピークの半価幅が5°以下である、上記(3)又は(4)に記載の方法。
【0013】
(6)上記(1)〜(5)に記載の方法で形成した結晶質La−Ni−O系材料層の上に、導電性酸化物結晶配向層を形成することを特徴とする導電性酸化物結晶配向層の形成方法。
【0014】
(7)導電性酸化物結晶配向層がSrRuO層である、上記(6)に記載の方法。
【0015】
(8)上記(1)〜(7)に記載の方法で得られる結晶配向したLaNiO又はLaNiO構造体。
【0016】
(9)非晶質基材上に結晶配向したLaNiO層が形成され、結晶配向したLaNiO層の(200)のX線回折ピークの半価幅が5°以下であることを特徴とする結晶配向したLaNiO構造体。
【0017】
(10)非晶質基材上に結晶配向したLaNiO層が形成され、その上に結晶配向したSrRuO層が形成されていることを特徴とする結晶配向したSrRuO層構造体。
【0018】
(11)結晶配向したSrRuO層の(200)のX線回折ピークの半価幅が5°以下である、上記(9)に記載の結晶配向したSrRuO層構造体。
【0019】
(12)非晶質基材上に結晶配向したLaNiO層が形成され、結晶配向したLaNiO層の(200)のX線回折ピークの半価幅が5°以下であることを特徴とする結晶配向したLaNiO構造体。
【0020】
(13)非晶質基材上に結晶配向したLaNiO層が形成され、その上に結晶配向したSrRuO層が形成されていることを特徴とする結晶配向SrRuO層構造体。
【0021】
(14)結晶配向したSrRuO層の(200)のX線回折ピークの半価幅が5°以下である上記(12)に記載の結晶配向したSrRuO層構造体。
【0022】
(15)非晶質基材がシリコン基材表面に形成した非晶質酸化ケイ素膜、シリカガラス、ほう硅酸ガラス又はアルミノ硅酸ガラスである、上記(8)〜(14)に記載の構造体。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、非晶質基材上にLaNiOまたはLaNiOなどのLa−Ni−O系材料の結晶配向層を得る製膜温度を第一段階より第二段階で高くして製膜することで、第一段階より結晶配向性が高いものを得ることが可能になる。また、非晶質基材上にLaNiOまたはLaNiOの良好な結晶配向層を得ることができる。また、このような結晶配向層の上にSrRuOを製膜することにより良質な結晶配向した層を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】一段製膜法と二段製膜法で得られたLaNiOのX線回折図と、LaNiOの(200)の半価幅を示す。
【図2】一段製膜法と二段製膜法で得られたLaNiOのX線回折図と、LaNiOの(200)の半価幅を示す。
【図3】二段製膜法で得られたLaNiOとその上に製膜したSrRuOのX線回折図と、LaNiO及びSrRuOの(200)の半価幅を示す。
【図4】SrRuO/LaNiO/石英ガラス基板製膜の温度プログラムと、X線回折図及び半価幅を示す。
【図5】SrRuO/LaNiO/石英ガラス製膜の別の温度プログラムと、X線回折図及び半価幅を示す。
【図6】最適化したSrRuO/LaNiO /石英ガラス製膜の温度プログラムと、X線回折図及び半価幅を示す。
【図7】三段製膜法によるLaNiOとその上に製膜したSrRuOのX線回折図と、LaNiO及びSrRuOの(200)の半価幅を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の第一の側面では、非晶質基材上にLaNiOまたはLaNiOなどのLa−Ni−O系材料の結晶配向層を得る製膜温度を二段階以上に変化させて製膜することを特徴とする。従来、非晶質基材上に形成されるLaNiOなどのLa−Ni−O系材料の層は、高い結晶配向性が得られないか低いものしか得られないという問題があった。しかしながら、本発明により、非晶質基材上に形成されるLa−Ni−O系材料の層を二段階以上に分けて形成し、第一段階より第二段階において製膜温度を高くして結晶配向性が第二段階においてより高くなる条件で製膜することで、従来より結晶配向性の高いLa−Ni−O系材料の層を形成できることを見出した。理論に拘束されることを意図しないが、非晶質基材上に直接には結晶配向性の高いLa−Ni−O系材料の層は良好に成長することができない。しかし、相対的に結晶配向性が高くないLa−Ni−O系材料の層は非晶質基材上でも形成することができ、この形成されるLa−Ni−O系材料の層は結晶配向した場合も、結晶配向しているか否か不明である場合もあるが、この一旦形成したLa−Ni−O系材料の結晶配向した層の上には、最初の非晶質基材上に形成する場合と比べて、結晶配向性がより高いLa−Ni−O系材料の層が成長可能になるので、二段階以上に温度を変えた結晶成長によって、非晶質基材上に従来よりも結晶配向性の高いLa−Ni−O系材料の層を成長させることが可能になったと考えられる。
【0026】
本発明の方法で使用できる非晶質基材は、特に限定されず、石英ガラス基材、シリコン基材の表面熱酸化膜、ほう硅酸系ガラス、アルミノ硅酸系ガラスなどのいずれでもよい。
【0027】
本発明の方法を適用できるLa−Ni−O系材料としては、LaNiO、LaNiO、LaNi、LaNi10などがある。これらは導電性酸化物として知られている材料である。La−Ni−O系材料単独で電極として使用できるが、SrRuOを形成する下地基材としても有用である。
【0028】
非晶質基材上にLa−Ni−O系材料の層を形成する方法は、スパッタ法、レーザーアブレーション法などのPVD法のほか、CVD法、ゾル−ゲル法などのいずれでもよい。以下では、主としてスパッタ法について述べるが、その他の方法であっても、本発明に従う二段階以上の結晶成長を行うことで、非晶質基材上に結晶配向性のより高いLa−Ni−O系材料の層及びSrRuO層を形成することが可能である。La−Ni−O系材料の層を形成する方法としてのスパッタ法、レーザーアブレーション法などのPVD法のほか、CVD法、ゾル−ゲル法などのプロセスは、本発明に従い二段階以上の温度制御を行う点を除いては、従来公知の方法でよい。
【0029】
次に、本発明において好ましく適用されるスパッタ法について述べる。
【0030】
ターゲットとしては、堆積すべきLaNiO、LaNiO、LaNi、LaNi10などのLa−Ni−O系材料の単体であっても、たとえば、LaとNiOなどからなる複合ターゲットであってもよい。形態も粉末、焼結体などのいずれであってもよいが、単相の高密度焼結体であることが望ましい。
【0031】
スパッタ製膜ガスとしては、アルゴン、ネオンなどの不活性ガスに酸素又は酸素を与える物質が雰囲気中に存在しないと、堆積する酸化物層中に酸素欠陥等の結晶欠陥が発生する恐れがあり、酸素分圧が過不足の時には期待する相を得ることが難しくなる。不活性ガスと酸素付与物質の混合比率は、特に限定しないが、酸素付与物質が不足しても多すぎてもスパッタリングターゲットと異なる相の膜ができたり、抵抗率が上昇し、製膜圧力が低すぎるとプラズマが立ち難くなったり、堆積速度が遅くなる恐れがある。また、製膜圧力が高すぎると堆積速度が遅くなり、さらに高くなると放電に異常をきたす恐れがある。
【0032】
スパッタの雰囲気圧力は、限定されず、スパッタ装置、堆積する材料や、雰囲気ガスの種類や流量、製膜温度その他の条件に依存するが、一般的には、1mTorr以上500mTorr以下がよく、より好ましくは3mTorr以上300mTorr以下が採用される。雰囲気圧力が低すぎると、結晶性の悪いものとなる恐れがある。雰囲気圧力が高すぎると堆積速度が遅くなり、また、スパッタ槽を必要以上に汚したりして実用的でなくなる。
【0033】
スパッタ雰囲気ガスの流量は、限定されず、スパッタ装置、堆積する材料や、雰囲気ガスの種類や圧力、製膜温度その他の条件に依存するが、一般的には、残留ガスからの影響を少なくする為に到達真空度を高くし、スパッタリングガス流量を可能な限り多くし、また、酸化物の製膜では、酸化物相の安定な基材温度とその温度に合った酸素分圧で製膜する。
【0034】
スパッタの際の製膜温度(基材温度)は、スパッタ装置、堆積する材料や、雰囲気ガスの種類や圧力、製膜温度、堆積速度その他の条件に依存するし、限定的ではない。一般的には、室温〜1000℃の範囲内である。しかしながら、本発明では、第一段階より第二段階の温度が高いことが必要である。しかし、製膜温度の変化は三段階以上であってもよく、その場合には、その中の少なくとも一つの段階からもう一つの段階で製膜温度が高くなっていればよく、その他の段階では製膜温度が高くなっても、低くなってもよい。
【0035】
たとえば、LaNiOの場合、第一段階は、結晶性にこだわらなければ一般的な200〜900℃の範囲内であることができるが、実現される結晶性の観点と第2段階より低い温度にする目的から200〜550℃の範囲内が好ましく、300〜500℃の範囲内がより好ましく、300〜400℃の範囲内がさらに好ましい。第二段階は、一般的には、200〜900℃の範囲内で、第一段階より高い温度が選択される。400〜900℃の範囲内でもよい。しかし、500〜800℃の範囲内が好ましく、550〜750℃の範囲内がより好ましい。第三段階以降でも、前の段階より高い温度にすることが好ましい。この好ましい態様における第一段階と第二段階との温度の差は、100℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましい。第三段階以降における温度の差は前の段階よりも5℃以上の温度が好ましい。
【0036】
LaNiOの場合には、第一段階は、一般的な200〜900℃の範囲内であることができるが、実現される結晶配向性の観点と第二段階より低い温度にする目的から200〜700℃の範囲内が好ましく、300〜550℃の範囲内がより好ましく、300〜500℃の範囲内がさらに好ましい。第二段階は、一般的には、200〜900℃の範囲内で、第一段階より高い温度が選択される。400〜900℃の範囲内でもよい。しかし、500〜800℃の範囲内が好ましく、550〜750℃の範囲内がより好ましい。第三段階以降でも、前の段階より高い温度にすることが好ましい。この好ましい態様における第一段階と第二段階との温度の差は、150℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましい。第3段階以降における温度の差は、前の段階よりも5℃以上の温度が好ましい。
【0037】
上記はスパッタ中の基材温度であるが、スパッタ後に膜のついた基材を熱処理することによっても結晶性を制御することができる。したがって、スパッタ後の基材熱処理の温度を上記の第一段階及び第二段階あるいは第三段階以降の温度にすることによっても、実質的に同様の効果を得ることができる。
【0038】
スパッタ膜の堆積速度は、限定的ではないが、工業的には高いことが望まれ、0.1nm/sec以上であることが好ましく、より望ましくは1nm/sec以上、さらに望ましくは10nm/sec以上である。
【0039】
そのほか、スパッタ装置の種類、製膜電力、基材とターゲットとの距離などは、適宜決定すればよい。
【0040】
本発明の第一の側面においては、非晶質基材上に第一段階の製膜条件によりLa−Ni−O系材料の層を形成してから、第二段階の製膜条件として第一段階で形成したLa−Ni−O系材料の層より結晶配向性が高い第二のLa−Ni−O系材料の層を形成するものである。この第二段階の製膜条件は、非晶質基材上に直接にLa−Ni−O系材料の層を形成する際に、第一段階で形成したLa−Ni−O系材料の層より結晶配向性が高いLa−Ni−O系材料の層を提供する条件である必要はない。第一段階で形成したLa−Ni−O系材料の層を下地として、第二のLa−Ni−O系材料の層を形成する場合に、第二のLa−Ni−O系材料の層が第一のLa−Ni−O系材料の層より結晶配向性が高ければよい。また、第一のLa−Ni−O系材料の層は、結晶配向していることが好ましいが、必ずしも必要ではない。第一のLa−Ni−O系材料の層が存在することで、第二のLa−Ni−O系材料の層が、第一のLa−Ni−O系材料の層と比べて結晶配向性が高いLa−Ni−O系材料の層を形成できればよい。
【0041】
第二のLa−Ni−O系材料の層を形成する製膜条件は、製膜温度が第一段階より第二段階で高いこと以外、スパッタ装置、堆積する材料や、雰囲気ガスの種類や圧力や流量など、第二のLa−Ni−O系材料の層が、第一のLa−Ni−O系材料の層と比べて結晶配向性が高いLa−Ni−O系材料の層を形成できればよい。
【0042】
前の段階と後の段階のスパッタ堆積の間は、同じスパッタ装置において真空を破ることなく、スパッタ製膜条件だけを変更して好ましく行うことができるが、前の段階のスパッタ堆積が終了した基材をスパッタ装置から真空を破って取り出して、別のスパッタ装置において次の段階のスパッタ堆積を行ってもよい。
【0043】
本発明の多段階形成方法によれば、非晶質基材上にもLa−Ni−O系材料の結晶層を形成することができ、その結晶性を一段階形成の場合よりも向上させることが可能である。たとえば、LaNiOの場合、(200)のX線回折ピークの半価幅を5°以下にすることができ、さらに4°以下も可能である。LaNiOについても同様であり、(200)のX線回折ピークの半価幅を5°以下にすることができ、さらに4°以下、3°以下も可能である。(100)配向したLaNiO及びLaNiOは容易に形成される。
【0044】
スパッタ法以外の方法でも同様に優れた結晶層が形成できることは明らかであり、詳しく述べないが、たとえば、ゾル−ゲル法でLaNiOなどのLa−Ni−O系材料を形成する場合、La(NO・6HOなどのLa源とNi(CHCOO)・4HOなどのNi源をエタノールなどの溶剤に添加したものを原料溶液として基材に塗布し、窒素−酸素混合雰囲気中で加熱して、非晶質基材上に結晶性のLa−Ni−O系材料を製膜できる。この場合も加熱温度が重要である。たとえば、650℃でLaNiOを形成することができる。この加熱温度を、たとえば、650℃から750℃の二段階にすることで、結晶性を向上させることが可能である。あるいは、パルス・レーザー・デポジッション(PLD)法の場合、たとえば、ターゲットとしてLaNiO焼結体を使用し、基材温度を550℃、製膜真空度を10−5Torrの酸素分圧をとして製膜可能であるので、同様に製膜温度を変えて本発明を実施することが可能である。
【0045】
本発明の第二の側面によれば、非晶質基材上にLaNiO及びLaNiOの結晶配向層を形成する方法及びそれによって得られる非晶質基材上に形成したLaNiO及びLaNiOの結晶層の構造体が提供される。従来、非晶質基材上に形成された結晶配向性の高いLaNiO及びLaNiO層は知られていないが、本発明によりこれが可能であることが見出された。特にLaNiO及びLaNiOの(200)のX線回折ピークの半価幅が5°以下にすることができ、さらに4°以下も可能である。
【0046】
スパッタ法で非晶質基材上にLaNiOの結晶層を形成することができることは、特に、LaNiOと比べて、製膜が容易であり、600℃以上での高温でのLaNiOの相安定性が高いので上層の結晶配向品質を向上できること(たとえば、SrRuOの半価幅を3°以下、さらに2°以下にできる)、また緻密なスパッタリングターゲットの製作が容易であり、製膜の安定性、高速製膜性、ターゲット長期寿命化、ターゲットの高熱伝導性等に優れることなどから、極めて有用である。
【0047】
本発明の第三の側面によれば、上記の如くして非晶質基材上に形成されたLa−Ni−O系材料の結晶層の上に、その他の導電性酸化物結晶層、特にSrRuO層が形成される。
【0048】
SrRuO層その他の導電性酸化物結晶層の形成方法は知られており、それらの公知の方法で、La−Ni−O系材料の結晶層の上にその導電性酸化物結晶層を形成すればよい。本発明により提供されるLa−Ni−O系材料の結晶層は、非晶質基材上にありながら、その結晶配向性が高いので、その上に形成されるSrRuO層などの導電性酸化物結晶層は良好に配向した結晶層として容易に形成され、酸化物誘電体などの電極などとして広く利用できる。特にSrRuOは酸化物誘電体の電極として有用な材料であるが、本発明のLa−Ni−O系材料の結晶層は自己配向性を有しているので、SrRuOの配向制御層として有用である。
【0049】
非晶質基材上に形成された結晶配向性の高いLaNiO層は少なくとも新規であるから、その上にSrRuO層などの導電性酸化物結晶層を形成した構造体も新規である。
【実施例】
【0050】
[比較例1]
石英ガラス基材上にLaNiO層を、従来から行われている一段階製膜法で、下記の条件で製膜した。
【0051】
製膜条件:
・スパッタリングターゲット:LaNiO焼結体
・基材:石英ガラス、シリコン上の熱酸化非晶質酸化シリコン膜
・到達真空度:1〜4×10−6Torr
・基材温度(℃):300、350、400、500、600、700
・スパッタリングガス種類:Ar(sccm)/O(sccm)=30/1、30/10、100/5、90/10
・スパッタリングガス圧(mTorr):10、60
・スパッタリング電力(高周波:W):50
結果:
・表1に、LaNiO膜を上記の従来の製膜法で製膜した結果を示す。500℃以下で、または、500℃では広い範囲のガス比・流量でよい結果が得られている。表1において、Bは「やや良」、Cは「良」、Eは「不良」を表す。
【0052】
【表1】

【0053】
・図1の最下段に得られたLaNiO膜で最良のもののX線回折チャート及びLaNiO膜の(200)の回折ピークの半価幅を示す。
【0054】
[実施例1]
次に、同じ基材上に同じLaNiO膜を下記条件の二段階製膜法で製膜した。
【0055】
製膜条件:
・スパッタリングターゲット:LaNiO焼結体
・基材:石英ガラス、シリコン上の熱酸化非晶質酸化シリコン膜
・到達真空度:1〜4×10−6Torr
・スパッタリング電力(高周波:W):50
第一段階として、基材温度を350℃に上げてスパッタリングガスとしてAr/O=30sccm/10sccmを流し、10mTorrで製膜した。製膜後に第二段階として、基材温度を600℃と700℃とまで上げて、スパッタリングガスとしてAr/O=100sccm/5sccmを流し、60mTorrで製膜した。
【0056】
結果:
・図1に従来製膜法と二段製膜法とで得られた結果のX線回折図と(200)の半価幅とを示す。左側のX線回折図では従来製膜法と二段階製膜方との差異は明瞭ではない。しかし、結晶配向性を表す半価幅(図1・右側)において、従来製膜法と二段製膜法(600℃と700℃)とを比較すると二段製膜法で得られた膜の方の半価幅(600℃では約3.7°、700℃では約4.3°)が小さいことが判る。これより二段製膜法の方が優れているということができる。
【0057】
[実施例2]
下記の条件で、非晶質基材上にLaNiO層を一段階製膜法で製膜した。
【0058】
製膜条件:
・スパッタリングターゲット:LaNiO焼結体
・基材:石英ガラス、シリコン上の熱酸化非晶質酸化シリコン膜
・到達真空度:1〜4×10−6Torr
・基材温度(℃): 350、400、500、550、600、700
・スパッタリングガス種類:Ar(sccm)/O(sccm)=30/10、100/5
・スパッタリングガス圧(mTorr):30、60
・スパッタリング電力(高周波:W):50
結果:
・表2はLaNiO膜の一段階製膜法での結果である。表2において、Aは「最良」、Bは「やや良」、Cは「良」、Dは「やや不良」、Eは「不良」を表す。
【0059】
・スパッタリング圧:10mTorr、スパッタリングガス流量:30sccm/10sccmでは、 400〜550℃で、また、スパッタリング圧:60mTorr、スパッタリングガス流量:Ar(sccm)/O(sccm)=100/5では400〜700℃での広い範囲で良い結果が得られている。
【0060】
【表2】

【0061】
・図2の最下段のチャートは、一段製膜法での最良の結果を示す。これは表2の中で最良の結果であるランクAのものに相当する。
[実施例3]
次に、二段階製膜法で、LaNiO膜を製膜した。
【0062】
製膜条件:
・スパッタリングターゲット:LaNiO焼結体
・基材:石英ガラス、シリコン上の熱酸化非晶質酸化シリコン膜
・到達真空度:1〜4×10−6Torr
・スパッタリング電力(高周波:W):50
第一段階として、基材温度を350℃に上げてスパッタリングガスとしてAr(sccm)/O(sccm)=30/10を流し10mTorrで製膜した。製膜後に第二段階として、基材温度を600℃または700℃まで上げてスパッタリングガスとしてAr(sccm)/O(sccm)=100/5を流し60mTorrで製膜した。
【0063】
結果:
・LaNiOの組成での製膜結果を図2に示す。
【0064】
・二段階製膜法では、一段製膜法では不良である製膜条件で良好な結果を得ることができている。
【0065】
・図2は左側にX線回折図を、右側に(200)の半価幅を示す。X線回折図では結晶品質の差異は明瞭ではないが、(200)の半価幅では、初めに基材温度350℃で製膜し次いで600℃にして製膜したもの(二段製膜:「350℃→600℃」と図中に表示)が2.4°であり、従来製膜よりも良い結晶配向性を示すことが判る。
【0066】
・二段階製膜法において、(200)の半価幅はLaNiOでは約3.7°であり、LaNiOでは2.4°である。このことからLaNiOよりもLaNiOの方が良い結晶配向品質の膜を得ることができる。
【0067】
[実施例4]
二段階製膜法で、LaNiO/石英ガラスの構造体を作成し、その上にSrRuO層を積層した。
【0068】
製膜条件:
・スパッタリングターゲット:LaNiO焼結体、SrRuO焼結体
・基材:石英ガラス、シリコン上の熱酸化非晶質酸化シリコン膜
・到達真空度:1〜4×10−6Torr
・スパッタリング電力(高周波:W):50
第一段階として、基材温度を350℃に上げてスパッタリングガスとしてAr(sccm)/O(sccm)=30/10を流し10mTorrで製膜した。製膜後に第二段階として、基材温度を600℃まで上げてスパッタリングガスとしてAr(sccm)/O(sccm)=100/5を流し60mTorrで製膜した。
【0069】
SrRuO製膜はLaNiO製膜後に基材温度を600℃に保ち、スパッタリングガスとしてAr(sccm)/O(sccm)=20/5を流し200mTorrで製膜した。また、SrRuOまで製膜したものに更に基材温度500℃、スパッタリングガスとしてAr(sccm)/O(sccm)=20/5を流し200mTorrで製膜した。
【0070】
結果:
次に、以上のLa−Ni−O系の膜の上に電気伝導性の良いSrRuO膜を製膜する。その結果を以下に示す。
【0071】
・従来製膜法によるLa−Ni−O系の膜の上では結晶配向した良好なSrRuO膜を得ることができなかった。しかし、二段階製膜法でのLa−Ni−O系の膜の上へのSrRuO膜では結晶配向品質の良い膜を得ることができている。
【0072】
・図3にLaNiO(図中LNOと略記)のX線回折図と、その上に製膜したSrRuO (図中SROと略記)のX線回折図とを示す。図3の左側の図の横軸は2θ(°)、縦軸は回折ピーク強度(対数による相対強度)である。さらに、図3の右側に結晶配向品質の指標となる半価幅を示す。図3の右側の図の横軸はθ(°)、縦軸は回折ピーク強度(相対強度)である。
【0073】
図中の矢印の意味は、
→:初めに所定の基材温度で製膜後に真空を破ることなく昇温して所定の温度で所定時間の製膜をする。例:「LNO_350→600℃→SRO_600℃」は、「LaNiOを350℃で製膜した後に600℃まで昇温し、昇温後に所定時間の製膜を施す。その後、SrRuOを600℃で所定時間だけ製膜する。」を表す。なお、LNOはLa−Ni−O系材料、SROはSr−Ru−O系材料を表す(以下同じ)。
【0074】
⇒:基材温度を室温まで下げ、真空を破って外に出したものに再び製膜する。例:「SRO_600℃ ⇒SRO_500℃」は、「SrRuOを600℃で所定の時間だけ製膜し、それを大気中に取り出し、再び真空引きを行い、基材温度を500℃にしてSrRuOをスパッタリングする。」ことを意味する。
【0075】
・図3の左側にはLaNiOの上にSrRuOの膜を重ねたもののX線回折図を示す。
【0076】
・最下段「LNO_350℃ ⇒ SRO_500℃」のLNOは、表1で良好な膜(B)の得られる条件でスパッタリングした膜の上にSrRuOを基材温度500℃で製膜(SrRuOの最適化された製膜条件:参考文献―特許公開公報2008-240040)したものである。この時のSrRuO(200)のピーク(2θ=約46.4°)をほとんど認めることができない。
【0077】
・下から二番目の「LNO_600℃ ⇒ SRO_500℃」はLaNiOのスパッタリング条件では良くないものであるが、その様な膜の上にSrRuO膜を製膜した結果である。(一番右側のピーク(2θ=約47°)はLaNiO(200)で、その左側のぼやけたピーク(2θ=約46.4°)がSrRuO(200)である。)
・下から三番目の「LNO_350→600℃ ⇒ SRO_500℃」は、図1に示されている二段階製膜法で良好なLaNiO膜の得られたスパッタリング条件で製膜したLaNiO膜の上にSrRuOを500℃でスパッタリング製膜したものである。この製膜条件ではSrRuO(200)のピークをほとんど認めることができない。しかし、SrRuO(100)のピーク(2θ=23°近傍)を認めることができる。
【0078】
・下から四番目の「LNO_350→600℃ ⇒ SRO_600℃」は、二段階製膜法で良好なLaNiO膜の得られたスパッタリング条件で製膜したLaNiO膜を大気中に取り出し、その上にSrRuOを600℃でスパッタリング製膜したものである。この時のSrRuO(200)のピークは僅かではあるが認めることができる。
【0079】
・下から五番目の「LNO_350→600℃ → SRO_600℃」は、二段階製膜法で良好なLaNiO膜の得られたスパッタリング条件で製膜したLNOの膜の上に真空を破ることなく連続でSrRuOを600℃でスパッタリング製膜したものである。この時のSrRuO(200)のピーク(2θ=約46.4°)はLaNiO(200)のピーク(2θ=約47°)の肩にかかっているが、SrRuO(100)のピーク(2θ=23°近傍)が顕われている。
【0080】
・下から六番目(一番上)の「LNO-350→600℃→SRO-600℃⇒SRO-500℃」は大気中に取り出した下から五番目の膜の上に再びSrRuO膜をスパッタリングしたものである。この膜ではLaNiO(200)のピーク(2θ=約47°)の左側に明瞭なSrRuO(200)のピーク(2θ=約46.4°)が顕われている。
【0081】
・この図の一番上の膜のLaNiO(200)のピーク(2θ=約47°)とSrRuO(200)のピーク(2θ=約46.4°)との半価幅を図3の右側に示す(図3の右側図横軸はθである)。それぞれの半価幅は約3°であり、良好な結晶配向性を示している。(下から一番目から五番目までの膜のSrRuO(200)は測定不可能であった。)
・SrRuO/LaNiO/石英ガラス基板で約3°の半価幅の膜が得られている。
【0082】
[実施例5]
製膜条件:
・スパッタリングターゲット::LaNiO焼結体、SrRuO焼結体
・基材:石英ガラス、シリコン上の熱酸化非晶質酸化シリコン膜
・到達真空度:1〜4×10−6Torr
・スパッタリング電力(高周波:W):50
第一段階として、基材温度を350℃に上げてスパッタリングガスとしてAr/O=30sccm/10sccmを流し10mTorrで製膜する。この製膜後に第二段階として、基材温度を600、625、650、675、または700℃まで上げ、スパッタリングガスとしてAr/O=100sccm/5sccmを流し、60mTorrで製膜する。図4−1はLaNiO製膜時に第一段階で350℃、第二段階で650℃に上げ、SrRuO製膜時に550℃に下げて製膜した時の温度プログラムである。
【0083】
結果:
図4−2にLaNiO のスパッタリングターゲットを用いて製膜した膜の上にSrRuO膜をAr/O=20sccm/5sccmを流し、200mTorrで製膜した結果を示す。
なお、図4−2でのSrRuOは500℃で製膜している。
【0084】
・X線回折図での差異はほとんどない。
【0085】
・LaNiO(200)とSrRuO(200)の半価幅は、
(1) La2NiO4_350℃→600℃→SrRuO3_500℃では、それぞれ2.7°と約4.5°
(2) La2NiO4_350℃→625℃→SrRuO3_500℃では、それぞれ2.7°と2.8°
(3) La2NiO4_350℃→650℃→SrRuO3_500℃では、それぞれ4.0°と2.8°
であった。
これらの結果から良好な結晶配向したSrRuO膜が得られていることがわかる。
【0086】
[実施例6]
下記の条件で製膜して、SrRuO/LaNiO/石英ガラス基材の構造体を製造した。
【0087】
製膜条件は実施例5と同じで、
第一段階として、基材温度を500℃(LaNiOの一段製膜法では最良の結果が得られている製膜条件)に上げてスパッタリングガスとしてAr/O=30sccm/10sccmを流し10mTorrで製膜する。製膜後に第二段階として、基材温度を650℃まで上げてスパッタリングガスとしてAr/O=100sccm/5sccmを流し、60mTorrで製膜する。このように製膜した上にさらにSrRuO膜をAr/O=20sccm/5sccmを流し、200mTorrで550℃にして製膜した。図5−1はこの時の温度プログラムである。
【0088】
結果:
・図5−2に得られた構造体のX線回折図形(横軸は2θ)と(200)の半価幅(横軸はθ)を示す。
【0089】
・(200)の半価幅はLaNiOで3.1°、SrRuOで4.5であった。
【0090】
これらの値はLaNiOの第一段製膜温度が350℃のものよりも大きく、結晶配向製が良くない。
【0091】
[実施例7]
二段階製膜法において、SrRuO/LaNiO/石英ガラス基材の最適化を図った。
【0092】
製膜条件は図4の温度プログラム(図4−1)が図6−1のようにSrRuO膜の製膜の温度プログラムが二段階となっているだけで、他のLaNiO製膜条件は実施例5と同じである。
【0093】
第一段階として、基材温度を350℃に上げてスパッタリングガスとしてAr/O=30sccm/10sccmを流し10mTorrで製膜する。製膜後に第二段階として、基材温度を650℃まで上げてスパッタリングガスとしてAr/O=100sccm/5sccmを流し、60mTorrで製膜する。SrRuOの製膜は550℃で60分、更に500℃に下げて160分間の二段階製膜をした。この時の温度プログラムを図6−1に示す。
【0094】
結果:
上記の条件で製膜したX線回折結果(横軸は2θ)を図6−2に、また、半価幅(横軸はθ)を図6−3に示す。
【0095】
・最適化した「La2NiO4_350→650℃→SrRuO3_550℃→500℃」の条件で製膜した膜の(200)の半価幅の結果はそれぞれ2.2°と2.4°であった。
【0096】
[実施例8]
LaNiOを三段階製膜法で形成する。第二段階までとSrRuOの製膜は実施例5と同じ条件で、LaNiOの第三段階の製膜条件は基材温度を670℃まで上げ、製膜ガス流量と圧力をAr/O=40sccm/1sccmを流し、20mTorrとして製膜を行い、SrRuO/LaNiO/石英ガラス基材の構造体を製造した。
【0097】
この時の温度プログラムを図7−1に示す。
【0098】
結果:
・図7−2に、図7−1で製膜した膜のX線回折図(横軸は2θ)を示し、図7−3に、図7−2で示したLaNiOとSrRuOとの膜の(200)の半価幅(横軸はθ)を示す。
【0099】
・(200)の半価幅はLaNiOで1.8°、SrRuOで2.0°と良好な結果を得ることが出来た。
【0100】
まとめ
以上の実施例及び比較例の結果より、La−Ni−O系の製膜では、従来からの製膜法よりも二段以上の製膜法が、またLa−Ni−O系のスパッタリング材料では、LaNiOだけでなくLaNiOでも良好な結晶配向性をもった膜の製造に、また、これらの膜の上に良好な結晶配向性をもったSrRuO膜を製造ことに有効であることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶質基材上にLa−Ni−O系材料の第一層を第一の温度で製膜した後、La−Ni−O系材料の第一層の上に前記La−Ni−O系材料の第二層を前記第一の温度より高い第二の温度で製膜し、La−Ni−O系材料の第二層がLa−Ni−O系材料の第一層より結晶配向性が高いことを特徴とする非晶質基材上に結晶配向したLa−Ni−O系材料層を形成する方法。
【請求項2】
La−Ni−O系材料の第一層を550℃以下の温度で形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
La−Ni−O系材料がLaNiO又はLaNiOである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
非晶質基材がシリコン基材表面に形成した非晶質酸化ケイ素膜、シリカガラス、ほう硅酸ガラス又はアルミノ硅酸ガラスである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
LaNiO又はLaNiO層の(200)のX線回折ピークの半価幅が5°以下である、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法で形成した結晶配向したLa−Ni−O系材料層の上に、導電性酸化物結晶配向層を形成することを特徴とする導電性酸化物結晶層の形成方法。
【請求項7】
導電性酸化物結晶配向層がSrRuO層である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法で得られる結晶配向したLaNiO又はLaNiO構造体。
【請求項9】
非晶質基材上に結晶配向したLaNiO層が形成され、結晶配向したLaNiO層の(200)のX線回折ピークの半価幅が5°以下であることを特徴とする結晶配向したLaNiO構造体。
【請求項10】
非晶質基材上に結晶配向したLaNiO層が形成され、その上に結晶配向したSrRuO層が形成されていることを特徴とする結晶配向したSrRuO層構造体。
【請求項11】
結晶配向したSrRuO層の(200)のX線回折ピークの半価幅が5°以下である、請求項10に記載の結晶配向したSrRuO層構造体。
【請求項12】
非晶質基材上に結晶配向したLaNiO層が形成され、結晶配向したLaNiO層の(200)のX線回折ピークの半価幅が5°以下であることを特徴とする結晶配向したLaNiO構造体。
【請求項13】
非晶質基材上に結晶配向したLaNiO層が形成され、その上に結晶配向したSrRuO層が形成されていることを特徴とする結晶配向したSrRuO層構造体。
【請求項14】
結晶配向したSrRuO層の(200)のX線回折ピークの半価幅が5°以下である、請求項13に記載の結晶配向したSrRuO層構造体。
【請求項15】
非晶質基材がシリコン基材表面に形成した非晶質酸化ケイ素膜、シリカガラス、ほう硅酸ガラス又はアルミノ硅酸ガラスである、請求項8〜14のいずれか1項に記載の構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−62529(P2012−62529A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207905(P2010−207905)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人科学技術振興機構、産学共同シーズイノベーション化事業「顕在化ステージ」、「スパッタリング法による高純度・高導電性SrRuO4酸化物電極付き基板の開発」産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(593183366)フルウチ化学株式会社 (13)
【Fターム(参考)】