説明

非水系二次電池

【課題】非水系二次電池における正極板の充放電時の伸縮度を負極板の充放電時の伸縮度に追従させる構成とし、非水系二次電池を充放電する際の電極板の膨張収縮による応力を緩和し充放電時の電極板の破断または挫屈を抑制することで安全性の高い非水系二次電池を提供するものである。
【解決手段】正極合剤塗料を正極集電体2の上に塗布して正極合剤層1を形成した正極板3と、負極合剤塗料を負極集電体5の上に塗布して負極合剤層4a,4bを形成した負極板16との間にセパレータとしての多孔質絶縁層6を介在させ渦巻状に捲回して構成した電極群17における正極板3の伸縮性を向上させるために正極集電体2に伸縮度の大きいアルミニウム合金を用いた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池に代表される非水系二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯用電子機器の電源として利用が広がっているリチウムイオン二次電池は、負極板にリチウムの吸蔵および放出が可能な炭素質材料等を用い、正極板にLiCoO等の遷移金属とリチウムの複合酸化物を活物質として用いており、これによって高電位で高放電容量のリチウムイオン二次電池を実現している。しかし、近年の電子機器および通信機器の多機能化に伴って更なるリチウムイオン二次電池の高容量化が望まれている。
【0003】
ここで、高容量のリチウムイオン二次電池を実現するための発電要素である電極板としては、正極板および負極板ともに各々の構成材料を塗料化した電極合剤塗料を集電体の上に塗布し乾燥した後にプレス等により規定の厚みまで圧縮する方法が用いられており、より多くの活物質を充填してプレスすることで活物質密度が高くなり、一層の高容量化が可能となる。
【0004】
さらに、上述の正極板と負極板とをセパレータとしての多孔質絶縁層を介して順に積層される又は同じく多孔質絶縁層を介して渦巻状に捲回された電極群をステンレス製、ニッケルメッキを施した鉄製、又はアルミニウム製等の金属からなる電池ケースに収納し、次に非水系電解液を電池ケース内に注液した後、電池ケースの開口部に封口板を密封固着して非水系二次電池を構成している。
【0005】
ところで、高容量化が進む一方で重視すべきは安全対策であり、特に正極板と負極板との内部短絡などにより非水系二次電池の急激な温度上昇が起こり熱暴走に至るおそれもあるため、非水系二次電池の安全性の向上が強く要求されている。特に、大型・高出力な非水系二次電池では、熱暴走の発生確率が高くなるため、その発生確率を低くする等の安全性を向上させる工夫が必要である。
【0006】
上述のように非水系二次電池が内部短絡する要因としては、非水系二次電池の内部に異物が混入する以外にも図8(a)に示したように、正極集電体22の上に正極合剤層23a,23bを形成した正極板25と負極集電体26の上に負極合剤層27a,27bを形成した負極板29とをセパレータとしての多孔質絶縁層30を介して捲回することにより電極群31を構成する際、さらには非水系二次電池を充放電する際に電極板に加わる応力によって電極板が破断あるいは挫屈することが考えられる。
【0007】
より詳しくは、渦巻状に捲回して電極群31を構成する際には構成要素である正極板25、負極板29、多孔質絶縁層30には引張応力が加わり、この際の各構成要素における伸び率の差によって最も伸び率が小さなものから破断することになる。
【0008】
加えて、非水系二次電池を充放電すると電極板の膨張収縮による応力が電極板に加わり、充放電を繰り返すことによる繰り返し応力により正極板25、負極板29もしくは多孔質絶縁層30の伸び率の最も小さいものが優先的に破断してしまう。
【0009】
例えば、図8(b)に示したように充電時の負極板29の伸びに正極板25が追従できない場合には正極板25の破断(図中のF)が起こり、また、正極板25の破断が起きなくても図8(c)に示したように負極板25の挫屈により多孔質絶縁層30が引き伸ばされることで、多孔質絶縁層30の厚みが薄くなる肉薄部(図中のG)が発生する。
【0010】
さらに、正極板25もしくは負極板29が多孔質絶縁層30よりも先に破断した場合には、いずれかの電極板の破断部が多孔質絶縁層30を突き破り正極板25と負極板29が短絡することになる。この短絡により大電流が流れ、その結果、非水系二次電池の温度が急激に上昇し、上述のように非水系二次電池が熱暴走する可能性がある。
【0011】
そこで、正極板の破断を抑制するために、図9に示したように両面に正極合剤層を塗布形成した正極板34と両面に負極合剤層を塗布形成した負極板35とをセパレータとしての多孔質絶縁層36を介して扁平状に捲回した発電要素33と非水系電解液を電池ケース37に収納した非水系二次電池32において、正極板34の両面のうち、内周側の第1面の正極合剤層を裏面の第2面の正極合剤層よりも柔軟性を高く(引張破断伸びを大きく)する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0012】
また、電極板の伸び率を向上させるために、図10に示したように正極リード44を接続した正極板41と負極リード45を接続した負極板42との間にセパレータとしての多孔質絶縁層43を介在させて渦巻状に捲回して電池ケース47に収容し正極リード44を正極外部端子46に、負極リード45を電池ケース47に接続し、非水系電解液を注入した非水系二次電池において、正極板41及び負極板42とこれら両電極間に介装されるべき多孔質絶縁層43とを積層する前、または巻き取る前に結着材の再結晶化温度より高い温度であって、その分解温度より低い温度で正極板41または負極板42のいずれか一方もしくはその両方の電極板を加熱処理する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2007−103263号公報
【特許文献2】特許第3066161号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、正極板の内周側の正極合剤層を外周側より柔軟にするまたは正極板を熱処理するなどの上述した従来技術においては、電極群を構成する際に正極板に加わる曲げ応力による正極板の破断を抑制する効果は発揮するものの、非水系二次電池を充放電する際の電極板の膨張収縮による応力を緩和し充放電時の電極板の破断または挫屈を抑制することが困難であるという課題を有していた。
【0014】
加えて、上述した特許文献1の従来技術では、正極板の表面と裏面に塗布する正極合剤塗料を二種類作製し、この二種類の正極合剤塗料を正極集電体の上に塗布形成する必要があり、正極板を作製するプロセスが複雑になってしまう。
【0015】
また、特許文献2の従来技術では、正極板を規定の厚みまでプレスした後に熱処理を施し捲回して電極群を構成するが、この熱処理によって規定の厚みまで圧縮された正極板がバックリングを起こし捲回前の正極板の厚みバラツキが大きくなってしまう。さらに、捲回した電極群の群径バラツキが、大きくなってしまうなどの不具合を引き起こすことがある。
【0016】
本発明は、上記従来の課題を鑑みて成されたもので、正極板の充放電時の伸びを負極板の充放電時の伸びに追従させて正極板に加わる応力を緩和し、正極板の破断または挫屈を抑制することで信頼性の高い非水系二次電池を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記従来の目的を達成するために本発明の非水系二次電池は、少なくともリチウム含有複合酸化物よりなる活物質、導電材および結着材を分散媒にて混練分散した正極合剤塗料
を正極集電体の上に塗布して正極合剤層を形成した正極板と少なくともリチウムを保持しうる材料よりなる活物質および結着材を分散媒にて混練分散した負極合剤塗料を負極集電体の上に塗布して負極合剤層を形成した負極板との間に多孔質絶縁層を介在させて渦巻状に捲回または積層して電極群を構成し、この電極群を非水系電解液とともに電池ケースに封入した非水系二次電池であって、正極板の充放電時の伸縮度を負極板の充放電時の伸縮度に追従させる伸縮促進機能を正極板に持たせた構成としたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の非水系二次電池によると、正極板の充放電時の伸縮度を伸縮促進機能により負極板の充放電時の伸縮度に追従させることにより、正極板の破断または挫屈を抑制することが可能である。また、この正極板を用いることで正極板の破断または挫屈に起因した内部短絡を抑制し安全性の高い非水系二次電池を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の第1の発明においては、少なくともリチウム含有複合酸化物よりなる活物質、導電材および結着材を分散媒にて混練分散した正極合剤塗料を正極集電体の上に塗布して正極合剤層を形成した正極板と少なくともリチウムを保持しうる材料よりなる活物質および結着材を分散媒にて混練分散した負極合剤塗料を負極集電体の上に塗布して負極合剤層を形成した負極板との間に多孔質絶縁層を介在させて渦巻状に捲回または積層して電極群を構成し、この電極群を非水系電解液とともに電池ケースに封入した非水系二次電池であって、正極板の充放電時の伸縮度を負極板の充放電時の伸縮度に追従させる伸縮促進機能を正極板に持たせた構成としたことにより、充電時の負極板の伸びに対して正極板の伸びを追従させることで、正極板の破断または挫屈を抑制することが可能となり、信頼性の高い非水系二次電池を提供することができる。
【0020】
本発明の第2の発明においては、伸縮促進機能を正極集電体に設けたことにより、正極集電体の破断または挫屈を抑制することが可能となり、信頼性の高い非水系二次電池を提供することができる。
【0021】
本発明の第3の発明においては、伸縮促進機能として、正極集電体を伸縮性の大きな合金で構成したことにより、例えば正極集電体にアルミニウムを使用した場合、添加物含有量によって合金機械的特性が変化するが、特に集電体の引張り強度が変化し、伸縮性が向上し、充放電時の正極板の伸縮度を負極板の伸縮度に近づけることができる添加物を含有させることで、正極板の破断または挫屈を抑制することができる。
【0022】
本発明の第4の発明においては、伸縮促進機能として、正極集電体を調質処理により軟化させて構成したことにより、例えば正極集電体にアルミニウムを使用した場合、結晶粒界組織形状が変化することにより機械的特性が変化するが、特に集電体の結晶粒界組織形状を大きくすることにより伸縮性が向上し、充放電時の正極板の伸縮度を負極板の伸縮度に近づけることができ、正極板の破断または挫屈を抑制することができる。
【0023】
本発明の第5の発明においては、伸縮促進機能として、正極集電体の幅を負極集電体の幅より狭くして構成したことにより、正極集電体の伸縮性が向上し、充放電時の正極板の伸縮度を負極板の伸縮度に近づけることができ、正極板の破断または挫屈を抑制することができる。
【0024】
本発明の第6の発明においては、伸縮促進機能として、正極集電体に長手方向に対して直交する肉薄部を設けて構成したことにより集電体の少なくとも一部の引張破断強度が低下し、充放電時の正極板の伸縮度を負極板の伸縮度に近づけることができ、正極板の破断
または挫屈を抑制することができる。
【0025】
本発明の第7の発明においては、伸縮促進機能として、正極集電体に長手方向に対して直交する折り曲げ部を設けて構成したことにより、充放電時の負極板が厚み方向に膨張するとき折り曲げ部が平らになり、正極板が長手方向に伸縮することにより負極板の伸縮度に近づけることができ正極板の破断または挫屈を抑制することができる。
【0026】
本発明の第8の発明においては、伸縮促進機能として、正極集電体に幅方向に切込み部を設けて構成したことにより、充放電時に正極集電体が切込み部で伸ばされて負極板の伸縮度に近づけることができ正極板の破断または挫屈を抑制することができる。
【0027】
本発明の第9の発明においては、切込み部を正極集電体の幅方向の両端部に設けて構成したことにより、正極板の少なくとも一部の引張破断強度が低下し負極板の伸縮度に近づけることができ正極板の破断または挫屈を抑制することができる。
【0028】
本発明の第10の発明においては、伸縮促進機能として、正極集電体の幅方向に切欠き部を設けて構成したことにより、充放電時に正極集電体の切欠き部で伸縮されて負極板の伸縮度に近づけることができ正極板の破断または挫屈を抑制することができる。
【0029】
本発明の第11の発明においては、伸縮促進機能として、正極集電体をエキスパンド状に形成したことにより、充放電時に長手方向の正極板の伸縮度が向上し負極板の伸縮度に近づけることができ正極板の破断または挫屈を抑制することができる。
【0030】
本発明の第12の発明においては、伸縮促進機能として、伸縮性の大きな合金を用いる、調質処理により軟化させる、幅を狭くする、長手方向に直交する肉薄部を設ける、長手方向に対して直交する折り曲げ部を設ける、長手方向に対して直交する切込み部を設ける、幅方向に断続的に切欠き部を設ける、またはエキスパンド状に形成する構成の少なくとも2つを組み合わせて構成したことにより、充放電時に長手方向の正極板の伸縮度が向上し負極板の伸縮度に近づけることができ正極板の破断または挫屈を抑制することができる。
【0031】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施の形態に係る非水系二次電池における捲回後の電極群17の要部を示す模式図で、電極群17は正極合剤塗料を正極集電体2の上に塗布して正極合剤層1a,1bを形成した正極板3と、負極合剤塗料を負極集電体5の上に塗布して負極合剤層4a,4bを形成した負極板16との間にセパレータとしての多孔質絶縁層6を介在させ渦巻状に捲回して構成されている。
【0032】
図1は正極板3、負極板16およびセパレータとしての多孔質絶縁層6を捲回し、充電した時の正極板3と負極板16の変形について示した図であるが、充電した時にインターカレーションにより負極板16は、厚みの増加により長手方向に引き伸ばされる張力Cが発生し伸ばされる。一方正極板3は負極板16の厚みの増加により長手方向に引き伸ばされる張力Aが発生する。
【0033】
このとき、負極板16と正極板3は同じように伸び力が発生するが、一般的には正極板3は負極板16の伸縮性より劣るために正極板3が破断または負極板16に挫屈が生じる。
【0034】
また、放電時には充電時と逆に、負極板16は厚みの減少により長手方向に収縮力Dが発生し縮まされる。一方正極板3は負極板16の厚みの減少により長手方向に収縮力Bが
発生し縮まされる。そこで、本発明は正極板3の充放電時の伸縮度を負極板16の充放電時の伸縮度に追従させる伸縮促進機能を正極板に持たせることにより、正極板3の破断または負極板16の挫屈を抑制することが可能となる。
【0035】
ここで、正極集電体2に伸縮促進機能を正極板に持たせる構成について詳しく説明する。正極集電体2は主成分をアルミニウムとしたアルミニウム(Al)−鉄(Fe)合金である。添加物である鉄:1.2〜1.7%を含有し、その他の添加物として、例えばSi≦0.15%、Cu≦0.05%、Mn≦0.05%、Mg≦0.05%、Zn≦0.05%を含有することで、アルミニウムの純度を97.95%以下にすることにより、正極集電体2の結晶粒界組織が大きくなり、正極板3の伸縮度を高めることができ、負極板16の伸びに追従することが可能である。
【0036】
また、例えばアルミニウムの製造過程において、アルミニウムの厚さを規定の厚さに加工するための圧延工程における加圧条件や、アルミニウムの焼鈍し時間や温度によって、アルミニウムの結晶粒界を調質することにより結晶粒界組織が大きくなり、正極板3の伸縮度を高めることができ、負極板16の伸びに追従することが可能である。
【0037】
次に、正極板3の製造法について詳しく説明する。前記正極集電体2の表面または裏面に正極合剤層1a,1bを形成するには、まず、正極活物質、導電材、結着材を適切な分散媒中に入れ、プラネタリーミキサー等の分散機により混合分散し、アルミニウム箔などの正極集電体2への塗布に最適な粘度に調整しながら混練を行って正極合剤塗料を作製する。
【0038】
正極活物質としては、例えばコバルト酸リチウムおよびその変性体(コバルト酸リチウムにアルミニウムやマグネシウムを固溶させたものなど)、ニッケル酸リチウムおよびその変性体(一部ニッケルをコバルト置換させたものなど)、マンガン酸リチウムおよびその変性体などの複合酸化物を挙げることができる。
【0039】
このときの導電材種としては、例えばアセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック、各種グラファイトを単独、あるいは組み合わせて用いても良い。
【0040】
このときの正極用結着材としては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニリデンの変性体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アクリレート単位を有するゴム粒子結着材等を用いることができ、この際に反応性官能基を導入したアクリレートモノマー、またはアクリレートオリゴマーを結着材中に混入させることも可能である。
【0041】
上述のようにして作製した正極合剤塗料を例えばアルミニウム箔からなる正極集電体2の上にダイコーターを用いて塗布した後に乾燥し、所定の厚みまで圧縮するようにプレスして正極合剤層1a,1bを形成した後、規定の幅および長さにスリッタ加工して長尺帯状の正極板3が得られる。
【0042】
次に、負極板16の作製方法について詳しく説明する。負極活物質、結着材を適切な分散媒中に入れ、プラネタリーミキサー等の分散機により混合分散し、銅箔などの負極集電体への塗布に最適な粘度に調整しながら混練を行って負極合剤塗料を作製する。
【0043】
負極用活物質としては、各種天然黒鉛および人造黒鉛、シリサイドなどのシリコン系複合材料、並びに各種合金組成材料を用いることができる。
【0044】
このときの負極用の結着材としては、ポリフッ化ビニリデンおよびその変性体を用いることができる。しかしながら、リチウムイオンの受入れ性を向上させるという観点からは、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子(SBR)またはその変性体とカルボキシメチルセルロース(CMC)をはじめとするセルロース系樹脂等とを併用したものや、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子またはその変性体に上記セルロース系樹脂を少量添加したものを使用するのが好ましい。
【0045】
上述のようにして作製した負極合剤塗料を例えば銅箔からなる負極集電体5の上にダイコーターを用いて塗布した後に乾燥し、所定の厚みまで圧縮するようにプレスして負極合剤層4a,4bを形成した後、規定の幅および長さにスリッタ加工して長尺帯状の負極板16が得られる。
【0046】
例えば、図2は本発明の一実施の形態に係る非水系二次電池における電極群17の要部の斜視図である。同図において正極板3の幅言いかえれば正極集電体2の幅W1を負極板16の幅W2より狭くして正極板3の伸縮性を向上させる伸縮促進機能を持たせた構成にすることにより、負極板16の伸びに追従することが可能である。正極板3の幅W1は負極板16の伸縮状況に応じて変更する必要がある。
【0047】
次に、図3(a)は本発明の一実施の形態に係る非水系二次電池における正極集電体2の伸縮促進機能を示す要部の斜視図である。同図において本発明の非水系二次電池用の正極集電体2の厚みT1で長さL1対して、長手方向と垂直な少なくとも1箇所以上に他の厚みより薄い厚みT2で長さL2の肉薄部7を構成したことにより、正極集電体2は局所的に引張り強度の弱い部分が伸縮し易くなり、長手方向に伸縮が可能となり、正極板3の伸縮度を高めることができ負極板16の伸びに追従することが可能である。薄い厚みT2と長さL1は負極板16の伸縮状況に応じて変更する必要がある。
【0048】
次に、図3(b)は本発明の一実施の形態に係る非水系二次電池における正極集電体2の伸縮促進機能を示す要部の斜視図である。同図において本発明の非水系二次電池用の正極集電体2の長手方向に対して直交する折り曲げ高さH1でピッチP1の折り曲げ部8を設けたことにより、充放電の際に正極板3の長手方向と厚み方向に伸縮させることができ負極板16の伸びに追従することが可能である。折り曲げ高さH1とピッチP1は、負極板16の伸縮状況に応じて変更する必要がある。
【0049】
次に、図4(a)は本発明の一実施の形態に係る非水系二次電池における正極集電体2の伸縮促進機能を示す要部の平面図である。同図において本発明の非水系二次電池用の正極集電体2の幅方向に切込み部9を設けたことにより、充放電の際に正極板3の長手方向に力が加わったとき、正極板3の切込み部9が拡張しながら長手方向に伸縮させることができ負極板16の伸びに追従することが可能である。
【0050】
なお、本発明の一実施の形態として正極集電体2の幅方向にすなわち、長手方向に対して直交する切込み部9を設けたが、これに限るものではなく、斜め方向に切り込み部9を設けてもよく、さらに切込み部9の大きさ、深さ、場所、数は負極板16の伸縮状況に応じて変更することが可能となる。
【0051】
次に、図4(b)は本発明の一実施の形態に係る非水系二次電池における正極集電体2の伸縮促進機能を示す要部の平面図である。同図において本発明の非水系二次電池用の正極集電体2の幅方向の両端部に切込み部10を設けたことにより、充放電の際に正極板3の長手方向に力が加わったとき、正極板3の切込み部10が拡張しながら長手方向に伸縮させることができ負極板16の伸びに追従することが可能である。
【0052】
なお、本発明の一実施の形態として正極集電体2の幅方向の両端部に対して直交する切込み部9を設けたが、これに限るものではなく、斜め方向に切り込み部9を設けてもよく、さらに切込み部10の大きさ、深さ、場所、数は負極板16の伸縮状況に応じて変更することが可能となる。
【0053】
次に、図5は本発明の一実施の形態に係る非水系二次電池における正極集電体2の伸縮促進機能を示す要部の平面図である。同図において本発明の非水系二次電池用の正極集電体2の幅方向に切欠き部11を設けたことにより、充放電の際に正極板3の長手方向に力が加わったとき、正極板3の切欠き部11を拡張しながら長手方向に伸縮させることができ負極板16の伸びに追従することが可能である。
【0054】
なお、本発明の一実施の形態として正極集電体2の幅方向に連続的に切欠き部9を設けたが、これに限るものではなく、断続的に切欠き込み部9を設けてもよく、さらに切欠き部11の大きさ、深さ、場所、数は負極板16の伸縮状況に応じて変更する必要がある。
【0055】
次に、図6は本発明の一実施の形態に係る非水系二次電池における正極集電体2の伸縮促進機能を示す要部の平面図である。同図において本発明の非水系二次電池用の正極集電体2をプレス加工などで交差するように切込みを入れ、その後幅方向へ展開することにより交差するように形成した切込み部12によりエキスパンド状態に伸縮する構成としたものである。
【0056】
この場合、正極集電体2は長手方向または幅方向に伸縮が可能となることにより、正極板3を伸縮させることができ負極板16の伸びに追従することが可能である。切込み部12の大きさ、深さ、場所、数は負極板16の伸縮状況に応じて変更する必要がある。
【0057】
以下、上述した正極板3および負極板16を使用した本発明の非水系二次電池について説明する。図7に、非水系二次電池の一例としての円筒形のリチウム二次電池13を縦に切断した斜視図である。
【0058】
図7の円筒形のリチウム二次電池13においては、複合リチウム酸化物を活物質とする正極板3とリチウムを保持しうる材料を活物質とする負極板16とをセパレータとしての多孔質絶縁層6を介して渦巻状に捲回して電極群17が作製される。
【0059】
電極群17は、有底円筒形の電池ケース18の内部に、絶縁板19により電池ケース18とは絶縁されて収容される一方、電極群17の下部より導出した負極リード15が電池ケース18の底部に接続されるとともに、電極群17の上部より導出した正極リード14が封口板20に接続される。
【0060】
また、電池ケース18は、所定量の非水溶媒からなる非水系電解液(図示せず)が注液された後、開口部に封口ガスケット21を周縁に取り付けた封口板20を挿入し、電池ケース18の開口部を内方向に折り曲げてかしめ封口される。
【0061】
ここで、セパレータとしての多孔質絶縁層6は、非水系二次電池の使用範囲に耐えうる組成であればよいが、特にポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂の微多孔フィルムを、単一あるいは複合して用いるのが好ましい。
【0062】
セパレータとしての多孔質絶縁層6の厚みは、10〜25μmとするのが良い。このときの非水系電解液は、電解質塩としてLiPFおよびLiBFなどの各種リチウム化合物を用いることができる。
【0063】
また溶媒としてエチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)を単独および組み合わせて用いることができる。
【0064】
また正極板3または負極板16上に良好な皮膜を形成させるため、および過充電時の安定性を保証するために、ビニレンカーボネート(VC)およびシクロヘキシルベンゼン(CHB)、並びにその変性体を用いるのが好ましい。
【0065】
以下、具体的な実施例について、さらに詳しく説明する。本発明の一実施例について図面を参照しながら説明する。まず、活物質としてコバルト酸リチウムを100重量部、導電材としてアセチレンブラックを活物質100重量部に対して2重量部、結着材としてポリフッ化ビニリデンを活物質100重量部に対して2重量部とを適量のN−メチル−2−ピロリドンと共に双腕式練合機にて攪拌し混練することで、正極合剤塗料を作製した。
【0066】
一方、負極の活物質として人造黒鉛を100重量部、結着材としてスチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子分散体(固形分40重量%)を活物質100重量部に対して2.5重量部(結着材の固形分換算で1重量部)、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを活物質100重量部に対して1重量部、および適量の水とともに双腕式練合機にて攪拌し、負極合剤塗料を作製した。
【実施例1】
【0067】
以下、具体的な実施例として、本発明の一実施例について図面を参照しながらさらに詳しく説明する。まず、この正極合剤塗料を厚みが15μmのアルミニウム箔の純度を98%とした正極集電体2に塗布して正極板3を作製した。
【0068】
本実施例1として正極集電体2は主成分をアルミニウムとしたアルミニウム(Al)−鉄(Fe)合金を用いた。添加物である鉄は例えばFe:1.2〜1.7%を含有し、その他の添加物として、例えばSi≦0.15%、Cu≦0.05%、Mn≦0.05%、Mg≦0.05%、Zn≦0.05%を含有することにより、アルミニウムの純度を97.95%以下にした正極集電体2を用いた。
【0069】
以上の正極集電体2に正極の活物質としてコバルト酸リチウムを100重量部、導電材としてアセチレンブラックを活物質100重量部に対して2重量部、結着材としてポリフッ化ビニリデンを活物質100重量部に対して2重量部とを適量のN−メチル−2−ピロリドンと共に双腕式練合機にて攪拌し混練することで正極合剤塗料を作製し、正極集電体2に塗布して正極板3を作製した。
【0070】
次に、負極の活物質として人造黒鉛を100重量部、結着材としてスチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子分散体(固形分40重量%)を活物質100重量部に対して2.5重量部(結着材の固形分換算で1重量部)、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを活物質100重量部に対して1重量部、および適量の水とともに双腕式練合機にて攪拌し混練することで負極合剤塗料を作製し、負極集電体5に塗布して負極板16を作製した。
【0071】
以上の正極板3と負極板16とを用いて、図7に示すような円筒形のリチウムイオン二次電池13を作製した。より具体的には、正極板3と負極板16とを厚みが20μmのポリエチレン微多孔フィルムのセパレータとしての多孔質絶縁層6を介して渦巻状に捲回した電極群17を100個作製した。
【0072】
この電極群17の中から10個を抜き出し有底円筒形の電池ケース18の内部に絶縁板19と共に収容し、電極群17の下部より導出した負極リード15を電池ケース18の底
部に接続した。
【0073】
次いで、電極群17の上部より導出した正極リード14を封口板20に接続し、電池ケース18に所定量のEC,DMC,MEC混合溶媒にLiPFを1MとVCを3重量部溶解させた非水系電解液(図示せず)を注液した。
【0074】
その後、電池ケース18の開口部に封口ガスケット21を周縁に取り付けた封口板20を挿入し、電池ケース18の開口部を内方向に折り曲げて、かしめ封口して伸縮性の大きな合金の正極集電体2を用いた円筒形のリチウムイオン二次電池13を実施例1とした。
【0075】
上述のようにして作製した100個のリチウムイオン二次電池の充放電を500サイクル繰り返したが、サイクル劣化は生じなかった。また、充放電を500サイクル繰り返した後のリチウムイオン二次電池100個の中から20個を抜き出し電極群17を解体したところ、リチウム析出、電極板の破断、電極板の座屈、電極合剤層の脱落などの不具合は見られなかった。
【実施例2】
【0076】
本発明の一実施例について図面を参照しながら説明する。まず、厚みが15μmのアルミニウム箔に、実施例1と同じ正極合剤塗料を塗布して正極板3を作製した。
【0077】
実施例2として正極集電体2は、調質処理により結晶粒界組織形状を大きくし、軟化させた正極集電体2を用いた正極板3と実施例1と同じ負極合剤塗料を塗布した負極板16とを用いて、図7に示すような円筒形のリチウムイオン二次電池13を作製した。
【0078】
より具体的には、正極板3と負極板16とを厚みが20μmのポリエチレン微多孔フィルムのセパレータとしての多孔質絶縁層6を介して渦巻状に捲回した電極群17を100個作製した。この電極群17の中から10個を抜き出し有底円筒形の電池ケース18の内部に絶縁板19と共に収容し、電極群17の下部より導出した負極リード15を電池ケース18の底部に接続した。
【0079】
次いで、電極群17の上部より導出した正極リード14を封口板20に接続し、電池ケース18に所定量のEC,DMC,MEC混合溶媒にLiPFを1MとVCを3重量部溶解させた非水系電解液(図示せず)を注液した。
【0080】
その後、電池ケース18の開口部に封口ガスケット21を周縁に取り付けた封口板20を挿入し、電池ケース18の開口部を内方向に折り曲げて、かしめ封口して調質処理により軟化した正極集電体2を用いた円筒形のリチウムイオン二次電池13を実施例2とした。
【0081】
上述のようにして作製した100個のリチウムイオン二次電池の充放電を500サイクル繰り返したが、サイクル劣化は生じなかった。また、充放電を500サイクル繰り返した後のリチウムイオン二次電池100個の中から20個を抜き出し電極群17を解体したところ、リチウム析出、電極板の破断、電極板の座屈、電極合剤層の脱落などの不具合は見られなかった。
【実施例3】
【0082】
本発明の一実施例について図面を参照しながら説明する。図2に示したように厚みが15μmのアルミニウム箔の長手方向における正極集電体2の幅W1が40mmに、実施例1と同じ正極合剤塗料を塗布して正極板3を作製した。
【0083】
以上の正極集電体2を用いた正極板3と実施例1と同じ負極合剤塗料を塗布した負極板16の幅W2が50mmとして、図7に示すような円筒形のリチウムイオン二次電池13を作製した。
【0084】
より具体的には、正極板3と負極板16とを厚みが20μmのポリエチレン微多孔フィルムのセパレータとしての多孔質絶縁層6を介して渦巻状に捲回した電極群17を100個作製した。この電極群17の中から10個を抜き出し有底円筒形の電池ケース18の内部に絶縁板19と共に収容し、電極群17の下部より導出した負極リード15を電池ケース18の底部に接続した。
【0085】
次いで、電極群17の上部より導出した正極リード14を封口板20に接続し、電池ケース18に所定量のEC,DMC,MEC混合溶媒にLiPFを1MとVCを3重量部溶解させた非水系電解液(図示せず)を注液した。
【0086】
その後、電池ケース18の開口部に封口ガスケット21を周縁に取り付けた封口板20を挿入し、電池ケース18の開口部を内方向に折り曲げて、かしめ封口し負極集電体16の幅より狭くした正極集電体2を用いた円筒形のリチウムイオン二次電池13を実施例3とした。
【0087】
上述のようにして作製した100個のリチウムイオン二次電池の充放電を500サイクル繰り返したが、サイクル劣化は生じなかった。また、充放電を500サイクル繰り返した後のリチウムイオン二次電池100個の中から20個を抜き出し電極群17を解体したところ、リチウム析出、電極板の破断、電極板の座屈、電極合剤層の脱落などの不具合は見られなかった。また、正極集電体2は負極集電体5の引張り強度より小さければ、正極集電体2の幅は規制しない。
【実施例4】
【0088】
図3(a)に示したように、アルミニウム箔の厚みT1が15μmで、長さL1が10mmと、薄肉部7の厚みT2が12μmで、長さL2が10mmを連続的に設けた正極集電体2に、実施例1と同じ正極合剤塗料を塗布して正極板3を作製した。
【0089】
以上の正極集電体2を用いた正極板3と実施例1と同じ負極合剤塗料を塗布した負極板16とを用いて、図7に示すような円筒形のリチウムイオン二次電池13を作製した。より具体的には、正極板3と負極板16とを厚みが20μmのポリエチレン微多孔フィルムの多孔質絶縁層6を介して渦巻状に捲回した電極群17を100個作製した。
【0090】
この電極群17の中から10個を抜き出し有底円筒形の電池ケース18の内部に絶縁板19と共に収容し、電極群17の下部より導出した負極リード15を電池ケース18の底部に接続した。
【0091】
次いで、電極群17の上部より導出した正極リード14を封口板20に接続し、電池ケース18に所定量のEC,DMC,MEC混合溶媒にLiPFを1MとVCを3重量部溶解させた非水系電解液(図示せず)を注液した。その後、電池ケース18の開口部に封口ガスケット21を周縁に取り付けた封口板20を挿入し、電池ケース18の開口部を内方向に折り曲げて、かしめ封口することにより円筒形のリチウムイオン二次電池11を実施例4とした。
【0092】
上述のようにして作製した100個のリチウムイオン二次電池の充放電を500サイクル繰り返したが、サイクル劣化は生じなかった。また、充放電を500サイクル繰り返した後のリチウムイオン二次電池100個の中から20個を抜き出し電極群17を解体した
ところ、リチウム析出、電極板の破断、電極板の座屈、電極合剤層の脱落などの不具合は見られなかった。
【実施例5】
【0093】
図3(b)に示したように、厚みが15μmのアルミニウム箔の長手方向に折り曲げ高さH1が0.5mmでピッチP1が2mmの間隔で連続的に折り曲げ部8を設けた正極集電体2に、実施例1と同じ正極合剤塗料を塗布して正極板3を作製した。
【0094】
以上の正極集電体2を用いた正極板3と実施例1と同じ負極合剤塗料を塗布した負極板16とを用いて、図7に示すような円筒形のリチウムイオン二次電池13を作製した。より具体的には、正極板3と負極板16とを厚みが20μmのポリエチレン微多孔フィルムの多孔質絶縁層6を介して渦巻状に捲回した電極群17を100個作製した。
【0095】
この電極群17の中から10個を抜き出し有底円筒形の電池ケース18の内部に絶縁板19と共に収容し、電極群17の下部より導出した負極リード15を電池ケース18の底部に接続した。
【0096】
次いで、電極群17の上部より導出した正極リード14を封口板20に接続し、電池ケース18に所定量のEC,8DMC,MEC混合溶媒にLiPFを1MとVCを3重量部溶解させた非水系電解液(図示せず)を注液した。
【0097】
その後、電池ケース18の開口部に封口ガスケット21を周縁に取り付けた封口板20を挿入し、電池ケース18の開口部を内方向に折り曲げて、かしめ封口することにより円筒形のリチウムイオン二次電池13を実施例5とした。
【0098】
上述のようにして作製した100個のリチウムイオン二次電池の充放電を500サイクル繰り返したが、サイクル劣化は生じなかった。また、充放電を500サイクル繰り返した後のリチウムイオン二次電池100個の中から20個を抜き出し電極群17を解体したところ、リチウム析出、電極板の破断、電極板の座屈、電極合剤層の脱落などの不具合は見られなかった。
【実施例6】
【0099】
図4(a)に示したように、厚みが15μmのアルミニウム箔の長手方向に対して直交する切込み幅が2mmを長手方向に10mm間隔に切込み9を入れた正極集電体2に、実施例1と同じ正極合剤塗料を塗布して正極板3を作製した。
【0100】
以上の正極集電体2を用いた正極板3と実施例1と同じ負極合剤塗料を塗布した負極板16とを用いて、図7に示すような円筒形のリチウムイオン二次電池13を作製した。より具体的には、正極板3と負極板16とを厚みが20μmのポリエチレン微多孔フィルムの多孔質絶縁層6を介して渦巻状に捲回した電極群17を100個作製した。
【0101】
この電極群17の中から10個を抜き出し有底円筒形の電池ケース18の内部に絶縁板19と共に収容し、電極群17の下部より導出した負極リード15を電池ケース18の底部に接続した。
【0102】
次いで、電極群17の上部より導出した正極リード14を封口板20に接続し、電池ケース18に所定量のEC,DMC,MEC混合溶媒にLiPFを1MとVCを3重量部溶解させた非水系電解液(図示せず)を注液した。
【0103】
その後、電池ケース18の開口部に封口ガスケット21を周縁に取り付けた封口板20
を挿入し、電池ケース18の開口部を内方向に折り曲げて、かしめ封口することにより円筒形のリチウムイオン二次電池13を実施例6とした。
【0104】
上述のようにして作製した100個のリチウムイオン二次電池の充放電を500サイクル繰り返したが、サイクル劣化は生じなかった。また、充放電を500サイクル繰り返した後のリチウムイオン二次電池100個の中から20個を抜き出し電極群17を解体したところ、リチウム析出、電極板の破断、電極板の座屈、電極合剤層の脱落などの不具合は見られなかった。
【実施例7】
【0105】
図4(b)に示したように、厚みが15μmのアルミニウム箔の両端部に長手方向に対して直交する切込み幅が2mmを長手方向に10mm間隔に切込み10を入れた正極集電体2に、実施例1と同じ正極合剤塗料を塗布して正極板3を作製した。
【0106】
以上の正極集電体2を用いた正極板3と実施例1と同じ負極合剤塗料を塗布した負極板16とを用いて、図7に示すような円筒形のリチウムイオン二次電池13を作製した。より具体的には、正極板3と負極板16とを厚みが20μmのポリエチレン微多孔フィルムの多孔質絶縁層6を介して渦巻状に捲回した電極群17を100個作製した。
【0107】
この電極群17の中から10個を抜き出し有底円筒形の電池ケース18の内部に絶縁板19と共に収容し、電極群17の下部より導出した負極リード15を電池ケース18の底部に接続した。
【0108】
次いで、電極群17の上部より導出した正極リード14を封口板20に接続し、電池ケース18に所定量のEC,DMC,MEC混合溶媒にLiPFを1MとVCを3重量部溶解させた非水系電解液(図示せず)を注液した。
【0109】
その後、電池ケース18の開口部に封口ガスケット21を周縁に取り付けた封口板20を挿入し、電池ケース18の開口部を内方向に折り曲げて、かしめ封口することにより円筒形のリチウムイオン二次電池13を実施例7とした。
【0110】
上述のようにして作製した100個のリチウムイオン二次電池の充放電を500サイクル繰り返したが、サイクル劣化は生じなかった。また、充放電を500サイクル繰り返した後のリチウムイオン二次電池100個の中から20個を抜き出し電極群17を解体したところ、リチウム析出、電極板の破断、電極板の座屈、電極合剤層の脱落などの不具合は見られなかった。
【実施例8】
【0111】
図5に示したように、厚みが15μmのアルミニウム箔の極集電体2の幅方向に断続的に幅が1mm、高さが1mmの切欠き部11を入れた正極集電体2に、実施例1と同じ正極合剤塗料を塗布して正極板3を作製した。
【0112】
以上の正極集電体2を用いた正極板3と実施例1と同じ負極合剤塗料を塗布した負極板16とを用いて、図7に示すような円筒形のリチウムイオン二次電池13を作製した。より具体的には、正極板3と負極板16とを厚みが20μmのポリエチレン微多孔フィルムの多孔質絶縁層6を介して渦巻状に捲回した電極群17を100個作製した。
【0113】
この電極群17の中から10個を抜き出し有底円筒形の電池ケース18の内部に絶縁板19と共に収容し、電極群17の下部より導出した負極リード15を電池ケース18の底部に接続した。
【0114】
次いで、電極群17の上部より導出した正極リード14を封口板20に接続し、電池ケース18に所定量のEC,DMC,MEC混合溶媒にLiPFを1MとVCを3重量部溶解させた非水系電解液(図示せず)を注液した。
【0115】
その後、電池ケース18の開口部に封口ガスケット21を周縁に取り付けた封口板20を挿入し、電池ケース18の開口部を内方向に折り曲げて、かしめ封口することにより円筒形のリチウムイオン二次電池13を実施例8とした。
【0116】
上述のようにして作製した100個のリチウムイオン二次電池の充放電を500サイクル繰り返したが、サイクル劣化は生じなかった。また、充放電を500サイクル繰り返した後のリチウムイオン二次電池100個の中から20個を抜き出し電極群17を解体したところ、リチウム析出、電極板の破断、電極板の座屈、電極合剤層の脱落などの不具合は見られなかった。
【実施例9】
【0117】
図6に示したように、厚みが15μmのアルミニウム箔をプレス加工および幅方向へ展開することにより交差状に長辺が4mm、短辺が2mmの切込み部12を設けたエキスパンド状の正極集電体2に、実施例1と同じ正極合剤塗料を塗布して正極板3を作製した。
【0118】
以上の正極集電体2を用いた正極板3と実施例1と同じ負極合剤塗料を塗布した負極板16とを用いて、図7に示すような円筒形のリチウムイオン二次電池13を作製した。より具体的には、正極板3と負極板16とを厚みが20μmのポリエチレン微多孔フィルムの多孔質絶縁層6を介して渦巻状に捲回した電極群17を100個作製した。
【0119】
この電極群17の中から10個を抜き出し有底円筒形の電池ケース18の内部に絶縁板19と共に収容し、電極群17の下部より導出した負極リード15を電池ケース18の底部に接続した。
【0120】
次いで、電極群17の上部より導出した正極リード14を封口板20に接続し、電池ケース18に所定量のEC,DMC,MEC混合溶媒にLiPFを1MとVCを3重量部溶解させた非水系電解液(図示せず)を注液した。その後、電池ケース18の開口部に封口ガスケット21を周縁に取り付けた封口板20を挿入し、電池ケース18の開口部を内方向に折り曲げて、かしめ封口することにより円筒形のリチウムイオン二次電池13を実施例9とした。
【0121】
上述のようにして作製した100個のリチウムイオン二次電池の充放電を500サイクル繰り返したが、サイクル劣化は生じなかった。また、充放電を500サイクル繰り返した後のリチウムイオン二次電池100個の中から20個を抜き出し電極群17を解体したところ、リチウム析出、電極板の破断、電極板の座屈、電極合剤層の脱落などの不具合は見られなかった。
【0122】
(比較例1)
厚みが15μmに均一で何の加工も施されていないアルミニウム箔の正極集電体2に、実施例1と同じ正極合剤塗料を塗布して正極板3を作製した。
【0123】
正極集電体2を用いた正極板3と負極合剤塗料を塗布した負極板16とを用い、正極板3と負極板16との間に多孔質絶縁層6を介して渦巻状に捲回した電極群17を収納した図7に示すように作製した円筒形のリチウムイオン二次電池13を比較例1とした。
【0124】
上述のようにして、比較例1の正極板3と実施例1〜9の正極板3を使用して作製した渦巻状に捲回した電極群17をそれぞれ100個ずつ作製した後に、100個の中から90個を抜き出して電極群17を解体して観察したところ、全ての電極群17に正極板3と負極板16の電極板の破断や電極合剤層の脱落などの不具合は認められなかった。
【0125】
さらに、比較例1の正極板3と実施例1〜8の正極板3を使用して作製した渦巻状に捲回した電極群17を使用してそれぞれ10個ずつのリチウムイオン二次電池13の充放電を500サイクル繰り返したところ、比較例1の正極板3の破断が80%の確率で発生し、電極合剤層の脱落などの不具合が発生した。
【0126】
一方、実施例1〜9の正極板3を使用して作製した電極群17は、電極板の破断や電極合剤層の脱落などの不具合は認められなかった。
【0127】
以上の結果から、比較例1の正極集電体2は、充電時に負極板16の伸びに追従できずに破断するという結果となった。一方、本発明の実施例1〜9のように、正極集電体2を軟化して伸縮度を向上することにより負極板16の伸縮度に追従することができ、電極板の破断や電極合剤層の脱落を回避することが可能となり、良好な電池特性を維持できたものと考えられる。
【0128】
なお、実施例1〜9の少なくとも2つ以上組み合わせた正極集電体2を用いて、例えば実施例1の伸縮性の大きな合金の正極集電体2を、実施例3のように負極集電体16の幅より狭くした正極集電体2を用いて図7に示すような円筒形のリチウムイオン二次電池13を作製しても、正極板3の伸縮度を向上することが可能になり、負極板16の伸縮度に追従することができ、リチウム析出、電極板の破断、電極板の座屈、電極合剤層の脱落などの不具合を回避することが可能となり、良好な電池特性を維持できる。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明に係る非水系二次電池は、正極板の充放電時の伸縮度を向上し負極板の充放電時の伸縮度に追従させることにより、充放電時における正極板と負極板の膨張収縮による伸縮度の差に起因した正極板あるいは負極板に加わる応力を緩和することができ、電極板の破断または挫屈を抑制することが可能であり、これらに起因した内部短絡を抑制し安全性の高い非水系二次電池を提供することが可能であるため電子機器および通信機器の多機能化に伴って高容量化が望まれている携帯用電源等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明における充放電時の正極板、負極板および多孔質絶縁層の状態を示す模式図
【図2】本発明の一実施の形態に係る電極板の要部の斜視図
【図3】(a)本発明の別の一実施の形態に係る正極集電体の要部の斜視図、(b)本発明の別の一実施の形態に係る正極集電体の要部の斜視図
【図4】(a)本発明の別の一実施の形態に係る正極集電体の要部の平面図、(b)本発明の別の一実施の形態に係る正極集電体の要部の平面図
【図5】本発明の別の一実施の形態に係る正極集電体の要部の平面図
【図6】本発明の別の一実施の形態に係る正極集電体の要部の平面図
【図7】本発明の一実施の形態に係る円筒形二次電池の一部切欠斜視図
【図8】(a)従来における非水系二次電池用電極群の部分断面図、(b)従来における非水系二次電池において電極板の破断が発生した場合の電極群の部分断面図、(c)従来における非水系二次電池において電極群の座屈が発生した場合の電極群の部分断面図
【図9】従来例における非水系二次電池の断面図
【図10】従来例における非水系二次電池の断面図
【符号の説明】
【0131】
1a,1b 正極合剤層
2 正極集電体
3 正極板
4a,4b 負極合剤層
5 負極集電体
6 多孔質絶縁体
7 肉薄部
8 折り曲げ部
9 切込み部
10 切込み部
11 切欠き部
12 切込み部
13 リチウム二次電池
14 正極リード
15 負極リード
16 負極板
17 電極群
18 電池ケース
19 絶縁板
20 封口板
21 封口板ガスケット
W1,W2 幅
A,B,C,D 伸縮度
T1,T2 厚み
L1,L2 長さ
H1 折り曲げ高さ
P1 ピッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともリチウム含有複合酸化物よりなる活物質、導電材および結着材を分散媒にて混練分散した正極合剤塗料を正極集電体の上に塗布して正極合剤層を形成した正極板と少なくともリチウムを保持しうる材料よりなる活物質および結着材を分散媒にて混練分散した負極合剤塗料を負極集電体の上に塗布して負極合剤層を形成した負極板との間に多孔質絶縁層を介在させて渦巻状に捲回または積層して電極群を構成し、この電極群を非水系電解液とともに電池ケースに封入した非水系二次電池であって、前記正極板の充放電時の伸縮度を負極板の充放電時の伸縮度に追従させる伸縮促進機能を正極板に持たせた構成としたことを特徴とする非水系二次電池。
【請求項2】
前記伸縮促進機能を前記正極集電体に設けたことを特徴とする請求項1記載の非水系二次電池。
【請求項3】
前記伸縮促進機能として、前記正極集電体を伸縮性の大きな合金で構成したことを特徴とする請求項2記載の非水系二次電池。
【請求項4】
前記伸縮促進機能として、前記正極集電体を調質処理により軟化させて構成したことを特徴とする請求項2記載の非水系二次電池。
【請求項5】
前記伸縮促進機能として、前記正極集電体の幅を負極集電体の幅より狭くして構成したことを特徴とする請求項2記載の非水系二次電池。
【請求項6】
前記伸縮促進機能として、前記正極集電体に長手方向に対して直交する肉薄部を設けて構成したことを特徴とする請求項2記載の非水系二次電池。
【請求項7】
前記伸縮促進機能として、前記正極集電体に長手方向に対して直交する折り曲げ部を設けて構成したことを特徴とする請求項2記載の非水系二次電池。
【請求項8】
前記伸縮促進機能として、前記正極集電体に幅方向に切込み部を設けて構成したことを特徴とする請求項2記載の非水系二次電池。
【請求項9】
前記切込み部を前記正極集電体の幅方向の両端部に設けて構成したことを特徴とする請求項8記載の非水系二次電池。
【請求項10】
前記伸縮促進機能として、前記正極集電体の幅方向に切欠き部を設けて構成したことを特徴とする請求項2記載の非水系二次電池。
【請求項11】
前記伸縮促進機能として、前記正極集電体をエキスパンド状に形成したことを特徴とする請求項2記載の非水系二次電池。
【請求項12】
前記伸縮促進機能として、伸縮性の大きな合金を用いる、調質処理により軟化させる、幅を狭くする、長手方向に直交する肉薄部を設ける、長手方向に対して直交する折り曲げ部を設ける、長手方向に対して直交する切込み部を設ける、幅方向に断続的に切欠き部を設ける、またはエキスパンド状に形成する構成の少なくとも2つを組み合わせて構成したことを特徴とする請求項2記載の非水系二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−62049(P2010−62049A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−227933(P2008−227933)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】