説明

非水電解質2次電池

【課題】高出力でサイクル特性の安定した非水電解質2次電池を提供する。
【解決手段】正極集電体5,11および正極集電体5,11に塗布された正極活物質6を含む正極7,12と、負極集電体2,9および負極集電体2,9に塗布された負極活物質3を含む負極4,10とを備えている。また、イオン透過性および電気絶縁性を有するセパレータ8と、正極7,12、負極4,10およびセパレータ8が浸漬される非水電解液16とを備えている。正極および負極の少なくとも一方は、正極および負極が並ぶ方向に直交する方向における端部から吸収して内部を透過させた非水電解液16を、正極および負極が並ぶ方向に透過させる第1空隙が形成された第1透過電極を含む。正極および負極の少なくとも一方は、正極および負極が並ぶ方向において、一方の側面から他方の側面に非水電解液16を透過させる第2空隙が形成された第2透過電極を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質2次電池に関し、特に、高容量の非水電解質2次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池をはじめとする二次電池は、高容量および高エネルギー密度を有し、かつ、貯蔵性能および充放電の繰り返し特性に優れるため、広く民生機器に利用されている。近年、住宅用または発電所用のエネルギー貯蔵などを目的として、リチウムイオン二次電池の大容量化が要求されている。そのため、積層型リチウムイオン二次電池において、単位電極当たりの大面積化、電極の多層化、または電極の厚膜化が図られている。
【0003】
電池を大型化すると、電解液が電池全体に行き渡りにくくなり、電池作製における非水電解液の注液時間の増加、または、部分的な非水電解液の枯渇による電池特性の劣化といった問題が生じる。
【0004】
そこで、非水電解液を注液しやすくした非水電解質2次電池を開示した先行文献として、特許文献1(特開2000−195525号公報)および特許文献2(特開2001−236945号公報)がある。特許文献1に記載された非水電解質2次電池においては、正極または負極に溝を設けることで非水電解液を電池全体に行き渡らせている。特許文献2に記載された非水電解質2次電池においては、電極に空隙を設けることで非水電解液の注入を容易にしている。
【0005】
図13は、従来の非水電解質2次電池の構造を模式的に示す断面図である。図13に示すように、従来の非水電解質2次電池40には、互いに対向する正極46と負極43とが交互に配置されている。正極46と負極43との間のそれぞれにセパレータ48が配置されている。正極46、負極43およびセパレータ48は、筐体15の内部において、非水電解液16に浸漬されている。
【0006】
正極46は、正極集電体44および正極集電体44に塗布された正極活物質45から構成されている。負極43は、負極集電体41および負極集電体41に塗布された負極活物質42から構成されている。セパレータ48は、正極46と負極43との電気的な絶縁を図りつつ、非水電解液16を保持して正極46と負極43との間のイオン伝導を確保している。正極集電体44および負極集電体41に図示しない配線が接続されて、外部に電気が取り出される。
【0007】
図14は、従来例の非水電解質2次電池の正極集電体および負極集電体を模式的に示す平面図である。図14に示すように、従来の非水電解質2次電池40の正極46を構成する正極集電体44および正極活物質45には、特許文献2に記載されているような空隙49が形成されている。同様に、負極43を構成する負極集電体41および負極活物質42には、空隙49が形成されている。
【0008】
空隙49は、非水電解液16の通路となり、正極46および負極43が並ぶ方向において、正極46および負極43の一方の側面から他方の側面に非水電解液を透過させる。
【0009】
図15は、従来の非水電解質2次電池において、非水電解液を注入する際の非水電解液の流れ方を模式的に示す分解断面図である。図15においては、非水電解液16の流動方向47を表すために、正極46、負極43およびセパレータ48を間隔を開けて示している。
【0010】
図15に示すように、従来の非水電解質2次電池においては、正極46および負極43が並ぶ方向に直交する方向におけるセパレータ48の端部から、流動方向47に向けて非水電解液16を吸収して、セパレータ48の内部を浸透させることにより、正極46および負極43の中心部に非水電解液を透過させている。
【0011】
上記の通り、正極46および負極43には空隙49が形成されているため、非水電解液16に接する最も外側に配置された正極46または負極43から電池の中心部に向けて非水電解液16が透過している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000−195525号公報
【特許文献2】特開2001−236945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1に記載された非水電解質2次電池においては、正極と負極との間の距離が、溝が形成されている箇所とそれ以外の箇所とにおいて異なるため、電池の内部抵抗が局所的に増加して、非水電解質2次電池のサイクル特性が低下する。
【0014】
特許文献2に記載された非水電解質2次電池においては、セパレータの内部への非水電解液の浸透により、電極の積層されている方向に直交する方向における非水電解液の注入を行なっているため、電極の面積が大型化すると、電極の端部から浸透した非水電解液が、電極の中心部に十分に浸透しない。
【0015】
また、正極および負極に空隙を設けることにより、電池の中心部に向けて非水電解質を透過させているが、最も外側に配置された正極または負極から離れるにつれて、透過される非水電解液の量が減少する。その結果、電池の中心部に配置された電極の中心部には、非水電解液がほとんど浸透しないため、正極および負極の利用効率が低下して、電池の出力が低下する問題がある。
【0016】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、電極間距離のばらつきを抑えつつ、非水電解液を電池の中心部に配置された電極の中心部に十分浸透させることにより、高出力でサイクル特性の安定した非水電解質2次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に基づく非水電解質2次電池は、正極集電体および正極集電体に塗布された正極活物質を含む正極と、負極集電体および負極集電体に塗布された負極活物質を含む負極とを備えている。また、非水電解質2次電池は、イオン透過性および電気絶縁性を有するセパレータと、正極、負極およびセパレータが浸漬される非水電解液とを備えている。互いに対向する正極と負極とが交互に配置され、セパレータは、正極と負極との間にそれぞれ配置されている。正極および負極の少なくとも一方は、正極および負極が並ぶ方向に直交する方向における端部から吸収して内部を透過させた非水電解液を、正極および負極が並ぶ方向に透過させる第1空隙が形成された第1透過電極を含み、正極および負極の少なくとも一方は、正極および負極が並ぶ方向において、一方の側面から他方の側面に非水電解液を透過させる第2空隙が形成された第2透過電極を含む。
【0018】
上記の非水電解質2次電池においては、正極および負極が並ぶ方向に直交する方向に電極の内部を透過させた非水電解液を、正極および負極が並ぶ方向に透過させるため、電極間距離のばらつきを抑えつつ、電池の中心部に配置された電極の中心部に非水電解液を十分浸透させることができる。その結果、電池内全体に非水電解液を十分に浸透させて、非水電解質2次電池の放電出力を高めつつ、非水電解質2次電池のサイクル特性を安定させることができる。
【0019】
好ましくは、第2透過電極においては、第2透過電極の配置が、最も外側に配置された、正極または負極から離れるにしたがって、および、第1透過電極から離れるにしたがって、第2空隙の空隙率が大きくなる。
【0020】
上記の非水電解質2次電池においては、非水電解液が浸透しにくい、最も外側に配置された電極および第1透過電極から離れた位置に、空隙率の大きい第2透過電極を配置することにより、電池内全体に非水電解液を十分に浸透させている。その結果、非水電解質2次電池の放電出力を高めている。
【0021】
好ましくは、正極および負極の少なくとも一方は、非水電解液を透過させない非透過電極を含み、非透過電極が、正極および負極の配置において、最も外側の両端に配置されている。
【0022】
上記の非水電解質2次電池においては、非水電解液が最も外側に配置された正極または負極の外側に偏在することを抑制することができるため、非水電解液の消耗を抑制して電池の長寿命化を図ることができる。
【0023】
本発明に基づく非水電解質2次電池においては、第1透過電極が、空隙を有する金属材料からなる正極集電体および負極集電体の少なくとも一方を含むようにしてもよい。
【0024】
本発明に基づく非水電解質2次電池においては、第1透過電極が、空隙を有する樹脂材料からなる正極集電体および負極集電体の少なくとも一方を含むようにしてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、正極および負極が並ぶ方向に直交する方向に電極の内部を透過させた非水電解液を、正極および負極が並ぶ方向に透過させるため、電極間距離のばらつきを抑えつつ、電池の中心部に配置された電極の中心部に非水電解液を十分浸透させることができる。その結果、電池内全体に非水電解液を十分に浸透させて、非水電解質2次電池の放電出力を高めつつ、非水電解質2次電池のサイクル特性を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態1に係る非水電解質2次電池の構成を模式的に示す断面図である。
【図2】同実施形態に係る非水電解質2次電池における第2透過電極の正極集電体および負極集電体を模式的に示す平面図である。
【図3】同実施形態に係る非水電解質2次電池における第2透過電極の正極および負極を模式的に示す平面図である。
【図4】同実施形態に係る非水電解質2次電池における第1透過電極の正極集電体および負極集電体を模式的に示す斜視図である。
【図5】同実施形態に係る非水電解質2次電池における第1透過電極の正極および負極を模式的に示す斜視図である。
【図6】同実施形態に係る非水電解質2次電池において、非水電解液を注入する際の非水電解液の流れ方を模式的に示す分解断面図である。
【図7】空隙率の異なる電極を空隙率の小さい方から順に配置した際の非水電解液の流れる方向を示す模式図である。
【図8】電極の空隙率と非水電解液の流れる方向との関係を示す図である。
【図9】本発明の実施形態2に係る非水電解質2次電池において、非水電解液を注入する際の非水電解液の流れ方を模式的に示す分解断面図である。
【図10】同実施の形態に係る、電極の空隙率と非水電解液の流れる方向との関係を示す図である。
【図11】本発明の実施形態3に係る非水電解質2次電池の構造を模式的に示す断面図である。
【図12】同実施形態に係る非透過電極の構成を模式的に示す平面図である。
【図13】従来の非水電解質2次電池の構造を模式的に示す断面図である。
【図14】従来例の非水電解質2次電池の正極集電体および負極集電体を模式的に示す平面図である。
【図15】従来の非水電解質2次電池において、非水電解液を注入する際の非水電解液の流れ方を模式的に示す分解断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に基づいた実施形態1における非水電解質2次電池について図を参照して説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には、同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。また、図面における長さ、大きさ、幅などの寸法関係は、図面の明瞭化および簡略化のために適宜変更されており、実際の寸法を表していない。
【0028】
実施形態1
図1は、本発明の実施形態1に係る非水電解質2次電池の構成を模式的に示す断面図である。図1に示すように、本発明の実施形態1に係る非水電解質2次電池1には、互いに対向する正極7,12と負極4,10とが交互に配置されている。正極7,12と負極4,10との間のそれぞれにセパレータ8が配置されている。正極7,12、負極4,10およびセパレータ8は、筐体15の内部において、非水電解液16に浸漬されている。
【0029】
正極7,12は、正極集電体5,11および正極集電体5,11に塗布された正極活物質6から構成されている。負極4,10は、負極集電体2,9および負極集電体2,9に塗布された負極活物質3から構成されている。本実施形態においては、正極集電体5,11の両側面に正極活物質6を、負極集電体2,9の両側面に負極活物質3を塗布しているが、それぞれの集電体の片方の側面にのみ活物質を塗布してもよい。
【0030】
セパレータ8は、正極7,12と負極4,10との間を電気的に絶縁しつつ、非水電解液16を保持して正極7,12と負極4,10との間のイオン伝導を確保している。正極集電体5,11および負極集電体2,9に図示しない配線が接続されて、外部に電気が取り出される。
【0031】
本実施形態においては、正極7,12および負極4,10が並ぶ方向に直交する方向における端部から吸収して内部を透過させた非水電解液16を、正極7,12および負極4,10が並ぶ方向に透過させる、第1透過電極である正極12と負極10とを一つずつ形成している。第1透過電極は、少なくとも1つ形成されていればよく、正極および負極の少なくとも一方に形成されていればよい。
【0032】
図2は、本実施形態に係る非水電解質2次電池における第2透過電極の正極集電体および負極集電体を模式的に示す平面図である。図2に示すように、本実施形態に係る第2透過電極の正極集電体5および負極集電体2には、複数の空隙17が形成されている。空隙17は、正極集電体5および負極集電体2の一方の側面から他方の側面に貫通するように形成されている。
【0033】
図3は、本実施形態に係る非水電解質2次電池における第2透過電極の正極および負極を模式的に示す平面図である。図3に示すように、本実施形態に係る第2透過電極の正極7および負極4には、正極7および負極4の一方の側面から他方の側面に貫通する第2空隙18が形成されている。正極活物質6および負極活物質3は、後述する粒子群から構成されているため、それ自体に微細な空隙を多数有している。その微細な空隙と、上記の空隙17とが連通することにより第2空隙18が構成されている。
【0034】
第2空隙18は、非水電解質2次電池1において、非水電解液16の通路となり、正極7および負極4が並ぶ方向において、正極7および負極4の一方の側面から他方の側面に非水電解液16を透過させる機能を有する。
【0035】
本実施形態においては、第1透過電極である正極12以外の全ての正極7を第2透過電極で形成したが、第2空隙18が形成されおらず、非水電解液を透過しない非透過電極が一部含まれていてもよい。また、第1透過電極である負極10以外の全ての負極4を第2透過電極で形成したが、第2空隙18が形成されおらず、非水電解液を透過しない非透過電極が一部含まれていてもよい。
【0036】
図4は、本実施形態に係る非水電解質2次電池における第1透過電極の正極集電体および負極集電体を模式的に示す斜視図である。図4に示すように、本実施形態に係る第1透過電極の正極集電体11および負極集電体9には、正極集電体11および負極集電体9の端部から、正極集電体11および負極集電体9の側面に連通した空隙19が形成されている。
【0037】
図5は、本実施形態に係る非水電解質2次電池における第1透過電極の正極および負極を模式的に示す斜視図である。図5に示すように、本実施形態に係る第1透過電極の正極12および負極10には、第1空隙20が形成されている。正極活物質6および負極活物質3は、後述する粒子群から構成されているため、それ自体に微細な空隙を多数有している。その微細な空隙と、上記の空隙19とが連通することにより第1空隙20が構成されている。
【0038】
図6は、本実施形態に係る非水電解質2次電池において、非水電解液を注入する際の非水電解液の流れ方を模式的に示す分解断面図である。図6においては、非水電解液16の流動方向13,14を表すために、正極7,12、負極4,10およびセパレータ8を間隔を開けて示している。
【0039】
図6に示すように、第1透過電極である正極12および負極10においては、正極集電体11および負極集電体9に形成された第1空隙20により、正極12および負極10の端部から流動方向14に非水電解液を十分に吸収することができる。正極集電体11および負極集電体9の内部を透過した非水電解液16は、正極7,12および負極4,10の並ぶ方向に透過される。
【0040】
正極12および負極10を非水電解液16が浸透しにくい、最も外側に配置された正極7または負極4から離れた電池の中心部に配置することにより、電池全体に円滑に十分に非水電解液16を注入することができる。また、複数の正極12および負極10を配置する場合には、等間隔に配置することが好ましい。このようにすることにより、非水電解液16が不足することによる電極の利用効率の低下を抑制することができる。
【0041】
また、本実施形態においては、非水電解液16を正極集電体11および負極集電体9の内部ならびにセパレータ8の内部を浸透させて透過させるため、電極の平面度を維持することができる。その結果、非水電解質2次電池の放電出力を高めつつ、非水電解質2次電池のサイクル特性を安定させることができる。
【0042】
以下、本実施形態に係る非水電解質2次電池の各構成要素について説明する。
(正極集電体および負極集電体)
第2透過電極を構成する正極集電体5および負極集電体2としては、アルミニウム、ステンレス、チタン、銅およびニッケルなどの金属からなる箔を用いることができる。電気化学的安定性、延伸性および経済性などを考慮すると、正極集電体5としてアルミニウム箔、負極集電体2として銅箔を用いることが好ましい。
【0043】
正極集電体5および負極集電体2のそれぞれに形成される空隙17の空隙率は、非水電解液16の透過度と集電体強度とを考慮して、40%以上90%以下であることが好ましい。
【0044】
電池の高容量化のために電極を厚くする場合、電極の集電性および電極の形状の維持のために、正極集電体5および負極集電体2を厚くしてもよい。この場合の空隙率は、集電力、活物質保持力および集電体強度を考慮して、70%以上99%以下であることが好ましい。正極集電体5および負極集電体2として、たとえば、発泡金属、金属繊維布、不織布に金属層を設けたもの、金属メッシュ、パンチングメタル、ラス網などを用いることができる。
【0045】
第1透過電極を構成する正極集電体11および負極集電体9としては、空隙を有する金属材料、たとえば、発泡金属、金属繊維織布および金属繊維不織布などを用いることができる。また、正極集電体11および負極集電体9は、上記の金属箔を二枚用いて、発泡金属、金属繊維織布および金属繊維不織布などをこの金属箔で挟み込んだ多層構造で形成されてもよい。
【0046】
第1透過電極を構成する正極集電体11を構成する材料としては、Liの酸化還元電位に対して2.0V〜5.0Vの電位において安定な金属が好ましく、たとえば、アルミニウムを用いることが好ましい。第1透過電極を構成する負極集電体9を構成する材料としては、Liの酸化還元電位に対して0V〜3.5Vの電位において安定で、かつ、Liと合金化しにくい金属が好ましく、たとえば、銅を用いることが好ましい。
【0047】
また、第1透過電極を構成する正極集電体11および負極集電体9は、空隙を有する樹脂材料、たとえば、所定の機械的強度を持つ、不織布、織布、微多孔性フィルムなどを上記の空隙が形成された金属箔で挟み込んだ多層構造で形成されてもよい。樹脂材料として、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド系、ポリアミド、セルロース系樹脂などを用いることができる。この樹脂材料の代わりにガラス繊維で形成された不織布および織布を用いてもよい。
【0048】
正極集電体11および負極集電体9に形成される空隙19の空隙率は、正極集電体11および負極集電体9に十分に非水電解液16が浸透して保持されるために40%以上であることが好ましく、正極12および負極10の構造を維持するために99%以下であることが好ましい。より好ましくは、空隙率が70%以上99%以下である。
【0049】
正極集電体11および負極集電体9の厚みは、薄すぎると非水電解液16の浸透および保持が不十分となるため10μm以上であることが好ましく、厚すぎると非水電解液16を必要量以上に保持してしまうため1000μm以下であることが好ましい。
(正極活物質)
正極7,12は、正極活物質6、導電剤、増粘材および結着剤を含有するペーストが、正極集電体5,11に塗布された後、乾燥されることにより作製される。正極活物質6としては、Liを含有した酸化物を用いることができる。具体的には、LiCoO2、LiNiO2、LiFeO2、LiMnO2、LiMn24、および、これらの酸化物中の遷移金属を一部他の金属元素で置換した化合物などを、正極活物質6として用いることができる。
【0050】
上記の酸化物において、電池の通常の使用時に、正極7,12が保有するLi量の80%以上を電池反応に利用し得るものを正極活物質6として用いることが好ましい。そのような正極活物質6を用いることにより、電池の過充電などを抑制して電池の安全性を高めることができる。
【0051】
このような正極活物質6としては、LiMn24などのスピネル構造を有する化合物、または、LiMPO4(Mは、Co,Ni,Mn,Feから選ばれる少なくとも1種以上の元素)で表されるオリビン構造を有する化合物などを用いることができる。
【0052】
上記の化合物において、MnまたはFeを含む正極活物質6は、コストを低減することができるため好ましい。さらに、電池の安全性および充電電圧の観点から、LiFePO4が好ましい。LiFePO4は、全ての酸素が強固な共有結合によって燐と結合しており、温度上昇による酸素の放出が起こりにくいため、LiFePO4を正極活物質6に用いた電池は安全性に優れている。
【0053】
正極7,12に用いられる正極活物質6の粒径が小さすぎた場合、正極活物質6がセパレータ8を通り抜けて、ショートが発生する。正極7,12に用いられる正極活物質6の粒径が大きすぎた場合、正極7,12の成形が困難になる。よって、正極活物質6の粒径は、0.2μm以上50μm以下であることが好ましい。
【0054】
正極活物質6と後述する結着剤および増粘剤などとが混合されて作製されるペーストが塗布された、第2透過電極である正極7は、非水電解液16を保持するために、所定の範囲の空隙率を有していることが好ましい。ペーストを乾燥させて得られた正極7の空隙率は、通常、40%以上80%以下の範囲である。乾燥後のペーストをプレスした場合、作製される正極7の平面度が向上するが、正極7の導電性と電解液保持率とを考慮して、空隙率が15%以上50%以下の範囲であることが好ましい。
(負極活物質)
負極4,10は、負極活物質3、増粘材、結着剤を含有するペーストが、負極集電体2,9に塗布された後、乾燥されることにより作製される。負極活物質3としては、天然黒鉛、鱗片状、塊状、繊維状、ウィスカー状、球状、破砕状などの粒子状の人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、メソフェーズピッチ粉末、等方性ピッチ粉末の黒鉛化品などの高結晶性黒鉛、樹脂焼成炭などの難黒鉛化炭素を負極活物質3として用いることができる。
【0055】
また、負極活物質3として、上記の材料を適宜混合して用いてもよい。さらに、負極活物質3として、錫の酸化物、シリコン系の材料、および、容量の大きい合金系の材料を用いてもよい。
【0056】
黒鉛質炭素材料は、充放電反応の電位の平坦性が高く、金属リチウムの溶解析出電位に近いため、電池の高エネルギ密度化を図ることができ、負極活物質3として好ましい。また、表面に非晶質炭素が付着した黒鉛粉末材料は、充放電に伴う非水電解質の分解反応を抑え、電池内におけるガス発生を少なくできるため、負極活物質3として好ましい。
【0057】
負極活物質3としての黒鉛質炭素材料の平均粒径は、2μm以上50μm以下が好ましく、5μm以上30μm以下がより好ましい。負極活物質3の平均粒径が、2μmより小さい場合、セパレータ8に形成されている空隙を負極活物質3が通り抜けることがある。この場合、空隙を通り抜けた負極活物質3は、電池をショートさせる。一方、負極活物質3の平均粒径が50μmより大きい場合、負極4の成形が困難になる。
【0058】
負極活物質3としての黒鉛質炭素材料の比表面積は、1m2/g以上100m2/g以下が好ましく、2m2/g以上20m2/g以下がより好ましい。負極活物質3の比表面積が、1m2/gより小さい場合、Liの挿入反応および脱離反応ができる部位が少なくなり、電池の大電流放電性能が低下することがある。一方、負極活物質3の比表面積が、100m2/gより大きい場合、負極活物質3の表面上の非水電解質の分解反応が起こる場所が増え、電池内においてガス発生などが引き起こされることがある。
【0059】
なお、本実施形態において、平均粒径および比表面積は、日本ベル社製の自動ガス/蒸気吸着量測定装置(BELSORP18)を用いて測定した。
【0060】
負極集電体2として銅箔を用いた場合、電池容量と電極抵抗の観点から、負極活物質3の厚さは、20μm以上200μm以下の範囲であることが好ましい。
【0061】
負極活物質3と後述する結着剤および増粘剤などとが混合されて作製されるペーストが塗布された、第2透過電極である負極4は、非水電解液16を保持するために、所定の範囲の空隙率を有していることが好ましい。ペーストを乾燥させて得られた負極4の空隙率は、通常、40%以上80%以下の範囲である。乾燥後のペーストをプレスした場合、作製される負極4の平面度が向上するが、負極4の導電性と電解液保持率とを考慮して、空隙率が15%以上50%以下の範囲であることが好ましい。
(結着剤)
結着剤として、活物質粒子同士および活物質粒子と集電体とを結着させることができ、かつ、電池充放電時の電位が安定なものであれば特に限定はされない。たとえば、スチレンブタジエンゴムまたはポリフッ化ビニリデンなどを用いることができる。これらの結着剤の添加量が少ない場合、結着力が不足し、添加量が多い場合、電池抵抗を上昇させる原因となる。よって、たとえば、スチレンブタジエンゴムを結着剤に用いた場合、活物質に対する結着剤重量部範囲が、0.5〜8.0であることが好ましい。
(増粘剤)
結着剤としてスチレンブタジエンゴムなどの水系分散型のものを用いた場合、活物質粒子の分散を保ち、かつ、ペーストの集電体への塗布を容易にするため、増粘剤を加える必要がある。増粘材としては、これらの要件を満たし、かつ、電池充放電時の電位において安定なものであれば特に限定はされない。たとえば、カルボキシメチルセルロースなどを用いることができる。増粘材の添加量は、増粘材の種類および添加条件によって異なるが、活物質の分散性およびペースト塗布時の粘度を考慮して、活物質に対する増粘材重量部が0.5〜2.0の範囲であることが好ましい。
(セパレータ)
セパレータ8としては、イオン透過度が大きく、所定の機械的強度を持ち、電気的絶縁性を有し、非水電解液16によって侵されない薄膜を用いることができる。セパレータ8として、たとえば、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド系、ポリアミド、アラミド系、セルロース系樹脂、ガラス繊維からなる、不織布、織布または微多孔性フィルムを用いることができる。
【0062】
具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、6ナイロン、6,6ナイロン、全芳香族ポリアミド、などをセパレータ8の材料として用いることができる。また、これらの材料を適宜混合して、セパレータ8に用いてもよい。
【0063】
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなどからなる不織布または微多孔質膜が、品質の安定性などの点から、セパレータ8の材料として好ましい。これらの合成樹脂の不織布または微多孔質膜からなるセパレータ8は、電池が異常発熱した場合に、セパレータ8が熱により溶解し、正極7,12と負極4,10との間を遮断する機能を有している。
【0064】
セパレータ8の厚みは特に限定されないが、必要量の非水電解液16を保持することができ、かつ、正極7,12と負極4,10との短絡を防止する厚さを有している必要がある。セパレータ8の厚さは、たとえば、0.01mm以上1mm以下であり、好ましくは0.02mm以上0.05mm以下である。また、セパレータ8を構成する材料は、低い電池内部抵抗を維持しつつ、電池内部短絡を防ぐだけの強度を確保するために、透気度が1秒/cm3以上500秒/cm3以下であることが好ましい。
(非水電解液)
非水電解液16とは、電解質塩を有機溶剤に溶解して作製される溶液である。電解質塩としては、たとえば、Liをカチオン成分とするものが好ましく、ホウフッ化リチウム、六フッ化リン酸リチウム、過塩素酸リチウム、フッ素置換有機スルホン酸などの有機酸をアニオン成分とするリチウム塩を用いることができる。
【0065】
有機溶媒としては、上記の電解質塩を溶解できるものであれば、特に限定されない。たとえば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどの環状炭酸エステル類、γ―ブチロラクトンなどの環状エステル類、テトラヒドロフランおよびジメトキシエタンなどのエーテル類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートなどの鎖状炭酸エステル類を有機溶剤として用いることができる。これらの有機溶剤は、単独で、または2種類以上の混合物として用いることができる。
【0066】
上記の材料により構成される非水電解液16の濃度は、電極またはセパレータへの浸透力を考慮すると、2.5mPa・s(25℃)以下であることが好ましい。
【0067】
上記の非水電解質2次電池においては、正極7,12および負極4,10が並ぶ方向に直交する方向に電極の内部を透過させた非水電解液16を、正極7,12および負極4,10が並ぶ方向に透過させるため、電極間距離のばらつきを抑えつつ、電極の中心部に非水電解液を十分浸透させることができる。その結果、電池内全体に非水電解液16を十分に浸透させて、非水電解質2次電池1の放電出力を高めつつ、非水電解質2次電池1のサイクル特性を安定させることができる。
【0068】
以下、本発明の実施形態2について、図面を参照して説明する。
実施形態2
図7は、空隙率の異なる電極を空隙率の小さい方から順に配置した際の非水電解液の流れる方向を示す模式図である。図7に示すように、第2透過電極である負極4A,4B,4C、および、第2透過電極である正極7A,7Bを順に配置した。負極4Aには、第2空隙18Aが設けられている。負極4Bには、第2空隙18Cが設けられている。負極4Cには、第2空隙18Eが設けられている。正極7Aには、第2空隙18Bが設けられている。正極7Bには、第2空隙18Dが設けられている。
【0069】
第2空隙18A〜18Eの空隙率は、第2空隙18Aから第2空隙18Eに向けて順に大きくなるように形成されている。このように配置された電極に注入される非水電解液16は、空隙率の大きな電極に向けて流れるため、矢印21方向に流れる。
【0070】
図8は、電極の空隙率と非水電解液の流れる方向との関係を示す図である。図8において、横軸に電極位置を、縦軸に電極の空隙率を、非水電解液16の流れる方向を矢印で示している。図8に示すように、非水電解液16は、空隙率の低い電極から、空隙率の高い電極に向けて流れるため、矢印21方向に流れる。
【0071】
図9は、本発明の実施形態2に係る非水電解質2次電池において、非水電解液を注入する際の非水電解液の流れ方を模式的に示す分解断面図である。図9においては、非水電解液16の流動方向13,14を表すために、正極7,12、負極4,10およびセパレータ8を間隔を開けて示している。
【0072】
非水電解液16は、第1透過電極である正極12および負極10において、電極が並ぶ方向に直交する方向の電極の端部から中心部に向けて、流動方向14に十分に浸透する。また、最も外側に配置された、正極7または負極4には、その外側の側面が注入される非水電解液16に接しているため、非水電解液16が浸透しやすい。
【0073】
図9において、第1透過電極である正極12に隣接して配置される負極4Zには、正極12から非水電解液16が十分に透過する。また、最も外側に配置されている負極4Xにも、非水電解液16が十分に透過する。負極4Zおよび負極4Xから離れるにつれて、非水電解液16が浸透しにくくなり、負極4Yに最も浸透しにくい。
【0074】
そこで、負極4Yの空隙率を高くし、負極4X,4Zの空隙率を低くすることにより、非水電解液16が負極4Yに浸透しやすくすることができる。図10は、本実施の形態に係る、電極の空隙率と非水電解液の流れる方向との関係を示す図である。図10において、横軸に電極の配置を、縦軸に電極の空隙率を、非水電解液16の流れる方向を矢印21で示している。
【0075】
図10に示すように、非水電解液16は、空隙率の低い負極4X,4Zから、空隙率の高い負極4Yに向けて流れるため、矢印21方向に流れる。このように電極を配置した非水電解質2次電池においては、非水電解液16が浸透しにくい、最も外側に配置された電極および第1透過電極から離れた位置に、空隙率の大きい第2透過電極を配置することにより、電池内全体に非水電解液を十分に浸透させている。その結果、非水電解質2次電池の放電出力を高めている。
【0076】
なお、本実施形態においては、第1透過電極である正極12と最も外側に配置された負極4Xとの範囲についてのみならず、第1透過電極である負極10と最も外側に配置された負極4との範囲についても同様に、第2透過電極の第2空隙の空隙率を変化させている。なお、第1透過電極の配置により、適宜、第2透過電極の第2空隙の空隙率は、変更されるものである。上記以外の構成については、実施形態1と同様であるため、説明を繰り返さない。
【0077】
以下、本発明の実施形態3について、図を参照して説明する。
実施形態3
図11は、本発明の実施形態3に係る非水電解質2次電池の構造を模式的に示す断面図である。図11に示すように、本発明の実施形態3の非水電解質2次電池30においては、最も外側に配置された負極23が、非水電解液16を透過させない非透過電極で形成されている。その他の構成については、実施形態1または2と同様であるため、説明を繰り返さない。なお、本実施形態においては、非透過電極が負極23であるが、最も外側に配置される電極が正極7である場合には、非透過電極が正極であってもよい。
【0078】
図12は、本実施形態に係る非透過電極の構成を模式的に示す平面図である。図12に示すように、本実施形態に係る非透過電極である負極23は、負極集電体22に負極活物質3が塗布されて形成されている。負極集電体22は、実施形態1の負極集電体2において空隙17が形成されていないものを用いることができる。
【0079】
本実施形態に係る非水電解質2次電池においては、非水電解液16が最も外側に配置された負極23の外側に偏在することを抑制することができるため、非水電解液16の消耗を抑制して、非水電解質2次電池30の長寿命化を図ることができる。
【0080】
以下、実施形態1に係る非水電解質2次電池において、非水電解液の浸透に要する時間を、従来の非水電解質2次電池と比較した実験例について示す。
【0081】
実験例1
実施形態1係る非水電解質2次電池1を以下のように作製した。正極活物質6としてリン酸鉄リチウムを、正極導電剤として人口黒鉛を、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを用い、これらの組成を100:4:8としてペースト状の正極材料を作製した。正極集電体5として、厚みが20μmのアルミニウム箔を用いた。正極集電体5の両側面に、ペースト状の正極材料を塗布した後、乾燥させて正極7を作製した。
【0082】
正極材料の正極集電体5への単位面積当たりの塗布量は20mg/cm2とし、正極活物質6の厚みは140μmとした。正極集電体5のアルミニウム箔には、空隙率が50%となるようにパンチングを施した。
【0083】
負極活物質3として天然黒鉛を、負極導電剤として人口黒鉛を、結着剤としてスチレンブタジエンゴムを、増粘材としてカルボキシメチルセルロースを用い、これらの組成を100:10:1:1としてペースト状の負極材料を作製した。負極集電体2として、厚みが10μmの銅箔を用いた。負極集電体2の両側面に、ペースト状の負極材料を塗布した後、乾燥させて負極4を作製した。
【0084】
負極材料の負極集電体2への単位面積当たりの塗布量は10mg/cm2とし、負極活物質3の厚みは65μmとした。負極集電体2の銅箔には、空孔率が50%となるようにパンチングを施した。
【0085】
第1透過電極である負極10を構成する負極集電体9として、発泡ニッケルを上記の銅箔で挟み込んだ三層構造の集電体を作製した。第1透過電極である正極12を構成する正極集電体11として、発泡ニッケルを上記のアルミ箔で挟み込んだ三層構造の集電体を作製した。発泡ニッケルは、空隙率90%、厚み500μmのものを用いた。
【0086】
セパレータ8は、空隙率50%、厚み20μmのオレフィン系樹脂の不織布で形成した。非水電解液16においては、溶媒として、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを1:2の割合で混合したものを用いた。この溶媒に、電解質として1%LiPF6を、添加剤として1%ビニレンカーボネートを溶解させた。非水電解液16の粘度は、1.0mPa・sであった。
【0087】
上記のように作製した正極7,12と負極4,10とを交互に積層した。正極7,12と負極4,10との間に、セパレータ8を配置した。積層した電極における両方の外側に負極4を配置し、負極4を9枚、負極10を1枚、正極7を8枚、正極12を1枚、セパレータを9枚積層した。負極10を5層目に、正極12を6層目に配置した。
【0088】
電極の面積は、縦70mm、横140mmとした。非水電解液16を真空含浸によって、電極全体に十分に行き渡らせた後に、ラミネートにより密閉することで、実施形態1に係る非水電解質2次電池を作製した。
【0089】
比較例として、第1透過電極が設けられていない非水電解質2次電池を作製した。正極活物質としてリン酸鉄リチウムを、正極導電剤として人口黒鉛を、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを用い、これらの組成を100:4:8としてペースト状の正極材料を作製した。正極集電体として、厚みが20μmのアルミニウム箔を用いた。正極集電体の両側面に、ペースト状の正極材料を塗布した後、乾燥させて正極を作製した。正極材料の正極集電体への単位面積当たりの塗布量は20mg/cm2とし、電極活物質の厚みは140μmとした。
【0090】
負極活物質として天然黒鉛を、負極導電剤として人口黒鉛を、結着剤としてスチレンブタジエンゴムを、増粘材としてカルボキシメチルセルロースを用い、これらの組成を100:10:1:1としてペースト状の負極材料を作製した。負極集電体として、厚みが10μmの銅箔を用いた。負極集電体の両側面に、ペースト状の負極材料を塗布した後、乾燥させて負極を作製した。負極材料の負極集電体への単位面積当たりの塗布量は10mg/cm2とし、電極活物質の厚みは65μmとした。
【0091】
セパレータは、空隙率50%、厚み20μmのオレフィン系樹脂の不織布で形成した。非水電解液においては、溶媒としてエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを1:2の割合で混合したものを用いた。この溶媒に、電解質として1%LiPF6を、添加剤として1%ビニレンカーボネートを溶解させた。非水電解液の粘度は、1.0mPa・sであった。
【0092】
上記のように作製した正極と負極とを交互に積層した。正極と負極との間に、セパレータを配置した。積層した電極における両方の外側に負極を配置し、負極を10枚、正極を9枚、セパレータを9枚積層した。電極の面積は、縦70mm、横140mmとした。非水電解液は真空含浸によって、電極全体に十分に行き渡らせた後に、ラミネートにより密閉させることで、電池を作製した。
【0093】
実施形態1に係る非水電解質2次電池および比較例の非水電解質2次電池に、非水電解液16を注入した際の真空含浸の時間と電池のインピーダンスとの関係を測定した。表1は、その測定結果を示したものである。なお、表1に示した測定結果は、それぞれ5サンプルを作製して測定した結果の平均値である。
【0094】
【表1】

【0095】
実施形態1に係る非水電解質2次電池は、比較例の非水電解質2次電池より、インピーダンスが早く低下して安定値に移行した。また、安定値の値は、比較例の非水電解質2次電池が4.2Ωであるのに対して、実施形態1に係る非水電解質2次電池は4.0Ωであり低かった。
【0096】
非水電解液16がより均一に電池内部に浸透するほど、電池のインピーダンスは低くなる。よって、実施形態1に係る非水電解質2次電池の方が、比較例の非水電解質2次電池より、短時間で均一に十分量の非水電解液16が、セパレータおよび電極中に浸透したことを示している。これは、非水電解液16の浸透経路が、実施形態1に係る非水電解質2次電池の方が多く存在するためであると考えられ、本特許の有効性が示唆される。
【0097】
以下、実施形態1に係る非水電解質2次電池において、繰り返し充放電した際の電池容量を、従来の非水電解質2次電池と比較した実験例について示す。
【0098】
実験例2
実験例1における実施形態1に係る非水電解質2次電池および比較例の非水電解質2次電池と同様の構造を有する電池をそれぞれ作製して、充放電サイクル測定を行なった。表2は、その測定結果を示したものである。なお、表2に示した測定結果は、それぞれ3サンプルを作製して測定した結果の平均値である。
【0099】
【表2】

【0100】
実施形態1に係る非水電解質2次電池は、500サイクルの充放電後の容量保持率が92%であり、83%である比較例の非水電解質2次電池よりサイクル特性が良好であった。これは、実施形態1に係る非水電解質2次電池が、比較例の非水電解質2次電池より多くの非水電解液を電池内において均一に保有しているためと考えられ、本特許の有効性が示唆される。
【0101】
なお、上記の実施形態および実験例における、負極、正極および樹脂などの粒子の粒径は、島津製作所製の粒子径分布測定装置(SALD−1100)を用いて測定した。また、空隙率(Z%)は、活物質の真密度X(g/cc)、実密度Y(g/cc)として、Z=100×((1/Y)−(1/X))/(1/Y)よりもとめた値を示している。
【0102】
なお、今回開示した上記実施形態および実験例はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態および実験例のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0103】
1,30,40 非水電解質2次電池、2,9,22,41 負極集電体、3,42 負極活物質、4,10,23,43 負極、5,11,44 正極集電体、6,45 正極活物質、7,12,46 正極、8,48 セパレータ、13,14 流動方向、15 筐体、16 非水電解液、17,18,19,20,49 空隙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体および該正極集電体に塗布された正極活物質を含む正極と、
負極集電体および該負極集電体に塗布された負極活物質を含む負極と、
イオン透過性および電気絶縁性を有するセパレータと、
前記正極、前記負極および前記セパレータが浸漬される非水電解液と
を備え、
互いに対向する前記正極と前記負極とが交互に配置され、
前記セパレータは、前記正極と前記負極との間にそれぞれ配置され、
前記正極および前記負極の少なくとも一方は、前記正極および前記負極が並ぶ方向に直交する方向における端部から吸収して内部を透過させた前記非水電解液を、前記正極および前記負極が並ぶ方向に透過させる第1空隙が形成された第1透過電極を含み、
前記正極および前記負極の少なくとも一方は、前記正極および前記負極が並ぶ方向において、一方の側面から他方の側面に前記非水電解液を透過させる第2空隙が形成された第2透過電極を含む、非水電解質2次電池。
【請求項2】
前記第2透過電極においては、前記第2透過電極の配置が、最も外側に配置された、前記正極または前記負極から離れるにしたがって、および、前記第1透過電極から離れるにしたがって、前記第2空隙の空隙率が大きくなる、請求項1に記載の非水電解質2次電池。
【請求項3】
前記正極および前記負極の少なくとも一方は、前記非水電解液を透過させない非透過電極を含み、
前記非透過電極が、前記正極および前記負極において、最も外側の両端に配置された、請求項1または2に記載の非水電解質2次電池。
【請求項4】
前記第1透過電極が、空隙を有する金属材料からなる前記正極集電体および前記負極集電体の少なくとも一方を含む、請求項1から3のいずれかに記載された非水電解質2次電池。
【請求項5】
前記第1透過電極が、空隙を有する樹脂材料からなる前記正極集電体および前記負極集電体の少なくとも一方を含む、請求項1から3のいずれかに記載された非水電解質2次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−113667(P2011−113667A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266471(P2009−266471)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】