説明

非粘着性コーティング及びその形成方法

柔軟性のある基材に使用される、フルオロポリマー、アクリルポリマー、そしてポリオール及び/若しくはジオールを有する非粘着性コーティングである。アクリルポリマーのポリオール及び/若しくはジオールに対する重量比が、約90:10と約10:90の間であり、好ましくは、約50:50である。アクリルポリマーとポリオール若しくはジオールのフルオロポリマーに対する重量比が、約100:60であるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
可撓性のある面を非粘着性コーティングで覆うことが、時に求められる。剛性の面(例えば、調理器具)に用いられる従来のコーティングは、可撓性のある面と共に曲げたり撓めたり出来ない為、条件に合わない。この問題が生じる1つの特定の用途は、印刷機用の加圧ローラーに関係する。
【0002】
通常、現在のプリンターは、加熱フューザーローラーと、それに対抗する加圧ローラーとを有している。紙がローラー間に送り込まれると、加熱フューザーローラーがトナーを紙の上に溶解し(言い換えれば融合し)目的とする画像を形成する。加圧ローラーは、紙がフューザーローラーに接するように紙に充分な圧力を加え、そして画像は紙に写される。加圧ローラーは、一般的に、なんらかのゴムで覆われたスチールやアルミニウムの芯を有する。加圧ローラーのゴムは、撓んでフューザーローラーと紙の形状特性に適合出来るよう、可撓性を有している。目的とする画像の質が高くなればなるほど、またプリンターや複写機の印刷速度が速くなればなるほど、溶解した際のインクがにじむ事のないように、加圧ローラーのゴムは、より柔軟でなければならない。最近の高速プリンターのゴムは、デュロメーター硬度の非常に低いシリコーンゴムが一般的である。複写機のなかには、一つのローラーがフューザーローラーや加圧ローラー、又は、その両方の機能を果たすものや、トナーの剥離を易くする為にシリコーンオイルを使用するものがある。
【0003】
紙とインクがローラーに付着するのを防ぐことに加え、柔軟なゴムが化学的劣化や熱劣化するのを防ぐためにも、加圧ローラーに非粘着性コーティングを施すことが求められる。しかしながら、このような柔軟なゴムに非粘着性コーティングを施すことには、多くの問題がある。まず、このようなきわめて柔軟なシリコーンゴムに、従来の非粘着性コーティングを付着させることは、非粘着性コーティングが、コーティングが塗布されるシリコーンゴムと一体となって曲がったり撓んだりできなければならないために、困難である。非粘着性コーティングに充分な可撓性のない場合、そのコーティングは、使用中に、ひび割れたり、ひび割れて加圧ローラーから剥がれるなどする。このことは、これにともなう画像の印字品質を低下させる。次に、従来のフルオロポリマーのコーティングは、加圧ローラーに使用される柔軟なシリコーンゴムに比べると堅い。結果として、非粘着性コーティングが加圧ローラーの事実上のデュロメーター硬度を高め、ローラーの適合性を低下させる。これは、高画質の画像を生む極めて柔軟な加圧ローラーの目的と、逆の結果を招くこととなる。最後に、シリコーンオイルが使用されるこれらの状況では、シリコーンオイルがシリコーンゴムに作用を及ぼし、シリコーンゴムの膨潤をひき起こすことがあり得る。シリコーンゴムの膨潤は、画像の質とローラーの寿命にかかわる為に望ましくない。
【0004】
加圧ローラーの非粘着性コーティングの従来の試みは、フルオロポリマー製スリーブをローラー表面に施すことを含む。しかしながら、従来技術であるフルオロポリマー製スリーブの問題は、加圧ローラーの事実上のデュロメーター硬度が許容できないほど高くなることや、フルオロポリマー製スリーブとゴムローラー間の剪断応力により薄片に裂ける速度が高いことなどを含む。スリーブは摩耗する(即ち、薄片に裂ける)と、加圧ローラーから剥がれ落ち、そしてしわが寄る。しわが寄った加圧ローラーは、大変粗悪な質の画像を生じ、そして高額な費用で取り替えなければならない。この理由から、柔軟な面に使用可能で、更に、耐久性があり、実際的で、低コストの非粘着性コーティングの必要性がある。
(簡単な要約)
【0005】
非粘着性コーティングの組成物を提供する。コーティングの組成物は、アクリルポリマーと、ポリオール若しくはジオールと、フルオロポリマーとを有する。アクリルポリマーのポリオールに対する重量比は、約90:10と約10:90の間である。
【発明の詳細な説明】
【0006】
本発明に係る非粘着性コーティングは、求められる如何なる硬さの基材への塗布にも使用することができる。コーティングが施される基材の種類は、本発明の範囲を限定しない。本発明に係るコーティングは、柔軟な面のコーティングをするのに好適に使用されるが、堅い面(例えば、調理器具)に使用することができる。“柔軟な面”とは、外力や圧力を受けた場合に歪みが生じたり、曲がったり、撓んだり、変形したりする面である。一つの実施例では、本発明に係る非粘着性コーティングは、高速デジタル複写機や高速デジタルプリンターなどの印刷装置に使用される柔軟なゴム製の加圧ローラーをコーティングするのに使用される。本発明の非粘着性コーティングを施し得る柔軟なゴムの例は、これに限定されないが、シリコーンゴムやEPDMゴム(エチレン・プロピレン・ゴム)やネオプレンである。
【0007】
本発明の非粘着性コーティングは、一層加工としても多層加工としても基材に施すことができる。多層加工の例は、下塗り(primer coat)と仕上げ塗り(top coat)とから成る二層加工である。二層加工は、コーティングをより耐久性のあるものとし、より費用は掛かるが、一層加工に比べより優れた剥離性を有する。
【0008】
本発明の非粘着性コーティングは、アクリルポリマーと、ジオール若しくはポリオール、又は、それらの混合物を有する。アクリルポリマーのジオール若しくはポリオールに対する重量比は、好ましくは、90:10と10:90の間である。一般的に、アクリルポリマーのジオール若しくはポリオールに対する比率が増すほど、コーティングは、強固となるが可撓性は低下する。従って、アクリルポリマーのジオール若しくはポリオールに対する好ましい比率は、コーティングされる基材のデュロメーター硬度と、必要なコーティングの強度とによって決まる。例えば、アクリルポリマーのジオール若しくはポリオールに対する比率が15:85以下であれば、デュロメーター硬度10未満の基材に適している。(別段述べられないかぎり、デュロメーターでの全ての表示はショアA型に元づくものである。)デュロメーター硬度10を超える基材には、50:50以上の比率を用いることができる。
【0009】
実用的なアクリルポリマーは、ポリマーと、アクリル酸エステルのコポリマーと、例えばアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、類似のモノマーなどのメタクリル酸とを含む。好ましいアクリルポリマーは、水酸基である。好ましいアクリルポリマーは、エマルジョンでは、S.C.ジョンソン&サン社(S.C.Johnson & Son)の商品名JONCRYL 1540であり、コロイド状ディスパージョンでは、ノヴェオン(Noveon Inc.)からCARBOSET 514Hの商品名で市販されている。本発明のコーティング組成物では一種類以上の異なるアクリルポリマーを混合しても良い。例えば、JONCRYL 1540とCARBOSET 514Hの混合物を使用することができる。このような混合物は、光沢や耐薬品性といったコーティングの特性を最適化するのに有用である。
【0010】
本発明のコーティングは、ジオール若しくはポリオール、又は、それらの混合物を含む。ここでは、ジオールは、1分子あたり2つのヒドロキシル基を有するアルコールであり、ポリオールは、1分子あたり3つ以上のヒドロキシル基を有するアルコールである。実用的なジオールは、ウレタンか、ポリエステルか、ポリアクリレートか、ハイブリッドアクリルウレタンを含む。好ましいジオールは、キング工業(King Industries)からFLEX XM7304の商品名で市販されている。実用的なポリオールは、ウレタンか、ポリエステルか、ポリアクリレートか、ハイブリッドアクリルウレタンを含む。好ましいポリオールは、キング工業(King Industries)からK−FLEX XM6304の商品名で市販されている。
【0011】
メラミンが、アクリルポリマーとジオール若しくはポリオールとを架橋するのに用いられるのが好ましい。好ましいメラミンは、メチレーテッドメラミンホルムアルデヒド樹脂であり、サイテック社(Cytec Industries)よりCYMEL325及びCYMEL303の商品名で市販されている。別の好ましいメチレーテッドメラミンとヘキサメトキシメチルメラミンは、ユーシービー社(UCB Inc.)からRESIMENE745の商品名で市販されている。架橋は、ブロック酸触媒で触媒作用を受けることが好ましい。好ましい触媒は、酸強度の高い酸触媒のパラトルエンスルホン酸(P−TSA)であり、キング工業(King Industries)からK−CURE 1040Wの商品名で市販されている。
【0012】
本発明の非粘着性コーティングは、またフルオロポリマーを含む。フルオロポリマーは、コーティングの非粘着特性に関与している。市販のフルオロポリマーは無数にあり、ここで選定された特定のフルオロポリマーは、本発明の範囲を限定するものではない。本発明のフルオロポリマー成分は、一種類のフルオロポリマーを有しても、または、一種類以上のフルオロポリマーの混合物若しくは配合物を有してもよい。アクリルポリマーとポリオール若しくはジオールのフルオロポリマーに対する割合(即ち、(アクリルポリマー+ポリオール/ジオール):フルオロポリマー)は、一層塗り加工の組成物においては、約100:60が好ましく、中間塗りとして塗布される目的の組成物であれば約90:10と約70:30の間であることが好ましい。特定の用途によって、仕上げ塗りの組成物では、アクリルポリマーとポリオール若しくはジオールのフルオロポリマーに対する割合は、約70:30と約30:70の間であるのが望ましい。シリコーンオイルを使わない複写機に使用されるローラーは、アクリルポリマーとポリオール若しくはジオールのフルオロポリマーに対する割合が約30:70である仕上げ塗りを有するのが好ましい。
【0013】
典型的なフルオロポリマーは、テトラフルオロエチレン‐パーフルオロメチルビニルエーテルコポリマー(MFA)、テトラフルオロエチレン‐ヘキサフルオロプロピレン(FEP)、及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。FEPが最も好ましいフルオロポリマーである。好ましいFEPは、水系ラテックのスディスパージョンでは、ダイニオン(Dyneon LLC)から、DYNEON FEP X 6300の商品名で市販されている。PTFEは、他の好ましいフルオロポリマーである。好ましいPTFEは、微粒子のものでは、旭化学(Asahi Chemical)からWITCON TL−10の商品名で市販されている。
【0014】
条件に合った他のフルオロポリマーの例は、これに限定されないが、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレンクロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、テトラフルオロエチレン(TFE)、パーフルオロ(エチレン ビニル エーテル)(PEVE)コポリマー(PFA)、TEFとパーフルオロ(プロピル ビニル エーテル)(PPVE)コポリマー(PFA)、ポリビニルフルオライド(PVF)、及びフッ化ポリビニルデン(PVDF)である。フルオロポリマー成分は、また、選択された特性を向上するコモノマー調整剤を含んでもよい。
【0015】
フルオロポリマーは、微粒子のものとすることができる。また、フルオロポリマーは、水分中にフルオロポリマーを分散したディスパージョン状とすることもできる。“ディスパージョン”ということは、フルオロポリマー粒子が安定して水分中に分散され、そのため、ディスパージョンが使用される前に粒子が沈殿することはない、ということを意味する。ときとして、n‐メチルピロリドン、ブチロラクトン、高沸点芳香族の化合物溶剤、アルコール、若しくはこれらの混合物などの有機溶剤を含むことが望ましい。
【0016】
本発明のコーティング加工は、シランを含む。シランは、一層加工又は多重層加工の一層目の組成物の成分として含まれても良い。好ましいシランは、ビニルトリメトキシシラン、γ‐メタシクロキシプロピルトリメトキシ シラン、ビニルトリス(t‐ブチルペルオキシ)シラン、及び部分的に加水分解されたシランである。一層加工の組成物に使用される好ましいシランは、ダウコン(Dowcon)から市販されているZ−6020である。シランは、非粘着性コーティングの組成物の総重量の1.0と2.5%の間の割合を有するのが好ましい。多重層加工では、好ましいシランは、信越化学工業株式会社(Shin−Etsu Chemical Co.)より市販されているX33‐156‐5である。また、シランを含む一層加工の組成物は、多重層加工の下塗り(または、他の層)として応用することができる。
【0017】
本発明のコーティング加工は、剥離を良くするために添加剤を含むことができる。好ましい剥離添加剤は、ブチルグリコール溶剤混合のポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン共重合体であり、ビーワイケーケミー(BYK−Chemie GmbH)よりBYK−301の商品名で市販されている。
【0018】
本発明のコーティング加工は、分散剤を含んでもよい。好ましい分散剤は、アセチレンジオール分散剤であり、エアープロダクツ・アンド・ケミカルズ(Air Products and Chemicals, Inc.)から市販されるSURFYNOL CT324、又は、SURFYNOL 104BCである。
【0019】
以下は、一層加工組成物の具体例である。組成は、29.9%のアクリルエマルジョン(水分中43%固形分)、2.7%のPTFE微粒子、4.5%のプロピレングリコール、8.3%のプロピレングリコール、2.7%のアルキルフェノール ポリエチレンオキサイド、13.2%のポリエステルジオール(30%の乳濁液)0.3%のブロック酸触媒、0.9%のシラン、0.5%のアセチレンジオール分散剤、そして9.3%のメチレーテッドメラミンホルムアルデヒド樹脂を有する。組成物の残分は、水分と添加物である。各添加物は、組成の2%未満である。添加物は、周知の消泡剤、フロー剤、分散剤、界面活性剤、安定剤、増粘剤及び/若しくは充填剤を含む。
【0020】
一層加工の組成物は、53ミクロン級のメッシュフィルターを通して濾過され、慣用の、すなわち、大量低圧法(HVLP)を用いて基材に噴霧される。乾燥したコーティング層の厚みは、約20から約30ミクロンである。
【0021】
コーティングは、慣用の炉で、約10分、約232℃(約450F°)で硬化される。加圧ローラーを覆うのに通常使用されるシリコーンゴムは、約260℃〜288℃(約500−550F°)で熱分解を起こす。従って、シリコーンゴムの温度が260℃(500F°)より低く保たれるような方法で、コーティング層を硬化するのが望ましい。
【0022】
上述したように、本発明の非粘着性コーティングは、二層加工に用いることができる。一番目の塗布層は、次のフルオロポリマーを含む層が基材に付着する助けとなる下塗りである。下塗りは、選定された基材に効果的に付着する下塗りであればどのようなものでも良い。基材がシリコーンゴム又は他の水酸性官能基を有するゴム(EPDMゴムなど)を有する場合、下塗りは、上述のシラン下塗剤が好ましい。下塗剤成分は、一種類の下塗剤を有することもできるが、また、下塗を構成するのに、異なる下塗剤が、混合若しくは結合されてもよい。下塗りは、1分子分から数ミクロンの間の極めて薄い層を有するように塗布されることが好ましい。下塗りは、基材に、布でふくか、若しくは慣用の、すなわち、HVLPスプレーガンで塗布することができる。塗布された下塗りは、概して非常に揮発しやすく、いかなる望ましい手段によって乾燥されてもよい、しかしながら、慣用の炉で約66℃(150°F)、約3−5分で、若しくは空気温度(〜25℃(77°F))で約15分乾燥されるのが好ましい。
【0023】
仕上げ塗りの組成の第一の実施例は、23.0%のアクリルポリマーエマルジョン(水分中43%固形分)、13.1%のPTFE微粒子、6.5%のプロピレングリコール、8.3%のプロピレングリコール、2.1%のアルキルフェノールポリエチレンオキサイド、10.2%のポリウレタンジオール(30%の乳濁液)、1%のシラン、0.5%のアセチレンジオール分散剤、そして0.3%のブロック酸触媒を有する。組成物の残分は、水分と添加物である。各添加物は、組成の2%未満を形成する。添加物は、周知の消泡剤、フロー剤、分散剤、界面活性剤、安定剤、増粘剤及び/若しくは充填剤を有する。この組成は、アクリルポリマーのジオールに対する割合が約85:15であり、アクリルポリマーとポリオールのフルオロポリマーに対する割合が、約70:30である。
【0024】
仕上げ塗りの組成の第ニの実施例は、約7%のアクリルポリマーエマルジョン、22%のポリウレタンポリオール、7.1%のメチレーテッドメラミンホルムアルデヒド樹脂、17.8%のFEPディスパージョン、0.3%のブロック酸触媒、6.7%のプロピレングリコール、そして5%のポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン共重合体剥離剤を有する。組成物の残分は、水分と添加物である。各添加物は、組成の2%未満を形成する。添加物は、周知の消泡剤、フロー剤、分散剤、界面活性剤、安定剤、増粘剤及び/若しくは充填剤を有する。この組成は、アクリルポリマーのポリオールに対する割合が約85:15であり、アクリルポリマーとポリオールのフルオロポリマーに対する割合が、約70:30である。この仕上げ塗りの実施例は、コーティングされたローラーがシリコーンオイルと接触する場合に特に有用である。
【0025】
仕上げ塗り層の好ましい厚みは、基材の硬度によって変わる。基材のデュロメーター硬度が、10未満であれば、仕上げ塗り層の厚みは、5ミクロン未満が好ましい。基材のデュロメーター硬度が、10から20の間であれば、仕上げ塗り層の厚みは、7ミクロン未満であるのが好ましい。基材のデュロメーター硬度が、20より大きければ、仕上げ塗り層の厚みは、10ミクロンより厚いことが好ましく、最も好ましくは、約20−30ミクロンである。仕上げ塗りは、乾燥された下塗りの上に直接スプレーされ、そして約10分間、約204℃(約400F°)で硬化される。コーティングがシリコーンオイルを使う複写機に使用される場合、そのコーティングは、より低い温度、例えば約177℃(約350F°)で硬化されるのが望ましい。より低い温度は、フルオロポリマーのネットワーク構造が完全に溶けて連続結合するのを防ぐために好ましい。連続結合していないフルオロポリマーのネットワーク構造は、シリコーンオイルを吸収する隙間を作り、複写機の効率よい操作を促進することになるので、好ましい。
【0026】
他の実施例では、本発明の非粘着性コーティングは、三層加工で施すことができる。一番目の塗布層は、次のフルオロポリマーを含む層が基材に付着する助けとなる下塗りである。下塗りは、選定された基材に効果的に付着する下塗りであればどのようなものでも良い。基材がシリコーンゴム又は他の水酸性官能基を有するゴム(EPDMゴムなどの)を有する場合、下塗りは、上述したようにシラン下塗剤が好ましい。下塗剤成分は、一種類の下塗剤を有してもよいし、また、下塗剤を構成するのに、異なる下塗剤が、混合若しくは結合されてもよい。下塗りは、1分子分から数ミクロンの間の極めて薄い層で塗布することが好ましい。下塗りは、基材に、布でふくか、若しくは慣用の、すなわち、HVLPスプレーガンで塗布されてもよい。塗布された下塗りは、概して非常に揮発しやすく、いかなる望ましい手段によって乾燥されてもよい、しかしながら、慣用の炉で約66℃(150°F)、約3−5分、若しくは空気温度(〜25℃(77°F))で約15分乾燥されるのが好ましい。
【0027】
上述の二層加工に対応する仕上げ塗りの第一の実施例は、三層加工の中間塗りにも条件を満たしている。中間塗りの組成の他の実施例はおよそ、7%のアクリルポリマーエマルジョン、22%のポリウレタンポリオール、7.1%のメチレーテッドメラミンホルムアルデヒド樹脂、17.8%のFEPディスパージョン、0.5%のアセチレンジオール分散剤、0.3%のブロック酸触媒、そして6.7%のプロピレングリコールを有する。組成物の残分は、水分と添加物である。各添加物は、組成の2%未満である。添加物は、周知の消泡剤、フロー剤、分散剤、界面活性剤、安定剤、増粘剤及び/若しくは充填剤を含む。この組成は、アクリルポリマーのポリオールに対する割合が約85:15であり、アクリルポリマーとポリオールのフルオロポリマーに対する割合が、約70:30である。
【0028】
三層加工の好ましい仕上げ塗りは、更に、剥離添加剤と、高い割合のフルオロポリマーを有する。好ましい仕上げ塗りの組成はおよそ、4.1%のアクリルポリマーエマルジョン、12.3%のポリウレタンポリオール、3.8%のポリプロピレングリコール、3.9%のメチレーテッドメラミンホルムアルデヒド樹脂、53.9%のFEPディスパージョン、そして5.7%のポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン共重合体のような剥離添加剤を有する。この組成は、アクリルポリマーのジオールに対する割合が約85:15であり、アクリルポリマーとポリオールのフルオロポリマーに対する割合が、約30:70である。
【0029】
上記の三層加工は、約10分、約288℃(約550F°)で硬化される。フルオロポリマーが溶けて連続結合するように、加工は、充分な温度と充分な時間で硬化されるのが好ましい
【0030】
ここに記述したコーティングのどれもが、導電性のあるものとして形成することが出来る。高速複写機においては、紙に多くの静電気が蓄積し、画質に欠陥を生じさせやすい。このために、静電気を放散させる導電性のあるコーティングを有することが望まれ得る。上述のコーティングは、アクゾノベルコーティング(Akzo−Nobel Coating Inc.)より市販されているKETJEN BLACKのような導電性顔料を加えることで、導電性とされてもよい。
【0031】
以上では、特に一層及び二層のコーティングの実施例が述べられているが、層の数は、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の非粘着性コーティングはまた、三層以上のコーティング層を有することができる。例えば、2種類の異なる下塗りを用いることも好ましいし、また、一層以上の中間塗りを加えることも望ましい。
【0032】
以上では、本発明の特定の実施例が例示され説明されたが、本発明は、それらの例や説明に限定されるべきではない。変更及び変型が、請求項の範囲内で、本発明の一部として組み入れられ具体化され得ることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.アクリルポリマー;
b.ジオール、ポリオール、これらの混合物の中から選定されるアルコール;そして
c.フルオロポリマー;
を有し、
該アクリルポリマーの該アルコールに対する重量比が、約90:10と約10:90の間である、非粘着性コーティング組成物。
【請求項2】
さらに、シランを有する請求項1に記載の非粘着性コーティング組成物。
【請求項3】
該フルオロポリマーがPTFEである請求項1に記載の非粘着性コーティング組成物。
【請求項4】
該アルコールが、ポリウレタンポリオール、ポリエステルジオール、これらの混合物の中から選定される請求項1に記載の非粘着性コーティング組成物。
【請求項5】
該アクリルポリマーの該アルコールに対する重量比が、約50:50である請求項1に記載の非粘着性コーティング組成物。
【請求項6】
該アクリルポリマーの該アルコールに対する該重量比が、約60:40と約40:60の間である請求項1に記載の非粘着性コーティング組成物。
【請求項7】
該アクリルポリマーの該アルコールに対する該重量比が、約15:85である請求項1に記載の非粘着性コーティング組成物。
【請求項8】
該アクリルポリマーと該アルコールのフルオロポリマーに対する重量比が、約100:60である請求項1に記載の非粘着性コーティング組成物。
【請求項9】
該アクリルポリマーと該アルコールのフルオロポリマーに対する該重量比が、約70:30である請求項1に記載の非粘着性コーティング組成物。
【請求項10】
該アクリルポリマーと該アルコールのフルオロポリマーに対する該重量比が、約30:70である請求項1に記載の非粘着性コーティング組成物。
【請求項11】
該アルコールがポリエステルジオールである請求項1に記載の非粘着性コーティング組成物。
【請求項12】
該アルコールがポリウレタンポリオールである請求項1に記載の非粘着性コーティング組成物。
【請求項13】
さらに、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン共重合体を有する請求項1に記載の非粘着性コーティング組成物。
【請求項14】
さらに、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン共重合体を有する請求項9に記載の非粘着性コーティング組成物。
【請求項15】
さらに、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン共重合体を有する請求項10に記載の非粘着性コーティング組成物。
【請求項16】
a.ジオール、ポリオール、これらの混合物の中から選定されるアルコールと架橋されたアクリルポリマー;と
b.フルオロポリマー;を有し、
該アクリルポリマーのアルコールに対する重量比が、約90:10と約10:90の間である非粘着性コーティング。
【請求項17】
該アクリルポリマーと該アルコールがメラミンで架橋された請求項16に記載の非粘着性コーティング。
【請求項18】
該アクリルポリマーと該アルコールとが、ブロック酸触媒存在下で、メチレーテッドメラミンホルムアルデヒド樹脂で架橋される、請求項16に記載の非粘着性コーティング。
【請求項19】
該アクリルポリマーの該アルコールに対する重量比が、約60:40と約40:60の間である請求項16に記載の非粘着性コーティング。
【請求項20】
該アクリルポリマーのアルコールに対する重量比が、約50:50である請求項16に記載の非粘着性コーティング。
【請求項21】
該アクリルポリマーの該アルコールに対する重量比が、約15:85である請求項16に記載の非粘着性コーティング。
【請求項22】
さらに、シランを有する請求項16に記載の非粘着性コーティング。
【請求項23】
該アルコールが、ポリエステルジオール、ポリウレタンポリオール、これらの混合物の中から選定される請求項16に記載の非粘着性コーティング。
【請求項24】
該アクリルポリマーと該アルコールのフルオロポリマーに対する重量比が、約100:60である請求項16に記載の非粘着性コーティング。
【請求項25】
該アクリルポリマーと該アルコールのフルオロポリマーに対する重量比が、約70:30である請求項16に記載の非粘着性コーティング。
【請求項26】
該アクリルポリマーと該アルコールのフルオロポリマーに対する重量比が、約30:70である請求項16に記載の非粘着性コーティング。
【請求項27】
該アルコールがポリエステルジオールである請求項26に記載の非粘着性コーティング。
【請求項28】
該アルコールがポリウレタンポリオールである請求項16に記載の非粘着性コーティング。
【請求項29】
さらに、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン共重合体を有する請求項16に記載の非粘着性コーティング。
【請求項30】
さらに、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン共重合体を有する請求項25に記載の非粘着性コーティング。
【請求項31】
さらに、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン共重合体を有する請求項26に記載の非粘着性コーティング。
【請求項32】
基材に非粘着性コーティングを形成する方法であって、
a.フルオロポリマー、アクリルポリマーと、ジオール、ポリオール、これらの混合物の中から選定されるアルコールとを有し、該アクリルポリマーの該アルコールに対する重量比が約90:10と約10:90の間とされる非粘着性組成物を準備すること;
b.基材に該非粘着性組成物を塗布すること;そして
c.該組成物を慣用の炉、即ち赤外線炉で硬化すること
との工程を有する方法。
【請求項33】
さらに、該非粘着性組成物を塗布するまえに、シランの下塗りを塗布する工程を有する請求項32に記載の方法。
【請求項34】
該基材がシリコーンゴム基材である請求項32に記載の方法。
【請求項35】
該アルコールが、ポリエステルジオール、ポリウレタンポリオール、これらの混合物の中から選定される請求項32に記載の方法。
【請求項36】
該アルコールがポリエステルジオールである請求項32に記載の方法。
【請求項37】
該アルコールがポリウレタンポリオールである請求項32に記載の方法。
【請求項38】
該基材が20未満のデュロメーター硬度を有する請求項32に記載の方法。
【請求項39】
該基材が10未満のデュロメーター硬度を有する請求項32に記載の方法。
【請求項40】
該アクリルポリマーの該アルコールに対する重量比が、約60:40と約40:60の間である請求項32に記載の方法。
【請求項41】
該アクリルポリマーの該アルコールに対する重量比が、約50:50である請求項32に記載の方法。
【請求項42】
該アクリルポリマーの該アルコールに対する重量比が、約15:85である請求項32に記載の方法。
【請求項43】
該非粘着性組成物が、さらにブロック酸触媒を有する請求項32に記載の方法。
【請求項44】
該非粘着性組成物が、さらにメラミンを有する請求項32に記載の方法。
【請求項45】
該メラミンがメチレーテッドメラミンホルムアルデヒドである請求項44に記載の方法。
【請求項46】
該アクリルポリマーと該アルコールのフルオロポリマーに対する重量比が、約100:60である請求項32に記載の方法。
【請求項47】
該アクリルポリマーと該アルコールのフルオロポリマーに対する重量比が、約70:30である請求項32に記載の方法。
【請求項48】
該アクリルポリマーと該アルコールのフルオロポリマーに対する重量比が、約30:70である請求項32に記載の方法。
【請求項49】
該非粘着性の組成物が、さらにポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン共重合体を有する請求項47に記載の方法。
【請求項50】
該非粘着性の組成物が、さらにポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン共重合体を有する請求項48に記載の方法。

【公表番号】特表2006−511674(P2006−511674A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−570986(P2004−570986)
【出願日】平成15年12月3日(2003.12.3)
【国際出願番号】PCT/US2003/038212
【国際公開番号】WO2004/050774
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(505007353)
【Fターム(参考)】