説明

非鉄金属から成形物を製造するための金属押出加工機

【課題】システムを問題なく始動することができ、かつ、動作中には高エネルギー効率の動作を実現し、とりわけ押出工程に必要とされる程度だけラム駆動用ポンプを駆動するためのモータを動作させることができる金属押出加工機を提供すること。
【解決手段】前記課題は本発明では、電動機にソフトスタート手段を設けることによって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非鉄金属から成形物を製造するための次のような金属押出加工機、すなわち、少なくとも1つの流体圧ピストンシリンダ装置によって駆動される少なくとも1つのラムを有し、該少なくとも1つの流体圧ピストンシリンダ装置に少なくとも1つのポンプによって作動液が供給され、該少なくとも1つのポンプは、多相電力網に接続された電動機によって駆動される金属押出加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
EP2000226B1から、本願の独立請求項の上位概念に記載された金属押出加工機が公知である。同文献では、ポンプの駆動に3相非同期モータが使用される。
【0003】
とりわけ多相電流モータ等であるこのような高出力モータのソフトスタートを行うためには、この高出力モータをスターデルタ結線で構成することが公知である。スターデルタ結線は、非同期モータの始動電流をデルタ結線で制限するために使用される。その際には、モータの回転数はスター結線で上昇する。この切換時に必要なのは、理論的には、実際の回転数に相応するデルタ電流だけであり、デルタ直接投入が行われる場合の電流と比較して、投入電流は1/3にまで低減する。しかし、スター結線からデルタ結線への切換が行われる場合、商用電源の相とモータ磁界とが相互に逆になることがある。このことによって相殺プロセスが発生し、切換時の電流ピークが非常に高くなるという欠点が生じることになる。
【0004】
とりわけ、スター‐デルタの切換が使用され、誤極性保護スイッチが使用される場合には、循環ポンプ回路を高エネルギー効率で運転することは不可能であるかまたは制限されてしまう。
【0005】
モータ制御部に組み込まれた誤極性保護スイッチが使用される場合と同様に、頻繁な遮断は問題であるか、または頻繁な遮断すらできないこともある。モータを遮断せずに、不必要なポンプを永続的に動作させることにより、前記問題は解消される。
【0006】
しかし、このことによってエネルギー上の欠点が生じる。というのも、押出工程の実施に必要とされる以上にポンプを動作させるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】EP2000226B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって本発明の課題は、システムを問題なく始動することができ、かつ、動作中には高エネルギー効率の動作を実現し、とりわけ押出工程に必要とされる程度だけポンプ駆動用のモータを動作させることができる、独立請求項の上位概念に記載の金属押出加工機を構成することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は本発明では、電動機にソフトスタート手段を設けることによって解決される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】非鉄金属から成形物を製造するための、本発明の第1の実施形態の金属押出加工機の駆動装置を概略的に示す。
【図2】図1の駆動装置の電動機を示す。
【図3a】多相電力網の1相の電圧の時間特性を示す。
【図3b】図3aに示した相が位相制御された場合の特性を示す。
【図3c】図3aに示した相がさらに位相制御された場合の特性を示す。
【図4】非鉄金属から成形物を製造するための、本発明の第2の実施形態の金属押出加工機の駆動装置を概略的に示す。
【図5】ソフトスタータを有するポンプ遮断部の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1つの有利な実施形態では、交流電圧の3相のうち少なくとも2相を位相制御するために少なくとも2つのサイリスタまたは3極双方向サイリスタが設けられる。また、交流電圧の3相すべてを位相制御するために、3つのサイリスタまたは3極双方向サイリスタを使用することもできる。
【0012】
電動機はとりわけ非同期モータである。
【0013】
1つのポンプが2つ以上の流体圧ピストンシリンダ装置に作動液を供給することができる。また、連通流体管路を介して複数のポンプが少なくとも1つの流体圧ピストンシリンダ装置に作動液を供給することもできる。後者の場合、前記複数のポンプが前記連通した流体管路を介して少なくとも2つの流体圧ピストンシリンダ装置に作動液を供給するように構成することができる。
【0014】
一般的には、本発明において採用されるソフトスタートとは、電気機器の投入時に電力を制限するための手段を指す。ここでは、電気機器は電動機である。このソフトスタートでは、電気機器の投入電流が低減される。すなわち、投入電流の制限が行われる。この投入電流の制限により、線路保護スイッチの応答または商用電圧の大きな電圧降下も回避され、さらに、電動機によって駆動される構成要素のトルクおよび加速が過度に大きくなることが防止される。
【0015】
投入電流の制限に有利なのは、電圧の位相制御を行い制御するサイリスタまたはトライアックを使用することである。サイリスタないしはトライアックは、投入時に位相制御によって電圧を低減する。その後、完全な商用電圧に達するまで、位相制御を縮小することができる。完全な商用電圧に達したら、電気回路をリレーないしは保護コンタクタによってバイパスすることにより、損失電力を低減することができる。こうすることにより、公称負荷で始動を行うこともできるようになる。
【0016】
したがって本発明では、モータ制御部にソフトスタータを設けることにより、システムの問題的な始動と、場合によって生じる消費エネルギーの過度の上昇とを回避することができ、ポンプに不必要な駆動装置を周期的に短期間遮断して再投入することが簡単にできるようになる。その際には、通常の製造の多くでは、押出時間が90秒を超えることに留意すべきである。本発明の構成により、負荷ピークが高くなることなく高エネルギー効率で、任意の動作サイクルで運転することができ、その際にはポンプをずらして投入することもできる。
【0017】
このようにして、駆動装置が遮断された時間にエネルギー削減を実現する可能性が高くなる。本発明ではこのことを利用することができる。
【0018】
可変のポンプ遮断により、ポンプが熱だけを発生させることが無くなる。本発明を使用しない場合、このような熱に伴う危険は、押出時に不必要なポンプの数が多くなるほど高くなる。
【0019】
本発明の構成は、技術的に簡単でありかつ高能率で使用できることを特徴とする。
【0020】
押出工程時に必要とされないポンプは、簡単に遮断することができ、このようなポンプの遮断はとりわけ、90秒を上回る押出時間で行うことができる。このことは上述のように、製造の多くに該当する。短期間の周期でも高エネルギー効率で運転することができる。
【実施例】
【0021】
図面に本発明の実施例を概略的に示している。
【0022】
図1に、非鉄金属から成形物を製造するための金属押出加工機のラム1を示す。このラム1は、2つの流体圧ピストンシリンダ装置2によって操作される(図1中の双方向矢印の方向を参照されたい)。この流体圧ピストンシリンダ装置2は流体管路8を介して、加圧された作動液をポンプ3から受け取る。ポンプ3は電動機4によって駆動される。
【0023】
この電動機4は多相電力網5に電気的に接続されており、該多相電力網5は3相L,LおよびLを有する。この多相電力網5と電動機4との間にモータ制御部(電子回路)が配置されている。このモータ制御部は、ソフトスタート手段6とも称される。
【0024】
図2に、このソフトスタート手段6を詳細に示す。ソフトスタート手段6は2相に対して‐すなわち相LおよびL3に対して‐それぞれ1つの3極双方向サイリスタ7を有する。図3a〜3cに、これらの3極双方向サイリスタ7の動作を示している。
【0025】
まず図3aには、時間tにおける1相の電圧Uの制御されない正弦波形の特性を示している。この電圧特性は、公称電力に完全に達したときに相応し、電動機が動作して完全な出力を供給しなければならない場合にこの電圧は電動機4へ供給される。
【0026】
電動機4の始動中、ならびに、モータの電力消費を低減しなければならない場合には、電圧特性Uのこの相が位相制御される。したがって、3極双方向サイリスタ7が「点弧」した場合に初めて、電力網から電力が電動機4へ伝送される。図3bおよび3cにおいて、このことが周期的に行われる時点tを矢印9で示している。この矢印9は点弧を表している。したがって、電圧曲線のうちでこのように示された領域でのみ、電動機4にエネルギーが多相電力網5から供給される。それに対し、破線で示された部分は、点弧が未だ行われないために電動機4へエネルギーが供給されない時間領域を示す。
【0027】
図3bおよび3cを比較すると、点弧時点に依存して多かれ少なかれエネルギーが多相電力網から電動機へ伝達されるのが理解できる。図3bに示したような状況では、エネルギーは、図3c中の点弧が遅い場合より大きくなる。
【0028】
図4には、3つの電動機4が、流体管路8を介して2つの並列接続された流体圧ピストンシリンダ装置2に加圧流体を供給するために並列動作している様子が示されている。
【0029】
ここでは、本発明の構成により、供給される電力を幅広い領域にわたって問題なく制御することができる。つまり、中間および下方の電動機のソフトスタート手段6の3極双方向サイリスタの点弧が行われていないので、ここでは未だエネルギーが電動機へ供給されず(図4ではこのことを「0%」と示している)、それと同時に上方のソフトスタート手段6は、3極双方向サイリスタ7の点弧によって動作しており、上方の電動機4にはエネルギーが供給されている(図4ではこのことを「10〜100%」と示している)。
【0030】
したがって図4では、ピストンシリンダ装置2に対して3つのポンプ3が設けられており、各ポンプ3の各電動機4にはソフトスタート手段6が設けられており、要求に応じて最適に、下方の2つのポンプが遮断されるのが示されている。
【0031】
図5に、上側の状態(「ポンプXの投入」)と下側の状態(「ポンプXの遮断」)との間に、電動機の出力を上昇または低減するためにソフトスタート手段6によって調整できる構成を、非常に概略的に示している。
【0032】
このことによって有利には、ポンプを要求に応じて動作させることができる。たとえば、ポンプはブロック交代時にのみ始動するか、ないしは、目標押出速度に依存して始動する。
【0033】
本発明のシステムは、簡単に後付け装備することができる。というのも、電動機ないしは周波数変換器は、誤極性接続保護がなくてもよいからである。
【0034】
電力ケーブルをシールド無しで使用することができ、さらに、スイッチキャビネット内の所要スペースはごく僅かである。
【符号の説明】
【0035】
1 ラム
2 ピストンシリンダ装置
3 ポンプ
4 電動機
5 多相電力網
6 ソフトスタート手段
7 3極双方向サイリスタ(トライアック)
8 流体管路
9 点弧



U 電圧
t 時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非鉄金属から成形物を製造するための金属押出加工機であって、
当該金属押出加工機は少なくとも1つのラム(1)を有し、
前記少なくとも1つのラム(1)は少なくとも1つの流体圧ピストンシリンダ装置(2)によって駆動され、
前記少なくとも1つの流体圧ピストンシリンダ装置(2)に、少なくとも1つのポンプ(3)によって作動液が供給され、
前記少なくとも1つのポンプ(3)は、多相電力網(5)に接続された電動機(4)によって駆動される金属押出加工機において、
前記電動機(4)にソフトスタート手段(6)が設けられていることを特徴とする、金属押出加工機。
【請求項2】
前記ソフトスタート手段(6)は、前記電動機(4)に供給される交流電圧(U)の位相制御を行うために構成されている、請求項1記載の金属押出加工機。
【請求項3】
前記ソフトスタート手段(6)は少なくとも1つのサイリスタを有する、請求項2記載の金属押出加工機。
【請求項4】
前記ソフトスタート手段(6)は少なくとも1つの3極双方向サイリスタ(Triac)(7)を有する、請求項2記載の金属押出加工機。
【請求項5】
前記交流電圧(U)の3相(L,L,L)のうち少なくとも2つの位相制御を行うために、前記サイリスタまたは前記3極双方向サイリスタ(7)は少なくとも2つ設けられている、請求項3または4記載の金属押出加工機。
【請求項6】
前記交流電圧の3相(L,L,L)すべてを位相制御を行うために、前記サイリスタまたは前記3極双方向サイリスタ(7)は3つ設けられている、請求項5記載の金属押出加工機。
【請求項7】
前記電動機(4)は非同期モータである、請求項1から6までのいずれか1項記載の金属押出加工機。
【請求項8】
1つのポンプ(3)が2つ以上の流体圧ピストンシリンダ装置(2)に作動液を供給する、請求項1から7までのいずれか1項記載の金属押出加工機。
【請求項9】
複数のポンプ(3)が連通流体管路(8)を介して、少なくとも1つの流体圧ピストンシリンダ装置(2)に作動液を供給する、請求項1から7までのいずれか1項記載の金属押出加工機。
【請求項10】
前記複数のポンプ(3)は連通流体管路(8)を介して、少なくとも2つの流体圧ピストンシリンダ装置(2)に作動液を供給する、請求項1から9までのいずれか1項記載の金属押出加工機。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−177014(P2011−177014A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40158(P2011−40158)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(502056226)エスエムエス メーア ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (22)
【氏名又は名称原語表記】SMS Meer GmbH
【住所又は居所原語表記】Ohlerkirchweg 66, D−41069 Moenchengladbach, Germany
【Fターム(参考)】