説明

面で囲まれる容器の内壁面での検査作業結果と作業位置の特定方法及び情報管理方法

【課題】ボイラ火炉等の面で囲まれる容器の内部の検査に用い、基準点を決定することが容易であり、しかも特定する検査位置が大型の容器内であっても簡単に位置を特定することができ、検査と検査位置特定を同時に行うことができる面で囲まれる容器の内壁面での検査作業結果と作業位置の特定方法を提供する。
【解決手段】面で囲まれる容器の内壁面での検査作業結果と作業位置の特定方法であって、前記内壁面上の位置座標既知の箇所に音波を異なる2箇所以上から発信可能な発信器を配置し、作業者が携帯可能であって、前記音波を受信可能な受波器及び前記検査が可能な検査具が一体となった一体物を、前記検査作業を行う位置に配置し、前記検査具を用いて前記検査作業結果を得るとともに、前記発信器の2箇所以上より音波を発信し、前記2箇所以上から発信された音波それぞれが、前記受波器に到達する時間を計測し、前記到達時間と、前記2箇所以上の音波の発信箇所の位置座標を用いて、前記受波器の位置座標を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面で囲まれる容器の内壁面での検査作業結果と作業位置の特定方法及び情報管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
火力発電所で用いられるボイラ火炉は、製作時及び運転開始後定期的に開放し、内部に作業者が入り保守検査を行う必要がある。保守検査時には、検査箇所を明確にする必要があるが、ボイラ火炉は容量が大きく目視で検査箇所を正確に把握することは困難である。
そこで従来、検査箇所の高さ位置及び左右位置を巻尺等を用いて測定マーキングすることで作業者の居場所あるいは保守検査位置を把握していたが、この方法では位置の把握に多大な時間と人手を要する。
【0003】
そこで、三次元測位システムといわれる方法を用いてボイラ火炉内の検査位置を特定することが考えられる。これは、3点以上の位置座標既知の位置から位置を特定しようとする点への距離を、音波を用いてその伝播速度と伝播時間から算出し、その距離を用いて位置を特定するものであり、このような三次元測位システムは例えば特許文献1、特許文献2に開示されている。また近年では、音波に代えてレーザ光を用いて位置を特定する三次元測位システムが知られており、例えば特許文献3に開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1〜3に開示されるような三次元測位システムを用いてボイラ火炉内の位置を検出する場合、3点の基準位置(例えばR1、R2、R3)からの距離がそれぞれL1、L2、L3となる点は、前記3点の基準位置R1、R2、R3によって形成される平面に対して対称な位置に2箇所に存在し、そのうち1箇所は特定したい位置であるが、もう1箇所は特定したい位置と無関係な位置となる。そのため、前記特定したい位置と無関係な位置がボイラ火炉内である場合には、前記2箇所の何れが特定した位置であるか判別することができない。
また、3点の基準位置R1、R2、R3が空間内にある場合、該基準位置に発信器又は受波器を設置することが困難である。
【0005】
さらに特許文献3に開示されたレーザー光を用いる方法は、レーザー光は指向性が高く発信器と受波器の間にレーザー光を遮断する障害物があると測定が不可能であり、点検時には内部に足場等の障害物が多いボイラ火炉内の検査時に使用することは向いていない。
【0006】
また、ボイラ火炉内においても、3点によって形成される平面から特定する点(検査位置)への方向が特定できるように、例えば3点の基準点を全てボイラ火炉底の床面に配置することが考えられるが、3点の基準点を床面に配置した場合、送波位置と受波位置との間に音波伝播の障害となる足場があり測位精度を低減する要因となる。
【0007】
そこで、特許文献4には、面で囲まれる空間内部で作業を行う位置を特定する方法であって、前記空間内部の作業を行う位置が側壁であり、該側壁に略平行な同一面上であり且つ同一直線上にない位置座標が既知である3点以上に音波信号を受信可能な受波器を設置し、前記空間の側壁の作業を行う位置に配置された音波を発信可能な送波器より信号を発信し、前記同一直線上にない3点以上の受波器それぞれに到達する前記信号の到達時間を計測し、前記到達時間と、前記3点以上の受波器の位置座標を用いて、前記送波器の位置座標を特定する技術が開示されている。
【0008】
特許文献4に開示された技術では、位置座標既知である同一直線上にない3点以上に受波器を設置することで、前記3点以上の受波器への音波の到達時間と位置座標から、送波器の位置の候補2点(実際に送波器のある位置と、該位置と前記3点以上の受波器によって形成される平面に対して鏡像の位置)が求められるが、側壁に略平行な同一面上に配置した既知位置にある受波器を用いて測位点を算出するため、前記鏡像位置を含めた2点の測定値が算出されても、測位データとして必要な高さや左右からの距離は同一であるため問題とならない。従って、受波器を床面に配置することが困難な場合であっても、保守検査等の作業を行う位置を特定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭63−266376号公報
【特許文献2】特開2004−108978号公報
【特許文献3】特開平3−251706号公報
【特許文献4】特開2010−85280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献4に開示された技術においては、側壁に略平行な同一面上であり且つ同一直線上にない位置座標が既知である3点以上に音波信号を受信可能な受波器を設置する必要がある。作業を行う位置が存在する側壁(位置特定側面と称する)に略平行な面は、位置特定側面と、位置特定側壁と対向する別の側面が略平行でない限りは空間中に存在することになり、該面上に位置座標既知の点を3箇所以上設定すること自体が困難であり、また位座標既知の点を3箇所以上設定してもその位置に受波器を設置することが困難である。また、位置特定側面と、位置特定側壁と対向する別の側面が略平行である場合は該別の側面上に位置座標既知の3点を設定し、該位置に受波器を設置することは可能であるが、音波の伝播する距離には限界があり、前記位置特定側面と前記別の面との距離が音波の伝播可能な距離よりも大きな大型のボイラ火炉等には適用が困難になる。
【0011】
また、特許文献1〜4に開示された技術は何れも検査作業を行う位置のみを検出することができる技術である。該位置の情報は検査作業結果とともに管理すべきものであるから、検査作業位置の検出と検査作業は別個に行うよりも同時に行うことが望ましい。
【0012】
従って、本発明はかかる従来技術の問題に鑑み、ボイラ火炉等の面で囲まれる容器の内部の検査に用い、基準点を決定することが容易であり、しかも特定する検査位置が大型の容器内であっても簡単に位置を特定することができ、検査と検査位置特定を同時に行うことができる面で囲まれる容器の内壁面での検査作業結果と作業位置の特定方法を提供し、併せてその情報管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明においては、面で囲まれる容器の内壁面での検査作業結果と作業位置の特定方法であって、前記内壁面上の位置座標既知の箇所に音波を異なる2箇所以上から発信可能な発信器を配置し、作業者が携帯可能であって、前記音波を受信可能な受波器及び前記検査が可能な検査具が一体となった一体物を、前記検査作業を行う位置に配置し、前記検査具を用いて前記検査作業結果を得るとともに、前記発信器の2箇所以上より音波を発信し、前記2箇所以上から発信された音波それぞれが、前記受波器に到達する時間を計測し、前記到達時間と、前記2箇所以上の音波の発信箇所の位置座標を用いて、前記受波器の位置座標を特定することを特徴とする。
【0014】
これにより、容器内壁面上の位置座標既知な箇所を基準位置として検査位置を測位するため、基準位置の決定が容易であるとともに、通常容器の開放時には内壁に沿って足場を組むので該足場を利用すれば基準位置へ発信器を配置することができる。また、検査作業位置の特定は容器の各内壁面毎に完結するため、内壁面から対向する内壁面まで電波を届かせる必要もなく大型の容器内であっても検査位置の特定が可能である。また、前記一体物を使用することで、検査と検査位置特定を同時に行うことができる。
【0015】
また、前記位置座標既知の箇所は、前記発信器設置箇所の目印として前記容器内壁に設けられたマーカーであるとよい。
例えば前記容器がボイラ火炉である場合、内壁には例えばデスラッガを取り付ける穴や窓等の位置座標既知の箇所が存在するが、これらは規則正しく並べられているわけではなく、位置座標既知の箇所の個数及び配置と内壁面の広さの関係によっては、位置座標既知の箇所から音波が届かない箇所が生ずる内壁面上の点が存在する可能性がある。そこで、マーカーを使用することで、位置座標既知の箇所を自由に設定することができ、位置座標既知の箇所から音波が届かない箇所が生ずることを防止できる。
【0016】
また、水平方向の位置座標が既知であって鉛直方向に延びる前記内壁面を構成する管に沿って、先端から一定間隔毎に目印をつけたひも状又は棒状部材を、前記容器の内壁面上方から先端が容器下面に到達するまで垂らし、前記目印を前記位置座標既知の箇所として利用するとよい。
なお、前記ひも状又は棒状部材を水平方向に一定間隔毎に複数垂らすこともできる。これにより、容器内壁面に検査位置の特定のために必要な部品等を一切取り付けることなく、発明の実施が可能となる。
【0017】
また、前記容器はボイラ火炉であって、前記検査作業は、前記ボイラ火炉の内壁面を形成する蒸気管の肉厚を測定する肉厚検査であるとよい。
ボイラ火炉の内壁面を形成する蒸気管の経年劣化の検査のため、該蒸気管の肉厚検査及び検査の位置を特定することは重要である。本発明により、肉厚検査及びその検査位置の特定が容易になる。
【0018】
また、前記容器内壁面の複数個所で、請求項1〜4何れかに記載の方法により面で囲まれる容器の内壁面での検査作業結果と作業位置を特定し、前記複数個所での検査作業結果と作業位置の情報を外部の管理装置に自動的に送信し、該管理装置で集中管理することを特徴とする。
これにより、複数の位置情報及び検査結果を自動的に集中管理することができ、作業者の作業工数を削減することができる。
【0019】
また、前記集中管理は、前記複数個所での検査作業結果と作業位置の情報を、作業位置毎に検査作業結果を示したマップとして表すとよい。
これにより、作業結果を視覚により確認することができ、作業結果を把握しやすくなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ボイラ火炉等の面で囲まれる容器の内部の検査に用い、基準点を決定することが容易であり、しかも特定する検査位置が大型の容器内であっても簡単に位置を特定することができ、検査と検査位置特定を同時に行うことができる面で囲まれる容器の内壁面での検査作業結果と作業位置の特定方法を提供し、併せてその情報管理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】平面上の位置を特定する原理の説明図である。
【図2】ボイラ火炉を表す斜視図である。
【図3】ボイラ火炉の内壁面を模式的に表した図である。
【図4】作業員による肉厚検査と肉厚検査位置特定の処理に関する説明図である。
【図5】端子一体物の斜視図である。
【図6】ボイラ火炉内側壁の肉厚検査と検査箇所の特定及びデータ管理の手順を示すフローチャートである。
【図7】ボイラ火炉内側壁の肉厚検査と検査箇所の特定及びデータ管理の説明図である。
【図8】検査結果の管理の説明図である。
【図9】マーカーが1つである場合の位置座標特定に係る説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【実施例】
【0023】
まず図1を用いて、実施例における容器内壁面上における位置の特定方法の原理ついて説明する。
図1は平面上の位置を特定する原理の説明図である。
【0024】
図1において、100は模式的に示した容器内壁面である。
壁面100上の点Aの位置を特定する場合、まず内壁100上の位置座標が既知である2点の基準位置に超音波を発信可能な送波器101、102を配置するとともに、点Aに超音波を受信可能な受波器を配置する。
その後、送波器101、102から超音波を発信し、前記点Aに配置された受波器で超音波の前記発信から到達までの時間を算出し、送波器101、102から超音波が発信されてから点Aに配置した受波器へ超音波が到達するまでの時間から点Aの位置を以下のようにして算出する。
【0025】
前記送波器から電波と超音波が発信されてから前記受波器に超音波が到達するまでの時間の算出方法について説明する。
まず、外部より送波器101及び102に送波命令を出すとともに、点Aに配置された受波器に受波命令を出す。
【0026】
送波器101、102は、前記送波命令が出されると、該送波命令と略同時に超音波を発信する。送波器101、102から超音波が発信されると、点Aに配置された受波器にはそれぞれ前記送波命令から時間t101、t102後に超音波が到達する。時間t101、t102は、前記送波命令を出した時刻、受波命令を出した時刻及び受波に超音波が到達した時刻から計算することができる。
【0027】
ここで、測位環境下での音速をcとすると、送波器101、102から点Aに配置された受波器までの距離L101、L102は以下の(1)(2)式で算出することができる。
101=t101×c ・・・(1)
102=t102×c ・・・(2)
【0028】
次に、点Aに配置した受波器からそれぞれの送波器101、102までの距離L101、L102から、点Aの位置を特定する。
図1において、受波器の位置(点A)を(x、y)で表し、それぞれの送波器101、102の位置をそれぞれ(x、y)、(x、y)で表す。
このとき、以下の(3)(4)の連立方程式が成立する。
101=(x−x+(y−y ・・・(3)
102=(x−x+(y−y ・・・(4)
(4)(5)はそれぞれ送波器101、102を中心とする半径L101、L102の円を意味しており、2つの円の交点が(3)(4)式から成る連立方程式の解となり、解は2つ存在する。しかし、送波器101、102の位置は既知であり、点Aのx座標又はy座標が送波器101、102より大きいか小さいかは受波器を配置した点から明らかであるため、受波器の位置を特定することができる。
【0029】
以上のように図1を用いて説明した原理で作業者の検査位置を特定するとともに検査結果を得る具体的な事例について、ボイラ火炉内に超音波を受信する受波器を持った作業者が入って、ボイラ火炉側壁に設けられた蒸発管等の検査作業を行う場合について、ボイラ火炉側壁に設けられた蒸発管の肉厚測定を行う場合を例示して説明する。
【0030】
図2はボイラ火炉を表す斜視図である。ボイラ火炉111は、図2に示すように外壁近傍に多くの配管112が取り付けられており、また内部に燃料を燃焼するための燃焼室113を有し、内壁面に沿って蒸発管が設置されている。
このようなボイラ火炉101の運転を停止し、内部に作業者が入りボイラ火炉の内壁を構成する蒸発管の肉厚測定を行う際には、検査箇所を特定する必要がある。また、特定した位置は検査結果とともに管理する必要がある。
【0031】
図3は、ボイラ火炉101の内壁面を模式的に表した図である。
図3において、10はボイラ火炉の内壁面である。また、前述のようにボイラ火炉111の運転を停止し、内部で作業者が検査を行う場合には、作業者の移動及び検査のために内壁面に沿って作業員用の足場12が約2mごとに複数段設けられる。
【0032】
また、本実施例に特徴的な構成として、複数のマーカー14が設けられている。マーカー14は内壁面上の位置座標既知の位置に設けられた突起物である。また、マーカー14はその位置座標の情報が組み込まれた刻印又はバーコードなどが刻設されていることが好ましい。この場合、刻印やバーコードが消失しないように、マーカー14はボイラ火炉101の運転中に温度に対して耐熱性を有する材料で作ることが必須となる。マーカー14に刻印やバーコードが設けられていない場合には、マーカー14の位置座標の情報が組み込まれたICタグを取り付けることが可能なようにマーカー14を構成し、ボイラ火炉101の運転停止後に各マーカー14に前記ICタグを取り付ける。
即ち、マーカー14は、刻印、バーコード、又はマーカー14に取り付けたICタグによって位置情報を保持している。
【0033】
マーカー14は、後述する超音波を用いた作業位置特定のために、各マーカー間の距離を超音波が届く範囲とする。具体的には各マーカー間の距離を10m以内程度とする必要があり、後述する作業位置特定を確実に行うためには各マーカー間の距離を5m以内程度とすることがより好ましい。また、垂直方向に関しては、後述する超音波を用いた作業位置特定の際に、足場が超音波の障害とならないように足場12で構成される段毎にマーカーを設けることが好ましい。
【0034】
図4は、作業員による肉厚検査と肉厚検査位置特定の処理に関する説明図である。
まず、処理に先立って、図4に示したように、マーカー14の位置に2箇所以上から超音波を発信可能な発信器16を設置し、マーカー14の位置座標を前記刻印、バーコード、ICタグ等から読み込む。読み込まれた位置情報は、後述するモバイルパソコン(モバイルPC)28に入力される。なお、発信器は、基準位置61をマーカー14と合わせた位置に置き、基準位置61との位置関係が分かっている発信部62、63から超音波を発信する。これにより、マーカー14の位置座標と前記位置関係から各発信部62、63の位置座標が分かる。
なお、発信器16の設置は、ボイラ火炉101の運転を停止して、足場12を組み上げた後であって、後述の肉厚検査及び位置検出の前であればいつ設置してもよい。
【0035】
そして、作業員は、端子一体物24、肉厚計26及び制御装置を兼ねるとともに肉圧計26とデータ送受信可能なケーブル27によって接続されたモバイルPC28を有する受信ユニット20を携帯して、肉厚検査を実施する必要がある検査位置18の位置近傍まで移動する。そして、モバイルPC28と発信器16をデータ送受信可能なケーブル29で接続する。
【0036】
受信ユニット20を構成する端子一体物24について図5を用いて説明する。図5は、端子一体物24の斜視図である。
図5に示したように、端子一体物24は、受波器41、距離演算装置42及び肉圧計探触子43が一体化して構成されている。44は距離演算装置42と肉圧計探触子43を一体化する接続具である。また、距離演算装置42は、データ送受信可能なケーブル45でモバイルPC28と接続されており、肉圧計探触子43はデータ送受信可能なケーブル46で肉圧計26と接続されている。
そして、前記作業員は、このように構成された端子一体物24の肉圧計探触子43を、肉厚検査を実施する必要がある検査位置18に接触させる。
【0037】
以上の準備をした後、肉厚検査と検査箇所の特定及びデータ管理を行う。
肉厚検査と検査箇所の特定及びデータ管理について図2〜図5を参照しながら、図6及び図7を用いて説明する。
図6は、ボイラ火炉内側壁の肉厚検査と検査箇所の特定及びデータ管理の手順を示すフローチャートであり、図7は、ボイラ火炉内側壁の肉厚検査と検査箇所の特定及びデータ管理の説明図である。なお、図7において丸付きで示した数字は、図6において示したS(ステップ)に対応する。
【0038】
前記作業者が、肉圧計探触子43を検査位置18に接触させて、モバイルPC28により処理開始操作を行うことにより、処理が開始される。
処理が開始されると、ステップS1ではモバイルPC28から肉厚計26に肉厚情報取込命令が出される。
【0039】
ステップS2では、前記肉厚情報取込命令を受けた肉厚計26は、電流・電圧等を検査位置に発し肉厚に関する情報を得て、該情報は肉圧計26に送られる。そして、肉厚計26では前記情報を元に検査位置での肉厚を求める。該肉厚は、肉厚情報の数値データとしてモバイルPC28に取り込まれる。なお、肉厚の計測そのものについては公知の技術であるのでその説明を省略する。
【0040】
前記肉厚情報が取り込まれると、ステップS3でモバイルPCより発信器16に超音波発信命令が出される。同時に又はその後ステップS4でモバイルPCより受波器41に超音波受波命令が出される。
【0041】
ステップS3で発信器16が超音波発信命令を受けると、発信器16は発信部62及び63から超音波を発信する。
【0042】
ステップS6で超音波が発信されると、ステップS7では、受波器41で前記超音波を受波する。そして、受波器41が発信部62からの超音波を受波した時刻t62、及び受波器41が発信部63からの超音波を受波した時刻t63が受波器62から距離演算装置42に送られ、ステップS3にて超音波発信命令が出された時刻tが距離演算装置42に送られる。
距離演算装置では、発信部62から受波器41まで超音波が到達するのに要した時間t=(t62−t)を演算するとともに、発信部63から受波器41まで超音波が到達するのに要した時間t=(t63−t)を算出する。
そして、発信部62から受波器41までの距離Lと、発信部63から受波器41までの距離Lとを、前述の(1)(2)式を適用して、以下の(5)(6)式にて求める。
=t×c ・・・(5)
=t×c ・・・(6)
【0043】
ステップS7で距離L及び距離Lが求まると、ステップS8で距離L及び距離LのデータがモバイルPC28に取り込まれる。
【0044】
次いでステップS9で、モバイルPC28にて受波器41の位置を演算する。
既知であるマーカー14の位置座標を(X、Y)とする。また、発信部62はマーカー14の位置に置かれた基準位置61から鉛直上側方向にY’だけ離れた位置に存在し、発信部63はマーカー14の置かれた基準位置61から水平方向にX’だけ離れた位置に存在するとすると、発信部62の位置座標は(X、Y+Y’)、発信部63の位置座標は(X+X’、Y)である。
そして、受波器41の位置座標を(x、y)とすると、(3)(4)式を適用して、以下の(7)(8)式の連立方程式がなりたつ。そして、該連立方程式を解くことで受波器41の位置座標(x、y)を求めることができる。
=(x−X)+{y−(Y+Y’)} ・・・(7)
={x−(X+X’)}+(y−Y) ・・・(8)
【0045】
次いで、ステップS10で、モバイルPC28に、ステップS2にて取り込まれた肉厚検査の結果と、ステップS29で求めた肉厚検査を行った箇所の位置情報が結果表示される。
【0046】
そして、ステップS11で無線LAN等を介して前記肉厚検査の結果と位置情報が現地事務所等に置かれたパソコン50に送られて、ステップS12で該パソコン50に結果が表示される。そして、ステップS13で必要に応じて前記パソコン50に送られた肉厚検査の結果と位置情報はインターネット等を介して事業所等に置かれたパソコン52に送られ、ステップS14でデータ加工等がなされる。
【0047】
また、パソコン50には、多数の箇所での検査結果及び位置情報が送られる。これらの情報をパソコン50又は52で集中管理する。検査結果の集中管理の一例について図8を用いて説明する。
図8は検査結果の管理の説明図である。
例えばボイラ火炉111内のA、B、C、Dの位置で検査を行った場合、それぞれの位置情報と肉厚検査結果の情報がパソコン50又は52などに集約される。そして、該パソコン50又は52では前記集約された結果をまとめて表示する。表示された結果は、A、B、C、Dの位置にいる作業者に送信するようにしてもよい。
結果の表示方法は、位置と検査結果が分かるような表示方法であればよく、たとえば図8に示したようにボイラ火炉の壁面の検査結果が不良である位置を領域a、bのように斜線で表示したり、色を変えて表示するなど視覚的に分かるように表示することができる。なお、図8におけるA1〜A10、B1〜B8、C1〜C6、D1〜D8はデスラッガを取り付けるための穴を表しており、デスラッガを取り付ける穴はその位置が既知であるため、デスラッガを取り付ける穴を検査結果と同時に表示させることで、検査結果が視覚的に分かり易くなる。
【0048】
なお、本実施例においては、肉厚検査と位置の特定を行う例について説明したが、肉厚検査以外の検査と該検査の位置の特定を行う場合にも本発明を適用することができる。
CCDカメラによってボイラ火炉の壁面の表面写真(画像)と該画像を取得した位置の情報を特定する例について説明する。
この場合、図4及び図5に示した構成おいて、肉厚計26及びケーブル27が存在せず、肉圧計探触子43に代えてCCDカメラが設けられており、ケーブル46がCCDカメラとモバイルPC28との間のデータ送受信可能であり、その他の構成は変更がないものとして図4及び図5を転用して説明する。
【0049】
このとき、作業者が、CCDカメラを火炉内壁の検査位置に向け、モバイルPC28により処理開始操作を行うことにより、処理が開始される。
処理が開始されるとモバイルPC28からCCDカメラに画像取得命令が出される。前記画像取得命令を受けたCCDカメラは、火炉内壁の表面写真(画像)を取得する。該表面写真はケーブル46を介してモバイルPC28に取り込まれる。
【0050】
モバイルPC28に前記画像が取り込まれると、図6に示したステップS3〜ステップS9の手順と同様の手順により、前記画像を取り込んだ位置の検出を行う。これにより、火炉内壁の表面写真(画像)と位置情報がモバイルPC28に保存される。
その後必要に応じて、図6に示したステップS10以降の手順において、肉厚と位置の情報を処理した場合と同様にして、画像と位置の情報の処理を行う。
【0051】
なお、本実施例においては、発信器16を設置する既知の位置としてマーカー14を用いたが、位置座標既知であればその他のものを用いることができる。位置座標既知のものとして、例えばデスラッガを取り付ける穴、窓、特定の蒸発管等を挙げることができる。
また、例えば上下方向に配置された水平方向の位置(X座標)既知の蒸発管を利用する場合、蒸発管に沿って、先端部から一定間隔毎に目印をつけたワイヤを先端部が火炉ボイラの下面に到達するまで垂らすと、該ワイヤにつけた目印はワイヤの先端即ち火炉ボイラの下面のからの距離が分かるためY座標が特定できる。即ち、前記ワイヤに付けた目印は位置座標既知となる。
【0052】
また、本実施例においては、マーカー14を多数設けたが、マーカー14又は位置座標既知となる基準は最低1つあればよい。
図9は、マーカーが1つである場合の位置座標特定に係る説明図である。
例えばボイラ火炉の内壁面10のうち、a点のみが位置座標既知である場合、まずa点に送波器16を配置し、検査位置bにて検査及び位置情報を取得する。すると、位置bの位置座標が既知となるため、位置bに送波器16を配置し、検査位置cにて検査及び位置情報を取得する。これを、c、d・・・と繰り返すことによって、位置座標既知の箇所が増えていき、ボイラ火炉の内壁10全面をカバーできるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
ボイラ火炉等の面で囲まれる容器の内部の検査に用い、基準点を決定することが容易であり、しかも特定する検査位置が大型の容器内であっても簡単に位置を特定することができ、検査と検査位置特定を同時に行うことができる面で囲まれる容器の内壁面での検査作業結果と作業位置の特定方法として利用することができるとともに、併せてその情報管理方法として利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
10 内壁
12 足場
14 マーカー
16 発信器
18 検査位置
20 受信ユニット
24 一体物
26 肉厚計
28 モバイルPC
41 受波器
42 距離演算装置
43 肉圧計探触子
62、63 発信部
111 ボイラ火炉


【特許請求の範囲】
【請求項1】
面で囲まれる容器の内壁面での検査作業結果と作業位置の特定方法であって、
前記内壁面上の位置座標既知の箇所に音波を異なる2箇所以上から発信可能な発信器を配置し、
作業者が携帯可能であって、前記音波を受信可能な受波器及び前記検査が可能な検査具が一体となった一体物を、前記検査作業を行う位置に配置し、
前記検査具を用いて前記検査作業結果を得るとともに、
前記発信器の2箇所以上より音波を発信し、
前記2箇所以上から発信された音波それぞれが、前記受波器に到達する時間を計測し、
前記到達時間と、前記2箇所以上の音波の発信箇所の位置座標を用いて、前記受波器の位置座標を特定することを特徴とする面で囲まれる容器の内壁面での検査作業結果と作業位置の特定方法。
【請求項2】
前記位置座標既知の箇所は、前記発信器設置箇所の目印として前記容器内壁に設けられたマーカーであることを特徴とする請求項1記載の面で囲まれる容器の内壁面での検査作業結果と作業位置の特定方法。
【請求項3】
水平方向の位置座標が既知であって鉛直方向に延びる前記内壁面を構成する管に沿って、先端から一定間隔毎に目印をつけたひも状又は棒状部材を、前記容器の内壁面上方から先端が容器下面に到達するまで垂らし、
前記目印を前記位置座標既知の箇所として利用することを特徴とする請求項1記載の面で囲まれる容器の内壁面での検査作業結果と作業位置の特定方法。
【請求項4】
前記容器はボイラ火炉であって、
前記検査作業は、前記ボイラ火炉の内壁面を形成する蒸気管の肉厚を測定する肉厚検査であることを特徴とする請求項1〜3何れかに記載の面で囲まれる容器の内壁面での検査作業結果と作業位置の特定方法。
【請求項5】
前記容器内壁面の複数個所で、請求項1〜4何れかに記載の方法により面で囲まれる容器の内壁面での検査作業結果と作業位置を特定し、
前記複数個所での検査作業結果と作業位置の情報を外部の管理装置に送信し、
該管理装置で集中管理することを特徴とする面で囲まれる容器の内壁面での検査作業結果と作業位置の情報管理方法。
【請求項6】
前記集中管理は、前記複数個所での検査作業結果と作業位置の情報を、
作業位置毎に検査作業結果を示したマップとして表すことを特徴とする請求項5記載の面で囲まれる容器の内壁面での検査作業結果と作業位置の情報管理方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−132844(P2012−132844A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286631(P2010−286631)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】