説明

面発光型半導体レーザ

【課題】注入電流の大きさを変化させても、全光出力における各横モードの出力の割合の変動を抑制することが可能なトンネル接合型の面発光型半導体レーザを提供する。
【解決手段】面発光型半導体レーザ100は、下部DBR3と、下部スペーサ層5と、活性層7と、第1上部スペーサ層9と、第1上部スペーサ層9の上面9Sの一部(第1領域9S1及び第2領域9S2)上に設けられたトンネル接合領域TJと、トンネル接合領域TJを埋め込むようにトンネル接合領域TJ上及び第1上部スペーサ層9上に設けられた第2上部スペーサ層15と、上部分布ブラッグリフレクタ19と、を備える。トンネル接合領域TJの単位面積当たりのトンネル抵抗は、半導体基板1の主面1Sと直交する方向から見た場合のトンネル接合領域TJの内側から外側に向かって、段階的に減少、及び/又は、単調に減少することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面発光型半導体レーザに関する。
【背景技術】
【0002】
面発光型半導体レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)は、低消費電力で高速動作可能な直接変調型レーザとして、光通信分野への応用等を目的とした開発が続けられている。一般的に、面発光型半導体レーザは、電流効率を高め、しきい値電流を下げるため、活性層へ流れる電流を狭窄するための電流狭窄構造を有している。このような電流狭窄構造を有する面発光型半導体レーザの一つとして、トンネル接合領域を有するトンネル接合型の面発光型半導体レーザが知られている。
【0003】
下記非特許文献1には、トンネル接合型の面発光型半導体レーザが記載されている。この面発光型半導体レーザは、電流狭窄を行うためのメサ形状のトンネル接合領域を有している。下記非特許文献1には、このトンネル接合のメサ径を5μm程度に小さくすることで、当該面発光型半導体レーザを基本横モードでシングルモード発振可能であることが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】N. Nishiyama et. al. “High efficiency long wavelength VCSELon InP grown by MOCVD”, ElectronicsLetters, Vol.39, No.5, pp.437-439 (2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記非特許文献1に記載の面発光型半導体レーザのようなシングルモードファイバと結合させて使用されるシングルモード発振可能なトンネル接合型の面発光型半導体レーザについては開発が進められているのに対して、マルチモードファイバと結合させて使用されるマルチモード発振可能なトンネル接合型の面発光型半導体レーザについての報告例は少ない。そして、本願発明者らは、マルチモード発振可能なトンネル接合型の面発光型半導体レーザにおいて、以下のような問題点があることを見出した。
【0006】
即ち、従来のトンネル接合型の面発光型半導体レーザを低電流で発振させた場合、面発光型半導体レーザを構成する各半導体層の積層方向から見て、トンネル接合領域の中央部付近に最も多くのキャリアが流れるため、当該トンネル接合領域の中央部付近に光強度ピークを有する基本横モードの利得が高くなる。そのため、基本横モードで優先的に発振し、高次横モードでは殆ど発振しない。それに対して、従来のトンネル接合型の面発光型半導体レーザを高電流で発振させた場合、基本横モードでの発振について自己利得飽和が生じる上に、上記積層方向から見て、相対的に当該トンネル接合領域の周縁部付近に流れるキャリアが増加するため、当該トンネル接合領域の周縁部付近に光強度ピークを有する高次横モードの利得が高くなる。そのため、基本横モードよりも当該高次横モードで優先的に発振するようになり、マルチモード発振する。
【0007】
そのため、従来のトンネル接合型の面発光型半導体レーザにおいて、強度変調信号を生成するために注入電流の大きさを変化させると、全光出力における各横モードの出力の割合が大きく変動してしまう。当該面発光型半導体レーザとマルチモードファイバとの結合効率や当該ファイバからの戻り光の強度は、横モードの種類ごとに異なるため、全光出力における各横モードの出力の割合が大きく変動すると、強度変調信号におけるノイズの原因となってしまうという問題点がある。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、注入電流の大きさを変化させても、全光出力における各横モードの出力の割合の変動を抑制することが可能なトンネル接合型の面発光型半導体レーザを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するため、本発明に係る面発光型半導体レーザは、半導体基板の主面上に設けられた第1導電型の半導体からなる下部分布ブラッグリフレクタと、下部分布ブラッグリフレクタ上に設けられた第1導電型の半導体からなる下部スペーサ層と、下部スペーサ層上に設けられた活性層と、活性層上に設けられた第2導電型の半導体からなる第1上部スペーサ層と、第1上部スペーサ層の上面の一部上に設けられたトンネル接合領域と、トンネル接合領域を埋め込むようにトンネル接合領域上及び第1上部スペーサ層上に設けられた、第2導電型の半導体からなる第2上部スペーサ層と、第2上部スペーサ層上に設けられた上部分布ブラッグリフレクタと、を備え、トンネル接合領域の単位面積当たりのトンネル抵抗は、半導体基板の主面と直交する方向から見た場合のトンネル接合領域の内側から外側に向かって、段階的に減少、及び/又は、単調に減少することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る面発光型半導体レーザにおいては、トンネル接合領域の単位面積当たりのトンネル抵抗は、半導体基板の主面と直交する方向から見た場合のトンネル接合領域の内側から外側に向かって、段階的に減少、及び/又は、単調に減少する。そのため、本発明の面発光型半導体レーザを低電流で発振させた場合、従来の面発光型半導体レーザにおける場合と比較して、単位面積当たりのトンネル抵抗が高いトンネル接合領域の中央部付近に流れるキャリアの量は相対的に減少すると共に、単位面積当たりのトンネル抵抗が低いトンネル接合領域の周縁部付近に流れるキャリアの量は相対的に増加する。そのため、トンネル接合領域の中央部付近に光強度ピークを有する基本横モードの利得を相対的に抑制しつつ、トンネル接合領域の周縁部付近に光強度ピークを有する高次横モードの利得を相対的に高くすることができる。そのため、基本横モードと当該高次横モードとで同時に発振させることができる。
【0011】
また、本発明の面発光型半導体レーザを高電流で発振させた場合、単位面積当たりのトンネル抵抗が高いトンネル接合領域の中央部付近に流れるキャリアの量が増加するため、トンネル接合領域の中央部付近に光強度ピークを有する基本横モードの利得や、トンネル接合領域の中央部付近に光強度ピークを有する高次横モードの利得が高くなる。そのため、基本横モードや当該高次横モードでも安定して発振が続く。
【0012】
これにより、本発明に係るトンネル接合型の面発光型半導体レーザによれば、従来の面発光型半導体レーザにおける場合と比較して、注入電流の大きさを変化させても、全光出力における各横モードの出力の割合の変動を抑制することが可能となる。
【0013】
さらに、本発明に係る面発光型半導体レーザにおいては、第1上部スペーサ層の上面は、第1領域と、当該第1領域を囲む第2領域と、を有し、トンネル接合領域は、第1領域上に設けられた第1トンネル接合部と、第2領域上に設けられた第2トンネル接合部と、を有し、第2トンネル接合部の単位面積当たりのトンネル抵抗は、第1トンネル接合部の単位面積当たりのトンネル抵抗よりも低いことが好ましい。
【0014】
この場合、トンネル接合領域の単位面積当たりのトンネル抵抗は、第1トンネル接合部と第2トンネル接合部の境界部において段階的に変化する。そのため、上記のような第1トンネル接合部と第2トンネル接合部を形成することにより、トンネル接合領域の単位面積当たりのトンネル抵抗が半導体基板の主面と直交する方向から見た場合のトンネル接合領域の内側から外側に向かって段階的に減少するという態様を容易に実現することができる。
【0015】
また、本発明に係る面発光型半導体レーザにおいては、トンネル接合領域の単位面積当たりのトンネル抵抗は、半導体基板の主面と直交する方向から見た場合のトンネル接合領域の内側から外側に向かって、単調に減少することが好ましい。これにより、トンネル接合領域の内側から外側に向かって電流分布が連続的に変化するため、各横モードに対するキャリアの供給をより均一にすることができる。
【0016】
また、本発明に係る面発光型半導体レーザにおいては、トンネル接合領域は化合物半導体からなり、トンネル接合領域の単位面積当たりのトンネル抵抗がトンネル接合領域の内側から外側に向かって、段階的に減少、及び/又は、単調に減少するように、トンネル接合領域の化合物半導体の組成比は、トンネル接合領域の内側から外側に向かって、段階的に変化、及び/又は、単調に変化していることが好ましい。
【0017】
この場合、トンネル接合領域の化合物半導体の組成比を、当該トンネル接合領域の内側から外側に向かって所定の態様で変動させることにより、トンネル接合領域の単位面積当たりのトンネル抵抗がトンネル接合領域の内側から外側に向かって、段階的に減少、及び/又は、単調に減少するという態様を容易に実現することができる。
【0018】
また、本発明に係る面発光型半導体レーザにおいては、トンネル接合領域の単位面積当たりのトンネル抵抗がトンネル接合領域の内側から外側に向かって、段階的に減少、及び/又は、単調に減少するように、トンネル接合領域にドープされているキャリア濃度は、トンネル接合領域の内側から外側に向かって、段階的に変化、及び/又は、単調に変化していることが好ましい。
【0019】
この場合、トンネル接合領域にドープされているキャリア濃度を、当該トンネル接合領域の内側から外側に向かって所定の態様で変動させることにより、トンネル接合領域の単位面積当たりのトンネル抵抗がトンネル接合領域の内側から外側に向かって、段階的に減少、及び/又は、単調に減少するという態様を容易に実現することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、注入電流の大きさを変化させても、全光出力における各横モードの出力の割合の変動を抑制することが可能なトンネル接合型の面発光型半導体レーザが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態に係る面発光型半導体レーザの主要部の断面を示す図である。
【図2】実施形態に係る面発光型半導体レーザの上面図である。
【図3】トンネル接合領域TJの単位面積当たりのトンネル抵抗の位置依存性を示す図である。
【図4】実施形態の面発光型半導体レーザの製造方法を説明するための断面図である。
【図5】実施形態の面発光型半導体レーザの製造方法を説明するための断面図である。
【図6】実施形態の面発光型半導体レーザの製造方法を説明するための断面図である。
【図7】実施形態の面発光型半導体レーザの製造方法を説明するための断面図である。
【図8】実施形態の面発光型半導体レーザの製造方法を説明するための断面図である。
【図9】実施形態の面発光型半導体レーザの製造方法を説明するための断面図である。
【図10】比較例の面発光型半導体レーザを示す断面図である。
【図11】実施例の面発光型半導体レーザ100について、シミュレーションで求めた出力パワーの注入電流依存性を示す図である。
【図12】比較例の面発光型半導体レーザ面発光型半導体レーザ100Pについて、シミュレーションで求めた出力パワーの電流依存性を示す図である。
【図13】変形例に係るトンネル接合領域TJの単位面積当たりのトンネル抵抗の位置依存性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施の形態に係る面発光型半導体レーザについて、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図面において、可能な場合には同一要素には同一符号を用いる。また、図面中の構成要素内及び構成要素間の寸法比は、図面の見易さのため、それぞれ任意となっている。
【0023】
図1は、本実施形態に係る面発光型半導体レーザの主要部の断面を示す図であり、図2は、本実施形態に係る面発光型半導体レーザの上面図である。図1は、図2のI−I線に沿った面発光型半導体レーザの断面を示している。
【0024】
図1に示すように、本実施形態の面発光型半導体レーザ100は、半導体基板1と、半導体基板1の主面1S上に設けられた下部分布ブラッグリフレクタ(以下、「下部DBR」とする)3と、下部DBR3上に設けられた下部スペーサ層5と、下部スペーサ層5上に設けられた活性層7と、活性層7上に設けられた第1上部スペーサ層9と、第1上部スペーサ層9の上面9Sの一部上に設けられたトンネル接合領域TJと、トンネル接合領域TJを埋め込むようにトンネル接合領域TJ上及び第1上部スペーサ層9上に設けられた第2上部スペーサ層15と、第2上部スペーサ層15上に設けられたコンタクト層17と、コンタクト層17を介して第2上部スペーサ層15の一部上に設けられた上部分布ブラッグリフレクタ(以下、「上部DBR」とする)19と、コンタクト層17を介して第2上部スペーサ層15の他の一部上に設けられた上部電極21と、半導体基板1の裏面1B上に設けられた下部電極23と、を備えている。
【0025】
半導体基板1は、第1導電型であるn型の半導体材料からなり、例えば、シリコン(Si)がドープされたInP等のIII−V族化合物半導体からなる。半導体基板1は、例えば板状の部材であり、略平坦な主面1S及び裏面1Bを有する。以下で詳細に説明する下部DBR3から上部DBR19までの各層は、半導体基板1の主面1S上に、当該主面1Sと直交する方向に沿って積層されている。
【0026】
下部DBR3は、n型の半導体からなる。具体的には、下部DBR3は、交互に配列された複数の第1半導体層3a及び第2半導体層3bを含む。第1半導体層3aの屈折率は第2半導体層3bの屈折率よりも大きい。また、各第1半導体層3aは略同一の厚さを有し、各第2半導体層3bは略同一の厚さを有する。
【0027】
そのため、下部DBR3の屈折率は、主面1Sと直交する方向(以下、「積層方向」と言う場合がある)に沿って周期的に変化する。第1半導体層3aは、n型の半導体材料からなり、例えば、シリコン(Si)がドープされたAlGaInAs等のIII−V族化合物半導体からなる。第2半導体層3bは、n型の半導体材料からなり、例えば、シリコン(Si)がドープされたInP等のIII−V族化合物半導体からなる。下部DBR3が有する第1半導体層3aと第2半導体層3bとの組数は、図1においては2組となっているが、特に制限されず、例えば、40組とすることができる。下部DBR3のキャリア密度は、例えば、8×1017cm−3とすることができる。
【0028】
下部スペーサ層5は、n型の半導体材料からなり、例えば、シリコン(Si)がドープされたInP等のIII−V族化合物半導体からなる。下部スペーサ層5の厚さは、例えば、200nmとすることができる。下部スペーサ層5のキャリア密度は、例えば、5×1017cm−3とすることができる。
【0029】
活性層7は、例えば量子井戸構造を有しており、交互に配列された井戸層及び障壁層を含む。活性層7を構成する半導体としては、例えば、AlGaInAs等のノンドープのIII−V族化合物半導体を挙げることができる。
【0030】
第1上部スペーサ層9は、第2導電型であるp型の半導体材料からなり、例えば、亜鉛(Zn)がドープされたInP等のIII−V族化合物半導体からなる。第1上部スペーサ層9の厚さは、例えば、100nmとすることができる。第1上部スペーサ層9のキャリア密度は、例えば、7×1017cm−3とすることができる。また、第1上部スペーサ層9は、略平坦な上面9Sを有する。
【0031】
また、図1及び図2に示すように、第1上部スペーサ層9の上面9Sは、第1領域9S1と、第2領域9S2と、第3領域9S3と、からなる。本実施形態においては、第1領域9S1は、積層方向から見て、円形である。第2領域9S2は、積層方向から見て、第1領域9S1を囲んでおり、本実施形態においては、環状である。第3領域9S3は、積層方向から見て第2領域9S2を囲んでおり、本実施系形態においては、上面9Sのうち、第1領域9S1と第2領域9S2以外の領域である。
【0032】
トンネル接合領域TJは、活性層7に流れる電流を狭窄するために、第1上部スペーサ層9の上面9Sの一部上(本実施形態では、第1領域9S1及び第2領域9S2上)に設けられている。本実施形態のトンネル接合領域TJは、積層方向に突出するメサ形状を有しており、積層方向から見て円形である。
【0033】
また、本実施形態のトンネル接合領域TJは、第1領域9S1上に設けられた第1トンネル接合部11と、第2領域9S2上に設けられた第2トンネル接合部12と、からなる。第1トンネル接合部11は、積層方向に突出するメサ形状を有しており、第1領域9S1と同様に積層方向から見て円形である。第2トンネル接合部12は、第1トンネル接合部11と略同じ高さだけ積層方向に突出している。また、第2トンネル接合部12は、積層方向から見て、第1トンネル接合部11の側面と接するように当該第1トンネル接合部11を囲んでおり、第2領域9S2と同様に環状である。
【0034】
また、第1トンネル接合部11は、第1p型半導体層11Aと、第1n型半導体層11Bとからなる。第1p型半導体層11A及び第1n型半導体層11Bは、この順に第1上部スペーサ層9の上面9Sの第1領域9S1上に積層されている。また、第2トンネル接合部12は、第2p型半導体層12Aと、第2n型半導体層12Bとからなる。第2p型半導体層12A及び第2n型半導体層12Bは、この順に第1上部スペーサ層9の上面9Sの第2領域9S2上に積層されている。第1p型半導体層11Aの側面は、第2p型半導体層12Aの側面と接しており、第1n型半導体層11Bの側面は、第2n型半導体層12Bの側面と接している。
【0035】
第1p型半導体層11A及び第2p型半導体層12Aは、それぞれ、第1上部スペーサ層9よりもキャリア濃度が高くなるように、高濃度(例えば、1×1019cm−3)にp型不純物(例えば、炭素(C))がドープされたAlGaInAs等のIII−V族化合物半導体からなる。第1n型半導体層11B及び第2n型半導体層12Bは、それぞれ第2上部スペーサ層15よりもキャリア濃度が高くなるように、高濃度(例えば、7×1018cm−3)にn型不純物(例えば、シリコン(Si))がドープされたAlGaInAs等のIII−V族化合物半導体からなる。
【0036】
第1p型半導体層11A及び第1n型半導体層11Bは、これらの界面においてトンネル接合11Tを構成し、第2p型半導体層12A及び第2n型半導体層12Bは、これらの界面においてトンネル接合12Tを構成する。即ち、第1p型半導体層11A及び第1n型半導体層11B間に電圧を印加することにより、これらの界面を通過するように積層方向にトンネル電流を流すことが可能であり、同様に、第2p型半導体層12A及び第2n型半導体層12B間に電圧を印加することにより、これらの界面を通過するように積層方向にトンネル電流を流すことが可能である。
【0037】
本実施形態では、第1p型半導体層11A及び第2p型半導体層12Aは略同一の厚さを有し、これらの厚さは、例えば5nm以上、20nm以下とすることができる。また、本実施形態では第1n型半導体層11B及び第2n型半導体層12Bは略同一の厚さを有し、これらの厚さは、例えば5nm以上、20nm以下とすることができる。
【0038】
また、積層方向から見た場合の第1トンネル接合部11の直径W11(即ち、第2トンネル接合部12の内径)は、例えば、3μm以上、7μm以下とすることができる。第2トンネル接合部12の外径W12は、例えば、4μm以上、12μm以下とすることができる。
【0039】
また、以下に詳細に説明するように、トンネル接合領域TJの単位面積当たりのトンネル抵抗は、積層方向から見た場合のトンネル接合領域TJの内側から外側に向かって、段階的に減少する。ここで、「トンネル接合領域TJの単位面積」とは、積層方向と直交する平面におけるトンネル接合領域TJの単位面積、即ち、積層方向から見た場合のトンネル接合領域TJの単位面積を意味する。
【0040】
図3は、トンネル接合領域TJの単位面積当たりのトンネル抵抗の位置依存性を示す図である。横軸は、積層方向から見た場合のトンネル接合領域TJにおける位置を示し、縦軸は当該位置に対応するトンネル接合領域TJの単位面積当たりのトンネル抵抗を示している。図3に示すように、本実施形態においては、第1トンネル接合部11における単位面積当たりのトンネル抵抗は略一定であり、同様に、第2トンネル接合部12における単位面積当たりのトンネル抵抗は略一定である。また、第2トンネル接合部12の単位面積当たりのトンネル抵抗は、第1トンネル接合部11の単位面積当たりのトンネル抵抗よりも低い。
【0041】
これにより、トンネル接合領域TJの単位面積当たりのトンネル抵抗は、第1トンネル接合部11と第2トンネル接合部12の境界部において段階的に変化する。そのため、トンネル接合領域TJの単位面積当たりのトンネル抵抗は、積層方向から見た場合のトンネル接合領域TJの内側から外側に向かって(本実施形態においては、積層方向から見た場合のトンネル接合領域TJの中心CTJからトンネル接合領域TJの外縁ETJに向かって)、段階的に減少する。
【0042】
第1トンネル接合部11におけるトンネル抵抗は、例えば、30Ω以上、50Ω以下とすることができ、第1トンネル接合部11における単位面積当たりのトンネル抵抗は、例えば、1.30Ω/um以上、4.24Ω/um以下とすることができる。また、第2トンネル接合部12におけるトンネル抵抗は、例えば、10Ω以上、40Ω以下とすることができ、第2トンネル接合部12における単位面積当たりのトンネル抵抗は、例えば、0.54Ω/um以上、1.82Ω/um以下とすることができる。
【0043】
上述のようなトンネル接合領域TJを実現する方法の例として、トンネル接合領域TJを化合物半導体で構成すると共に、トンネル接合領域TJの単位面積当たりのトンネル抵抗がトンネル接合領域TJの内側から外側に向かって段階的に減少するように、トンネル接合領域TJの化合物半導体の組成比を、トンネル接合領域TJの内側から外側に向かって段階的に変化させる方法が挙げられる。
【0044】
より具体的には、第1トンネル接合部11と第2トンネル接合部12を同種の化合物半導体で構成する。そして、第2トンネル接合部12のバンドギャップが第1トンネル接合部11のバンドギャップよりも小さくなるように(即ち、第2トンネル接合部12のバンドギャップ波長が第1トンネル接合部11のバンドギャップ波長よりも大きくなるように)、第1トンネル接合部11を構成する化合物半導体の組成比と、第2トンネル接合部12を構成する化合物半導体の組成比を、それぞれ調節する。(例えば、第1トンネル接合部11のバンドギャップ波長が1200nm、第2トンネル接合部12のバンドギャップ波長が1300nmとなるように第1トンネル接合部11及び第2トンネル接合部12の組成比と調節する。)。これにより、第2トンネル接合部12の単位面積当たりのトンネル抵抗を、第1トンネル接合部11の単位面積当たりのトンネル抵抗よりも小さくすることができるため、上述のようなトンネル接合領域TJを実現することができる。
【0045】
このような方法を採用した場合、トンネル接合領域TJの化合物半導体の組成比を、当該トンネル接合領域TJの内側から外側に向かって所定の態様で変動させることにより、トンネル接合領域TJの単位面積当たりのトンネル抵抗がトンネル接合領域TJの内側から外側に向かって段階的に減少するという態様を容易に実現することができる。
【0046】
また、上述のようなトンネル接合領域TJを実現する方法の他の例として、トンネル接合領域TJの単位面積当たりのトンネル抵抗がトンネル接合領域TJの内側から外側に向かって、段階的に減少するように、トンネル接合領域TJにドープされているキャリア濃度を、トンネル接合領域TJの内側から外側に向かって、段階的に変化させる方法が挙げられる。
【0047】
より具体的には、第1トンネル接合部11と第2トンネル接合部12を同種又は異種の半導体で構成する。そして、第2トンネル接合部12の導電率が第1トンネル接合部11の導電率よりも小さくなるように、第1トンネル接合部11にドープするキャリア濃度と、第2トンネル接合部12にドープするキャリア濃度を、それぞれ調節する。これにより、第2トンネル接合部12の単位面積当たりのトンネル抵抗を、第1トンネル接合部11の単位面積当たりのトンネル抵抗よりも小さくすることができるため、上述のようなトンネル接合領域TJを実現することができる。
【0048】
このような方法を採用した場合、トンネル接合領域TJにドープされているキャリア濃度を、当該トンネル接合領域TJの内側から外側に向かって所定の態様で変動させることにより、トンネル接合領域TJの単位面積当たりのトンネル抵抗がトンネル接合領域TJの内側から外側に向かって、段階的に減少するという態様を容易に実現することができる。
【0049】
図1及び図2を再び参照し、面発光型半導体レーザ100の他の要素について説明する。図1に示すように、第2上部スペーサ層15は、トンネル接合領域TJを埋め込むようにトンネル接合領域TJ上及び第1上部スペーサ層9上に設けられている。第2上部スペーサ層15は、n型の半導体材料からなり、例えば、シリコン(Si)がドープされたInP等のIII−V族化合物半導体からなる。第1上部スペーサ層9の上面9Sを基準とした第2上部スペーサ層15の厚さは、例えば、260nmとすることができる。下部スペーサ層5のキャリア密度は、例えば、5×1017cm−3とすることができる。
【0050】
コンタクト層17は、n型の半導体材料からなり、例えば、n型不純物がドープされたInGaAs等のIII−V族化合物半導体からなる。なお、面発光型半導体レーザ100はコンタクト層17を備えていなくてもよい。
【0051】
第2上部スペーサ層15上には、上部DBR19及び上部電極21が設けられている。半導体基板1の裏面1Bには、下部電極23が設けられている。上部電極21は上部電極21とオーミック接触する。コンタクト層17が存在しない場合、上部電極21は第2上部スペーサ層15上に設けられる。また、上部電極21は、トンネル接合領域TJの上方に開口21Hを有する。本実施形態では、積層方向から見て開口21Hは円形であり、トンネル接合領域TJは開口21H内に含まれる。
【0052】
上部DBR19は、上部電極21の開口21Hを介してコンタクト層17と接している。コンタクト層17が存在しない場合、上部DBR19は、上部電極21の開口21Hを介して第2上部スペーサ層15と接する。
【0053】
上部DBR19の屈折率は、積層方向に沿って周期的に変化する。上部DBR19は、交互に配列された複数の第1誘電体層19a及び第2誘電体層19bを含む。第1誘電体層19aの屈折率は第2誘電体層19bの屈折率よりも大きい。また、各第1誘電体層19aは略同一の厚さを有し、各第2誘電体層19bは略同一の厚さを有する。第1誘電体層19aは、例えば、SiO等の誘電材料からなり、第2誘電体層19bは、例えば、TiO等の誘電材料からなる。
【0054】
また、図2に示すように、第2上部スペーサ層15上には、上部電極21と離間して設けられた金属材料からなる電極パッド31と、上部電極21と電極パッド31とを電気的に接続するための金属材料からなる接続部材33と、が設けられている。
【0055】
面発光型半導体レーザ100を動作させる際には、電極パッド31を介して上部電極21に正電圧を印加すると共に、下部電極23に負電圧を印加する。すると、第2上部スペーサ層15と第1上部スペーサ層9との間に逆バイアスが印加されるため、第1上部スペーサ層9と第2上部スペーサ層15とが直接接触する界面(第1上部スペーサ層9の第3領域9S3と第2上部スペーサ層15とが直接接触する界面)は、キャリアが通過できない。
【0056】
それに対して、トンネル接合領域TJの第1トンネル接合部11及び第2トンネル接合部12は、トンネル接合11T及びトンネル接合12Tを構成するため、トンネル接合領域TJを介してキャリアは第1上部スペーサ層9及び第2上部スペーサ層15間を移動することができる。これにより、トンネル接合領域TJによって狭窄された電流が活性層7に注入され、再結合により光が生じる。当該光は、下部DBR3と上部DBR19の機能によって積層方向に沿って共振し、上部DBR19を介して外部にレーザ光が出力される。
【0057】
次に、上述のような面発光型半導体レーザ100の製造方法の一例について説明する。図4〜図9は、本実施形態の面発光型半導体レーザの製造方法を説明するための断面図である。
【0058】
本実施形態の面発光型半導体レーザ100の製造においては、面発光型半導体レーザ100が備える各半導体層は、例えば分子線エピタキシー(MBE)法あるいは有機金属気相成長(MOCVD)法により成長される。
【0059】
まず、図4に示すように、半導体基板1の主面1S上に、例えば、下部DBR3、下部スペーサ層5、活性層7、第1上部スペーサ層9、及び、半導体積層11Xをこの順に形成する。半導体積層11Xは、第1トンネル接合部11となるべき要素であり、第1p型半導体層11Aとなるべき半導体層11AXと、第1n型半導体層11Bとなるべき半導体層11BXと、からなる(図1参照)。
【0060】
次に、図5に示すように、半導体積層11Xのうち、第1トンネル接合部11となるべき領域(第1領域9S1上の領域)を絶縁材料からなるマスクで覆い、当該マスクを用いて半導体積層11Xをエッチングすることにより、第1トンネル接合部11を形成する。
【0061】
そして、図6に示すように、第1トンネル接合部11の形成のために用いた上記マスクを選択成長マスクとして用いて、第1トンネル接合部11を埋め込むように、第1上部スペーサ層9の第2領域9S2及び第3領域9S3上に半導体積層12Xを形成する。半導体積層12Xは、第2トンネル接合部12となるべき要素であり、第2p型半導体層12Aとなるべき半導体層12AXと、第2n型半導体層12Bとなるべき半導体層12BXと、からなる。
【0062】
続いて、図7に示すように、第1トンネル接合部11の形成のために用いた上記マスクを除去した後に、第1トンネル接合部11及び半導体積層12Xのうち、トンネル接合領域TJとなるべき領域(第2領域9S2及び第3領域9S3上の領域)を絶縁材料からなるマスクで覆い、当該マスクを用いて半導体積層12Xをエッチングすることにより、第2トンネル接合部12を形成する。これにより、第1トンネル接合部11と第2トンネル接合部12とからなるトンネル接合領域TJが形成される。
【0063】
次に、図8に示すように、トンネル接合領域TJを埋め込むように、トンネル接合領域TJ上及び第1上部スペーサ層9上に第2上部スペーサ層15を形成し、第2上部スペーサ層15上にコンタクト層17を形成する。
【0064】
そして、図9に示すように、コンタクト層17上に上部DBR19及び上部電極21を形成し、その後、電極パッド31と接続部材33(図2参照)を形成することにより、本実施形態のトンネル接合型の面発光型半導体レーザ100が得られる。
【0065】
上述のような本実施形態に係る面発光型半導体レーザ100においては、トンネル接合領域TJの単位面積当たりのトンネル抵抗は、半導体基板1の主面1Sと直交する方向(積層方向)から見た場合のトンネル接合領域TJの内側から外側に向かって、段階的に減少する(図1及び図3参照)。そのため、本実施形態の面発光型半導体レーザ100を低電流で発振させた場合、従来の面発光型半導体レーザにおける場合と比較して、単位面積当たりのトンネル抵抗が高いトンネル接合領域TJの中央部付近(上述の実施形態では、第1トンネル接合部11付近)に流れるキャリアの量は相対的に減少すると共に、単位面積当たりのトンネル抵抗が低いトンネル接合領域TJの周縁部付近(上述の実施形態では、第2トンネル接合部12付近)に流れるキャリアの量は相対的に増加する(図1及び図3参照)。
【0066】
そのため、トンネル接合領域TJの中央部付近に光強度ピークを有する基本横モード(LP01モード)の利得を相対的に抑制しつつ、トンネル接合領域の周縁部付近に光強度ピークを有する高次横モード(LP11モード、LP12モード)の利得を相対的に高くすることができる。そのため、基本横モードと当該高次横モードとで同時に発振させることができる。
【0067】
また、本実施形態の面発光型半導体レーザ100を高電流で発振させた場合、単位面積当たりのトンネル抵抗が高いトンネル接合領域TJの中央部付近(上述の実施形態では、第1トンネル接合部11付近)に流れるキャリアの量が増加するため、トンネル接合領域TJの中央部付近に光強度ピークを有する基本横モード(LP01モード)の利得や、トンネル接合領域TJの中央部付近に光強度ピークを有する高次横モード(LP02モード)の利得が高くなる。そのため、基本横モードや当該高次横モードでも安定して発振が続く。
【0068】
これにより、本実施形態に係るトンネル接合型の面発光型半導体レーザ100によれば、従来の面発光型半導体レーザにおける場合と比較して、注入電流の大きさを変化させても、全光出力における各横モード(LP01モード、LP11モード、LP12モード、LP02モード)の出力の割合の変動を抑制することが可能となる。
【0069】
さらに、本実施形態に係る面発光型半導体レーザ100においては、第1上部スペーサ層9の上面9Sは、第1領域9S1と、当該第1領域9S1を囲む第2領域9S2と、を有し、トンネル接合領域TJは、第1領域9S1上に設けられた第1トンネル接合部11と、第2領域9S2上に設けられた第2トンネル接合部12と、を有し、第2トンネル接合部12の単位面積当たりのトンネル抵抗は、第1トンネル接合部11の単位面積当たりのトンネル抵抗よりも低い(図1及び図3参照)。
【0070】
これにより、トンネル接合領域TJの単位面積当たりのトンネル抵抗は、第1トンネル接合部11と第2トンネル接合部12の境界部において段階的に変化する(図3参照)。そのため、このような第1トンネル接合部11と第2トンネル接合部12を形成することにより、トンネル接合領域TJの単位面積当たりのトンネル抵抗が、積層方向から見た場合のトンネル接合領域TJの内側から外側に向かって段階的に減少するという態様を容易に実現することができる。
【0071】
次に、実施例及び比較例について行ったシミュレーション結果について説明する。まず、実施例の面発光型半導体レーザとして、図1に示す面発光型半導体レーザ100を用意した。第1トンネル接合部11の直径W11を5μm、第2トンネル接合部12の内径を5μm、及び、第2トンネル接合部12の外径を8μmとした。第1トンネル接合部11のトンネル抵抗を30Ωとした。そのため、第1トンネル接合部11の単位面積当たりのトンネル抵抗は、1.53Ω/umとなった。第2トンネル接合部12のトンネル抵抗を15Ωとした。そのため、第2トンネル接合部12の単位面積当たりのトンネル抵抗は、0.49Ω/umとなった。
【0072】
次に、比較例の面発光型半導体レーザを用意した。図10は、比較例の面発光型半導体レーザを示す断面図である。図10において、実施例の面発光型半導体レーザ100と同一の要素には、同一の符号を付している。比較例の面発光型半導体レーザ100Pは、トンネル接合領域の構成において、実施例の面発光型半導体レーザ100と異なる。面発光型半導体レーザ100Pのトンネル接合領域TJPは、積層方向から見て円形であり、p型半導体層11Apと、n型半導体層11Bpからなる。p型半導体層11Apとn型半導体層11Bpは、トンネル接合11Tpを構成する。トンネル接合領域TJPの直径W11pは、8μmとした。トンネル接合領域TJPの単位面積当たりのトンネル抵抗は、積層方向から見た場合のトンネル接合領域TJPの内側から外側に向かって略一定とし、30Ωとした。
【0073】
図11は、実施例の面発光型半導体レーザ100について、シミュレーションで求めた出力パワーの注入電流依存性を示す図であり、図12は、比較例の面発光型半導体レーザ面発光型半導体レーザ100Pについて、シミュレーションで求めた出力パワーの電流依存性を示す図である。また、図11及び図12では、各横モード(基本横モードであるLP01モード、高次横モードであるLP11モード、LP21モード、LP02モード)についての出力パワーと、全出力パワーT(各横モードでの出力パワーの合計値)を示している。
【0074】
図11に示されるように、実施例の面発光型半導体レーザ100においては、低電流で発振している場合でも、LP01モードとLP11モードの両方で発振しており、LP21モードとLP02モードでの発振も、比較的低い注入電流で生じている。その結果、実施例の面発光型半導体レーザ100においては、注入電流の大きさが変化しても、全光出力Tにおける各横モードの出力の割合の変動が小さいことがわかった。
【0075】
それに対して、図12に示されるように、比較例の面発光型半導体レーザ100Pにおいては、注入電流の大きさに依存して、一つの横モードでの発振が支配的となった。具体的には、低電流で発振している場合には、LP01モードでの発振が支配的であり、注入電流が増加すると、LP01モードでの発振が減少して、LP11モードでの発振が支配的となり、さらに電流が増加すると、LP21モードでの発振が支配的となり、さらにさらに電流が増加すると、LP02モードでの発振が支配的となった。その結果、比較例の面発光型半導体レーザ100Pにおいては、注入電流の大きさが変化すると、全光出力Tにおける各横モードの出力の割合の変動が大きいことがわかった。
【0076】
本発明は上述の実施形態に限定されず、様々な変形態様が可能である。
【0077】
例えば、上述の実施形態においては、トンネル接合領域TJの単位面積当たりのトンネル抵抗は、積層方向から見た場合のトンネル接合領域TJの内側から外側に向かって、段階的に減少するが(図3参照)、図3に対応する図13に示すように、トンネル接合領域TJの単位面積当たりのトンネル抵抗は、積層方向から見た場合のトンネル接合領域TJの内側から外側に向かって、単調に減少してもよい。これにより、トンネル接合領域の内側から外側に向かって電流分布が連続的に変化する。注入された電流は、レーザ発振のための利得に変換されるため、各横モードに対する利得をより均一にすることができる。
【0078】
このような変形例に係るトンネル接合領域TJを実現する方法の例として、トンネル接合領域TJを化合物半導体で構成すると共に、トンネル接合領域TJの単位面積当たりのトンネル抵抗がトンネル接合領域TJの内側から外側に向かって単調に減少するように、トンネル接合領域TJの化合物半導体の組成比を、トンネル接合領域TJの内側から外側に向かって単調に変化させることが挙げられる。
【0079】
このような方法を採用した場合、トンネル接合領域TJの化合物半導体の組成比を、当該トンネル接合領域TJの内側から外側に向かって所定の態様で変動させることにより、トンネル接合領域TJの単位面積当たりのトンネル抵抗がトンネル接合領域TJの内側から外側に向かって単調に減少するという態様を容易に実現することができる。
【0080】
また、上述の変形例に係るトンネル接合領域TJを実現する方法の他の例として、トンネル接合領域TJの単位面積当たりのトンネル抵抗がトンネル接合領域TJの内側から外側に向かって単調に減少するように、トンネル接合領域TJにドープされているキャリア濃度を、トンネル接合領域TJの内側から外側に向かって単調に変化させることが挙げられる。
【0081】
このような方法を採用した場合、トンネル接合領域TJにドープされているキャリア濃度を、当該トンネル接合領域TJの内側から外側に向かって所定の態様で変動させることにより、トンネル接合領域TJの単位面積当たりのトンネル抵抗がトンネル接合領域TJの内側から外側に向かって単調に減少するという態様を容易に実現することができる。
【0082】
また、トンネル接合領域TJの単位面積当たりのトンネル抵抗は、積層方向から見た場合のトンネル接合領域TJの内側から外側に向かって、段階的に減少及び単調に減少してもよい。即ち、トンネル接合領域TJの単位面積当たりのトンネル抵抗は、積層方向から見た場合のトンネル接合領域TJの内側から外側に向かって、トンネル接合領域TJの一部の領域において段階的に減少し、トンネル接合領域TJの他の一部の領域において単調に減少してもよい。
【0083】
また、上述の実施形態においては、積層方向から見て、第1上部スペーサ層9の上面9Sの第1領域9S1及び第1トンネル接合部11は円形であるが(図1及び図2参照)、これらの形状は、楕円や矩形であってもよい。その場合、積層方向から見て、第1上部スペーサ層9の上面9Sの第2領域9S2及び第2トンネル接合部12の形状も、楕円の環状や矩形の環状とすることができる。
【0084】
また、上述の実施形態においては、トンネル接合領域TJの単位面積当たりのトンネル抵抗は、積層方向から見た場合のトンネル接合領域TJの内側から外側に向かって、段階的に1回減少するが(図3参照)、2回以上段階的に減少してもよい。
【0085】
また、上述の実施形態においては、第1導電型をn型とし、第2導電型をp型としているが(図1参照)、第1導電型がp型、第2導電型がn型であってもよい。即ち、面発光型半導体レーザ100の各半導体層の導電型は、上述の実施形態における場合と逆であってもよい。ただし、上述の実施形態における場合のように第1導電型がn型、第2導電型がp型であると、面発光型半導体レーザ100内でp型半導体からなる領域が減少し、高速動作が可能となるため好ましい。
【符号の説明】
【0086】
1・・・半導体基板、3・・・下部DBR、5・・・下部スペーサ層、7・・・活性層、9・・・第1上部スペーサ層、11・・・第1トンネル接合部、12・・・第2トンネル接合部、19・・・上部DBR、21・・・上部電極、23・・・下部電極、TJ・・・トンネル接合領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の主面上に設けられた第1導電型の半導体からなる下部分布ブラッグリフレクタと、
前記下部分布ブラッグリフレクタ上に設けられた第1導電型の半導体からなる下部スペーサ層と、
前記下部スペーサ層上に設けられた活性層と、
前記活性層上に設けられた第2導電型の半導体からなる第1上部スペーサ層と、
前記第1上部スペーサ層の上面の一部上に設けられたトンネル接合領域と、
前記トンネル接合領域を埋め込むように前記トンネル接合領域上及び前記第1上部スペーサ層上に設けられた、第2導電型の半導体からなる第2上部スペーサ層と、
前記第2上部スペーサ層上に設けられた上部分布ブラッグリフレクタと、
を備え、
前記トンネル接合領域の単位面積当たりのトンネル抵抗は、前記半導体基板の前記主面と直交する方向から見た場合の前記トンネル接合領域の内側から外側に向かって、段階的に減少、及び/又は、単調に減少することを特徴とする面発光型半導体レーザ。
【請求項2】
前記第1上部スペーサ層の前記上面は、第1領域と、当該第1領域を囲む第2領域と、を有し、
前記トンネル接合領域は、前記第1領域上に設けられた第1トンネル接合部と、前記第2領域上に設けられた第2トンネル接合部と、を有し、
前記第2トンネル接合部の単位面積当たりのトンネル抵抗は、前記第1トンネル接合部の単位面積当たりのトンネル抵抗よりも低いことを特徴とする請求項1に記載の面発光型半導体レーザ。
【請求項3】
前記トンネル接合領域の単位面積当たりのトンネル抵抗は、前記半導体基板の前記主面と直交する方向から見た場合の前記トンネル接合領域の内側から外側に向かって、単調に減少することを特徴とする請求項1に記載の面発光型半導体レーザ。
【請求項4】
前記トンネル接合領域は化合物半導体からなり、
前記トンネル接合領域の単位面積当たりのトンネル抵抗が前記トンネル接合領域の前記内側から前記外側に向かって、段階的に減少、及び/又は、単調に減少するように、前記トンネル接合領域の前記化合物半導体の組成比は、前記トンネル接合領域の前記内側から前記外側に向かって、段階的に変化、及び/又は、単調に変化していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の面発光型半導体レーザ。
【請求項5】
前記トンネル接合領域の単位面積当たりのトンネル抵抗が前記トンネル接合領域の前記内側から前記外側に向かって、段階的に減少、及び/又は、単調に減少するように、前記トンネル接合領域にドープされているキャリア濃度は、前記トンネル接合領域の前記内側から前記外側に向かって、段階的に変化、及び/又は、単調に変化していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の面発光型半導体レーザ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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