説明

鞍乗型車両のキャニスタ配置構造

【課題】同乗者のステップの近傍にキャニスタが配置される構成において、キャニスタに接続される配管の配管長を可及的に短くできる鞍乗型車両のキャニスタ配置構造を提供する。
【解決手段】サブフレーム8Rに、該サブフレーム8Rから後斜め下方に延出するステップフレーム31Rが設けられ、ステップフレーム31Rの下端部に、同乗者が足を載せるステップ30Rが取付けられ、キャニスタ55の端部のうちの一方に、チャージ管64及びパージ管65が接続されるとともに、他方に、不要物を排出するドレイン管69が接続され、キャニスタ55は、チャージ管64及びパージ管65が接続される端部が前斜め上方に向くように、ステップフレーム31Rに沿って配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両のキャニスタ配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の技術として、特許文献1に開示される構造が知られている。
特許文献1に開示される自動二輪車では、車体フレームが、前部にヘッドパイプを有すると共に後部にピボットプレートを有するメインフレームと、このメインフレームの前部から下げたダウンチューブと、メインフレームの後部からタンデムシートを支えるために後方へ延ばされるシートレールと、このシートレールの撓みを防止するためにシートレールの途中からピボットプレートへ前下がり斜めに延ばされるサブフレームと、で構成されている。そして、この自動二輪車では、サブフレームに後下方に延びるステー(フレーム)が取付けられ、このステーに同乗者が脚を載せるピリオンステップが取付けられている。そして、この自動二輪車では、上記ピリオンステップ取付けのためのステーの外端よりも車幅方向内側であって、上記シートレールよりも車幅方向外側の位置に、キャニスタが配置され、このキャニスタが上記ステーに取付けられる構造が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−1823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に係る構造では、キャニスタがサブフレームに略沿って配置されており、燃料タンクに連通するチャージ管の接続部及び吸気系に連通するパージ管の接続部が、キャニスタよりも車両前方に配置される燃料タンクやキャブレタから遠くなる方向に向いているため、チャージ管及びパージ管を長くする必要があり、またこれら各管の配策も複雑化する課題がある。
【0005】
さらに、上記特許文献1に係る構造では、キャニスタ内の不要物を排出するためのドレイン管が、ピリオンステップの前方で開放されているため、走行中等に同乗者に不要物がかからないように配慮することが好ましい。そこで、これに対し、上記不要物の対策として、ドレイン管をピリオンステップよりも車両下方まで延ばしてもよいが、ドレイン管の長さが長くなってしまうので、各配管が長くなってしまうことによってキャニスタ及び各種配管を含む蒸発燃料処理装置が大型化してしまう課題がある。
【0006】
本発明は係る実情に鑑みてなされたものであり、同乗者のステップの近傍にキャニスタが配置される構成において、キャニスタに接続される配管の配管長を可及的に短くできる鞍乗型車両のキャニスタ配置構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の解決手段として、本発明は以下の手段を提供する。
請求項1に記載の発明は、ヘッドパイプ(3)と、該ヘッドパイプ(3)から後方へ延出するメインフレーム(4)と、前記メインフレーム(4)の後部から後斜め下方へ延出する左右一対のセンタフレーム(7L,7R)と、前記メインフレーム(4)の後部から後方へ延出する左右一対のシートフレーム(5L,5R)と、前方から後斜め上方に延出し、前記センタフレーム(7L,7R)及び前記シートフレーム(5L,5R)を連結する左右一対のサブフレーム(8L,8R)と、を備える車体フレーム(2)と、クランク軸を収容するクランクケース(25)と、該クランクケース(25)の前部に設けられるシリンダ部(26)と、該シリンダ部(26)に設けられるシリンダヘッド(27)と、を備え、前記車体フレーム(2)の前記メインフレーム(4)の下方に配置されるエンジン(12)と、前記エンジン(12)の上方に配置される燃料タンク(10)と、前記燃料タンク(10)の内部で生じた蒸発燃料を、チャージ管(65)を通して吸着するキャニスタ(55)を有し、該キャニスタ(55)で吸着した燃料を、該キャニスタ(55)からパージ管(64)を通して前記エンジン(12)上方の吸気系に供給する蒸発燃料処理装置と、を備える鞍乗型車両のキャニスタ配置構造において、前記サブフレーム(8L,8R)には、該サブフレーム(8L,8R)から後斜め下方に延出するステップフレーム(31L,31R)が設けられ、該ステップフレーム(31L,31R)の下端部には、同乗者が足を載せるステップ(30L,30R)が取付けられ、前記キャニスタ(55)は、筒状部(56)と、該筒状部(56)の両端を覆う端部(57,58)と、を備え、前記キャニスタ(55)の前記端部(57,58)のうちの一方(57)側に、前記チャージ管(64)及び前記パージ管(65)が接続されるとともに、他方(58)側に、前記筒状部(56)内の不要物を排出するドレイン管(69)が接続され、前記キャニスタ(55)は、前記端部(57,58)のうちの前記一方(57)側が前斜め上方に向くように、前記ステップフレーム(31L,31R)に沿って配置される、ことを特徴とする鞍乗型車両のキャニスタ配置構造を提供する。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造において、前記センタフレーム(7L,7R)及び前記サブフレーム(8L,8R)を側方から覆うカバー部材(38L,38R)が設けられ、前記チャージ管(64)及び前記パージ管(65)は、前記カバー部材(38L,38R)の内側を通るように配策される、ことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造において、前記カバー部材(38L,38R)は、前記キャニスタ(55)の前上方に配置されるとともに、前記ステップフレーム(31L,31R)の前記センタフレーム(7L,7R)との接続部を覆う覆い部(81L,81R)を有し、該覆い部(81L,81R)には、前記接続部を覆った状態で、前記ステップフレーム(31L,31R)を挿通させる切り欠き部(82L,82R)が形成され、前記チャージ管(64)及び前記パージ管(65)は、前記切り欠き部(82L,82R)に通される、ことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造において、前記キャニスタ(55)の前記端部(57,58)のうちの他方(58)側に、該キャニスタ(55)を大気に連通させる新気導入管(68)が接続され、該新気導入管(68)は、前記ステップフレーム(31L,31R)の車幅方向内側において該ステップフレーム(31L,31R)に沿って配策される、ことを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造において、前記新気導入管(68)は、前記切り欠き部(82)から前記カバー部材(38L,38R)の内側に配索され、該カバー部材(38L,38R)の内側で開放する、ことを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項2〜5のいずれか1項に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造において、前記パージ管(64)は、逆止弁(66)を通して前記吸気系に接続され、該逆止弁(66)は、前記カバー部材(38L,38R)の内側に配置される、
ことを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造において、前記逆止弁(66)は、前記センタフレーム(7L,7R)に支持される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、キャニスタをエアクリーナ等の他の車両部品から離間させて、これら他の車両部品の設計自由度を十分に確保した上で、キャニスタの端部のうちの一方、すなわちチャージ管及びパージ管が設けられる端部が車両の前斜め上方を向くようにキャニスタが配置されるので、キャニスタにおけるチャージ管及びパージ管の接続部を、これよりも車両前方に配置される燃料タンク及び吸気系側へ指向させることができ、チャージ管及びパージ管の長さを短くすることができる。また、ドレイン管の接続部は後下方を向けられることになるので、ドレイン管の長さを短く抑えつつ、同乗者のステップにキャニスタからの不要物がかかりにくい構造にし易い。さらに、ステップフレームの周囲のスペースを利用して、効率良くキャニスタを配置でき、また、キャニスタをステップフレームによって保護することもできる。
請求項2に記載の発明によれば、側面視におけるチャージ管及びパージ管の露出を抑え、外観性を向上できる。
請求項3に記載の発明によれば、ステップフレームを挿通させる切り欠き部を利用して、チャージ管及びパージ管をカバー部材の内側に配索することができ、配索の簡素化を図ることができる。
請求項4に記載の発明によれば、新気導入管をステップフレームによって保護することができる。
請求項5に記載の発明によれば、新気導入管を、切り欠き部を利用してカバー部材の内側に容易に配策でき、新気導入管からカバー部材内の埃等が少ない空気をキャニスタ内に取り込むことができる。
請求項6に記載の発明によれば、側面視における逆止弁の露出を抑え、外観性を向上できる。
請求項7に記載の発明によれば、側面視における逆止弁の露出を抑えながら、比較的剛性の高いセンタフレームに逆止弁を支持することで、逆止弁を強固に固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る構造を備える自動二輪車の右側面図である。
【図2】同自動二輪車の要部右側面図である。
【図3】同自動二輪車の要部の後面図である。
【図4】同自動二輪車の要部を右後方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。なお、以下の説明に用いる図面において、矢印FRは車両前方を、矢印UPは車両上方を、矢印LHは車両左方をそれぞれ示している。
【0017】
図1に示す自動二輪車1の車体フレーム2は、前端を構成するヘッドパイプ3と、ヘッドパイプ3から後斜め下方へ延出するメインフレーム4と、メインフレーム4の後部から後方へ延出する左右一対のシートフレーム5L,5Rと、メインフレーム4の前部から下方へ延出した後、後方へ延出する左右一対のダウンフレーム6L,6Rと、メインフレーム4の後部から後斜め下方へ延出した後、下方へ延出することでダウンフレーム6L,6Rの後部にそれぞれ連結する左右一対のセンタフレーム7L,7Rと、前方から後斜め上方に延出し、センタフレーム7L,7R及びシートフレーム5L,5Rを連結する左右一対のサブフレーム8L,8Rと、を備えている。なお、上記の部材のうち図中に表れない部材(例えば、シートフレーム5L等)については、図中において符合を省略している。
【0018】
シートフレーム5L,5R、センタフレーム7L,7R、及びサブフレーム8L,8Rで囲まれる領域は、側面視で三角形状を呈している。また、ダウンフレーム6L,6Rの上部の間には、これらダウンフレーム6L,6Rを連結するとともに、メインフレーム4の下部を連結するクロスパイプ6Cが設けられている。
【0019】
ヘッドパイプ3には、下部に前輪WFを支持するフロントフォーク9が回転自在に取付けられ、メインフレーム4には、燃料タンク10が取付けられている。センタフレーム7L,7Rの下部には、左右一対のピボットプレート11L,11Rが取付けられ、このピボットプレート11L,11Rには、エンジン12及び変速機13からなるパワーユニット14が支持されるとともに、スイングアーム15が上下スイング自在に支持されている。また、シートフレーム5L,5Rには、シート16が支持されている。
【0020】
フロントフォーク9は、左右一対のフォーク単体18L,18Rをトップブリッジ19及びこのトップブリッジ19の下方に配置したボトムブリッジ20で連結したものであり、トップブリッジ19には、バーハンドル21が取付けられている。トップブリッジ19及びボトムブリッジ20の前方には、フロントカウル24が支持されている。また、ダウンフレーム6L,6Rには、エンジン12を前方から保護する矩形の枠体であるエンジンガード部材22が固定されている。
【0021】
エンジン12は、クランク軸を収容するクランクケース25と、クランクケース25の前部に設けられるシリンダ部26と、シリンダ部26に設けられるシリンダヘッド27と、を備え、メインフレーム4の下方に位置している。シリンダ部26の内部には、ピストンが摺動可能に収容されている。シリンダ部26は、そのシリンダ軸線C1の延長線が少なくとも前輪WFと交差する、すなわち前輪WFを指向して略水平となるようにクランクケース25に取付けられている。
【0022】
燃料タンク10の下方には、収納ボックス33が配置され、収納ボックス33は、メインフレーム4と、エンジン12のシリンダ部26と、の間に位置している。燃料タンク10の後方に位置するシート16は、シートフレーム5L,5Rに沿って前後方向に延在し、シート16の後部両端部の下方には、左右一対のリヤカバー28L,28Rが配置されている。また、シートフレーム5L,5Rの後部には、リヤカバー28L,28Rの間から後斜め下方に延びるリヤフェンダ29が取付けられている。
【0023】
シート16の後部には同乗者が着座可能であり、シート16の下方には、同乗者が足を載せるための左右一対の後部ステップ30L,30Rが配置されている。後部ステップ30L,30Rは、サブフレーム8L,8Rから後斜め下方に延出した左右一対のステップフレーム31L,31Rの下端部に取付けられている。また、ステップフレーム31L,31Rの下端部は、ピボットプレート11L,11Rから後方に延びる左右一対のサポートフレーム32L,32Rの後端部に接続され補強されている。
【0024】
スイングアーム15は、左右一対のアーム部材34L,34Rで構成され、後端部に後輪WRを回転可能に支持している。また、アーム部材34L,34Rの後端部には、左右一対のリヤクッションユニット36L,36Rのそれぞれの下端が取付けられ、これらリヤクッションユニット36L,36Rの上端は、シートフレーム5L,5Rにそれぞれ固定されている。
【0025】
エンジン12のシリンダヘッド27には、吸気装置40及び排気装置41が接続されており、吸気系である吸気装置40は、シリンダヘッド27の上面に吸気管42を介して接続した燃料供給装置であるキャブレタ43と、このキャブレタ43にコネクティングチューブ44を介して接続したエアクリーナ45と、から構成されている。吸気管42は側面視で、シリンダヘッド27の上面に接続されて後方へ向けて延びている。なお、キャブレタ43は、燃料噴射装置用のスロットルボディであっても良いことは言うまでもない。
【0026】
また、排気装置41は、シリンダヘッド27の下面に接続された排気管46と、この排気管46の後端に取付けたマフラ47と、から構成されている。
【0027】
上記エアクリーナ45は、樹脂材料から形成された筐体であるエアクリーナケース48内にエレメント(不図示)を収容してなるものであって、シートフレーム5L,5R、センタフレーム7L,7R及びサブフレーム8L,8Rで囲まれる側面視で三角形状の領域に配置されている。エアクリーナ45は、メインフレーム4の後部、シートフレーム5L,5Rの前部等に、図示しないブラケットを介して取付けられている。また、このエアクリーナ45は、左右両側を左右一対のセンタカバー38L,38Rで覆われている。これらセンタカバー38L,38Rは、側面視で台形状に形成されており、シートフレーム5L,5R、センタフレーム7L,7R及びサブフレーム8L,8Rで囲まれる領域に沿うようにして、これら各フレームを覆っている。
【0028】
また、図2、図3に示すように、センタカバー38L,38Rは、ステップフレーム31Rのセンタフレーム7L,7Rとの接続部80L,80Rを覆う覆い部81L,81Rを有し、これら覆い部81L,81Rには、接続部80L,80Rを覆った状態で、ステップフレーム31L,31Rを挿通させる切り欠き部82L,82Rが形成されている。
【0029】
上記キャブレタ43は、キャニスタ55と連通しており、本実施形態においてキャニスタ55は、右側のステップフレーム31Rに固定支持されている。図2、図3、及び図4に示すように、キャニスタ55は円筒状を呈し、その長手方向、すなわち、その軸線C2をステップフレーム31Rに沿わせた状態で、ステップフレーム31Rに支持されている。キャニスタ55は、燃料タンク10に連通し、燃料タンク10から導き出された蒸発燃料を吸着剤で吸着し、当該吸着剤に吸着した燃料を、吸気系を構成するとともにエンジン12の上方に配置されるキャブレタ43に供給する。
【0030】
キャニスタ55は、吸着材を収容した筒状部56と、筒状部56の上端部を覆う上端ガード部57と、筒状部の下端部を覆う下端ガード部58と、を備え、上端ガード部57は車両の前斜め上方に向けられ、下端ガード部58は車両の後斜め下方に向けられている。また、キャニスタ55はステップフレーム31Rに対して後方に配置され、図3に示すように、後面視でステップフレーム31Rに重なっている。詳しくは、ステップフレーム31Rは、後面視でキャニスタ55の下端ガード部58の車幅方向外側から上端ガード部57の車幅方向内側にかけて傾斜するように重なっている。
【0031】
ステップフレーム31Rには、キャニスタ55を支持するための支持ステー61が固着され、支持ステー61はV字あるいはU字状に形成され、車両後方に向けて開放しており、支持ステー61は、一部をステップフレーム31Rに固着し、両端部を車両後方に向けて延出させ、これら両端部でキャニスタ55を支持する。キャニスタ55の筒状部56には、弾性部材(ラバー部材)からなる筒状のケース62が嵌め入れられ、このケース62には、キャニスタ55の径方向の外側に突出する2つの係合片63が形成されている。そしてキャニスタ55は、係合片63に支持ステー61の上記両端部が挿入されることで、ステップフレーム31Rに支持されている。
【0032】
以下、キャニスタ55の配管について説明する。
キャニスタ55の上端ガード部57には、パージ管64と、チャージ管65と、が接続され、キャニスタ55は、パージ管64によりキャブレタ43に接続され、チャージ管65により燃料タンク10に接続されている。パージ管64及びチャージ管65は、センタカバー38Rに形成された切り欠き部82を通されるとともに、センタカバー38Rの内側を通されて配策されている。
【0033】
パージ管64は、キャニスタ55から前方に引き出され、切り欠き部82Rを通されるとともに、センタカバー38Rの内側を通され、その後、左方に湾曲されて、キャブレタ43に接続されている。パージ管64は、経路途中に配された逆止弁66を通してキャブレタ43に接続されている。逆止弁66は、パージ管64の管内の圧力に応じて、キャブレタ43側へ向かう蒸発燃料の流れを許容すべく開放する一方弁であり、キャニスタ55よりも上方に配置されており、センタカバー38Rの内側に配置され、かつ、センタフレーム7Rに、図示しないブラケットによって固定支持されている。
【0034】
また、チャージ管65は、前方に引き出され、切り欠き部82Rを通されるとともに、センタカバー38Rの内側を通され、燃料タンク10の内部に進入する。チャージ管65は、燃料タンク10の内部において上方に配された気液分離部67に接続され、気液分離部67は、例えばシール部材を備えて液体の燃料がチャージ管65に供給されないように構成されている。
【0035】
一方で、キャニスタ55の下端ガード部58には、キャニスタ55を大気に連通させる新気導入管68と、キャニスタ55内の不要物を排出するためのドレイン管69と、が接続されている。新気導入管68は、キャニスタ55から上方に引き出され、ステップフレーム31Rの車幅方向内側においてステップフレーム31Rに沿って配策されている。ここで、新気導入管68も切り欠き部82を通されており、センタカバー38L内で開放している。また、ドレイン管69は、キャニスタ55から下方に引き出され、その下端をマフラー47よりも車幅方向内側で下方に向けて開放している。
【0036】
以上に説明したように、この自動二輪車1は、キャニスタ55の上端ガード部57に、チャージ管65及びパージ管64が接続されるとともに、下端ガード部58に、筒状部56内の不要物を排出するドレイン管69が接続され、キャニスタ55が、上端ガード部57が前斜め上方に向くように、ステップフレーム31L,31Rに沿って配置される構造を有している。
【0037】
このような構造では、キャニスタ55をエアクリーナ等の他の車両部品から離間させて、これら他の車両部品の設計自由度を十分に確保した上で、キャニスタ55においてチャージ管65及びパージ管64が設けられる上端ガード部57が車両の前斜め上方を向くようにキャニスタ55が配置されるので、キャニスタ55におけるチャージ管65及びパージ管64の接続部を、これよりも車両前方に配置される燃料タンク10及び吸気系(キャブレタ43)側へ指向させることができ、チャージ管65及びパージ管64の長さを短くすることができる。また、ドレイン管69の接続部は後下方を向けられることになるので、ドレイン管69の長さを短く抑えつつ、同乗者のステップにキャニスタ55からの不要物がかかりにくい構造にもし易い。さらに、ステップフレーム31L,31Rの周囲のスペースを利用して、効率良くキャニスタ55を配置でき、また、キャニスタ55をステップフレーム31Rによって保護することもできる。
【0038】
また、この自動二輪車1は、センタフレーム7L,7R及びサブフレーム8L,8Rを側方から覆うセンタカバー38L,38Rが設けられ、チャージ管65及びパージ管64が、センタカバー38L,38Rの内側を通るように配策される構造を有する。この構造では、側面視におけるチャージ管65及びパージ管65の露出を抑え、外観性を向上できる。さらに、この自動二輪車1は、センタカバー38Rが、キャニスタ55の前上方に配置されるとともに、ステップフレーム31Rのセンタフレーム7Rとの接続部を覆う覆い部81Rを有し、この覆い部81Rには、上記接続部を覆った状態で、ステップフレーム31Rを挿通させる切り欠き部82Rが形成され、チャージ管65及びパージ管64が切り欠き部82Rを通される構造を有する。この構造では、ステップフレーム31Rを挿通させる切り欠き部82を利用して、チャージ管65及びパージ管64をセンタカバー38Rの内側に配索することができ、配索の簡素化を図ることができる。
【0039】
また、この自動二輪車1は、キャニスタ55の下端ガード部58に、キャニスタ55を大気に連通させる新気導入管68が接続され、新気導入管68が、ステップフレーム31L,31Rの車幅方向内側においてステップフレーム31Rに沿って配策される構造を有する。この構造では、新気導入管68をステップフレーム31Rによって保護することができる。
【0040】
また、この自動二輪車1は、新気導入管68が、センタカバー38Rの切り欠き部82からセンタカバー38Rの内側に配索され、センタカバー38Rの内側で開放する構造を有するが、この構造では、新気導入管68を、切り欠き部82を利用してセンタカバー38Rの内側に容易に配策でき、新気導入管68からセンタカバー38R内の埃等が少ない空気をキャニスタ55内に取り込むことができる。
【0041】
また、この自動二輪車1は、パージ管64が逆止弁66を通してキャブレタ43に接続され、逆止弁66がセンタカバー38Rの内側に配置される構造を有するが、この構造では、側面視における逆止弁66の露出を抑え、外観性を向上できる。さらに、この自動二輪車1は、逆止弁66がセンタフレーム7L,7Rに支持される構造を有するが、この構造では、側面視における逆止弁66の露出を抑えながら、比較的剛性の高いセンタフレーム7L,7Rに逆止弁を支持することで、逆止弁66を強固に固定できる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0043】
例えば、上記実施形態では、右側のステップフレーム31Rにキャニスタ55が支持される態様を説明したが、左側のステップフレーム31Lにキャニスタ55を支持される態様であってもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0044】
1 自動二輪車(鞍乗型車両)
2 車体フレーム
4 メインフレーム
5L,5R シートフレーム
6L,6R ダウンフレーム
7L,7R センタフレーム
8L,8R サブフレーム
10 燃料タンク
12 エンジン
25 クランクケース
26 シリンダ部
27 シリンダヘッド
31L,31R ステップフレーム
38L,38R センタカバー
45 エアクリーナ
55 キャニスタ
56 筒状部
64 パージ管
65 チャージ管
66 逆止弁
68 新気導入管
69 ドレイン管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドパイプ(3)と、該ヘッドパイプ(3)から後方へ延出するメインフレーム(4)と、前記メインフレーム(4)の後部から後斜め下方へ延出する左右一対のセンタフレーム(7L,7R)と、前記メインフレーム(4)の後部から後方へ延出する左右一対のシートフレーム(5L,5R)と、前方から後斜め上方に延出し、前記センタフレーム(7L,7R)及び前記シートフレーム(5L,5R)を連結する左右一対のサブフレーム(8L,8R)と、を備える車体フレーム(2)と、
クランク軸を収容するクランクケース(25)と、該クランクケース(25)の前部に設けられるシリンダ部(26)と、該シリンダ部(26)に設けられるシリンダヘッド(27)と、を備え、前記車体フレーム(2)の前記メインフレーム(4)の下方に配置されるエンジン(12)と、
前記エンジン(12)の上方に配置される燃料タンク(10)と、
前記燃料タンク(10)の内部で生じた蒸発燃料を、チャージ管(65)を通して吸着するキャニスタ(55)を有し、該キャニスタ(55)で吸着した燃料を、該キャニスタ(55)からパージ管(64)を通して前記エンジン(12)上方の吸気系に供給する蒸発燃料処理装置と、を備える鞍乗型車両のキャニスタ配置構造において、
前記サブフレーム(8L,8R)には、該サブフレーム(8L,8R)から後斜め下方に延出するステップフレーム(31L,31R)が設けられ、
該ステップフレーム(31L,31R)の下端部には、同乗者が足を載せるステップ(30L,30R)が取付けられ、
前記キャニスタ(55)は、筒状部(56)と、該筒状部(56)の両端を覆う端部(57,58)と、を備え、
前記キャニスタ(55)の前記端部(57,58)のうちの一方(57)側に、前記チャージ管(64)及び前記パージ管(65)が接続されるとともに、他方(58)側に、前記筒状部(56)内の不要物を排出するドレイン管(69)が接続され、
前記キャニスタ(55)は、前記端部(57,58)のうちの前記一方(57)側が前斜め上方に向くように、前記ステップフレーム(31L,31R)に沿って配置される、
ことを特徴とする鞍乗型車両のキャニスタ配置構造。
【請求項2】
前記センタフレーム(7L,7R)及び前記サブフレーム(8L,8R)を側方から覆うカバー部材(38L,38R)が設けられ、
前記チャージ管(64)及び前記パージ管(65)は、前記カバー部材(38L,38R)の内側を通るように配策される、
ことを特徴とする請求項1に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造。
【請求項3】
前記カバー部材(38L,38R)は、前記キャニスタ(55)の前上方に配置されるとともに、前記ステップフレーム(31L,31R)の前記センタフレーム(7L,7R)との接続部を覆う覆い部(81L,81R)を有し、
該覆い部(81L,81R)には、前記接続部を覆った状態で、前記ステップフレーム(31L,31R)を挿通させる切り欠き部(82L,82R)が形成され、
前記チャージ管(64)及び前記パージ管(65)は、前記切り欠き部(82L,82R)に通される、
ことを特徴とする請求項2に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造。
【請求項4】
前記キャニスタ(55)の前記端部(57,58)のうちの他方(58)側に、該キャニスタ(55)を大気に連通させる新気導入管(68)が接続され、
該新気導入管(68)は、前記ステップフレーム(31L,31R)の車幅方向内側において該ステップフレーム(31L,31R)に沿って配策される、
ことを特徴とする請求項3に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造。
【請求項5】
前記新気導入管(68)は、前記切り欠き部(82)から前記カバー部材(38L,38R)の内側に配索され、該カバー部材(38L,38R)の内側で開放する、
ことを特徴とする請求項4に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造。
【請求項6】
前記パージ管(64)は、逆止弁(66)を通して前記吸気系に接続され、
該逆止弁(66)は、前記カバー部材(38L,38R)の内側に配置される、
ことを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造。
【請求項7】
前記逆止弁(66)は、前記センタフレーム(7L,7R)に支持される、
ことを特徴とする請求項6に記載の鞍乗型車両のキャニスタ配置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−67277(P2013−67277A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207522(P2011−207522)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】