説明

音声信号処理回路

【課題】音声信号処理回路の汎用性を向上する。
【解決手段】ゲインコントローラ12は、音声信号の振幅をコントロールする。PWM変換器18は、振幅がコントロールされた信号をPWM変換する。そして、ゲインコントローラ12は、リミッタ制御信号に応じて、音声信号の振幅を制限し、PWM変換回路18は、振幅コントロールされた音声信号の最大振幅の信号については、リミッタ制御信号にかかわらず、PWM変換の変調度を制限による振幅制限を掛ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
音声信号をPWM変換して出力する音声信号処理回路に関する。
【背景技術】
【0002】
AV機器においては、音声出力は、重要な出力であるが、機器によってその最大出力について大きな差がある。例えば、TVセットの場合、ディスプレイサイズが19インチ、42インチ、60インチの場合、セットの電源回路が5V、12V、18Vと異なり、音声信号用のアンプも、5W、10W、20W級のものが採用される場合が多い。
【0003】
従って、それぞれ専用のアンプICを選択し、制御部プログラムも別個に開発していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−283279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、共通設計化によるコスト削減のためICはなるべく汎用性の高いものに統一したいという要求があり、また制御プログラムもできるだけ同一にしたいという要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、音声信号の振幅をコントロールする振幅コントロール回路と、振幅がコントロールされた信号をPWM変換するPWM変換回路と、を有し、前記振幅コントロール回路は、リミッタ制御信号に応じて、出力する音声信号の振幅を制限すると共に、前記PWM変換回路は、振幅コントロールされた音声信号の最大振幅の信号については、リミッタ制御信号にかかわらず、PWM変換の変調度の制限による振幅制限を掛けることを特徴とする。
【0007】
また、前記PWM変換回路は、前記振幅コントロールされた信号の最大振幅の信号について、PWM変換した信号の振幅制限が、前記リミッタ制御信号にかかわらず、同一になるように、変調度を制限することが好適である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、PWM変換において、ゲインと歪みとを同調させて制御できるため、常に出力波形を入力波形と相似波形としながら振幅を下げることができる。従って、出力の音量を制御するボリュームなどの制御プログラムを、音声出力のパワーによらず同様のものとでき、システムの汎用性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態の音声信号処理回路の全体構成を示すブロック図である。
【図2】PWM信号の例を示す図である。
【図3】変調度制限の影響例を示す図である。
【図4】変調度制限の影響例を示す図である。
【図5】PWM信号の例を示す図である。
【図6】変調度制限の影響例を示す図である。
【図7】変調度制限の影響例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0011】
図1は、音声信号処理回路の全体構成を示すブロック図である。例えば、24ビットでサンプリング周波数32−192kHzのPCM(パルス・コード変調)音声信号は、オーバーサンプラ10に供給され、ここでオーバーサンプリングされ、例えばキャリア周波数384kHzで24ビットのPCM信号に変換される。次に、振幅コントロール回路として機能するゲインコントローラ12において、振幅が適切なものに増幅された後、再量子化器14において、再量子化されて例えば4ビットの信号に変換される。再量子化された信号は、ノイズシェーパ16においてΔΣ変調された後、PWM変換器18に入力され、ここでPWM信号に変換される。例えばサンプリング周波数48kHzを8倍にオーバーサンプリングした場合、出力信号はキャリア周波数384kHzの1ビット信号である。
【0012】
本実施形態における音声信号処理回路は、上述した19〜60インチディスプレイを含みいずれのサイズのディスプレイを持つTVセットにおいても利用できるICとして構成される。
【0013】
このために、ディスプレイのサイズによって異なる音声信号出力の最大振幅をセットするためのリミッタ制御信号が外部から入力されてくる。すなわち、どのサイズにディスプレイを持つTVセットかによって、音声信号処理回路の出力音声信号の最大振幅が決定されるため、これを識別するリミッタ制御信号が入力される。これは、外部のマイコンから入力されることが好適であるが、切り換えスイッチやジャンパーなどによって設定してもよい。
【0014】
リミッタ制御信号は、ゲインコントローラ12およびPWM変換器18に入力される。そして、このリミッタ制御信号によって、ゲインコントローラ12におけるゲインがコントロールされ、ゲインコントローラ12の出力の最大振幅が決定される。すなわち、ゲインコントローラにおいて、リミッタ制御信号に応じてアッテネートされて出力の振幅が制御される。
【0015】
例えば、19インチのディスプレイの場合には、ゲインコントローラ12の出力は、最終的な音声信号の出力が5W、42インチのディスプレイの場合には10W、60インチのディスプレイの場合には20Wになるように、ゲインコントローラ12の増幅率が設定される。
【0016】
なお、60インチ用の場合には、ゲインコントローラ12における増幅ゲインについてのリミットがなしでもよい。一方、42インチ用、19インチ用の場合には、出力が規定の大きさになるように、ゲインが絞られ、出力信号がアッテネートされる。
【0017】
そして、本実施形態においては、PWM変換器において、上記いずれの場合においても、変調度の制限を掛ける。
【0018】
すなわち、PWM変換においては、デューティー比を100%にすると、出力が直流になり、負荷などに悪影響が出る可能性があり、また増幅段のスルーレートによってはパルス波形を維持することが困難となるため、最大、最小変調度に制限を掛けて一定以上細いパルスが出力されないようにしている。例えば、デューティー比は10〜90%の範囲にする。例えば、図2に示すように、最小幅PWM波形、最大幅PWM波形が決定される。
【0019】
従って、最大振幅の信号について、PWM変換した場合には、最大PWM、最小PWMによってPWM信号が制限され、PWM信号を再生した音声信号には図3に示すような歪みが生じる。
【0020】
一方、ゲインコントローラ12において、ゲインを落とした場合には、ゲインコントローラ12の出力の振幅は、対応して小さくなっている。従って、出力10,5Wの場合には、変調度は、その一部を利用するだけで、すべての変調が行え、またそれによりパワー制限を行なうことができるため小出力機器への適用が可能となる。ただ、パワー制限をしない場合と異なり、最大振幅の付近で最大値または最小値に張り付くことはなく、図4に示すように波形に歪みが生じない。つまり、パワー制限ありの出力10,5Wの場合となしの20Wの場合の出力波形が相似とならない。
【0021】
しかし、本実施形態では、ゲインコントローラ12において、ゲインを落とした場合において、PWM変換器18において、その出力に歪みが出るように、変調度を制限する。例えば、20W出力の場合に、PWM変換器18の変調度において、波形のデューティー比10%〜90%の出力のみを許容する場合、10W出力の場合に、デューティー比25%〜75%の範囲で入力波形をそのまま出力できるのであれば、図5に示すように、デューティー比が30%〜70%となるように変調度を制限する。これによって、10W出力の場合においても、20W出力と同等の波形の歪みが生じる。なお、変調度の制限は、簡単な例を示しただけで、実際には、フィルタの影響なども考慮し、変調度の影響を調べて決定する。
【0022】
これによって、PWM信号により音声出力を得た場合に、出力の歪みは、出力大きさに関わらず同じになる。すなわち、図6に示すように、ゲインコントローラ12において、リミッタ制御信号に応じて減衰された信号が出力された場合においても、常に同等の歪みが生じるPWM信号が出力される。これによって、図7に示すようにリミッタ制御信号によるリミットが掛かった場合において波形の歪みは同等になる。
【0023】
例えば、PWM変換によって生じる歪みが常に10%程度生じるように制御される。このように、常に歪みが同等であると、出力の音量を制御するボリュームなどの制御プログラムを、ディスプレイ画面の大きさ(音声出力のパワー)によらずすべて同一とすることができる。すなわち、最大振幅の際に波形が歪むことを全体にそれに対し補償を行うなどの処理を出力の大きさに関わらず同じ処理としておいて問題がない。このため、制御プログラムの開発が1つでよく、その汎用性を向上することができる。
【符号の説明】
【0024】
10 オーバーサンプラ、12 ゲインコントローラ、14 再量子化器、16 ノイズシェーパ、18 PWM変換器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声信号の振幅をコントロールする振幅コントロール回路と、
振幅がコントロールされた信号をPWM変換するPWM変換回路と、
を有し、
前記振幅コントロール回路は、リミッタ制御信号に応じて、出力する音声信号の振幅を制限すると共に、前記PWM変換回路は、振幅コントロールされた音声信号の最大振幅の信号については、リミッタ制御信号にかかわらず、PWM変換の変調度を制限による振幅制限を掛けることを特徴とする音声信号処理回路。
【請求項2】
請求項1に記載の音声信号処理回路であって、
前記PWM変換回路は、前記振幅コントロールされた信号の最大振幅の信号について、PWM変換した信号の振幅制限が、前記リミッタ制御信号にかかわらず、同一になるように、変調度を制限することを特徴とする音声信号処理回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−147388(P2012−147388A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6084(P2011−6084)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(506227884)三洋半導体株式会社 (1,155)
【Fターム(参考)】