説明

音波測定センサ

【課題】サイドローブが低減されるクロスファンビーム方式の音波測定センサを提供する。
【解決手段】音波測定センサは、送波器1,1と、受波器2,2とを有し、これらが互いに直交するように配置されたクロスファンビーム方式で構成されている。送波器1,1と受波器2,2との交差箇所は、送波受波複合器3Bとして構成されている。送波受波複合器3Bは、各送波用振動子1sが送波器1,1の長手方向に不欠落となるように配列され、かつ、各受波用振動子2rが受波器2,2の長手方向に不欠落となるように配列されて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、音波測定センサに係り、特に、送波器と受波器とが互いに直交するように配置されているクロスファンビーム方式に適用して好適な音波測定センサに関する。
【背景技術】
【0002】
音波測定センサでは、省スペース化などの理由により、送波器と受波器とが互いに直交するように配置されているクロスファンビーム方式のものが製作されている。
【0003】
この種の音波測定センサは、たとえば図7に示すように、送波器1,1と、受波器2,2と、送受波兼用器3とから構成されている。送波器1,1は、所定数の送波用振動子1sが直線状に2列配列されて構成されている。受波器2,2は、所定数の受波用振動子2rが直線状に2列配列されて構成されている。送受波兼用器3は、送波器1,1と受波器2との交差箇所にある。この音波測定センサでは、送波器1,1の送波用振動子1sから受波器2,2側にノイズが回り込むことがあるという問題点がある。このため、送受波兼用器3に代えて、送波専用器又は受波専用器のみが配置されているものもある。
【0004】
この場合、たとえば図8に示すように、送受波兼用器3に代えて、受波専用器3Aが設けられている場合、送波器1,1の中心部の振動子が抜けることになり、送波ビームの垂直面の指向性では、たとえば図9に示すように、サイドローブが発生するという課題がある。送波器1,1の中心部の振動子が存在する場合に対して、抜けた場合の指向性は、たとえば図10に示すように、サイドローブが数dB大きい。また、そのサイドローブを抑制する場合、シェーディングを施すことで対策することが有効な手段として一般的であるが、中心部の振動子が欠落しているために、図11に示すように、シェーディングの有無にかかわらず、サイドローブが発生し、同シェーディングの効果が十分に得られないという課題がある。
【0005】
上記の音波測定センサの他、この種の関連技術としては、たとえば、特許文献1に記載された水中画像ソーナがある。
この水中画像ソーナでは、送波器は、周波数帯が割り当てられた水平/垂直の各1列からなるクロスファンビーム方式で構成されている。送信制御部は、送波音の送信ビーム方向をマトリクス状に走査させると共に、走査に同期して送波音の周波数を漸次連続的に制御する。受波器は、周波数帯の異なる2つの無指向性受波器で構成されている。乗算機は、各周波数帯別の信号を乗算する。帯域制限器は、乗算器の出力の高域信号を出力する。FFT(Fast Fourier Transform)は、帯域制限器の出力より周波数成分を分別する。目標検出部は、受信信号のレベルに応じて、色もしくは濃淡情報に変換し、分別された各周波数成分に対応する送信ビーム方向を基に画像を生成する。
【0006】
また、特許文献2に記載された超音波プローブでは、所定の曲率半径で湾曲されたパッキング材の表面に、アレイ状に配列された第1及び第2の振動子群が、両者が交差する如く配置され、両者の交差する部分が、振動子がマトリクス状に配列してなる第3の振動子群とされると共に、各振動子群が選択的に励振され、超音波の送受波が行われる。
【0007】
また、特許文献3に記載された水中画像ソーナでは、送波装置と受波装置とからなり、送波装置には複数の送波器が備えられ、受波装置には複数の受波器が備えられている。これらの送波器や受波器は、クロスアレイで構成されている。このクロスアレイでは、縦列をなす複数の送波アレイと、横列をなす複数の受波アレイとが互いに直交されている。また、送波アレイと受波アレイとが互いにクロスする箇所は、送受波兼用アレイとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−064524号公報
【特許文献2】特開昭62−227327号公報
【特許文献3】特開平08−005728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記関連技術では、次のような課題があった。
すなわち、特許文献1に記載された水中画像ソーナは、受波した周波数の組をマトリクス状にデマッピングし、受信ビーム方向とすることにより、データ処理量が削減されるものであるが、受波器が、2つの無指向性受波器で構成されているなど、この発明とは構成が異なり、上記の問題点を改善するものではない。
【0010】
特許文献2に記載された超音波プローブでは、第3の振動子群は、振動子がマトリクス状に配列されている。このマトリクス状に対しては、構成や効果について明確な記載が見られないため、上記の問題点を改善するものではない。
【0011】
特許文献3に記載された水中画像ソーナでは、送波アレイと受波アレイとが互いにクロスする箇所が送受波兼用アレイとなっているため、この発明とは構成が異なり、上記の問題点を改善するものではない。
【0012】
この発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、サイドローブが低減されるクロスファンビーム方式の音波測定センサを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、この発明の第1の構成は、所定数の送波用振動子が直線状に所定列配列されて構成されている送波器と、所定数の受波用振動子が直線状に所定列配列されて構成されている受波器とを有し、前記送波器と前記受波器とが互いに直交するように配置されているクロスファンビーム方式の音波測定センサに係り、前記送波器と前記受波器との交差箇所は、当該各送波用振動子が前記送波器の長手方向に不欠落となるように配列され、かつ、当該各受波用振動子が前記受波器の長手方向に不欠落となるように配列されてなる送波受波複合器として構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
この発明の構成によれば、クロスファンビーム方式の音波測定センサの指向特性のサイドローブを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の第1の実施形態である音波測定センサの要部の構成を示す模式図である。
【図2】図1の音波測定センサ、及び交差箇所に振動子がない場合の指向性を示す図である。
【図3】シェーディングを施した場合の指向性を示す図である。
【図4】シェーディングを施した場合でビームシフト時の指向性を示す図である。
【図5】この発明の第2の実施形態である音波測定センサの要部の構成を示す模式図である。
【図6】この発明の第3の実施形態である音波測定センサの要部の構成を示す模式図である。
【図7】音波測定センサの構成図である。
【図8】他の音波測定センサの構成図である。
【図9】送波ビームの垂直面の指向性を示す図である。
【図10】振動子が存在する場合、及び抜けた場合の指向性を示す図である。
【図11】シェーディングを施した場合の指向性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上記送波受波複合器は、当該送波用振動子と当該受波用振動子とが互い違いにマトリクス状に配列されて構成されている音波測定センサを実現する。
【0017】
また、上記送波受波複合器は、当該送波用振動子と当該受波用振動子とが市松パターン状に配列されて構成されている。また、上記送波受波複合器は、上記送波器を構成する上記送波用振動子の列数及び上記受波器を構成する上記受波用振動子の列数に対応して上記マトリクスが構成されている。また、上記送波受波複合器は、上記送波器を構成する上記送波用振動子の列数及び上記受波器を構成する上記受波用振動子の列数に対して無対応に上記マトリクスが構成されている。
【実施形態1】
【0018】
図1は、この発明の第1の実施形態である音波測定センサの要部の構成を示す模式図である。
この形態の音波測定センサは、同図に示すように、図7中と同様の送波器1,1と、受波器2,2とを有し、これらが互いに直交するように配置されたクロスファンビーム方式で構成されている。横方向に配置されている送波器1,1は、各送波用振動子1sに所定の駆動信号が与えられることにより、縦方向に送波ビームを形成して送波する。また、縦方向に配置されている受波器2,2は、各受波用振動子2rに所定の駆動信号が与えられることにより、横方向に受波ビームを形成して、送波器1,1の送波ビームが目標物に到達して反射したときの反射波を受波する。これにより、音響データが得られる。
【0019】
特に、この実施形態では、送波器1,1と受波器2,2との交差箇所は、送波受波複合器3Bとして構成されている。送波受波複合器3Bは、各送波用振動子1sが送波器1,1の長手方向に不欠落(すなわち、振動子間の距離が開かない)となるように配列され、かつ、各受波用振動子2rが受波器2,2の長手方向に不欠落(すなわち、振動子間の距離が開かない)となるように配列されて構成されている。また、この実施形態では、送波受波複合器3Bは、送波用振動子1sと受波用振動子2rとが互い違いにマトリクス状に配列されて構成されている。この場合、送波受波複合器3Bでは、送波器1,1を構成する送波用振動子1sの列数及び受波器2,2を構成する受波用振動子2rの列数に対応して上記マトリクスが構成されている。なお、送波器1,1が横方向、及び受波器2,2が縦方向に配置されているが、逆に配置されていても良い。
【0020】
図2は、図1の音波測定センサ、及び交差箇所に振動子がない場合の指向性を示す図、図3は、シェーディングを施した場合の指向性を示す図、及び図4が、シェーディングを施した場合でビームシフト時の指向性を示す図である。
これらの図を参照して、この形態の音波測定センサの動作について説明する。
この音波測定センサでは、横方向に配置されている送波器1,1により、各送波用振動子1sに所定の駆動信号が与えられることにより、縦方向に送波ビームが形成されて送波される。また、縦方向に配置されている受波器2,2により、各受波用振動子2rに所定の駆動信号が与えられることにより、横方向に受波ビームが形成され、送波器1,1の送波ビームが目標物に到達して反射したときの反射波が受波される。この反射波がソーナなどで解析されて音響データが得られる。
【0021】
この場合、周波数f、振動子間距離d、振動子の大きさl、及び振動子数nとして、送波ビームの垂直面の指向性を理論計算すると、図2に示す指向性となり、サイドローブが数dB抑制される。また、ある一定条件下で音波測定センサにシェーディングを施した場合の指向性計算を行うと、図3に示すように、サイドローブが5〜6dB程度抑制され、また、図4に示すように、シェーディングを施した場合でビームシフト時でも、同様に、サイドローブが5〜6dB程度抑制される。
【0022】
以上のように、この第1の実施形態では、送波器1,1と受波器2,2との交差箇所が送波受波複合器3Bとして構成されているので、送波器1,1のサイドローブが抑制され、また、シェーディングを施した場合でも、同送波受波複合器3Bにより、サイドローブが抑制される。
【実施形態2】
【0023】
図5は、この発明の第2の実施形態である音波測定センサの要部の構成を示す模式図である。
この形態の音波測定センサでは、同図5に示すように、第1の実施形態を示す図1中の送波器1,1及び受波器2,2に代えて、異なる構成の送波器1A,1A及び受波器2A,2Aが設けられている。送波器1A,1Aは、所定数の送波用振動子1sが直線状に1列配列されて構成されている。受波器2A,2Aは、所定数の受波用振動子2rが直線状に1列配列されて構成されている。また、送波器1A,1Aと受波器2A,2Aとの交差箇所は、図1中と同様の送波受波複合器3Bとして構成されている。
【0024】
この音波測定センサでは、送波器1A,1Aを構成する送波用振動子1sの列数及び受波器2A,2Aを構成する受波用振動子2rの列数に対して無対応にマトリクスが構成されて図1の音波測定センサとほぼ同様の動作が行われ、同様の利点がある。
【実施形態3】
【0025】
図6は、この発明の第3の実施形態である音波測定センサの要部の構成を示す模式図である。
この形態の音波測定センサでは、同図6に示すように、送波器1B,1Bと、受波器2B,2Bとを有し、これらが互いに直交するように配置されている。送波器1B,1Bは、所定数の送波用振動子1sが直線状に3列配列されて構成されている。受波器2B,2Bは、所定数の受波用振動子2rが直線状に3列配列されて構成されている。特に、この実施形態では、送波器1B,1Bと受波器2B,2Bとの交差箇所は、送波受波複合器3Cとして構成されている。
【0026】
送波受波複合器3Cは、送波器1B,1Bを構成する送波用振動子1sの列数(3列)及び受波器2B,2Bを構成する受波用振動子2rの列数(3列)に対応してマトリクスが構成されている。この送波受波複合器3Cは、図1中の送波受波複合器3Bと同様に、各送波用振動子1sが送波器1B,1Bの長手方向に不欠落(すなわち、振動子間の距離が開かない)となるように配列され、かつ、各受波用振動子2rが受波器2B,2Bの長手方向に不欠落(すなわち、振動子間の距離が開かない)となるように配列されて構成されている。この音波測定センサでは、図1の音波測定センサとほぼ同様の動作が行われ、同様の利点がある。
【0027】
以上、この発明の実施形態を図面により詳述してきたが、具体的な構成は同実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更などがあっても、この発明に含まれる。
たとえば、上記第3の実施形態では、送波受波複合器3Cの送波用振動子1s及び受波用振動子2rが、市松パターン状に配列されていても良い(請求項3に対応)。また、送波器1,1A,1Bを構成する送波用振動子1sの列数、及び受波器2,2A,2Bを構成する受波用振動子2rの列数は、上記各実施形態に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0028】
この発明は、クロスファンビーム方式を使用するソーナや音響測定装置で、送波器と受波器との交差箇所を送受波兼用としない場合に適用できる。
【符号の説明】
【0029】
1,1A,1B 送波器
2,2A,2B 受波器
1s 送波用振動子
2r 受波用振動子
3B,3C 送波受波複合器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定数の送波用振動子が直線状に所定列配列されて構成されている送波器と、
所定数の受波用振動子が直線状に所定列配列されて構成されている受波器とを有し、
前記送波器と前記受波器とが互いに直交するように配置されているクロスファンビーム方式の音波測定センサであって、
前記送波器と前記受波器との交差箇所は、
当該各送波用振動子が前記送波器の長手方向に不欠落となるように配列され、かつ、当該各受波用振動子が前記受波器の長手方向に不欠落となるように配列されてなる送波受波複合器として構成されていることを特徴とする音波測定センサ。
【請求項2】
前記送波受波複合器は、
当該送波用振動子と当該受波用振動子とが互い違いにマトリクス状に配列されて構成されていることを特徴とする請求項1記載の音波測定センサ。
【請求項3】
前記送波受波複合器は、
当該送波用振動子と当該受波用振動子とが市松パターン状に配列されて構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の音波測定センサ。
【請求項4】
前記送波受波複合器は、
前記送波器を構成する前記送波用振動子の列数及び前記受波器を構成する前記受波用振動子の列数に対応して前記マトリクスが構成されていることを特徴とする請求項2又は3記載の音波測定センサ。
【請求項5】
前記送波受波複合器は、
前記送波器を構成する前記送波用振動子の列数及び前記受波器を構成する前記受波用振動子の列数に対して無対応に前記マトリクスが構成されていることを特徴とする請求項2又は3記載の音波測定センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−128086(P2011−128086A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288499(P2009−288499)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】