説明

音響測定装置及び音響評価システム並びに音響測定方法

【課題】容易かつ安価に、安定した音圧レベルで音響測定を行なうことのできる音響測定装置及び音響評価システム並びに音響測定方法を提供すること。
【解決手段】携帯電話機100をセットする載置台11と、携帯電話機のレシーバ104の受話音孔104aに対面して出力される音響情報を集音入力して電気信号に変換するマイクロフォン12と、入力された音響信号から設定周波数の騒音を除去するフィルタ部14と、騒音の除去された音響信号の音圧レベルを測定するレベル測定部15とを備えており、マイクロフォンは、近接用スペーサ部材12bを備えて、受話音孔からの離隔距離が入力面12aの直径の1/5以下となる位置に設置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、音響測定装置及び音響評価システム並びに音響測定方法に係り、詳しくは、安定した音圧レベルで音響測定を行なうことのできる音響測定装置及び音響評価システム並びに音響測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
音圧などの音響測定を行なう場合には、音源にマイクロフォンをできるだけ接近あるいは密着させるのが一般的である(例えば、特許文献1、2参照)。また、特許文献3には、受話器を音響カプラーに接する状態にして、正確に音響情報を受信できるようにすることが開示されている。特許文献4には、受話器をマイクロフォンに接する状態にして、その音圧測定を行なうことが開示されている。
【特許文献1】実開平4−121146号公報
【特許文献2】特開2001−237942号公報
【特許文献3】特開昭59−129253号公報
【特許文献4】特開平11−234798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、いずれの音響測定にあっても、高精度に音圧などを測定する場合には、音源とマイクロフォンを密着させる必要があり、携帯電話機などの音響出力装置の音響性能を製造現場で検査する場合には、多種多様な機種の検査を行なうなどの事情があって、現実的ではない。
【0004】
具体的には、図8に示すように、携帯電話機100を予め決められている測定位置にセットした状態で、レシーバの受話音孔104aから出力される受話情報(音響情報)を近傍のマイクロフォン111に入力させてその音圧レベルを評価する。しかるに、携帯電話機100などの音響検査は、工場内の高騒音下で行われることが通常であり、通話性能試験である受話音量検査を周囲の騒音と区別して行う環境では、十分な精度を得るのは困難である。
【0005】
一般に、騒音は低域ほどレベルが高いので、フィルタを介在させて低域騒音を除去することが考えられる。しかしながら、突発的な騒音や作業者の話し声を完全に遮断する環境を作ることは難しく、完全を期することはできない。このため、この課題を少しでも解消しようと、周囲の騒音と携帯電話機から出る試験信号とのSN比を良くするために、図示するように、携帯電話機100の受話音孔104aの近傍に集音マイクロフォン111を設置するのが常套手段である。しかし、その受話音孔104aと集音マイクロフォン111の離隔間隔が短いために多少の位置ずれでも測定値が大きく変化して、高精度な測定を容易かつ安定して行うことが難しい。
【0006】
ここで、携帯電話機100のレシーバ104の音響測定としては、図9に示すように、受話音孔(出力口)104aから放出される音響情報の波長に対して、その受話音孔104aの開口(音源)が十分に小さいことから点音源とみなすことができる。この音響情報の音圧は、点音源からの音の広がりが球面波Wbとなって、離隔するほど音密度が低下するため、その点音源からの離隔距離に反比例して小さくなる。例えば、マイクロフォン111として、有効入力領域の12.7mm径の入力面111aから音響情報を集音入力する、所謂、1/2インチマイクを選択して、携帯電話機100の受話音孔104aからの離隔距離を変化させ、その音響情報の音圧レベルを測定すると、図10に示す測定結果が得られた。この測定結果からも、携帯電話機100のレシーバ(音響放射部)104からの音響情報の音圧は、受話音孔104aからの離隔距離に反比例して小さくなることが分かる。このため、良好なSN比で音響測定できるように、携帯電話機100の受話音孔104aの近傍にマイクロフォン111を設置しても、その離隔間隔の多少の位置ずれが測定値に大きく影響してしまい、高精度な測定を実現することを困難にしていた。
【0007】
この発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、容易かつ安価に、安定した音圧レベルで音響測定を行なうことのできる音響測定装置及び音響評価システム並びに音響測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明の構成は、電子機器の機器筐体に設けられた音響放射部の出力口に近接して該音響放射部が出力する音響情報を入力する音響集音マイク部と、音響測定時、前記機器筐体の外表面であって、前記出力口の周縁部に当接されて、前記音響集音マイク部を、前記出力口の周縁部に、所定の離隔距離まで、近接させて集音させるための少なくとも1の近接用スペーサ部材とを備えてなると共に、前記所定の離隔距離を確保する前記近接用スペーサ部材の厚みが、前記音響集音マイク部の集音マイク径の5分の1以下に設定されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
この発明の構成によれば、音響放射部の出力口から出力される音響情報のほとんどを、音響集音マイク部の集音マイク径内に入力することができる。ここで、一般的に、平面波は、同一の音密度のまま進行するので、対面する領域内の音響情報のほとんどを入力することができる。すなわち、音響集音マイク部の集音マイク径内に入力される音響情報は、擬似平面波として取り扱って入力することができ、音響放射部の出力口からの離隔距離に左右されることなく、均一な音圧で入力することができる。したがって、音響放射部の出力口と音響集音マイク部との間の位置関係に左右されない品質で音響情報を受け取ることができ、高精度に音圧などの音響測定を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
音響情報を音響放射部の出力口から出力する電子機器をセットするセット部と、前記電子機器の機器筐体に設けられた前記出力口に対面して前記音響放射部の出力する評価対象音響情報を入力する音響集音マイク部と、該音響集音マイク部に入力された入力音響情報より前記出力口以外からの外部音響情報を除去するフィルタ部と、該フィルタ部を経由させた前記入力音響情報の音圧レベルを測定するレベル測定部と、を備えており、前記音響集音マイク部は、音響測定時、前記機器筐体の外表面であって、前記出力口の周縁部に当接されて、当該出力口の周縁部に、所定の離隔距離まで、近接させて集音させるための少なくとも1の近接用スペーサ部材を備えると共に、前記所定の離隔距離を確保する前記近接用スペーサ部材の厚みが、前記音響集音マイク部の集音マイク径の5分の1以下に設定されている。
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について詳細に説明する。
【実施形態1】
【0011】
図1は、この発明の第1の実施形態である音響評価システムの構成を示すブロック図、図2は、同システムにおける音響測定装置の電子機器に対する位置関係を示す一部拡大側面図、図3は、同音響測定装置に入力される音圧と音響放射部の出力口からの離隔距離との関係を示すグラフである。
【0012】
図1において、音響評価システムは、評価対象の携帯電話機(電子機器)100をセットする載置台(セット部)11と、携帯電話機100のレシーバ(音響放射部)104から出力される受話音響情報(評価対象音響情報)を集音・入力して電気信号に変換するマイクロフォン(音響集音マイク部)12と、マイクロフォン12に入力・変換された入力音響信号を増幅する信号増幅器13と、信号増幅器13からの入力音響信号から設定周波数成分をカットするフィルタ部14と、フィルタ部13を経由した入力音響信号の音圧レベルを測定するレベル測定部15とを備えて構成されている。
【0013】
ここで、携帯電話機100は、回路ブロックに対して各種動作信号を発する制御部101を備えており、この回路ブロックには、信号生成器102と、信号増幅器103と、レシーバ104とが構成されている。信号生成器102は、制御部101からの各種入力情報あるいは受信情報に基づく制御信号に応じて各種動作信号を生成する。信号増幅器103は、信号生成器102からの動作信号を増幅する。レシーバ104は、信号増幅器103からの動作信号を受け取って音響情報を出力する。携帯電話機100は、図2に示すように、レシーバ104から出力される音響情報を減衰少なく外部に放出(出力)するようにケース(機器筐体)100aの端部に受話音孔(出力口)104aが開口している。
【0014】
この音響評価システムは、携帯電話機100のレシーバ104から出力される音響情報の音響測定として、その電気音響変換効率の評価試験を行なうものであり、レシーバ104に入力される電気信号は、信号増幅器103までに1定の音響情報(電気信号)に調整されて出力される。例えば、制御部101が信号発生器102に任意の電気信号、例えば、1KHZの正弦波の出力指示を出すと、その信号発生器102からは所定の振幅で1KHZの電気信号が出力される。この電気信号は、信号増幅器103が電力信号に変換してレシーバ104から音響情報としてケース100aの受話音孔104aから外部へ放出される。
【0015】
一方、音響評価システムでは、載置台11にセットされた携帯電話機100の受話音孔104aに対向する位置にマイクロフォン12の中心が位置するように設置されている。マイクロフォン12は、その受話音孔104aから出力されて入力される音響情報を再度電気信号に変換した後に、信号増幅器13が評価測定に必要十分な振幅の電気信号に増幅する。このマイクロフォン12は、図2に示すように、音響情報を集音入力する開口領域(有効入力領域)となる入力面12aが最前面に位置して、携帯電話機100の一般的には平面状のケース100a内に開口する受話音孔104aに最短距離で離隔する位置に設置されている。
【0016】
マイクロフォン12は、携帯電話機100のレシーバ104との間の空間に入り込む周囲の騒音もそのレシーバ104からの音響情報と一緒に取り込んで電気信号に変換していることから、フィルタ部13は、予め設定されている音域の電気信号を除去する。ここで、一般に、騒音は低域ほど音圧レベルが高いので、フィルタ部13は、低域カットフィルタを備えて、低域騒音を除去してSN比を改善する。レベル測定部14は、SN比の改善された携帯電話機100のレシーバ104からの音響信号の音圧レベルを測定する。
【0017】
このマイクロフォン12は、音響情報を集音入力する入力面12aの集音マイク径が例えば、25.4mmの、所謂、1インチマイクが選択されており、この入力面12aの周囲には、複数本の近接用スペーサ部材12b(図2(a)には1本のみ図示)が設置されている。近接用スペーサ部材12bは、携帯電話機100の受話音孔104aの周縁部に当接してケース100aからの離隔距離を設定値にするスペーサとして機能し、その状態を維持するように作製されている。近接用スペーサ部材12bは、ケース100aに接して振動ノイズを拾わないように、ケース100aからの離隔距離として0.1mm以上を維持するとともに、その離隔距離が6mm以下、好適には5mm以下になるようにスペーサとして機能する厚みが設定されている。さらに、その離隔距離としては、より好適には1mm〜4mmの範囲になるように設定されている。近接用スペーサ部材12bは、受話音孔104aから外部に放出される音響情報をマイクロフォン12の入力面12aに向けて反射しないように吸音材料で作製するのが好適である。吸音材料としては、例えば、内部に空気を多く含む発泡樹脂材料が好ましく、例えば、スポンジや発泡スチロールやウレタンゴム等を挙げることができる。また、この吸音材料としては、その周囲を軟質発泡樹脂材料にするとともに中心に硬質発泡樹脂材料を内蔵して上記の離隔距離を維持するようにしてもよい。なお、この近接用スペーサ部材12bは、吸音材料に限らずに、その形状で受話音孔104aからの音響情報をマイクロフォン12の入力面12a以外の範囲に反射するように作製しても良く、また、その音響情報を透過するようにするのも効果的である。
【0018】
そして、マイクロフォン12は、入力面12aが25.4mm径と大面積であることから、携帯電話機100の受話音孔104aを中心にする大きな領域を覆うことができる。このため、マイクロフォン12は、受話音孔104aからある程度の離隔距離の範囲内では、音圧レベルにおいて音源からの離隔距離が音密度の変化に影響しない擬似平面波Wpとして取り扱うことができる。すなわち、点音源の場合でも、近接距離での測定で、入力面12aが大面積のマイクロフォンを選択することにより、携帯電話機100の受話音孔104aとの間の狭い空間内ではレシーバ104からの音響情報を擬似平面波Wpのように入力することができる。例えば、マイクロフォン12の携帯電話機100の受話音孔104aからの離隔距離を変化させ、レシーバ104からの音響情報の音圧レベルを測定すると、図3に示す測定結果が得られた。この測定結果からは、携帯電話機100のレシーバ104からの音響情報の音圧は、受話音孔104aからの離隔距離が6mm以内(離隔距離/直径=1/4.2以下)、言い換えると、入力面12aの直径がその離隔距離の5倍以上(離隔距離/直径=1/5以下)であれば、音圧レベルが離隔距離に依存しない擬似平面波Wpと同等に、測定値変動のない音響測定を行なうことができることが分る。
【0019】
なお、図9に示すマイクロフォン111(1/2インチマイク)で測定した図10に示す測定結果でも、そのマイクロフォン111の入力面の直径が12.7mmと大きめであることから、携帯電話機100の受話音孔104aからの離隔距離が1/5程度の3mm以下では大きく減衰しておらず、3mm以上で大きく減衰している。
【0020】
この構成により、この音響評価システムでは、次の音響測定方法を実行することができる。すなわち、まず、携帯電話機100を載置台11上の予め決められている位置に載置することにより、その受話音孔104aがマイクロフォン12の入力面12aの中心に対面して対向する状態にセットする。このときには、マイクロフォン12は携帯電話機100の受話音孔104aからの離隔距離の1/5以内に入力面12aが位置して、レシーバ104から出力される音響情報を擬似平面波Wpとして離隔距離に左右されない音圧レベルで集音入力することができる。そして、この状態のまま携帯電話機100の音響測定を開始して、受話音孔104aとマイクロフォン12の入力面12aとの間の間隔の微妙なずれの影響の少ない、一定の音圧レベルでの検査を実行することができる。
【0021】
このように、この実施形態によれば、携帯電話機100のレシーバ104から出力されて受話音孔104aから放出される音響情報を、擬似平面波Wpとして離隔距離に左右されない音圧レベルでマイクロフォン12に入力することができる。したがって、直径が1インチのマイクロフォン12の入力面12aから6mm以下の範囲内に受話音孔104aが入るように携帯電話機100をセットするだけで、その受話音孔104aの位置が多少ずれたとしても、均等な音圧レベルで音響測定を行なうことができ、高精度に音圧などの音響測定を行なうことができる。この結果、不必要に音響不良として良品を不良品に判定してしまうことを回避することができ、製品歩留まりの低下をなくして、製造コストを向上させることができる。
【実施形態2】
【0022】
次に、図4は、この発明の第2の実施形態である音響評価システムにおける音響測定装置の電子機器に対する位置関係を示す一部拡大側面図である。ここで、本実施形態は上述実施形態と同様に構成されているので、同様の構成には同一の符号を付して特徴部分を説明する(以下で説明する他の実施形態においても同様)。
【0023】
図4において、音響評価システムは、載置台11と、信号増幅器13と、フィルタ部14と、レベル測定部15と共に、上述の実施形態におけるマイクロフォン12に代えて、音響集音マイク部21を備えて構成されている。
【0024】
音響集音マイク部21は、載置台11にセットされた携帯電話機100の受話音孔104aに対向する位置に、図8〜図10で説明したマイクロフォン111の入力面111aの中心が位置するように設置されている。マイクロフォン111は、最前面に位置する入力面111aが携帯電話機100のケース100a内に開口する受話音孔104aに最短距離で離隔する位置に設置されている。
【0025】
この音響測定装置21は、マイクロフォン111の入力面111aの周囲に連続するように円形のバッフル22が取り付けられている。バッフル22は、上述の実施形態におけるマイクロフォン12の入力面12aと同一径以上になるように形成されており、その中心にマイクロフォン111の入力面111aを同一水平面内で露出させることにより、マイクロフォン12と同一径の有効入力領域を有して同等に機能させることができる。このバッフル22の周囲には、複数本の近接用スペーサ部材12b(図4(a)には1本のみ図示)が設置されている。すなわち、音響測定装置21のマイクロフォン111の入力面111aやバッフル22でも、携帯電話機100の受話音孔104aの開口するケース100aからの離隔距離が0.1mm〜6mmの範囲、好ましくは、5mm以下に、最適には1mm〜4mmの範囲になるように設定されている。
【0026】
すなわち、音響測定装置21は、マイクロフォン111の入力面111aが音響情報を集音入力する有効入力領域として、25.4mm径の、所謂、1インチマイクとして機能して、携帯電話機100の受話音孔104aからの離隔距離が6mm以下になるように設置されている。
【0027】
この構成により、この音響評価システムでも、上述の実施形態と同様の音響測定方法を実行することができ、携帯電話機100の受話音孔104aと音響測定装置21のマイクロフォン111の入力面111aとの間の間隔の微妙なずれの影響の少ない、一定の音圧レベルでの検査を実行することができる。
【0028】
このように、この実施形態によれば、上述の実施形態におけるマイクロフォン12の入力面12aよりも小径の入力面111aのマイクロフォン111でもバッフル22を取り付けるだけで、上述の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0029】
ここで、この実施形態では、円形のバッフル22をマイクロフォン111に取り付ける場合を一例にして説明するが、これに限るものではなく、楕円形や4角形などの多角形に形成されているバッフルを用いても良い。この場合には、楕円形のバッフルのときには、最短距離の短径を集音マイク径(有効入力領域)とし、また、多角形のときには内接円の直径を集音マイク径(幅)として設定すればよい。
【実施形態3】
【0030】
次に、図5は、この発明の第3の実施形態である音響評価システムにおける音響測定装置の電子機器に対する位置関係を示す一部拡大側面図、図6は、同音響測定装置の集音マイク部を構成するマイクロフォンの配列を示す平面図である。
【0031】
図5において、音響評価システムは、載置台11と、信号増幅器13と、フィルタ部14と、レベル測定部15と共に、上述の実施形態におけるマイクロフォン12に代えて、図8〜図10で説明したマイクロフォン111を複数集合させて音響集音マイク部が構成されている。
【0032】
1つのマイクロフォン111Aは、載置台11にセットされた携帯電話機100のケース100a内に開口する受話音孔104aに対向する位置に、入力面111aの中心が位置するように設置されている。また、マイクロフォン111Aの周囲には、マイクロフォン111Aを中心にする点対称の位置、例えば、均等間隔の6箇所の対称点に他のマイクロフォン111Bの入力面111aが位置して放射状に設置されている。
【0033】
この複数のマイクロフォン111は、複数の入力面111aが同一の水平面内で連続するように集合されており、中心のマイクロフォン111Aの入力面111aが携帯電話機100の受話音孔104aに最短距離で離隔して対面するように複数本の近接用スペーサ部材12b(図5(a)には1本のみ図示)で位置決めされている。そして、この複数のマイクロフォン111は、それぞれで集音入力して電気信号に変換した携帯電話機100のレシーバ104(受話音孔104a)からの音響信号を合成(加算)して信号増幅器13に入力する。
【0034】
すなわち、この複数のマイクロフォン111では、入力面111aを複数集合させることにより有効入力領域を拡張することができ、図6に示すように、外側に配置されているマイクロフォン111Bの外縁を内包して内部側で接する内接円形Cの直径Dを集音マイク径とすることができる。このため、複数のマイクロフォン111でも、携帯電話機100の受話音孔104aからの離隔距離がその集音マイク径Dの1/5以下程度の範囲内になるように設置することにより、音圧レベルがその離隔距離に依存しない擬似平面波Wpとして取り扱うことができ、測定値変動のない音響測定を行なうことができる。すなわち、この複数のマイクロフォン111でも、その周囲に設置されている複数本の近接用スペーサ部材12bが、携帯電話機100の受話音孔104aからの離隔距離を上記の内接円形Cの直径Dの1/5以下程度に設定するとともにケース100aに接しないにように支持する。
【0035】
この構成により、この音響評価システムでも、上述の実施形態と同様の音響測定方法を実行することができ、携帯電話機100の受話音孔104aと複数のマイクロフォン111の入力面111aとの間の間隔の微妙なずれの影響の少ない、一定の音圧レベルでの検査を実行することができる。
【0036】
このように、この実施形態によれば、上述の実施形態におけるマイクロフォン12の入力面12aよりも小径の入力面111aのマイクロフォン111を集合させるだけで、上述の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0037】
ここで、この実施形態では、同一のマイクロフォン111を7個集合させる場合を一例にして説明するが、これに限るものではなく、設置個数を増減させてもよく、1個を中心にして入力面の大きさの異なるマイクロフォンを点対象になるように均等に配列しても良い。
【実施形態4】
【0038】
次に、図7は、この発明の第4の実施形態である音響評価システムにおける音響測定装置の近接用スペーサ部材を示す一部拡大側面図である。
【0039】
図7において、音響評価システムは、上述の第1の実施形態と同様に、載置台11と、マイクロフォン12と、信号増幅器13と、フィルタ部14と、レベル測定部15とを備えて構成されており、マイクロフォン12は、上述の第1の実施形態における近接用スペーサ部材12bに代えて、近接用スペーサ部材12cが取り付けられている。ここでは、上述の第1の実施形態における近接用スペーサ部材12bに代える場合を説明するが、他の実施形態の近接用スペーサ部材12bに代えても良い。
【0040】
近接用スペーサ部材12cは、携帯電話機100のケース100aの受話音孔104aの周縁部に向けて人手で押圧するだけでも圧縮することができる発泡樹脂材料で作製されている。近接用スペーサ部材12cは、マイクロフォン12を受話音孔104aに接近させるように人手で押圧した場合に、マイクロフォン12の入力面12aのケース100aからの離隔距離が0.1mm〜6mmの範囲内になるように作製されている。近接用スペーサ部材12cは、好ましくは、個人差によるバラツキの影響がないように、圧縮前でも6mmの離隔距離h1から圧縮後には1mm〜4mmの離隔距離h2になるように作製してもよい。
【0041】
この構成により、この音響評価システムでも、上述の実施形態と同様の音響測定方法を実行することができ、携帯電話機100の受話音孔104aとマイクロフォン12の入力面12aとの間の間隔の微妙なずれの影響の少ない、一定の音圧レベルでの検査を実行することができる。
【0042】
このように、この実施形態によれば、上述の実施形態と同様の作用効果を得ることができるとともに、マイクロフォン12を支持する近接用スペーサ部材12cを圧縮させて受話音孔104aにできるだけ接近させることができ、信頼性高く、高精度に音圧などの音響測定を行なうことができる。
【0043】
さらに、上述のいずれの実施形態でも、マイクロフォンとしては、無指向性又は指向性を区別する必要はなく、いずれを選択して用いても良いが、例えば、1次指向性マイクロフォンを選択する場合には、背面側からの騒音を入力することを避けることができ、入力してしまう騒音の低減を達成することができる。
【0044】
以上、この発明の一実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれる。例えば、上述の実施形態では、マイクロフォンの周囲に近接用スペーサ部材を設置するが、これに限らず、マイクロフォンを支持する装置本体側の部材側で、携帯電話機100の受話音孔104aからの離隔距離がそのマイクロフォンの集音マイク径の1/5以下になるように設定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
この発明は、携帯電話機に限らず、他の音響出力装置からの音響情報の測定に広く適用することができ、例えば、インターフォンなどにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】この発明の第1の実施形態である音響評価システムの構成を示すブロック図である。
【図2】同システムにおける音響測定装置の電子機器に対する位置関係を示す図であり、(a)はその一部拡大側面図、(b)は平面図である。
【図3】同音響測定装置に入力される音圧と音響放射部からの離隔距離との関係を示すグラフである。
【図4】この発明の第2の実施形態である音響評価システムにおける音響測定装置の電子機器に対する位置関係を示す図であり、(a)はその一部拡大側面図、(b)は平面図である。
【図5】この発明の第3の実施形態である音響評価システムにおける音響測定装置の電子機器に対する位置関係を示す図であり、(a)はその一部拡大側面図、(b)は平面図である。
【図6】同音響測定装置の集音マイクを構成するマイクロフォンの配列を示す平面図である。
【図7】この発明の第4の実施形態である音響評価システムにおける音響測定装置の近接用スペーサ部材を示す一部拡大側面図である。
【図8】関連技術の音響測定を説明する図であり、(a)はその側面図、(b)はその平面図である。
【図9】同関連技術における音響測定装置の電子機器に対する位置関係を示す一部拡大側面図である。
【図10】同関連技術における音響測定装置に入力される音圧と音響放射部からの離隔距離との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0047】
11 載置台(セット部)
12、111、111A、111B マイクロフォン(音響集音マイク部)
12a、111a 入力面(集音マイク径)
12b、12c 近接用スペーサ部材
14 フィルタ部
15 レベル測定部
21 音響集音マイク部
22 バッフル
100 携帯電話機(電子機器)
104 レシーバ(音響放射部)
104a 受話音孔(出力口)
C 内接円形
D 直径(集音マイク径)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の機器筐体に設けられた音響放射部の出力口に近接して該音響放射部が出力する音響情報を入力する音響集音マイク部と、
音響測定時、前記機器筐体の外表面であって、前記出力口の周縁部に当接されて、前記音響集音マイク部を、前記出力口の周縁部に、所定の離隔距離まで、近接させて集音させるための少なくとも1の近接用スペーサ部材とを備えてなると共に、
前記所定の離隔距離を確保する前記近接用スペーサ部材の厚みが、前記音響集音マイク部の集音マイク径の5分の1以下に設定されていることを特徴とする音響測定装置。
【請求項2】
前記スペーサ部材の厚みが、
前記音響集音マイク部の集音マイク径の5分の1以下0.1mm以上に設定されていることを特徴とする請求項1記載の音響測定装置。
【請求項3】
前記近接用スペーサ部材は、前記出力口の周縁部に当接された状態で、人力による押圧に応じて、前記厚みの寸法の範囲内に圧縮可能な素材からなることを特徴とする請求項2記載の音響測定装置。
【請求項4】
前記近接用スペーサ部材は、前記音響放出部から出力される前記音響情報を前記音響集音マイク部の方向に反射しないように作製されていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の音響測定装置。
【請求項5】
前記近接用スペーサ部材は、吸音材料で作製されていることを特徴とする請求項4記載の音響測定装置。
【請求項6】
前記音響集音マイク部は、マイクロフォンの周囲にバッフルが設けられて、該バッフルの外径で前記集音マイク径が構成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1に記載の音響測定装置。
【請求項7】
前記音響集音マイク部は、複数のマイクロフォンが集合されて、該複数のマイクロフォンを内包する内接円形の直径が前記集音マイク径を構成することを特徴とする請求項1乃至6の何れか1に記載の音響測定装置。
【請求項8】
前記音響集音マイク部は、前記マイクロフォンが前記内接円形の中心を共通にする点対称の対称点に位置するように配設されていることを特徴とする請求項7記載の音響測定装置。
【請求項9】
前記音響集音マイク部を、指向性を有するマイクロフォンが構成することを特徴とする請求項1乃至8の何れか1に記載の音響測定装置。
【請求項10】
前記音響集音マイク部を構成するマイクロフォンが、前記出力口までの距離が最短距離の位置に設置されていることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1に記載の音響測定装置。
【請求項11】
前記音響集音マイク部は、前記集音マイク径の中心が前記出力口に対向するように設置されていることを特徴とする請求項1乃至10の何れか1に記載の音響測定装置。
【請求項12】
音響情報を音響放射部の出力口から出力する電子機器をセットするセット部と、前記電子機器の機器筐体に設けられた前記出力口に対面して前記音響放射部の出力する評価対象音響情報を入力する音響集音マイク部と、該音響集音マイク部に入力された入力音響情報より前記出力口以外からの外部音響情報を除去するフィルタ部と、該フィルタ部を経由させた前記入力音響情報の音圧レベルを測定するレベル測定部と、を備えており、
前記音響集音マイク部は、音響測定時、前記機器筐体の外表面であって、前記出力口の周縁部に当接されて、当該出力口の周縁部に、所定の離隔距離まで、近接させて集音させるための少なくとも1の近接用スペーサ部材を備えると共に、
前記所定の離隔距離に相当する前記近接用スペーサ部材の厚みが、前記音響集音マイク部の集音マイク径の5分の1以下に設定されていることを特徴とする音響評価システム。
【請求項13】
前記セット部は、前記音響集音マイク部の前記集音マイク径の中心が前記出力口に対向するように前記電子機器のセット位置が設定されていることを特徴とする請求項12記載の音響評価システム。
【請求項14】
電子機器の機器筐体に設けられた音響放射部の出力口から出力される音響情報を入力する音響集音マイク部に、前記出力口が対面するように前記電子機器をセットして前記音響情報の音圧測定を行なう際に、
前記音響集音マイク部は、前記出力口からの離隔距離が当該音響集音マイク部の集音マイク径の5分の1以下になる位置に設置することを特徴とする音響測定方法。
【請求項15】
前記音響集音マイク部の前記集音マイク径の中心が前記出力口に対向するように前記電子機器をセットすることを特徴とする請求項14記載の音響測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−147996(P2010−147996A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−325543(P2008−325543)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】