説明

頭皮頭髪用組成物、及び変色又は光による褪色抑制方法

【課題】(A)カロチン及びその誘導体から選ばれる1種又は2種以上と、(B)トコトリエノール、トコフェロール及びそれらの誘導体から選ばれる1種又は2種以上とを含有する頭皮頭髪用組成物の変色又は褪色を長期にわたり抑制し、外観劣化を防止する。
【解決手段】(A)カロチン及びその誘導体から選ばれる1種又は2種以上と、(B)トコトリエノール、トコフェロール及びそれらの誘導体から選ばれる1種又は2種以上と、(C)ピロリン酸、エテド酸、グリコール酸及びそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上とを、(B)/(C)=1/9〜4/1、かつ(A)/[(B)+(C)]=1/600〜2/1を満たす質量比で含有することを特徴とする頭皮頭髪用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は頭皮頭髪用組成物、及び変色又は光による褪色抑制方法に関し、具体的には、頭皮頭髪用組成物の変色又は光による褪色を長期にわたり抑制することにより、外観劣化を防止する頭皮頭髪用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ビタミンEの一つであるトコトリエノール又はトコフェロールは、血流促進効果や保湿効果が高いことから、育毛剤(特許文献1:特開平8−12532号公報、特許文献2:特開平9−157136号公報参照)、皮膚外用剤(特許文献3:特開2004−83450号公報、特許文献4:特開平8−92062号公報参照)、口腔用組成物(特許文献5:特開平10−182388号公報参照)、貼付剤(特許文献6:特開平9−208460号公報参照)、点眼剤(特許文献7:特開平9−157165号公報参照)、免疫機能改善剤(特許文献8:特開平11−49767号公報参照)、毛髪化粧料(特許文献9:特開2003−146844号公報参照)等の様々な医薬品、化粧品、食品に活用されている。一方、ビタミンAの一つであるカロチン又はその誘導体は、天然色素とも呼ばれ、抗酸化作用や皮膚粘膜の恒常性維持に効果があることから、毛髪化粧料(特許文献10:特開2002−60322号公報参照)、基礎化粧料(特許文献11:特開2002−302419号公報参照)、養毛組成物(特許文献12:特開2006−63088号公報参照)、皮膚外用剤(特許文献13:特表2004−512294号公報参照)等に配合されている。
【0003】
【特許文献1】特開平8−12532号公報
【特許文献2】特開平9−157136号公報
【特許文献3】特開2004−83450号公報
【特許文献4】特開平8−92062号公報
【特許文献5】特開平10−182388号公報
【特許文献6】特開平9−208460号公報
【特許文献7】特開平9−157165号公報
【特許文献8】特開平11−49767号公報
【特許文献9】特開2003−146844号公報
【特許文献10】特開2002−60322号公報
【特許文献11】特開2002−302419号公報
【特許文献12】特開2006−63088号公報
【特許文献13】特表2004−512294号公報
【特許文献14】特開2002−80365号公報
【特許文献15】特開2000−26270号公報
【特許文献16】特開平11−335284号公報
【特許文献17】国際公開WO01/42390パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、(A)カロチン及びその誘導体から選ばれる1種又は2種以上と、(B)トコトリエノール、トコフェロール及びそれらの誘導体から選ばれる1種又は2種以上とを含有する頭皮頭髪用組成物の変色又は褪色を長期にわたり抑制し、外観劣化を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、(A)カロチン及びその誘導体から選ばれる成分、又は(B)トコトリエノール、トコフェロール及びそれらの誘導体から選ばれる成分を組成物に配合すると、変色や光による褪色が起こることを見出した。また、上記(A)成分と(B)成分とを併用することによる効果が期待されるものの、これらを併用すると、経時で顕著な変色や光による褪色が起こり、著しく外観劣化を生じることを知見した。
【0006】
一方、ビタミン類安定化の手段としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油系活性剤とポリグリセリン脂肪酸エステルをはじめとする非イオン界面活性剤を併用する方法(特許文献14:特開2002−80365号公報参照)、アミノ糖類を用いる方法(特許文献15:特開2000−26270号公報)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを用いる方法(特許文献16:特開平11−335284号公報参照)、アミノアルコールを併用する方法(特許文献17:国際公開WO01/42390パンフレット)等が開示されている。しかしながら、これらは変色や光による褪色を抑制するものではなく、また、ビタミン類安定化方法としては不充分であった。
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、(A)カロチン及びその誘導体から選ばれる1種又は2種以上と、(B)トコトリエノール、トコフェロール及びそれらの誘導体から選ばれる1種又は2種以上と、(C)ピロリン酸、エデト酸、グリコール酸及びそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上とを配合し、さらに、これらの配合比を(B)/(C)=1/9〜4/1(質量比)、かつ(A)/[(B)+(C)]=1/600〜2/1(質量比)とすれば、意外なことに、上記(A)成分と(B)成分とを組み合わせることによって、むしろ変色又は光による褪色を抑制でき、外観劣化を防止できることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0008】
従って、本発明は、
[1].(A)カロチン及びその誘導体から選ばれる1種又は2種以上と、(B)トコトリエノール、トコフェロール及びそれらの誘導体から選ばれる1種又は2種以上と、(C)ピロリン酸、エデト酸、グリコール酸及びそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上とを、(B)/(C)=1/9〜4/1、かつ(A)/[(B)+(C)]=1/600〜2/1を満たす質量比で含有することを特徴とする頭皮頭髪用組成物、
[2].乳化物である[1]記載の頭皮頭髪用組成物、
[3].透明液体である[1]記載の頭皮頭髪用組成物、
[4].(A)カロチン及びその誘導体から選ばれる1種又は2種以上と、(B)トコトリエノール、トコフェロール及びそれらの誘導体から選ばれる1種又は2種以上と、(C)ピロリン酸、エデト酸、グリコール酸及びそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上とを、(B)/(C)=1/9〜4/1、かつ(A)/[(B)+(C)]=1/600〜2/1を満たす質量比で頭皮頭髪用組成物に配合することを特徴とする、上記(A)成分及び(B)成分を含有する頭皮頭髪用組成物の変色又は光による褪色抑制方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、(A)カロチン及びその誘導体から選ばれる1種又は2種以上と、(B)トコトリエノール、トコフェロール及びそれらの誘導体から選ばれる1種又は2種以上とを含有する頭皮頭髪用組成物の変色又は光による褪色を長期にわたり抑制し、外観劣化を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の頭皮頭髪用組成物は、(A)カロチン及びその誘導体から選ばれる1種又は2種以上と、(B)トコトリエノール、トコフェロール及びそれらの誘導体から選ばれる1種又は2種以上と、(C)ピロリン酸、エデト酸、グリコール酸及びそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上とを、(B)/(C)=1/9〜4/1、かつ(A)/[(B)+(C)]=1/600〜2/1を満たす質量比で含有するものである。
【0011】
本発明の(A)成分は、カロチン及びその誘導体から選ばれる1種又は2種以上である。カロチンとしては具体的にα−カロチン、β−カロチン、γ−カロチン及びそれらの誘導体が挙げられる。誘導体としては、ルテイン、ゼアキサンチン、カンタキサンチン等のキサントフィル類が挙げられる。この中でもα−カロチン、β−カロチンが好ましい。本発明の(A)成分は天然であっても合成であってもよく、天然の場合、その由来は特に制限されることはなく、β−カロチン及びα−カロチンを含有するパーム油由来のカロチンであるパーム油カロチン等を用いることができる。
【0012】
本発明の(B)成分は、トコトリエノール、トコフェロール及びそれらの誘導体から選ばれる1種又は2種以上である。具体的には、α−トコフェロール、dl−α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール及びこれらの混合物であるトコフェロール、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、δ−トコトリエノール及びこれらの混合物であるトコトリエノール、ならびに酢酸dl−α−トコフェロール、酢酸d−α−トコフェロール等の酢酸トコフェロール、トコトリエノールアセテート等の誘導体が挙げられる。この中でも、α−トコフェロール、dl−α−トコフェロール、混合物であるトコフェロール、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、混合物であるトコトリエノール、酢酸dl−α−トコフェロールが好ましい。本発明の(B)成分は天然であっても合成であってもよく、天然の場合、その由来は特に制限されることはない。
【0013】
本発明の(C)成分は、ピロリン酸、エデト酸、グリコール酸及びそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上である。具体的には、ピロリン酸、ピロリン酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム、グリコール酸、グリコール酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸カルシウム二ナトリウム、ピロリン酸四カルシウム、ピロリン酸二水素カルシウム、ピロリン酸二水素二ナトリウム、グリコール酸カリウム等が挙げられ、これらの中でも、ピロリン酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム、グリコール酸が好ましい。
【0014】
本発明の頭皮頭髪用組成物は、(B)/(C)=1/9〜4/1(質量比)、かつ(A)/[(B)+(C)]=1/600〜2/1(質量比)を満たすものである。以上のように、(B)/(C)は(B)成分と(C)成分の配合比、(A)/[(B)+(C)]は、(A)成分と(B)成分及び(C)成分合計との配合比であり、これらの比率を特定の範囲にすることで、(A)成分及び(B)成分を含有する頭皮頭髪用組成物の変色又は光による褪色を長期にわたり抑制し、外観劣化を防止することができる。なお、上記比率の数は小数点第1位を四捨五入した数である。
【0015】
(B)/(C)で表される質量比は1/9〜3/1が好ましく、より好ましくは1/8〜2/1である。この範囲内で変色又は光による褪色の抑制効果が特に得られる。(B)成分と(C)成分の配合比は、特に変色を抑制する効果に影響する。また、(A)/[(B)+(C)]で表される質量比は、1/580〜1.5/1が好ましく、より好ましくは1/560〜1/1である。この範囲内で変色又は光による褪色の抑制効果が特に得られる。(A)成分と(B)成分及び(C)成分合計との配合比は、特に光による褪色を抑制する効果に影響する。
【0016】
(A)、(B)、及び(C)成分のそれぞれの頭皮頭髪用組成物中の配合量は、上記比を満たしていれば特に限定されない。例えば、(A)成分の配合量はその種類によって適宜選定されるが、頭皮頭髪用組成物中0.0001〜3質量%が好ましく、より好ましくは0.0002〜2質量%、さらに好ましくは0.0005〜1質量%である。0.0001質量%に満たないと満足な安定性が得られない場合があり、3質量%を超えると、頭皮や衣類が染色されるおそれがある。
【0017】
(B)成分の配合量はその種類によって適宜選定されるが、頭皮頭髪用組成物中0.001〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.005〜3質量%、さらに好ましくは0.01〜2質量%である。0.001質量%に満たないと満足な安定性が得られない場合があり、5質量%を超えるとべたつきが生じるばかりでなく、すすぎ感触が悪化するおそれがある。
【0018】
(C)成分の配合量はその種類によって適宜選定されるが、頭皮頭髪用組成物中0.01〜1質量%が好ましく、より好ましくは0.03〜0.8質量%、さらに好ましくは0.05〜0.6質量%である。0.01質量%に満たないと、満足な安定性が得られない場合があり、1質量%を超えると低温で析出する場合がある。
【0019】
本発明の頭皮頭髪組成物には、上記必須成分の他に、その使用目的等に応じ、通常頭皮頭髪組成物に用いられる任意成分を配合することができる。そのような成分としては、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、セルロース類、油剤、多価アルコール、糖類、香料、保存料、pH調整剤等を挙げることができる。
【0020】
アニオン界面活性剤としては、例えば、α−オレフィンスルホネート(AOS塩)、(天然)ラウリルアルコールポリオキシエチレン硫酸エステル、C11〜C15脂肪族アルコールポリオキシエチレン硫酸エステル、C12〜C13脂肪族アルコールポリオキシエチレン硫酸エステル、C12〜C13脂肪族アルコール硫酸エステル、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸アミドエーテル硫酸エステル、及びこれらの硫酸エステル部分が硫酸のナトリウム塩、カリウム塩、アルカノールアミン塩、又はアンモニウム塩であるもの、N−ヤシ油脂肪酸−N−メチルタウリンナトリウム、N−ヤシ油脂肪酸−N−メチルタウリンマグネシウム、C11〜C15脂肪酸メチルタウリンナトリウム、C12〜C13脂肪酸メチルタウリンナトリウム、C12〜C13脂肪酸メチルタウリン酸ナトリウム、天然ラウリルアルコールポリオキシエチレンカルボン酸エステル、C11〜C15脂肪族アルコールポリオキシエチレンカルボン酸エステル、C12〜C13脂肪族アルコールポリオキシエチレンカルボン酸エステル、C12〜C13脂肪族アルコールカルボン酸エステル、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸アミドエーテルカルボン酸エステル、及びこれらのカルボン酸エステル部分がカルボン酸のナトリウム塩、カリウム塩、アルカノールアミン塩、又はアンモニウム塩であるもの、N−ラウロイルグルタミン酸、ミリストイルグルタミン酸、N−パルミトイルグルタミン酸、N−アシルグルタミン酸、及びこれらのN−アシルグルタミン酸との混合物、並びにこれらのN−アシルグルタミン酸のモノエタノールアミン塩、ナトリウム塩、又はカリウム塩、N−ラウロイル−N−エチルグリシン、N−ラウロイル−N−イソプロピルグリシン、N−ラウロイルザルコシン、N−ミリストイルグザルコシン、N−パルミトイルザルコシン、N−ラウロイル−N−メチル−β−アラニン、N−ラウロイル−N−エチル−β−アラニン、N−ミリストイル−β−アラニン、N−パルミトイル−β−アラニン及びこれらの混合物、並びに、これらのモノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ナトリウム塩、カリウム塩、又はマグネシウム塩等を挙げることができる。これらの中でも、α−オレフィンスルホネート(AOS塩)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸アミドエーテル硫酸ナトリウム、N−ヤシ油脂肪酸−N−メチルタウリンナトリウム、N−ヤシ油脂肪酸−N−メチルタウリンマグネシウム、C11〜C15脂肪酸メチルタウリンナトリウム、C12〜C13脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルカルボン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸エーテルカルボン酸ナトリウム等が好ましい。
【0021】
カチオン界面活性剤としては、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム等の塩化アルキル(C8〜25)トリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、ラノリン誘導第四級アンモニウム塩、ベヘン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジエチルアミノプロピルアミド等が挙げられる。
【0022】
非イオン界面活性剤としては、ポリグリセリン脂肪酸エステル、POE(ポリオキシエチレン)硬化ヒマシ油、POEアルキルエーテル、POE・POPアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、POEソルビタン脂肪酸エステル、POEソルビット脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、POEグリセリン脂肪酸エステル、モノステアリン酸ポリエチレングリコール等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。両性界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム、N−ヤシ油脂肪酸アシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン・ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0023】
セルロース類としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロール、メチルセルロース等が挙げられる。油剤としては、ヤシ油、水添パーム油、スクワラン等の動植物油、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸エチル、ジイソステアリン酸ジグリセリル等の脂肪酸エステル、シリコーン類、及びベヘニルアルコール、ステアリルアルコール、セタノール、セトステアリルアルコール等の高級アルコールが挙げられる。多価アルコールとしては、プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコ−ル、イソプレングリコ−ル、ジグリセリン等が挙げられる。糖類としてはソルビット、マンニット、キシリトール、トレハロース等が挙げられる。
【0024】
本発明の頭皮頭髪用組成物は、例えば、液状、クリーム状、フォーム状、スプレー状、ジェル状、粉末状、固形状等の多くの剤型で広く利用でき、シャンプー、リンス、コンディショナー、トリートメント、ヘアカラー、洗い流すタイプのトリートメント、洗い流さないタイプのトリートメント、フォーム剤等の整髪剤等に用いることができる。
【0025】
頭皮頭髪用組成物は、リンス、コンディショナー、トリートメント等に多く見られる乳化物、シャンプー等に多く見られる透明液体等があるが、(A)成分と(B)成分を併用して組成物に配合することによる変色は、乳化物に強く現われ、光による褪色は透明液体に強く現われる。なお、本発明において、「透明」とは、400nmの可視光を照射した際の光透過率が70%以上である場合をいう。その他、(B)成分の配合割合が比較的多い場合、組成物が熱により変色する傾向にあり、(A)成分の配合割合が比較的多い場合、組成物が光により褪色する傾向がある。
【0026】
本発明の頭皮頭髪組成物は、例えば、必須成分及び水(残部)等を混合し、各剤型の常法に基づいて得ることができる。本発明の頭皮頭髪組成物のpH(25℃)は、剤型によって適宜選択されるが、pH3〜7の範囲が好ましく、より好ましくは3.2〜6.5である。pHが3未満であると乳化物の変色が起こりやすくなるおそれがあり、pHが7を超えると透明液体で光による褪色が起こりやすくなるおそれがある。
【0027】
本発明は、上記(A)成分及び(B)成分を含有する頭皮頭髪用組成物に、上記(C)成分を配合し、さらに、(B)/(C)=1/9〜4/1、かつ(A)/[(B)+(C)]=1/600〜2/1を満たす質量比で配合することにより、上記(A)成分及び(B)成分を含有する頭皮頭髪用組成物の変色又は光による褪色抑制することができ、変色又は光による褪色抑制方法を提供するものである。
【実施例】
【0028】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において特に明記のない場合は、組成の「%」は質量%、比率は質量比を示し、表中の各成分の量は純分換算した量である。
【0029】
[実施例1〜11、比較例1〜9]
表1〜4に示すトリートメント(乳化物・外観白色)を常法に準じて調製し、それぞれ30mL入り透明ポリエチレンテレフタレート製容器(PET容器)に充填後、50℃に1ヶ月間保存した。その後、外観の状態を下記の評価基準に従って評価した。なお、調製直後の組成物のpHを、東亜DKK(株)製pHメーターHM−25R型を用いて、25℃恒温下で測定した。結果を表中に併記する。
<評価基準>
◎:調製直後と同じく白色であり外観変化なし
〇:表面のみ極わずかに淡赤色
△:全体が赤色に変色
×:全体が明らかに赤色に変色
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
【表3】

【0033】
【表4】

【0034】
本発明の頭皮頭髪組成物(実施例)は、製造直後の白色外観のまま変化がなく、変色がほとんど認められなかった。また光による褪色も認められなかった。これに対し、(A)成分、(B)成分、(C)成分のいずれかを配合しない場合(比較例1〜3)や、(B)成分と(C)成分の配合比、又は(A)成分に対する(B)成分及び(C)成分合計との配合比が本発明の範囲外である場合(比較例4〜9)は、組成物全体が白色から赤色に変色し、調製直後の外観を維持することができなかった。
【0035】
[実施例12〜22、比較例10〜18]
表5〜8に示すシャンプー組成物(黄色透明)を常法に準じて調製し、それぞれ30mL入り透明ポリエチレンテレフタレート製容器(PET容器)に充填後、日光暴露(13.8MJ/m2)条件下に保存した。その後、外観の状態を下記の評価基準に従って評価した。なお、調製直後の組成物のpHは、東亜DKK(株)製pHメーターHM−25R型を用いて、25℃恒温下で測定し、日光の照射量は、スガ試験機(株)製 PH−11M−3AT型照度記録装置を用いて測定した。
[評価基準]
◎:調製直後と同じく黄色透明であり外観変化なし
〇:全体が極わずか褪色
△:全体が褪色し、黄色から淡黄色に変化
×:全体が明らかに褪色し、黄色からほぼ無色に変化
【0036】
【表5】

【0037】
【表6】

【0038】
【表7】

【0039】
【表8】

【0040】
本発明の頭皮頭髪組成物(実施例)は、調製直後と同じく黄色透明であり、光による褪色はほとんど認められなかった。また、黄色が濃くなることもなかった。これに対し、(B)成分又は(C)成分のいずれかを配合しない場合(比較例10,11)や、(B)成分と(C)成分の配合比、又は(A)成分と(B)成分及び(C)成分合計との配合比が本発明の範囲外である場合(比較例12〜18)は、黄色の組成物が無色に褪色していき、調製直後の外観を維持することができなかった。
【0041】
下記頭皮頭髪組成物を、それぞれの組成に従って各剤型の常法に準じて調製した。
[実施例23](トリートメント)
組成 %
塩化アルキルトリメチルアンモニウム(80%) 2.0
ステアリルアルコール 3.5
シリコーンオイルミックス 3.2
アモジメチコン 0.5
ホホバ油 0.3
ジイソステアリン酸ジグリセリル 1.0
ミリスチン酸イソプロピル 0.1
L−アルギニン 0.3
ソルビット液 10.0
dl−α−トコフェロール(B) 0.003
β−カロチン(A) 0.0001
ヒドロキシエチルセルロース 0.4
メチルパラベン 0.2
安息香酸 0.1
エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム(C) 0.027
トリエタノールアミン 適量
リン酸 0.01
香料 0.5
精製水 残部
合計 100.0
特開2003−113019公報記載表2のA組成を使用
(B)/(C)=1/9、(A)/[(B)+(C)]=1/300の割合で、pH3.2で調製した。調整直後、白色不透明の乳化物であったが、40℃の条件下で2ヶ月保存した結果、調製直後と同じく白色不透明の乳化物であり、外観の変色は起こらなかった(上記実施例1での評価「〇」)。また褪色も認められなかった。
【0042】
[実施例24](コンディショナー)
組成 %
塩化アルキルトリメチルアンモニウム(80%) 1.8
ステアリルアルコール 3.5
シリコーンオイルミックス 3.2
アモジメチコン 0.5
ジイソステアリン酸ジグリセリル 1.0
L−アルギニン 0.3
ソルビット液 10.0
酢酸dl−α−トコフェロール(B) 0.06
β−カロチン(A) 0.008
カモミラエキス 0.001
ヒドロキシエチルセルロース 0.3
安息香酸 0.1
エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム(C) 0.03
トリエタノールアミン 適量
リン酸 0.01
香料 0.5
精製水 残部
合計 100.0

特開2003−113019号公報記載表2のA組成を使用
(B)/(C)=2/1、(A)/[(B)+(C)]=1/11の割合で、pH5.2で調製した。調整直後、白色不透明の乳化物であったが、40℃の条件下で2ヶ月保存した結果、調製直後と同じく白色不透明の乳化物白色であり、外観の変色は起こらなかった(上記実施例1での評価「◎」)。また褪色も認められなかった。
【0043】
[実施例25](シャンプー)
組成 %
POE(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム 15.0
POE(20)硬化ヒマシ油 3.0
ラウリン酸アミドプロピルベタイン液 5.0
グアーヒドロキシトリメチルアンモニウムクロリド 0.3
無水硫酸ナトリウム 0.5
プロピレングリコール 0.8
トコトリエノール(B) 0.01
β−カロチン(A) 0.0002
安息香酸ナトリウム 0.7
エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム (C) 0.05
クエン酸 適量
香料 0.4
精製水 残部
合計 100.0

特開2003−113019記載表2のA組成を使用
(B)/(C)=1/5、(A)/[(B)+(C)]=1/300の割合で、pH5.8で調製した。調製直後、淡黄色透明の外観を示したが、PET容器に充填し、日光暴露(13.8MJ/m2)条件下に保存しても、調製直後と同じく淡黄色透明の外観であり、褪色は起こらなかった(上記実施例12での評価「◎」)。また、変色も起こらなかった。
【0044】
[実施例26](シャンプー)
組成 %
POE(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム 16.0
POE(10)硬化ヒマシ油 0.5
ラウリン酸アミドプロピルベタイン液 5.5
グアーヒドロキシトリメチルアンモニウムクロリド 0.4
無水硫酸ナトリウム 1.5
プロピレングリコール 0.6
トコトリエノール (B) 0.03
β−カロチン (A) 0.0002
安息香酸ナトリウム 0.9
ピロリン酸ナトリウム(C) 0.03
クエン酸 適量
香料 0.4
精製水 残部
合計 100.0

特開2003−113019記載表2のA組成を使用
(B)/(C)=1/1、(A)/[(B)+(C)]=1/300の割合で、pH4.0で調製した。調製直後、淡黄色透明の外観を示したが、PET容器に充填し、日光暴露(13.8MJ/m2)条件下に保存しても、調製直後と同じく淡黄色透明の外観であり、褪色は起こらなかった。(上記実施例12での評価「○」)。また、変色も起こらなかった。
【0045】
上記実施例及び比較例で使用した原料を示す。
【0046】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カロチン及びその誘導体から選ばれる1種又は2種以上と、(B)トコトリエノール、トコフェロール及びそれらの誘導体から選ばれる1種又は2種以上と、(C)ピロリン酸、エデト酸、グリコール酸及びそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上とを、(B)/(C)=1/9〜4/1、かつ(A)/[(B)+(C)]=1/600〜2/1を満たす質量比で含有することを特徴とする頭皮頭髪用組成物。
【請求項2】
乳化物である請求項1記載の頭皮頭髪用組成物。
【請求項3】
透明液体である請求項1記載の頭皮頭髪用組成物。
【請求項4】
(A)カロチン及びその誘導体から選ばれる1種又は2種以上と、(B)トコトリエノール、トコフェロール及びそれらの誘導体から選ばれる1種又は2種以上と、(C)ピロリン酸、エデト酸、グリコール酸及びそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上とを、(B)/(C)=1/9〜4/1、かつ(A)/[(B)+(C)]=1/600〜2/1を満たす質量比で頭皮頭髪用組成物に配合することを特徴とする、上記(A)成分及び(B)成分を含有する頭皮頭髪用組成物の変色又は光による褪色抑制方法。

【公開番号】特開2008−273888(P2008−273888A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−120711(P2007−120711)
【出願日】平成19年5月1日(2007.5.1)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】