説明

頭髪用乳化組成物

【課題】乳化が容易であり、経時的な凝集・析出が生じず、優れた製剤安定性を有し、整髪力に優れるとともに、毛髪へのなじみおよび延展性が良く、べたつき感を低減することができる機能性・使用性に優れる頭髪用乳化組成物の提供。
【解決手段】(A)融点70〜77℃のパラフィンワックス、(B)室温で液状の油性物質、(C)非イオン性界面活性剤および(D)水を含有してなる頭髪用乳化組成物とする。所望により、(E)カチオン性ポリマーを含有することができる。また、ヘアワックスであることが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭髪用乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、「立ち上げる」「散らす」「まとめる」「ねじる」「アレンジする」といった特徴的な整髪機能に加えて、「のび」「つや」などの機能性や、「べたつき」「ごわつき」などを低減した使用性にも優れた整髪剤が開発されている。このような整髪機能と機能性・使用性の両方を得るために、融点が高く、性状も硬いカルナウバロウ、キャンデリラロウ、高融点マイクロクリスタリンワックスなどの固形油分に加えて、シリコーン油、エステル油、高分子などの配合が試みられている。
【0003】
具体的には、例えば、ヨウ素価および酸価が3.0以下のコメヌカロウ0.1〜8質量%かつ、総ワックス量が5〜8質量%、特定の油性成分を含有する油性固形化粧料(例えば、特許文献1を参照)、融点が45℃以上の固形油分及び液状油分、特定の高分子化合物を含有し、油性粒子の平均粒径が0.05〜10mmの整髪料(例えば、特許文献2を参照)、固形油分10〜20質量%、多価アルコールと2−エチルヘキサン酸とのエステル4〜12質量%、シリコンオイル0.2〜10質量%、ポリグリセリンイソステアリン酸エステル4〜10質量%、水50〜70質量%含有する乳化整髪料組成物(例えば、特許文献3を参照)、ロウ類1〜30質量%、25℃においてペースト状であって、30〜55℃に融点または凝固点を有する油剤2〜50質量%、平均重合度20000〜200000の高重合ポリエチレングリコール0.01〜2質量%、平均重合度2〜200の低重合ポリエチレングリコール0.1〜10質量%を含有する整髪料(例えば、特許文献4を参照)などが提案されている。
【0004】
しかしながら、このように高融点の固形油分を用いると、優れた整髪力を得ることができる反面、高配合とすると、その性状および組成から、経時的に凝集・析出が生じて、製剤安定性に悪影響を及ぼすといった問題がある。種々の剤型の中でも、特に乳化剤型において高配合とすると、乳化が極めて困難となり、例え乳化できたとしても上記問題により安定性に劣るといった問題がある。また、使用性を高めるために液状油や高分子化合物等を配合し過ぎると、製剤自体のバランスが悪くなると共に、整髪力が低下してしまうといった問題も起こりえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−179564号公報
【特許文献2】特開2009−108003号公報
【特許文献3】特開2006−28153号公報
【特許文献4】特開2002−187825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、乳化が容易であり、経時的な凝集・析出が生じず、優れた製剤安定性を有する頭髪用乳化組成物を提供することを課題とする。また、整髪力に優れるとともに、毛髪へのなじみおよび延展性が良く、べたつき感を低減することができる機能性・使用性に優れる頭髪用乳化組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明は、
〔1〕(A)融点70〜77℃のパラフィンワックス、(B)室温で液状の油性物質、(C)非イオン性界面活性剤および(D)水を含有してなる頭髪用乳化組成物、
〔2〕さらに、(E)カチオン性ポリマーを含有してなる前記〔1〕に記載の頭髪用乳化組成物、並びに
〔3〕前記〔1〕又は〔2〕に記載の頭髪用乳化組成物が、ヘアワックスである頭髪用乳化組成物
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の頭髪用乳化組成物は、経時的な凝集・析出が生じず、優れた製剤安定性を有するという効果を奏する。また、本発明の頭髪用乳化組成物は、整髪力に優れるとともに、毛髪へのなじみおよび延展性が良好で整髪時の操作性に優れ、べたつき感を低減するという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の頭髪用乳化組成物は、(A)融点70〜77℃のパラフィンワックス、(B)室温で液状の油性物質(C)非イオン性界面活性剤および(D)水、を含有する。
【0010】
(A)成分のパラフィンワックスとは、天然ワックス中の石油ワックスの一種である。石油ワックスとは、「石油中に存在する常温で固体の炭化水素」のことであり、その蒸留後の分離物により、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスおよびペトロラタムの3種に分類される。パラフィンワックスは、石油ワックスの減圧蒸留抽出油から分離精製した固形ワックスであり、炭素数分布は約20〜40、分子量は約300〜550、90%程度が直鎖状のノルマルパラフィンである。一般的特性は、揮発性が低く、無味・無臭であり、溶融状態では極めて低粘度である。融点は、40〜80℃の範囲で存在する。
【0011】
本発明で用いられるパラフィンワックスの融点は、乳化安定性および使用性の観点から、70〜77℃である。該融点範囲であれば、1種を単独で用いてもよく、融点の異なる2種以上を適宜組合せて用いることもできる。
【0012】
尚、上記(A)成分は、市販品を用いることもできる。具体的には、例えば、SP−0165(商品名,日本蜜蝋社製)などを例示することができる。
【0013】
(A)成分の含有量は、所望の効果が付与されるのであれば特に限定されないが、通常、整髪力の観点から、組成物中、0.5質量%以上が好ましく、より好ましくは3質量%以上である。また、延展性の観点から、25質量%以下が好ましく、より好ましくは20質量%以下である。これらの観点から、(A)成分の含有量は、0.5〜25質量%が好ましく、より好ましくは3〜20質量%である。
【0014】
(B)成分の室温で液状の油性成分は、化粧料原料として使用できるものであれば特に限定はされないが、成分の具体例としては、例えば、イソパラフィン、軽質イソパラフィンなどの室温で液状の炭化水素;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンなどの環状シリコーン;オクタメチルトリシロキサン、テトラデカメチルヘキサシロキサン、低粘度メチルポリシロキサンなどの鎖状シリコーン;イソステアリン酸エチル、イソステアリン酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸セチル、2−エチルヘキサン酸セトステアリル、2−エチルヘキサン酸グリセリン、マカデミアナッツ油脂肪酸コレステリル、リンゴ酸ジイソステアリル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸イソセチル、オクタン酸イソステアリル、パルミチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソセチル、ジペンタエリトリット脂肪酸エステル、イソステアリン酸オクチルドデシル、イソノナン酸イソノニルなどの脂肪酸エステル油などの室温で液状の脂肪酸エステル油;液状ラノリン、スクワラン、ホホバ油、オリーブ油、マカデミアナッツ油、アーモンド油などの室温で液状の動植物油などを例示することができる。これら成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。
【0015】
(B)成分の含有量は、所望の効果が付与されるのであれば特に限定されないが、通常、機能性の観点から、組成物中、0.5質量%以上が好ましく、より好ましくは1質量%以上である。また、使用性の観点から、20質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以下である。これらの観点から、(B)成分の含有量は、0.5〜20質量%が好ましく、より好ましくは1〜15質量%である。
【0016】
(C)成分の非イオン性界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物などの脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤の他、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリン、ショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。これら成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。
【0017】
グリセリン肪酸エステルとしては、本発明においては、グリセリン脂肪酸エステルおよびポリグリセリン脂肪酸エステルのいずれをも意味し、具体的には、モノカプリル酸グリセリル、モノカプリン酸グリセリル、モノラウリン酸グリセリル、モノミリスチン酸グリセリル、モノパルミチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸グリセリル、モノベヘン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、モノエルカ酸グリセリル、セスキオレイン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸グリセリル、ジアラキン酸グリセリルなどのグリセリン脂肪酸エステル;モノカプリル酸ジグリセリル、モノカプリル酸デカグリセリル、モノカプリン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸テトラグリセリル、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノラウリン酸ポリ(4〜10)グリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸ポリ(2〜10)グリセリル、モノオレイン酸ジグリセリル、モノオレイン酸ヘキサグリセリル、セスキオレイン酸ジグリセリル、ジイソステアリン酸ポリ(2〜10)グリセリル、ジステアリン酸ポリ(6〜10)グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリステアリン酸ポリ(10)グリセリルなどの上記したグリセリン脂肪酸エステルの重合度2〜10のポリグリセリン脂肪酸エステルを例示することができる。また、グリセリン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物としては、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、モノオレイン酸ポリオキシエチレングリセリルなどを例示することができる。
【0018】
ポリアルキレングリコール脂肪酸エステルとしては、例えば、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコールなどのポリエチレングリコール脂肪酸エステル;モノステアリン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸プロピレングリコールなどのプロピレングリコール脂肪酸エステルなどを例示することができる。
【0019】
ソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、モノオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノイソステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、ヤシ油脂肪酸ソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステルを例示することができる。また、ソルビタン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物としては、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノイソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノヤシ油脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンなどを例示することができる。
【0020】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシプロピレンイソセチルエーテル、ポリオキシプロピレンステアリルエーテル、ポリオキシプロピレンオレイルエーテルなどを例示することができる。
【0021】
(C)成分の含有量は、所望の効果が付与されるのであれば特に限定されないが、通常、製剤安定性の観点から、組成物中、0.5質量%以上が好ましく、より好ましくは1質量%以上である。また、使用性の観点から、15質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下である。これらの観点から、(C)成分の含有量は、0.5〜15質量%が好ましく、より好ましくは1〜10質量%である。
【0022】
(D)成分の水は、化粧料原料として使用できるものであれば特に限定はされないが、通常、精製水が用いられる。(D)成分の含有量は、所望の効果が付与されるのであれば特に限定されないが、通常、使用感の観点から、組成物中、20〜90質量%が好ましく、より好ましくは20〜75質量%である。
【0023】
本発明の頭髪用乳化組成物には、整髪時の手触りや毛髪の保護および毛髪のツヤを高める観点から、(E)カチオン性ポリマーを含有させることができる。(E)成分の具体例としては、例えば、ビニルピロリドン・N,N−ジアルキルアミノメタクリレート共重合体、カチオン化セルロース、カチオン化グアーガム、カチオン化デンプン、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体などを例示することができる。これら成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。
【0024】
(E)成分の含有量は、所望の効果が付与されるのであれば特に限定されないが、通常、機能性の観点から、組成物中、0.001質量%以上が好ましく、より好ましくは0.01質量%以上である。また、安定性維持の観点から、5質量%以下が好ましく、より好ましくは2質量%以下である。これらの観点から、(E)成分の含有量は、0.001〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜2質量%である。
【0025】
本発明の頭髪用乳化組成物には、製剤安定性を更に向上させるために、(E)成分以外の増粘性高分子を含有させることもできる。用いられる増粘性高分子としては、水溶性を有する天然高分子、半合成高分子、合成高分子などが挙げられる。天然高分子の具体例としては、例えば、アラビアゴム、トラガントガム、グアーガム、ローカストビーンガム、カラヤガム、アイリスモス、クインスシード、ゼラチン、セラック、ロジン、カゼインなどを例示することができる。半合成高分子の具体例としては、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセロース、アルギン酸ナトリウム、エステルガム、ニトロセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、結晶セルロースなどを例示することができる。合成高分子の具体例としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、ポリビニルメチルセルロース、ポリアミド樹脂、ポリエチレングリコールなどを例示することができる。これら成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。好適な増粘性高分子としては、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を用いることが好ましい。
【0026】
尚、増粘性高分子としてカルボキシビニルポリマーやアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を用いる場合は、通常、塩基性物質で中和して用いられる。塩基性物質としては、例えば、トリエタノールアミン、モノエタノールアミンなどのアルカノールアミン類、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基、アルギニンなどの塩基性アミノ酸などが例示される。また、塩基性物質の添加量は、カルボキシビニルポリマーやアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を中和するのに充分な量であり、これら成分の種類や使用量に応じて適宜配合すればよい。
【0027】
(E)成分以外の増粘性高分子の含有量は、特に限定されないが、通常、製剤安定性を更に向上させる観点から、組成物中、0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.1質量%以上である。また、使用感の観点から、15質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下である。これらの観点から、(E)成分以外の増粘性高分子の含有量は、0.01〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%である。
【0028】
本発明の頭髪用乳化組成物には、整髪性を更に向上させるために、室温で固形のロウ類および/又は(A)成分以外の室温で固形の炭化水素類を含有させることもできる。室温で固形のロウ類の具体例としては、例えば、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ、コメヌカロウ、セラックロウ、鯨ロウ、ラノリンなどを例示することができる。また、(A)成分以外の室温で固形の炭化水素類の具体例としては、例えば、セレシン、オゾケライト、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレン末、ポリエチレンワックス、ワセリンなどを例示することができる。これら成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。尚、本発明における「室温」とは、1〜30℃の温度範囲を表す。
【0029】
室温で固形のロウ類および/又は(A)成分以外の室温で固形の炭化水素類の含有量は、特に限定されないが、通常、整髪力を高める観点から、組成物中、0.5質量%以上が好ましく、より好ましくは3質量%以上である。また、塗布時の使用感の観点から、30質量%以下が好ましく、より好ましくは20質量%以下である。これらの観点から、室温で固形のロウ類および/又は(A)成分以外の室温で固形の炭化水素類の含有量は、0.5〜30質量%が好ましく、より好ましくは3〜20質量%である。
【0030】
本発明の頭髪用乳化組成物には、毛髪上での延展性を良好な粘度に調整するために、多価アルコールを含有させることもできる。多価アルコールの具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、イソプレングリコール、グリセリン、濃グリセリン、ジグリセリン、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−デカンジオールなどを例示することができる。これら成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。
【0031】
多価アルコールの含有量は、特に限定されないが、毛髪上での延展性を更に向上させる観点から、組成物中、0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.1質量%以上である。また、整髪力の観点から、20質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以下である。これらの観点から、多価アルコールの含有量は、0.01〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜15質量%である。
【0032】
本発明の頭髪用乳化組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、上記した成分の他に通常化粧品に用いられる成分、例えば、アクリル酸アルキルコポリマー、ポリビニルピロリドンなどの皮膜形成剤;ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールなどの高級アルコール類;流動パラフィン、流動イソパラフィン、スクワランなどの室温で液状の炭化水素油;ミリスチン酸ミリスチル、ステアリン酸ステアリル、パルミチン酸セチルなどの室温で固形の直鎖脂肪酸エステル;低級アルコール、紫外線吸収剤、香料、酸化防止剤、保湿剤、清涼剤、ビタミン類、植物抽出物などを目的に応じて適宜配合することができる。
【0033】
本発明の頭髪用乳化組成物は、ヘアワックス、ヘアクリーム、ヘアミルクなどの乳化剤型に適用することができる。中でも、毛髪へのなじみおよび延展性が良好で、整髪力が高く、乳化安定性に優れた効果を奏することから、ヘアワックスとして好適に用いることができる。尚、本発明におけるヘアワックスとは、室温下で固化した状態の剤型であり、広口容器に充填し容器を斜め45度に5秒間傾けた際に、充填した組成物が広口容器から垂れ落ちない状態のものを言う。
【0034】
本発明の頭髪用乳化組成物をヘアワックスとして用いる場合には、前記各構成成分を混合し、公知の方法、例えばホモミキサーを用いた転相乳化法などにより乳化することにより製造することができる。また、混合と乳化は別々に行っても同時に行ってもよい。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。尚、配合量は、特記しない限り「質量%」を表す。
【0036】
(試料の調製)
表1および表2に記した組成に従い、実施例1〜5および比較例1〜3の各試料を常法に準じてヘアワックスの形態とし、下記評価に供した。結果をそれぞれ表1および表2に併記する。
尚、評価はすべて、23℃、湿度60%の恒温恒湿の一定条件下で実施した。
【0037】
(試験例1:製剤安定性の評価)
実施例および比較例で得られた各試料を、120g容量の広口容器に充填し、40℃の恒温槽に4週間保管後、製剤の状態を目視にて観察し、以下の評価基準に従って評価した。
【0038】
<製剤安定性の評価基準>
○:製造直後と全く変化が認められない
△:不均一化、析出物、又は分離が僅かに認められる
×:不均一化、析出物、又は分離が明らかに認められる
【0039】
(試験例2:整髪力、なじみ、延展性およびべたつき感の評価)
評価パネル20名により、実施例および比較例で得られた各試料をウィッグ(レッスンマネキン:ユーカリジャパン社製)を用いて実際に整髪してもらい、整髪力(髪を立ち上げる力)、塗布時の毛髪へのなじみ、延展性およびべたつき感を下記の評価基準に従って官能評価した。
【0040】
<整髪力(髪を立ち上げる力)の評価基準>
◎:20名中16名以上が立ち上げ力に優れると回答
○:20名中11〜15名が立ち上げ力に優れると回答
△:20名中6〜10名が立ち上げ力に優れると回答
×:20名中5名以下が立ち上げ力に優れると回答
【0041】
<なじみの評価基準>
◎:20名中16名以上が毛髪へのなじみが良いと回答
○:20名中11〜15名が毛髪へのなじみが良いと回答
△:20名中6〜10名が毛髪へのなじみが良いと回答
×:20名中5名以下が毛髪へのなじみが良いと回答
【0042】
<延展性の評価基準>
◎:20名中16名以上が延展性に優れると回答
○:20名中11〜15名が延展性に優れると回答
△:20名中6〜10名が延展性に優れると回答
×:20名中5名以下が延展性に優れると回答
【0043】
<べたつき感の評価基準>
◎:20名中16名以上がべたつき感がないと回答
○:20名中11〜15名がべたつき感がないと回答
△:20名中6〜10名がべたつき感がないと回答
×:20名中5名以下がべたつき感がないと回答
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
表1および表2に示された結果から、各実施例で得られた頭髪用乳化組成物は、各比較例で得られたものと対比して、不均一化、析出物、又は分離が認められず、優れた製剤安定性を有していることが分かる。また、整髪力、毛髪へのなじみ、延展性に優れ、べたつき感がないことが分かる。
【0047】
以下、本発明に係る頭髪用乳化組成物の処方例を示す。尚、含有量は質量%である。
【0048】
(処方例1:ヘアワックス)
カルナウバロウ 3.0
パラフィンワックス(融点74℃) 5.0
マイクロクリスタリンワックス(融点76.5℃) 4.0
ミツロウ 2.0
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 3.0
モノステアリン酸ソルビタン 2.0
流動パラフィン 6.0
デカメチルシクロペンタシロキサン 3.0
パルミチン酸2−エチルヘキシル 4.0
グリセリン 3.0
1,2−オクタンジオール 0.1
ステアリルアルコール 1.0
カルボキシビニルポリマー 0.2
トリエタノールアミン 1.0
ステアリン酸 1.0
ビニルピロリドン・N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体
ジエチル硫酸塩 0.1
精製水 残 部
合 計 100.0
【0049】
(処方例2:ヘアワックス)
カルナウバロウ 5.0
パラフィンワックス(融点74℃) 3.0
マイクロクリスタリンワックス(融点76.5℃) 1.0
ワセリン 3.0
ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 2.0
モノステアリン酸ソルビタン 2.0
流動パラフィン 5.0
イソノナン酸イソノニル 5.0
メチルポリシロキサン 2.0
グリセリン 4.0
1,2−オクタンジオール 0.3
ステアリルアルコール 1.0
カルボキシビニルポリマー 0.2
トリエタノールアミン 1.0
ステアリン酸 1.0
ビニルピロリドン・N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体
ジエチル硫酸塩 0.1
精製水 残 部
合 計 100.0
【0050】
(処方例3:ヘアワックス)
パラフィンワックス(融点74℃) 6.0
マイクロクリスタリンワックス(融点76.5℃) 4.0
キャンデリラロウ 2.0
ワセリン 5.0
モノステアリン酸グリセリル 2.0
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 2.0
流動パラフィン 5.0
パルミチン酸2−エチルヘキシル 3.0
ジペンタエリトリット脂肪酸エステル 2.0
1,3−ブチレングリコール 6.0
1,2−オクタンジオール 0.3
セタノール 1.0
カルボキシビニルポリマー 0.2
トリエタノールアミン 1.0
ステアリン酸 1.0
PEG−90 0.1
ビニルピロリドン・N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体
ジエチル硫酸塩 0.1
精製水 残 部
合 計 100.0
【0051】
(処方例4:ヘアワックス)
パラフィンワックス(融点74℃) 5.0
マイクロクリスタリンワックス(融点76.5℃) 3.0
キャンデリラロウ 2.0
ミツロウ 4.0
ワセリン 3.0
モノステアリン酸グリセリル 2.0
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 2.0
流動パラフィン 5.0
パルミチン酸2−エチルヘキシル 3.0
ジペンタエリトリット脂肪酸エステル 2.0
1,3−ブチレングリコール 4.0
1,2−オクタンジオール 0.3
セタノール 1.0
カルボキシビニルポリマー 0.2
トリエタノールアミン 1.0
ステアリン酸 1.0
PEG−90 0.1
ビニルピロリドン・N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体
ジエチル硫酸塩 0.1
精製水 残 部
合 計 100.0
【0052】
(処方例5:ヘアワックス)
パラフィンワックス(融点74℃) 5.0
マイクロクリスタリンワックス(融点76.5℃) 3.0
キャンデリラロウ 2.0
ミツロウ 4.0
ワセリン 3.0
ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 2.0
モノステアリン酸ソルビタン 2.0
流動パラフィン 5.0
パルミチン酸2−エチルヘキシル 3.0
ジペンタエリトリット脂肪酸エステル 2.0
1,3−ブチレングリコール 4.0
1,2−オクタンジオール 0.3
セタノール 1.0
カルボキシビニルポリマー 0.2
トリエタノールアミン 1.0
ステアリン酸 1.0
PEG−90 0.1
ビニルピロリドン・N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体
ジエチル硫酸塩 0.1
精製水 残 部
合 計 100.0
【0053】
(処方例6:ヘアワックス)
パラフィンワックス(融点74℃) 4.0
マイクロクリスタリンワックス(融点76.5℃) 3.0
キャンデリラロウ 3.0
ミツロウ 4.0
ワセリン 3.0
親油型モノステアリン酸グリセリル 2.0
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 2.0
流動パラフィン 5.0
パルミチン酸2−エチルヘキシル 3.0
ジペンタエリトリット脂肪酸エステル 2.0
ジグリセリン 4.0
1,2−オクタンジオール 0.3
ミリスチルアルコール 1.0
カルボキシビニルポリマー 0.2
トリエタノールアミン 1.0
イソステアリン酸 1.0
ビニルピロリドン・N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体
ジエチル硫酸塩 0.1
精製水 残 部
合 計 100.0
【0054】
(処方例7:ヘアクリーム)
パラフィンワックス(融点74℃) 1.0
ワセリン 1.0
親油型モノステアリン酸グリセリル 3.0
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 3.0
流動パラフィン 35.0
ステアリン酸 3.0
2−エチルヘキサン酸セチル 3.0
メチルポリシロキサン 1.5
1,2−オクタンジオール 0.3
セタノール 1.0
カルボキシビニルポリマー 0.1
トリエタノールアミン 1.0
ステアリン酸 3.0
ビニルピロリドン・N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体
ジエチル硫酸塩 0.1
精製水 残 部
合 計 100.0
【0055】
(処方例8:ヘアワックス)
パラフィンワックス(融点74℃) 3.0
マイクロクリスタリンワックス(融点76.5℃) 4.0
カルナウバロウ 2.0
ミツロウ 5.0
フィッシャー・トロプシュワックス 2.0
親油型モノステアリン酸グリセリル 3.0
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 3.0
ジステアリン酸ポリエチレングリコール(250E.O.) 0.05
流動パラフィン 8.0
ステアリン酸 3.0
パルミチン酸2−エチルヘキシル 3.0
メチルポリシロキサン 2.0
ポリオキシプロピレンソルビット(9P.O.) 2.0
1,2−オクタンジオール 0.3
セタノール 1.0
タルク 4.0
カルボキシビニルポリマー 0.1
水酸化カリウム 0.5
ビニルピロリドン・N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体
ジエチル硫酸塩 0.1
精製水 残 部
合 計 100.0
【0056】
(処方例9:ヘアミルク)
パラフィンワックス(融点74℃) 1.0
ワセリン 1.0
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.) 3.0
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 2.0
流動パラフィン 15.0
ステアリン酸 0.5
2−エチルヘキサン酸セチル 3.0
メチルポリシロキサン 1.5
1,2−オクタンジオール 0.3
セタノール 1.0
カルボキシビニルポリマー 0.1
トリエタノールアミン 0.5
ステアリン酸 2.0
ポリビニルピロリドン 0.1
マルチトール液 2.0
ビニルピロリドン・N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体
ジエチル硫酸塩 0.1
精製水 残 部
合 計 100.0

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)融点70〜77℃のパラフィンワックス、(B)室温で液状の油性物質、(C)非イオン性界面活性剤および(D)水を含有してなる頭髪用乳化組成物。
【請求項2】
さらに、(E)カチオン性ポリマーを含有してなる請求項1に記載の頭髪用乳化組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の頭髪用乳化組成物が、ヘアワックスである頭髪用乳化組成物。

【公開番号】特開2011−126829(P2011−126829A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287945(P2009−287945)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(390011442)株式会社マンダム (305)
【Fターム(参考)】