顔料、充填材及びその製造方法
本発明は、明るい生分解性の有機顔料及び充填材、並びにその製造法に関する。本発明によれば、まず澱粉誘導体を適当な溶媒に溶解することにより澱粉誘導体を含む溶液を調製し、次いで該溶液を非溶媒に接触させて溶媒から澱粉誘導体を沈殿させ、その結果澱粉誘導体からなる沈殿物と、溶媒および非溶媒により形成される液相とを差なえる分散液を得、その後溶媒を液相から除去し、沈殿物を非溶媒から分離、回収する。本発明は、顔料としての使用に適した100−300nmの球状粒子、および充填材として特に適したさんご様多孔質製品の両方の製造に使用できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分による澱粉を基にした顔料または充填剤を製造する方法に関するものである。
【0002】
また、本発明は、それぞれ請求項22と25の前提部分による顔料または充填材に関するものである。
【背景技術】
【0003】
現在使用されている印刷用紙の品質と塗工厚紙は、充填材もしくは塗工用顔料として多量の無機化合物を含んでいる。これら無機化合物は、繊維の再生利用、紙の燃焼及び堆肥化で問題となっている。また、この無機物は紙製品の重量を著しく増加させ、このことは例えば印刷可能な包装材料の製造において特に深刻である。
【0004】
合成有機顔料ついても知られている。通常、これらは良好な光学的特性を有し、これは可視光を散乱させる特性に基づいている。この特性は、粒径が小さいこと(好ましくは可視光の波長の1/2)、もしくは製造過程で粒子に空孔が生成するということによる。一般に、1000nm未満の粒子が塗工顔料として適しており、1000−5000nmの粒子が充填材として適していると特定できる。顔料の光学特性は粒径のみならず、粒子の形に左右される。理想的な波動光学粒子の形は球形で、最も効果的に光を散乱させ、その結果、塗工紙に高い輝度と不透明度を付与する。しかしながら、既知の合成顔料の欠点は、これらが単独で紙の塗工顔料として不適であり、一般に無機顔料と混ぜて使用されていることである。
【0005】
本発明の目的は、例えば印刷可能な白い紙製品の製造に使用できる軽量で生分解可能な有機顔料と充填材の生成にある。
【0006】
小粒径の澱粉粒子を、そのまま又は化学的に改質して紙用の充填剤もしくは塗工材として使用することが特許文献から知られている。かかる粒子に空孔を形成することにより光学特性を改善することが試みられてきた。しかしながら、澱粉を塗工顔料として使用することは、天然物中から得られる澱粉粒子が最小のものでも1ミクロン以上であることから制限されており、その結果平滑仕上げ品質を要求する印刷用紙用の塗工顔料として使用することができない。
【0007】
澱粉粒子の調製は以下の特許明細書に開示されている。
【0008】
特許文献1には、澱粉粒子を膨潤してその容積(元の2−4倍)と可塑性を増加させるが、まだ粒子の構造を保持することにより有機顔料を調製する方法が記載されている。膨潤は水中ゼラチン化温度以下で生ずる。粒子の容積と形状安定性は架橋することによって増加する。それらの表面を疎水性にすることも可能である。光散乱特性を有する気泡又は空洞を粒子の内側に形成する。気泡は、水もしくは溶媒を蒸発することにより、若しくは吸収したガスを放出することにより、又は溶媒を用いて吸収した水を置き換えることにより生成する。膨潤、安定化した粒子中の空孔の寸法は0.1−5μmである。
【0009】
既知の顔料は、製品に良好な光散乱能を付与しない澱粉と同様の粒子形状を有する。
【0010】
特許文献2には、澱粉のような可塑化生重合体を架橋剤の存在下で押し出すことにより生重合体系のナノ粒子を製造する方法が記載されている。澱粉、グリセロールおよびグリオキサールを水の存在下で反応押出すことによりグルーを調製し、その結果水中分散液になる。ナノ粒子の大きさは1000nm以下(50−250nm)であり、好ましくは澱粉のアミロペクチン割合が高くなる。ラテックスを段ボールの製造におけるグルーとして使用する。
【0011】
特許文献3には、生重合体のナノ粒子が開示されている。これらナノ粒子の平均粒径は400nm以下である。生重合体は澱粉、澱粉誘導体もしくは少なくとも50%の澱粉を含む重合体混合物である。架橋は、グリオキサールのようなジアルデヒドもしくはポリアルデヒドを用いることで実現する。この処理では、グリセロールのような可塑化剤が存在する。実施例によれば、粒子を粉砕し、150μm以上の粒子を選別除去し、生成した粉末を水中で混ぜることにより分散液を調製する。均質で透明な淡褐色の分散液がビスコースゲル相に続いて形成される。この既知技術の欠点は、分散液が乾燥時に透明なフィルムを形成してしまうことにある。従って、この既知ナノ粒子は紙や厚紙用の塗工顔料もしくは充填材として適しておらず、この方法における使用についても該文献に記載がない。
【0012】
特許文献4には、少なくとも1つ以上の水に不溶の多糖類から全体的に又は部分的になる球状微粒子の調製が開示されている。多糖類を有機溶媒に溶解し、沈殿させ、場合によっては冷却し、微粒子を分離する。これら微粒子は、重合体中で材料の分離や診断テストの充填材として使用する。紙の顔料としての使用や適用への言及はない。アミロースが豊富な澱粉、すなわち直鎖のポリ(1,4-アルファ-D-グルカン)を、この調製に用いる。とりわけ、グリコゲンとアミロペクチンを直鎖ポリグルカンに混和する。ある既知の溶液中では、アミロース/アミロースの豊富な澱粉の水不溶性を利用し、その結果直鎖状の澱粉のみを使用することが必要になる。使用する溶媒、すなわちジメチルスルホキシドは有毒な化学薬品で、高温度で沸騰する材料であり、製品から除去することが困難で、製品の有用性を制限する。
【0013】
特許文献5には、紙や厚紙の性質を改良する方法が開示され、特に紙や厚紙の表面を結合剤と顔料を含む化合物で処理する方法に関連している。顔料の一部は、重合したモノマー及び修飾した澱粉の水性相重合生成物からなる。この方法では、ビニル単量体を澱粉の存在下で重合する。この反応では、単量性化合物を澱粉にグラフト化し、生成物を用いて塗工ペースト中の無機顔料を部分的に置き換える。
【0014】
グラフト化処理は複雑で、得られた顔料は天然物質と合成重合体の混合物である。これは顔料の再利用と生分解を制限する。
【0015】
【特許文献1】米国特許第6,582,509号明細書
【特許文献2】欧州出願公開第1254939号明細書
【特許文献3】国際出願公開第00/69916号明細書
【特許文献4】米国特許第6,652,459号明細書
【特許文献5】フィンランド国特許第98943号明細書
【発明の開示】
【0016】
本発明の目的は、従来技術に伴う欠点を排除し、澱粉を基にした全く新しい顔料または充填材を開発することにある。
【0017】
本発明は、澱粉を基にした顔料と充填材を2段階法によって調製できるという発想に基づいている。この発想では、まず澱粉を基にした材料を有機溶媒に、或いはまた有機溶媒と水のような非溶媒との均質混合物に溶解する。次いで、溶媒を非溶媒で希釈することにより澱粉成分を混合物から沈殿させる。
【0018】
驚くべきことに、上記の方法によって澱粉エステルからほぼ完全な球形状の粒子を調製し得ることを発見した。さらに、その一つの特徴的な性質は大きさであり、これを広い範囲、代表的には90−1000nmの範囲で変えることが可能であることを見出した。しかし、粒径分布は極めて狭くすることができる。澱粉エステルの屈折率を観察することにより、100−300nmの粒径範囲内で、球状澱粉エステル粒子の光学特性が通常使用されている、例えばPCC顔料の光学特性よりも優れていることを計算することが原理的に可能である。
【0019】
本発明によれば、酢酸澱粉のような澱粉エステルを有機溶媒もしくは水から光ナノ多孔質材料を発生させるような方法で沈殿させることができる。この場合、ナノ多孔質材料は該材料の光散乱特性が500nm未満の微細構造粒子によるものであることを意味している。ナノ多孔質澱粉の一次粒径、すなわち微細粒径を1−100ミクロンの広い範囲内で変えることができる。所要に応じて、これを塗工顔料もしくは充填材として使用することができる。
【0020】
さらに具体的に言えば、本発明の方法は、請求項1の特徴部分で述べたことを特徴とする。
【0021】
本発明の顔料と充填材は、請求項22と25の特徴部分で述べたことをそれぞれ特徴とする。
【0022】
本発明により多くの利点を達成することができる。従って、本発明の明るく、生分解性の有機顔料および充填材を、例えば印刷可能な白色紙製品の製造に使用することができる。澱粉エステルは水に不溶であるが、エステル化基の置換度が0.5−3である場合、まだ極性を持っており、その結果澱粉エステルを強い水素結合によって表面に結合することができる。結果として、無機顔料を使用するとよく起こる紙の強度の低下が、充填剤の量を増加すると起こらない。充填材の保持については、ナノ多孔質澱粉エステル粒子が無機顔料や合成顔料と比較して興味深い利点を与える。すなわち、原則として多孔質粒子の大きさを、紙の表面を滑らかにするために用いる技術が持っていた問題を起こすことなく増大させることができる。
【0023】
純粋な澱粉エステルは、高い酸素含量と+159−+162℃のガラス転移点を有する白色の生分解可能なポリマーである。結果として、無機材料のように、これらを所望の粒径に粉砕することが可能である。意外にも、一次澱粉材料を分離法で漂白する必要がないことを見出した。タブレットに圧縮した高品質酢酸澱粉のISO輝度は94以上で、これは市販のたいていの顔料に匹敵する。本発明による顔料は、5g/m2未満のような少量の澱粉顔料でも、紙製品の輝度や不透明度に著しい改善を生ずることを特徴とする。
【0024】
澱粉エステルは水中への添加物を入れなくても溶液中で分散され、反応工学的な手法により球状粒子もしくはナノ多孔質の微細粒子を形成する。本発明によれば、酢酸エステルの分子量を制御することにより澱粉ポリマーの望ましい性質を得ることができる。初期澱粉材料の製造方法は、例えば粒子の表面物性に影響するイオン性基をグルコースポリマーに付加することができる。ナノ多孔質微粒子の一次粒径は、懸濁液に機械的エネルギーもしくは超音波エネルギーをかけることによって所望のレベルに設定することができる。
【0025】
この発明と前記の参考文献との違いは、当該生成物の生産に可塑剤を必要としないことである。種々の澱粉を出発物質として用いることができる。本発明の方法においては、既知の技術のように例えば直鎖の澱粉に限定しなくてもよい。あらゆる澱粉をエステル化し、顔料の生産に使用することができる。この方法では、所望のエステル化度を達成し、また高い置換度が可能である。低沸点(通常100℃以下)のため顔料から容易に除去可能な溶媒をこの発明に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に、本発明にはどのような適用例があるかについて検討し詳説する。
【0027】
本発明は、特に紙や厚紙の製品への使用に適した新しい種類の澱粉を基にした顔料と充填材を生成する。また一方で、これらは塗料、プラスチックおよびゴムのようなものに用いて通常の無機物を対応する重合性顔料や充填材に変えることができる。この製品は、同様に界面活性剤及び化粧品製品にも適している。
【0028】
澱粉を基にした成分を溶媒に溶解し、生成した溶液を沈殿剤、すなわち以後「非溶媒」と称するものと接触させて該成分を沈殿させることにより、顔料と充填材とを製造する。溶媒を沈殿相に生じた分散液から、例えば蒸発により除去し、沈殿物を沈殿剤から分離し、回収する。
【0029】
本発明で出発物質として用いる澱粉を基にした成分は、「機能的」澱粉誘導体である。換言すれば、これは化学反応によって澱粉から製造される製品で、その無水グルコース単位の少なくとも一部がヒドロキシル官能を変性する基を有する。主として、この澱粉誘導体は天然の澱粉、加水分解された澱粉、酸化された澱粉、架橋された澱粉もしくはゼラチン化された澱粉から調製された澱粉エステルである。
【0030】
同様に、使用する澱粉は、アミロースの割合が0−100%でアミロペクチンの割合が100−0%のあらゆる天然澱粉を基にすることができる。その結果、澱粉は大麦、馬鈴薯、小麦、オート麦、えんどう豆、とうもろこし、タピオカ、サゴ、米、もしくは類似の塊茎菜や禾穀類から生ずることができる。
【0031】
澱粉と、ひとつもしくは複数のC2−24の脂肪族カルボン酸の両方から形成されるエステルから誘導された澱粉を基にした成分を使用することが適切であることを発見した。この場合、かかるエステルのカルボン酸成分は、酢酸、プロピオン酸、酪酸、もしくはそれらの混合物のような低級アルカン酸から得ることができる。好ましい実施態様によれば、澱粉成分はエステル化された澱粉であり、最も好ましいのは酢酸澱粉で、その置換度は0.5−3.0、好ましくは1.5−3.0、最も好ましくは2−3である。澱粉エステルの置換度は、生品がこの方法で用いる沈殿剤に必ず不溶性であるように選択される。
【0032】
澱粉エステルのガラス転移点が、所望の用途に対して十分に高いという条件では、カルボン酸成分は原則として自然界に見られるような飽和もしくは不飽和の脂肪酸から得ることができる。パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸やこれらの混合物が典型例である。また、エステルは長鎖と短鎖のカルボン酸成分から構成することができる。酢酸塩とステアリン酸塩の混合エステルが典型例である。既知の方法によれば、酸だけでなく酸無水物や酸塩化物やその他の反応性酸誘導体も同様にエステルの形成に使用できる。
【0033】
澱粉の脂肪酸エステルの製造は、例えば次の専門書に記載の通り実施する:Wolff, I. A. , Olds, D. W. and Hilbert, G. E. , The acylation of Corn Starch, Amylose and Amylopectin, J. Amer. Chem. Soc. 73 (1952) 346-349, Gros, A. T.and Feuge, R. O. , Properties of Fatty Acid Esters of Amylose, J. Amer. Oil Chemists' Soc 39 (1962) 19-24)
【0034】
酢酸澱粉のような低級エステル誘導体は、澱粉を触媒存在下でエステル基に対応する酸無水物、例えば無水酢酸と反応させることによって調製することができる。例えば、50%の水酸化ナトリウム溶液を触媒として使用する。さらに、学術文献に記載されているような酢酸塩を製造する他の既知の方法も酢酸澱粉の製造に適している。無水酢酸の量、触媒として用いるアルカリの量および反応時間を変えることによって、様々な置換度を有する酢酸澱粉を調製することができる。フィンランド特許第107386号明細書に記載された加圧条件下でエステル化を行う方法が、本製造方法に適したよい例である。
【0035】
好ましくは、澱粉エステルの物性は、それらのトランスグリコシレート体を形成することにより変性させることができる。
【0036】
別の好ましい実施態様によれば、澱粉成分はヒドロキシアルキル化された澱粉のエステルである。この場合、さらに好ましくはヒドロキシプロピル澱粉エステルで、そのモル置換度は高くとも2であり、好ましくは高々1、さらに好ましくは0.1−0.8であり、置換度は最小1で、最も適しているのは少なくとも2、好ましくは2.5−3.0である。
【0037】
本発明において、澱粉ポリマーの好ましい選択肢の一つは、水に不溶で、ガラス転移点が少なくとも60℃、好ましくは150−170℃もしくはそれ以上で一般的に350℃以下であるものか、すなわちこれらの温度で壊れない澱粉ポリマーである。ガラス転移点を選択し、同様に温度耐久性を選択するための基本的要件の一つは、生成物のガラス転移点(もしくは分解温度)が顔料や充填材がその光散乱光学特性の利点を失うことがないように、顔料や充填材の製造および操作温度で、または最終生産物の製造処理する間に絶えず超えないことである。
【0038】
ポリマー鎖は少なくとも10個のグルコース単位を備え、グルコース単位当たり少なくとも1個のアセチル基を含む。好ましい実施方法によれば、ポリマー鎖は100-150個のグルコース単位を備え、グルコース単位当たり2−3個のアセチル基を含む。別の実施態様によれば、澱粉の基本構造は、溶液から球状粒子への分離が自発的に起きるように分解される。澱粉ポリマーの分子量分布は幅広くできる。好ましい実施態様によれば、澱粉ポリマーの多分散性指数は1.5−2.0である。
【0039】
本発明方法の第一段階では、澱粉ポリマーを溶媒、特に一つもしくは数種の有機溶媒もしくはこれらと水の混合物に溶解し、その結果澱粉ポリマーの濃度が少なくとも1重量%、好ましくは最大約40重量%、主として10−30重量%である溶液が得られる。
【0040】
澱粉ポリマーを選択した溶媒に完全に溶解することが好ましいが、本発明は出発物質(澱粉誘導体)の一部を溶媒に溶解し、一部を不溶形態で残す用途も含む。この場合、溶解段階に続く沈殿段階(以下を参照のこと)では、溶解部分が不溶な部分に沈殿し、元の顆粒構造を含む材料と、球状粒子もしくは微細多孔性材料を含む沈殿物の両方を含むような複合物が生成する。出発物質の溶解部分と不溶部分の相対的な割合(重量分画による)は、約10:90−90:10、好ましくは20:80−80:20、さらに好ましくは30:70−70:30である。
【0041】
好ましい実施態様によれば、溶液(もしくは溶液部分)の粘度は水の粘度に近く、最大で1.5−5であり、通常最大で4−5倍高い。
【0042】
上述した溶解度と粘度の要求を満たすための最も簡単な方法は、酵素もしくは酸での酸化もしくは加水分解のような技術を用いて澱粉をばらばらにするか、またはトランスグルコシル化もしくはエーテル化もしくは超音波によって変性することである。
【0043】
すべての出発物質を溶解することが望ましい本発明の好ましい実施態様によれば、水にあらゆる割合で混合し得る最適の溶媒を用いる。溶媒は揮発性で蒸発が容易であることが好ましい。澱粉に対する「最適の溶媒」とは、当該溶媒が澱粉の可塑化剤として作用するものを意味する。換言すれば、これらを澱粉ポリマーとあらあゆる割合で混合することができる。
【0044】
推奨される溶媒は、アセトンやテトラヒドロフランのような直鎖及び分岐及び環状のケトン類、酢酸のようなアルカン酸である。使用可能な溶媒は、エチレングリコール、ジエチルグリコール、エトキシエチルグリコールのようなモノオール、ジオール及びポリオール類、並びにエチルおよびメチルホルミエート、ピロリドン、ジメチルスルホキシドのような他の有機溶媒である。
【0045】
本発明によれば、過剰な溶媒は避けるべきである。通常、出発物質を完全に溶解するのに十分なだけの溶液、もしくはせいぜいほんの少し余分に、例えば20−30重量%だけ余分に溶液を用いて澱粉誘導体の溶液を調製すれば十分である。
【0046】
完全な澱粉溶媒とともに、それだけでは溶媒として使えない別の溶媒を使用可能である。その結果、アセトン又はテトラヒドロフランと一緒に使用できる適当な溶媒は、例えばメチル、エチル、プロピルおよびイソプロピルアルコール類である。
【0047】
原則として、記号S=澱粉として他の溶媒系を考慮し、記号A:(澱粉溶媒)、B又はCが澱粉を溶解しない溶媒であるところ相互相溶性のABC溶媒を付与することも可能である。AS+B、AS+C、ABS+B、ABS+CおよびACS+B(例えばアセトン/エタノール/澱粉+エタノールもしくはアセトン/エタノール/澱粉+イソプロパノール)が機能的な組み合わせになる。
【0048】
以上に言及したように、本発明を用いて、以下に「さんご様」としても記載する球状粒子を備える生成物もしくはナノ多孔質生成物のいずれかである2種類の顔料および充填材を製造することができる。これら両方とも、澱粉誘導体の溶液を沈殿剤(非溶媒)と接触させることによって調製する。この場合、非溶媒は澱粉誘導体溶媒の上記定義を満たさない材料であり、液体系に十分多量の溶液があるのならば、該溶液中で澱粉誘導体をほぼ完全に沈殿させることができる薬剤を意味する。一般に、澱粉誘導体の少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、さらに好ましくは90重量%、さらには95重量%以上が溶液中に沈殿する。溶媒もしくは溶媒溶液によるが、非溶媒の量は、溶媒量もしくは溶媒溶液量(重量換算)の通常0.1−100倍、好ましくは約0.5−10倍、最も好ましくは約0.7−5倍である。
【0049】
従来の沈殿剤は、水、またはC1−6のアルカノールのような極性液体、またはC4−20のアルカン、好ましくはC5−10のアルカンもしくはアルカンの混合物のような非極性炭化水素である。
【0050】
粒径(平均直径)が90−1000nm、好ましくは約500nm未満、さらに好ましくは400nm未満、特に350nm未満である球形粒子は、上述した澱粉溶液を水や対応する非溶媒で希釈すると自然に形成される。希釈は急速かつ急激に行うことができる。また、二種類の液体を互いに混合して例えば液体間の密度差による境界層が発生するのを避けるために混合を用いる場合には、希釈を緩徐に行うことができる。
【0051】
好ましい実施態様によれば、澱粉溶液の希釈を溶液系の水の割合が最大である点から開始する。ここで、最大というのは、この点を越えて澱粉ポリマーが溶媒系にもはや全く溶けることがないことを意味する。当然、この点は使用するポリマーに依存する。
【0052】
粒子分散液の調製には、別の分散助剤の使用を必ずしも要求しない。しかし、助剤は分散液の貯蔵安定性及び更なる処理のために有用とすることができる。更なる処理とは、たとえば洗浄、粉末への乾燥、もしくは塗工ペーストの作成である。
【0053】
球状顔料の調製において、水の添加割合は一般に50−400ml/秒、好ましくは80−450ml/秒、最も好ましくは100−250ml/秒であり、澱粉溶液の混合条件、温度および濃度に左右される。充填材料レベルのさんご様の顔料や充填材の調製において、澱粉溶液を水に著しく低い添加速度、0.05−90ml/秒、好ましくは0.1−20ml/秒、さらに好ましくは0.3−3ml/秒で添加する。
【0054】
沈殿段階の後、有機溶媒(複数の有機溶媒)を分散液から除去する。溶媒は沈殿物の更なる処理に有害であり、顔料もしくは充填材中の溶媒残渣は粒子を可塑化し、粒子の光学特性を低減させてしまう可能性がある。この事を以下の参考例でさらに詳細に記述する。通常、この狙いは溶媒残渣の量を用いるNMR法の検出限界を下回る点まで減らすことにある。その結果、溶媒除去後液相から分離した沈殿物中には、300MHzのNMR装置によって検出し得る量の有機溶媒は残っていない。
【0055】
好ましい実施態様によれば、NMR技法により求められた顔料の純度は、2のアセチル置換(DS)度を有し、0.5%未満の溶媒残渣濃度を示す澱粉ポリマーの少なくとも98%である。
【0056】
粒子の形成時もしくは形成後、溶液に付与する機械的エネルギーもしくは超音波エネルギーを用いて粒径分布の均一性を左右することができる。このことは、例えば粒子の塊が壊れたことを意味する。粒子の形状は、強い層流回転を用いて球形から楕円形に変えることができる。
【0057】
例えばろ過、微細ろ過、デカンテーションもしくは遠心分離のようなそれ自体既知の方法を用いて粒子を分離する。
【0058】
上述した1段階の沈殿に加えて、2段階の沈殿を行うこともでき、これは第一の沈殿剤による沈殿後且つ可能な沈殿物の分離後、液相中に分散した微細物をそれから塩析(例えば、添加した塩を溶解する水を非溶媒として用いる)するか、又は何らかの別法で液相から分離することを意味する。その結果として、以下の実施例に記載するように、非常に微細な球状粒子が得られる。塩析するためには、硫酸ナトリウム等の液相に容易に溶解する適切な無機塩を使用することができる。添加すべき塩の量は、通常溶液の約0.1−20重量%、好ましくは約1−10重量%である。
【0059】
上述した溶液は、澱粉を基にした材料を有機溶媒と水の均質混合物に溶解する場合、特に適している。このように水を溶液に例えば室温(約15−25℃)でさらに添加すると、乳状の粒子分散液が得られる。大きな粒子からより小さな成分を分離するために遠心分離を用いることにより、狭い顔料粒子分布(平均約200nm)を有する粒子が得られる。
【0060】
2段階の沈殿法を用いると、2つの画分、すなわち球状粒子の大きさが通常300−1000nmの粗画分と、球状粒子の大きさが300nm未満の細画分とが生成する。
【0061】
上述した他の材料、すなわち微細多孔質澱粉顔料の調製の開始点は、沈殿に用いる非溶媒が水であれば、上記と全く同じにすることができる。しかし、手順は逆である。つまり、溶解した澱粉誘導体を備える溶液を非溶媒に添加する。
【0062】
好ましい実施態様によれば、アセトン:水/澱粉溶液を水中0.1:10、好ましくは約1:3の割合で混合(混和)し、その結果粒子が1ミクロン以上、主として5−30ミクロン、例えば約12.3ミクロンの一次粒径範囲に濃縮された狭い分布となる。一般に、有機相の水相への比較的緩徐な添加は、この種の極めて多孔質のさんご様顔料構造の形成を容易にする。
【0063】
超音波エネルギーをこの系に使用してもよい。これを用いて一次粒径を平均1ミクロンにすることができる。
【0064】
また別の溶液においては、さんご様の構造は有機溶媒系を用いて生成する。その開始点では、澱粉成分を上述したように溶解し、沈殿は澱粉を溶解しない溶媒により行う。混合は、溶媒を互いに混合することを確実にする。この混合は、注入によって行われる急激な層流回転とすることができ、又は滴下供給により緩徐な混合を行うことができる。溶液は生成した澱粉の多孔性に影響し、沈殿溶媒が例えば石油エーテル、n-ヘキサンもしくは工業用LIAVタイプの炭化水素溶液によって、いくぶん結果が変わる。
【0065】
前記の方法を通常室温(約15−25℃)で行う。また、高温であるが、溶媒や非溶媒の沸点より低い温度で行うことも可能である。以下は高温処理の例である。そこから分かるように、温度は約30−80℃にすることができ、このことは溶解段階では温度を低く保ち、その後の沈殿段階で温度を上昇させることができることを意味する。また、操作順序を逆にすることも可能である。
【0066】
本発明の方法を用いて下記の物性を有する澱粉を基にした顔料や充填材を製造することができる。
1、 粒径が通常約100−500nmで、ISO輝度が80を超えている球状粒子。
2、 粒径が約1−100ミクロンで、平均の大きさが約100−500nmの(普通球状の)細孔を備えるマイクロ/ナノ多孔質粒子。
【0067】
前者の生成物のISO輝度は92−96までとすることができ、後者の生成物のものは少なくとも80まで、最も適当なのは少なくとも82、好ましくは84とすることができる。
【0068】
球状粒子の粒径分布は、一般に非常に狭い。粒子の少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、特に少なくとも80重量%が言及した範囲(100−500nm)に含まれる。
【0069】
球状粒子が、特に顔料として用いられ、さんご様粒子が充填材として使用される。適用範囲は前述した通りで、すなわち、紙、厚紙、塗料、プラスチック、ゴム、化粧品、衛生用品、洗剤、および他の化学製品である。
【実施例】
【0070】
実施例1 アセトン処理を用いる酢酸澱粉を基にした塗工顔料の調製
酢酸澱粉(6g、ISO輝度68.7)を十分な混合下アセトン(200ml)に溶解した。酢酸澱粉が完全に溶解したところで、水120mlを生成した溶液に5分間添加して酢酸澱粉が該溶液から沈殿するのを回避した。その後、溶液を600mlの容積まで水で希釈した。水を約6秒内で非常にすばやく加え、その間同時に混合物を激しく混合した。この添加で、白色のエマルジョンが生成した。次いで、アセトンを蒸発除去した。生成物を遠心分離(15分、5000rpm)して最も大きな粒子の沈殿を生じた。次いで、沈殿物をデカントし、水洗した。最後に、生成物を20%スラリーとして貯蔵した。生成物の量は20gであった。
【0071】
遠心分離中に沈殿しなかった乳状のエマルジョン相を硫酸ナトリウム溶液(溶液質量の3%)で処理して粒子を液相から分離した。沈殿物をデカントし、3回水洗した。生成物の量は乾燥物として約2gであった。紙を顔料(10g/m2)で被覆し、この生成物のISO輝度を測定すると70であった。
【0072】
図1は、本例により調製した顔料で被覆した厚紙の電子顕微鏡写真を示す。
【0073】
比較例1 部分的にアセトンを蒸発させるだけのアセトン処理による顔料の調製(実施例1の参考例)
実施例1と同じ処理を行ったが、アセトンを平皿の上でほぼ完全に蒸発するように室温で蒸発させた。生成物は実施例1と同様に処理した。生成物を厚紙表面を塗布し、乾燥させた後、残渣のアセトンの可塑化および溶解効果により、顔料粒子が透明な塗膜を形成したことが観察された。その結果、この顔料塗膜は、厚紙の輝度を改善しなかった。
【0074】
この参考例を踏まえると、生成物が顔料として許容する前に、アセトンのような酢酸澱粉の良溶媒を顔料分散液からほぼ完全に除去する必要があることが明らかである。
【0075】
実施例2 アセトンーエタノール処理を用いる酢酸澱粉を基にした塗工顔料の調製
エタノール(500ml)、水(250ml)およびアセトン(200ml)からなる溶液を形成した。細かい酢酸澱粉(60g、ISO輝度 68.7)を、かき混ぜつつ混合物に添加した。ポリマー溶解後、2500mlの水を混合物に添加すると同時に、約5分間激しくかき混ぜた。これにより白い分散液が生成し、これを10分間かき混ぜた。
【0076】
この分散液から溶媒を蒸発させた。溶媒を蒸発させるとき、この分散液を遠心分離した(15分/5000rpm)。最小粒子がエマルジョン相に残留した。沈殿物を遠心管内で3回水洗した。最後の遠心分離後、沈殿物を約20%スラッジとして残した。収量は約30gであった。
【0077】
Na2SO4を用いて最初の遠心分離中に除去した乳状の溶液から、小サイズの粒子を含む顔料を沈殿させた。溶液質量の約3%に相当する量のNa2SO4を添加した。沈殿物を遠心分離し(15分/5000rpm)、3回水洗した。収量は約10gであった。
【0078】
顔料塗工厚紙の電子顕微鏡写真から、粒子がほぼ球形で、その大きさが300nm未満であることが示唆された(図2参照)。
【0079】
実施例3 高温処理を用いる酢酸澱粉を基にした塗工顔料の調製
エタノール(200ml)、水(50ml)およびアセトン(300ml)からなる溶液を形成した。酢酸澱粉(60g、ISO輝度89.1)を該溶液にモーター駆動ミキサーを用いて添加した。ポリマーを溶解した後、溶液を40℃まで加温した。次いで、エタノール300ml(40℃)を少しずつ加えた。この後、水100ml(40℃)を少しずつ加え、溶液が混濁し始めた。次に、この溶液を2000mlの水(60℃)に加えた。保護コロイドポリマー(Kemira A41)5gを水に加えた。エマルジョン様の生成物を冷却した。
【0080】
溶液の3%に相当する量のNa2SO4を該溶液に添加した。生成した沈殿物を溶液からデカントした。遠心分離(4000rpm/15分)を行い、続いて水洗を遠心管内で二回行った。収量は32%の乾燥固形分を有する顔料約120gであった。
【0081】
生成物の電子顕微鏡写真(SEM)によると、粒子が球形で、その平均サイズは200nmであった(図3参照)。
【0082】
実施例4 パイロットスケールでのアセトン処理を用いる酢酸澱粉顔料の調製
酢酸澱粉2.1kg(ISO輝度68.7)を49kgのアセトンと10kgの水に溶解した。次いで、60kgの水を激しく攪拌しながら(ホモジナイザー、1500rpm)加えた。水を加えた後、白いエマルジョンが生成した。アセトンを冷却したエマルジョンから蒸発除去し、生成物をミクロろ過により10リットルに濃縮した。
【0083】
生成物を2回噴霧乾燥した。最初の乾燥物にポリビニルアルコール(Mowiol 10−88)を保護コロイドとして加えた。二回目は助剤なしで乾燥した。
【0084】
圧縮タブレットから測定した生成物のISO輝度はMowiol無しでは83.7、有りでは83.8であった。
【0085】
生成物中の残留アセトンの割合をNMR法を用いて求めた。この割合は検出限界以下であった。
【0086】
比較例2 顔料の濃縮前にアセトンを蒸発させないアセトン処理を用いる顔料の調製(実施例4の参考例)
実施例4と同様の処理を行ったが、アセトンをミクロろ過前に除去しなかった。その結果、生成したエマルジョン中の粒子はそれぞれくっ付いて大きな粒子の沈殿物を形成し、ミクロろ過を妨げることを観察した。
【0087】
この例から考えると、アセトンはさらなる処理を複雑にするという結論に達した。
【0088】
実施例5 パイロットスケールでのアセトン−エタノール処理を用いる酢酸澱粉顔料の調製
0.75kgの酢酸澱粉(ISO輝度89.1)を20kgのアセトンに溶解した。水12.5kgおよびエタノール20kgを該溶液に加えた。すべての澱粉が溶解したことを確認した。125kgの水と62.5kgの保護コロイドとしてのKemira A41ポリマーを20分かけて添加した。乳状のエマルジョンが生成し、これからアセトンを3時間かけて真空蒸発させた(112mbar/40℃)。生成物を、ミクロろ過(50時間)により10%まで濃縮した。
【0089】
このようにして調製した顔料の粒径分布を図4に示す。
【0090】
実施例6 パイロットスケールで高濃縮を用いる酢酸澱粉からの塗工顔料の調製
アセトン16.8kg、エタノール11.2kgおよび水3.5kgを混合した。生成した溶液を60℃まで加温し、酢酸澱粉4.2Kg(ISO輝度89.1)を添加した。溶液の温度を40℃に下げた。次いで、室温のエタノール16.8kgを加え、引き続いて水140kgを加えて酢酸澱粉から計算して2.4%の量の保護コロイド(Kemira A41)を溶解した。この過程は、温度を40から50℃の間に保ち、ずっと十分に攪拌を続けながら20分間かけて行った。その後、アセトンは真空蒸発させた。アセトンの蒸発後、エマルジョン様生成物の乾燥物の割合は2.8%であった。
【0091】
その後、生成物はミクロろ過し、その間濃縮し、水洗した。最終生成物の量は16.3kgで、乾燥物の割合は23%であった。乾燥物から測定したISO輝度は94.4であった。
【0092】
生成物中の有機溶媒の残渣を300MHzのNMR法によって測定した。残渣の割合は0.5重量%未満で、この測定方法の検出限界以下であった。
【0093】
図5は顔料の粒径分布を示し(3種類を平行して測定した)、生成物のSEM像を基にした顔料の形は球状である。SEM像で見える最小の粒子は塗膜の結合剤として用いるラテックス粒子である。
【0094】
実施例7 水沈殿法を用いるさんご様酢酸澱粉顔料の調製
エタノール(500ml)、水(250ml)及びアセトン(200ml)からなる溶液を形成した。酢酸澱粉(60g、ISO輝度 68.7)を混合しながら該溶液に加えた。澱粉を溶解後、この溶液を2500mlの水に一定速度で6分間注いだ。注いでいる間、十分な混合を行った。添加中に白い分散液が生成した。添加後、混合をさらに10分間続けた。次いで、酢酸澱粉を沈殿させ、その結果二次分散液を生成した。
【0095】
溶媒を分散液から蒸発させた。生成物を遠心分離した(15分/5000rpm)。分離した沈殿物を遠心管内で3回水洗した。最後の遠心分離後、生成物を20%スラッジとした。収量は約35gであった。
【0096】
遠心分離による上清液、すなわち乳状液相から微細な顔料をNa2SO4(溶液質量の3%の塩)の塩析により沈殿させた。上清液をデカントし、沈殿物を遠心しながら3回水洗した。収量は約15gであった。
【0097】
図7は水沈殿法を用いて調製したさんご様顔料のSEM像を示す。
【0098】
実施例8 溶媒沈殿法を用いるさんご様の細孔構造を持つ塗工顔料の調製
酢酸澱粉(ISO輝度68.7)26gをアセトン(400ml)に溶解した。十分混合しながら、LIAV 1000mlを該溶液に約10分かけて添加した。白い沈殿物が生成し、沈降させた。上清液をデカントした。LIAV(約500ml)を沈殿物に注いで、これを該溶媒で覆うようにした。混合を約10分間行った。沈殿物を低圧でガラスシンター(孔の大きさは3)を用いてろ過した。フィルターを用いて、沈殿物をLIAV(約400ml)でもう一回洗浄した。
【0099】
洗浄した沈殿物を乾燥した。収量は約20gであった。圧縮タブレットから測定した顔料のISO輝度は87.7であった。SEM画像(図8参照)によると、生成物は多孔質構造を持っていた。
【0100】
実施例9 酢酸澱粉から作った充填材顔料
澱粉誘導体(乾燥分 全体量の6%、ISO輝度 89.1)をエタノール(500ml)、アセトン(200ml)および水(250ml)の混合物に溶解した。生成した溶液を3つに分けた(1バッチ当たり約300ml)。750rpmの混合速度で、それぞれの溶液1−3を8−12℃の水1200mlに激しく混合しながら注ぎ、この注がれていた時間をそれぞれ1)50分(実験1)、2)45分(実験2)、3)60分(実験3)とした。
【0101】
生成した分散液から有機溶媒を蒸発させた。その後、硫酸ナトリウム(15g/2L)を溶液に添加して分散液中の粒子を分離し、容器の底部に沈降させた。沈殿物をデカンテーションにより分離し、2回水洗した。最後に、沈殿物を遠心分離した(10分/2500rpm)。この処理で発生し得る凝集した顔料をディスパーマット処理を用いて除去した。
【0102】
図9は添加速度の顔料粒径分布に与える影響を示す。写真に示されている通り、ゆっくり添加した場合より早く添加した場合のほうがより狭い粒径分布が達成される。
【0103】
実施例10 酢酸澱粉から作った充填材顔料。充填材顔料の粒径分布への沈殿物濃縮の影響
澱粉誘導体(乾燥分 全体量の6%、ISO輝度 89.1)をエタノール(500ml)、アセトン(200ml)および水(250ml)の混合物に溶解した。第一の実験(実験1)において、425mlの溶液を分取し、激しく混合しながら25分間かけて850mlの水に注いだ。第二の実験(実験2)において、同容量の溶液を激しく混合しながら25分間かけて750mlの水に注いだ。有機溶媒を生成した分散液から蒸発させた。その後、硫酸ナトリウム(15g/2L)を溶液に注いで分散液中の粒子を分離し、容器の底に沈降させた。沈殿物をデカントによって分離し、2回水洗した。最後に、沈殿物を遠心分離した (10分/2500rpm)。この処理で発生し得る凝集した顔料を、ディスパーマット処理を用いて除去した。
【0104】
図10は顔料の粒径分布を示す。この実験を基にして、濃度の変化が充填材顔料の粒径分布に影響を及ぼすことが観察された。
【0105】
実施例11 酢酸澱粉から作った充填材顔料。回転速度の充填材顔料の粒径分布への影響
澱粉誘導体(乾燥分 全体量の6%、ISO輝度 89.1)をエタノール(500ml)、アセトン(200ml)及び水(250ml)の混合物に溶解した。生成した溶液を3つに分けた。各溶液を1200mlの水に2分間かけて加えた。この間、1)500rpm(実験1)、2)1000rpm(実験2)および1500rpm(実験3)の回転速度を用いて水相を混合した。
【0106】
有機溶媒を生成した分散液から蒸発させた。次に、硫酸ナトリウム(15g/2L)を溶液に加えて、分散液中の粒子を分離し、容器底部に沈降させた。沈殿物をデカントによって分離し、2回水洗した。最後に、沈殿物を遠心分離した(10分、2500rpm)。
【0107】
この処理で発生し得る凝集した顔料を、ディスパーマット処理を用いて除去した。
【0108】
充填材顔料の粒径分布への混合速度の影響を図10に示す。
【0109】
実施例12 酢酸澱粉から作成した充填材顔料。充填材剤顔料の粒径分布への出発物質の濃度の影響
1)酢酸澱粉60g(ISO輝度89.1)(実験1)、2)酢酸澱粉30g(ISO輝度89.1)(実験2)、3)酢酸澱粉15g(ISO輝度89.1)(実験3)、4)酢酸澱粉120g(ISO輝度89.1)(実験4)、5)酢酸澱粉180g(ISO輝度 89.1)(実験5)をエタノール:アセトン:水(5:2:2.5、w/w/w)の混合物450mlに溶解した。
【0110】
溶液を実験1−3では水1250mlに、実験4では水2500mlに、実験5では水3750mlに、それぞれ5秒間かけて添加し、この間水相を350rpmの回転速度でかき混ぜた。有機溶媒を生成した分散液から蒸発させた。その後、硫酸ナトリウム(15g/2L)を溶液に加えて、分散液中の粒子を分離し、容器底部に沈降させた。沈殿物をデカントにより分離し、2回水洗した。最後に、沈殿物を遠心分離した(10分/5000rpm)。生成物の乾燥分は13%(実験1)、30%(実験2)、36%(実験3)、10%(実験4)、10%(実験5)であった。
【0111】
異なった出発物質濃度で調製した顔料の粒径分布を図12に示す。
【0112】
粒径測定を基にして、基本材料の濃度が充填材顔料の粒径分布に明らかな影響を及ぼすことが観察された。
【0113】
実施例13 アセチル化処理の継続反応としての顔料の調製
まず、化学的もしくは酵素的に分解した馬鈴薯澱粉3.0kg(乾燥物として)、酢酸(100%)24.7kg、無水酢酸4.07kg、及びた触媒としての酢酸ナトリウム0.2kgを混合した。アセチル化を100−115℃の温度で反応時間3時間で行った。次に、液体反応混合物を20℃の温度まで冷却し、冷水15kgを加えた。混合を続け、反応混合物の均一性をチェックした。その後、8.8kgの冷水を加えることにより希釈を続けて、溶液を常に混濁させた。その後、水130kgを溶液中に急激に圧送して白い分散液を生成した。分散液を、50%水酸化ナトリウム溶液15kgを加えることによりある程度中和し、同時に冷却した。中和反応後の澱粉分散液のpH値は4.0−4.5であった。
【0114】
遠心分離によって溶液から顔料を分離した。顔料スラッジを、再度水50kgと混ぜ、水簸および遠心分離を少なくとも2回繰り返すことにより洗浄した。洗浄後、顔料をディスパーマットミキサーを使って10−30%の作業濃度まで水中で混合、均質化した。
【0115】
他方、顔料をミクロ濾過を用いて水分散液から分離することができる。この実験によれば、顔料の調製は酢酸澱粉の分離乾燥の段階を経ずに、酢酸溶媒を用いて行うことができる。
【0116】
実施例14 超音波を用いた顔料の調製
酢酸澱粉を、実施例11に記載したように、エタノール、アセトン及び水の混合物に溶解した。生成した溶液を、超音波反応装置の中14℃の温度で2500mlの水に一定の速度で供給した。超音波の周波数は22.2KHzで、その有効電圧は500Wであった。各超音波処理に関し、2分および5分の2つの添加割合を使用した。次いで、溶媒を蒸発させ、生成物の粒径を測定した。平均粒径は、2分間の処理で281nm、5分間の処理で187nmであった。
【0117】
実施例15 粉砕地均し技術を用いる充填材顔料の調製
粒径を小さくするために、粉砕及び地均し実験を3種類の澱粉(馬鈴薯澱粉トリアセテート、オーツ澱粉、架橋したオーツ澱粉)を用いて行った。主として、2段階処理を用いて微細粒子画分を製造した:ジェットミルで粉砕し、その後エアーセパレーター(アウトクムプ リサーチ オイ、ポリ、フィンランド)で分級した。パールミル粉砕も試験した。ジェットミルと空気分離との組み合わせを使用することで、によって、最小粒径(d50 4.6μm; d90 9.2μm)が馬鈴薯澱粉トリアセテートで達成された。
【0118】
以下の表は澱粉サンプルの粒径分布への処理による影響を示す。d90値は粒子の90重量%が示された大きさ(μm)か、もしくは小さいことを示す。
【0119】
【0120】
実施例16 ヒドロキシプロピル澱粉エステルからの顔料の調製
処理は実施例1と同様であるが、出発物質としてヒドロキシプロピル酢酸澱粉(実験1)、プロピオン酸塩(実験2)を使用した。両方とも、生成物は白いエマルジョンで、その更なる処理を実施例1により行った。
【0121】
実施例17 顔料の輝度及び不透明度
顔料の輝度特性は、乾燥させた生成物からボタン状サンプルを圧縮し、そのISO輝度を測定することにより決定した。表2は圧縮タブレットの輝度結果を示す。サンプル250 TG 8−9は酢酸澱粉で、これからAP及びATタイプの顔料を調製した。
【0122】
【0123】
調製した顔料の輝度の値は、一般的に使用されている顔料の文献に記述してあるISO輝度の値と比較して、標準的な値である。
カオリン80−90
GCC 87−97
タルク 85−90
PCC 96−99
仮焼したカオリン 99
二酸化チタン 97−99
可塑化顔料(一般的にはポリスチレン) 93−94
(参考文献:製紙科学と技術、11巻、65ページ)
【0124】
塗工紙及び厚紙の輝度及び不透明度についても研究した。実験内でK-コーターを用い、書籍等級の紙に53.4g/m2で被覆した。
【0125】
図13は、異なったテスト顔料および参照としての充填材PCC(FR−120,ヒュバー)を用いて、書籍等級の紙の輝度が塗布重量の関数としてどのように増加していくかを示す。最高の状態で、AP2タイプの顔料が、等量の塗布重量を有するPCCとほぼ同程度の輝度を、塗布重量が少ない場合でも付与する。塗布重量を上げるにつれて、PCCの輝度が優れている。しかし、生成物の輝度を改善し、とりわけ粒径分布を狭くして光散乱の最適サイズカテゴリーに接近させることにより、澱粉を基にした顔料の効果を著しく高くできる。
【0126】
図14は同様に、不透明度への53.4g/m2の塗布重量の影響を示す。今までのところ、PCCは同じ塗布重量を使用したとき澱粉顔料よりもいくらか優れた充填材であり、紙の不透明度をよりよく増加させる。ヘルシンキ大学で行った計算によれば、粒径を最適化し、粒径分布を十分に狭くすることにより、澱粉を基にして調製したテスト顔料が、参照として用いたPCC充填材より光散乱効率を優れたものとすることができ、その結果これら顔料は、PCCの屈折率が調製したテスト顔料よりもいくぶん高い場合でも、同じ塗布重量を有するPCCのものより紙の不当明度をよりよく改善することができる。
【0127】
実施例18 顔料のウェブサイジング実験
充填材用に意図した顔料の性質は、試験顔料と参照PCCを、ウェブサイジング技術を用いて書籍等級の紙の上に塗布する試験した。紙に塗布した顔料の量を見積もるのが容易なのでこの技術を用いた。実際、無機顔料の量と違って、澱粉顔料の量を灰化によつて決めることができない。極めて異なった保持特性及びシートを形成する際の生成物の違いによる効果は、ウェブサイジング技術が顔料の充填材タイプ塗布におけるテストを行う上で最も簡単な方法であることを示している。
【0128】
この塗布を10%の固形分で行い、その中に10%のラテックスを添加した。
【0129】
図15aと15bは、ウェブサイジング実験の結果を示す。NFP 2は実施例2による顔料であり、NFP 3は実施例7による手法を用いて調製した顔料である。
【0130】
紙シートに表面サイズプレスを何回も施して、紙の坪量を種々の塗布量に相当するレベルまで増加させた。4+4gsmのテスト点では、まず4gを片面に塗布し、次いで4gを他の片面に塗布した。ラテックス点は他のテスト点と等量のラテックスを含み、塗布回数はNFP 2のテスト点のものに相当する(このことは、ラテックスを2,4もしくは4+4gsmで投与しないことを意味する)。
【0131】
この結果から、澱粉顔料を備えるテスト点がPCCを備えるテスト点よりも優れた強度を有するという一般的傾向があることが分かる。所要の塗布量を満たすために紙に表面サイズプレスを非常に多くの回数施すことが必要であるので、紙に容易に小さなしわができ、膨潤し、強度が低下する。他方、ラテックスを添加すると強度が増すが、特に4+4のレベルでは、ラテックスの効果にもかかわらず強度が減少し始めることに気付いた。同様の理由により、澱粉顔料の強度もレベル3(4+4gsm)で減少し始める。恐らく、充填材を製紙中のパルプに直接加えると、澱粉顔料を有する紙の強度特性が改善することは、PCCの使用と比較してさらに明白である。この結論は、ウェビングが生じ、水素結合が繊維間に発生する場合、多量の無機充填材がかかる結合の発生を消極的に妨げるが、澱粉顔料はこれら結合の発生を妨げないという事実に基づいている。
【0132】
実施例19 顔料と充填材の調整に用いる澱粉誘導体の調製
実験 1.フィンランド国特許第107386号明細書による酢酸澱粉の調製
澱粉、酢酸(酢酸:澱粉の比は2)、無水酢酸の一部(1.7までの置換度合いを達成するに必要な量から、澱粉の乾燥分と他の試薬の含水量に基づいて計算した)、触媒(酢酸ナトリウム、澱粉量の7%)を混合し、混合物を澱粉がセラチン化するまで密閉反応器内で加熱した。
【0133】
ゼラチン化は発熱反応を開始し、反応混合物の温度が急激に上昇した。最初に添加した無水酢酸が反応するまで、温度を125℃で維持した。この後、残りの無水酢酸(最終生成物の望ましいDSによって算出した量)を添加し、反応を125℃でゼラチン化した時点から3.5時間続けた。
【0134】
エステル化反応後、反応混合物を100℃以下に冷却し、2.5倍量以上の水から沈殿させた。沈殿生成物を濾過し、濾液のpH値が5より大きくなるまで水洗した。生成物を真空接触乾燥機(Drais Turbu Dry T250)で乾燥した。生成物の置換度を、NMR法もしくは酢酸澱粉からアルカリ加水分解により生じる酢酸を滴定することによって決定した。
【0135】
使用した無水酢酸に応じて、調製した生成物のDSが1.7から3.0の間で変化し、またガラス転移点 (Tg) が初期澱粉量に応じて155から162の間で変化した。
【0136】
実験 2 加水分解澱粉からの酢酸澱粉の調製
処理は実験1と同様であるが、酵素的もしくは化学的に加水分解した澱粉を出発澱粉として使用した。出発澱粉の加水分解度が高まるにつれて、有機溶媒中での酢酸澱粉の溶解度が増加し、顔料の調製における濃度を上げることが可能になる。出発澱粉の分子量が生成物のガラス転移点に影響を及ぼす。出発澱粉の分子量がMw=537000 g/molであると、Tgは159℃となり、置換度が3となり、分子量がMw=22000であると、同値の置換度でTgは134となった。
【0137】
実験 3 Drais Turbu Dry T250反応器を用いた酢酸澱粉の調製
原料(乾燥物)
ネイティブポテトスターチ(Periva)33.0kg
酢酸(工業的規模99%)49.5kg
酢酸ナトリウム(VTT 100%)2.5kg
無水酢酸(工業的規模97%)115.5kg
水(試薬等級) 7.5kg
【0138】
調製方法
処方に従った容量の液体を反応器に圧送した。
乾燥材料を充填ユニットから加えた。
反応器を硝化した。
反応器を125℃に加熱し、冷水を反応器のフィルタータワーのジャケットに保持した。
澱粉を約115℃でゼラチン化した。
ゼラチン化点から5時間酢酸―無水酢酸混合物を還流した。
反応が終了した時、生成物を約1000kgの水によって沈殿させた。
沈殿物を洗浄し、湿式ミルを用いて粉砕した。
粉砕生成物をラロックス真空ドラムフィルターを用いてろ過し、真空乾燥機で乾燥した。
乾燥の間、生成物の温度範囲を約45−70℃とした。
生成物の置換度を、NMR装置もしくは酢酸澱粉からアルカリ加水分解により遊離した酢酸の滴定によって決定した。置換度は2.2であった。調製した馬鈴薯酢酸澱粉は光っていた。より小さい同種の反応器を用いて調製した酢酸澱粉のISO輝度は88であった。
【0139】
実験4 トランスグリコシル化反応を用いた酢酸澱粉を基にした顔料原材料の調製
調製は、フィンランドVTT技術研究センターによるフィンランド国特許出願第20020313号に準じた方法を用いてバッチ反応もしくは押し出し技術により行った。酢酸澱粉のトランスグリコシル化生成物の有機溶媒中での溶解度は元の酢酸澱粉よりも増加していた。生産物のISO輝度は、精製の効率と出発澱粉によって、67から89の間で変化する。
【0140】
トランスグリコシル化反応に用いたジオール/ポリオールを、澱粉にエーテル結合で結合し、これは顔料の調製において生成物の分散性に影響を与える。生成物のガラス転移温度は155−157℃であり、置換度が2から2.5の間で変化した。
【0141】
実験5 ヒドロキシプロピル澱粉酢酸塩とプロピオン酸塩の調製
フィンランド国特許出願第107930号および第107386号に記載した調製法をヒドロキシプロピル澱粉エステルの調製に使用した。プロピオン酸塩の調製では、酢酸をプロピオン酸に、無水酢酸を無水プロピオン酸に置き換えた。
【0142】
実施例20 アセトン-エタノール処理で調製した顔料生成物分の粒径への回転速度と付加速度の影響
酢酸澱粉(実施例19、実験4)120gを、エタノール1000ml、アセトン400ml及び水400mlからなる溶媒混合物に溶解した。生成した溶液を4等分し、それぞれに後述する添加時間と回転速度を用いて水1250mlを加えた。
【0143】
実験1 回転速度300rpm 水の添加時間6秒、
実験2 回転速度300rpm 水の添加時間3分、
実験3 回転速度150rpm 水の添加時間6秒、
実験4 回転速度150rpm 水の添加時間3分。
【0144】
生成した顔料分散液を更に実施例2に記載されているように処理した。
【0145】
より粗い顔料画分を遠心分離し、細かい画分を硫酸ナトリウムの添加により沈殿させた。洗浄を実施例2に従って行った。
【0146】
種々の実験における画分の相対量は以下の通りである。
実験1 生成した粗い画分の量は細かい画分の量の4倍であった。
実験2 生成した粗い画分の量は細かい画分の量の7倍であった。
実験3 生成した細かい画分の量は粗い画分の量の93倍であった。
実験4 生成した細かい画分の量は粗い画分の量の9倍であった。
【0147】
粗い画分の粒径は300−1000nmであり、細かい画分のものは300nm未満であった。
【0148】
この実験によれば、調製の条件が顔料の粒径分布に影響を与えることがはっきりと見て取れる。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】図1は実施例1に基づいて調製した顔料で被覆した厚紙の電子顕微鏡写真(SEM 像)を示す。
【図2】図2は実施例2に基づいて調製し、厚紙の表面に塗布した顔料のSEM像を示す。
【図3】図3は高温処理を用いて調製した生成物のSEM像を示す。
【図4】図4はアセトンーエタノール処理を用いてパイロットスケールで調製した顔料の粒径分布を示す。
【図5】図5は実施例6による顔料の粒径分布を示す(3種類を平行して測定した)。
【図6】図6は実施例6による顔料の厚紙表面上のSEM像を示す。ここで、最小粒子が塗膜の結合剤として用いたラテックス粒子であることに注意すべきである。
【図7】図7は水沈殿法によって調整したさんご様顔料のSEM像である。
【図8】図8は溶媒沈殿により調製したさんご様顔料のSEM像である。
【図9】図9は種々の添加速度を用いて調製した実験1=AT2−105−1、実験2=AT2−105−2、実験3=AT2−105−3 の顔料の粒径測定値を示す。
【図10】図10は実施例10による顔料の粒径分布を示す。ここで、実験1の顔料を図の上部に、実験2の顔料を図の下部に示す。
【図11】図11は混合速度の充填材顔料の粒径分布への影響を示す(実施例11)。
【図12】図12は種々の割合の出発材料を用いて実施例12で調製した顔料の粒径分布を示す。
【図13】図13は参照顔料PCCを用いた塗膜から測定した顔料の輝度値を示す。
【図14】図14は、同様に参照顔料PCCを用いた塗工紙から測定した顔料の不透明度値を示す。
【図15a】図15aは、塗布した被覆ペーストの量の関数として、表面サイジング技術によって顔料塗工した紙の特性を示す。
【図15b】図15bは、塗布した被覆ペーストの量の関数として、表面サイジング技術によって顔料塗工した紙の特性を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分による澱粉を基にした顔料または充填剤を製造する方法に関するものである。
【0002】
また、本発明は、それぞれ請求項22と25の前提部分による顔料または充填材に関するものである。
【背景技術】
【0003】
現在使用されている印刷用紙の品質と塗工厚紙は、充填材もしくは塗工用顔料として多量の無機化合物を含んでいる。これら無機化合物は、繊維の再生利用、紙の燃焼及び堆肥化で問題となっている。また、この無機物は紙製品の重量を著しく増加させ、このことは例えば印刷可能な包装材料の製造において特に深刻である。
【0004】
合成有機顔料ついても知られている。通常、これらは良好な光学的特性を有し、これは可視光を散乱させる特性に基づいている。この特性は、粒径が小さいこと(好ましくは可視光の波長の1/2)、もしくは製造過程で粒子に空孔が生成するということによる。一般に、1000nm未満の粒子が塗工顔料として適しており、1000−5000nmの粒子が充填材として適していると特定できる。顔料の光学特性は粒径のみならず、粒子の形に左右される。理想的な波動光学粒子の形は球形で、最も効果的に光を散乱させ、その結果、塗工紙に高い輝度と不透明度を付与する。しかしながら、既知の合成顔料の欠点は、これらが単独で紙の塗工顔料として不適であり、一般に無機顔料と混ぜて使用されていることである。
【0005】
本発明の目的は、例えば印刷可能な白い紙製品の製造に使用できる軽量で生分解可能な有機顔料と充填材の生成にある。
【0006】
小粒径の澱粉粒子を、そのまま又は化学的に改質して紙用の充填剤もしくは塗工材として使用することが特許文献から知られている。かかる粒子に空孔を形成することにより光学特性を改善することが試みられてきた。しかしながら、澱粉を塗工顔料として使用することは、天然物中から得られる澱粉粒子が最小のものでも1ミクロン以上であることから制限されており、その結果平滑仕上げ品質を要求する印刷用紙用の塗工顔料として使用することができない。
【0007】
澱粉粒子の調製は以下の特許明細書に開示されている。
【0008】
特許文献1には、澱粉粒子を膨潤してその容積(元の2−4倍)と可塑性を増加させるが、まだ粒子の構造を保持することにより有機顔料を調製する方法が記載されている。膨潤は水中ゼラチン化温度以下で生ずる。粒子の容積と形状安定性は架橋することによって増加する。それらの表面を疎水性にすることも可能である。光散乱特性を有する気泡又は空洞を粒子の内側に形成する。気泡は、水もしくは溶媒を蒸発することにより、若しくは吸収したガスを放出することにより、又は溶媒を用いて吸収した水を置き換えることにより生成する。膨潤、安定化した粒子中の空孔の寸法は0.1−5μmである。
【0009】
既知の顔料は、製品に良好な光散乱能を付与しない澱粉と同様の粒子形状を有する。
【0010】
特許文献2には、澱粉のような可塑化生重合体を架橋剤の存在下で押し出すことにより生重合体系のナノ粒子を製造する方法が記載されている。澱粉、グリセロールおよびグリオキサールを水の存在下で反応押出すことによりグルーを調製し、その結果水中分散液になる。ナノ粒子の大きさは1000nm以下(50−250nm)であり、好ましくは澱粉のアミロペクチン割合が高くなる。ラテックスを段ボールの製造におけるグルーとして使用する。
【0011】
特許文献3には、生重合体のナノ粒子が開示されている。これらナノ粒子の平均粒径は400nm以下である。生重合体は澱粉、澱粉誘導体もしくは少なくとも50%の澱粉を含む重合体混合物である。架橋は、グリオキサールのようなジアルデヒドもしくはポリアルデヒドを用いることで実現する。この処理では、グリセロールのような可塑化剤が存在する。実施例によれば、粒子を粉砕し、150μm以上の粒子を選別除去し、生成した粉末を水中で混ぜることにより分散液を調製する。均質で透明な淡褐色の分散液がビスコースゲル相に続いて形成される。この既知技術の欠点は、分散液が乾燥時に透明なフィルムを形成してしまうことにある。従って、この既知ナノ粒子は紙や厚紙用の塗工顔料もしくは充填材として適しておらず、この方法における使用についても該文献に記載がない。
【0012】
特許文献4には、少なくとも1つ以上の水に不溶の多糖類から全体的に又は部分的になる球状微粒子の調製が開示されている。多糖類を有機溶媒に溶解し、沈殿させ、場合によっては冷却し、微粒子を分離する。これら微粒子は、重合体中で材料の分離や診断テストの充填材として使用する。紙の顔料としての使用や適用への言及はない。アミロースが豊富な澱粉、すなわち直鎖のポリ(1,4-アルファ-D-グルカン)を、この調製に用いる。とりわけ、グリコゲンとアミロペクチンを直鎖ポリグルカンに混和する。ある既知の溶液中では、アミロース/アミロースの豊富な澱粉の水不溶性を利用し、その結果直鎖状の澱粉のみを使用することが必要になる。使用する溶媒、すなわちジメチルスルホキシドは有毒な化学薬品で、高温度で沸騰する材料であり、製品から除去することが困難で、製品の有用性を制限する。
【0013】
特許文献5には、紙や厚紙の性質を改良する方法が開示され、特に紙や厚紙の表面を結合剤と顔料を含む化合物で処理する方法に関連している。顔料の一部は、重合したモノマー及び修飾した澱粉の水性相重合生成物からなる。この方法では、ビニル単量体を澱粉の存在下で重合する。この反応では、単量性化合物を澱粉にグラフト化し、生成物を用いて塗工ペースト中の無機顔料を部分的に置き換える。
【0014】
グラフト化処理は複雑で、得られた顔料は天然物質と合成重合体の混合物である。これは顔料の再利用と生分解を制限する。
【0015】
【特許文献1】米国特許第6,582,509号明細書
【特許文献2】欧州出願公開第1254939号明細書
【特許文献3】国際出願公開第00/69916号明細書
【特許文献4】米国特許第6,652,459号明細書
【特許文献5】フィンランド国特許第98943号明細書
【発明の開示】
【0016】
本発明の目的は、従来技術に伴う欠点を排除し、澱粉を基にした全く新しい顔料または充填材を開発することにある。
【0017】
本発明は、澱粉を基にした顔料と充填材を2段階法によって調製できるという発想に基づいている。この発想では、まず澱粉を基にした材料を有機溶媒に、或いはまた有機溶媒と水のような非溶媒との均質混合物に溶解する。次いで、溶媒を非溶媒で希釈することにより澱粉成分を混合物から沈殿させる。
【0018】
驚くべきことに、上記の方法によって澱粉エステルからほぼ完全な球形状の粒子を調製し得ることを発見した。さらに、その一つの特徴的な性質は大きさであり、これを広い範囲、代表的には90−1000nmの範囲で変えることが可能であることを見出した。しかし、粒径分布は極めて狭くすることができる。澱粉エステルの屈折率を観察することにより、100−300nmの粒径範囲内で、球状澱粉エステル粒子の光学特性が通常使用されている、例えばPCC顔料の光学特性よりも優れていることを計算することが原理的に可能である。
【0019】
本発明によれば、酢酸澱粉のような澱粉エステルを有機溶媒もしくは水から光ナノ多孔質材料を発生させるような方法で沈殿させることができる。この場合、ナノ多孔質材料は該材料の光散乱特性が500nm未満の微細構造粒子によるものであることを意味している。ナノ多孔質澱粉の一次粒径、すなわち微細粒径を1−100ミクロンの広い範囲内で変えることができる。所要に応じて、これを塗工顔料もしくは充填材として使用することができる。
【0020】
さらに具体的に言えば、本発明の方法は、請求項1の特徴部分で述べたことを特徴とする。
【0021】
本発明の顔料と充填材は、請求項22と25の特徴部分で述べたことをそれぞれ特徴とする。
【0022】
本発明により多くの利点を達成することができる。従って、本発明の明るく、生分解性の有機顔料および充填材を、例えば印刷可能な白色紙製品の製造に使用することができる。澱粉エステルは水に不溶であるが、エステル化基の置換度が0.5−3である場合、まだ極性を持っており、その結果澱粉エステルを強い水素結合によって表面に結合することができる。結果として、無機顔料を使用するとよく起こる紙の強度の低下が、充填剤の量を増加すると起こらない。充填材の保持については、ナノ多孔質澱粉エステル粒子が無機顔料や合成顔料と比較して興味深い利点を与える。すなわち、原則として多孔質粒子の大きさを、紙の表面を滑らかにするために用いる技術が持っていた問題を起こすことなく増大させることができる。
【0023】
純粋な澱粉エステルは、高い酸素含量と+159−+162℃のガラス転移点を有する白色の生分解可能なポリマーである。結果として、無機材料のように、これらを所望の粒径に粉砕することが可能である。意外にも、一次澱粉材料を分離法で漂白する必要がないことを見出した。タブレットに圧縮した高品質酢酸澱粉のISO輝度は94以上で、これは市販のたいていの顔料に匹敵する。本発明による顔料は、5g/m2未満のような少量の澱粉顔料でも、紙製品の輝度や不透明度に著しい改善を生ずることを特徴とする。
【0024】
澱粉エステルは水中への添加物を入れなくても溶液中で分散され、反応工学的な手法により球状粒子もしくはナノ多孔質の微細粒子を形成する。本発明によれば、酢酸エステルの分子量を制御することにより澱粉ポリマーの望ましい性質を得ることができる。初期澱粉材料の製造方法は、例えば粒子の表面物性に影響するイオン性基をグルコースポリマーに付加することができる。ナノ多孔質微粒子の一次粒径は、懸濁液に機械的エネルギーもしくは超音波エネルギーをかけることによって所望のレベルに設定することができる。
【0025】
この発明と前記の参考文献との違いは、当該生成物の生産に可塑剤を必要としないことである。種々の澱粉を出発物質として用いることができる。本発明の方法においては、既知の技術のように例えば直鎖の澱粉に限定しなくてもよい。あらゆる澱粉をエステル化し、顔料の生産に使用することができる。この方法では、所望のエステル化度を達成し、また高い置換度が可能である。低沸点(通常100℃以下)のため顔料から容易に除去可能な溶媒をこの発明に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に、本発明にはどのような適用例があるかについて検討し詳説する。
【0027】
本発明は、特に紙や厚紙の製品への使用に適した新しい種類の澱粉を基にした顔料と充填材を生成する。また一方で、これらは塗料、プラスチックおよびゴムのようなものに用いて通常の無機物を対応する重合性顔料や充填材に変えることができる。この製品は、同様に界面活性剤及び化粧品製品にも適している。
【0028】
澱粉を基にした成分を溶媒に溶解し、生成した溶液を沈殿剤、すなわち以後「非溶媒」と称するものと接触させて該成分を沈殿させることにより、顔料と充填材とを製造する。溶媒を沈殿相に生じた分散液から、例えば蒸発により除去し、沈殿物を沈殿剤から分離し、回収する。
【0029】
本発明で出発物質として用いる澱粉を基にした成分は、「機能的」澱粉誘導体である。換言すれば、これは化学反応によって澱粉から製造される製品で、その無水グルコース単位の少なくとも一部がヒドロキシル官能を変性する基を有する。主として、この澱粉誘導体は天然の澱粉、加水分解された澱粉、酸化された澱粉、架橋された澱粉もしくはゼラチン化された澱粉から調製された澱粉エステルである。
【0030】
同様に、使用する澱粉は、アミロースの割合が0−100%でアミロペクチンの割合が100−0%のあらゆる天然澱粉を基にすることができる。その結果、澱粉は大麦、馬鈴薯、小麦、オート麦、えんどう豆、とうもろこし、タピオカ、サゴ、米、もしくは類似の塊茎菜や禾穀類から生ずることができる。
【0031】
澱粉と、ひとつもしくは複数のC2−24の脂肪族カルボン酸の両方から形成されるエステルから誘導された澱粉を基にした成分を使用することが適切であることを発見した。この場合、かかるエステルのカルボン酸成分は、酢酸、プロピオン酸、酪酸、もしくはそれらの混合物のような低級アルカン酸から得ることができる。好ましい実施態様によれば、澱粉成分はエステル化された澱粉であり、最も好ましいのは酢酸澱粉で、その置換度は0.5−3.0、好ましくは1.5−3.0、最も好ましくは2−3である。澱粉エステルの置換度は、生品がこの方法で用いる沈殿剤に必ず不溶性であるように選択される。
【0032】
澱粉エステルのガラス転移点が、所望の用途に対して十分に高いという条件では、カルボン酸成分は原則として自然界に見られるような飽和もしくは不飽和の脂肪酸から得ることができる。パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸やこれらの混合物が典型例である。また、エステルは長鎖と短鎖のカルボン酸成分から構成することができる。酢酸塩とステアリン酸塩の混合エステルが典型例である。既知の方法によれば、酸だけでなく酸無水物や酸塩化物やその他の反応性酸誘導体も同様にエステルの形成に使用できる。
【0033】
澱粉の脂肪酸エステルの製造は、例えば次の専門書に記載の通り実施する:Wolff, I. A. , Olds, D. W. and Hilbert, G. E. , The acylation of Corn Starch, Amylose and Amylopectin, J. Amer. Chem. Soc. 73 (1952) 346-349, Gros, A. T.and Feuge, R. O. , Properties of Fatty Acid Esters of Amylose, J. Amer. Oil Chemists' Soc 39 (1962) 19-24)
【0034】
酢酸澱粉のような低級エステル誘導体は、澱粉を触媒存在下でエステル基に対応する酸無水物、例えば無水酢酸と反応させることによって調製することができる。例えば、50%の水酸化ナトリウム溶液を触媒として使用する。さらに、学術文献に記載されているような酢酸塩を製造する他の既知の方法も酢酸澱粉の製造に適している。無水酢酸の量、触媒として用いるアルカリの量および反応時間を変えることによって、様々な置換度を有する酢酸澱粉を調製することができる。フィンランド特許第107386号明細書に記載された加圧条件下でエステル化を行う方法が、本製造方法に適したよい例である。
【0035】
好ましくは、澱粉エステルの物性は、それらのトランスグリコシレート体を形成することにより変性させることができる。
【0036】
別の好ましい実施態様によれば、澱粉成分はヒドロキシアルキル化された澱粉のエステルである。この場合、さらに好ましくはヒドロキシプロピル澱粉エステルで、そのモル置換度は高くとも2であり、好ましくは高々1、さらに好ましくは0.1−0.8であり、置換度は最小1で、最も適しているのは少なくとも2、好ましくは2.5−3.0である。
【0037】
本発明において、澱粉ポリマーの好ましい選択肢の一つは、水に不溶で、ガラス転移点が少なくとも60℃、好ましくは150−170℃もしくはそれ以上で一般的に350℃以下であるものか、すなわちこれらの温度で壊れない澱粉ポリマーである。ガラス転移点を選択し、同様に温度耐久性を選択するための基本的要件の一つは、生成物のガラス転移点(もしくは分解温度)が顔料や充填材がその光散乱光学特性の利点を失うことがないように、顔料や充填材の製造および操作温度で、または最終生産物の製造処理する間に絶えず超えないことである。
【0038】
ポリマー鎖は少なくとも10個のグルコース単位を備え、グルコース単位当たり少なくとも1個のアセチル基を含む。好ましい実施方法によれば、ポリマー鎖は100-150個のグルコース単位を備え、グルコース単位当たり2−3個のアセチル基を含む。別の実施態様によれば、澱粉の基本構造は、溶液から球状粒子への分離が自発的に起きるように分解される。澱粉ポリマーの分子量分布は幅広くできる。好ましい実施態様によれば、澱粉ポリマーの多分散性指数は1.5−2.0である。
【0039】
本発明方法の第一段階では、澱粉ポリマーを溶媒、特に一つもしくは数種の有機溶媒もしくはこれらと水の混合物に溶解し、その結果澱粉ポリマーの濃度が少なくとも1重量%、好ましくは最大約40重量%、主として10−30重量%である溶液が得られる。
【0040】
澱粉ポリマーを選択した溶媒に完全に溶解することが好ましいが、本発明は出発物質(澱粉誘導体)の一部を溶媒に溶解し、一部を不溶形態で残す用途も含む。この場合、溶解段階に続く沈殿段階(以下を参照のこと)では、溶解部分が不溶な部分に沈殿し、元の顆粒構造を含む材料と、球状粒子もしくは微細多孔性材料を含む沈殿物の両方を含むような複合物が生成する。出発物質の溶解部分と不溶部分の相対的な割合(重量分画による)は、約10:90−90:10、好ましくは20:80−80:20、さらに好ましくは30:70−70:30である。
【0041】
好ましい実施態様によれば、溶液(もしくは溶液部分)の粘度は水の粘度に近く、最大で1.5−5であり、通常最大で4−5倍高い。
【0042】
上述した溶解度と粘度の要求を満たすための最も簡単な方法は、酵素もしくは酸での酸化もしくは加水分解のような技術を用いて澱粉をばらばらにするか、またはトランスグルコシル化もしくはエーテル化もしくは超音波によって変性することである。
【0043】
すべての出発物質を溶解することが望ましい本発明の好ましい実施態様によれば、水にあらゆる割合で混合し得る最適の溶媒を用いる。溶媒は揮発性で蒸発が容易であることが好ましい。澱粉に対する「最適の溶媒」とは、当該溶媒が澱粉の可塑化剤として作用するものを意味する。換言すれば、これらを澱粉ポリマーとあらあゆる割合で混合することができる。
【0044】
推奨される溶媒は、アセトンやテトラヒドロフランのような直鎖及び分岐及び環状のケトン類、酢酸のようなアルカン酸である。使用可能な溶媒は、エチレングリコール、ジエチルグリコール、エトキシエチルグリコールのようなモノオール、ジオール及びポリオール類、並びにエチルおよびメチルホルミエート、ピロリドン、ジメチルスルホキシドのような他の有機溶媒である。
【0045】
本発明によれば、過剰な溶媒は避けるべきである。通常、出発物質を完全に溶解するのに十分なだけの溶液、もしくはせいぜいほんの少し余分に、例えば20−30重量%だけ余分に溶液を用いて澱粉誘導体の溶液を調製すれば十分である。
【0046】
完全な澱粉溶媒とともに、それだけでは溶媒として使えない別の溶媒を使用可能である。その結果、アセトン又はテトラヒドロフランと一緒に使用できる適当な溶媒は、例えばメチル、エチル、プロピルおよびイソプロピルアルコール類である。
【0047】
原則として、記号S=澱粉として他の溶媒系を考慮し、記号A:(澱粉溶媒)、B又はCが澱粉を溶解しない溶媒であるところ相互相溶性のABC溶媒を付与することも可能である。AS+B、AS+C、ABS+B、ABS+CおよびACS+B(例えばアセトン/エタノール/澱粉+エタノールもしくはアセトン/エタノール/澱粉+イソプロパノール)が機能的な組み合わせになる。
【0048】
以上に言及したように、本発明を用いて、以下に「さんご様」としても記載する球状粒子を備える生成物もしくはナノ多孔質生成物のいずれかである2種類の顔料および充填材を製造することができる。これら両方とも、澱粉誘導体の溶液を沈殿剤(非溶媒)と接触させることによって調製する。この場合、非溶媒は澱粉誘導体溶媒の上記定義を満たさない材料であり、液体系に十分多量の溶液があるのならば、該溶液中で澱粉誘導体をほぼ完全に沈殿させることができる薬剤を意味する。一般に、澱粉誘導体の少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、さらに好ましくは90重量%、さらには95重量%以上が溶液中に沈殿する。溶媒もしくは溶媒溶液によるが、非溶媒の量は、溶媒量もしくは溶媒溶液量(重量換算)の通常0.1−100倍、好ましくは約0.5−10倍、最も好ましくは約0.7−5倍である。
【0049】
従来の沈殿剤は、水、またはC1−6のアルカノールのような極性液体、またはC4−20のアルカン、好ましくはC5−10のアルカンもしくはアルカンの混合物のような非極性炭化水素である。
【0050】
粒径(平均直径)が90−1000nm、好ましくは約500nm未満、さらに好ましくは400nm未満、特に350nm未満である球形粒子は、上述した澱粉溶液を水や対応する非溶媒で希釈すると自然に形成される。希釈は急速かつ急激に行うことができる。また、二種類の液体を互いに混合して例えば液体間の密度差による境界層が発生するのを避けるために混合を用いる場合には、希釈を緩徐に行うことができる。
【0051】
好ましい実施態様によれば、澱粉溶液の希釈を溶液系の水の割合が最大である点から開始する。ここで、最大というのは、この点を越えて澱粉ポリマーが溶媒系にもはや全く溶けることがないことを意味する。当然、この点は使用するポリマーに依存する。
【0052】
粒子分散液の調製には、別の分散助剤の使用を必ずしも要求しない。しかし、助剤は分散液の貯蔵安定性及び更なる処理のために有用とすることができる。更なる処理とは、たとえば洗浄、粉末への乾燥、もしくは塗工ペーストの作成である。
【0053】
球状顔料の調製において、水の添加割合は一般に50−400ml/秒、好ましくは80−450ml/秒、最も好ましくは100−250ml/秒であり、澱粉溶液の混合条件、温度および濃度に左右される。充填材料レベルのさんご様の顔料や充填材の調製において、澱粉溶液を水に著しく低い添加速度、0.05−90ml/秒、好ましくは0.1−20ml/秒、さらに好ましくは0.3−3ml/秒で添加する。
【0054】
沈殿段階の後、有機溶媒(複数の有機溶媒)を分散液から除去する。溶媒は沈殿物の更なる処理に有害であり、顔料もしくは充填材中の溶媒残渣は粒子を可塑化し、粒子の光学特性を低減させてしまう可能性がある。この事を以下の参考例でさらに詳細に記述する。通常、この狙いは溶媒残渣の量を用いるNMR法の検出限界を下回る点まで減らすことにある。その結果、溶媒除去後液相から分離した沈殿物中には、300MHzのNMR装置によって検出し得る量の有機溶媒は残っていない。
【0055】
好ましい実施態様によれば、NMR技法により求められた顔料の純度は、2のアセチル置換(DS)度を有し、0.5%未満の溶媒残渣濃度を示す澱粉ポリマーの少なくとも98%である。
【0056】
粒子の形成時もしくは形成後、溶液に付与する機械的エネルギーもしくは超音波エネルギーを用いて粒径分布の均一性を左右することができる。このことは、例えば粒子の塊が壊れたことを意味する。粒子の形状は、強い層流回転を用いて球形から楕円形に変えることができる。
【0057】
例えばろ過、微細ろ過、デカンテーションもしくは遠心分離のようなそれ自体既知の方法を用いて粒子を分離する。
【0058】
上述した1段階の沈殿に加えて、2段階の沈殿を行うこともでき、これは第一の沈殿剤による沈殿後且つ可能な沈殿物の分離後、液相中に分散した微細物をそれから塩析(例えば、添加した塩を溶解する水を非溶媒として用いる)するか、又は何らかの別法で液相から分離することを意味する。その結果として、以下の実施例に記載するように、非常に微細な球状粒子が得られる。塩析するためには、硫酸ナトリウム等の液相に容易に溶解する適切な無機塩を使用することができる。添加すべき塩の量は、通常溶液の約0.1−20重量%、好ましくは約1−10重量%である。
【0059】
上述した溶液は、澱粉を基にした材料を有機溶媒と水の均質混合物に溶解する場合、特に適している。このように水を溶液に例えば室温(約15−25℃)でさらに添加すると、乳状の粒子分散液が得られる。大きな粒子からより小さな成分を分離するために遠心分離を用いることにより、狭い顔料粒子分布(平均約200nm)を有する粒子が得られる。
【0060】
2段階の沈殿法を用いると、2つの画分、すなわち球状粒子の大きさが通常300−1000nmの粗画分と、球状粒子の大きさが300nm未満の細画分とが生成する。
【0061】
上述した他の材料、すなわち微細多孔質澱粉顔料の調製の開始点は、沈殿に用いる非溶媒が水であれば、上記と全く同じにすることができる。しかし、手順は逆である。つまり、溶解した澱粉誘導体を備える溶液を非溶媒に添加する。
【0062】
好ましい実施態様によれば、アセトン:水/澱粉溶液を水中0.1:10、好ましくは約1:3の割合で混合(混和)し、その結果粒子が1ミクロン以上、主として5−30ミクロン、例えば約12.3ミクロンの一次粒径範囲に濃縮された狭い分布となる。一般に、有機相の水相への比較的緩徐な添加は、この種の極めて多孔質のさんご様顔料構造の形成を容易にする。
【0063】
超音波エネルギーをこの系に使用してもよい。これを用いて一次粒径を平均1ミクロンにすることができる。
【0064】
また別の溶液においては、さんご様の構造は有機溶媒系を用いて生成する。その開始点では、澱粉成分を上述したように溶解し、沈殿は澱粉を溶解しない溶媒により行う。混合は、溶媒を互いに混合することを確実にする。この混合は、注入によって行われる急激な層流回転とすることができ、又は滴下供給により緩徐な混合を行うことができる。溶液は生成した澱粉の多孔性に影響し、沈殿溶媒が例えば石油エーテル、n-ヘキサンもしくは工業用LIAVタイプの炭化水素溶液によって、いくぶん結果が変わる。
【0065】
前記の方法を通常室温(約15−25℃)で行う。また、高温であるが、溶媒や非溶媒の沸点より低い温度で行うことも可能である。以下は高温処理の例である。そこから分かるように、温度は約30−80℃にすることができ、このことは溶解段階では温度を低く保ち、その後の沈殿段階で温度を上昇させることができることを意味する。また、操作順序を逆にすることも可能である。
【0066】
本発明の方法を用いて下記の物性を有する澱粉を基にした顔料や充填材を製造することができる。
1、 粒径が通常約100−500nmで、ISO輝度が80を超えている球状粒子。
2、 粒径が約1−100ミクロンで、平均の大きさが約100−500nmの(普通球状の)細孔を備えるマイクロ/ナノ多孔質粒子。
【0067】
前者の生成物のISO輝度は92−96までとすることができ、後者の生成物のものは少なくとも80まで、最も適当なのは少なくとも82、好ましくは84とすることができる。
【0068】
球状粒子の粒径分布は、一般に非常に狭い。粒子の少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、特に少なくとも80重量%が言及した範囲(100−500nm)に含まれる。
【0069】
球状粒子が、特に顔料として用いられ、さんご様粒子が充填材として使用される。適用範囲は前述した通りで、すなわち、紙、厚紙、塗料、プラスチック、ゴム、化粧品、衛生用品、洗剤、および他の化学製品である。
【実施例】
【0070】
実施例1 アセトン処理を用いる酢酸澱粉を基にした塗工顔料の調製
酢酸澱粉(6g、ISO輝度68.7)を十分な混合下アセトン(200ml)に溶解した。酢酸澱粉が完全に溶解したところで、水120mlを生成した溶液に5分間添加して酢酸澱粉が該溶液から沈殿するのを回避した。その後、溶液を600mlの容積まで水で希釈した。水を約6秒内で非常にすばやく加え、その間同時に混合物を激しく混合した。この添加で、白色のエマルジョンが生成した。次いで、アセトンを蒸発除去した。生成物を遠心分離(15分、5000rpm)して最も大きな粒子の沈殿を生じた。次いで、沈殿物をデカントし、水洗した。最後に、生成物を20%スラリーとして貯蔵した。生成物の量は20gであった。
【0071】
遠心分離中に沈殿しなかった乳状のエマルジョン相を硫酸ナトリウム溶液(溶液質量の3%)で処理して粒子を液相から分離した。沈殿物をデカントし、3回水洗した。生成物の量は乾燥物として約2gであった。紙を顔料(10g/m2)で被覆し、この生成物のISO輝度を測定すると70であった。
【0072】
図1は、本例により調製した顔料で被覆した厚紙の電子顕微鏡写真を示す。
【0073】
比較例1 部分的にアセトンを蒸発させるだけのアセトン処理による顔料の調製(実施例1の参考例)
実施例1と同じ処理を行ったが、アセトンを平皿の上でほぼ完全に蒸発するように室温で蒸発させた。生成物は実施例1と同様に処理した。生成物を厚紙表面を塗布し、乾燥させた後、残渣のアセトンの可塑化および溶解効果により、顔料粒子が透明な塗膜を形成したことが観察された。その結果、この顔料塗膜は、厚紙の輝度を改善しなかった。
【0074】
この参考例を踏まえると、生成物が顔料として許容する前に、アセトンのような酢酸澱粉の良溶媒を顔料分散液からほぼ完全に除去する必要があることが明らかである。
【0075】
実施例2 アセトンーエタノール処理を用いる酢酸澱粉を基にした塗工顔料の調製
エタノール(500ml)、水(250ml)およびアセトン(200ml)からなる溶液を形成した。細かい酢酸澱粉(60g、ISO輝度 68.7)を、かき混ぜつつ混合物に添加した。ポリマー溶解後、2500mlの水を混合物に添加すると同時に、約5分間激しくかき混ぜた。これにより白い分散液が生成し、これを10分間かき混ぜた。
【0076】
この分散液から溶媒を蒸発させた。溶媒を蒸発させるとき、この分散液を遠心分離した(15分/5000rpm)。最小粒子がエマルジョン相に残留した。沈殿物を遠心管内で3回水洗した。最後の遠心分離後、沈殿物を約20%スラッジとして残した。収量は約30gであった。
【0077】
Na2SO4を用いて最初の遠心分離中に除去した乳状の溶液から、小サイズの粒子を含む顔料を沈殿させた。溶液質量の約3%に相当する量のNa2SO4を添加した。沈殿物を遠心分離し(15分/5000rpm)、3回水洗した。収量は約10gであった。
【0078】
顔料塗工厚紙の電子顕微鏡写真から、粒子がほぼ球形で、その大きさが300nm未満であることが示唆された(図2参照)。
【0079】
実施例3 高温処理を用いる酢酸澱粉を基にした塗工顔料の調製
エタノール(200ml)、水(50ml)およびアセトン(300ml)からなる溶液を形成した。酢酸澱粉(60g、ISO輝度89.1)を該溶液にモーター駆動ミキサーを用いて添加した。ポリマーを溶解した後、溶液を40℃まで加温した。次いで、エタノール300ml(40℃)を少しずつ加えた。この後、水100ml(40℃)を少しずつ加え、溶液が混濁し始めた。次に、この溶液を2000mlの水(60℃)に加えた。保護コロイドポリマー(Kemira A41)5gを水に加えた。エマルジョン様の生成物を冷却した。
【0080】
溶液の3%に相当する量のNa2SO4を該溶液に添加した。生成した沈殿物を溶液からデカントした。遠心分離(4000rpm/15分)を行い、続いて水洗を遠心管内で二回行った。収量は32%の乾燥固形分を有する顔料約120gであった。
【0081】
生成物の電子顕微鏡写真(SEM)によると、粒子が球形で、その平均サイズは200nmであった(図3参照)。
【0082】
実施例4 パイロットスケールでのアセトン処理を用いる酢酸澱粉顔料の調製
酢酸澱粉2.1kg(ISO輝度68.7)を49kgのアセトンと10kgの水に溶解した。次いで、60kgの水を激しく攪拌しながら(ホモジナイザー、1500rpm)加えた。水を加えた後、白いエマルジョンが生成した。アセトンを冷却したエマルジョンから蒸発除去し、生成物をミクロろ過により10リットルに濃縮した。
【0083】
生成物を2回噴霧乾燥した。最初の乾燥物にポリビニルアルコール(Mowiol 10−88)を保護コロイドとして加えた。二回目は助剤なしで乾燥した。
【0084】
圧縮タブレットから測定した生成物のISO輝度はMowiol無しでは83.7、有りでは83.8であった。
【0085】
生成物中の残留アセトンの割合をNMR法を用いて求めた。この割合は検出限界以下であった。
【0086】
比較例2 顔料の濃縮前にアセトンを蒸発させないアセトン処理を用いる顔料の調製(実施例4の参考例)
実施例4と同様の処理を行ったが、アセトンをミクロろ過前に除去しなかった。その結果、生成したエマルジョン中の粒子はそれぞれくっ付いて大きな粒子の沈殿物を形成し、ミクロろ過を妨げることを観察した。
【0087】
この例から考えると、アセトンはさらなる処理を複雑にするという結論に達した。
【0088】
実施例5 パイロットスケールでのアセトン−エタノール処理を用いる酢酸澱粉顔料の調製
0.75kgの酢酸澱粉(ISO輝度89.1)を20kgのアセトンに溶解した。水12.5kgおよびエタノール20kgを該溶液に加えた。すべての澱粉が溶解したことを確認した。125kgの水と62.5kgの保護コロイドとしてのKemira A41ポリマーを20分かけて添加した。乳状のエマルジョンが生成し、これからアセトンを3時間かけて真空蒸発させた(112mbar/40℃)。生成物を、ミクロろ過(50時間)により10%まで濃縮した。
【0089】
このようにして調製した顔料の粒径分布を図4に示す。
【0090】
実施例6 パイロットスケールで高濃縮を用いる酢酸澱粉からの塗工顔料の調製
アセトン16.8kg、エタノール11.2kgおよび水3.5kgを混合した。生成した溶液を60℃まで加温し、酢酸澱粉4.2Kg(ISO輝度89.1)を添加した。溶液の温度を40℃に下げた。次いで、室温のエタノール16.8kgを加え、引き続いて水140kgを加えて酢酸澱粉から計算して2.4%の量の保護コロイド(Kemira A41)を溶解した。この過程は、温度を40から50℃の間に保ち、ずっと十分に攪拌を続けながら20分間かけて行った。その後、アセトンは真空蒸発させた。アセトンの蒸発後、エマルジョン様生成物の乾燥物の割合は2.8%であった。
【0091】
その後、生成物はミクロろ過し、その間濃縮し、水洗した。最終生成物の量は16.3kgで、乾燥物の割合は23%であった。乾燥物から測定したISO輝度は94.4であった。
【0092】
生成物中の有機溶媒の残渣を300MHzのNMR法によって測定した。残渣の割合は0.5重量%未満で、この測定方法の検出限界以下であった。
【0093】
図5は顔料の粒径分布を示し(3種類を平行して測定した)、生成物のSEM像を基にした顔料の形は球状である。SEM像で見える最小の粒子は塗膜の結合剤として用いるラテックス粒子である。
【0094】
実施例7 水沈殿法を用いるさんご様酢酸澱粉顔料の調製
エタノール(500ml)、水(250ml)及びアセトン(200ml)からなる溶液を形成した。酢酸澱粉(60g、ISO輝度 68.7)を混合しながら該溶液に加えた。澱粉を溶解後、この溶液を2500mlの水に一定速度で6分間注いだ。注いでいる間、十分な混合を行った。添加中に白い分散液が生成した。添加後、混合をさらに10分間続けた。次いで、酢酸澱粉を沈殿させ、その結果二次分散液を生成した。
【0095】
溶媒を分散液から蒸発させた。生成物を遠心分離した(15分/5000rpm)。分離した沈殿物を遠心管内で3回水洗した。最後の遠心分離後、生成物を20%スラッジとした。収量は約35gであった。
【0096】
遠心分離による上清液、すなわち乳状液相から微細な顔料をNa2SO4(溶液質量の3%の塩)の塩析により沈殿させた。上清液をデカントし、沈殿物を遠心しながら3回水洗した。収量は約15gであった。
【0097】
図7は水沈殿法を用いて調製したさんご様顔料のSEM像を示す。
【0098】
実施例8 溶媒沈殿法を用いるさんご様の細孔構造を持つ塗工顔料の調製
酢酸澱粉(ISO輝度68.7)26gをアセトン(400ml)に溶解した。十分混合しながら、LIAV 1000mlを該溶液に約10分かけて添加した。白い沈殿物が生成し、沈降させた。上清液をデカントした。LIAV(約500ml)を沈殿物に注いで、これを該溶媒で覆うようにした。混合を約10分間行った。沈殿物を低圧でガラスシンター(孔の大きさは3)を用いてろ過した。フィルターを用いて、沈殿物をLIAV(約400ml)でもう一回洗浄した。
【0099】
洗浄した沈殿物を乾燥した。収量は約20gであった。圧縮タブレットから測定した顔料のISO輝度は87.7であった。SEM画像(図8参照)によると、生成物は多孔質構造を持っていた。
【0100】
実施例9 酢酸澱粉から作った充填材顔料
澱粉誘導体(乾燥分 全体量の6%、ISO輝度 89.1)をエタノール(500ml)、アセトン(200ml)および水(250ml)の混合物に溶解した。生成した溶液を3つに分けた(1バッチ当たり約300ml)。750rpmの混合速度で、それぞれの溶液1−3を8−12℃の水1200mlに激しく混合しながら注ぎ、この注がれていた時間をそれぞれ1)50分(実験1)、2)45分(実験2)、3)60分(実験3)とした。
【0101】
生成した分散液から有機溶媒を蒸発させた。その後、硫酸ナトリウム(15g/2L)を溶液に添加して分散液中の粒子を分離し、容器の底部に沈降させた。沈殿物をデカンテーションにより分離し、2回水洗した。最後に、沈殿物を遠心分離した(10分/2500rpm)。この処理で発生し得る凝集した顔料をディスパーマット処理を用いて除去した。
【0102】
図9は添加速度の顔料粒径分布に与える影響を示す。写真に示されている通り、ゆっくり添加した場合より早く添加した場合のほうがより狭い粒径分布が達成される。
【0103】
実施例10 酢酸澱粉から作った充填材顔料。充填材顔料の粒径分布への沈殿物濃縮の影響
澱粉誘導体(乾燥分 全体量の6%、ISO輝度 89.1)をエタノール(500ml)、アセトン(200ml)および水(250ml)の混合物に溶解した。第一の実験(実験1)において、425mlの溶液を分取し、激しく混合しながら25分間かけて850mlの水に注いだ。第二の実験(実験2)において、同容量の溶液を激しく混合しながら25分間かけて750mlの水に注いだ。有機溶媒を生成した分散液から蒸発させた。その後、硫酸ナトリウム(15g/2L)を溶液に注いで分散液中の粒子を分離し、容器の底に沈降させた。沈殿物をデカントによって分離し、2回水洗した。最後に、沈殿物を遠心分離した (10分/2500rpm)。この処理で発生し得る凝集した顔料を、ディスパーマット処理を用いて除去した。
【0104】
図10は顔料の粒径分布を示す。この実験を基にして、濃度の変化が充填材顔料の粒径分布に影響を及ぼすことが観察された。
【0105】
実施例11 酢酸澱粉から作った充填材顔料。回転速度の充填材顔料の粒径分布への影響
澱粉誘導体(乾燥分 全体量の6%、ISO輝度 89.1)をエタノール(500ml)、アセトン(200ml)及び水(250ml)の混合物に溶解した。生成した溶液を3つに分けた。各溶液を1200mlの水に2分間かけて加えた。この間、1)500rpm(実験1)、2)1000rpm(実験2)および1500rpm(実験3)の回転速度を用いて水相を混合した。
【0106】
有機溶媒を生成した分散液から蒸発させた。次に、硫酸ナトリウム(15g/2L)を溶液に加えて、分散液中の粒子を分離し、容器底部に沈降させた。沈殿物をデカントによって分離し、2回水洗した。最後に、沈殿物を遠心分離した(10分、2500rpm)。
【0107】
この処理で発生し得る凝集した顔料を、ディスパーマット処理を用いて除去した。
【0108】
充填材顔料の粒径分布への混合速度の影響を図10に示す。
【0109】
実施例12 酢酸澱粉から作成した充填材顔料。充填材剤顔料の粒径分布への出発物質の濃度の影響
1)酢酸澱粉60g(ISO輝度89.1)(実験1)、2)酢酸澱粉30g(ISO輝度89.1)(実験2)、3)酢酸澱粉15g(ISO輝度89.1)(実験3)、4)酢酸澱粉120g(ISO輝度89.1)(実験4)、5)酢酸澱粉180g(ISO輝度 89.1)(実験5)をエタノール:アセトン:水(5:2:2.5、w/w/w)の混合物450mlに溶解した。
【0110】
溶液を実験1−3では水1250mlに、実験4では水2500mlに、実験5では水3750mlに、それぞれ5秒間かけて添加し、この間水相を350rpmの回転速度でかき混ぜた。有機溶媒を生成した分散液から蒸発させた。その後、硫酸ナトリウム(15g/2L)を溶液に加えて、分散液中の粒子を分離し、容器底部に沈降させた。沈殿物をデカントにより分離し、2回水洗した。最後に、沈殿物を遠心分離した(10分/5000rpm)。生成物の乾燥分は13%(実験1)、30%(実験2)、36%(実験3)、10%(実験4)、10%(実験5)であった。
【0111】
異なった出発物質濃度で調製した顔料の粒径分布を図12に示す。
【0112】
粒径測定を基にして、基本材料の濃度が充填材顔料の粒径分布に明らかな影響を及ぼすことが観察された。
【0113】
実施例13 アセチル化処理の継続反応としての顔料の調製
まず、化学的もしくは酵素的に分解した馬鈴薯澱粉3.0kg(乾燥物として)、酢酸(100%)24.7kg、無水酢酸4.07kg、及びた触媒としての酢酸ナトリウム0.2kgを混合した。アセチル化を100−115℃の温度で反応時間3時間で行った。次に、液体反応混合物を20℃の温度まで冷却し、冷水15kgを加えた。混合を続け、反応混合物の均一性をチェックした。その後、8.8kgの冷水を加えることにより希釈を続けて、溶液を常に混濁させた。その後、水130kgを溶液中に急激に圧送して白い分散液を生成した。分散液を、50%水酸化ナトリウム溶液15kgを加えることによりある程度中和し、同時に冷却した。中和反応後の澱粉分散液のpH値は4.0−4.5であった。
【0114】
遠心分離によって溶液から顔料を分離した。顔料スラッジを、再度水50kgと混ぜ、水簸および遠心分離を少なくとも2回繰り返すことにより洗浄した。洗浄後、顔料をディスパーマットミキサーを使って10−30%の作業濃度まで水中で混合、均質化した。
【0115】
他方、顔料をミクロ濾過を用いて水分散液から分離することができる。この実験によれば、顔料の調製は酢酸澱粉の分離乾燥の段階を経ずに、酢酸溶媒を用いて行うことができる。
【0116】
実施例14 超音波を用いた顔料の調製
酢酸澱粉を、実施例11に記載したように、エタノール、アセトン及び水の混合物に溶解した。生成した溶液を、超音波反応装置の中14℃の温度で2500mlの水に一定の速度で供給した。超音波の周波数は22.2KHzで、その有効電圧は500Wであった。各超音波処理に関し、2分および5分の2つの添加割合を使用した。次いで、溶媒を蒸発させ、生成物の粒径を測定した。平均粒径は、2分間の処理で281nm、5分間の処理で187nmであった。
【0117】
実施例15 粉砕地均し技術を用いる充填材顔料の調製
粒径を小さくするために、粉砕及び地均し実験を3種類の澱粉(馬鈴薯澱粉トリアセテート、オーツ澱粉、架橋したオーツ澱粉)を用いて行った。主として、2段階処理を用いて微細粒子画分を製造した:ジェットミルで粉砕し、その後エアーセパレーター(アウトクムプ リサーチ オイ、ポリ、フィンランド)で分級した。パールミル粉砕も試験した。ジェットミルと空気分離との組み合わせを使用することで、によって、最小粒径(d50 4.6μm; d90 9.2μm)が馬鈴薯澱粉トリアセテートで達成された。
【0118】
以下の表は澱粉サンプルの粒径分布への処理による影響を示す。d90値は粒子の90重量%が示された大きさ(μm)か、もしくは小さいことを示す。
【0119】
【0120】
実施例16 ヒドロキシプロピル澱粉エステルからの顔料の調製
処理は実施例1と同様であるが、出発物質としてヒドロキシプロピル酢酸澱粉(実験1)、プロピオン酸塩(実験2)を使用した。両方とも、生成物は白いエマルジョンで、その更なる処理を実施例1により行った。
【0121】
実施例17 顔料の輝度及び不透明度
顔料の輝度特性は、乾燥させた生成物からボタン状サンプルを圧縮し、そのISO輝度を測定することにより決定した。表2は圧縮タブレットの輝度結果を示す。サンプル250 TG 8−9は酢酸澱粉で、これからAP及びATタイプの顔料を調製した。
【0122】
【0123】
調製した顔料の輝度の値は、一般的に使用されている顔料の文献に記述してあるISO輝度の値と比較して、標準的な値である。
カオリン80−90
GCC 87−97
タルク 85−90
PCC 96−99
仮焼したカオリン 99
二酸化チタン 97−99
可塑化顔料(一般的にはポリスチレン) 93−94
(参考文献:製紙科学と技術、11巻、65ページ)
【0124】
塗工紙及び厚紙の輝度及び不透明度についても研究した。実験内でK-コーターを用い、書籍等級の紙に53.4g/m2で被覆した。
【0125】
図13は、異なったテスト顔料および参照としての充填材PCC(FR−120,ヒュバー)を用いて、書籍等級の紙の輝度が塗布重量の関数としてどのように増加していくかを示す。最高の状態で、AP2タイプの顔料が、等量の塗布重量を有するPCCとほぼ同程度の輝度を、塗布重量が少ない場合でも付与する。塗布重量を上げるにつれて、PCCの輝度が優れている。しかし、生成物の輝度を改善し、とりわけ粒径分布を狭くして光散乱の最適サイズカテゴリーに接近させることにより、澱粉を基にした顔料の効果を著しく高くできる。
【0126】
図14は同様に、不透明度への53.4g/m2の塗布重量の影響を示す。今までのところ、PCCは同じ塗布重量を使用したとき澱粉顔料よりもいくらか優れた充填材であり、紙の不透明度をよりよく増加させる。ヘルシンキ大学で行った計算によれば、粒径を最適化し、粒径分布を十分に狭くすることにより、澱粉を基にして調製したテスト顔料が、参照として用いたPCC充填材より光散乱効率を優れたものとすることができ、その結果これら顔料は、PCCの屈折率が調製したテスト顔料よりもいくぶん高い場合でも、同じ塗布重量を有するPCCのものより紙の不当明度をよりよく改善することができる。
【0127】
実施例18 顔料のウェブサイジング実験
充填材用に意図した顔料の性質は、試験顔料と参照PCCを、ウェブサイジング技術を用いて書籍等級の紙の上に塗布する試験した。紙に塗布した顔料の量を見積もるのが容易なのでこの技術を用いた。実際、無機顔料の量と違って、澱粉顔料の量を灰化によつて決めることができない。極めて異なった保持特性及びシートを形成する際の生成物の違いによる効果は、ウェブサイジング技術が顔料の充填材タイプ塗布におけるテストを行う上で最も簡単な方法であることを示している。
【0128】
この塗布を10%の固形分で行い、その中に10%のラテックスを添加した。
【0129】
図15aと15bは、ウェブサイジング実験の結果を示す。NFP 2は実施例2による顔料であり、NFP 3は実施例7による手法を用いて調製した顔料である。
【0130】
紙シートに表面サイズプレスを何回も施して、紙の坪量を種々の塗布量に相当するレベルまで増加させた。4+4gsmのテスト点では、まず4gを片面に塗布し、次いで4gを他の片面に塗布した。ラテックス点は他のテスト点と等量のラテックスを含み、塗布回数はNFP 2のテスト点のものに相当する(このことは、ラテックスを2,4もしくは4+4gsmで投与しないことを意味する)。
【0131】
この結果から、澱粉顔料を備えるテスト点がPCCを備えるテスト点よりも優れた強度を有するという一般的傾向があることが分かる。所要の塗布量を満たすために紙に表面サイズプレスを非常に多くの回数施すことが必要であるので、紙に容易に小さなしわができ、膨潤し、強度が低下する。他方、ラテックスを添加すると強度が増すが、特に4+4のレベルでは、ラテックスの効果にもかかわらず強度が減少し始めることに気付いた。同様の理由により、澱粉顔料の強度もレベル3(4+4gsm)で減少し始める。恐らく、充填材を製紙中のパルプに直接加えると、澱粉顔料を有する紙の強度特性が改善することは、PCCの使用と比較してさらに明白である。この結論は、ウェビングが生じ、水素結合が繊維間に発生する場合、多量の無機充填材がかかる結合の発生を消極的に妨げるが、澱粉顔料はこれら結合の発生を妨げないという事実に基づいている。
【0132】
実施例19 顔料と充填材の調整に用いる澱粉誘導体の調製
実験 1.フィンランド国特許第107386号明細書による酢酸澱粉の調製
澱粉、酢酸(酢酸:澱粉の比は2)、無水酢酸の一部(1.7までの置換度合いを達成するに必要な量から、澱粉の乾燥分と他の試薬の含水量に基づいて計算した)、触媒(酢酸ナトリウム、澱粉量の7%)を混合し、混合物を澱粉がセラチン化するまで密閉反応器内で加熱した。
【0133】
ゼラチン化は発熱反応を開始し、反応混合物の温度が急激に上昇した。最初に添加した無水酢酸が反応するまで、温度を125℃で維持した。この後、残りの無水酢酸(最終生成物の望ましいDSによって算出した量)を添加し、反応を125℃でゼラチン化した時点から3.5時間続けた。
【0134】
エステル化反応後、反応混合物を100℃以下に冷却し、2.5倍量以上の水から沈殿させた。沈殿生成物を濾過し、濾液のpH値が5より大きくなるまで水洗した。生成物を真空接触乾燥機(Drais Turbu Dry T250)で乾燥した。生成物の置換度を、NMR法もしくは酢酸澱粉からアルカリ加水分解により生じる酢酸を滴定することによって決定した。
【0135】
使用した無水酢酸に応じて、調製した生成物のDSが1.7から3.0の間で変化し、またガラス転移点 (Tg) が初期澱粉量に応じて155から162の間で変化した。
【0136】
実験 2 加水分解澱粉からの酢酸澱粉の調製
処理は実験1と同様であるが、酵素的もしくは化学的に加水分解した澱粉を出発澱粉として使用した。出発澱粉の加水分解度が高まるにつれて、有機溶媒中での酢酸澱粉の溶解度が増加し、顔料の調製における濃度を上げることが可能になる。出発澱粉の分子量が生成物のガラス転移点に影響を及ぼす。出発澱粉の分子量がMw=537000 g/molであると、Tgは159℃となり、置換度が3となり、分子量がMw=22000であると、同値の置換度でTgは134となった。
【0137】
実験 3 Drais Turbu Dry T250反応器を用いた酢酸澱粉の調製
原料(乾燥物)
ネイティブポテトスターチ(Periva)33.0kg
酢酸(工業的規模99%)49.5kg
酢酸ナトリウム(VTT 100%)2.5kg
無水酢酸(工業的規模97%)115.5kg
水(試薬等級) 7.5kg
【0138】
調製方法
処方に従った容量の液体を反応器に圧送した。
乾燥材料を充填ユニットから加えた。
反応器を硝化した。
反応器を125℃に加熱し、冷水を反応器のフィルタータワーのジャケットに保持した。
澱粉を約115℃でゼラチン化した。
ゼラチン化点から5時間酢酸―無水酢酸混合物を還流した。
反応が終了した時、生成物を約1000kgの水によって沈殿させた。
沈殿物を洗浄し、湿式ミルを用いて粉砕した。
粉砕生成物をラロックス真空ドラムフィルターを用いてろ過し、真空乾燥機で乾燥した。
乾燥の間、生成物の温度範囲を約45−70℃とした。
生成物の置換度を、NMR装置もしくは酢酸澱粉からアルカリ加水分解により遊離した酢酸の滴定によって決定した。置換度は2.2であった。調製した馬鈴薯酢酸澱粉は光っていた。より小さい同種の反応器を用いて調製した酢酸澱粉のISO輝度は88であった。
【0139】
実験4 トランスグリコシル化反応を用いた酢酸澱粉を基にした顔料原材料の調製
調製は、フィンランドVTT技術研究センターによるフィンランド国特許出願第20020313号に準じた方法を用いてバッチ反応もしくは押し出し技術により行った。酢酸澱粉のトランスグリコシル化生成物の有機溶媒中での溶解度は元の酢酸澱粉よりも増加していた。生産物のISO輝度は、精製の効率と出発澱粉によって、67から89の間で変化する。
【0140】
トランスグリコシル化反応に用いたジオール/ポリオールを、澱粉にエーテル結合で結合し、これは顔料の調製において生成物の分散性に影響を与える。生成物のガラス転移温度は155−157℃であり、置換度が2から2.5の間で変化した。
【0141】
実験5 ヒドロキシプロピル澱粉酢酸塩とプロピオン酸塩の調製
フィンランド国特許出願第107930号および第107386号に記載した調製法をヒドロキシプロピル澱粉エステルの調製に使用した。プロピオン酸塩の調製では、酢酸をプロピオン酸に、無水酢酸を無水プロピオン酸に置き換えた。
【0142】
実施例20 アセトン-エタノール処理で調製した顔料生成物分の粒径への回転速度と付加速度の影響
酢酸澱粉(実施例19、実験4)120gを、エタノール1000ml、アセトン400ml及び水400mlからなる溶媒混合物に溶解した。生成した溶液を4等分し、それぞれに後述する添加時間と回転速度を用いて水1250mlを加えた。
【0143】
実験1 回転速度300rpm 水の添加時間6秒、
実験2 回転速度300rpm 水の添加時間3分、
実験3 回転速度150rpm 水の添加時間6秒、
実験4 回転速度150rpm 水の添加時間3分。
【0144】
生成した顔料分散液を更に実施例2に記載されているように処理した。
【0145】
より粗い顔料画分を遠心分離し、細かい画分を硫酸ナトリウムの添加により沈殿させた。洗浄を実施例2に従って行った。
【0146】
種々の実験における画分の相対量は以下の通りである。
実験1 生成した粗い画分の量は細かい画分の量の4倍であった。
実験2 生成した粗い画分の量は細かい画分の量の7倍であった。
実験3 生成した細かい画分の量は粗い画分の量の93倍であった。
実験4 生成した細かい画分の量は粗い画分の量の9倍であった。
【0147】
粗い画分の粒径は300−1000nmであり、細かい画分のものは300nm未満であった。
【0148】
この実験によれば、調製の条件が顔料の粒径分布に影響を与えることがはっきりと見て取れる。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】図1は実施例1に基づいて調製した顔料で被覆した厚紙の電子顕微鏡写真(SEM 像)を示す。
【図2】図2は実施例2に基づいて調製し、厚紙の表面に塗布した顔料のSEM像を示す。
【図3】図3は高温処理を用いて調製した生成物のSEM像を示す。
【図4】図4はアセトンーエタノール処理を用いてパイロットスケールで調製した顔料の粒径分布を示す。
【図5】図5は実施例6による顔料の粒径分布を示す(3種類を平行して測定した)。
【図6】図6は実施例6による顔料の厚紙表面上のSEM像を示す。ここで、最小粒子が塗膜の結合剤として用いたラテックス粒子であることに注意すべきである。
【図7】図7は水沈殿法によって調整したさんご様顔料のSEM像である。
【図8】図8は溶媒沈殿により調製したさんご様顔料のSEM像である。
【図9】図9は種々の添加速度を用いて調製した実験1=AT2−105−1、実験2=AT2−105−2、実験3=AT2−105−3 の顔料の粒径測定値を示す。
【図10】図10は実施例10による顔料の粒径分布を示す。ここで、実験1の顔料を図の上部に、実験2の顔料を図の下部に示す。
【図11】図11は混合速度の充填材顔料の粒径分布への影響を示す(実施例11)。
【図12】図12は種々の割合の出発材料を用いて実施例12で調製した顔料の粒径分布を示す。
【図13】図13は参照顔料PCCを用いた塗膜から測定した顔料の輝度値を示す。
【図14】図14は、同様に参照顔料PCCを用いた塗工紙から測定した顔料の不透明度値を示す。
【図15a】図15aは、塗布した被覆ペーストの量の関数として、表面サイジング技術によって顔料塗工した紙の特性を示す。
【図15b】図15bは、塗布した被覆ペーストの量の関数として、表面サイジング技術によって顔料塗工した紙の特性を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉誘導体を含む溶液を、澱粉誘導体を適切な溶液に溶解することによって形成し、澱粉誘導体を溶媒から沈殿させるため澱粉誘導体が溶解しない非溶媒に前記溶液を接触させて、澱粉誘導体からなる沈殿物と、溶媒と非溶媒とからなる液相とを備える分散液を生成し、溶媒を液相から除去し、沈殿物を非溶媒から分離、回収することを特徴とする澱粉を基にした顔料もしくは充填材の製造方法。
【請求項2】
溶媒と非溶媒との混合物を溶媒として使用することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
澱粉誘導体を溶解するのに必要な分だけ、もしくは多くともその必要量の20重量%だけ多い量の溶媒を使用することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
次の基準、すなわち少なくとも1重量%、好ましくは約10−30重量%の溶液濃度と、水の1−5倍の溶液粘度の少なくとも1つを適用して溶液を形成することを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
ガラス転移点が少なくとも60℃、好ましくは少なくとも100℃で、該温度で壊れない澱粉誘導体を用いることを特徴とする請求項1―4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
澱粉誘導体として澱粉エステルを用いることを特徴とする請求項1―5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
澱粉エステルが澱粉とC1−4のアルカン酸(alkane acid)とから形成されたエステル、好ましくは酢酸澱粉であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
澱粉エステルがトランスグリコシル化もしくはヒドロキシアルキル化されていることを特徴とする請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
水、C1−4のアルカノールもしくは非極性炭化水素系溶媒を非溶媒として用いることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
直鎖、分枝鎖もしくは環状のケトン又はアルデヒドを溶媒として用いることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
澱粉誘導体として機能するエステル中のエステル基の置換度を、該澱粉誘導体が非溶媒中で基本的に不溶となるように選択することを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
溶媒除去後、液相から分離した沈殿物が、300MHzのNMR装置で検出し得るような量の有機溶媒残渣を含有しないことを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
溶媒と非溶媒を、これらが互いに完全に混ざり合うように選択することを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
非溶媒の量が、重量換算で溶媒または溶媒混合物の約0.1−100倍、好ましくは約0.5−10倍、さらに適しているのは約0.7−5倍であることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
非溶媒を澱粉誘導体の溶液に混合しながら添加して球状の顔料粒子を生成することを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
平均粒径が約90−1000nmである球状の顔料を含む顔料もしくは充填材生成物を調製することを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項17】
水による沈殿及び沈殿物の可能な分離に引き続き、液相に分散した微粒子を例えば塩析によって沈殿させる2段階で澱粉誘導体を溶液から沈殿させることを特徴とする請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
澱粉誘導体溶液を非溶媒中に混合しながら加えてさんご様の多孔質顔料を生成することを特徴とする請求項1−15のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
粒径が約1−100μmの材料を備え、平均直系が約100−500nmの空孔を有する顔料もしくは充填材生成物を調製することを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
澱粉誘導体を含む溶液を乱流条件下で非溶媒と接触させることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
非溶媒の量が、溶媒もしくは溶媒の混合液に応じて、溶媒もしくは溶媒の混合物の量(重量換算)の通常0.1−100倍、好ましくは約0.5−10倍、更に好ましくは約0.7−5倍とすることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
澱粉誘導体からなり、平均粒径が約90−1000 nmの球状の澱粉誘導体粒子を備えることを特徴とする澱粉を基にした顔料もしくは充填材生成物。
【請求項23】
ISO輝度が少なくとも80であることを特徴とする請求項22に記載の顔料もしくは充填材生成物。
【請求項24】
請求項1−21のいずれかの方法を用いて調製することを特徴とする請求項22または23に記載の顔料もしくは充填材生成物。
【請求項25】
澱粉誘導体からなり、粒径が約1−100μmのナノ多孔性さんご様の材料を備えることを特徴とする顔料もしくは充填材生成物。
【請求項26】
請求項1−21のいずれかの方法を用いて調製することを特徴とする請求項25記載の顔料もしくは充填材生成物。
【請求項27】
澱粉誘導体が澱粉エステルであることを特徴とする請求項25−26のいずれかに記載の顔料もしくは充填材生成物。
【請求項28】
澱粉エステルが、澱粉とC1−4のアルカン酸から形成したエステル、好ましくは酢酸澱粉であることを特徴とする請求項27に記載の顔料もしくは充填材生成物。
【請求項29】
澱粉エステルがトランスグリコシル化もしくはヒドロキシアルキル化されていることを特徴とする請求項27または28に記載の顔料もしくは充填材生成物。
【請求項30】
紙や厚紙の製造、塗料、プラスチック、ゴム、化粧品、衛生用品及び/または洗浄剤への請求項22−29のいずれかの顔料もしくは充填材生成物の使用。
【請求項1】
澱粉誘導体を含む溶液を、澱粉誘導体を適切な溶液に溶解することによって形成し、澱粉誘導体を溶媒から沈殿させるため澱粉誘導体が溶解しない非溶媒に前記溶液を接触させて、澱粉誘導体からなる沈殿物と、溶媒と非溶媒とからなる液相とを備える分散液を生成し、溶媒を液相から除去し、沈殿物を非溶媒から分離、回収することを特徴とする澱粉を基にした顔料もしくは充填材の製造方法。
【請求項2】
溶媒と非溶媒との混合物を溶媒として使用することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
澱粉誘導体を溶解するのに必要な分だけ、もしくは多くともその必要量の20重量%だけ多い量の溶媒を使用することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
次の基準、すなわち少なくとも1重量%、好ましくは約10−30重量%の溶液濃度と、水の1−5倍の溶液粘度の少なくとも1つを適用して溶液を形成することを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
ガラス転移点が少なくとも60℃、好ましくは少なくとも100℃で、該温度で壊れない澱粉誘導体を用いることを特徴とする請求項1―4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
澱粉誘導体として澱粉エステルを用いることを特徴とする請求項1―5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
澱粉エステルが澱粉とC1−4のアルカン酸(alkane acid)とから形成されたエステル、好ましくは酢酸澱粉であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
澱粉エステルがトランスグリコシル化もしくはヒドロキシアルキル化されていることを特徴とする請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
水、C1−4のアルカノールもしくは非極性炭化水素系溶媒を非溶媒として用いることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
直鎖、分枝鎖もしくは環状のケトン又はアルデヒドを溶媒として用いることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
澱粉誘導体として機能するエステル中のエステル基の置換度を、該澱粉誘導体が非溶媒中で基本的に不溶となるように選択することを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
溶媒除去後、液相から分離した沈殿物が、300MHzのNMR装置で検出し得るような量の有機溶媒残渣を含有しないことを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
溶媒と非溶媒を、これらが互いに完全に混ざり合うように選択することを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
非溶媒の量が、重量換算で溶媒または溶媒混合物の約0.1−100倍、好ましくは約0.5−10倍、さらに適しているのは約0.7−5倍であることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
非溶媒を澱粉誘導体の溶液に混合しながら添加して球状の顔料粒子を生成することを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
平均粒径が約90−1000nmである球状の顔料を含む顔料もしくは充填材生成物を調製することを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項17】
水による沈殿及び沈殿物の可能な分離に引き続き、液相に分散した微粒子を例えば塩析によって沈殿させる2段階で澱粉誘導体を溶液から沈殿させることを特徴とする請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
澱粉誘導体溶液を非溶媒中に混合しながら加えてさんご様の多孔質顔料を生成することを特徴とする請求項1−15のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
粒径が約1−100μmの材料を備え、平均直系が約100−500nmの空孔を有する顔料もしくは充填材生成物を調製することを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
澱粉誘導体を含む溶液を乱流条件下で非溶媒と接触させることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
非溶媒の量が、溶媒もしくは溶媒の混合液に応じて、溶媒もしくは溶媒の混合物の量(重量換算)の通常0.1−100倍、好ましくは約0.5−10倍、更に好ましくは約0.7−5倍とすることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
澱粉誘導体からなり、平均粒径が約90−1000 nmの球状の澱粉誘導体粒子を備えることを特徴とする澱粉を基にした顔料もしくは充填材生成物。
【請求項23】
ISO輝度が少なくとも80であることを特徴とする請求項22に記載の顔料もしくは充填材生成物。
【請求項24】
請求項1−21のいずれかの方法を用いて調製することを特徴とする請求項22または23に記載の顔料もしくは充填材生成物。
【請求項25】
澱粉誘導体からなり、粒径が約1−100μmのナノ多孔性さんご様の材料を備えることを特徴とする顔料もしくは充填材生成物。
【請求項26】
請求項1−21のいずれかの方法を用いて調製することを特徴とする請求項25記載の顔料もしくは充填材生成物。
【請求項27】
澱粉誘導体が澱粉エステルであることを特徴とする請求項25−26のいずれかに記載の顔料もしくは充填材生成物。
【請求項28】
澱粉エステルが、澱粉とC1−4のアルカン酸から形成したエステル、好ましくは酢酸澱粉であることを特徴とする請求項27に記載の顔料もしくは充填材生成物。
【請求項29】
澱粉エステルがトランスグリコシル化もしくはヒドロキシアルキル化されていることを特徴とする請求項27または28に記載の顔料もしくは充填材生成物。
【請求項30】
紙や厚紙の製造、塗料、プラスチック、ゴム、化粧品、衛生用品及び/または洗浄剤への請求項22−29のいずれかの顔料もしくは充填材生成物の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15a】
【図15b】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15a】
【図15b】
【公表番号】特表2007−507572(P2007−507572A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530313(P2006−530313)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【国際出願番号】PCT/FI2004/000575
【国際公開番号】WO2005/030844
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(506113037)ヴァルティオン テクニリネン テュトキムスケスクス (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【国際出願番号】PCT/FI2004/000575
【国際公開番号】WO2005/030844
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(506113037)ヴァルティオン テクニリネン テュトキムスケスクス (2)
【Fターム(参考)】
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