説明

顔画像検出装置、顔画像検出方法及び撮影装置

【課題】顔画像位置の検出時間及び顔画像位置検出に要する電力消費を増大させることなく、顔画像位置を精度良く検出することができる顔画像検出装置を提供する。
【解決手段】入力画像データを用いて顔画像の位置を検出する顔画像検出装置であって、前記入力画像データを縮小して、360×i/n(nは2以上の整数:i=0〜n−1)度回転させた360/n度おきのn枚の縮小回転画像データを作成する縮小回転画像データ作成部104と、前記n枚の縮小回転画像データを対象として顔画像の位置を検出する顔検出部106とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ディジタルカメラで人物画像を撮影する時に使用する顔検出機能の速度と精度とを向上させるための技術に関し、特に、ディジタルカメラ及びパーソナルコンピュータなどの画像記録装置に備えられる顔画像検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人の顔の位置検出技術は、監視システムはもとより民生ディジタルスチルカメラなどで用いられてきている。ディジタルカメラの高速化と高画質化の技術向上と普及とは目覚ましいものがある。例えば、ディジタルカメラにおける人物(特に、顔)へのオートフォーカス機能、自動露光補正機能、及び顔認識による個人認証などでも、ディジタルスチルカメラの性能の向上とともに、顔位置検出技術が実用展開されてきている。この他、ディジタルビデオにおける画像検索、インデクシング及び画像アルバム整理などにおいて、動画又は静止画から人物を抽出するための技術としても、顔位置検出技術は有用で、その応用展開は幅広い。
【0003】
顔の向きに拘わらず位置検出精度を向上できる顔位置検出技術として、特許文献1のような従来技術がある。特許文献1では、一つの顔を位置検出する際に正面向きの顔画像に関するパラメータを使用せず、正面顔画像を左半分と右半分とに分け、左右それぞれの顔画像に関する二組のパラメータを使用して、顔画像の位置を検出する。これにより、正面以外の横向きの顔であっても位置検出率が向上する。
【特許文献1】特開2006−72770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、上述のように二組のパラメータを使用して顔画像の位置を検出しているため、1枚の入力画像から顔画像の位置を検出するためには、パラメータの組毎に、パラメータの組と入力画像との参照比較処理を実行する必要がある。つまり、2回の参照比較処理を実行する必要がある。このため、それに伴う顔画像位置の検出時間、顔画像位置検出に要する電力消費の増大などの課題がある。
【0005】
また、特許文献1では、人が左右を向いた場合には精度良く顔画像の位置を検出することはできるが、ディジタルカメラの光軸を中心軸として顔画像が回転する場合には、精度良く顔画像の位置を検出することができないという課題もある。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、顔画像位置の検出時間及び顔画像位置検出に要する電力消費を増大させることなく、顔画像の位置を精度良く検出することができる顔画像検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る顔画像検出装置は、入力画像データを用いて顔画像の位置を検出する顔画像検出装置であって、前記入力画像データを縮小して、360×i/n(nは2以上の整数:i=0〜n−1)度回転させた360/n度おきのn枚の縮小回転画像データを作成する縮小回転画像データ作成手段と、前記n枚の縮小回転画像データを対象として顔画像の位置を検出する顔検出手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
この構成によると、入力画像データを縮小させ、かつ複数の角度に回転させた複数の縮小回転画像データから顔画像の位置が検出される。このため、精度良く顔画像の位置を検出することができる。また、縮小回転画像データは、入力画像データを縮小させたものである。このため、高速に顔画像の位置を検出することができ、消費電力を削減することができる。
【0009】
好ましくは、前記顔検出手段は、少なくとも360/n度の範囲内の傾きの顔画像の位置を検出することができる手法を用いて、前記n枚の縮小回転画像データを対象として顔画像の位置を検出することを特徴とする。
【0010】
顔検出手段は、360/n度の範囲内の傾きの顔画像の位置を検出することができるため、n枚の縮小回転画像データから顔画像の位置を検出することにより、360度の傾きに対しても顔画像の位置を検出することができる。
【0011】
さらに好ましくは、上述の顔画像検出装置は、さらに、前記n枚の縮小回転画像データのうち、前記顔検出手段で顔画像の位置が検出された縮小回転画像データを特定する縮小回転画像データ特定手段と、前記縮小回転画像データ特定手段で特定された前記縮小回転画像データの前記入力画像データに対する回転角度θに基づいて、360/n度おきのn個の角度設定値の中から、(−θ)の傾きを有する顔画像の位置検出に用いられる1つの角度設定値を選択する角度設定値選択手段とを備え、前記顔検出手段は、さらに、前記角度設定値選択手段で選択された前記1つの角度設定値を用いて、前記入力画像データを対象として顔画像の位置を検出することを特徴とする。
【0012】
n個の角度設定値のいずれかを用いて入力画像データに対する顔画像位置検出処理を行っているので、精度の高い顔画像位置検出を実現することができる。例えば、画像に占める顔の割合が小さい場合には、複数の縮小回転画像データより顔画像の大まかな傾きを判定した後に、入力画像データから顔画像の位置検出を行うことができる。これにより、最適な角度設定値を用いて顔画像位置検出処理を行うことができ、精度良く顔画像の位置が検出される。
【0013】
さらに好ましくは、前記角度設定値選択手段は、さらに、前記縮小回転画像データ特定手段で特定された前記縮小回転画像データが複数の場合には、複数の縮小回転画像データそれぞれの前記入力画像データに対する複数の回転角度θに基づいて、360/n度おきのn個の角度設定値の中から、(−θ)の傾きを有する顔画像の位置検出に用いられる複数の角度設定値を選択し、前記顔検出手段は、さらに、前記縮小回転画像データ特定手段で特定された前記縮小回転画像データが複数の場合には、前記角度設定値選択手段で選択された前記複数の角度設定値の中から1つの角度設定値を順番に取り出し、取り出された前記1つの角度設定値を用いて、前記入力画像データを対象として顔画像の位置を検出することを特徴とする。
【0014】
顔検出手段により顔画像の位置が検出できる許容角度と略同じ傾き角度を有する顔画像が存在する場合には、2つの縮小回転画像データが特定される場合があるが、そのような場合には、特定された2つの縮小回転画像データに対応する2つの角度設定値を交互に切り替えながら、1つの角度設定値に基づいて顔画像の位置検出を行うことができる。これにより、精度良く顔画像の位置を検出することができる。
【0015】
さらに好ましくは、前記顔検出手段は、前記縮小回転画像データ特定手段で前記縮小回転画像データが特定されない場合には、再度、前記n枚の縮小回転画像データを対象として顔画像の位置を検出することを特徴とする。
【0016】
特定される縮小回転画像データが無くなった場合には、顔画像の傾きが変化したか、入力画像データ内に顔画像が存在しないかのどちらかと判断して、再度、n枚の縮小回転画像データを対象として顔画像の位置検出が行われる。これにより、例えば、動画撮影時や、静止画撮影時であっても被写体が動いたり撮影者が手元を動かしたりすることにより顔画像の位置及び傾きが変化する場合であっても、顔画像の変化に追随して、高速に精度良く顔画像の位置を検出することができる。
【0017】
さらに好ましくは、前記顔検出手段は、所定の角度の傾きを有する顔画像の位置検出に用いられる予め定められた1つの角度設定値を用いて、前記n枚の縮小回転画像データを対象として顔画像の位置を検出し、前記顔画像検出装置は、さらに、前記n枚の縮小回転画像データのうち、前記顔検出手段で顔画像の位置が検出された縮小回転画像データを特定する縮小回転画像データ特定手段を備え、前記顔検出手段は、さらに、前記縮小回転画像データ特定手段で特定された前記縮小回転画像データが複数の場合には、前記予め定められた1つの角度設定値を用いて、前記縮小回転画像データ特定手段で特定された複数の前記縮小回転画像データを対象として顔画像の位置を検出することを特徴とする。
【0018】
顔検出手段により顔画像の位置検出ができる許容角度と略同じ傾き角度を有する顔画像が存在する場合には、2つの縮小回転画像データが特定される場合があるが、そのような場合には、特定された2つの縮小回転画像データから顔画像の位置検出を行うことができる。
【0019】
さらに好ましくは、前記顔検出手段は、所定の角度の傾きを有する顔画像の位置検出に用いられる予め定められた1つの角度設定値を用いて、前記n枚の縮小回転画像データを対象として顔画像の位置を検出することを特徴とする。
【0020】
1つの角度設定値を用いて顔画像の位置検出を行うため、高速に顔画像の位置を検出することができ、消費電力を削減することができる。
【0021】
さらに好ましくは、前記縮小回転画像データ作成手段は、さらに、前記n枚の縮小回転画像データを含む1枚の顔検出用画像を作成し、前記顔検出手段は、前記1枚の顔検出用画像を対象として顔画像の位置を検出することを特徴とする。
【0022】
一括して複数の傾きの顔画像を含む1枚の顔検出用画像データに対して、顔画像位置検出処理を行うことができる。このため、高速に顔画像の位置を検出することができる。これに伴い、顔画像検出装置の消費電力を削減することができる。
【0023】
なお、本発明は、このような特徴的な手段を備える顔画像検出装置として実現することができるだけでなく、顔画像検出装置に含まれる特徴的な手段をステップとする顔画像検出方法として実現したり、顔画像検出方法に含まれる特徴的なステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現したりすることもできる。そして、そのようなプログラムは、CD−ROM(Compact Disc-Read Only Memory)等の記録媒体やインターネット等の通信ネットワークを介して流通させることができるのは言うまでもない。
【0024】
また、顔画像検出装置を搭載する撮影装置としても実現することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、画像中の人物の顔に傾きがある場合の顔画像の位置検出においても、位置検出速度の向上、消費電力の軽減、さらには位置検出精度の向上を実現できる。例えば、赤ん坊が抱っこされた構図などでも高速で精度の高い、安定した顔画像位置検出が行える。また、人物や顔へのオートフォーカス機能や、自動露光補正機能を高精度に動作させることができるディジタルカメラを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態に係る顔画像検出装置について、図面を参照しながら説明する。
【0027】
図1は、本発明の実施の形態に係る顔画像検出装置の構成を示すブロック図である。
顔画像検出装置100は、A/D(Analog to Digital)変換器101と、顔画像検出部111と、CPU(Central Processing Unit)102とを含む。
【0028】
A/D変換器101は、入力画像のアナログの画像データ信号をディジタルの画像データ信号に変換する処理部である。なお、A/D変換器101の内部に設けられたDSP(Digital Signal Processor)が、ディジタルの画像データ信号を、規格信号であるREC601の画像データ信号、REC656の画像データ信号、又は汎用入力フォーマットにあわせた画像データ信号に変換した後に出力してもよい。
【0029】
顔画像検出部111は、A/D変換器101より出力される画像データ信号(入力画像データ)から、入力画像データに含まれる顔画像の位置を検出する処理部であり、輝度信号抽出部103と、縮小回転画像データ作成部104と、メモリ105と、顔検出部106と、CPUインタフェース部107とを含む。
【0030】
輝度信号抽出部103は、入力画像データから輝度信号を抽出し、輝度信号データを作成する処理部である。
【0031】
縮小回転画像データ作成部104は、輝度信号抽出部103で抽出された輝度信号データに対し、フィルタ処理と縮小リサイズ処理とを行いながら、顔画像位置検出で用いる規定サイズのデータ(以下、「顔検出用画像データ」という。)をメモリ105に書き込む処理部である。
【0032】
メモリ105は、輝度信号抽出部103で抽出された入力画像データの輝度信号データと、縮小回転画像データ作成部104で作成された顔検出用画像データとを格納するための記憶装置である。
【0033】
顔検出部106は、メモリ105に格納された輝度信号データ又は顔検出用画像データにアクセスして、顔画像の位置、大きさ及び傾きを検出する処理部である。顔検出部106には、左右に傾きのない状態での顔画像位置等の検出に最適な4種類の顔検出用パラメータが記憶されており、そのうちの1種類の顔検出用パラメータに基づいて、顔画像位置等の検出が行われる。顔検出部106の処理は、公知の技術を用いることができ、本願の主眼ではないため、その詳細な説明については、ここでは繰り返さない。なお、顔検出用パラメータとは、一般的な顔画像における輝度の分布を数値化したパラメータのことである。顔検出部106に記憶されている4種類の顔検出用パラメータとは、顔画像の傾きを示す角度設定値が0度、90度、180度及び270度としたときの顔検出用パラメータを示す。例えば、角度設定値が90度の顔検出用パラメータは、90度傾いている顔画像の位置を検出するのに最適な顔検出用パラメータのことである。
【0034】
CPUインタフェース部107は、CPU102からの命令を受けて、輝度信号抽出部103、縮小回転画像データ作成部104及び顔検出部106のシステム動作を制御する処理部である。
【0035】
CPU102は、CPUインタフェース部107を介して、顔画像検出部111のシステム動作を制御する処理部であり、機能的に(CPU102上で制御プログラムを実行することにより実現される処理部として)縮小回転画像データ特定部108と、角度設定値選択部109と、顔画像位置判定部110とを含む。
【0036】
縮小回転画像データ特定部108は、縮小回転画像データ作成部104でリサイズされたデータのうち、顔検出部106において顔画像の位置が検出されたデータを特定する処理部である。
【0037】
角度設定値選択部109は、顔検出部106での顔画像位置検出に用いられる角度設定値を含む顔検出用パラメータを設定する処理部である。
【0038】
顔画像位置判定部110は、顔検出部106で検出された顔画像の位置と、縮小回転画像データ特定部108で特定されたデータと入力画像データとの位置に関する対応関係とから、入力画像データにおける顔画像の位置を判定する。
【0039】
次に、顔画像検出装置100の動作について説明する。
輝度信号抽出部103は、入力画像データが得られる毎に、入力画像データから、顔画像位置検出に使用する輝度信号を抽出し、輝度信号データを作成する。
【0040】
図2は、顔画像検出装置100の、CPU102、縮小回転画像データ作成部104、メモリ105、顔検出部106及びCPUインタフェース部107の動作を示すフローチャートである。
【0041】
なお、以降の説明で、S4〜S9の処理、S10〜S16の処理、S10とS18〜S22の処理がそれぞれ1フレーム期間(例えば、1/30秒)内で行われる。
【0042】
輝度信号抽出部103から出力される輝度信号は、任意のサイズの入力画像データの輝度信号データである。このため、縮小回転画像データ作成部104は、輝度信号データを顔検出部106で規定する任意のサイズに変換するために、フィルタ処理と縮小リサイズ処理を行った輝度データ(顔検出用画像データ)を作成し、メモリ105に顔検出用画像データを規定サイズで書き込む(S4)。
【0043】
顔検出部106は、メモリ105に格納された顔検出用画像データにアクセスして、顔画像の位置、大きさ及び傾きを検出する(S6)。
【0044】
ここで、顔検出部106には、左右に傾きのない状態での顔画像位置検出に最適な1種類の顔検出用パラメータが設定されており、この顔検出用パラメータを用いた顔画像位置検出処理では左右それぞれ45度まで傾いた顔画像の位置を検出可能(以下、「傾き許容角度が45度である」と記す)であるものとする。この場合、S4の処理において、縮小回転画像データ作成部104は、入力画像データの輝度信号データ(以下、「オリジナル画像データ」という。)を、顔検出用画像データの規定サイズの1/n(n=4)以下に縮小し、縮小画像データを作成する。また、縮小回転画像データ作成部104は、縮小画像データを、360/n(n=4)、すなわち90度ずつ回転させることにより得られる4枚の縮小回転画像データを貼り合わせた1枚の顔検出用画像データを生成する。このために、縮小回転画像データ作成部104は、縮小画像データを90度ずつ回転させながら顔検出用画像データの規定サイズアドレス内で4つの縮小回転画像データのマッピングを行い、4枚の縮小回転画像データをメモリ105へ高速書き込みする。メモリ105に書き込まれるデータ量は、顔検出用画像データの規定サイズ1枚分である。このため、4枚の縮小回転画像データを書き込む場合もオリジナル画像データをそのまま書き込む場合と同じデータ量となり、電力増加は軽微である。
【0045】
図3は、オリジナル画像データの一例を示す図である。オリジナル画像データ201は、被写体として赤ん坊を撮像した画像データであり、被写体の顔の傾き角度は60度であり、顔検出部106における顔画像位置検出処理の傾き許容角度を超えているものとする。
【0046】
図4は、顔検出用画像データの一例を示す図である。顔検出用画像データ202の規定サイズは、オリジナル画像データ201の画像サイズと同じであるものとする。顔検出用画像データ202には、規定サイズに収まるように、4枚の縮小回転画像データ203〜206が張り合わされた画像データである。縮小回転画像データ203は、オリジナル画像データ201に対して0度回転している。縮小回転画像データ204はオリジナル画像データ201に対して180度回転している。縮小回転画像データ205はオリジナル画像データ201に対して時計回りに270度回転している。縮小回転画像データ206はオリジナル画像データ201に対して時計回りに90度回転している。
【0047】
S6の処理において、顔検出部106は、メモリ105から4種類の画像を貼り合わせた規定サイズに収まった1枚の顔検出用画像データ202を読み出し、顔画像位置検出処理を実行する。この処理により、4種類の画像情報に対する顔画像位置検出処理を一括して行うことができる。オリジナル画像データ201のように顔の左右の傾きが45度を超える顔画像位置検出が不可能な画像についても、90度ずつ回転した4種類の縮小画像に対して顔画像位置検出処理が実行される。このため、顔の左右の傾きが±45度以内の縮小回転画像データ205において、顔画像205aの位置、大きさ及び傾きが検出される。
【0048】
次に、縮小回転画像データ特定部108は、4種類の縮小回転画像データのうち、顔検出部106で顔画像位置が検出された縮小回転画像データを特定する(S8)。例えば、図4に示した顔検出用画像データ202では、縮小回転画像データ205が、顔画像位置が検出された縮小回転画像データとして特定される。4種類の縮小回転画像データの配置は、予め定められているため、オリジナル画像データ上での検出された顔画像の位置より縮小回転画像データが特定される。
【0049】
顔画像位置判定部110は、特定された縮小回転画像データにおける顔画像の位置から、オリジナル画像データ上での顔画像の位置、大きさ及び傾きを検出する(S9)。縮小回転画像データとオリジナル画像データとの画像データの対応関係は、縮小回転画像データ作成部104での縮小回転画像データのメモリ書き込み時に分かっている。また、縮小率も予め分かっている。このため、これらの情報より、オリジナル画像データ上での顔画像の位置及び大きさは算出することができる。また、縮小回転画像データ作成時の回転角度も分かっているため、縮小回転画像データにおける顔画像の傾きから、オリジナル画像データ上での顔画像の傾きも算出することができる。
【0050】
顔画像位置が検出された縮小回転画像データが1つの場合には(S10でYES)、角度設定値選択部109は、縮小回転画像データ特定部108で特定された縮小回転画像データより、顔検出部106での顔画像位置検出処理に用いられる角度設定値を特定することにより、その角度設定値を含む顔検出用パラメータを特定する(S12)。
【0051】
4種類の縮小回転画像のいずれか一つで顔画像位置が検出されたとき、メモリ105への書き込み制御にてメモリ105内にマッピングした各々の縮小回転画像の回転角度の情報から、人物の傾き構図を判定することができる。図3及び図4に示した例では、オリジナル画像データ201を反時計回りに90度回転した縮小回転画像データ205において顔画像205aの位置が検出されるため、オリジナル画像データ201における被写体の顔画像201aはフレーム内で時計回りにおよそ90度回転していると判断できる。よって、角度設定値選択部109は、角度設定値を90度と特定し、当該角度設定値を顔検出部106に出力する。これにより、顔検出部106で次に顔画像位置検出に用いられる角度設定値を含む顔検出用パラメータが特定される。
【0052】
顔検出部106は、その角度設定値を含む顔検出用パラメータを用いて、メモリ105に格納されたオリジナル画像データにアクセスして、顔画像の位置、大きさ及び傾きを検出する(S14)。上述の例では、角度設定値が90度と特定されている。このため、顔検出部106は、角度設定値90度を含む顔検出用パラメータを用いて、図3に示したオリジナル画像データ201にアクセスして、顔画像201aの位置、大きさ及び傾きを検出する。なお、メモリ105に格納されているオリジナル画像データは順次更新される。このため、顔検出部106は、最新のオリジナル画像データから顔画像位置の検出を行う。
【0053】
顔検出部106は、顔画像位置が検出される間は、オリジナル画像データ201から顔画像の位置を検出する(S16でNO、S14)。
【0054】
顔画像位置が検出されなくなった場合には(S16でYES)、S4以降の処理が繰り返し実行される。
【0055】
S10の処理で複数の縮小回転画像データから顔画像位置が検出された場合には(S10でNO)、縮小回転画像データ作成部104は、縮小回転画像データ特定部108が特定した複数の縮小回転画像データのみが顔検出用画像データの規定サイズに収まるように、輝度信号抽出部103より出力される輝度信号データにフィルタ処理と縮小リサイズ処理を施し、顔検出用画像データを作成する。縮小回転画像データ作成部104は、作成した顔検出用画像データをメモリ105に書き込む(S18)。例えば、図4に示す顔検出用画像データ202のうち、縮小回転画像データ203及び205から顔画像の位置が検出されたものとすると、縮小回転画像データ作成部104は、図5に示すような、顔検出用画像データの規定サイズ内に2種類の縮小回転画像データ213及び215をマッピングした顔検出用画像データ211を作成する。
【0056】
顔検出部106は、S18の処理でメモリ105に格納された顔検出用画像データにアクセスして、顔画像の位置、大きさ及び傾きを検出する(S20)。
【0057】
顔画像位置判定部110は、特定された縮小回転画像データにおける顔画像の位置から、オリジナル画像データ上での顔画像の位置、大きさ及び傾きを検出する(S21)。例えば、顔検出用画像データ211の縮小回転画像データ215より顔画像205aの位置が検出され、顔215aの傾きが時計回りに330度(反時計回りに30度)と求められたものとする。このとき、顔215aが含まれる縮小回転画像データ215はオリジナル画像データ201に対して時計回りに270度回転している。このため、オリジナル画像データ201における顔画像201aの傾きは、時計回りに60(=330−270)度と算出される。
【0058】
顔検出部106は、顔画像の位置が検出される間は、顔検出用画像データから顔画像の位置を検出する(S22でNO、S18、S20)。
【0059】
顔画像の位置が検出されなくなった場合には(S22でYES)、S4以降の処理が繰り返し実行される。
【0060】
以上説明したように、本実施の形態によると、顔の傾き許容角度以上の傾きを持つ顔画像についても、複数種の顔検出用パラメータを用いずに、1種類の顔検出用パラメータを用いて高速に位置検出することができる。つまり、顔検出用画像データ内で顔画像位置の検出を行った後、顔検出用パラメータを1つに限定した上で顔画像の位置を検出していることより、顔画像位置の検出速度を向上させることができる。このため、顔画像検出装置100の消費電力量を軽減することができる。
【0061】
また、90度おきの4種類の顔検出用パラメータのいずれかを用いてオリジナル画像データデータに対する顔画像位置検出処理を行っているので、精度の高い顔画像位置検出を実現することができる。例えば、オリジナル画像データに占める顔画像の割合が小さい場合には、縮小回転画像データを貼り合わせた顔検出用画像データより顔画像の大まかな傾きを判定した後に、顔検出用画像データではなくオリジナル画像データから顔画像の位置を検出することができる。これにより、精度良く顔画像の位置が検出される。
【0062】
また、顔検出用パラメータを1種類に限定した顔画像位置の検出処理中において、検出される顔画像位置の個数が0個となった場合には、顔画像の傾きが変化したか、入力画像データ内に顔画像が存在しないかのどちらかと判断して、顔検出用画像データの作成処理以降の処理が再度繰り返される。これにより、例えば、動画撮影時や、静止画撮影時であっても被写体が動いたり撮影者が手元を動かしたりすることにより顔画像の位置及び傾きが変化する場合であっても、顔画像の変化に追随して、高速に精度良く顔画像の位置を検出することができる。
【0063】
また、顔検出用画像データは、顔画像の位置検出で用いる規定サイズのデータである。このため、メモリ105へのデータ書き込み及び顔検出部106の動作を高速に行なうことができる。これにより、顔画像検出装置100の消費電力量を軽減することができる。
【0064】
また、顔検出部106における傾き許容角度と略同じ傾き角度を有する顔画像が存在する場合には、2つの縮小回転画像データから顔画像位置が検出される場合があるが、そのような場合であっても、精度良く顔画像の位置及び傾きを検出することができる。
【0065】
以上、本発明の実施の形態に係る顔画像検出装置について説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0066】
例えば、図2に示した顔画像検出装置100の動作において、複数の縮小回転画像データから顔画像位置が検出された場合には、顔検出用画像データから顔画像位置の検出を行っていたが、オリジナル画像データから顔画像位置の検出を行うようにしてもよい。この場合には、角度設定値選択部109が、複数の縮小回転画像データに対応する複数の角度設定値を特定することにより、それらの角度設定値を含む複数種の顔検出用パラメータを特定する。顔検出部106は、特定された複数種の顔検出用パラメータの中から1種類の顔検出用パラメータを順番に取り出し、取り出された1種類の顔検出用パラメータを用いて、オリジナル画像データを対象として顔画像の位置を検出する。これにより、精度良く顔画像の位置を検出することができる。
【0067】
また、上述の実施の形態では、傾き許容角度が45度であるため、輝度信号データを縮小した画像データを90(=45×2)度ずつ回転させながら4回のメモリ書き込み動作により顔検出用画像データを作成していた。しかし、傾き許容角度が45度以外であっても本発明を適用することができるのは言うまでもない。例えば、傾き許容角度が90度の場合には、輝度信号データを縮小した画像データを180(=90×2)度ずつ回転させながら、2回のメモリ書き込み動作により顔検出用画像データを作成するようにしてもよい。図6は、図3に示したオリジナル画像データ201を縮小した画像データを180度ずつ回転させながら、2回のメモリ書き込み動作により作成した顔検出用画像データ207の一例を示す図である。顔検出部106は、この顔検出用画像データ207を対象として顔画像位置の検出を行う。これにより、2つの縮小回転画像データのうちのいずれかから顔画像位置が検出される。
【0068】
なお、本実施の形態に係る顔画像検出装置100は、一般的なディジタルスチルカメラやディジタルムービーカメラなどのディジタルカメラに搭載することができる。
【0069】
図7は、顔画像検出装置100を搭載したディジタルスチルカメラの外観の一例を示す図である。図8は、顔画像検出装置100を搭載したディジタルスチルカメラの構成の一例を示す図である。ディジタルスチルカメラ300は、レンズ301と、イメージセンサ302と、CDS/AGC回路303と、A/D変換器101と、顔画像検出装置100と、表示装置304と、記録媒体305と、タイミングジェネレータ306とを含む。
【0070】
レンズ301で集められた光は、イメージセンサ302により画素信号に変換される。CDS/AGC回路303は、イメージセンサ302より出力される画素信号に対して相関二重サンプリングを施すとともに、自動ゲイン調整処理を行い、画像データ信号を出力する。タイミングジェネレータ306は、イメージセンサ302に対して、所定時間間隔で駆動パルスを発生させる。表示装置304は、オリジナル画像データ及びオリジナル画像データ上で検出された顔画像の位置を表示する表示装置であり、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)などである。記録媒体は、オリジナル画像データを記録する記録装置である。
【0071】
このような顔画像検出装置100をディジタルカメラに搭載することにより、ユーザは、精度の高い安定した顔画像位置検出機能を利用した人物撮影をすることができる。
【0072】
また、本発明の技術を用いることにより、顔画像のみならず、顔に含まれる目の位置及び視線等を精度良く検出したりすることができる。
【0073】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明に係る顔画像検出装置によると、1回の顔画像位置検出動作で、全ての傾きの顔画像の位置を検出することができる。したがって、例えば、赤ん坊が抱っこされた構図や寝顔の斜め構図での顔画像位置を高速に安定して検出ことができる。このため、本発明は、人物(顔)へのオートフォーカス機能や、自動露光補正機能を高速で高精度に動作させることができるディジタルカメラ等の撮像装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る顔画像検出装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、顔画像検出装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】図3は、オリジナル画像データの一例を示す図である。
【図4】図4は、顔検出用画像データの一例を示す図である。
【図5】図5は、顔検出用画像データの一例を示す図である。
【図6】図6は、顔検出用画像データの一例を示す図である。
【図7】図7は、顔画像検出装置を搭載したディジタルスチルカメラの外観の一例を示す図である。
【図8】図8は、顔画像検出装置を搭載したディジタルスチルカメラの構成の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0076】
100 顔画像検出装置
101 A/D変換器
102 CPU
103 輝度信号抽出部
104 縮小回転画像データ作成部
105 メモリ
106 顔検出部
107 CPUインタフェース部
108 縮小回転画像データ特定部
109 角度設定値選択部
110 顔画像位置判定部
111 顔画像検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像データを用いて顔画像の位置を検出する顔画像検出装置であって、
前記入力画像データを縮小して、360×i/n(nは2以上の整数:i=0〜n−1)度回転させた360/n度おきのn枚の縮小回転画像データを作成する縮小回転画像データ作成手段と、
前記n枚の縮小回転画像データを対象として顔画像の位置を検出する顔検出手段と
を備えることを特徴とする顔画像検出装置。
【請求項2】
さらに、
前記n枚の縮小回転画像データのうち、前記顔検出手段で顔画像の位置が検出された縮小回転画像データを特定する縮小回転画像データ特定手段と、
前記顔検出手段で検出された前記顔画像の位置と、前記入力画像データと前記縮小回転画像データとの位置に関する対応関係とから、前記入力画像データにおける顔画像の位置を判定する顔画像位置判定手段とを備える
ことを特徴とする請求項1に記載の顔画像検出装置。
【請求項3】
前記顔検出手段は、少なくとも360/n度の範囲内の傾きの顔画像の位置を検出することができる手法を用いて、前記n枚の縮小回転画像データを対象として顔画像の位置を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の顔画像検出装置。
【請求項4】
さらに、
前記n枚の縮小回転画像データのうち、前記顔検出手段で顔画像の位置が検出された縮小回転画像データを特定する縮小回転画像データ特定手段と、
前記縮小回転画像データ特定手段で特定された前記縮小回転画像データの前記入力画像データに対する回転角度θに基づいて、360/n度おきのn個の角度設定値の中から、(−θ)の傾きを有する顔画像の位置検出に用いられる1つの角度設定値を選択する角度設定値選択手段とを備え、
前記顔検出手段は、さらに、前記角度設定値選択手段で選択された前記1つの角度設定値を用いて、前記入力画像データを対象として顔画像の位置を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の顔画像検出装置。
【請求項5】
前記角度設定値選択手段は、さらに、前記縮小回転画像データ特定手段で特定された前記縮小回転画像データが複数の場合には、複数の縮小回転画像データそれぞれの前記入力画像データに対する複数の回転角度θに基づいて、360/n度おきのn個の角度設定値の中から、(−θ)の傾きを有する顔画像の位置検出に用いられる複数の角度設定値を選択し、
前記顔検出手段は、さらに、前記縮小回転画像データ特定手段で特定された前記縮小回転画像データが複数の場合には、前記角度設定値選択手段で選択された前記複数の角度設定値の中から1つの角度設定値を順番に取り出し、取り出された前記1つの角度設定値を用いて、前記入力画像データを対象として顔画像の位置を検出する
ことを特徴とする請求項4に記載の顔画像検出装置。
【請求項6】
前記顔検出手段は、前記縮小回転画像データ特定手段で前記縮小回転画像データが特定されない場合には、再度、前記n枚の縮小回転画像データを対象として顔画像の位置を検出する
ことを特徴とする請求項4に記載の顔画像検出装置。
【請求項7】
前記顔検出手段は、所定の角度の傾きを有する顔画像の位置検出に用いられる予め定められた1つの角度設定値を用いて、前記n枚の縮小回転画像データを対象として顔画像の位置を検出し、
前記顔画像検出装置は、さらに、前記n枚の縮小回転画像データのうち、前記顔検出手段で顔画像の位置が検出された縮小回転画像データを特定する縮小回転画像データ特定手段を備え、
前記顔検出手段は、さらに、前記縮小回転画像データ特定手段で特定された前記縮小回転画像データが複数の場合には、前記予め定められた1つの角度設定値を用いて、前記縮小回転画像データ特定手段で特定された複数の前記縮小回転画像データを対象として顔画像の位置を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の顔画像検出装置。
【請求項8】
前記顔検出手段は、前記縮小回転画像データ特定手段で特定された前記縮小回転画像データが複数の場合には、前記縮小回転画像データ特定手段で特定された複数の前記縮小回転画像データを拡大し、前記予め定められた1つの角度設定値を用いて、拡大された前記複数の前記縮小回転画像データを対象として顔画像の位置を検出する
ことを特徴とする請求項7に記載の顔画像検出装置。
【請求項9】
前記顔検出手段は、所定の角度の傾きを有する顔画像の位置検出に用いられる予め定められた1つの角度設定値を用いて、前記n枚の縮小回転画像データを対象として顔画像の位置を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の顔画像検出装置。
【請求項10】
前記縮小回転画像データ作成手段は、さらに、前記n枚の縮小回転画像データを含む1枚の顔検出用画像を作成し、
前記顔検出手段は、前記1枚の顔検出用画像を対象として顔画像の位置を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の顔画像検出装置。
【請求項11】
被写体を撮影する撮影装置であって、
被写体を撮影して画像データを出力する撮影手段と、
前記撮影手段で撮影された入力画像データを縮小して、360×i/n(nは2以上の整数:i=0〜n−1)度回転させた360/n度おきのn枚の縮小回転画像データを作成する縮小回転画像データ作成手段と、
前記n枚の縮小回転画像データを対象として顔画像の位置を検出する顔検出手段と
を備えることを特徴とする撮影装置。
【請求項12】
入力画像データを用いて顔画像の位置を検出する顔画像検出方法であって、
前記入力画像データを縮小して、360×i/n(nは2以上の整数:i=0〜n−1)度回転させた360/n度おきのn枚の縮小回転画像データを作成する縮小回転画像データ作成ステップと、
前記n枚の縮小回転画像データを対象として顔画像の位置を検出する顔検出ステップと
を含むことを特徴とする顔画像検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−287704(P2008−287704A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71856(P2008−71856)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】