説明

顕微鏡装置

【課題】非線形光学効果を有する観察試料の内部構造を高精度に観察することが可能な構成の顕微鏡装置を提供する。
【解決手段】顕微鏡装置1は、レーザ光源10と、レーザ光源10からの光を波長変換して相互に角振動数の異なる2以上の光として射出する波長変換光学素子12,14と、波長変換光学素子12,14から射出された各々の光を観察試料31が受光することで生じる2次の非線形光学効果によって発生する所定角振動数ωの光を集めるコンデンサレンズ32と、2次の非線形光学効果によって発生する光の中から所定角振動数ωの光を抽出する分光器34と、分光器34により抽出された光を結像させる結像レンズ35と、結像レンズ35により結像された所定角振動数ωの光の強度を検出する光検出器37とを備えて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば非線形光学効果を有する光学結晶等の内部構造を三次元的に観察することが可能な構成の顕微鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2次の非線形光学効果を利用した顕微鏡装置の例として、第2高調波発生(Second Harmonic Generation:SHG)を用いたSHG顕微鏡によって非線形光学結晶の分域構造を観察する研究が行われている。例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)の分域構造(90°分域構造)のようにその分域の方向が反平行ではない場合には、方位によってd定数(非線形光学定数)の大きさが異なることを利用して、その分域構造を観察することができる。一方、反平行分域構造(180°分域構造)では(分域の向きによらず)d定数の大きさが同じであるため、発生するSH波の強度は等しくなりこのままでは判別できないが、位相が180°異なるという特性を有する。そこで、(観察試料よりも前に)一様なSH波を発生させる参照板を配置して、参照板と観察試料とから各々発生するSH波を干渉させることにより強度のコントラストとして、反平行分域構造を観察することが可能となる(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−310799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非線形光学結晶にレーザ光を強く集光させたときに当該結晶の内部から発生する2次の非線形光学効果による光の強度は位相不整合量に依存し、位相不整合量が負のときには所定の光強度が発せられ、位相不整合量が正のときには微弱な光強度しか発せられないため、従来のSHG顕微鏡では結晶の構造等によっては、その分域構造を的確に観察することができないという問題があった。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、非線形光学効果を有する観察試料の内部構造を高精度に観察することが可能な構成の顕微鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明を例示する態様に従えば、レーザ光源と、レーザ光源からの光を波長変換して相互に角振動数の異なる2以上の光として射出する波長変換部と、波長変換部から射出された各々の光を観察試料が受光することで生じる2次の非線形光学効果によって発生する所定角振動数の光を集めるコンデンサレンズと、2次の非線形光学効果によって発生する光の中から所定角振動数の光を抽出する光抽出部と、光抽出部により抽出された光を結像させる結像レンズと、結像レンズにより結像された所定角振動数の光の強度を検出する光検出部とを備えて構成されることを特徴とする顕微鏡装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、非線形光学効果を有する観察試料の内部構造を高精度に評価することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】焦点位置とSH波強度との関係を示すグラフであり、(a)は位相不整合量が正の場合を例示し、(b)は位相不整合量が負の場合を例示する。
【図2】本発明の適用例として示す第1の実施形態の顕微鏡装置の概要構成図である。
【図3】第2の実施形態の顕微鏡装置の概要構成図である。
【図4】第2の実施形態の顕微鏡装置を用いた観察方法を示すフローチャートである。
【図5】第2の実施形態の顕微鏡装置の変形例を示す概要構成図である。
【図6】第3の実施形態の顕微鏡装置の概要構成図である。
【図7】擬似位相整合素子の構造を示す模式図である。
【図8】基本波と非線形光学効果によって発生する光とが非コリニアー配置である場合を説明するための図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態に係る顕微鏡装置の具体的構成を説明する前に、まず、基本的な原理から説明する。本実施形態の顕微鏡装置は、観察試料たる非線形光学結晶(以下、単に「結晶」と称する)の三次元情報を取得するために共焦点光学系を備えている。共焦点光学系では、対物レンズの焦点位置と光学的に共役な位置にピンホールを配置することで、その光軸上で焦点の合った光のみを検出してコントラストの高い画像を得られるようにしたものであり、焦点を観察試料に対して水平方向に一定量ずつ相対移動させて観察試料の走査画像を取得すれば、観察試料を光学的に2次元方向(光軸に直交する面内)にスライスした共焦点画像(断面像)が高さごとに得られ、さらにこの画像を高さを変えながら取得することにより、精度の高い三次元画像が得られる。
【0010】
このような共焦点光学系において、レーザ光源よりレーザ光を観察試料である結晶に強く集光させた場合には、結晶の内部から発生する2次の非線形光学効果により波長変換された出力光の強度は位相不整合量Δkの符号に依存することが知られている。この位相不整合量Δkは、基本波として角振動数ω1,ω2(ω1<ω2)の光を結晶に入射させた際に、結晶から発生する2次の非線形光学効果による出力光の角振動数をω3(=ω2±ω1)とすると、次式(1)および(2)のように表すことができる。
【0011】
(I)和周波発生のとき(特にω1=ω2のときに「SHG」と称されている)
【数1】

(II)差周波発生のとき
【数2】

【0012】
ここで、結晶の内部から発生する2次の非線形光学効果による出力光の強度は、特に焦点位置が結晶の中心にある場合には、位相不整合量Δkの正・負によって次式(3)のような簡単な式で表すことができる。
【数3】

ここで、ZRはレイリー長と称されるレーザの集光度合いの目安として用いられる長さであり、ビーム径がビームウェストの21/2倍になるまでの距離である。
【0013】
このように位相不整合量Δkが正の場合には結晶の内部から2次の非線形光学効果による光は発生しないが、位相不整合量Δkが負の場合には結晶の内部から所定強度の光が発生することが図1に示す実験結果からもみてとれる。なお、この図1は、結晶内における焦点位置と当該焦点位置より発生したSH波の強度の関係を示すグラフであり、(a)はΔk>0となる成分を観察した場合を示し、(b)はΔk<0となる成分を観察した場合を示している。図1(a)においては、SH波が強く発生している(極大点を示す)焦点位置が結晶表面に対応しており、結晶の内部からはSH波が発生していないことがわかる。一方、図1(b)では、結晶表面からだけではなく内部からもSH波が強く発生していることがわかる。
【0014】
結晶の内部構造(分域構造)を3次元的に観察するためには、結晶の表面からだけではなく、結晶の内部からも同程度の強度を持った2次の非線形光学効果による光を発生させる必要がある。しかしながら、従来のSHG顕微鏡では複屈折の小さい結晶のように位相不整合量Δkが入射、射出光の偏光方向によらず常に正となる結晶や、位相不整合量Δkが負となる成分を持つが、負となる成分では観察に適さない形状の結晶もあり、従来の顕微鏡では結晶の内部構造を明確に観察することが困難であった。
【0015】
そこで、位相不整合量Δkを常に負の値にすることができれば、結晶内部から2次の非線形光学効果による所定強度の光を常に発生させることが可能になり、結晶の内部構造を明確に観察することができる。そこで、本実施形態では位相不整合量Δkの符号を負にする手段として、相互に角振動数の異なる2つの光を照射したときに2次の非線形光学効果によって発生する差周波を用いる。まず、和周波の場合の位相不整合量Δkを考えると、式(1)は、
【数4】

と記述でき、基本波(ω1およびω2)と和周波(ω3)とが正常光および異常光のうちの一方の成分のみを用いている場合、または複屈折の小さい結晶の場合には常に位相不整合量Δk>0となることがわかる。なお、式(4)において、λを角振動数ωでの波長とし、n(ωi)を角振動数ωでの屈折率としている(以下の式においても同様とする)。
【0016】
続いて差周波の場合の位相不整合量Δkを考えると、ω1<ω3<ω2の場合、式(2)は、
【数5】

と記述できる。一方、ω3<ω1<ω2の場合、式(2)は、
【数6】

と記述できる。式(5),(6)から和周波では負にすることができなかった場合にも、差周波ではΔkを負にすることが可能となる。
【0017】
以上説明した原理に基づいて、観察試料である結晶の内部構造観察を行うための具体的な顕微鏡装置構成について、3つの実施形態を例示して説明する。なお、以下の説明は、本発明の実施形態を説明するものであり、当然ながら本発明が以下の実施形態に限定されるものではない。
【0018】
まず、第1の実施形態に係る顕微鏡装置1の概要構成図を図2に示している。この顕微鏡装置(共焦点顕微鏡)1は、レーザ光源10、レンズ11,13,15、波長変換光学素子12,14、波長板16、ダイクロイックミラー21、ミラー22,23、対物レンズ30、コンデンサレンズ32、検光子33、分光器34、結像レンズ35、ピンホール36、光検出器37、制御部40、および表示部50を主体に構成されている。
【0019】
このような構成の顕微鏡装置1において、レーザ光源10から射出された角振動数ωのレーザ光(1倍波)は、レンズ11により波長変換光学素子12に集光入射され、第2高調波発生(SHG)によって角振動数が2倍となる2ωのSH波(2倍波)に変換される。波長変換光学素子12により発生された2倍波(2ω)、および波長変換光学素子12を透過したレーザ光(ω)は、レンズ13により波長変換光学素子14に集光入射され、和周波発生(ω+2ω)により角振動がレーザ光(ω)の3倍(3ω)となる3倍波が発生される。これらの波長変換光学素子12,14は、例えば、2倍波発生用の波長変換光学素子12としてPPLN結晶、3倍波発生用の波長変換光学素子14としてLBO結晶が例示される。
【0020】
波長変換光学素子14により発生された3倍波とこの波長変換光学素子14を透過した1倍波および2倍波は、レンズ15を介して波長板16に入射する。波長板16は2倍波にはλ/2板、3倍波にはλ板としての効果を有しており、入射した2倍波および3倍波の偏光方向を揃えることができる。
【0021】
波長板16を通過した1倍波、2倍波および3倍波は、ダイクロイックミラー21に入射する。ダイクロイックミラー21は、1倍波の波長帯域の光を透過し、2倍波および3倍波の波長帯域の光を反射するように構成されており、このダイクロイックミラー21に入射した1倍波、2倍波および3倍波はここで分離される。
【0022】
ダイクロイックミラー21で反射された2倍波および3倍波は、ミラー22,23で順に反射された後、その光路上に設けられた対物レンズ30によって集光されて観察試料31を照射し、この観察試料(結晶)31による2次の非線形光学効果として、2倍波と3倍波による差周波発生(3ω−2ω)が行われて差周波(ω)が発生されるとともに、2倍波と3倍波による和周波発生(2ω+3ω)が行われて5倍波(5ω)が発生される。
【0023】
なお、観察試料31は、詳細図示を省略するステージ(XYZステージ)によって、3次元方向に移動自在に保持されており、このステージが制御部40によって駆動されることにより、対物レンズ30の光軸と直交する面内(XY方向)において自在に移動したり、対物レンズ30の光軸方向(Z方向)において自在に移動したりすることができる。すなわち、観察試料31中の焦点位置を、対物レンズ30の光軸方向と直交する面内方向に移動させる走査と、当該光軸方向に沿って移動させる走査とを繰り返すことで、観察試料31の三次元観察が可能となる。
【0024】
観察試料31により発生された差周波および5倍波と、この観察試料31を透過した2倍波および3倍波は、コンデンサレンズ32によって集められた上で、検光子33で任意の偏光方向のみが取り出され、分光器34によって角振動数ωの光(観察試料31から発せられた差周波)のみが分離されて結像レンズ35を介してピンホール36に入射する。ピンホール36は、対物レンズ30の焦点位置と光学的に共役な位置に配設されているため、対物レンズ30によって観察試料31内に集光された光の焦点位置で差周波発生された角振動数ωの光のみを通過させる。
【0025】
ピンホール36を通過した光は、光検出器37に入射する。光検出器37は、例えば光電子倍増管などのポイントセンサであり、受光した光強度を電気信号(光電変換信号)に変換して制御部40に送出する。
【0026】
制御部40は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リード・オンリ・メモリ)、RAM(ランダム・アクセス・メモリ)等からなる所謂マイクロコンピュータを有して構成されており、顕微鏡装置1全体の作動を統括的に制御する。制御部40は、光検出器37から受信した電気信号をA/D変換してデジタル信号化する。このデジタルデータを、ステージによる光軸と直行する面内方向への走査(XY方向への走査)と同期して2次元に配置することで、制御部40は焦点位置のみの情報を持つ2次元画像データ(共焦点画像データ)を取得することができる。
【0027】
制御部40は、上記のように2次元画像データを取得した後、ステージに光軸方向へ一定量(所定のサンプリング間隔)移動する命令を伝達することで、観察試料31と対物レンズ30との相対位置を変化させて、観察試料31内における焦点位置を光軸に沿って変化させる。この移動が完了した後、2次元画像データ取得を行うことで焦点位置の異なる2次元画像データを取得することができる。
【0028】
このように、XY方向およびZ方向の走査を繰り返しつつ2次元画像データを取得することで、焦点位置の異なる複数の2次元画像データを取得することができる。対物レンズ30から射出された光の焦点位置は不変であり、観察試料31と対物レンズ30との相対位置が変化すると、相対的に観察試料31内での焦点位置が変化する。その結果、取得されたそれぞれの2次元画像データは、それぞれの観察試料31の位置に対応した焦点位置において発生した差周波ωの情報を持つ2次元画像データとなり、制御部40のメモリ(RAM)に記憶される。表示部50はCRTモニタ、液晶ディスプレイ等のモニタを有して構成されており、制御部40がメモリに記憶された2次元画像データを画像処理し、表示部50のモニタに2次元画像表示、あるいは3次元画像表示させることで、観察試料31の拡大像を観察することができる。
【0029】
このように構成される本実施形態の顕微鏡装置1によれば、異なる角振動数の光を観察試料31たる結晶に照射したときに、この結晶の非線形光学効果によって発生する差周波を観察光として利用することで、従来のSHG顕微鏡では検出することができなかった結晶内部からも観察光(差周波)を所定強度以上で発生させて検出することが可能になるため、結晶の三次元形状を高精度に構築することができる。そのため、結晶の分域構造を明確に観察することが可能になる。また、共焦点光学系において対物レンズ30と光学的に共役な位置にピンホール36を配設することで、結晶内の合焦点位置で発生する差周波のみを効率よく検出することができるため、コントラストの高い画像を生成することが可能になる。
【0030】
次に、第2の実施形態に係る顕微鏡装置について説明する。この第2の実施形態に係る顕微鏡装置2の概要構成図を図3に示している。顕微鏡装置2は、観察試料31として結晶の反平行分域構造を観察するために適した共焦点光学系を有している。なお、この実施形態においては、第1の実施形態と同一態様の要素構成については同一の符号を付して重複説明を省略し、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0031】
この顕微鏡装置(共焦点顕微鏡)2は、レーザ光源10、レンズ11,13,15、波長変換光学素子12,14、波長板16、ミラー22,23,60,62、ダイクロイックミラー61,76、光減衰器70、1/2λ板74、ガラスプレート75,75、対物レンズ30、コンデンサレンズ32、検光子33、分光器34、結像レンズ35、ピンホール36、光検出器37、制御部40、および表示部50を主体に構成されている。
【0032】
本実施形態が上記第1の実施形態と異なるところは、上記第1の実施形態では観察標本31より発生した差周波を観察光として利用したが、本実施形態では観察標本31より発生した差周波と波長変換光学素子12,14を透過した1倍波(参照波)とを干渉させた干渉光を観察光として利用する点である。
【0033】
このような構成の顕微鏡装置2において、レーザ光源10から射出された角振動数ωのレーザ光(1倍波)は、レンズ11により波長変換光学素子12に集光入射され、第2高調波発生(SHG)によって角振動数が2倍となる2ωのSH波(2倍波)に変換される。波長変換光学素子12により発生された2倍波(2ω)、および波長変換光学素子12を透過したレーザ光(ω)は、レンズ13により波長変換光学素子14に集光入射され、和周波発生(ω+2ω)により角振動数が3倍(3ω)となる3倍波が発生される。
【0034】
波長変換光学素子14により発生された3倍波とこの波長変換光学素子14を透過した1倍波および2倍波はレンズ15を介して波長板16に入射する。波長板16を通過した1倍波、2倍波および3倍波は、ミラー60で反射されダイクロイックミラー61に入射する。
【0035】
ダイクロイックミラー61を透過した2倍波および3倍波の光は、ミラー22で反射された後、ダイクロイックミラー76に入射する。
【0036】
一方、ダイクロイックミラー61によって反射された1倍波の光は、ミラー62で反射された後、光減衰器70と1/2λ板74を透過することで、観察試料(結晶)31から発生する差周波(ω)と同じ偏光状態に変換される。
【0037】
1/2λ板74を透過した光は、詳細は後述する一対のガラスプレート75,75を通過し、ダイクロイックミラー76に入射する。ダイクロイックミラー76は、2倍波および3倍波の波長帯域の光を透過し、1倍波の波長帯域の光を反射するように構成されており、ビームスプリッタ61を透過してダイクロイックミラー76に入射する2倍波および3倍波と、偏光方向と強度を調整された1倍波(参照波)とが同軸上に合成される。
【0038】
このように同軸上に合成された光束は、ミラー23によって反射された後、その光路上に設けられた対物レンズ30によって集光されて観察試料31を照射し、この観察試料(結晶)31による2次の非線形光学効果として、2倍波と3倍波による差周波発生(3ω−2ω)が行われて差周波(ω)が発生されるとともに、2倍波と3倍波による和周波発生(2ω+3ω)が行われて5倍波(5ω)が発生される。
【0039】
観察試料31により発生された差周波および5倍波と、この観察試料31を透過した参照波、2倍波および3倍波は、コンデンサレンズ32によって集められた上で、検光子33で任意の偏光方向のみが取り出され、分光器34によって角振動数ωの光(観察試料31により発生された差周波と参照波)のみが分離されて結像レンズ35を介してピンホール36に入射する。ピンホール36は、対物レンズ30の焦点位置と光学的に共役な位置に配置されているため、対物レンズ30によって観察試料31内に集光された光の焦点位置で差周波発生された角振動数ωの光と、焦点の合った参照波のみを通過させる。
【0040】
ピンホール36を通過した光(観察試料31により発生された角振動数ωの光、および参照波)は、光検出器37に入射してその検出面上に結像され、その位相差に応じた干渉像を生成する。ここで、反平行分域構造を持つ観察試料31から発生する2次の非線形光学効果による光の位相は分域ごとに180°異なるため、観察試料31から発生する角振動数ωの光と参照波とを干渉させると、一方の分域では強めあい、他方の分域では弱めあった角振動数ωの干渉光を検出することができる。そこで、ステージにより観察試料31を走査すると、この光強度のコントラストによって観察試料(結晶)の反平行分域構造を観察することができる。
【0041】
このとき干渉光の光強度は、観察試料31から発生した光の強度ψsample、参照波の強度ψrefを次式(7)および(8)のように定義すると、次式(9)のように表すことができる。
【数7】

【数8】

【数9】

【0042】
式(9)から干渉光の強度は焦点位置z、および2つの光(ψsampleとψref)の相対位相差Δφに依存することがわかる。つまり、結晶の反平行分域構造を観察するためには、式(9)に示す干渉光の強度が最大または最小となるように焦点位置zを選んで観察を行う、あるいは当該焦点位置zに応じて光の相対位相差Δφを変化させる位相変調手段を設ける必要がある。この位相変調手段としては、例えば上述した一対のガラスプレート75,75が例示される。これら一対のガラスプレート75,75は、それぞれ同じ材質および大きさの平行平板から形成されており、この紙面(図3の紙面)に直交する軸を中心軸として対称形(八の字形)を保持しつつ互いに逆方向に回転させることで、光軸のシフトを防止しながら2つの光の相対位相差Δφ(光路長)を任意に変化させることが可能である。なお、相対位相差Δφの調整は、例えば、制御部40が光検出器37により検出される干渉光の光強度をモニタリングにしつつ、この光強度が最大または最小となるように一対のガラスプレート75,75の回転角度を制御することにより行われる。
【0043】
また、上述した光減衰器70によって参照波の光量(強度)を調節することで、参照波の角振動数ωの光強度と、観察試料31から発生する角振動数ωの光強度とを等しく調整することも最大コントラストを得るためには重要である。このようにコントラストを向上させることで、結晶の反平行分域構造をより明確に観察することが可能となる。
【0044】
光検出器37は、この干渉像情報を出力信号(電気信号)として制御部40に送出する。制御部40は、受信した電気信号をデジタルデータにA/D変換し、2次元画像データ(共焦点画像データ)を取得する。また、制御部40は、ステージの走査に伴って焦点位置の異なる複数の2次元画像データを取得し、この2次元画像データを観察試料31内におけるスキャン位置と対応させてメモリに記憶する。また、メモリに記憶された2次元画像データを制御部40で画像処理し、表示部50のモニタに2次元画像表示、あるいは3次元画像表示して拡大像を観察することができる。
【0045】
このように構成される第2の実施形態の顕微鏡装置2によれば、異なる角振動数の光を観察試料たる結晶に照射したときに、この結晶の非線形光学効果によって発生する差周波と参照波との干渉光を観察光として利用することで、結晶構造によらず観察光(干渉光)を常に所定強度以上で発生させて検出することが可能になるため、結晶の三次元形状を高精度に構築することができる。そのため、第1の実施形態と同様に、結晶の分域構造(この第2の実施形態では、特に反平行分域構造)を的確に観察することが可能になる。
【0046】
続いて、このように構成される顕微鏡装置2を用いて観察試料31を観察する方法について、図4に示すフローチャートを追加参照して説明する。
【0047】
ステップS101において、まずユーザ(観察者)によって顕微鏡装置2の電源が投入される。ステップS102では、ユーザによって観察試料31が顕微鏡装置2のステージに固定される。ステップS103において、制御部40は、ステージに内蔵されたリニアエンコーダ(図示せず)等によってステージ位置を検出する。
【0048】
ステップS104において、ユーザによって観察試料31における仮のスキャン領域が制御部40の入力装置(キーボードやマウス等)によって設定される。ステップS105では、制御部40によりステージが駆動され、上記仮スキャン領域内において対物レンズ30と観察試料31との相対位置を変化させて、観察試料31の深さ方向(対物レンズ30の光軸方向)にスキャンを実行する。
【0049】
ステップS106では、制御部40によってステップS105で得られた計測結果により、観察試料31の位置が把握されるとともに、干渉光の周期などの初期情報が算出される。ステップS107において、ユーザによって、観察試料31に対するスキャン領域やスキャン幅(サンプリング間隔)が上記入力装置を用いて設定される。これにより、顕微鏡装置2は観察試料31に対応する測定プログラム(測定レシピ)に従って作動することが可能な状態となる。
【0050】
ステップS108において、制御部40は測定プログラムに従って、ステージを駆動して対物レンズ30と観察試料31との相対位置を変化させて、観察試料31内における焦点位置を変更する(最初は対物レンズ30の焦点位置を観察試料31における測定開始点に位置決めする)。ステップS109では、制御部40によってガラスプレート75,75が回転駆動されて、上記ステップS106で取得した干渉光の周期情報等に基づいて相対位相差Δφが変更され、ステップS110において、制御部40は光検出器37によって検出される光強度をモニタリングしつつ相対位相差Δφが最適であるか否か、すなわち、干渉光の強度が最大または最小となる相対位相差Δφであるか否かを判定する。ステップS110において否定判定がされると、S111において、制御部40は、相対位相差Δφが干渉光の強度最大または最小となる最適値に調整されるまで上記ステップS109〜S110を繰り返す。
【0051】
ステップS110において肯定判定がされると、ステップS112において、XY方向(対物レンズ30の光軸に直交する面内方向)に2次元スキャンして、2次元画像データを取得する。ステップS113において、制御部40は、取得した2次元画像データを、上記エンコーダ等により検出されたスキャン位置と対応させてメモリに記憶させるとともに、この2次元画像データを画像処理して表示部50のモニタに2次元画像を表示させる。
【0052】
ステップS114において、ステップS107で設定されたスキャン領域の全域においてスキャンが完了したか否かが判定され、ここで否定判定がされた場合には、観察試料31内の焦点位置が変更されステップS108〜S113が再び実行される。
【0053】
ステップS114で肯定判定がされると、ステップS115において、制御部40によって焦点位置ごとの2次元画像が画像処理によって繋げられ、観察試料31の3次元画像データが生成される。ステップS116では、制御部40によって、三次元画像データがメモリに記憶されるとともに、この三次元画像データを画像処理して表示部50のモニタに観察試料31の三次元画像を表示する。そして、ユーザはこの三次元画像から観察試料31(結晶の分域構造等)を観察することができる。
【0054】
ステップS117において、観察試料31を変更して再び観察を実行する場合にはステップS102に移行する。また、ステップS118において、これまで実行された観察条件を変更して観察を行う場合には、ステップS104に移行して、ユーザによって観察条件が変更された上で、顕微鏡装置2による観察が再び実行される。
【0055】
ところで、上記第2の実施形態の顕微鏡装置2において、参照波の光強度が観察試料31から発生する光強度に比べて十分大きく、光減衰器70で減衰しきれない場合には、図5に示すような顕微鏡装置102として構成することも考えられる。
【0056】
この顕微鏡装置(共焦点顕微鏡)102は、レーザ光源10、レンズ11,13,15、波長変換光学素子12,14、波長板16、ダイクロイックミラー21,76、ミラー22,23,62、1/2λ板63,74、偏光ビームスプリッタ64、レンズ71,73、参照板72、ガラスプレート75,75、対物レンズ30、コンデンサレンズ32、検光子33、分光器34、結像レンズ35、ピンホール36、光検出器37、制御部40、および表示部50を主体に構成されている。前述の構成の顕微鏡装置2とは異なり、ダイクロイックミラー21によって分離された2倍波および3倍波は、1/2λ板63を透過することで偏光状態を変化させ、偏光ビームスプリッタ64に入射する。
【0057】
ビームスプリッタ64は、1/2λ板63を透過した光のうち、特定の偏光成分のみを選択的に反射し、その他の偏光成分を透過する。ビームスプリッタ64を透過した偏光成分の光(2倍波および3倍波)は、ミラー22で反射された後、ダイクロイックミラー76に入射する。
【0058】
一方、ビームスプリッタ64によって反射された偏光成分の光(2倍波および3倍波)は、ミラー62で反射された後、レンズ71により参照板72に集光入射され、差周波発生(3ω−2ω)によって角振動数ωの光に変換される。この参照板72は、非線形光学結晶からなり、均一な差周波を発生するように構成されている。参照板72により発生した光は、レンズ73を介して1/2λ板74を透過することで観察試料(結晶)31から発生する差周波(ω)と同じ偏光状態に変換され、参照波となる。
【0059】
このように顕微鏡装置102においては、参照波の光強度が観察試料31から発生する光強度に比べて十分大きく、光減衰器70で減衰しきれない場合には、上述した1/2λ板63によってダイクロイックミラー21からの光の偏光状態を変化させ、偏光ビームスプリッタ64による透過光および反射光の光量(強度)を調節し、参照板72から発生する角振動数ωの光を利用することで最大コントラストを得ることが可能となる。
【0060】
次に、第3の実施形態に係る顕微鏡装置について説明する。この第3の実施形態に係る顕微鏡装置3の概要構成図を図6に示している。なお、この実施形態においては、第2の実施形態と同一態様の要素構成については同一の符号を付して重複説明を省略し、第2の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0061】
この顕微鏡装置(共焦点顕微鏡)3は、レーザ光源10、レンズ11,13,15、波長変換光学素子12,14、波長板16、ミラー22,60,62、ダイクロイックミラー61,76、光減衰器70、1/2λ板74、ガラスプレート75,75、ハーフミラー80、対物レンズ30、検光子33、分光器34、結像レンズ35、ピンホール36、光検出器37、制御部40、および表示部50を主体に構成されている。
【0062】
本実施形態が上記第2の実施形態と異なるところは、上記第2の実施形態では透過型の共焦点光学系が構成されているのに対して、本実施形態では反射型の共焦点光学系が構成されている点である。そのため、この顕微鏡装置3では、ダイクロイックミラー76から検光子33までの光路が第2の実施形態の顕微鏡装置2と異なる構成となっている。本実施形態では、例えば、不透明な観察試料(非線形光学素子)や、所定の反射率を有した基板上に接着された結晶等の観察に特に効果的である。
【0063】
このような構成の顕微鏡装置3において、ダイクロイックミラー76によって同軸上に合成された光束は、ハーフミラー80により反射された後、その光路上に設けられた対物レンズ30によって集光されて観察試料31を照射し、この観察試料(結晶)31による2次の非線形光学効果として、2倍波と3倍波による差周波発生(3ω−2ω)が行われて差周波(ω)が発生されるとともに、2倍波と3倍波による和周波発生(2ω+3ω)が行われて5倍波(5ω)が発生される。
【0064】
ここで前述したように、例えば観察試料31が不透明な基板(所定の反射率の表面を有する基板)31bに接着された結晶31aである場合には、観察試料31に入射した参照波、2倍波および3倍波と、この観察試料31により発生された差周波および5倍波は、基板31b表面(結晶31aと基板31bとの境界面)で反射されて、対物レンズ30を再び通過する。対物レンズ30によって集光された光は、ハーフミラー80を透過した後、検光子33で任意の偏光方向のみが取り出され、分光器34によって角振動数ωの光(観察試料31により発生された差周波と、参照板72により発生され観察試料31で反射された差周波)のみが分離されて結像レンズ35を介してピンホール36に入射する。ピンホール36は、対物レンズ30の焦点位置と光学的に共役な位置に配設されているため、対物レンズ30によって観察試料31内に集光された光の焦点位置で差周波発生された角振動数ωの光と焦点の合った参照波のみを通過させる。
【0065】
ピンホール36を通過した光(観察試料31により発生された角振動数ωの光、および参照波)は、光検出器37に入射してその検出面上に結像され、その位相差に応じた干渉像が形成される。光検出器37は、この干渉像情報を出力信号(電気信号)として制御部40に送出する。
【0066】
制御部40は、受信した電気信号をデジタルデータにA/D変換し、2次元画像データ(共焦点画像データ)を取得する。制御部40は、ステージの走査に伴って焦点位置の異なる複数の2次元画像データを取得し、この2次元画像データを観察試料31内におけるスキャン位置と対応させてメモリに記憶する。また、メモリに記憶された2次元画像データを制御部で画像処理し、表示部50のモニタに2次元画像表示、あるいは3次元画像表示して拡大像を観察することができる。
【0067】
このように構成される第3の実施形態の顕微鏡装置3によれば、異なる角振動数の光を観察試料たる結晶に照射したときに、この結晶の非線形光学効果によって発生する差周波と参照波との干渉光を観察光として利用することで、結晶構造によらず観察光(干渉光)を常に所定強度以上で発生させて検出することが可能になるため、結晶の三次元形状を高精度に構築することができる。そのため、第1の実施形態と同様に、結晶の分域構造を的確に観察することが可能になる。特に、この第3の実施形態では、反射型の共焦点光学系で構成しているため、所定の反射率を有する基板(例えば、シリコン基板など)上に接合された非線形光学デバイスの観察などに広く適用可能である。
【0068】
次に、2次の非線形光学効果を用いた上記実施形態の顕微鏡装置による分域構造の観察例として、擬似位相整合素子を観察標本として適用する場合を例示して説明する。
【0069】
擬似位相整合(「QPM」とも称される)とは、強誘電体の分域の向きを周期的に反転させ、それによりd定数(非線形光学定数)の符号を反転させることを利用した位相整合であり、レーザ光の波長変換技術として広く用いられている。従来から波長変換の方法としては、屈折率の異方性と波長分散を利用する方法が最も一般的であり、このように位相整合条件を満足するために結晶の光学軸に対して基本波の入射角を調整する位相整合を角度位相整合と称している。しかしながらこの方法では、屈折率が温度依存性を有していることなどから、特定の温度と波長域でしか実現することができず、複屈折率の小さい材料では位相整合が実現できないといった欠点がある。また、最大成分のd定数を利用できないこともあるため、高効率で波長変換することができないという問題もある。このような不具合を是正する方法として近年では、擬似位相整合素子の研究がレーザの短波長化の要求とともに注目されている。
【0070】
従来、このような素子を評価するとき、通常は分域の向きによって腐食速度が異なることを利用して、酸(硝酸やフッ酸など)によって化学的に素子表面をエッチングして観察を行っていた。ところが、この方法では素子を損傷させてしまうという欠点があり、しかも従来の光学顕微鏡では素子表面の分域構造しか観察することができない。また、SHG干渉顕微鏡を用いて非破壊観察の研究がなされているが、素子内部の分域構造の観察には未だ至ってない。
【0071】
ここで、擬似位相整合素子の構造の一例を図7に示す。なお、この素子の材料としては、擬似位相整合素子として最も広く研究されているニオブ酸リチウム(LiNbO3),タンタル酸リチウム(LiTaO3)などが例示される。
【0072】
擬似位相整合素子90は、図7に示すように、分域の向きが反平行になるように並べられた反平行分域構造(180°分域構造)を有している。この反平行分域構造の周期は使用波長によって異なるが、およそ数μm〜数十μmの周期で作製されている。この擬似位相整合素子を波長変換光学素子として使用する場合には、高い波長変換効率を実現するために最大のd定数の成分(この場合はd33成分)を利用し光路を長くすることが望ましい。つまりレーザ光を図7に示すx方向に進行させる。これに対して、上記実施形態の顕微鏡装置を用いて反平行分域構造を観察する場合には、基本波レーザ光を当該素子内で強く集光させたときに出力光の拡がりの影響を抑えるために、図7に示すz方向に進行させるのが素子の形状からも適している。つまり、この擬似位相整合素子では、2次の非線形光学効果により発生されるd22成分の差周波を検出することで、その反平行分域構造を非破壊的に精度よく観察することが可能になる。
【0073】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。例えば、上述の実施形態では基本波と2次の非線形光学効果によって発生する差周波とが同一方向(コリニアー)に進行する場合を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、図8に例示するような非コリニアー配置の場合でも観察試料31より発する差周波を検出することで位相不整合量Δkを負にすることが可能であるため、本発明を適用することができる。
【0074】
また、上述の実施形態において、角振動数2ω,3ωの高調波によって観察試料(非線形光学結晶)から差周波ωを発生させた場合を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、波長変換素子として光パラメトリック発振器を用いる構成であってもよい。光パラメトリック発振とは、ポンピング光ωpの高エネルギーフォトン1個を吸収して、シグナル光ωsとアイドラー光ωiの2個の低エネルギーフォトンを放出する過程である。例えば角度位相整合を利用して温度と角度をチューニングすることで任意の波長を連続的に発生させることができるので、任意の波長の差周波を検出することも可能となる。
【0075】
また、上述の実施形態において、観察試料31に対する対物レンズ30の焦点位置を走査する光走査手段(光走査部)をXYZステージにより構成した場合を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、対物レンズ30の光軸に直交する面内方向への走査(XY走査)はガルバノミラー等からなる2次元スキャナであってもよい。一方、対物レンズ30の光軸方向への走査(Z走査)はピエゾ素子を駆動機構として対物レンズ30自体を観察試料31に対して相対移動させてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1,2,3 顕微鏡装置 10 レーザ光源
12 波長変換光学素子(波長変換部) 14 波長変換光学素子(波長変換部)
30 対物レンズ 31 観察試料
32 コンデンサレンズ 34 分光器(光抽出部)
35 結像レンズ 37 光検出器(光検出部)
40 制御部(作動制御部) 61 ダイクロイックミラー(光路分割部)
64 偏光ビームスプリッタ(光路分割部) 72 参照板
75 ガラスプレート(位相変調部) 90 擬似位相整合素子(観察試料)
102 顕微鏡装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源と、
前記レーザ光源からの光を波長変換して相互に角振動数の異なる2以上の光として射出する波長変換部と、
前記波長変換部から射出された各々の光を観察試料が受光することで生じる2次の非線形光学効果によって発生する所定角振動数の光を集めるコンデンサレンズと、
前記2次の非線形光学効果によって発生する光の中から前記所定角振動数の光を抽出する光抽出部と、
前記光抽出部により抽出された光を結像させる結像レンズと、
前記結像レンズにより結像された前記所定角振動数の光の強度を検出する光検出部とを備えて構成されることを特徴とする顕微鏡装置。
【請求項2】
前記波長変換部から射出された各々の光を集光する集光レンズと、
前記観察試料に対する前記対物レンズの焦点位置を相対的に変化させる光走査部と、
前記対物レンズの焦点位置と光学的に共役な位置に配置されるピンホールとを更に備え、
前記光検出部が、前記ピンホールを通過した前記所定角振動数の光の強度を検出することを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項3】
波長変換部からの光を参照波と基本波とに分離して、前記基本波を受光することで前記観察試料から発生する前記所定振動数の光と前記参照波とを干渉させて、当該干渉光の強度を前記光検出部により検出することを特徴とする請求項1または2に記載の顕微鏡装置。
【請求項4】
前記波長変換部からの基本波を受光して2次の非線形光学効果により前記所定角振動数と同一角振動数の参照波を一様に発生する参照板を更に備え、
前記観察試料と前記参照板との各々から発生する前記所定角振動数の光を干渉させて、当該干渉光の強度を前記光検出部により検出することを特徴とする請求項1または2に記載の顕微鏡装置。
【請求項5】
前記観察試料から2次の非線形光学効果により発生した前記所定角振動数の光と前記参照波との強度差を調節するために、前記波長変換部から前記観察試料までの光路を複数に分割する光路分割部を更に備えて構成されることを特徴とする請求項3または4に記載の顕微鏡装置。
【請求項6】
前記観察試料から2次の非線形光学効果により発生した前記所定角振動数の光と前記参照波との位相差を調節する位相変調部を更に備えて構成されることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の顕微鏡装置。
【請求項7】
前記位相変調部が、前記光路分割部により分割された複数の光路上のうちのいずれかに配置されていることを特徴とする請求項6に記載の顕微鏡装置。
【請求項8】
前記観察試料に対する前記対物レンズの焦点位置に応じて、前記位相変調部の作動を制御する作動制御部を更に備え、
前記作動制御部は、前記光検出器による干渉光の強度情報をモニタリングしながら前記位相変調部の作動を制御し、干渉光の光強度が最大または最小となるように前記観察試料と前記参照板との各々から発生した前記所定角振動数の光の位相差を調節することを特徴とする請求項6または7に記載の顕微鏡装置。
【請求項9】
前記観察試料と前記参照板との各々から発生した前記所定角振動数の光は、前記観察試料と前記参照板とで生じる2次の非線形光学効果として、2つの角振動数の異なる光が入射されることにより発生する差周波の光であることあることを特徴とする請求項4〜8のいずれかに記載の顕微鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−99912(P2011−99912A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253059(P2009−253059)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】