説明

風力を利用した揚水装置

【課題】 風による風車の回転力を弾性エネルギーに変換し、蓄積することで風力発電装置と揚水ポンプの両方の機能を持たせる。
【解決手段】 風による風車の回転力を歯車を介して回転させることにより、風車の回転力が小さい場合でもシリンダー23を巻き上げられるため、小さな風力を弾性エネルギーとして蓄積できる。蓄積された弾性エネルギーを弾性部材25の反発力として開放し、シリンダー23を押し下げることで揚水装置11内の雨水等の揚水を行うことを特徴とする。また、蓄積された弾性エネルギーを解放する手段を水圧で行い、回転力を再び伝達する手段を弾性部材の反発力で行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風による風車の回転力を弾性エネルギーに置き換え、蓄積することで得られた弾性力を利用して貯水槽内の雨水等を揚水する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、風力を利用して揚水する場合、風力によるエネルギーを電力に置き換え、蓄電して揚水ポンプを稼動させる方法が使用されている。しかしながら、その方法では、風力発電装置、蓄電池、揚水ポンプなどの設備が必要となるため、構造が複雑で高価なものである。
【0003】
風力を一定の力として利用するためには、風による風車の回転力を電力などのエネルギーに変換して蓄積する必要がある。
【0004】
住宅に設置することの多い風車直径70cm程度の風力発電機では、風速10m/sの時の定格出力が70W程度であるため、日本の平均的な風速では、十分な電力を蓄積することができず、定格出力を上げるためにはより大きな風車を使用し、大きな設置場所を必要とするものである。
【0005】
貯水槽内の雨水等の揚水を開始する手段が、人為的もしくは、電気信号によるものである。
【0006】
なお、本願発明に関連する公知技術として次の特許文献1,2を挙げることができる。
【0007】
【特許文献1】特許公開平11−4632号
【特許文献2】特許公開2001−28847号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の如く、従来技術に係る風力を利用した揚水装置では、構造が複雑で高価な上、十分な揚水能力を確保することが難しい。
【0009】
本発明は、このような点に鑑み成されたものであり、その目的は、風力を利用して貯水された雨水等の植物への散水・水補給、屋根面への散水を行うようにした揚水装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成する本発明の風力を利用した揚水装置は、風の回転力を歯車を利用して上下方向の力に変換し弾性エネルギーとして蓄積する。一定の弾性力が蓄積した段階で弾性力を開放し、その力でタンク内の雨水等を揚水することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本発明によれば、風力発電装置や揚水ポンプを利用せずに揚水ができる上、歯車の組み合わせで風速の小さい場合でも風による風車の回転力を弾性エネルギーとして蓄積できるため風力の利用に極めて有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0013】
図1〜図2−3は本発明の第一の実施の形態に係り、図1は揚水装置全体図、図2−1は揚水装置(揚水時)、図2−2は揚水装置(貯水時),図2−3は揚水装置(満水時)の作動図である。
【0014】
図1に示すように、風による風車の回転力で歯車22を回転させることによりシリンダー23を巻き上げ、風力を弾性エネルギーに変換して蓄積する。蓄積した弾性エネルギーを開放することでシリンダー23を押し下げ、その圧力で揚水装置11内の雨水等を揚水できるようにしたものである。
【0015】
図2−1〜図2−3は、揚水装置の作動例を示したもので、風車21が風力により回転することで歯車22が回転しシリンダー23を巻き上げる。シリンダーが巻き上げられることにより流量調整タンク12より雨水等が連通管の原理で揚水装置11に雨水等が供給される(図2−2)。揚水装置11が定量になると水圧により流量調整フロート27がピストン26を持ち上げ、歯車解除レバー24を押し上げ、テコの利用で伝達歯車31を押し下げる。シリンダー23に回転力を伝達していた歯車が自由回転の状態になり弾性部材25がシリンダーを押し下げることにより揚水装置11に貯水された雨水等が揚水パイプ14より散水できるようにしたものである。
【実施例】
【0016】
図1の貯水槽13の雨水等をバルブ16で流量調整して流量調整タンク12に供給し、連通管の原理で揚水装置11に雨水等を供給する。流量調整バルブ16で流量を調整することにより揚水装置11への雨水等の供給量が調整され揚水時間の調整が可能な上、ピストン26の支持棒の長さを調整することで流水量を調整することが可能になる。揚水装置11に貯水された雨水等は、上述の機構により揚水パイプ14より揚水・散水される。
【0017】
風が強く、揚水装置11内の雨水等が定量になる前にシリンダー23が巻き上げられた状態では、流量調整フロート27がピストン26を持ち上げないため伝達歯車31が解除されず、揚水装置11内の雨水等は定量になるまで揚水されない。
【0018】
風が弱く、シリンダー23が巻き上げられる前に揚水装置11内のタンクが雨水で満たされた状態では、歯車解除レバー拘束バー28が歯車解除レバー24を拘束し伝達歯車31が解除されず、シリンダー23が巻き上げられるまで揚水されない。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、屋根散水による冷房負荷の削減のための機器、植物への散水、植物の水耕栽培機器の製造、販売する産業分野で利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】 本発明の第1の実施の形態に係る風力を利用した揚水装置の断面図である。
【図2−1】 図1の風力を利用した揚水装置の揚水時断面図である。
【図2−2】 図1の風力を利用した揚水装置の貯水時断面図である。
【図2−3】 図1の風力を利用した揚水装置の満水時断面図である。
【図3】 図2−1〜3の逆回転防止ピン詳細図である。
【図4】 図2−1〜3の歯車解除レバー拘束バー詳細図である。
【符号の説明】
【0021】
11、揚水装置本体
12、流量調整タンク
13、貯水槽
14、揚水パイプ
15、貯水パイプ
16、流量調整バルブ
21、風車
22、歯車
23、シリンダー
24、歯車解除レバー
25、弾性部材
26、ピストン
27、流量調整フロート
28、歯車解除レバー拘束バー
29、逆流防止弁
30、空気取り込み口フロート栓
31、伝達歯車
32、逆回転防止ピン
33、弾性部材
34、拘束バー固定ピン
35、弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
風による回転力を歯車を利用して上下方向の力に変換し、弾性エネルギーとして蓄積することで得られた反発力を利用して貯水槽内の雨水等を揚水することを特徴とする風力を利用した揚水装置。
【請求項2】
連通管の原理を利用して流量調整フロートを水圧で押し上げ、回転力を伝達する歯車を引き下げることでシリンダーに回転力を伝達していた歯車を自由回転させることを特徴とする請求項1記載の風力を利用した揚水装置。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−19620(P2009−19620A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−210429(P2007−210429)
【出願日】平成19年7月16日(2007.7.16)
【出願人】(504408823)
【Fターム(参考)】