説明

飛行場灯火監視制御システム

【課題】停止線灯や航空機センサを飛行場に設けることなく誘導路走行に関する走行方向ルート指示や安全ルート指示の情報を得ることができ、誘導路を走行する航空機へのより正確な視覚航行援助を行える飛行場灯火監視制御システムを提供することである。
【解決手段】飛行場の誘導路11に設けられた誘導路中心線灯12と、誘導路11近傍に位置する航空機13の位置を検出する航空機位置検出装置14と、航空機13の前方の誘導路中心線灯12と、航空機12の後方の所定の範囲の誘導路中心線灯13との明るさを異ならせて点灯制御する灯火制御装置15とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行場内の誘導路を走行する航空機を監視し、航空機の走行安全を確保するように誘導路中心線灯を点灯制御する飛行場灯火監視制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、誘導路を走行する航空機に対する走行ルート情報は、誘導路中心線灯の点灯消灯状態により監視制御しており、誘導路中心線灯の制御は飛行場灯火監視制御システムにより行われている。すなわち、飛行場灯火監視制御システムは、飛行場において航空機の航行の安全を第一の目的とした視覚援助施設の一部であり、誘導路へ整備された誘導路灯や誘導路中心線灯を点灯したり、消灯したりすることにより誘導路を走行する航空機への走行ルートの可否指示を行う。また、誘導灯や誘導路中心線灯の点灯状態においては明るさの調整も行う。
【0003】
飛行場灯火監視制御システムは、低視程時、つまり、夜間、降雨、濃霧等の視界不良時の飛行場運用には必要不可欠なシステムの一つであり、誘導路灯や誘導路中心線灯の点灯消灯制御には信頼性及び確実性が要求される。それ故、飛行場灯火監視制御システムの不備は、航空機のニアミス事故もしくは衝突事故の発生原因にもなりかねないため、飛行場運用に携わる操作員(管制官)の業務はそれだけ精神的にも厳しいものになっている。
【0004】
飛行場の灯火は、主に着陸してくる航空機のための滑走路側のものと、エプロン(ターミナル)から滑走路に向けて走行し離陸する航空機や、着陸後にエプロンに向けて走行するための誘導路側のものとに分けられる。灯火の数量は飛行場により様々ではあるが、通常、数百から数万にものぼる。
【0005】
通常、飛行場灯火監視制御システムでは、管制官が操作スイッチにより、滑走路の運用方向、背景輝度、雲底高、視程の4条件を選択することで、現在あるべき最適な灯火の状態になるように誘導灯や誘導灯中心線灯を制御している。例えば、背景輝度が「昼間」や「視程の悪い状態」や「雲底高が低い状態」では灯火を明るくし、逆に「夜間」や「視程が良い状態」や「雲底高が高い」状態では灯火を暗くする制御を行っている。その灯火の状態を基に、パイロットは航空機を航行または走行させる。
【0006】
ここで、誘導路を走行する航空機のパイロットは、誘導路上にて点灯または消灯している誘導路灯や誘導路中心線灯の状態の情報を基に、航空機を航行または走行させており、また、誘導灯や誘導路中心線灯は前述の4条件により点灯消灯されるので、航空機のパイロットは、誘導路灯や誘導路中心線灯の状態の情報だけからは、誘導路走行に関する走行方向ルート指示や安全ルート指示の情報を得ることができない。従って、航空機のパイロットは、正しい走行方向や安全な走行ルート指示を管制官から無線による音声指示から得ており、管制官の業務の軽減化が図れていない。
【0007】
そこで、誘導路に走行安全区間を考慮しつつ停止線灯を設置し、これら停止線灯の直近ライン上に航空機センサを設置し、これら航空機センサの航空機有無検知信号を判断し、航空機どうしの走行安全区間を確保するように各停止線灯を点灯・消灯制御を実施するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−44999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1のものでは、誘導路に走行安全区間を考慮しつつ停止線灯や航空機センサを設置しなければならないので、既存の飛行場に新たに停止線灯や航空機センサを設置する工事が必要となる。
【0009】
本発明の目的は、停止線灯や航空機センサを飛行場に設けることなく誘導路走行に関する走行方向ルート指示や安全ルート指示の情報を得ることができ、誘導路を走行する航空機へのより正確な視覚航行援助を行える飛行場灯火監視制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の飛行場灯火監視制御システムは、飛行場の誘導路に設けられた誘導路中心線灯と、前記誘導路近傍に位置する航空機の位置を検出する航空機位置検出装置と、前記航空機の前方の誘導路中心線灯と前記航空機の後方の所定の範囲の誘導路中心線灯との明るさを異ならせて点灯制御する灯火制御装置とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、誘導路近傍に位置する航空機の位置を検出し、航空機の前方の誘導路中心線灯と航空機の後方の所定の範囲の誘導路中心線灯との明るさを異ならせて点灯制御するので、誘導路を走行する航空機へのより正確な視覚航行援助機能が有効となる。これにより、飛行場運用の効率化が図れ、さらに地上管制を司る管制官の業務の軽減が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明の実施の形態に係わる飛行場灯火監視制御システムの構成図である。飛行場の誘導路11には誘導路中心線灯12が設けられ、航空機13は誘導路11を走行するにあたり誘導路中心灯12に案内されて走行する。航空機位置検出装置14は、誘導路11の近傍に位置する航空機13の位置を検出するものであり、例えばGPSが用いられる。そして、航空機位置検出装置14で検出された航空機位置情報aは灯火制御装置15に入力され、灯火制御装置15は航空機位置情報aに基づいて誘導路中心線灯12に制御信号bを出力し、誘導路中心線灯12の点灯制御を行う。
【0013】
灯火制御装置15は、例えばコンピュータやハードリレー装置などで構成され、航空機位置検出装置14から航空機位置情報aを入力すると、制御信号bを通して航空機13の前方の誘導路中心線灯12と航空機13の後方の所定の範囲の誘導路中心線灯12との明るさを異ならせて点灯制御する。例えば、航空機13の位置より前方の誘導路中心線灯12を連続点灯とし、航空機13の後方の所定の範囲の誘導路中心線灯12を点滅点灯とし、所定の範囲よりさらに後方の誘導路中心灯12は消灯とする。これにより、航空機13の位置により、航空機13の近傍の誘導路中心線灯12の明るさが変化するので、航空機13に対して、誘導路13を走行するための安全確保のガイダンスを提供できる。そして、誘導路中心線灯12の明るさの制御後に、航空機13は制御(連続点灯、点滅点灯または消灯)された誘導路中心線灯12に従って誘導路13を走行することになる。
【0014】
このように、灯火制御装置15は、論理4条件(滑走路の運用方向、背景輝度、雲底高、視程の4条件)を基に誘導路中心線灯12を制御するとともに、航空機位置検出装置14から航空機位置情報aを入力して誘導路中心線灯12の明るさ(灯火の明るさの点灯制御)を航空機13との位置を加味して制御する。
【0015】
図2は、本発明の実施の形態における誘導路に2台の航空機13a、13bが位置する場合の飛行場灯火監視制御システムの構成図である。航空機13bの前方に航空機13aが存在する場合には、航空機13aの位置の後方の所定範囲は点滅点灯となっているので、航空機13bは航空機13aとの安全離隔距離を確保したレベルを確保できる。すなわち、航空機13aの位置の後方の所定範囲は後続の航空機13bの安全を確保できる離隔距離以上とする。
【0016】
このように、誘導路11を走行する航空機13a、13bに対して、進行しても良い部分(点灯)、進行してはいけない部分(点滅)が明確になるので、より正確な視覚航行援助機能が有効となり飛行場運用の効率化が図れ、さらに地上管制を司る管制官の業務の軽減が可能となる。
【0017】
本発明の実施の形態によれば、航空機13が誘導路11を走行している場所を航空機位置検出装置14により検知し、誘導路中心線灯12の点灯状態の明るさの制御を行い、例えば、走行可能な範囲は点灯し、進行しては良くない範囲は点滅点灯とするので、航空機13の誘導路12の走行の安全及び飛行場運用の効率化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係わる飛行場灯火監視制御システムの構成図。
【図2】本発明の実施の形態における誘導路に2台の航空機が位置する場合の飛行場灯火監視制御システムの構成図。
【符号の説明】
【0019】
11…誘導路、12…誘導路中心線灯、13…航空機、14…航空機位置検出装置、15…灯火制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行場の誘導路に設けられた誘導路中心線灯と、前記誘導路近傍に位置する航空機の位置を検出する航空機位置検出装置と、前記航空機の前方の誘導路中心線灯と前記航空機の後方の所定の範囲の誘導路中心線灯との明るさを異ならせて点灯制御する灯火制御装置とを備えたことを特徴とする飛行場灯火監視制御システム。
【請求項2】
前記灯火制御装置は、前記航空機の前方の誘導路中心線灯を連続点灯とし前記航空機の後方の所定の範囲の誘導路中心線灯を点滅点灯とすることを特徴とする飛行場灯火監視制御システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−59127(P2008−59127A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−233461(P2006−233461)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】