説明

食事性繊維およびコレステロール低下物質で造られたコレステロール低下剤

【解決手段】本発明はa)食事性繊維とb)アリール置換されたプロパノールアミン誘導体または1,4−ベンゾチエピン−1,1−ジオキシド誘導体との組合せを除く、少なくとも1種類の食事性繊維および少なくとも1種類のコレステロール低下有効成分を含有するコレステロール低下剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食事性繊維および少なくとも1種類のコレステロール低下有効成分よりなるコレステロール低下剤に関する。更に、本発明はかゝる剤を製造する方法並びにその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
偏食の関係で、広範な地域の人口において血中脂肪の含有量、特に血中コレステロール値が増加していることが判明している。200mg/dLより多いコレステロール値、特に130mg/mLより多いLDLコレステロール値は心臓/循環器系疾病の主な危険ファクターの一つと見なされている。それ故にコレステロール値、特にLDLコレステロールが著しく増加した場合の治療は切実な問題である。この目的のために沢山の解決法が従来、開示されている。ライフスタイルおよび食習慣の僅かの効果的な変更の他に、コレステロールの吸収および代謝に色々な形で介入する沢山の特に有効な成分が開発されてきた。これらには中でも薬学的に有効な物質、例えばスタチン類(特に米国特許第4,231,938号明細書、同第4,444,784号明細書、同第4,346,227号明細書)、胆汁酸摂取抑制剤(特に米国特許第5,998,400号明細書、同第6,277,831号明細書、同第6,221,897号明細書)または胆汁酸分離剤(sequestrant)(特に米国特許第4,027,009号明細書)がある。これらの有効物質の全ては医療処方および−管理のもとで摂取されなければならない。
【0003】
これらの有効成分の中には植物源から単離されるコレステロール低下性化合物も含まれている。ここでは特に植物ステロールの群、特にフィトステロール類、フィトスタノール類、および上記の種類の化合物のエステル(特に国際特許出願公開第96/38047号、同第99/56558号明細書、米国特許第6,087,353号明細書)のコレステロール低下作用が開示されている。しかしながら中でも後者は人口のあらゆる域で摂取するには適しておらず(例えば妊婦または幼児)およびそれの適用にはしばしば制限がある。別の天然のコレステロール低下有効成分は、ヨーロッパ特許出願公開第238, 590号(A1)明細書またはIN−A166998号明細書に記載されている様な別の植物源からの抽出物、例えばチョウセンアザミ抽出物、トコトリエノール高含有抽出物、ガーリックまたはググリピド(guglipid) 抽出物にも含まれる。
【0004】
大豆蛋白質含有生成物もコレステロール低下特性を発揮する(Anderson J W, Johnstone B M、Cook-Newell M E,Metaanalysis of the effects of soy protein intake on serum lipids, NEW ENGLAND JOURNAL OF MEDICINE, 1995, 333(5), 276-82) 。
【0005】
他方、十分に摂取した場合に特に高いコレステロール値を下げることによって循環器疾患の危険を十分に低下し得ることが繰返開示されている食品成分がある。代表的食品成分としての食事性繊維については、食品中で食事性繊維を多量に摂取することが少ない食事性繊維食品に比較して循環器疾患の危険が有利にも低いことが一般に良く知られている(Jacobs等1998: Am J Clin Nutr.68: 248-257; Work等、1999; JAMA 2281; 1998-2004) 。小麦、燕麦、大麦、ライ麦の様なあらゆる種類の穀類および穀類のふすま、例えば燕麦のふすま、米のふすま、小麦のふすま、大豆のふすま等の一般に食事性繊維の豊富であるものの他に、他の食事性繊維も循環器疾患の危険および高いコレステロール値を下げるのに有益に寄与し得る。例えば沢山の水溶性食事性繊維、例えば( 燕麦または大麦を出所とする) β- グルカン、プシリウム( オオバコ) 、ペクチンまたはグアールガムは血中コレステロール値の低下作用を発揮する(Brown等 1999; Am.J.Clin.Nutr. 69:30-42) 。
【0006】
更に食品成分として、血清中のトリグリセロールまたはグルコースの濃度を低下することなしに血清コレステロール値を選択的に著しく低下し得るレバン(levan)類が公知である(Yamamoto 等、1999, J.nutr. biochem. 10, 13-18およびYamamoto等、2000、Hydrocolloids Part 2, Fundmentals and Application in Food, Biology and Medicine, Elsevier, 2000, 399-404) 。
【0007】
更に食品成分として、血清コレステロール値、特にLDLコレステロールを著しく低下できる水溶性イナゴマメ繊維、特にヨーロッパ特許出願公開第0,616,780号明細書に従う方法で製造されるものが公知である(Zunft等、2001; Adv.In Ther. 18: 230-36)。この場合にはHDL−値は一定のままであり、その結果重要なLDL/HDL比は“良好なコレステロール”の方に移動しそして動脈硬化症の危険が減少する。
【0008】
しかしながら達成可能な効果は、食品成分の場合に、治療用有効物質を使用して達成されるのよりも明らかに低く、それ故に所望の値よりも遥かに低い。食事性繊維の豊富な食べ物がコレステロール濃度を制御するのに寄与し得るとしても、多くの場合、特に非常に高いコレステロール濃度の場合(>300mg/dLの総コレステロール量)、取り組んでいる低濃度化には不十分である。
【0009】
食品成分、特に食事性繊維、例えばイナゴマメ繊維またはレバン類、と有効成分との間の相乗的コレステロール低下相互作用は知られていない。食品成分の群の中、例えばイナゴマメ果肉の水不溶性繊維を含有するイナゴマメ粉末の可溶性食事性繊維の場合の拮抗作用は報告されている(Peres-Olleros 等、1999;J.Sci. Food Agric. 79, 173-178)。
【0010】
純粋に薬学的なコレステロール低下化合物は、治療目標を達成するために一部のものは相当の高濃度を使用しなければならないという欠点を有している。この場合には、生命にとって強迫的な不所望の副作用が他の治療剤との組合せでも生じ得る。種々のコレステロール低下有効成分または他の治療剤、例えば動脈硬化症のためのそれと一緒に用いて効力を増加させることは、種々の危険な禁忌のために使用できない。例えばフィブラート(fibrate) とスタチンとの組合せは、セリバスタチン(cerivastation) とゲミフィブロジル(gemifibrozil)との組合せの場合に致命的でさえあり得るミオパシー(myopathy) シンドロームの危険を増す。
【0011】
更に、有効成分の摂取量の増加に連れてコレステロール濃度の僅かな追加的低下しか達成されない効果を示す飽和効果は公知である。別の欠点は、一般に非常に高価な治療用コレステロール低下化合物を使用して長期間治療する場合に生じる多大な経費である。
【0012】
植物源から単離されるコレステロール低下化合物 (例えばフィトステロール類) の場合、不所望の副作用を避けるために量的に限界がある。
【0013】
国際特許出願公開第03/018024号明細書には食事性繊維と1,4−ベンゾチエピン1,1−ジオキシド誘導体との組合せ調製物が提案されており、国際特許出願公開第03/018059号明細書には、食事性繊維とアリール置換プロパノールアミン誘導体との組合せ調製物が提案されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
それ故に、同じ程度またはさらに向上した活性を示し、かつ投与される個々の成分の量を減少させそしてそれ故に如何なる副作用も低減しそして特に長期間の治療の費用も減少させるコレステロール低下剤が未だに求められている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の課題は少なくとも1種類の食事性繊維と少なくとも1種類のコレステロール低下有効成分とで造られたコレステロール低下剤によって達成される。
【0016】
本発明の意味での食事性繊維は、小腸における人の酵素系によって分解されて吸収性成分をもたらすことのない植物細胞の構成成分および/または単離された天然のまたは工業的方法によって得られた物質、例えば抽出物を意味する。しかしながらこれらは大腸寄生菌によって部分的にまたは完全に発酵され得る。植物性繊維は例えば1種類以上の以下の物質から選択できる:全穀物(小麦、燕麦、大麦、ライ麦)、燕麦ぬか(β−グルカン)、米ぬか、コーンぬか、大麦、プシリウム殻、グアー、イナゴマメ、トラガカント、ペクチン、イヌリン、不消化性オリゴサッカリド類、イナゴマメ果肉、亜麻仁、大豆食事性繊維、大豆ぬか、デキストリン、アラビノキシラン(arabinoxylane) 、アラビノガラクタン(arabinogalactans)およびレバン類。
【0017】
本発明の意味での有利な食事性繊維はイナゴマメ繊維およびレバン類である。
【0018】
特に有利である本発明の意味での食事性繊維はイナゴマメ繊維であり、この場合不溶性食事性繊維の含有量が多いがポリファノールも高含有量であるものが特に有利である。イナゴマメ繊維の食事性繊維総含有量(AOAC法985.29で規定された通り測定)が少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも60重量%、特に好ましくは少なくとも80重量%(いずれの場合にも乾燥物質を基準とする)である。水不溶性食事性繊維の含有量(AOAC法991.42で規定された通り測定)は少なくとも25重量%、好ましくは少なくとも50重量%、特に好ましくは少なくとも70重量%(いずれの場合にも乾燥物質を基準とする)である。食事性繊維は、イナゴマメから除かれた果肉を連続抽出法で、専ら水溶性イナゴマメ成分から分離しそして得られる残留物を乾燥し、粉砕しそして場合によっては分級して<1000μm、好ましくは<500μm、特に好ましくは<200μmの粒度で得る様にして製造される。特にヨーロッパ特許出願公開第0,616,780号明細書の方法が有利である。こうして得られる調製物は優れたコレステロール低下作用を示しそして食物の質向上に使用できる。
【0019】
本発明の意味でのレバンは、分離法または製法次第でβ−2,1−フルクトフラノシル結合および103 〜107 の分子量(Mw )を有していてもよいβ−2,6−ポリフルクタンを意味する。この食事性繊維は例えば蔗糖を、レバンサッカロースの触媒活性を有する酵素を使用して生体触媒反応でレバンに転化し、次いで濾過し、洗浄しそして乾燥する様にして製造できる。この反応においてはレバンサッカロースが単独でまたは他のグリコシル転移酵素と一緒に使用して分岐したレバン類を製造することができる。国際特許出願第99/40217号明細書または同第00/31287号明細書に従う方法が有利である。この製造方法を、>5×105 の大きい分子量を有する長鎖レバン類が特に製造される様に制御するのが特に有利である。こうして得られる調製物は優れたコレステロール低下作用を示しそして食品の質向上に使用することができる。
【0020】
本発明の意味でのコレステロール低下有効成分は高いコレステロール濃度(>200mg/dL)、特に>130mg/dLのLDL−コレステロール濃度を下げることのできる有効成分を意味する。これは、特別に決められた物質代謝工程に影響を及ぼしそしてその結果として二次的にLDLコレステロールおよび総コレステロール(一般に10〜55%)に下げることに特徴がある。
【0021】
本発明の意味での有効成分はスタチン(statin)、胆汁酸再吸収抑制剤および胆汁酸除去剤、コレステロール吸収抑制剤、フィブラート(fibrates)類、ニコチン酸誘導体、およびフィトステロール、植物スタノール類(stanols) 、およびコレステロール低下植物抽出物、例えばチョウセンアザミ(artichoke)類またはググリピド(guglipid)および大豆蛋白質含有製品の群のコレステロール低下物質を包含する。
【0022】
有効群のスタチン類は、コレステロールシンターゼ(HMG CoA還元酵素抑制剤)の抑制によって特に肝臓中で作用するロバスタチン(下記第1式参照) (例えば、米国特許第4,231,938号明細書)、パラバスタチン(例えば米国特許第4,346,227号明細書)、シムバスタチン(simvastatin)(下記式2参照:米国特許第4,444,784号明細書)、フルバスタチン(例えば米国特許第5,354,772号明細書、アトアバスタチン(atorvastatin)( 例えば米国特許第5,273,995号明細書)またはセリバスタチン(例えば米国特許第5,177,080号明細書)の様な化合物を意味する。これらの有効物質は度々開示されており、薬剤としておよびコレステロール低下治療 (例えば米国特許第6, 180, 660号明細書) のために広く使用されている。
【0023】
【化1】

【0024】
式1:レバスタチン 式2:シムバスタチン
本発明の意味での胆汁酸再吸収抑制剤は、レセプター仲介プロセスを経て回腸中で胆汁酸の再摂取を防止する物質を意味する。これには特にベンゾチアゼピン誘導体(米国特許第5,998,400号明細書、同第6,277,831号明細書)、ベンゾチエピン−1,1−ジオキシド誘導体(米国特許第6,221,897号明細書、国際特許出願公開第97/33882号明細書)、特に、腸中で、中でも回腸中での胆汁酸の再吸収を妨害する式3および4の化合物がある。
【0025】
本発明の意味での胆汁酸再吸収の抑制剤は、レセプター仲介プロセスを経て回腸中で胆汁酸の再摂取を防止する物質を意味する。これには特にベンゾチアゼピン誘導体(米国特許第5,998,400号明細書、同第6,277,831号明細書)、ベンゾチエピン−1,1−ジオキシド誘導体(米国特許第6,221,897号明細書、国際特許出願公開第97/33882号明細書)、特に、腸中で、中でも回腸中で胆汁酸の再吸収を妨害する式3および4の化合物がある。
【0026】
【化2】

【0027】
式3:ベンゾチエピン誘導体
[式中、RはC6 4 NHZR3 であり;R1 、R4 、R5 はMe、Et、Pr、Buであり;R2 はH、OH、NH2 、アミノ(アルキル)であり、R3 は糖残基であり;Zは−(C=O)n −(C0 −C16)−アルキル−、−(C=O)n −(C0 −C16)−アルキル−NH−、−(C=O)n −(C0 −C16)−アルキル−O−、−(C=O)n −(C0 −C16)−アルキル−(C=O)m または共有結合であり;nは0または1である。]およびその塩。
【0028】
【化3】

【0029】
式4:ベンゾチアゼピン誘導体
[式中、R1 はMe、Et、Pr、Buであり;R2 はH、OHであり、R3 は糖残基であり;Zは−(C=O)n −(C0 −C16)−アルキル−、−(C=O)n −(C0 −C16)−アルキル−NH−、−(C=O)n −(C0 −C16)−アルキル−O−、−(C=O)n −(C0 −C16)−アルキル−(C=O)m または共有結合であり;nは0または1であり;mは0または1である。]およびその塩。
【0030】
コレステロール吸収抑制剤は、コレステロールのレセプター仲介運搬を腸中で抑制しそしてそれ故にコレステロールの排出を増加させる有効物質であり、最終的には血清コレステロール濃度を穏やかに低下させる。これらには特に、1−(4−フルオロフェニル)−3(R)−[3(S)−(4−フルオロフェニル−3ヒドロキシプロピル)]4(S)4−ヒドロキシフェニル)−2−アゼチジノンおよび1−(4−フルオロフェニル)−3(R)−[3(R)−(4−フルオロフェニル−3ヒドロキシプロピル)]4(S)4−ヒドロキシフェニル)−2−アゼチジノンおよびそれの薬理的に有効な塩または置換されたβ−ラクタムコレステロール吸収抑制剤よりなる群のヒドロキシ置換されたアゼチジノンコレステロール吸収抑制剤(例えば国際特許出願公開第95/35277号明細書、同第02/058733号明細書、同第02/50060号明細書)を包含する。
【0031】
これらのフィブラート類の群にはクロフィブラート、エトフィリンクロフィブラート、ベンザフィブラート、シプロフィブラート、クリノフィブラート、ビニフィブラート、リフィブロール、フェノフィブラート、ゲミフィブロジルまたはエトフィブラートが包含される。
【0032】
臨床像次第でフィブラート類はHDLコレステロール値の僅かな向上と共にLDLコレステロールの穏やかな低減作用を示す。血清トルグリセリド類はフィブラート類によってさらに強く影響される。
【0033】
本発明の意味でのニコチン酸誘導体は中性的にまたは合成的に製造されるニコチン酸、そのエステルまたは合成誘導体、例えばニセリトロール、ニコフラノース、β−ピリジルカルビノールまたはアシピモックスである。この物質群は同時に改善されるHDLコレステロール濃度と共に総コレステロールおよびLDLコレステロールに穏やかな影響を及ぼす。
【0034】
本発明の意味でのフィトステロール類は4−ジメチルステロール類、4−モノメチルステロール類および4,4−ジメチルステロール類およびそれぞれのエステルおよびフィロステロール類の豊富な植物抽出物、混合物および食品を意味する。
【0035】
これらはβ−シトステロール、カムペステロール(campesterol) 、スチグマットステロール(stigmatosterol)、ブラシカステロール(Brassicasterol)、デスモステロール、チャリノステロール(chalinosterol) 、ポリフェラステロール(polriferasterol)、クリオナステロール(clionasterol)およびそれらの天然のまたは合成または異性体誘導体が包含される。植物スタノール類とは水素化植物ステロール類、例えばカンペスタノール、シトスタノールおよびそれぞれのエステルおよび植物性スタノール類の豊富な植物抽出物、混合物および食品を意味する。
【0036】
コレステロール低下有効性を示す他の植物抽出物には中でもチョウセンアザミ抽出物およびニンニクおよびググリピド(guglipid)の抽出物が包含される。これらは既に天然治療物質として久しく使用されてきたし、総コレステロール濃度およびLDLコレステロール濃度へ穏やかな効果を発揮する。
【0037】
本発明の意味でのググリピド(CAS 39025−24−6)はコミフォーラ・ミュクル(Commiphora mukul)の植物抽出物、(またコミフォーラ・ウエイティー(wigthii) またはバルサモデンドロン・ミュクル(Balsamodendron mukul)) 、ブルセラ科の樹木様植物がある。本発明の意味でのググリピドは、同様にアリウベディク(aryuvedic) 医療において使用される“グーグル(Guggulu) ”、“ググル(Guggul)”、“アルカ・グガル(Arka Guggalu)”または“ガム・ググール(Gum Guggul)”である。さらにググリピドはブルセラ科の植物またはそれから分離された分離物または純粋物質である。本発明の意味でのググリピドはググルステロール類およびそれの異性体、例えばZ−ググルステロール(CAS 85769−67−1)、ググルステロール I(CAS 39025−25−7)、ググルステロール II(CAS 39025−26−8)、ググルステロール III(CAS 39025−27−9)、ググルステロール IV (CAS 20281−70−3)、ググルステロールV(CAS 6120−71−4)、ググルステロール VI(CAS 61391−01−3)、16−エピググルステロール III(CAS 84709−26−2)、E−ググルステロール、M−ググルステロール、ジヒドロググルステロール−M、ググルステロール−Yおよびまたググルステロン類もある。さらに本発明の意味でのググリピドはあらゆる植物ステロール類およびブルセラ科の植物に見られるスタノール類、特にシトステロール、スチグマステロール、コレステロール、カムペステロールおよびα−スピナステロールもある。さらに本発明の意味でのググルリピド類は植物抽出物または純粋化学的化合物、例えばLegere Pharmaceuticals or food supplements社の“ググリピド”または食品添加物、例えばPlanetary Formulas社の“CholestGar”から製造される薬剤でもある。
【0038】
本発明の意味での大豆タンパク質含有生成物は大豆全体よりなる食品または食品成分を意味するかまたはそれらから製造されるが加工大豆タンパク質生成物を含有するものでもある。これらは特に大豆蛋白質生成物、大豆蛋白質濃厚物、大豆粉末、テクスチャード加工大豆蛋白質(TSP)またはテクスチャード加工植物蛋白質(TVP)を包含する。これらの食品または食品成分は蛋白質含有成分の他に天然に産する大豆成分、例えばイソフラボン類、食事性繊維およびサポニン類を含有していてもよい。
【0039】
本発明の剤は少なくとも1種類の食事性繊維および少なくとも1種類のコレステロール低下有効成分を含有している。さらにこのコレステロール低下剤は慣用の添加物、例えば溶剤、充填剤、キャリヤー、例えばメチルセルロース、甘味付与炭水化物および他の甘味料、香料、酸化防止剤等を含有していてもよい。食事性繊維、特にイナゴマメ繊維と有効成分との組合せ物は2つの別の投与形態で投与してもよい。慣用の食品用途、例えばベーカリー製品、シリアル、スナックまたはフルーツバーまたはドリンク粉末が食事性繊維、特にイナゴマメ繊維にとって適している。さらに食事性繊維は自己生産食品に直接添加することおよび典型的な形(中でもタブレット、糖衣錠、カプセル、小袋包装物、顆粒、棒状物等)の食品サプリメントも可能であり、他方有効成分は薬状で一般に投与される(中でもタブレット、糖衣錠、カプセル、小袋包装物、顆粒等)。
【0040】
本発明の別の有利な一つの実施態様はイナゴマメ繊維とレバンとの組合せを食事性繊維成分として含有する剤である。
【0041】
本発明の剤は有効成分を、医療効果を達成するために1日あたり2〜3回投与する場合に必要とされる量で含有している。食事性繊維成分および好ましくはイナゴマメ繊維は、顕著なコレステロール低下を引き起こす濃度で本発明の剤中に同様に存在する。食事性繊維の日用量は1〜50g、一般に1〜25g、好ましくは5〜15g、特に好ましくは5〜10gの範囲内である。コレステロール濃度の特に十分な低下を求める場合には、有効成分の通例の日用量投与と組合せて食事性繊維をこの量で使用する。従来に個々の用途にとって必要な有効成分濃度にとっては、使用濃度は相乗効果のために90%まで減らすことができる。場合によって存在する添加物は(それぞれの調製物の形態を基準として)1〜90重量%、特に10〜60重量%の濃度で添加されていてもよい。
【0042】
本発明の剤を製造するためには、所望の量の食事性繊維と有効成分とを互いに混合し、噴霧乾燥し、溶剤を除き、凝集させおよび/またはインスタント化する様に加工するのが最も好ましい。さらにあらゆる慣用の食品加工技術および薬剤製造法、例えばプレス加工、混練または糖衣加工も使用することができる。
【0043】
本発明に従う組み合わされた投与においては、食事性繊維、特にイナゴマメ繊維およびコレステロール低下有効成分の組合せ摂取が個々の成分を投与した場合における効果の合計よりもコレステロール低下がより顕著であることが判った。食事性繊維、特にイナゴマメ繊維またはレバンを有効成分に追加投与することが有効化合物の活性を非特定の妨害による低減なしに、2種の物質を個々に投与した場合に達成できる効果を遥かに超える効果が見られることは驚くべきことである。
【0044】
従って本発明の剤は以前に達成可能であったのよりもコレステロールを治療的にしばしば望まれるより大きな低下を可能とするかまたは同じ程度であるがより少ない量の有効成分を使用して行うことを可能とする。従ってこのものは高コレステロール血症または高脂質血症の薬剤的治療において多大な進歩を示している。
【0045】
本発明の剤は最も有効な量比にあった適する調製物の状態で好都合に導入される。この目的に適合する調製物は例えば崩壊するための粉末またはタブレット状調製物であるし、またチューイング・タブレットである。これらの調製物は、崩壊性を向上させるために、さらに他の成分(添加物)、例えば可溶性媒体、タブレット崩壊剤、例えば澱粉、セルロース、ベントナイト、ペクチンまたは過酸化物および炭酸塩類を有機酸および一般的着色剤、甘味料、例えば蔗糖、グルコース、フルクトースおよび他の炭水化物、糖アルコール類、例えばソルビトール、キシリトール、マルチトールおよびイソマルト、または甘味料、例えばアセスルファムK、シクラマート、サッカリン、スクラロースまたはアスパルタムおよび、受容性を向上させるためにアロマ物質と組合せて含有していてもよい。
【0046】
本発明の剤はしかしながら有効成分の薬剤調製物の状態でおよび食事性繊維含有食品または食品サプリメントの状態で別々に投与してもよい。有効成分には慣用の薬剤投与形態、例えばタブレット、カプセル、液滴として摂取するための溶液または崩壊性粉末調製物または顆粒が考えられる。この組合せ治療では、適する食事性繊維含有食品は原則として、食事性繊維を導入することができるあらゆる食品がある。その際に食品成分および食事性繊維の性質に基づく限界、また意図する用途からの限界がある。それ故に特に適する食品は穀類ベースの食品、例えばベーカリー製品、シリアル、スナックまたはフルーツバー、デザート類、特に食事用調製物、例えば飲料および特にミルク、フルーツ濃縮物またはフルーツ粉末をベースとする粉末飲料、炭水化物または糖アルコールである。フィトステロール類および植物スタノール類の場合には、さらに脂肪含有食品、例えば拡散性植物脂肪、ドレッシングおよびミルク製品も考えられる。
【0047】
本発明の剤はさらに動物栄養分または飼料の成分としても使用してもよい。
【0048】
本発明を以下の実施例によって更に詳細に説明する。
【実施例1】
【0049】
イナゴマメ繊維およびスタチンの生体内での高コレステロール血症有効性の測定
たとえハムスターと人間とにおける代謝法が僅かに相違しても、ハムスターを、本発明を説明するために適当な動物モデルと見なす。既にここで組合せて試験した2つの物質は単独で人間において血清コレステロール値、特にLDLコレステロールの低減効果を示している。それ故に、イナゴマメ繊維およびスタチン、ここではシムバスタチン、の組合せ投与の効果を人間にも推定できる。
【0050】
雄のシリア・ハムスター(実験開始時100〜120g)に0.35%コレステロールとした飼料を与える。ヨーロッパ特許出願公開第0,616,780号明細書に従う方法で製造した試験物質のイナゴマメ繊維を飼料中に単独でまたは組合せて混入する。ハムスターは9匹の動物群に分けそして28日の期間にわたって試験物質を投与する。動物に麻酔を投与した後に、血清コレステロール値を測定するために血液を採取する。血清コレステロール含有量を、市販の酵素試験キットを使用して血液全体から血清を得た後に測定した。こうして測定された試験群の総コレステロール含有量を、試験物質を投与していない対照群の結果と比較する。結果は以下の通りである:
結果:

【0051】
*個々の効果の合計を基準とする相乗効果:+19%
【実施例2】
【0052】
イナゴマメ繊維およびフィトステロールの生体内での高コレステロール血症有効性の測 定:
この実験は実施例1と同様に実施した。シムバスタチンの代わりにフィトステロールを含有するマーガリンをハムスター飼料中に混入した。フィトステロールの飼料中最終濃度は0.5%であった。
【0053】
結果:

【0054】
* 個々の効果の合計を基準とする相乗効果:+17%
本発明の剤の使用可能性を以下の組合せ調製物によって例示的に説明する。
【実施例3】
【0055】
粉末調製物(1粒サイズについて)
シムバスタチン 5mg
イナゴマメ繊維 3g
キサンタン(安定剤) 150mg
バニリン 15mg
150mLの温かいミルク中にこの調製物を攪拌によって懸濁させそして飲ませる。
【実施例4】
【0056】
チューイング・タブレット
Vegapure(R) 50 TP 400mg
(フィトステロールエステル、 Cognis Nutrition & Health, ドイツ国)
イナゴマメ繊維 2 g
ソルビトール 1.1g
ステアリン酸マグネシウム 15mg
アセスルファム K 12mg
アスパラタム 12mg
チョコレートアロマ 適量
このチューイング・タブレットを混合しそして慣用の方法でプレス加工する。
【実施例5】
【0057】
粉末調製物(1粒サイズについて)
ロバスタチン(lovastatin)(MSD Sharp and
Dome GmbH, D-85540 Haar) 10mg
レバン 3g
キサンタン(安定剤) 150mg
バニリン 15mg
150mLの温かいミルク中にこの調製物を攪拌によって懸濁させそして飲ませる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)食事性繊維とb)アリール置換されたプロパノールアミン誘導体または1,4−ベンゾチエピン−1,1−ジオキシド誘導体との組合せを除く、少なくとも1種類の食事性繊維および少なくとも1種類のコレステロール低下有効成分を含有するコレステロール低下剤。
【請求項2】
少なくとも1種類の食事性繊維を1〜50gの日用量および少なくとも1種類のコレステロール低下有効成分を含有するコレステロール低下剤。
【請求項3】
食事性繊維を以下の物質の1種類以上から選択する請求項1または2に記載の剤:全穀類、燕麦ぬか、β−グルカン、とうもろこしぬか、米ぬか、大麦、プシリウム(Psyllium) 、グアー、イナゴマメ、トラガカント、ペクチン、イヌリン、不消化性オリゴサッカリド類、イナゴマメ果肉またはイナゴマメ果肉から分離される生成物、亜麻仁、大豆食事性繊維、大豆ぬか、デキストリン、アラビノキシラン(arabinoxylane) 、アラビノガラクタン(arabinogalactans)およびレバン。
【請求項4】
食事性繊維がイナゴマメ果肉またはイナゴマメ果肉から分離される生成物である、請求項3に記載の剤。
【請求項5】
食事性繊維がレバンである、請求項3に記載の剤。
【請求項6】
食事性繊維がイナゴマメ繊維である、請求項4に記載の剤。
【請求項7】
食事性繊維が水に不溶性である、請求項6に記載の剤。
【請求項8】
有効成分が以下の物質の1種類以上から選択されている請求項1〜7のいずれか一つに記載の剤:スタチン(statin)、胆汁酸再吸収抑制剤、胆汁酸除去剤、フィブラート(fibrates)、ニコチン酸誘導体、フィトステロール、植物スタノール類(stanols) 、コレステロール低下植物抽出物、ググリピド(guglipid)および大豆蛋白質含有生成物。
【請求項9】
少なくとも1種類の食事性繊維、およびアリール置換されたプロパノールアミド誘導体または1,4−ベンゾチエピン1,1−ジオキシド誘導体を除く少なくとも1種類のコレステロール低下有効成分を別々の投与形態で含有する、コレステロール低下用組合せ調製物。
【請求項10】
1〜50gの日用量の少なくとも1種類の食事性繊維および少なくとも1種類のコレステロール低下有効成分を別々の投与形態で含有する、コレステロール低下用組合せ調製物。
【請求項11】
食事性繊維が食品である、請求項9または10に記載のコレステロール低下用組合せ調製物。
【請求項12】
コレステロール低下有効成分が食品または薬剤である、請求項9〜11のいずれか一つに記載のコレステロール低下用組合せ調製物。
【請求項13】
請求項1〜8のいずれか一つに記載の剤の製造方法において、少なくとも1種類の食事性繊維および少なくとも1種類のコレステロール低下有効成分を互いに混合することを特徴とする、上記方法。
【請求項14】
請求項1〜8のいずれか一つに記載の剤の、薬剤を製造するための用途。
【請求項15】
コレステロール低下薬を製造するための、請求項14に記載の用途。
【請求項16】
高コレステロール血症、高脂質血症または動脈硬化症の予防薬を製造するための、請求項14に記載の用途。
【請求項17】
請求項1〜8のいずれか一つに記載の剤の、食品または食品成分を製造するための用途。
【請求項18】
コレステロール低下食品または食品成分を製造するための、請求項17に記載の用途。
【請求項19】
薬剤を製造するための、請求項9または10に記載の組合せ調製物の用途。
【請求項20】
コレステロール低下剤を製造するための、請求項19に記載の用途。
【請求項21】
高コレステロール血症、高脂質血症または動脈硬化症の予防薬を製造するための、請求項19に記載の用途。
【請求項22】
動物飼育においての請求項1〜8のいずれか一つに記載の剤の用途。
【請求項23】
飼料を製造するための請求項1〜8のいずれか一つに記載の剤の用途。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)食事性繊維とb)アリール置換されたプロパノールアミン誘導体または1,4−ベンゾチエピン−1,1−ジオキシド誘導体との組合せを除く、イナゴマメ果肉またはイナゴマメ果肉から分離される生成物またはレバンよりなる群から選択される少なくとも1種類の食事性繊維および少なくとも1種類のコレステロール低下有効成分を含有するコレステロール低下剤。
【請求項2】
食事性繊維が1〜50gの日用量で存在する請求項1に記載のコレステロール低下剤。
【請求項3】
イナゴマメ果肉またはイナゴマメ果肉から分離される生成物またはレバンの他に、以下の物質の1種類以上から選択される食事性繊維を請求項1または2に記載の剤:全穀類、燕麦ぬか、β−グルカン、コーンぬか、米ぬか、大麦、プシリウム(Psyllium) 、グアー、イナゴマメ、トラガカント、ペクチン、イヌリン、不消化性オリゴサッカリド類、亜麻仁、大豆食事性繊維、大豆ぬか、デキストリン、アラビノキシラン(arabinoxylane) およびアラビノガラクタン(arabinogalactans)。
【請求項4】
食事性繊維がイナゴマメ繊維である、請求項1に記載の剤。
【請求項5】
食事性繊維が水に不溶性である、請求項1〜4のいずれか一つに記載の剤。
【請求項6】
有効成分が以下の物質の1種類以上から選択されている請求項1〜5のいずれか一つに記載の剤:スタチン(statin)、胆汁酸再吸収抑制剤、胆汁酸除去剤、フィブラート(fibrates)、ニコチン酸誘導体、フィトステロール、植物スタノール類(stanols) 、コレステロール低下性植物抽出物、ググリピド(guglipid)および大豆蛋白質含有生成物。
【請求項7】
イナゴマメ果肉、イナゴマメ果肉から分離される生成物またはレバンよりなる群から選択される少なくとも1種類の食事性繊維、およびアリール置換されたプロパノールアミド誘導体または1,4−ベンゾチエピン1,1−ジオキシド誘導体を除く少なくとも1種類のコレステロール低下有効成分を別々の投与形態で含有する、コレステロール低下用組合せ調製物。
【請求項8】
イナゴマメ果肉、イナゴマメ果肉から分離される生成物またはレバンの他に、以下の物質の1種類以上からの少なくとも1種類の食事性繊維を含有する請求項7のコレステロール低下組合せ調製物:全穀類、燕麦ぬか、β−グルカン、米ぬか、コーンぬか、大麦、プシリウム(Psyllium) 、グアー、イナゴマメ種子、トラガカント、ペクチン、イヌリン、不消化性オリゴサッカリド類、亜麻仁、大豆食事性繊維、大豆ぬか、デキストリン、アラビノキシラン(arabinoxylane) およびアラビノガラクタン(arabinogalactans)。
【請求項9】
1〜50gの日用量の食事性繊維および少なくとも1種類のコレステロール低下有効成分を別々の投与形態で含有する、請求項7または8に記載のコレステロール低下用組合せ調製物。
【請求項10】
1種類以上の食事性繊維が食品である、請求項7〜9のいずれか一つに記載のコレステロール低下用組合せ調製物。
【請求項11】
コレステロール低下有効成分が食品または薬剤である、請求項7〜10のいずれか一つに記載のコレステロール低下用組合せ調製物。
【請求項12】
請求項1〜6のいずれか一つに記載の剤の製造方法において、少なくとも1種類の食事性繊維および少なくとも1種類のコレステロール低下有効成分を互いに混合することを特徴とする、上記方法。
【請求項13】
請求項1〜6のいずれか一つに記載の剤の、薬剤を製造するための用途。
【請求項14】
コレステロール低下薬を製造するための、請求項13に記載の用途。
【請求項15】
高コレステロール血症、高脂質血症または動脈硬化症の予防薬を製造するための、請求項13に記載の用途。
【請求項16】
請求項1〜6のいずれか一つに記載の剤の、食品または食品成分を製造するための用途。
【請求項17】
コレステロール低下食品または食品成分を製造するための、請求項16に記載の用途。
【請求項18】
薬剤を製造するための、請求項7〜9のいずれか一つに記載の組合せ調製物の用途。
【請求項19】
コレステロール低下薬を製造するための、請求項18に記載の用途。
【請求項20】
高コレステロール血症、高脂質血症または動脈硬化症の予防薬を製造するための、請求項18に記載の用途。
【請求項21】
動物飼育においての請求項1〜6のいずれか一つに記載の剤の用途。
【請求項22】
飼料を製造するための請求項1〜6のいずれか一つに記載の剤の用途。

【公表番号】特表2006−506464(P2006−506464A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505148(P2005−505148)
【出願日】平成15年7月15日(2003.7.15)
【国際出願番号】PCT/EP2003/007624
【国際公開番号】WO2004/009093
【国際公開日】平成16年1月29日(2004.1.29)
【出願人】(398037789)ニュートリノヴァ ニュートリション スペシャリティーズ アンド フード イングリーディエンツ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (6)
【Fターム(参考)】