説明

食品の加熱処理装置

【課題】簡単かつ小型で安価な構造にて、塊状食品でもむらなく、短時間で食品を加熱処理できる食品の加熱処理装置を提供する。
【解決手段】食品1を、収容して、または通過させながら、加熱処理する加熱室3、加熱室3内に配管されて加熱室3外から通された熱媒体5を通電による発熱にて加熱し飽和水蒸気や過熱水蒸気として加熱室内に放出し、自らの輻射熱と共に加熱処理に供する電熱管6、加熱室3内雰囲気に対流を発生させる送風機8、加熱室3内で食品1を支持しあるいは通過させながら輻射熱および水蒸気9に曝す食品支持機構11、42、加熱室底部で加熱室3からの排気、排水の内の少なくとも排水を図る排出口12、を備えたものとして上記の課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品につき蒸し、焼き、殺菌、解凍、焙煎、乾燥、といった加熱調理を始めとする各種の加熱処理の中の少なくとも1つの加熱処理を過熱水蒸気を含む水系熱媒体、それを生成する発熱体からの輻射熱を少なくとも併用して行う食品の加熱処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
過熱水蒸気により食品の調理や殺菌などの加熱処理を行うことが従来から知られている(例えば、特許文献1〜5参照)。過熱水蒸気によると微酸素状態での酸化、発火を抑制した加熱処理ができ、過熱度によって降温しても気体状態を維持させ、焼き、焙煎、乾燥ができる。しかも、単位体積当りの熱容量が例えば同じ温度の熱風の場合に比し約4倍と大きく、赤外線輻射による熱放射性のガス特性も加わって、少量にて処理時間が短縮する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−206868号公報
【特許文献2】特開2006−166797号公報
【特許文献3】特開2007−20484号公報
【特許文献4】特開2007−20485号公報
【特許文献5】特開2008−253202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のものは、蓋をボルト止めした処理容器内に被処理体収納部を囲うように螺旋状に配した加熱ヒータ内に水蒸気を通して拘束力、熱効率よく過熱水蒸気とし、この過熱水蒸気と加熱ヒータからの輻射熱との双方を被処理体の加熱源として働かせてコーヒー豆の焙煎など熱効率、処理効率高く加熱処理するもので、数十ボルトの直流または交流電源を採用し、200V〜400Vの大電流を通電させることで800℃程度に収納部を昇温させられるとしている。しかし、ヒータ内での加熱により生成した過熱水蒸気をヒータの先端から処理容器内に噴出させて、排出口からの排出を制限することで、処理容器内に充満しながら更新させられるようにしているが、食品の処理域への支持や出し入れ、過熱水蒸気との分散、接触などのために、多孔容器を必須としているのでコスト高になる。また、塊状食品を多孔容器内に積み重ねるのでは、過熱水蒸気との接触効率が低下し、処理むら、処理時間の延長につながる。
【0005】
特許文献2〜5に記載のものは、熱媒体を通して過熱水蒸気とする加熱ヒータ、つまり、電熱管を加熱処理域に見合う面積域に蛇行状、螺線状など平面配管するのに併せ、電熱管の先端に同じく、蛇行状、螺線状、分岐状など平面配管した噴出管を接続し、加熱処理域に広がった食品にむらなく直接接触させて、バッチ式、連続式を問わず多量の食品をむらなく短時間に加熱処理できるようにしているが、大きな平面スペースが必要で、コスト高にもなる。
【0006】
本発明は、上記のような問題点に鑑み、簡単かつ小型で安価な構造にて、塊状食品でもむらなく、短時間で食品を加熱処理できる食品の加熱処理装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記のような課題を解決するために、本発明の食品の加熱処理装置は、食品を、収容して、または食品の搬入口、搬出口を通じ通過させながら、加熱処理する加熱室、加熱室内に配管されて加熱室外から通された水、温水、飽和水蒸気、過熱水蒸気の少なくとも1つである熱媒体を通電による発熱にて加熱し飽和水蒸気や過熱水蒸気として加熱室内に放出し、自らの輻射熱と共に加熱処理に供する電熱管、加熱室内雰囲気に対流を発生させる送風機、加熱室内で食品を支持しあるいは通過させながら輻射熱および水蒸気に曝す食品支持機構、加熱室底部で加熱室からの排気、排水の内の少なくとも排水を図る排出口、を備えたことを1つの特徴としている。
【0008】
このような構成では、加熱室内に電熱管の蒸気吹き出し部から飽和水蒸気や過熱水蒸気を連続的に放出しながら、加熱室内の放出水蒸気を含む雰囲気の余剰分が、排出口または、排出口および食品の搬入口、搬出口を通じた所定の排出制限の基に、加熱室内で生じた結露水の排出口からの排出を伴い排出されるので、加熱室内を所定の正圧状態に保ちながら放出水蒸気が充満していくとともに、充満した水蒸気は一定の割合で更新されていくので、加熱室内に収容された食品はどの支持位置、通過位置においても、加熱室内に放出後一定時間内の放出水蒸気と接触して加熱処理され、加熱室内に結露水が溜まることもない。特に、加熱室内の水蒸気が充満した雰囲気を送風機により対流させるので、水蒸気は電熱管による再加熱も受けながらの食品との接触の効率、均一化を高められるし、電熱管の通電時に発熱する熱は、輻射に加え、対流による伝導にても食品に働かせられる。
【0009】
本発明の食品の加熱処理装置は、また、食品を、収容して加熱処理する加熱室、加熱室内に配管されて加熱室外から通された水、温水、飽和水蒸気、過熱水蒸気の少なくとも1つである熱媒体を通電による発熱にて加熱し飽和水蒸気や過熱水蒸気として加熱室内に放出し、自らの輻射熱と共に加熱処理に供する電熱管、加熱室内雰囲気に縦方向の対流を発生させる送風機、加熱室内で食品を定量ずつ支持して縦向きまたは横向きに周回移動させながら輻射熱および放出水蒸気に曝す周回機構、加熱室の底部で加熱室内からの排気、排水の内の少なくとも排水を図る排出口、を備えたことを別の特徴としている。
【0010】
このような構成では、1つの特徴の場合に加え、さらに、食品は加熱室内で周回機構により縦向きまたは横向きに周回移動させるように支持されるので、食品の放出水蒸気や電熱管からの輻射熱への曝しの効率、均一化を高められる。
【0011】
上記において、さらに、送風機は、加熱室の天井部または側壁部に設けられて、下向きまたは横向きの中央吸気口から雰囲気を吸込み羽根外周から排出するケーシングレス遠心ファンよりなり、電熱管は、加熱室外から引き込んで少なくとも送風機の外周と加熱室内周との間に螺線状に配管されて、加熱室内適所に位置する蒸気吹き出し部に至るように設けられたものとすることができる。
【0012】
このような構成では、上記に加え、さらに、送風機が加熱室の天井部または側壁部に位置して、加熱室内の水蒸気が充満している雰囲気を中央吸気口から吸い込み、羽根外周から電熱管の螺線配管部を放射方向に通過するように排出するので、加熱室内の雰囲気に、加熱室の中央部を吸気口との対向壁測から吸気口に向かう中央流と、送風機の羽根外周からまわりに排出されて電熱管の再加熱により潜熱を高められた後、加熱室の前記中央流まわりの周辺壁に沿い前記対向壁側に流れて前記中央流に繋がる周辺流とによるドーナツ型の対流を、加熱室内が縦長でも乱れや滞留域なく与えながら、食品との接触の効率、均一化をさらに高められるので、多量の食品の加熱処理にさらに好都合である。また、中央流が上昇流であるとこれが排出口に対向することで加熱室内の雰囲気を排出口から排気する動圧を与えず、加熱室内の正圧による自然排気を乱すことはない。
【0013】
上記において、さらに、送風機は、加熱室の天井部または側壁部に設けられたクロスフローファンであり、加熱室の長手方向に向けて横向きまたは縦向きに設置され、天井部または側壁に沿って吸い込み、下向きまたは横向きの中央吸気口から雰囲気を吸込み羽根外周から排出するケーシングレス遠心ファンよりなり、電熱管は、加熱室外から引き込んで少なくとも送風機の外周と加熱室内周との間に螺線状に配管されて、加熱室内適所に位置する蒸気吹き出し部に至るように設けられたものとすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の食品の加熱処理装置の1つの特徴によれば、加熱室内に電熱管から飽和水蒸気や過熱水蒸気が連続的に放出しながら、この放出水蒸気を含む雰囲気の余剰分の排出制限下での結露水を伴う排出の基に正圧を保って充満し、更新されていき、加熱室内に支持され、また通過されるどの位置の食品とも放出後一定時間内の放出水蒸気と接触させて効率よくかつ均一に加熱処理できるし、加熱室内に結露水が溜まることもない。特に、加熱室内の水蒸気が充満した雰囲気の強制的な対流による食品との接触の効率、均一化、電熱管による再加熱作用を高めるとともに、電熱管の通電時に発熱する熱の輻射、対流による伝導にても食品に働かせ、また、食品は周回移動させて食品の放出水蒸気や電熱管からの熱への曝しの効率、均一化を高められるので、熱効率、加熱効率、処理効率が高く、食品を短時間かつ均一に加熱処理、オーブン調理することができ、過熱水蒸気によるチキンなどのロースト加工に好適である。
【0015】
本発明の食品の加熱処理装置の別の特徴によれば、1つの特徴の場合に加え、さらに、食品は加熱室内で周回機構により縦向きまたは横向きに周回移動させるように支持されるので、食品の放出水蒸気や電熱管からの輻射熱への曝しの効率、均一化を高められるので、熱効率、加熱効率、処理効率がさらに高く、食品をより短時間かつより均一に加熱処理、オーブン調理することができ、過熱水蒸気によるチキンなどのロースト加工に好適であり、平面スペースを採らない縦長な加熱室を有効利用した多量での食品の加熱処理に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る食品の加熱処理装置の1つの具体例を示す前後方向で断面して見た断面図である。
【図2】同具体例を示す左右方向で断面して見た断面図である。
【図3】同具体例を示す平面図である。
【図4】同具体例を示す横断面図である。
【図5】同具体例での送風機を示す側面図である。
【図6】同送風機の下面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る食品の加熱処理装置の別の具体例を示す前後方向で断面して見た断面図である。
【図8】同具体例の左右方向で見た断面図である。
【図9】送風機の別の例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態に係る食品の加熱処理装置の1つの具体例につき、図1〜図9を参照しながら具体的に説明し、本発明の理解に供する。
【0018】
図1〜図4に示す本実施の形態に係る食品の加熱処理装置100は、食品1を、開閉扉2を持った出し入れ口3を通じ収容して加熱処理する加熱室4、加熱室4内に配管されて加熱室4外から通された水、温水、飽和水蒸気、過熱水蒸気の少なくとも1つである熱媒体5を通電による発熱にて加熱し飽和水蒸気や過熱水蒸気として加熱室4内に放出した水蒸気9と、自身から放射する輻射熱10とを加熱処理に供する電熱管6、加熱室4内雰囲気に対流7を発生させる送風機8、加熱室4内で食品を1支持して周回移動させながら輻射熱10および水蒸気9に曝す周回機構11、加熱室4内からの排気13、排水14を図る排出口12、を備えた構成を1つの特徴としている。これにより、加熱室4内には電熱管6の蒸気吹き出し部6aから飽和水蒸気や過熱水蒸気である水蒸気9が連続的に放出しながら、加熱室4内の放出水蒸気9を含む雰囲気の余剰分が、排出口12を通じた所定の排出制限の基に、加熱室4内で生じた結露水を伴い排気13および排水14として排出されるので、加熱室4内を所定の正圧状態に保ちながら放出水蒸気9が充満していくとともに、充満した水蒸気9は一定の割合で更新されていく。このため、加熱室4内に収容された食品1はどの位置においても、加熱室4内に放出後一定時間内の放出水蒸気9と接触して加熱処理され、加熱室4内に結露水が溜まることもない。特に、加熱室4内の水蒸気9が充満した雰囲気を送風機8により対流7させることで、電熱管6による再加熱も受けながらの食品1との接触の効率、均一化を高められるし、電熱管6の通電時に発熱する熱を輻射に加え、対流による伝導にても食品1に働かせられる。また、食品1は加熱室4内で周回機構11により周回移動させるので、食品1の放出水蒸気9や電熱管6からの輻射熱への曝しの効率、均一化を高められる。
【0019】
以上の結果、加熱室4内に電熱管6から飽和水蒸気や過熱水蒸気といった供給熱媒体5の種類や電熱管6の通電電圧や長さの違いに応じた水蒸気9が連続的に放出しながら、この放出水蒸気9を含む雰囲気の余剰分の排出制限下での結露水14を伴う排気13の基に正圧を保って充満し、更新されていき、どの位置の食品1とも放出後一定時間内の放出水蒸気9と接触させて効率よくかつ均一に加熱処理できるし、加熱室4内に結露水14が溜まることもない。特に、加熱室4内の水蒸気9が充満した雰囲気の強制的な対流7による食品1との接触の効率、均一化、電熱管6による再加熱作用を高めるとともに、電熱管6の通電時に発熱する熱の輻射、対流による伝導にても食品1に働かせ、また、食品1は周回移動させて食品1の放出水蒸気9や電熱管6からの輻射熱10への曝しの効率、均一化を高められるので、熱効率、加熱効率、処理効率が高く、食品を短時間かつ均一に加熱処理、オーブン調理することができ、過熱水蒸気によるチキンなどのロースト加工に好適である。
【0020】
図1〜図4に示す本実施の形態に係る食品の加熱処理装置100は、また、食品1を、開閉扉3を持った出し入れ口2を通じ収容して加熱処理する加熱室4、加熱室4内に配管されて加熱室4外から通された水、温水、飽和水蒸気、過熱水蒸気の少なくとも1つである熱媒体5を通電による発熱にて加熱し飽和水蒸気や過熱水蒸気といった水蒸気9として加熱室4内に放出し、自らの輻射熱10と共に加熱処理に供する電熱管6、加熱室4内雰囲気に縦方向の対流7を発生させる送風機8、加熱室4内で食品1を定量ずつ支持して縦方向に周回移動させながら輻射熱10および放出水蒸気9に曝す周回機構11、加熱室4内からの排気13、排水14を図る排出口12、を備えたことを別の特徴としている。これにより、加熱室4内には電熱管6の蒸気吹き出し部6aから飽和水蒸気や過熱水蒸気である水蒸気9が連続的に放出しながら、加熱室4内の放出水蒸気9を含む雰囲気の余剰分が、排出口12を通じた所定の排出制限の基に、加熱室4内で生じた結露水14を伴い排気13されるので、加熱室4内を所定の正圧状態に保ちながら放出水蒸気9が充満していくとともに、充満した水蒸気9は一定の割合で更新されていく。このために、加熱室4内に収容された食品1はどの位置においても、加熱室4内に放出後一定時間内の放出水蒸気9と接触して加熱処理され、加熱室4内に結露水14が溜まることもない。特に、加熱室4内の水蒸気9が充満した雰囲気を送風機8により縦方向に対流させることで、電熱管6による再加熱も受けながらの、縦長な加熱室4内を有効利用して配した食品1との接触の効率、均一化を高められるし、電熱管6の通電時に発熱する熱を輻射に加え、対流による伝導にても食品1に働かせられる。また、食品1は加熱室4内で周回機構により縦方向に周回移動させるので、縦長な加熱室4を有効利用して配した食品1の放出水蒸気9や電熱管6からの熱への曝しの効率、均一化を高められる。
【0021】
以上の結果、加熱室4内に電熱管6から飽和水蒸気や過熱水蒸気である水蒸気9を連続的に放出しながら、この放出水蒸気9を含む雰囲気の余剰分の排出制限下での結露水14を伴う排気13の基に正圧を保って充満し、更新されていき、どの位置の食品1とも放出後一定時間内の放出水蒸気9と接触させて効率よくかつ均一に加熱処理できるし、加熱室4内に結露水14が溜まることもない。特に、加熱室4内の水蒸気9が充満した雰囲気の強制的な縦方向の強制対流7による縦長な加熱室4内を有効利用して配した食品1との接触の効率、均一化、電熱管6による再加熱作用を高めるとともに、電熱管6の通電時に発熱する熱の輻射、縦方向の強制対流7による伝導にても食品1に働かせ、また、食品1は縦方向に周回移動させるので、縦長な加熱室4を有効利用して配した食品1の放出水蒸気9や電熱管6からの輻射熱10への曝しの効率、均一化を高められるので、熱効率、加熱効率、処理効率がさらに高く、食品1をより短時間かつより均一に加熱処理、オーブン調理することができ、過熱水蒸気によるチキンなどのロースト加工に好適であり、平面スペースを採らない縦長な加熱室4を有効利用した多量での食品1の加熱処理に好適である。
【0022】
ここで、加熱室4は断熱壁で囲って形成し、過熱水蒸気は、電熱管6に200V〜400Vの大電流を通電して、低温の蒸気から200℃程度の過熱蒸気を通すことで700℃〜800℃程度にまで昇温させることができ、食品1の極短持間での加熱処理が可能になる。また、食品1の表面に焼きを与えられるし、食品1の水分を余り奪わない特徴がある。このとき、電熱管6は500℃程度以上で赤熱し温度の高い遠赤外線の輻射熱10を放射し、食品1を風味よく焦げ目を付けるのに好適となる。
【0023】
さらに、送風機8は、図1、図2に示すように加熱室4の天井部に設けられて、下向きの中央吸気口8aから雰囲気を吸込み羽根8b外周から排出する図5、図6に示すようなケーシングレス遠心ファンよりなり、羽根板8b1は駆動モータ8cの駆動軸8dに連結される後部基板8fと吸気口8aを形成する前面板8gとの間に固定している。電熱管6は、加熱室4の天井部外から引き込んで少なくとも送風機8の外周と加熱室4内周との間に螺線状に配管されて、加熱室4底部の周辺に位置する蒸気吹き出し部6aに至るように設けられ、排出口12は、加熱室4の底部のほぼ中央部に下向きに開口して設けられたものとしている。これにより、送風機8が加熱室4の天井部に位置して、加熱室4内の水蒸気9が充満している雰囲気を下向きの中央吸気口8aから吸い込み、羽根8b周から電熱管6の螺線配管部6bを放射方向に通過するように排出するので、加熱室4内の雰囲気に、加熱室4の中央部を送風機8の吸気口8aまで立ち上がる中央上昇流と、送風機8の羽根8b外周からまわりに排出されて電熱管6の再加熱により潜熱を高められた後、加熱室4の周壁に沿い底部側に流れて中央上昇流7aに繋がる周辺下降流7bとによるドーナツ型の対流7を、加熱室4内が縦長でも乱れや滞留域なく与えながら、食品1との接触の効率、均一化をさらに高められるので、多量の食品1の加熱処理にさらに好都合であるし、排出口12には上昇流7aが対向することで加熱室4内の雰囲気を排出口12から排気13する動圧を与えず、加熱室4内の正圧による自然排気を乱すことはない。
【0024】
以上の結果、送風機8が加熱室4の天井部にて、加熱室4内の雰囲気に、中央部上昇流7aをなして吸い上げ、羽根8b外周から排出して加熱室4の周壁に沿い底部側に周辺下降流7bをなして中央上昇流7aに繋がる縦向きでドーナツ型の強制対流7を、加熱室4内が縦長でも乱れや滞留域なく与えながら、底部の周辺に位置する蒸気吹き出し部12から放出される飽和水蒸気や過熱水蒸気である水蒸気9を対流7中に巻き込んで、食品1との接触の効率、均一化をさらに高められるし、排出口12には上昇流7aが対向することで加熱室4内の雰囲気を排出口12から排気する動圧を与えず、加熱室4内の正圧による自然排気を乱すことはない。
【0025】
さらに、送風機8は、吸気口8aの下に吸気ガイド筒21が設けられたものとしている。このような吸気口8a下の吸気ガイド筒21は、吸気口8aに吸い込まれる加熱室4内雰囲気の流速を高めるので、送風機8がノンケーシングの遠心ファンであっても、雰囲気をより遠くから吸い込むのに有利となり、その分より強く外周から排出してより遠くへ送れるので、より背の高い縦長な加熱室に対応できる。併せ、羽根8bから外周に排出され、加熱室4の周壁に沿って下に向かう周辺下降流7bが吸気口8aに吸気される中央上昇流7aとが衝突して乱れ合うのを防止する整流効果を発揮するので、加熱室4内での対流7の勢力を高められる。従って、送風機8がノンケーシングの簡易遠心ファンでも、吸気口8a下の吸気ガイド筒21により吸い込み雰囲気の流速を高めて、雰囲気をより遠くから吸い込みやすく、より強くより遠くへ送れるので、より背の高い縦長な加熱室4での多量の食品1の加熱処理に対応できる。
【0026】
さらに、送風機8は、駆動モータ8cが加熱室4の天井部外に加熱室4との間に断熱構造31を設けて設置され、駆動モータ8cから加熱室4内に臨んでいる駆動軸8dにファン8bが連結されたものとしている。この結果、駆動モータ8cは加熱室4の天井部外への設置部の加熱室4との断熱構造31により、加熱室4側からの熱的安全を確保して、加熱室4内に臨ませた駆動軸8dによるファン8bを回転駆動することができる。断熱構造31は加熱室4の天井外面に張り合わせた遮熱板でよいが、他の構造でよい。また、駆動モータ8cはグランドパッキン32を介して設置すると、加熱室4側への振動の伝達や音の共鳴、増幅を防止して静音運転ができる。
【0027】
本実施の形態の食品1の加熱処理装置100は、ローストチキン用のチキンブロックを処理対象となる食品1として取り扱う場合の例を示しており、中央に挿し通した串22の両端を支持して周回機構11により加熱室4内を縦向きに周回させながら加熱処理に供するようにしてある。このために、周回機構11は、加熱室4内に上下に配した一対の回転軸23の両側にスプロケット24を装着し、上下に対応する一方側スプロケット24同士と、他方側のスプロケット24同士とに、それぞれチエン25を懸架し、両側のチエン25間に前記串22の両端部を着脱できるように掛け留めて食品1を支持し、チエン25を周回駆動することにより食品1を繰り返し周回移動させるようにしている。チエン25の周回駆動は一方の回転軸23、具体的には下側の回転軸23上の駆動スプロケット26に図示しない駆動モータからの回転を伝達することにより行うようにしている。このような周回機構11は既に知られるものでよく詳述しないし、周回は回転も含み、食品1の支持方式を周回されるトレーで受けるもの、多段に設置された回転トレーで受けるもの、その他を含んで種々な形態のものを採用することができる。
【0028】
図7、図8に示す本発明の実施の形態に係る食品の加熱処理装置の別の具体例は、送風機8を加熱室4の1つの側壁、具体的には開閉扉3を持った側壁に隣接する側壁側によって設置し、吸気口8aが反対側の側壁に対向し、加熱室4内の雰囲気に、加熱室4の中央部を吸気口8aとの対向壁測から吸気口に向かう横向きの中央流と、送風機8の羽根外周からまわりに排出されて電熱管6の再加熱により潜熱を高められた後、加熱室4の前記中央流まわりの周辺壁に沿い前記対向壁側に流れて前記中央流に繋がる周辺流とによるドーナツ型の対流を、加熱室4内が図示例のように横長でも乱れや滞留域なく与えながら、食品1との接触の効率、均一化をさらに高められるので、先の具体例と異なり、多量の食品1の加熱処理にさらに好都合である。本具体例では食品1は支持ローラ40で出し入れしやすく支持した調理容器41に収容して調理に供しており、食品1への加熱は調理容器41を介したその外回りから、収容食品1の全体により均一に及びやすくしている。また、開閉扉3は横軸まわりに開閉するものとして、重くなりがちな調理容器41は、真横の開き状態に支持した開閉扉3の内面に設けたガイドローラ44上から支持ローラ40上に軽快に移し入れ、また、逆に支持ローラ40上から真横の開き状態に支持した開閉扉3の内面に設けたガイドローラ44上に軽快に引き出せるようにしている。
【0029】
また、図7、図8に仮想線で示すように、金属製などとした耐熱のコンベア42の少なくとも搬送路43を搬入口51、搬出口52を通じ、食品1や調理容器41を加熱室3内を通過させながら加熱処理に連続に供せるようにして、作業効率をたかめている。ここで、加熱室3を通過中に処理を終えるには、加熱室3の食品1等通過方向の大きさと、コンベア42の搬送速度との積が関係し、場合により加熱室3の大きさを図7に仮想線で示すように大きくしたり、複数の加熱室3を繋げる対応が必要になる。もっとも、食品1等を一時加熱室3内に停止させる間欠搬送をすることでも対応できる。
【0030】
さらに、送風機8は、図9に示すようなクロスフローファンを53用いることもできる。これによれば、加熱室3の1つの壁から、これに隣れる一方の隣接壁に沿う層流を形成し、これがその対向壁に到達して前記一方の隣接壁に対向する対向壁に向け向きを曲げられて後、対向壁に沿って前記1つの壁に戻って、1つの壁に沿って隣接壁側で吸引する対流を、高いきな幅で生じさせられるので、クロスフローファン53を加熱室3の横長方に対応して設けることで、均一な対流を形成しやすい利点がある。特に、図7に仮想線で示すようにコンベア42を用いる場合の搬入口51、搬出口52を横断するエアカーテン54を形成するようにすると、搬入口51、搬出口52をレトルト食品が開封端を上にした嵩高な姿勢で通過できる大きなものとしても、加熱室4内で循環させる水蒸気9の過剰な吹き出しを防止しながら、搬入され、搬出されるレトルト食品の上向き開封端から過熱水蒸気9を吹き込むようにすることで、加熱処理が十分な殺菌効果、例えば1年程度の腐敗の防止ができる殺菌を伴って達成できる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、食品の蒸気を利用した蒸し、焼きといった加熱処理に実用して、簡単かつ小型で安価な構造にて、塊状食品でもむらなく、短時間で食品を加熱処理できる。
【符号の説明】
【0032】
1 食品
2 出し入れ口
3 開閉扉
4 加熱室
5 熱媒体
6 電熱管
6a 蒸気吹き出し部
7 対流
7a 中央上昇流
7b 周辺下降流
8 送風機
8a 吸気口
8b ファン
8c 駆動モータ
8d 駆動軸
9 水蒸気
10 輻射熱
11 周回機構
12 排出口
13 排気
14 排水
21 吸気ガイド筒
22 串
23 回転軸
24 スプロケット
25 チエン
31 断熱構造
40 支持ローラ
41 調理容器
42 コンベア
43 搬送路
44 ガイドローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を、収容して、または食品の搬入口、搬出口を通じ通過させながら、加熱処理する加熱室、加熱室内に配管されて加熱室外から通された水、温水、飽和水蒸気、過熱水蒸気の少なくとも1つである熱媒体を通電による発熱にて加熱し飽和水蒸気や過熱水蒸気として加熱室内に放出し、自らの輻射熱と共に加熱処理に供する電熱管、加熱室内雰囲気に対流を発生させる送風機、加熱室内で食品を支持しあるいは通過させながら輻射熱および水蒸気に曝す食品支持機構、加熱室底部で加熱室からの排気、排水の内の少なくとも排水を図る排出口、を備えたことを特徴とする食品の加熱処理装置。
【請求項2】
食品を、収容して加熱処理する加熱室、加熱室内に配管されて加熱室外から通された水、温水、飽和水蒸気、過熱水蒸気の少なくとも1つである熱媒体を通電による発熱にて加熱し飽和水蒸気や過熱水蒸気として加熱室内に放出し、自らの輻射熱と共に加熱処理に供する電熱管、加熱室内雰囲気に縦方向の対流を発生させる送風機、加熱室内で食品を定量ずつ支持して縦向きまたは横向きに周回移動させながら輻射熱および放出水蒸気に曝す周回機構、加熱室の底部で加熱室内からの排気、排水の内の少なくとも排水を図る排出口、を備えたことを特徴とする食品の加熱処理装置。
【請求項3】
送風機は、加熱室の天井部または側壁部に設けられて、下向きまたは横向きの中央吸気口から雰囲気を吸込み羽根外周から排出するケーシングレス遠心ファンよりなり、電熱管は、加熱室外から引き込んで少なくとも送風機の外周と加熱室内周との間に螺線状に配管されて、加熱室内適所に位置する蒸気吹き出し部に至るように設けられた請求項1に記載の食品の加熱処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−109975(P2011−109975A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270228(P2009−270228)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(591130537)株式会社両双 (9)
【Fターム(参考)】