説明

食品の脂質酸化抑制剤、その製造方法、及び調理加工品又は調理加工用調味料の脂質酸化抑制方法

【課題】 様々な食品に汎用性高く利用できる、食品の脂質酸化抑制剤、その製造方法、及び調理加工品又は調理加工用調味料の脂質酸化抑制方法を提供する。
【解決手段】 魚節類から抽出して得られた魚節抽出物を有効成分として含有させることにより、食品の脂質酸化抑制剤を得る。前記魚節抽出物は、アルコール含有溶媒を用いた多段抽出、グラジエント抽出、又はドリップ抽出により魚節類から好適に調製することができる。また、前記脂質酸化抑制剤を、原料に魚節抽出物を含まない調理加工品又は調理加工用調味料の原料配合時又は調理工程中に添加することにより、その脂質酸化を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鰹節エキスや鰹だし等の魚節抽出物を用いた、食品の脂質酸化抑制剤、その製造方法、及び調理加工品又は調理加工用調味料の脂質酸化抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
魚肉や畜肉を用いた食品は、その調理・加工の工程中や保存中において脂質酸化による品質の劣化が起こることが知られている。食品の脂質酸化は、その食品の風味を損なうだけではなく、長期にわたり摂取をすると生活習慣病の原因になるとも考えられている。したがって、食品の脂質酸化を抑制することは、特に中食、外食といった加工食品業界において、重要な課題となっている。
【0003】
食品の脂質酸化を抑制する方法としては、ビタミンCやビタミンE等の酸化防止剤が利用されている。しかしながら、ビタミンCやビタミンE等の酸化防止剤を加工食品に使用する場合には食品添加物として表示しなければならず、食の安全、健康志向を求める近年の消費者の要求を考慮すると、消費者からの信頼を得ることができる新たな食品の脂質酸化抑制剤の提供が望まれていた。
【0004】
このような問題に対して、例えば下記特許文献1には、魚節原料の粉砕物に魚節エキスを加えて混練した後、造粒することを特徴とする風味調味料の製造方法が開示されており、魚節エキスの有する抗酸化力により、得られた風味調味料の酸化の進行を遅らせて、香気・品質の劣化を防止できることが記載されている。また、下記特許文献2には、魚節の製造により生成されるエキス液と食塩との混合液中への魚介類の浸漬にて得られた液体であることを特徴とする液体調味料が開示されており、荒節を蒸気殺菌する際の蒸煮液をエキス液として使用することにより、この蒸煮液が有する抗酸化作用やマスキング作用により良好な風味を有する液体調味料が得られることが記載されている。
【特許文献1】特開平6−303938号公報
【特許文献2】特開平10−94378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の魚節エキスによれば、魚節粉砕物からなる風味調味料の香気・品質の劣化を防止することができるが、魚節エキスを他の食品に添加した場合の酸化防止効果や風味等については何ら開示していない。また、特許文献2の魚節の製造により生成されるエキス液によれば、魚介類を原料とする液体調味料の風味を良好なものとすることができるが、該エキス液を他の食品に添加した場合の酸化防止効果や風味等については、明らかではなかった。
【0006】
また、食品素材もしくは食品素材由来の抗酸化素材(物質、食品)は他にも知られているが、使用した場合、使用した調理加工食品の風味を損なってしまうため、使用範囲が限られてしまう傾向があった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、様々な食品に汎用性高く利用できる、食品の脂質酸化抑制剤、その製造方法、及び調理加工品又は調理加工用調味料の脂質酸化抑制方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、鰹節エキスや鰹だし等の魚節抽出物を、従来これらを調味・呈味付与原料として使用することのなかった食品の調理・加工の原料配合時又は調理工程中において添加することにより当該食品の脂質酸化を抑制し、それらの風味を良好に保つことができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の食品の脂質酸化抑制剤は、魚節類から抽出して得られた魚節抽出物を有効成分として含有することを特徴とする。
【0010】
本発明の食品の脂質酸化抑制剤によれば、食品中の脂質の酸化を抑制して、風味を良好に保つことができる。
【0011】
本発明においては、前記魚節抽出物が、抽出溶媒として水又はアルコール溶液を用いて得られた抽出物であることが好ましい。これによれば抽出が容易である。
【0012】
本発明においては、前記魚節抽出物が、抽出溶媒としてアルコール濃度の異なる3種類以上のアルコール溶液を用いて魚節類からの抽出を行い、各濃度で抽出されたエキスを混合して得られた抽出物であることが好ましい。これによれば、アルコール溶液に対する溶解性の異なる脂質酸化抑制成分を含有し、尚且つ、アルコール溶液に対する溶解性の異なる香気成分及び呈味成分を含有するので、脂質酸化抑制効果が高く、呈味性に優れている。
【0013】
本発明においては、前記魚節抽出物が、粉砕した魚節類をカラム又はタンクに充填し、該カラム又はタンクにアルコール濃度を連続的又は3段階以上の段階的に変化するように通液することにより得られた抽出物であることが好ましい。これによれば、前記アルコール溶液に対する溶解性の異なる脂質酸化抑制成分を含有し、尚且つ、前記アルコール溶液に対する溶解性の異なる香気成分及び呈味成分を含有する前記魚節抽出物を、効率よく得ることができる。
【0014】
本発明においては、前記魚節抽出物が、下部にフィルターを備えた容器に粉砕した魚節類を充填し、該魚節充填層の表面に抽出溶媒を滴下して、前記表面に前記抽出溶媒が液溜めされない状態で通液することにより得られた抽出物であることが好ましい。これによれば、前記容器に充填された魚節類に抽出溶媒を均一に分散させつつ通液させることができ、その抽出溶媒によって脂質酸化抑制成分、香気成分及び呈味成分が抽出されるので、これらの成分を高濃度に含有する前記魚節抽出物を得ることができ、尚且つ、その品質のばらつきを抑えることができる。
【0015】
本発明においては、前記魚節類が、鰹節、鯖節、まぐろ節、メジ節、いわし節、あじ節、煮干、アゴ節、及びそれらの節削り、魚節類生産過程で生じる副産物、又はこれらの混合物から選ばれた少なくとも一種であることが好ましい。
【0016】
一方、本発明の食品の脂質酸化抑制剤の製造方法は、魚節抽出物を有効成分として用いた食品の脂質酸化抑制剤を製造する方法において、抽出溶媒としてアルコール濃度の異なる3種類以上のアルコール溶液を用いて、魚節類からエキスを抽出し、各濃度で抽出されたエキスを混合することにより、前記魚節抽出物を得ることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の食品の脂質酸化抑制剤の製造方法のもう一つは、魚節抽出物を有効成分として用いた食品の脂質酸化抑制剤を製造する方法において、粉砕した魚節類が充填されたカラム又はタンクに、アルコール濃度を連続的又は3段階以上の段階的に変化するように通液することにより、前記魚節抽出物を得ることを特徴とする。
【0018】
本発明の上記製造方法によれば、食品の脂質酸化抑制剤に、アルコール溶液に対する溶解性の異なる脂質酸化抑制成分を含有させることができ、尚且つ、アルコール溶液に対する溶解性の異なる香気成分及び呈味成分を含有させることができるので、脂質酸化抑制効果が高く、呈味性に優れた食品の脂質酸化抑制剤を得ることができる。
【0019】
更に、本発明の食品の脂質酸化抑制剤の製造方法のもう一つは、魚節抽出物を有効成分として用いた食品の脂質酸化抑制剤を製造する方法において、下部にフィルターを備えた容器に粉砕した魚節類を充填し、該魚節充填層の表面に抽出溶媒を滴下して、前記表面に前記抽出溶媒が液溜めされない状態で通液することにより、前記魚節抽出物を得ることを特徴とする。
【0020】
本発明の上記製造方法によれば、前記容器に充填された魚節類に抽出溶媒を均一に分散させつつ通液させることができ、その抽出溶媒によって脂質酸化抑制成分、香気成分及び呈味成分が抽出されるので、これらの成分を高濃度に含有する前記魚節抽出物を得ることができ、尚且つ、その品質のばらつきを抑えることができる。したがって、脂質酸化抑制効果が高く、呈味性に優れた食品の脂質酸化抑制剤を安定に製造することができる。
【0021】
本発明のもう一つは、原料に魚節抽出物を含まない調理加工品又は調理加工用調味料の脂質酸化を抑制する方法であって、前記本発明による食品の脂質酸化抑制剤を、前記調理加工品又は調理加工用調味料の原料配合時又は調理工程中に添加することを特徴とする調理加工品又は調理加工用調味料の脂質酸化抑制方法を提供する。
【0022】
本発明の上記脂質酸化抑制方法によれば、従来、魚節抽出物を調味・呈味付与原料として使用することのなかった調理加工品又は調理加工用調味料の調理・加工の原料配合時又は調理工程中ににおいて、前記本発明である食品の脂質酸化抑制剤を添加することにより、当該調理加工品又は調理加工用調味料の脂質酸化を抑制し、それらの風味を良好に保つことができる。
【0023】
本発明においては、前記調理加工品又は調理加工用調味料が、タレ類、ソース類、ドレッシング、マヨネーズ、煮物、シュウマイ、餃子、中華まん、魚のつみれ、鶏肉団子、豚肉団子、牛肉ハンバーグ、カレー用調味ベース、シチュー用調味ベース、パスタソース用調味ベース、ラーメン用調味ベース、練製品、チーズ、乳油製品、肉味噌、いなり寿司からなる群より選ばれた一種であることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の食品の脂質酸化抑制剤によれば、魚節類から抽出して得られた魚節抽出物を有効成分として含有するので、食品中の脂質の酸化を抑制して、風味を良好に保つことができる。また、本発明の食品の脂質酸化抑制剤の製造方法によれば、食品の脂質酸化抑制剤にアルコール溶液に対する溶解性の異なる脂質酸化抑制成分を含有させることができるので、脂質酸化抑制効果が高く、尚且つ、アルコール溶液に対する溶解性の異なる香気成分及び呈味成分を含有させることができるので、呈味性に優れた食品の脂質酸化抑制剤を得ることができる。
【0025】
本発明によれば、従来、魚節抽出物を調味・呈味付与原料として使用することのなかった調理加工品又は調理加工用調味料の調理・加工において、本発明である食品の脂質酸化抑制剤を添加することにより、当該調理加工品又は調理加工用調味料の脂質酸化を抑制し、それらの風味を良好に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明における魚節抽出物とは、魚節類から得られた抽出物を意味しており、その原料や抽出法は特に制限されない。魚節類としては、かつお節や、さば節、まぐろ節、メジ節、いわし節、あじ節、煮干、アゴ節、宗田節、及びそれらの節削り、又はこれらの魚節類の生産過程で生じる副産物等が挙げられるが、好ましくは、荒節、枯節、かつお裸節等のかつお節類及びこれらの生産過程で生じるユリ下、G粉、かつお血合い粉等の副産物が用いられる。なお、ユリ下とは、荒節を成形する際に生じる破片であり、G粉は荒節表面のタール分をグラインダーで除去する際に発生する削り粉であり、血合い粉は更に血合部を削り落とす際の削り粉である。
【0027】
魚節類から抽出物を得るための抽出方法としては、食品に使用できる手法、溶媒等を用いるものであれば特に制限されないが、従来知られている鰹だし、鰹エキス等の製造のための抽出方法を用いることができる。抽出溶媒としては、通常の調理・加工において用いられている水、及び/又はエタノールを用いることが好ましい。抽出効率を上げるためには、抽出原料となる魚節類の粉砕大を、3メッシュ以上に揃えることが好ましく、8〜32メッシュに揃えることがより好ましい。
【0028】
また、以下に説明する多段抽出法、グラジエント抽出法、もしくはドリップ抽出法を用いることが好ましい。これらの手法により得られた抽出物は従来用いられている手法によって得られた抽出物より、抗酸化活性に優れ、風味の面においても優れている。
【0029】
以下には、魚節抽出物を得るための抽出方法として好ましく用いることができる多段抽出法、グラジエント抽出法、もしくはドリップ抽出法について具体的に説明する。
【0030】
本発明において、多段抽出法又はグラジエント抽出法とは、上記粉砕した魚節類を原料とし、抽出溶媒としてアルコール濃度の異なるアルコール溶液を用いて抽出を行い、各濃度で抽出されたエキスを混合する抽出方法である。そのアルコール溶液のアルコール濃度は、3種類以上が好ましく、4種類以上がより好ましい。なお、アルコールの種類は、飲食品の製造に使用可能なエタノールが好ましい。
【0031】
上記多段抽出法又はグラジエント抽出法の好ましい態様においては、上記抽出原料をカラム又はタンクに充填し、アルコール溶液のアルコール濃度を変化させながら通液して溶媒抽出してエキスを得る。これによれば、1つのカラム又はタンクから抽出されるエキスが、異なるアルコール濃度のアルコール溶液で抽出されたものの混合物となるので、カラムやタンクの設置数が少なくてすみ、しかも効率よくエキスを得ることができる。
【0032】
また、上記抽出原料が充填されたカラム又はタンクに、異なるアルコール濃度のアルコール溶液を、アルコール濃度が連続的又は3段階以上の段階的に変化するように通液してエキスを得ることが好ましい。これによれば、アルコール溶液に対する溶解性の異なる成分を含有するエキスを効率よく得ることができる。
【0033】
カラム又はタンクを用いる場合には、高濃度のエキスを得られる点では、カラム式抽出法が好ましく用いられ、抽出原料としてカラムに充填した場合の圧力損失が大きなものを用いる場合はバッチ式抽出法が好ましく用いられる。また、抽出装置として抽出タンクを用いる場合は、抽出残渣を再度タンクに戻して、異なるアルコール濃度のアルコール溶液で抽出してもよく、タンクの出口にメッシュ等を設置し、擬似カラム様に用いても良い。更にまた、2種類以上の魚節類を原料として使用する場合には、それらをブレンドした後カラム又はタンクに投入する方法と順次原料を投入し多層を作る方法があるが、適宜その方法を選ぶことができる。
【0034】
上記抽出原料を効率よく、かつ均一にカラム又はタンクに充填するため、適量(好ましくは抽出原料100質量部に対して10〜70質量部、より好ましくは20〜50質量部)の抽出溶媒に抽出原料を混合して充填することが好ましい。この時に用いる抽出溶媒のアルコール濃度は、後の抽出工程で用いる溶媒のアルコール濃度と同じものを用いることが好ましい。
【0035】
また、抽出効率をより向上させるために、抽出原料を充填したカラム又はタンクを後述する抽出温度で0.5〜1時間静置保温してから抽出を開始することが好ましい。抽出操作は、抽出溶媒をカラム又はタンクの上部若しくは下部より通液して行うことができる。
【0036】
抽出溶媒のカラム又はタンクへの通液量は、適宜設定することができるが、通常、抽出原料100質量部に対して、カラム又はタンクからの抽出液量として20〜200質量部となるように設定することが好ましく、40〜150質量部となるように設定することがより好ましい。抽出溶媒の通液量が少な過ぎると充分な抽出効率を得ることができず、通液量が多過ぎると得られる抽出液の固形分濃度が低くなり、濃縮等に手間がかかるため好ましくない。
【0037】
また、抽出溶媒のカラム又はタンクへの通液速度は、SV=0.1〜2.5h−1が好ましく、SV=0.5〜1.5h−1がより好ましい。通液速度が上記範囲未満では抽出に時間がかかり、上記範囲を超えると抽出効率が悪く、抽出液の固形分濃度が低くなり、濃縮等に手間がかかるため好ましくない。
【0038】
また、抽出温度は20〜80℃であることが好ましく、20〜60℃であることがより好ましい。抽出温度が上記温度範囲より低い場合は、充分な抽出効率を得ることができず、上記温度範囲より高い場合には、風味の熱による劣化や、エグ味成分や脂肪等の品質の面で好ましくない成分も抽出されるため好ましくない。
【0039】
本発明において、上記に説明した多段抽出法又はグラジエント抽出法のうち、多段抽出法とは、上記アルコール濃度の異なるアルコール溶液を用いた抽出方法において、抽出溶媒のアルコール濃度が段階的に変化するように抽出原料に接触させて抽出物を得る方法を意味し、グラジエント抽出とは、抽出溶媒のアルコール濃度が連続的に変化するように抽出原料に接触させて抽出物を得る方法を意味する。
【0040】
本発明において、アルコール溶液のアルコール濃度を段階的に変化させて通液する場合には、複数濃度のアルコール溶液を用意しておき、通液するアルコール溶液を経時的に切り替える方法等が採用できる。なお、アルコール濃度を段階的に変化させる場合、3段階以上に変化させて通液することが好ましく、4段階以上に変化させることがより好ましい。
【0041】
以下には、グラジエント抽出法について更に具体的に説明する。グラジエント抽出法によれば、多段抽出法に比べ、水溶性成分及び脂溶性成分をより効率よく抽出でき、かつ、抽出工程がより簡便である。
【0042】
グラジエント抽出法において、抽出溶媒のアルコール濃度を低濃度から高濃度へ連続的に変化させる場合には、上記抽出溶媒のアルコール初濃度は0(水)〜50%(v/v)が好ましく、0(水)〜20%(v/v)がより好ましい。また、抽出溶媒のアルコール終濃度は、50〜100%(v/v)が好ましく、80〜100%(v/v)がより好ましい。
【0043】
一方、抽出溶媒のアルコール濃度を高濃度から低濃度へ連続的に変化させる場合には、上記抽出溶媒のアルコール初濃度は50〜100%(v/v)が好ましく、80〜100%(v/v)がより好ましい。また、抽出溶媒のアルコール終濃度は、0(水)〜50%(v/v)が好ましく、0(水)〜20%(v/v)がより好ましい。
【0044】
また、抽出効率をより向上させるために、抽出原料を充填したカラム又はタンクを後述する抽出温度で0.1〜5時間、好ましくは0.5〜1時間静置保温してから抽出を開始することが好ましい。抽出操作は、抽出溶媒をカラム又はタンクの上部若しくは下部より通液して行うことができる。
【0045】
抽出装置としてカラムを用い、アルコール溶液のアルコール濃度に連続的な変化をつけながら通液する場合、抽出溶媒のアルコール濃度へ勾配をかける手段としては特に制限されず、公知の手段を採用することができる。例えば、異なるアルコール濃度を有する2種類のアルコール溶液A、B(どちらか一方はアルコール濃度0%(v/v)、すなわち水であってもよい)を用い、それぞれの溶液の流速を調整しながらカラムに通液する方法や、アルコール溶液Aをカラムに通液しながら、アルコール溶液Bをアルコール溶液Aに混合する方法等が挙げられるが、一定の流速で通液することができる点で後者の方法の方が好ましい。
【0046】
また、連続的にアルコール濃度を変化させる場合には、例えば、異なるアルコール濃度を有する2種類のアルコール溶液A、B(どちらか一方はアルコール濃度0%(v/v)、すなわち水であってもよい)を用い、一方を抽出タンク内に投入し、抽出原料とブレンドし、更に攪拌しながら、任意の流速で抽出液を排出・回収し、同時に同じもう一方のアルコール溶液を任意の流量で投入することにより可能となる。
【0047】
抽出時におけるアルコール濃度の勾配又はアルコール濃度の変化は、目的とする風味や呈味のバランス等に応じて適宜設定することができ、高濃度から低濃度へ変化させてもよく、低濃度から高濃度へ変化させてもよい。例えば、香気成分に重点を置いた場合、アルコール濃度を高濃度から低濃度へ変化させることにより、香気成分をより効率的に抽出することができる。具体的には、アルコールの初濃度を、好ましくは50〜100%(v/v)、より好ましくは80〜100%(v/v)とし、アルコールの終濃度を、好ましくは0(水)〜50%(v/v)、より好ましくは0(水)〜20%(v/v)とすればよい。
【0048】
なお、得られる抽出液のアルコール濃度が高すぎると、アルコール除去の手間が余計にかかるため、好ましくは抽出液のアルコール濃度が70%(v/v)以下となるように、抽出溶媒のアルコール濃度やカラム又はタンクへの通液量を設定することが好ましい。例えば、抽出溶媒のアルコール初濃度を99%(v/v)、終濃度を0%(v/v)に設定した場合、抽出原料100質量部に対して、50質量部の99%(v/v)アルコールを、該アルコールの通液速度と同じ流速で水を混合しながらカラム又はタンクへ通液して、抽出液100質量部全量を回収することにより、抽出原料100質量部に対してアルコール濃度50%(v/v)の抽出液100質量部を得ることができる。また、抽出原料100質量部に対して、20質量部の99%(v/v)アルコールを、該アルコールの通液速度と同じ流速で水を混合しながらカラム又はタンクへ通液して、抽出液100質量部全量を回収することにより、抽出原料100質量部に対してアルコール濃度20%(v/v)の抽出液100質量部を得ることができる。なお、この時、水の混合流速を任意に設定・変化させることにより、アルコール濃度の濃度変化を任意に設定することができる。
【0049】
以下には、更に、ドリップ抽出法について具体的に説明する。
【0050】
ドリップ抽出法においては、下部にフィルターを備えた容器に粉砕した魚節類を充填し、該魚節充填層の表面に抽出溶媒を滴下して、前記表面に前記抽出溶媒が液溜めされない状態で通液する。ドリップ抽出法によれば、容器に充填された魚節類に抽出溶媒を均一に分散させつつ通液させることができるので、脂質酸化抑制効果が高く、より品質の安定したエキスを得ることができる。
【0051】
上記ドリップ抽出法において、「抽出溶媒が液溜めされない状態で通液する」とは、滴下した抽出溶媒が粉砕した魚節類に浸透して、魚節充填層の上部表面において液溜されない状態を保ちながら通液することを意味する。
【0052】
上記ドリップ抽出法においては、粉砕した魚節類が下部にフィルターを備えた容器に充填されて、一定の容積を有する魚節充填層を形成する。
【0053】
上記魚節充填層の上部表面において抽出溶媒が液溜されない状態を保つためには、抽出溶媒の滴下速度を魚節充填層の断面積に対して410リットル/h・m以下で滴下することが好ましく、効率、作業性を考慮すると300〜410リットル/h・mで滴下することがより好ましい。
【0054】
上記抽出溶媒の滴下ためには、上記魚節充填層の上方に備えられた複数のノズルを有するシャワーノズル、又はスプレイノズル等の抽出溶媒滴下口から、シャワー状、噴霧状、液滴状に滴下することが好ましい。また、ノズルを回転させながら滴下することが好ましい。これによれば、抽出溶媒を上記魚節充填層の上部表面に均一に滴下することができる。
【0055】
上記容器としては、カラム又はタンク等を用いることができる。また、上記フィルターは、容器に充填される魚節類の流出を防ぐことができ、且つ、抽出エキスの通過を許容する特性を有するフィルターであればよい。具体的には、ろ紙、ろ布、セラミック、樹脂、ろ過助剤等が挙げられる。
【0056】
上記フィルターは、上記魚節充填層の下部表面の全面に接するように容器の下部に配され、抽出液エキスの流出を許容する。したがって、魚節充填層の下部表面において抽出液エキスの流出が阻害されることによる抽出溶媒の移動の乱れを引き起こすことがない。
【0057】
また、充填する魚節類の粉砕大は40メッシュ以上に粉砕したものであることが好ましく、3メッシュ〜32メッシュに粉砕したものであることがより好ましい。40メッシュ以上であると、通液しにくくなり好ましくない。また、3メッシュ以下であると、抽出効率が悪くなり好ましくない。
【0058】
上記魚節充填層の高さは30cm〜60cmであることが好ましく、40cm〜60cmであることがより好ましい。60cm以上であると通液しにくくなるので好ましくない。
【0059】
上記ドリップ抽出法においては、抽出溶媒として水又はアルコール溶液を用いることができる。アルコール溶液としては1〜80質量%のアルコール含水を好ましく使用することができ、単一もしくは異なる濃度のアルコール溶液又は水を複数回に分けて使用してもよい。また、アルコール溶液を滴下後、続けて水を滴下させ所定量まで抽出エキスを回収してもよい。
【0060】
抽出エキスは任意の濃度で抽出を終了することができるが、上記魚節充填層を形成する粉砕した魚節類の質量に対し50〜250%を回収することが好ましく、100〜200%を回収することがより好ましい。
【0061】
本発明においては、上記の方法等によって得られた魚節類抽出エキスを、そのまま、又は、公知の方法により適宜濃縮、乾燥することでアルコール除去及び/又は固形分調整して、食品の脂質酸化抑制のための有効成分である魚節抽出物として用いることができる。
【0062】
本発明が適用される食品としては、(1)タレ類:ウナギのタレ、焼き鳥のタレ、焼肉(鶏、豚、牛、ラム)タレ、牛丼タレ等、(2)調理済み食品(冷凍、チルド品含む):煮魚、豚の角煮、鶏肉の煮物、牛スジの煮込み、シュウマイ、餃子、中華まん等、(3)半調理食材:魚のつみれ、鶏肉団子、豚肉団子、牛肉ハンバーグ等、(4)調味ベース:麻婆豆腐のタレ、青椒肉絲のタレ、カレー、シチュー、パスタソース、ラーメン等、(5)練製品:蒲鉾、ちくわ、ソーセージ、テリーヌ等、(6)フライ系惣菜:コロッケ、とんかつ、魚介フライ等、(7)漬け込みタレ:焼鮭、魚の照り焼き、唐揚げ、焼き鳥、焼肉、焼豚等、(8)その他:チーズ、乳油製品、肉味噌、いなり寿司、ソース類、ドレッシング、マヨネーズ等が挙げられるが、特にこれらに限定されることなく、脂質を含有する食品であればよい。
【0063】
なお、上記の食品のうち、タレ類、ソース類、ドレッシング、マヨネーズ、煮物、シュウマイ、餃子、中華まん、魚のつみれ、鶏肉団子、豚肉団子、牛肉ハンバーグ、カレー用調味ベース、シチュー用調味ベース、パスタソース用調味ベース、ラーメン用調味ベース、練製品、チーズ、乳油製品、肉味噌、又はいなり寿司は、従来、魚節抽出物を調味・呈味付与原料として使用することのなかった調理加工品又は調理加工用調味料である。
【0064】
これら食品への上記魚節抽出物の添加方法としては、その用いられる食品や、使用方法により異なるので特定されるものではないが、食材に直接まぶしたり、調味液に配合したり、加工食品の原料混合時に配合する等により行なえばよい。
【0065】
これら食品への上記魚節抽出物の有効添加量としては、その用いられる食品や、使用方法により異なるので特定されるものではないが、上記魚節抽出物をブリックス値10%の溶液に調製した場合の添加量に換算して、例えば、煮魚、豚の角煮等の煮物に添加する場合はそれらの調味液に対して1〜5質量%、塩鮭、唐揚げ、焼き鳥、焼豚、蒸し鳥等の漬け込み液に添加する場合は漬け込み液に対して1〜5質量%、もしくは素材となる魚・肉の切り身に対して0.2〜0.5質量%、ブリの照り焼き、ウナギのタレ(付け焼き)、焼き鳥等のタレに添加する場合はタレに対して1〜5質量%、つみれ、練り製品(蒲鉾等)、ハム、ソーセージ、豚団子、鶏つくね、ハンバーグ、シュウマイ、餃子、中華まんの中種等に練りこむ場合には、全体に対して1〜5質量%添加すればよい。
【実施例】
【0066】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0067】
<実施例1>
市販の鰹節厚削り品30gに水1000gを加え、微沸騰で10分間抽出したのち、固液分離を行い、鰹節抽出物(i)を得た。
【0068】
次いで下記の表1に示した配合割合で原材料を混合して魚煮付用調味液を得た。この調味液600mlを鍋に入れて加熱し、沸騰させて、頭、内臓を除去したマイワシ3匹(1匹120g前後)を鍋に入れて弱火にして30分間加熱して煮魚を得た。
【0069】
<比較例1>
鰹節抽出物(i)の代わりに、水50gを魚煮付用調味液に配合した以外は、実施例1と同様にして煮魚を得た。
【0070】
【表1】

【0071】
<試験例1>
実施例1及び比較例1の魚煮付用調味液の抗酸化力を評価する目的で、1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル(DPPH)ラジカル消去活性を測定した。
【0072】
すなわち、サンプル800μlに0.5M Tris-HCl 緩衝液(pH7.4)200μl及び500μM DPPH/エタノール溶液1mlを加え、50℃20分間遮光状態で反応させた後、50%エタノールを2ml添加し、10分後に517nmの吸光度を測定した。また、サンプルの代わりに水を用いてブランク吸光度を測定した。そしてラジカル消去率を次式(I)より求めた。
【0073】
【数1】

【0074】
DPPHラジカル消去活性は、ラジカル消去率50%を示すサンプル濃度であるIC50値を求め,ビタミンEの安定な同族体であるTroloxのIC50値を基準として換算したTrolox当量(μmol/100ml)として表した。また、調理時の水分蒸発量の補正については、調理前の全量を基準としてTrolox当量を求めた。結果を表2に示す。
【0075】
【表2】

【0076】
DPPHラジカル消去活性測定の結果から、調理前と調理後のいずれにおいても、鰹節抽出物(i)を添加した魚煮付用調味液の抗酸化力は、添加しない場合よりも高いことが明らかとなった。
【0077】
<試験例2>
実施例1及び比較例1で得られた煮魚について、煮魚中の過酸化脂質の蓄積を評価する目的で、食品中油脂酸化度の指標とされるチオバルビツール酸価(TBA価)を測定した。
【0078】
すなわち、試料3g(湿重量)に1.15%(w/v)塩化カリウム水溶液10mlを加えて、ホモジナイザーで30%(w/v)に調製して試料磨砕物とした。この試料磨砕物について常法に従いチオバルビツール酸価(TBA価:μmol/g(湿重量))を測定した。その結果を表3に示す。
【0079】
【表3】

【0080】
TBA価測定の結果から、鰹節抽出物(i)を添加した調味液を使用する調理方法においては、鰹節抽出物(i)を添加しない調味液を使用する調理方法に比べて、イワシ調理品中の過酸化脂質の蓄積が抑制されていることが明らかとなった。
【0081】
<試験例3>
実施例1で得られた煮魚について、風味の良さ、生臭みの抑制効果について比較例1で得られた煮魚を基準として±3点の評価基準に従って専門パネル10名で評価した。その結果を表4に示す。なお、表中の評価数値は10名のパネラーの平均値で表した。
【0082】
【表4】

【0083】
上記の官能評価の結果から、従来の調味料のみによるイワシ調理品は生臭みを有するものであるが、鰹節抽出物(i)を添加した調味液を使用した場合には、生臭みが抑制され、その風味が改善されていることがわかる。
【0084】
<試験例4>
抽出溶媒の違いによる効果を調べる目的で、以下の試験を行なった。
【0085】
すなわち、抽出溶媒として水を用いて調製したものとして、かつお荒節粗砕品(7mesh pass品)100gに水500mlを加えて90〜95℃で30分間抽出を行った後、抽出液をろ過し、熱水抽出液400mlを得た。一方、抽出溶媒としてエタノールを用いて調製したものとして、かつお荒節粗砕品(7mesh pass品)100gにエタノール50%(v/v)溶液500mlを加え、30分間還流抽出を行った後、抽出液をろ過し、エタノール50%(v/v)抽出液400mlを得た。
【0086】
両抽出液のDPPHラジカル消去活性を上記試験例1と同様にして測定した。なお、エタノールがDPPHラジカル消去活性の測定値に影響を与えないことは別途確認した。その結果を表5に示す。
【0087】
【表5】

【0088】
表5に明らかなように、抽出溶媒としてエタノールを含有する溶媒を用いた場合には、水のみの場合と比べてDPPHラジカル消去活性の高い抽出液が得られることが明らかとなった。
【0089】
<試験例5>
鰹節原料の違いによる効果を調べる目的で、以下の試験を行なった。
【0090】
すなわち、かつお荒節粗砕品の代わりに、かつお枯節、ユリ下、G粉、かつお血合い粉、かつお裸節を原料に用いた以外は、上記試験例4における抽出溶媒としてエタノールを用いた場合と同様の調製方法によって鰹節抽出物を調製した。これら異なる原料からの鰹節抽出物について、上記試験例1と同様にしてDPPHラジカル消去活性を測定した。その結果を表6に示す。
【0091】
【表6】

【0092】
表6に明らかなように、全ての抽出物にラジカル消去活性が認められた。なかでも、G粉、ユリ下からの抽出物には顕著に高いラジカル消去活性が認められた。
【0093】
<試験例6>
抽出方法の違いによる効果を調べる目的で、以下の試験を行なった。
【0094】
すなわち、以下に示すグラジエント抽出、ドリップ抽出により、かつお荒節粗砕品(7mesh pass品)から鰹節抽出物を調製した。得られた各抽出物について、上記試験例1と同様にしてDPPHラジカル消去活性を測定した。その結果を表7に示す。
【0095】
・グラジエント抽出
かつお荒節粗砕品(7mesh pass品)360gを95%(v/v)エタノール90mlと混合して、カラム(容量550ml、Φ4cm×50cm)に充填して、55〜60℃で30分静置保温した。その後、エタノール初濃度95%(v/v)→エタノール終濃度0%(v/v)でグラジエント溶出するために、ビーカーに95%(v/v)エタノール180mlを入れて、該エタノールを攪拌しながら該ビーカーに空間速度がSV=0.8〜1.0h-1となるような流入速度で水を流入させつつ、更に該ビーカーから同じ速度で前記かつお荒節粗砕品を充填したカラムに通液を行なった。抽出液量が360mlになるまで通液を行い、得られた抽出液のエタノール濃度は48.0%(v/v)であった。
【0096】
・ドリップ抽出
かつお荒節粗砕品(7mesh pass品)300gを50%(v/v)エタノール75mlと混合して、カラム(容量550ml、Φ4cm×50cm)に充填して、55〜60℃で30分静置保温した。その後、50%(v/v)エタノール水溶液を、原料充填層の上方から、抽出溶媒が溜らないように滴下速度334(リットル/h・m)で滴下して通液を行い、抽出液を300ml回収した。得られた抽出液のエタノール濃度は49.0%(v/v)であった。
【0097】
【表7】

【0098】
表7に明らかなように、エタノール含有溶媒を用いたグラジエント抽出又はドリップ抽出により、単純抽出(上記試験例4における抽出溶媒としてエタノールを用いた場合)によって得られた抽出物に比べて、顕著に高いラジカル消去活性を有する抽出物が得られることが明らかとなった。
【0099】
<実施例2>
鰹節抽出物(i)の代わりに、上記試験例6のグラジエント抽出によって得られた抽出液である鰹節抽出物(ii)0.3gを、水49.7gと合わせて魚煮付用調味液に配合した以外は、実施例1と同様にして煮魚を得た。下記表8には、その魚煮付用調味液の配合を示す。
【0100】
【表8】

【0101】
<試験例7>
実施例2で用いた魚煮付用調味液のDPPHラジカル消去活性を、実施例1又は比較例1の魚煮付用調味液と比較した。また、実施例2で得られた煮魚のTBA価(チオバルビツール酸価)、及びその官能評価について、実施例1又は比較例1の煮魚と比較した。その結果を、表9〜11に示す。
【0102】
【表9】

【0103】
【表10】

【0104】
【表11】

【0105】
上記表9〜11に明らかなように、グラジエント抽出によって得られた鰹節抽出物(ii)は、熱水抽出して得た鰹節抽出物(i)と同等のDPPHラジカル消去活性、TBA価(チオバルビツール酸価)抑制効果を示した。また、風味の改善の面でも良好であった。したがって、グラジエント抽出によって得られた鰹節抽出物によれば、濃縮エキスとして少量でもその効果を発揮できるものであることが明らかとなった。
【0106】
以上の結果から、鰹節抽出物を添加した調味液をイワシ調理に用いることにより、イワシ調理品の脂質酸化が抑制され、また、風味においても良好なイワシ調理品が得られることが明らかとなった。特に、グラジエント抽出によって得られた鰹節抽出物によれば、濃縮エキスとして少量でも脂質酸化抑制効果を示し、風味付与性も損なうことないので、食品の調理・加工製品として使用しやすいものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚節類から抽出して得られた魚節抽出物を有効成分として含有することを特徴とする食品の脂質酸化抑制剤。
【請求項2】
前記魚節抽出物が、抽出溶媒として水又はアルコール溶液を用いて得られた抽出物である請求項1に記載の食品の脂質酸化抑制剤。
【請求項3】
前記魚節抽出物が、抽出溶媒としてアルコール濃度の異なる3種類以上のアルコール溶液を用いて魚節類からの抽出を行い、各濃度で抽出されたエキスを混合して得られた抽出物である請求項1に記載の食品の脂質酸化抑制剤。
【請求項4】
前記魚節抽出物が、粉砕した魚節類をカラム又はタンクに充填し、該カラム又はタンクにアルコール濃度を連続的又は3段階以上の段階的に変化するように通液することにより得られた抽出物である請求項1に記載の食品の脂質酸化抑制剤。
【請求項5】
前記魚節抽出物が、下部にフィルターを備えた容器に粉砕した魚節類を充填し、該魚節充填層の表面に抽出溶媒を滴下して、前記表面に前記抽出溶媒が液溜めされない状態で通液することにより得られた抽出物である請求項1に記載の食品の脂質酸化抑制剤。
【請求項6】
前記魚節類が、鰹節、鯖節、まぐろ節、メジ節、いわし節、あじ節、煮干、アゴ節、及びそれらの節削り、魚節類生産過程で生じる副産物、又はこれらの混合物から選ばれた少なくとも一種である請求項1〜5のいずれか一つに記載の食品の脂質酸化抑制剤。
【請求項7】
魚節抽出物を有効成分として用いた食品の脂質酸化抑制剤を製造する方法において、抽出溶媒としてアルコール濃度の異なる3種類以上のアルコール溶液を用いて、魚節類からエキスを抽出し、各濃度で抽出されたエキスを混合することにより、前記魚節抽出物を得ることを特徴とする食品の脂質酸化抑制剤の製造方法。
【請求項8】
魚節抽出物を有効成分として用いた食品の脂質酸化抑制剤を製造する方法において、粉砕した魚節類が充填されたカラム又はタンクに、アルコール濃度を連続的又は3段階以上の段階的に変化するように通液することにより、前記魚節抽出物を得ることを特徴とする食品の脂質酸化抑制剤の製造方法。
【請求項9】
魚節抽出物を有効成分として用いた食品の脂質酸化抑制剤を製造する方法において、下部にフィルターを備えた容器に粉砕した魚節類を充填し、該魚節充填層の表面に抽出溶媒を滴下して、前記表面に前記抽出溶媒が液溜めされない状態で通液することにより、前記魚節抽出物を得ることを特徴とする食品の脂質酸化抑制剤の製造方法。
【請求項10】
原料に魚節抽出物を含まない調理加工品又は調理加工用調味料の脂質酸化を抑制する方法であって、前記請求項1〜6のいずれか一つに記載の食品の脂質酸化抑制剤を、前記調理加工品又は調理加工用調味料の原料配合時又は調理工程中に添加することを特徴とする調理加工品又は調理加工用調味料の脂質酸化抑制方法。
【請求項11】
前記調理加工品又は調理加工用調味料が、タレ類、ソース類、ドレッシング、マヨネーズ、煮物、シュウマイ、餃子、中華まん、魚のつみれ、鶏肉団子、豚肉団子、牛肉ハンバーグ、カレー用調味ベース、シチュー用調味ベース、パスタソース用調味ベース、ラーメン用調味ベース、練製品、チーズ、乳油製品、肉味噌、いなり寿司からなる群より選ばれた一種である請求項10に記載の調理加工品又は調理加工用調味料の脂質酸化抑制方法。

【公開番号】特開2008−11763(P2008−11763A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−185494(P2006−185494)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【出願人】(390033145)焼津水産化学工業株式会社 (80)
【Fターム(参考)】