説明

食品用フィルター及びそれを用いた食品封入袋体

【課題】粉漏れ性、熱シール加工性、シール強度、剛性などに優れる食品用フィルター材を提供する。
【解決手段】
第1層のポリエステル系繊維層、第2層のポリエステル系極細繊維層、第3層として第1層の構成繊維の融点より30℃以上低融点であるポリエステル系繊維を含む層を、積層して熱圧着で一体化した積層不織布からなり、該積層不織布の目付が10〜50g/m2、熱シール温度範囲でホットタック強力が1N/25mm以上であることを特徴とする食品用フィルター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品用フィルターに関し、特に飲料用の抽出、出汁の抽出に用いられ、粉漏れが少なく、且つ 熱シール温度範囲が広く、しかもホットタック性、シール強度が高く、低融点成分樹脂の染み出しがなく、シールバーに樹脂の付着がない、など製袋加工等に優れ、袋体の形状保持性、成分抽出が良好な食品用フイルター及びその袋体に関する。
【背景技術】
【0002】
食品用の、緑茶、紅茶、麦茶、烏龍茶、レギュラーコーヒー、鰹出汁、鰯出汁などの被抽出物の成分抽出に熱可塑性合成繊維不織布が広く使用されている。 特許文献1には、特定のポリプロピレン系不織布が食品抽出用シートとして提案され、特許文献2〜4には、熱接着性の複合繊維を用いた不織布が食品抽出用シートとして提案されている。
これらの特許文献に記載された食品抽出用シートは、ヒートシール性、溶出性、味覚などに優れているが、反面、微細な粒子、粉末などの粉漏れ性が発生するなどの問題があった。
【0003】
特許文献5〜7には、メルトブロー法から得られる極細繊維不織布を用いることが開示され、粉漏れ性の課題を解決した提案がなされている。しかしながら、粉漏れ性、ヒートシール性、および成分抽出性を総合的に満足するものは得られていない。
【特許文献1】特開2003 − 138460号公報
【特許文献2】特開2006 − 81777号公報
【特許文献3】特開2006 − 81779号公報
【特許文献4】特開2006 − 83496号公報
【特許文献5】特開2002 − 14299号公報
【特許文献6】特公昭60 − 11148号公報
【特許文献7】特開2004 − 154760号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、上記従来の問題を解決し、粉末状物や細かい粒子状物などにおいても、粉漏れし難く、ホットタック性、ヒートシール性、および成分抽出性に優れた食品用フィルター及び、その袋体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、構成繊維の融点差及び、繊維径差の組み合わせを行うことにより、粉漏れ性、ホットタック性、ヒートシール性、および成分抽出性を有効に発揮できことを見出し、本発明に到達した。本願で特許請求される発明は、以下の通りである。
(1)第1層のポリエステル系繊維層と、第2層のポリエステル系極細繊維層と、第3層として第1層の構成繊維の融点より30℃以上低融点であるポリエステル系繊維を含む層とを、積層して熱圧着で一体化した積層不織布からなるフィルターであって、該積層不織布の目付が10〜50g/m2、ホットタック強力が1N/25mm以上であることを特徴とする食品用フィルター。
(2)前記第1層及び第3層を構成する繊維の平均繊維径が10〜30μm、および第2層の平均繊維径1〜7μmであることを特徴とする上記(1)に記載の食品用フィルター。
(3)前記第3層を構成する繊維の融点が、第1層を構成する繊維の融点よりも30〜150℃低融点である繊維を含むことを特徴とする上記(1)または(2)に記載の食品用フィルター。
(4)前記第3層の熱可塑性繊維が、鞘芯型複合繊維であり、芯部が高融点成分であり、鞘部の成分が、芯部より30℃以上低融点であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の食品用フィルター。
(5)前記第2層の極細繊維の含有率が10〜35重量%の範囲であり、かつ第2層の極細繊維層の目付けが1.0g/m2以上であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の食品用フィルター。
(6)前記第3層における低融点繊維の含有率が20重量%以上であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の食品用フィルター。
(7)上記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の食品用フイルターを、第3層を内側にして重ね合わせ、熱シールして袋体を形成し、該袋体に被抽出物を充填し、密封したことを特徴とする食品封入袋体。
(8)前記被抽出物が、コーヒー粉末、茶葉および出汁粉末から選ばれることを特徴とする上記(7)記載の食品封入袋体。
【発明の効果】
【0006】
本発明の食品用フィルター及びその袋体は、第1層のポリエステル系繊維層と、第3層の低融点成分を含むポリエステル系繊維層と、第2層の極細繊維層とを積層することにより、比較的太い繊維層の間隙に極細繊維層で被覆及び/または膜状に積層されて重なり、構成繊維間隙および最大開孔径が小さくできるため、細かい粒子の漏れを防ぐことができる。さらに、第1層と第3層に融点差を設けることと、極細繊維層を設けたことにより、低融点樹脂の染み出しがなく、製袋加工時にシールバーに樹脂の付着が少なく、且つ広い温度範囲、例えば120〜180℃の範囲において熱シールができ、シール強度、ホットタック性に優れたフイルターを得ることができる。
従って、本発明の食品用フィルター及びその袋体は、お茶、紅茶、緑茶、及び鰹、煮干、昆布などのだし粉末、粒状等の包材に好ましく用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の食品用フィルターを形成する積層不織布は、第1層が高融点成分のポリエステル系繊維、第2層が極細繊維、第3層が第1層繊維の融点より低融点のポリエステル系繊維を含む繊維を積層し、熱圧着で一体化した構造を有する。
【0008】
特に、本発明は、第2層の極細繊維を介在させる積層構造にすることで、第一に、繊維間隙を小さくでき、第二に、部分熱圧着により、層間の接合が強固にでき、第三に、第1層と第3層の融点差を設け、且つ、極細繊維層を介在させることで低融点樹脂の染み出しが防止でき、熱シール強度及び温度範囲が広くできるなどの特徴が得られる。
【0009】
第一の特徴である小さい繊維間隙は、第1層の高融点ポリエステル系繊維の比較的大きい繊維間隙層に、第2層の極細繊維が被覆及び/または混合繊維化して積層したためである。さらに積層を多層化することにより、さらに繊維間隙が小さくなり、微粉末などの粉漏れし難い構造となる。
【0010】
第二の特徴の部分熱圧着によれば、構成繊維の層間の融点差に応じた圧着温度の設定ができ、層間の接合が強固にできるため、剛性、層間の剥離強度が高くすることができる。
【0011】
第三の特徴の熱シール性によれば、融点差を有するポリエステル系繊維の積層構造にしているため、熱シールできる温度範囲が広くでき、ホットタック強力、ヒートシール強度に優れ、かつ熱シール時の熱板に融解樹脂の付着が少なくすることができる。特に第1層と第3層の融点差を設けているため、製袋加工する時、低融点ポリエステル系樹脂が融解しても、極細繊維層、高融点繊維層が融解していない層で、融解層の樹脂の染み出しが防止でき、シールバーに低融点樹脂が付着せず、ヒートシール強度が安定した生産製造が可能になる。
【0012】
本発明に用いる第1層の高融点のポリエステル系繊維層は、通常、繊維径が10〜30μm、好ましくは12〜25μmの太い繊維から成り、強度、通気性に優れ、磨耗強度が大きいことが好ましい。このような構成繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、共重合ポリエステルなどのポリエステル系繊維が挙げられる。
【0013】
本発明に用いる第3層の低融点成分を含む繊維層は、第1層の繊維より30℃以上、好ましくは、30〜150℃の低融点の繊維を含む、つまり、袋体の熱シール面となる。低融点繊維の繊維径は10〜30μm、好ましくは12〜25μmの太い繊維が好ましい。構成繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートにフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、アジピン酸、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオールの1種又は2種以上の化合物を共重合した芳香族ポリエステル共重合体、脂肪族ポリエステルなどのポリエステル系繊維が用いられる。さらに、芯鞘構造、サイドバイサイドなどの2成分からなる複合繊維、例えば、芯が高融点で鞘が低融点の複合繊維で、具体的には、芯がポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、共重合ポリエステルなどの高融点繊維、鞘が共重合ポリエステル、脂肪族ポリエステルなどの低融点繊維が好ましい。特に、これらの低融点繊維が優れたホットタック性を発現させる。
【0014】
本発明の食品用フィルターは、第1層と第3層の繊維に融点差を有することが重要であるが、第3層を構成する繊維の融点差は、好ましくは30℃以上、さらに好ましくは30〜150℃の範囲で第1層より低温であることが好ましい。その結果、部分熱圧着時のロール温度範囲が広く設定できる。熱圧着ロール温度の上下差が大きすぎる場合は、高融点側のロール温度の影響を受けて低融繊維の劣化が生じ易くなる。一方、第1層と第3層との融点差が小さすぎる場合は、熱圧着温度範囲が狭くなり、ロール温度の条件により強度、摩擦毛羽強度が影響を受け易くなる。
【0015】
本発明の第2層極細繊維の繊維径は好ましくは7μm以下、より好ましくは1〜5μmであり、繊維間隙、及び最大開口径を小さくし、粉漏れ性を少なくする役目を有する。特に太い繊維間隙に、極細繊維が被覆するように積層されることにより、少ない極細繊維比率で繊維間隙を小さくできる。繊維径が大きすぎると繊維間隙の被覆効果が低下する。
【0016】
極細繊維の目付けは、好ましくは1g/m2以上、より好ましくは1.5〜10g/m2、さらに好ましくは2〜7g/m2である。極細繊維の目付けが小さすぎると、極細繊維層の繊維間隙の被覆性、膜形成が低下する。
【0017】
積層不織布全体に対する第2層の極細繊維の含有比率は、通常、5〜30重量%、好ましくは7〜25重量%である。極細繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、共重合ポリエステル、脂肪族ポリエステルなどのポリエステル系繊維である。
【0018】
本発明の食品用フィルターを熱圧着で一体化するとは、例えば、公知のエンボスロールと平滑ロール間で加熱、圧着して接合することである。加熱温度は、繊維の軟化温度以上の温度から融点以下の温度範囲である。しかし、低融点繊維の熱劣化を考慮した場合、上下ロールの温度差を150℃以下、好ましくは130℃以下が好ましい。熱圧着の圧力は10〜1000kPa/cm、好ましくは50〜700kPa/cmである。
【0019】
本発明の積層不織布の熱圧着面積率は、5〜30%が好ましく、より好ましくは7〜25%である。圧着面積率が小さすぎると、接合面積が少なくなり、磨耗強度が低下する。一方、大きすぎると、磨耗強度が高くなるが、風合いがペーパーライクとなる。
【0020】
本発明の食品用フィルターを用いたその袋体の製袋加工は、前記積層不織布の第3層を内側にして重ね合わせて、端部を熱シールとして、公知のシール法によりシールすることによって行われる。例えば、3包シール機、4包シール機などの熱シール法、超音波シール機などの超音波シール法などで行うことができる。さらに、2個以上の多数個連続の連包袋状に製袋加工することもできる。
【0021】
本発明の袋体は、例えば、袋内に充填した充填物が落下や、重量物が載った時に破袋しないため、高いシール強度が必要である。従って、袋体のシール強度は、1N/25mm以上、好ましくは1.5N/25mm以上、より好ましくは10〜50N/25mmである。シール強度が小さすぎると、シール部分が剥離し易くなり、内容物が外部に漏れるなどの問題が生じる。
【0022】
さらに製袋加工を安定に行うためには、熱シール直後の温度で接着力があること、つまり、ホットタック性を有することが、製袋直後のシール部分に充填物でのかみこみ、破れなどが発生しないで、製袋加工ができる上で好ましい。
【0023】
本発明の食品用フイルターは、ホットタック性に優れ、シール温度範囲が広いことが特徴である。ホットタック強力は、1N/25mm以上、好ましくは、5N〜20N/25mmである。
【0024】
本発明の熱シール温度範囲は、第1層と第3層の繊維で融点差を設けたことによりヒートシール温度は120〜220℃が好ましく、より好ましくは、140〜200℃の範囲である。本願明細書の表2に示すように、ヒートシール温度がこの範囲であっても、ヒートシール強力は均一であり、バラツキが小さく、安定したヒートシール強力が得られる。本発明の実施例においては、ヒートシール温度125〜220℃の範囲において、ヒートシール強力のばらつき(R)は3N/25mm以下となる。
【0025】
本願明細書の表3に示すように、従来は、ヒートシール温度の適性温度範囲が10℃位であるのに対し、本発明においてはヒートシール温度が110〜200℃の温度範囲(約90℃の温度範囲)において、ホットタック強力は安定しており、ヒートシール温度が120〜180℃の範囲において、特に安定したホットタック強力が得られる。
従って、熱シール機のシール部分の表面温度が、径時変化、環境などにより変り、一定温度での熱シール加工を行うことが難しい場合でも、一定のシール強度で安定した生産ができる。
【0026】
本発明の食品用フィルターは、シール温度範囲を広くとることができ、且つホットタック性と高く安定したシール強度を得ることができる。これは、第1層と第3層の繊維の層間で融点差を30℃以上設けているため、低融点層の繊維が軟化または融解しても、極細繊維層、高融点繊維層が所定の繊維形状を維持しているためである。従って、製袋加工時にシールバーに繊維の融解物が付着することがなくなる。
【0027】
本発明において、食品用フィルター及びその袋体は、微細粒の粉漏れが少なくでき、粉漏れ率は5%以下が好ましく、より好ましくは3%以下、特に好ましくは2%以下であり、さらに、シール強度高く、剛性、成分抽出性に優れている。該フイルター材の目付は、10〜50g/m2、好ましくは12〜40g/m2である。目付けが小さすぎると、粉漏れし易くなり、シール強度、剛性などが低下する。一方、大きすぎると、粉漏れがし難くなり、シール強度、剛性が大きくなるが、成分抽出性が低下する。
【0028】
本発明において、食品用フィルターの最大開口径は、50μm以下、好ましくは40μm以下、より好ましくは1〜30μmである。最大開口径が大きすぎると、繊維間隙が大きいために粉漏れし易くなり、特に、粒状のものが微細に破壊された場合に粉漏れしやすくなる。
【0029】
本発明の袋体に充填する被抽出物は、粉末形状、粒形状シート状物などの固形物であれば特に制限ない。例えば、嗜好性飲料用の緑茶、烏龍茶、麦茶、紅茶、などの茶葉、レギュラーコーヒーの細挽、中細挽き、粗挽き等の粉末、鰹、いりこ、鰯、昆布、煮干などの一種又は二種以上の混合粉末などである。
【実施例】
【0030】
本発明を実施例に基づいて説明する。
測定方法は以下のとおりである。
(1)目付(g/m2):縦20cm×横25cmの試料を3カ所切り取り、重量を測定し、その平均値を単位当たりの質量に換算して求める。(JIS-L-1906)
(2)平均繊維径(μm):顕微鏡で500倍の拡大写真を取り、10本の平均値で求める。
(3)通気性:JIS-L-1906フラジュール法に準拠した。
(4)粉漏れ率(%):JIS-Z-8901試験用紛体7種ダストを約10g取り、重量W1を正確に測定し、25cm角の試料を切り取り、振動機に取り付け、10分間振動し、試料の通過したダスト重量W2を測定し、下記の式から求める。
粉漏れ率(重量%) =W2/W1 ×100
(5)平均流量孔径(μm):PMI社製のパームポロメーター型式CFP-1200AEXを用いる。平均流量孔径は、CUMULATIVE FILTER FLOW VS DIAMETERグラフにおけるCUMULATIVE FILTER FLOWの値が50%のDIAMETERとする。測定には、浸液にPMI社製シルウイックを用いた。試料を浸液に浸して充分に脱気してから測定する。
(6)シール強度(N):定長引張試験機を用い、試料幅25mm長さ200mmを切り取り、熱シール部分を約50mm上下方向に剥離し、180度剥離するように各々取り付け、つかみ間隔100mm、引張速度10cm/minで、剥離強度をタテ、ヨコ各々3カ所測定し最大強度の平均値で示す。
但し、シール温度150℃、時間1秒間、圧力5500kPa、シール面積25mm×25mm(熱水処理として、沸騰液に10分間浸漬した後、取り出して測定した。)
(7)ホトタック強力(N/25mm)
幅25mm長さ400mmのサンプルを切り取り、H.W.Thellsr Incのホットタックテスター(Theller Model HT)を用い、ダイのシール面積0.25cm2、シール圧力5000kPa、シール実測時間500msecでヒートシールし、200cm/minでの瞬間的な剥離強力を測定した。
【0031】
[実施例1]
本発明の積層不織布の第3層が、スパンボンド用の2成分紡糸口金から、芯がポリエチレンテレフタレート(PET)、鞘が共重合ポリエステル(Co-PET、融点210℃)の芯鞘構造の平均繊径17μm、目付け6g/m2の複合繊維ウェブを作成し、第2層のポリエチレンテレフタレート(PET、溶液粘度ηsp/c 0.50)を用いメルトブロー用噴射口金から、紡糸温度300℃加熱エアは320℃で1000Nm3/hrで、平均繊径2μm、目付け3g/m2の極細繊維ウェブを吐出して積層し、その上に第1層の一般的なポリエチレンテレフタレート(PET)をスパンボンド用紡糸口金から、紡糸温度300℃で平均繊径14μm、目付け6g/m2の熱可塑性繊維ウェブを捕集ネット上に積層繊維ウェブとして積層し、さらに圧着面積率が、25%エンボスロール、線圧350N/cm、上下温度を230℃/145℃で熱圧着して実施例1の食品用フィルター(目付け15g/m2)を得た。
【0032】
[実施例2]
本発明のフィルター材の第3層が、スパンボンド用の2成分紡糸口金から、芯がポリエチレンテレフタレート(PET)、鞘が共重合ポリエステル(Co-PET、融点160℃)の芯鞘構造の平均繊径18μm、目付け16g/m2の複合繊維ウェブを作成し、第2層のポリエチレンテレフタレート(PET、溶液粘度ηsp/c 0.50)を用いメルトブロー用噴射口金から、紡糸温度300℃加熱エアは320℃で1000Nm3/hrで、平均繊径2μm、目付け2g/m2の極細繊維ウェブを吐出して積層し、その上に第1層の一般的なポリエチレンテレフタレート(PET)をスパンボンド用紡糸口金から、紡糸温度300℃で平均繊径14μm、目付け12g/m2量を変えた熱可塑性繊維ウェブを捕集ネット上に積層繊維ウェブとして積層し、さらに圧着面積率が、25%エンボスロール、線圧350N/cm、上下温度を230℃/115℃で熱圧着して実施例1の食品用フィルター(目付け30g/m2)を得た。
【0033】
[実施例3]
本発明のフィルター材の第3層が、スパンボンド用の2成分紡糸口金から、芯がポリエチレンテレフタレート(PET)、鞘が共重合ポリエステル(Co-PET、融点135℃)の芯鞘構造の平均繊径18μm、目付け17g/m2の複合繊維ウェブを作成し、第2層のポリエチレンテレフタレート(PET、溶液粘度ηsp/c 0.50)を用いメルトブロー用噴射口金から、紡糸温度300℃加熱エアは320℃で1000Nm3/hrで、平均繊径2μm、目付け6g/m2の極細繊維ウェブを吐出して積層し、その上に第1層の共重合ポリエステル(Co-PET、融点210℃)の平均繊維径15μmをスパンボンド用紡糸口金から、紡糸温度260℃で平均繊径15μm、目付け17g/m2量を変えた熱可塑性繊維ウェブを捕集ネット上に積層繊維ウェブとして積層し、さらに圧着面積率が、25%エンボスロール、線圧350N/cm、上下温度を230℃/115℃で熱圧着して実施例1の食品用フィルター(目付け40g/m2)を得た。
【0034】
前記実施例1〜3の本発明の食品用フィルターは、広い温度範囲において、ホットタック性、ヒートシール性に優れ、熱シールバーの樹脂の付着がなく、粉漏れ性の少ないなどのフィルター性に優れた性能が得られた。
上記実施例1〜3の結果を表1〜3に示した。
【0035】
[比較例1]
一般的なポリエチレンテレフタレート(PET)を用い、実施例1と同じスパンボンド法で、紡糸温度300℃で平均化繊維径14μm、目付け30g/m2の熱可塑性繊維ウェブを捕集ネット上に作成し、圧着面積率が15%エンボスロールで、線圧350N/cm、上下温度を230℃/235℃で熱圧着して不織布を得た。得られたフィルターは、表1に示すように粉漏れ性が大きく低下しており、フィルター性能に劣るものであった。
【0036】
[比較例2]
熱可塑繊維ウェブとしては、芯がポリエチレンテレフタレート(PET)、鞘が高密度ポリエチレン(PE)からなるスパンボンド法の複合繊維の平均繊径16μm、目付け30g/m2の複合繊維ウェブを、捕集ネット上に作成し、圧着面積率が25%エンボスロールで、腺圧350N/cm、上下温度を120℃/110℃で熱圧着して不織布(30g/m2)を得た。
得られたフィルターは、表1に示すように粉漏れ性が大きく低下し、且つ、熱シール温度範囲が狭いホットタック性であり、ヒートシール強度は高いが低融点繊維樹脂が染み出し、シールバーに融着樹脂付着するなど、フィルター性能に劣るものであった。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
【表3】

【0040】
[実施例4](コーヒーフイルター)
四面体形状の立体成形方式のヒートシール機を用いて、実施例3の食品用フィルターを幅150mmのテープ状にスリットしてから、760dtexのポリプロピレン糸の撚り糸と、タッグを温度180℃で接着し、150mmを折り畳み、端部をシール幅3mmの超音波ホーンを用いて、まず筒状にしてから70mmの間隔で筒の底部を同様に超音波シールし、袋形状としてから、袋の中にレギュラーコーヒー中細挽き粉末を10g入れ、さらに70mm長さ毎に底部に直交するよう直角方向に袋開口部を同様に超音波シールして1辺が70mmの四面体形状のコーヒーテトラパックを得た(シール強度18N/25mm)。
【0041】
本発明のコーヒーテトラパックは、形状の保持ができる剛性を有し、且つマグカップでの抽出時にもその形状を良好に保持することができた。市販のマグカップに、約150ccのお湯を注ぎ、得られた本発明のコーヒーテトラパックを入れ、約60秒間成分抽出させてからテトラパックをとりだした。コーヒーを飲んだところ、香りのある、美味しいコーヒーを飲むことができた。カップの底部に粉末が殆ど残らなかった。
【0042】
[実施例5](ダシ袋)
実施例1のフィルター材を幅220mmにスリットしたテープに、三方ヒートシール機を用いて、これを半分に折りながら、重ねあった端部を幅10mmに渡って温度140℃で熱シールし筒状にする。その後、筒の底部を140mmの間隔で幅10mmに渡って熱シールし袋形状にした後、その中に鯖、鰯、煮干、鯵などを成分とするダシの粉末を20g入れる。その後、袋の上部を幅10mmに渡り熱シールすることで、タテ140mm、ヨコ110mmの三方をシールされたダシ袋を得た。
本発明のダシ袋を入れた鍋に、約700ccの水を注ぎ、15〜30分浸し、そのまま火に掛けて沸騰させ、成分を抽出させてからダシ袋を取り出した。このダシ汁を飲んだところ、風味があって、美味しいダシ汁を飲むことができた。鍋の底部にはダシの粉末が殆ど残らなかった(初期のシール強度8N/25mm、抽出後のシール強度 7N/25mm)。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の食品用フィルター材及びその袋体は、粉漏れ性、熱シール加工性、シール強度、剛性などに優れているため、粉末、粒状物などの被抽出物の包装材として広い用途、例えば、嗜好飲料用、及び、出汁用成分抽出に好ましく利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1層のポリエステル系繊維層と、第2層のポリエステル系極細繊維層と、第3層として第1層の構成繊維の融点より30℃以上低融点であるポリエステル系繊維を含む層とを、積層して熱圧着で一体化した積層不織布からなるフィルターであって、該積層不織布の目付が10〜50g/m2、ホットタック強力が1N/25mm以上であることを特徴とする食品用フィルター。
【請求項2】
前記第1層及び第3層を構成する繊維の平均繊維径が10〜30μm、および第2層の平均繊維径1〜7μmであることを特徴とする請求項1に記載の食品用フィルター。
【請求項3】
前記第3層を構成する繊維の融点が、第1層を構成する繊維の融点よりも30〜150℃低融点である繊維を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の食品用フィルター。
【請求項4】
前記第3層の熱可塑性繊維が、鞘芯型複合繊維であり、芯部が高融点成分であり、鞘部の成分が、芯部より30℃以上低融点であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の食品用フィルター。
【請求項5】
前記第2層の極細繊維の含有率が10〜35重量%の範囲であり、かつ第2層の極細繊維層の目付けが1.0g/m2以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の食品用フィルター。
【請求項6】
前記第3層における低融点繊維の含有率が20重量%以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の食品用フィルター。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の食品用フイルターを、第3層を内側にして重ね合わせ、熱シールして袋体を形成し、該袋体に被抽出物を充填し、密封したことを特徴とする食品封入袋体。
【請求項8】
前記被抽出物が、コーヒー粉末、茶葉および出汁粉末から選ばれることを特徴とする請求項7記載の食品封入袋体。

【公開番号】特開2008−307469(P2008−307469A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−157385(P2007−157385)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】