説明

食材乾燥装置

【課題】遠赤外線を利用して食材を十分に乾燥する複数段の棚を有する食材乾燥装置を提供する。
【解決手段】この食材乾燥装置は、乾燥庫2内の食材を乾燥させるものであって、乾燥庫2内に鉛直に立った鉛直軸21と、鉛直軸21の軸方向に互いに平行に取り付けられた複数段の棚22と、乾燥庫2内の下部に温風を送る温風送風機と、を備え、棚22は多数の貫通孔22baが形成された棚用炭素成型板22bを有し、乾燥庫2の天井と内壁には筐体用炭素成型板20aが取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜、果物、魚、肉などの食材を乾燥する食材乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、乾燥食材は、乾物や干物として、人々に愛好されている。乾燥食材は、長期に保存できる上に、生のものと異なった味わいが有る。乾燥食材を作る方法の主なものには、天日乾燥、熱風乾燥、冷風乾燥がある。一般に、天日乾燥は、古来の方法であって良好な旨味の乾燥食材を作れるが、乾燥のための広い場所を必要とし、天候に左右され、衛生面の管理にも手間がかかる。一方の工業的な乾燥方法である熱風乾燥や冷風乾燥では、場所、天候、衛生面の点については対処が比較的容易である。しかし、熱風乾燥も冷風乾燥も改善すべき種々の点が指摘されている。例えば、熱風乾燥は、高い温度がかかることにより乾燥食材の旨味が減少するとも言われており、また、冷風乾燥は、長い乾燥期間を必要とする。
【0003】
これらの乾燥方法とは別に或いは併用して用いる乾燥方法に、遠赤外線を食材に照射するものがある。具体的には、遠赤外線ヒーターから発生した遠赤外線を直接又は反射板により反射させて食材に照射したり(例えば、特許文献1)、内壁面全体を遠赤外線塗料又はセラミックスで被覆して内壁面の温度に応じて発生した遠赤外線を食材に照射したり(例えば、特許文献2、3)するものである。遠赤外線が食材内部の組織にまで作用して熱するため、食材全体が均一に加熱されることになって、乾燥時間の短縮などの効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−227249号公報
【特許文献2】特開平11−142059号公報
【特許文献3】特開2007−202503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記した乾燥方法のすべては、乾燥食材を大規模に生産する業者が用いるのが通常であって、家庭又は飲食店などが用いるようなものではない。しかし、家庭又は飲食店などが簡単に乾燥食材を作ることができるのならば、食事のバラエティが広がる上に、食材資源の無駄低減が可能である。そして、家庭又は飲食店などに好適なように食材乾燥装置を小型化するには、一般に、食材を据える棚は複数段にするのが好ましい。特許文献1〜3に記載されているようにして複数段の棚それぞれに据えた食材に遠赤外線を十分に照射するのは、構造的に容易ではない。
【0006】
本発明は、係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、遠赤外線を利用して食材を十分に乾燥する複数段の棚を有する食材乾燥装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の食材乾燥装置は、乾燥庫内の食材を乾燥させる食材乾燥装置であって、前記乾燥庫内に鉛直に立った鉛直軸と、該鉛直軸の軸方向に互いに平行に取り付けられた複数段の棚と、を備え、前記棚は多数の貫通孔が形成された棚用炭素成型板を有していることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の食材乾燥装置は、請求項1に記載の食材乾燥装置において、前記乾燥庫の天井及び/又は内壁には筐体用炭素成型板が取り付けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の食材乾燥装置は、請求項1又は2に記載の食材乾燥装置において、前記乾燥庫内の下部に温風を送る温風送風機を更に備えることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の食材乾燥装置は、請求項3に記載の食材乾燥装置において、前記温風送風機からの温風を受けて前記鉛直軸を回転させる羽根体を更に備えることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の食材乾燥装置は、請求項2に記載の食材乾燥装置において、前記筐体用炭素成型板を誘導加熱する誘導加熱器を更に備えることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の食材乾燥装置は、請求項5に記載の食材乾燥装置において、前記鉛直軸に取り付けられ風を生成する羽根体を更に備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る食材乾燥装置によれば、複数段の棚の棚用炭素成型板に温風が当たると、棚用炭素成型板からの熱により据えられた食材を外表面から加熱するとともに、遠赤外線により食材内部の組織に作用して熱することにより、満遍なく加熱して十分に乾燥させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る食材乾燥装置の外観を示す概略側面図である。
【図2】同上の乾燥庫の内部を示す概略立体図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための好ましい形態を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る食材乾燥装置1の外観を示す概略側面図である。この食材乾燥装置1は、食材を収容する乾燥庫2の中に収容した食材を乾燥させるものであり、小型化に適した構造のものである。食材乾燥装置1は、乾燥庫2の下部に温風を送る温風送風機3を備えている。温風送風機3は、温風の温度を、一定範囲(例えば、40〜100℃程度)内の所定温度に設定することができるものである。乾燥庫2の中の空気は、いずれかの箇所から一部取り出されて温風送風機3へ供給され、循環する。なお、乾燥庫2と温風送風機3の間には、乾燥庫2に温風送風機3から温風を送るためのホース4Aと温風送風機3に乾燥庫2から空気を供給するためのホース4Bが設けられている。
【0016】
図2は、乾燥庫2の内部を示す概略立体図である。乾燥庫2の中には、鉛直に立った鉛直軸21が設けられ、鉛直軸21の軸方向には互いに平行に複数段の棚22、22、・・・が取り付けられている。それぞれの棚22は、有底円筒形で網状の支持体22aの内側に棚用炭素成型板22bが載った構成になっている。支持体22aの縁部の高さは、棚用炭素成型板22bの厚さ(高さ)よりも高い。支持体22aは、金属材(例えば、ステンレス)や樹脂材からなる。棚用炭素成型板22bは、多数の貫通孔22ba、22ba、・・・が厚さ方向(上下方向)に形成されており、通常は、何個か(例えば、4個)に分割されたものが組み合わさっている。また、棚用炭素成型板22bの表面は、細かな摩耗や欠損などを防止するために、耐熱性のある皮膜層で覆われている。
【0017】
この棚用炭素成型板22bは、焼成により全体的に高密度で整った結晶構造となることで全体が一体的に形成されるもので、以下のようにして製造することができる。すなわち、黒鉛、又は竹炭などの炭化物の炭素粉にフェノール系接着剤、ピッチ又はタールなどのバインダを5重量%程度加えて固め、所定の塊(例えば方形もの)に加圧成形する。そして、酸素が欠乏した状態で加熱し、2000〜3000℃程度で焼成する。この状態で、原料の炭素粉同士は結合し結晶化(黒鉛化、定形炭素化)する。なお、フェノール成分、ピッチ又はタールは昇温途中の約1200℃程度で揮発している。その後、加熱を止め、温度を下げてから、棚用炭素成型板22bの形状に加工する。この棚用炭素成型板22bは、バインダが揮発しているので、ほぼ100%(99%以上)が炭素材となっている。その後、多数の貫通孔22ba、22ba、・・・が掘削される。
【0018】
棚用炭素成型板22bは熱拡散性が高く、一部に熱が加えられると熱は迅速に拡散し、温度は均一になる。また、棚用炭素成型板22bが放射する遠赤外線は多く、温度が高くなるほど放射する遠赤外線の量は多くなる。
【0019】
最下段の棚22の下方には、温風送風機3からの温風を受けて鉛直軸21を回転させる複数の羽根体23、23、・・・が取り付けられている。羽根体23は、錆が生じず、また、後述のオゾン発生器24を用いる場合はオゾンにより侵食されない材料(例えば、ステンレス)からなるのが好ましい。また、乾燥庫2の筐体20には、鉛直軸21が自在に回転するように、鉛直軸21が結合する部分に軸受21A、21Aが設けられている。
【0020】
乾燥庫2の筐体20の天井や内壁には棚用炭素成型板22bと同じ材質の筐体用炭素成型板20aが取り付けられており、筐体用炭素成型板20aの外側は断熱材や外装材となっている。筐体用炭素成型板20aの大きさは適宜決められるが、図2の例では、天井と最下段の棚22の位置より上側全部の内壁の部分に筐体用炭素成型板20aが取り付けられており、それより下側は金属材(例えば、ステンレス)又は樹脂材となっている。
【0021】
乾燥庫2には、好ましくは、食材を消臭したり殺菌したりするようにオゾン発生器24を設置する。また、乾燥庫2の筐体20に、外気との圧力差が余り生じないように乾燥庫2の内部の圧力を調整する圧力調整弁25を設置するのが好ましい。また、乾燥庫2内部の空気中の水分を吸収するための部材を乾燥庫2内か温風の循環路に設置するのが好ましく、例えば、乾燥庫2の底部に保水材26を挿入できるようにして、それに空気中の水分を徐々に吸収させる。保水材26は、定期的に取り外し、圧縮することで水分を搾り取って元に戻す。
【0022】
食材乾燥装置1の動作は以下のとおりである。食材に応じて設定された所定温度で温風送風機3から乾燥庫2内に送られた温風は、羽根体23に当たって鉛直軸21を回転させる。温風は、羽根体23によって旋回し、上昇する。それから、温風は、最下段の棚22の棚用炭素成型板22bに当たってそれを熱するとともに、貫通孔22baを通過して或いは棚用炭素成型板22bの周囲から上昇する。棚用炭素成型板22bは、熱を上方に伝えて食材を外表面から加熱するとともに、遠赤外線を多量に放射して食材内部の組織に作用し熱する。そうすることにより、食材は乾燥する。また、棚用炭素成型板22bの貫通孔22baの上に食材が据えられていると、温風は食材を直接乾燥する。それから更に上昇した温風は、上段の棚22、22、・・の食材を順次同様にして乾燥する。
【0023】
このようにして、温風の熱を効率良く棚用炭素成型板22bに伝え、かつ、棚用炭素成型板22bの熱と遠赤外線により効率良く十分に食材を満遍なく加熱して乾燥する。また、筐体20の筐体用炭素成型板20aや上段の棚22の棚用炭素成型板22bからの遠赤外線も、食材の乾燥を助ける。また、棚22が回転しているので、食材が据えられた場所による乾燥の程度の差が低減される。よって、温風の温度がそれほど高くなくても、短い時間で乾燥を完了することができる。こうしてできあがった乾燥食材は、組織の破壊が少なく、旨味の減少や栄養の流出が少ない。また、遠赤外線により内部から乾燥されているので、天日と同様に良好な旨味のものとなる。
【0024】
食材乾燥装置1による乾燥食材は、長期に保存できる。乾燥食材を家庭用等の真空パック器により真空包装すると、更に長期に保存できるので好ましい。調理前或いは調理後の食材で余ったものを乾燥して保存しておけば、食材資源の再利用が可能となり、食材資源の無駄、経費、生ゴミなどの低減に寄与できる。再利用の方法としては、そのまま食材としたり、ミキサー等により粉末にして飼料や肥料などに用いたりすることなどが挙げられる。
【0025】
次に、食材乾燥装置1を変形した食材乾燥装置1’について説明する。この食材乾燥装置1’は、温風送風機3を省略したものである。従って、ホース4Aとホース4Bも省略しており、乾燥庫2にはそれらとの接続のための部分は設けられていない。乾燥庫2の筐体20の一部には、筐体用炭素成型板20aが誘導加熱(IH)により発熱するように、誘導加熱器が取り付けられる。筐体用炭素成型板20aは、通常の金属材料に比べると比抵抗が高く、誘導加熱器から磁力線を受けると十分に発熱する。しかも、筐体用炭素成型板20aは熱拡散性が高いので、筐体用炭素成型板20aの比較的小さい面積が発熱してもすぐに拡散して全体の温度が均一になり、また、隣接する筐体用炭素成型板20aは、発熱する筐体用炭素成型板20aに直接接触していなくても、空気を介して熱が伝わり全体の温度が均一になる。鉛直軸21は、モータ等により駆動されて自ら回転する。羽根体23の面は、上昇する風が起こり易いように、鉛直方向から傾けるのが好ましい。
【0026】
この食材乾燥装置1’で風を生成するのは羽根体23であり、風の温度を上げるのは筐体20の筐体用炭素成型板20aである。そうして生じた温風により、食材乾燥装置1と同様にして食材を乾燥する。食材乾燥装置1’は、食材乾燥装置1よりも小型化がより容易である。
【0027】
以上、本発明の実施形態に係る食材乾燥装置1について説明したが、本発明は、実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。例えば、コスト低減などのために、食材乾燥装置1においては筐体用炭素成型板20aの全部又は一部を省略することが可能であり、食材乾燥装置1’においては筐体用炭素成型板20aの一部を省略することも可能である。また、食材乾燥装置1においては温風を旋回させる手段を別に設けたりし、食材乾燥装置1’においては風を生成する手段を別に設けたりして、羽根体23を省略することも可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 食材乾燥装置
2 乾燥庫
20a 筐体用炭素成型板
21 鉛直軸
22 棚
22b 棚用炭素成型板
22ba 棚用炭素成型板の貫通孔
23 羽根体
3 温風送風機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥庫内の食材を乾燥させる食材乾燥装置であって、
前記乾燥庫内に鉛直に立った鉛直軸と、
該鉛直軸の軸方向に互いに平行に取り付けられた複数段の棚と、を備え、
前記棚は多数の貫通孔が形成された棚用炭素成型板を有していることを特徴とする食材乾燥装置。
【請求項2】
請求項1に記載の食材乾燥装置において、
前記乾燥庫の天井及び/又は内壁には筐体用炭素成型板が取り付けられていることを特徴とする食材乾燥装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の食材乾燥装置において、
前記乾燥庫内の下部に温風を送る温風送風機を更に備えることを特徴とする食材乾燥装置。
【請求項4】
請求項3に記載の食材乾燥装置において、
前記温風送風機からの温風を受けて前記鉛直軸を回転させる羽根体を更に備えることを特徴とする食材乾燥装置。
【請求項5】
請求項2に記載の食材乾燥装置において、
前記筐体用炭素成型板を誘導加熱する誘導加熱器を更に備えることを特徴とする食材乾燥装置。
【請求項6】
請求項5に記載の食材乾燥装置において、
前記鉛直軸に取り付けられ風を生成する羽根体を更に備えることを特徴とする食材乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−190499(P2010−190499A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−35957(P2009−35957)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(397029873)株式会社大木工藝 (21)
【Fターム(参考)】