説明

食用油濾過装置

【課題】粉末状吸着剤を加えた食用油を濾材の目詰まり防止下に高い効率で濾過することができる濾過装置を低コストで提供する。
【解決手段】使用後の食用油に粉末状吸着剤を加えたものを濾過して下方の油受け容器80に溜める食用油濾過装置であって、底壁11、側壁12及び上端の開口を備え、排出孔14が底壁11に形成された油溜め容器10と、排出孔14を覆う多孔部材30と、多孔部材30を覆う濾過シート40と、濾過シート40上の中間部材50と、中間部材50上の受容濾過シート60とを備え、中間部材50は、濾過シート40の周縁部付近を押さえる水平部材511と、該水平部材から立ち上がった起立部512と、起立部の上部に支持されて受容濾過シートの底部を支えるブリッジ部50aとを備え、受容濾過シート60は、油溜め容器10の内壁面を覆う大きさとされている食用油濾過装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用後の食用油を再生して利用するための濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
天ぷらやフライ等の調理のために使用される食用油は、使用の繰り返しや時間経過に伴って酸化物の蓄積や揚げ滓のような夾雑物の混入等によって劣化する。そして、劣化が進行すると変色や臭気を発生するようになり、食用適性が低下する。しかし、少ない使用回数で食用油を廃棄するのは、不経済であり、環境汚染の原因ともなる。特に、料理店等の業務で大量の食用油を使用する場合は、この問題が大きい。そこで、使用後の食用油から酸化物や夾雑物等の不純物を濾過することによって再生し、使用の回数増や長期化が図られている。
【0003】
そのための濾過装置として、種々のものが知られている。例えば、特許文献1に記載の濾過装置は、油収納タンクの下部に袋詰めした吸着剤を置き、濾過された油をポンプで装置外に送出するか油収納タンクに環流する構造となっている。この装置は、袋内に閉じこめられた吸着剤を用いるので、油中の夾雑物に対する接触率が低く、濾過効率が低い。濾過効率は、ポンプを用いて油の流れを迅速化することにより補われるが、装置は大掛かりで高価なものとなるという欠点を有していた。
【0004】
また、特許文献2に記載の濾過装置も、濾過された油を、油受けタンクに接続されたポンプで吸引する構造となっており、装置は大掛かりで高価なものとなっている。また、濾過構造は、タンク底面に漉し網、濾紙抑え、濾紙、メッシュ網、濾布を順に重ねて形成されている。この濾過構造においては、濾紙と濾布との間にメッシュ網を介在させることによって空間を設けているが、その空間はメッシュ網の網構造の厚さに相当するものに過ぎない。この濾過装置は、使用後の油をそのまま濾過するようにして使用されるので、油中の夾雑物のみが補足され、目詰まりの問題は生じ難い。これに対し、濾過効率を上げるために、油中に粉末状吸着剤を加えると、この濾過構造では目詰まりが生じてしまい、僅かな濾過量でたちまち使用が不可能となる。
【0005】
特許文献3に記載の濾過装置は、使用後の天ぷら油を入れる容器内に積層した濾紙からなるフィルターエレメントを載置し、その上に大径の被覆板をフィルターエレメントの外周より張出すようにして載せたものである。この装置は、フィルターエレメント上面を被覆板で覆うことにより、大きな不純物がフィルターエレメントに付着して目詰まりを生じるのを防止している。しかしながら、この装置も、使用後の油をそのまま濾過するようにして使用され、フィルターエレメントには油中の夾雑物のみが補足される。この構造では、油中に粉末状吸着剤を加えると、やはり僅かな濾過量で吸着剤による濾紙の目詰まりが生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−190906号公報
【特許文献2】特開2004−267432号公報
【特許文献3】特開2002−58921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、これら従来技術の問題を解決し、粉末状吸着剤を加えた食用油を濾材の目詰まり防止下に高い効率で迅速に濾過することができる濾過装置を低コストで提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記目的を達成するため、使用後の食用油に粉末状吸着剤を加えたものを濾過して下方の油受け容器へ再生油を落下させて溜める食用油濾過装置であって、底壁及び側壁を備え上端に開口を有し、前記底壁に排出孔が形成された油溜め容器と、前記排出孔を覆うようにして前記底壁上に置かれる多孔部材と、前記底壁を覆う大きさを有し前記多孔部材を覆うように置かれる排出濾過シートと、前記濾過シートの上に置かれる中間部材と、前記油溜め容器の内壁面を覆う大きさを有し、前記中間部材の上に置かれ、使用後の食用油を受け入れる受容濾過シートとを備え、前記中間部材は、前記濾過シートの周縁部付近を押さえる水平部材と、該水平部材の縁部から立ち上がった複数の起立部と、多数の開口を有し前記起立部の上部に支持されて前記受容濾過シートの底部を支えるブリッジ部とを備えていることを特徴とする食用油濾過装置を提供するものである。
【作用】
【0009】
本発明に係る濾過装置は、底壁及び側壁を有し上端に開口を有した油溜め容器を使用し、その底壁に排出孔を形成し、その上に、排出孔を覆う多孔部材、底壁を覆う大きさを有した排出濾過シート、中間部材、及び受容濾過シートを順に載置するという構造を有している。そして、受容濾過シートは、前記油溜め容器の内壁面を覆う大きさとされているので、大きな面積の受容濾過シートを通過して油が濾過される。したがって、粉末状吸着剤を加えた食用油を油溜め容器内に溜めた際に、酸化物や夾雑物等の不純物のみならず、これらを吸着した吸着剤も大きな面積の受容濾過シートに分散して除去される。その結果、受容濾過シートの目詰まりが防止される。
【0010】
受容濾過シートにより濾過された食用油は、側壁全体を覆う受容濾過シート部分を通過した流れが、底壁周縁部に集中する。これに対し、中間部材は、排出濾過シートの周縁部付近を押さえる水平部材を備えている。したがって、排出濾過シートは、水平部材によって周縁部付近を押さえられ、その押さえ力には食用油の自重も加わるので、底壁周縁部に集中した流れによって排出濾過シートが移動するのが確実に防止される。さらに、中間部材は、水平部材の縁部から上方へ立ち上がった複数の起立部と、多数の開口を有し前記起立部の上部に支持されて前記受容濾過シートの底部を支えるブリッジ部とを備えている。したがって、受容濾過シートは、起立部の上部に支持されたブリッジ部によって底部を支持され、受容濾過シートと排出濾過シートとの間に、起立部に対応した高さを有した大きな空間が形成される。受容濾過シートを通過した食用油には、除去されなかった不純物及び吸着剤が混入しているが、それらはその大きな空間内で分散した後、排出濾過シートに到達して除去される。その結果、排出濾過シートの目詰まりが確実に防止される。
【0011】
また、濾過開始から時間が経過すると共に、吸着剤が沈降して容器底部に堆積し、堆積箇所での油通過速度が低下する。しかしながら、受容濾過シートは容器側壁を覆う大きい面積を有しているので、吸着剤の堆積高さより上方の容器側壁を覆う部分で迅速な濾過が維持される。そして、この容器側壁を覆う受容濾過シート部分で濾過された食用油は、中間部材により形成された受容濾過シート下方の大きな空間により確保された流路を経て排出濾過シートへと流れる。このようにして、粉末状吸着剤を使用することにより、直接濾過では除去困難な微小な不純物を吸着剤に付着させて、受容濾過シート及び排出濾過シートにより除去することができる。その濾布及び排出濾過シートは、上述の通り、吸着剤を加えた食用油であっても目詰まりが確実に防止される。こうして、本発明装置によれば、高い効率で迅速に不純物を濾過することができる。
【0012】
また、本発明に係る濾過装置は、油溜め容器に上述の多孔部材、排出濾過シート、中間部材、受容濾過シートを順に載置するだけで濾過構造を形成することができ、濾過された再生油は下方の油受け容器へ落下して溜められるので、全体の構造が簡単であり、低コストで製造することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、粉末状吸着剤を加えた食用油を濾材の目詰まり防止下に高い効率で濾過し得る濾過装置を低コストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る濾過装置の斜視図である。
【図2】図1に示した濾過装置を分解して示す斜視図である。
【図3】図1に示した濾過装置を分解した状態を一部断面で示す斜視図である。
【図4】図1に示した濾過装置の平面図である。
【図5】図1に示した濾過装置における要部を分解して示す斜視図である。
【図6】図1に示した濾過装置における底部の縦断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る濾過装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。図1〜図4は、本発明の一実施形態に係る食用油濾過装置を示すものであり、図1は使用状態の斜視図、図2は分解斜視図、図3は内部構造を分解状態で示す斜視図、図4は平面図である。
【0016】
この食用油濾過装置1は、使用後の食用油に粉末状吸着剤を加えたものを油溜め容器10内の濾過構造20で濾過し、下方の油受け容器80に溜めるようにしたものである。油溜め容器10は、底壁11及び側壁12を備え上端に開口13を有し、底壁11に複数の小径の排出孔14が形成されている。この実施形態では、油溜め容器10は直方体形状をなしており、これには、例えばブリキ製の18リットル缶(いわゆる一斗缶)を用いることができる。排出孔14は、排出濾過シート40を被濾過液の重量に抗して保持し得る程度の大きさとされ、適切な被濾過液の通過量が得られるように1個または複数個設けられ、その形状は円形、長円形、三角形や四角形等の多角形、細長いスリット状等、種々可能である。
【0017】
濾過構造20は、図5に示すように、排出孔14を覆うようにして底壁上に置かれる多孔部材30と、多孔部材30を覆うように置かれる排出濾過シート40と、排出濾過シート40の上に置かれる中間部材50と、中間部材50の上に置かれる受容濾過シート60とを備えている。
【0018】
多孔部材30は、この実施形態では網部材で構成されており、平らで全体として矩形をなし、矩形をなすように延びる外周ワイヤ31と、外周ワイヤ31に両端を支持されて延びる交差ワイヤ32とで構成されており、交差ワイヤ32は外周ワイヤ31より細く各々は外周ワイヤ31に両端部を巻き付けて支持されている。
【0019】
排出濾過シート40は、多孔部材30より大きい寸法を有した矩形のものであり、この実施形態では2枚を重ねて用いている。尤も、その枚数は、排出濾過シート40の厚さ、密度、材質などに応じて決めることができ、1枚または3枚以上とすることもできる。この実施形態では、パルプを主原料とする濾紙を用いており、例えばキッチンペーパーを用いることもできる。
【0020】
中間部材50材は、矩形状をなす枠ワイヤ51と、該枠ワイヤの対向する角部を結ぶように延びる2本のクロスワイヤ52と、該クロスワイヤ上で螺旋状に延びる螺旋ワイヤ53とによって構成されている。枠ワイヤ51は、排出濾過シート40の矩形形状より僅かに小さい矩形をなすように延びる水平部511と、矩形における角部を上方へ斜めに折り曲げて形成された起立部512とを備えている。2本のクロスワイヤ52は、起立部512の上端部を結ぶように延びて相互に直交し、その上に螺旋ワイヤ53を支持しており、これらのワイヤは溶接により一体的に接合されている。このようにして、クロスワイヤ52及び螺旋ワイヤ53は、クロス状及び螺旋状に延びるワイヤの間に多数の開口を有し、枠ワイヤ51の起立部512により水平部511より高い位置で水平に延びるブリッジ部50aを形成している。
【0021】
受容濾過シート60は、上端部が開いた平らな袋状をなしているが、油溜め容器10の直方体形状の内壁面に沿うようにして挿入されたときに、その内壁面を覆う大きさとされている。尤も、袋形状を油溜め容器10の内面に沿う直方体形状に予め形成してもよい。この受容濾過シート60は、例えば、パルプを主原料とするフィルター材で形成することができ、その他、合成繊維または天然繊維或いはその混合体による不織布、網織物等により形成することもできる。
【0022】
この実施形態では、食用油濾過装置1はさらに、油溜め容器10から排出される油を受ける油受け容器80、及び油溜め容器10と油受け容器80との間に介在する保持枠70をさらに備えている。
【0023】
油溜め容器10と油受け容器80とは、同じ直方体状の容器であり、油受け容器80も、例えばブリキ製の18リットル缶を用いることができる。保持枠70は、油溜め容器10の底部11の外側に嵌合する上部側壁71と、油受け容器80の上部開口部81の内側に嵌合する下部側壁73と、これら上部側壁71の下端及び下部側壁73の上端を結合する中間壁72とを備え、該中間壁72は油受け容器80の上端部に載置される形状となっている。
【0024】
次に、この食用油濾過装置1の製作方法について説明する。先ず、油溜め容器10を準備する。これは、前述のようにブリキ製18リットル缶を用いることができ、その場合は、天壁があるときには天壁を切断除去し、底壁11に錐等で排出孔14を形成する。さらに、濾過された食用油を排出孔14へ円滑に流すように、底壁11の中央部を押して変形させ、底壁11が周縁部から中央部へと下降する傾斜を持たせるのが望ましい。
【0025】
この油溜め容器10内に濾過構造を形成する。これには、先ず、油溜め容器10の排出孔14を覆うようにして底壁11上に多孔部材30を置く。そして、多孔部材30を覆うようにして排出濾過シート40を置き、排出濾過シート40の上に中間部材50を置く。これにより、中間部材50を構成する枠ワイヤ51の水平部511で、排出濾過シート40の周縁部付近を押さえる。次に、受容濾過シート60を広げながら油溜め容器10内面に沿わせるようにして油溜め容器10内に挿入し、その底部を中間部材50上に置き、上端部は油溜め容器10の側壁上端を越えるようにして外側へ折り返す。
【0026】
次に、油受け容器80の上端部に保持枠70を嵌合し、その上に油溜め容器10の底部を嵌合する。保持枠70としては、ブリキ製18リットル缶を積み重ねるための保持枠板を用いることもできる。その場合、図2に示すように、中間壁72が上部側壁71及び下部側壁73の内側領域を板状に延びていれば、排出孔14に対応する位置を切り取って開口74を形成する。油受け容器80には、油溜め容器10と同じブリキ製18リットル缶を用いることができ、その場合は、天壁を切断除去する(天壁があるとき)。
【0027】
この食用油濾過装置1は、次のようにして使用することができる。上述のようにして、油受け容器80の上に載せられ、濾過構造20を装着された油溜め容器10に、使用後の食用油を注ぎ込む。食用油は、油溜め容器10の上端付近まで入れることができる。食用油には、吸着剤を投入する。その投入は、食用油を油溜め容器10に注ぎ込んだ後でも、その前でもよい。吸着剤としては、シリカ(二酸化ケイ素)や活性白土、これらに酸化マグネシウム等のアルカリ成分を添加したもの、活性炭等を粉末状にしたも等を用いることができる。そして、投入した吸着剤が食用油によく分散するように撹拌をする。
【0028】
注ぎ込まれた食用油は、図6に示す濾過構造20において、受容濾過シート60と排出濾過シート40とで濾過される。この濾過構造20では、受容濾過シート60が油溜め容器10の内壁面を覆う面積を有しているので、食用油中の酸化物や夾雑物等の不純物、及びこれらを吸着した吸着剤が、大きな面積の受容濾過シート60に分散して除去され、その結果、受容濾過シートの目詰まりが防止される。
【0029】
受容濾過シート60により濾過された食用油は、側壁12全体を覆う受容濾過シート部分を通過した流れが、油溜め容器10の底壁12周縁部に集中し、排出濾過シート40上を流れる。これに対し、この濾過構造20においては、受容濾過シート60と排出濾過シート40との間に中間部材50が介在し、その水平部511が排出濾過シート40の周縁部を押さえている。その押さえ力には食用油の自重も加わるので、底壁周縁部から排出孔14のある中央部へ流れによって排出濾過シート40が移動するのが確実に防止される。
【0030】
また、中間部材50は、クロスワイヤ52及び螺旋ワイヤ53が、枠ワイヤ51の起立部512により支持され、水平部511より高い位置で水平に延びるブリッジ部50aを形成している。その結果、図6に示すように、受容濾過シート60の底部は、ブリッジ部50aによって支持され、排出濾過シート40との間に、起立部512に対応した高さの大きな空間が形成される。受容濾過シートを通過した食用油中の不純物及び吸着剤は、その大きな空間内において分散した後、排出濾過シート40に到達して除去されることになる。その結果、排出濾過シートの目詰まりが確実に防止される。こ
の効果を得るためには、空間の高さが2〜100mmとなるように、中間部材50を形成するのが望ましい。この高さが上記下限値を下回ると、受容濾過シートを通過した食用油中の不純物の分散が十分に行なわれない。一方、その高さが上記上限値を上回っても、分散効率はさほど高くならない割に油溜め容器の油収容容積が小さくなるという不利がある。この観点から、上記空間の高さは、3〜50mmとするのがより望ましい。
【0031】
また、この実施形態のように、排出孔14が、底壁11に設けられた複数の小孔で形成されている場合は、多孔部材30が、排出濾過シートと排出孔周囲の底壁11部分との密着を防止する。これにより、排出濾過シート40によって濾過された食用油が排出孔14へと流れる流路が確保される。
【0032】
この流路は、多孔部材30を網部材で形成することにより、網部材を構成するワイヤの径とワイヤ間の空隙によって確実に形成される。この他、多孔部材30は、パンチングメタルのように板材に多数の小孔を設けたものとすることができる。この場合、板材を波板状にしたり、油を通す孔に通じる溝状の凹部を曲げ加工する等により、板材に沿う流路を確保するのが望ましい。
【0033】
排出濾過シート40を通過することにより不純物を除去された食用油は、排出孔14を通って落下し、油受け容器80に溜められる。
【0034】
このようにして、食用油濾過装置1によれば、粉末状吸着剤を使用して微小な不純物まで確実に除去でき、濾布60及び排出濾過シート40は、吸着剤を加えた食用油であっても目詰まりが確実に防止される。こうして、高い効率で迅速に不純物の濾過を行なうことができる。例えば、18リットル缶を用いた濾過装置の場合は、容器に収容した食用油について、1〜2時間で70〜80%の量の濾過が行なわれる。その後の濾過は、油面の低下により、容器底部に溜まった不純物及び吸着剤を経て行なわれる割合が高くなるので、時間を要することになるが、70〜80%量の迅速濾過された食用油は、すぐに次の利用に供することができる。
【0035】
また、食用油濾過装置1は、油溜め容器10に多孔部材30、排出濾過シート40、中間部材50、受容濾過シート60を順に載置するだけで濾過構造20を形成することができ、濾過された再生油は下方の油受け容器80へ落下して溜められるので、全体の構造が簡単であり、低コストで製造することができる。
【0036】
図7は、本発明の他の実施形態に係る食用油濾過装置1Aを示している。この食用油濾過装置1Aは、フライヤーAの下に装備して使用することができるものである。フライヤーAは、収容した食用油を揚げ物等の調理温度に加熱する調理槽Bを上部に備え、下部は脚部Cの間が空所Dとなっている。食用油濾過装置1Aは、この空所Dに収められる寸法の油溜め容器10及び油受け容器80を備えている。これら油溜め容器10及び油受け容器80の基本的な構造は図1〜図6に示した食用油濾過装置1のものと同様であるので、詳細な説明は省略し、図7における食用油濾過装置1に対応する部分には、食用油濾過装置1の番号の末尾に「A」を付して示す。
【0037】
この食用油濾過装置1Aは、フライヤーAの下部に収納されるように、油溜め容器10及び油受け容器80が扁平な形状となっている。各容器を空所Dに出し入れし易いように、油溜め容器10Aは4隅から下方へ延びる脚部90の下端にキャスター91を備え、油受け容器80Aは底面の4隅にキャスター92を備えている。また、側壁12A上の受容濾過シート部分の上から断面逆U字状のクランプ部材95を嵌め、該クランプ部材95の弾性による締め付け力により、受容濾過シート60Aが油溜め容器10Aの側壁12Aから外れないようにしている。
【0038】
この食用油濾過装置1Aも前述の食用油濾過装置1と同様にして使用することができ、前述と同様に、粉末状吸着剤を加えた食用油を濾材の目詰まり防止下に高い効率で濾過することができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、濾過構造を構成する中間部材は、螺旋ワイヤに代えて、同心円状に並ぶ複数のワイヤを備えることもできる。また、起立部上に支持されるブリッジ部は、直角または所定角度で交差する網構造のワイヤで形成することもできる。さらに、中間部材は、ワイヤ製のものに代えて、パンチングメタルのように板材に多数の小孔を設けたものとすることもできる。
【0040】
多孔部材及び中間部材は、実施形態に示したような矩形以外の多角形、円形等、種々の形状とすることができる。但し、中間部材は、油溜め容器内で移動し難いように油溜め容器底部にほぼ密に挿入される寸法とするのが望ましい。
【0041】
油溜め容器の排出孔は、底壁の中央部ではなく、周縁部や隅部に設けることもできる。この場合も底壁には、排出に向かって下降する傾斜を設けるのが望ましい。或いは、排出孔は底壁全体に設けてもよい。
【0042】
受容濾過シートは、袋状のもの以外の形状あっても、油溜め容器の内壁面を覆う大きさを有していれば、平らな1枚の濾過シート等、種々の形状の濾過シートを用いることができる。
【0043】
油溜め容器及び油受け容器をブリキ製缶で形成する場合は、18リットル缶の他、これより小型または大型の缶を用いることもできる。また、両容器は、直方体形状のものの他、円筒形状、多角柱形状等、種々の形状のものとすることができる。
【符号の説明】
【0044】
1,1A: 食用油濾過装置
10,10A:容器
11,11A:底壁
12,12A:側壁
13: 開口
14,14A:排出孔
20,20A:濾過構造
30: 多孔部材
40: 排出濾過シート
50: 中間部材
50a: ブリッジ部
60,60A:受容濾過シート
70: 保持枠
71: 上部側壁
72: 中間壁
73: 下部側壁
74: 開口
80,80A:油受け容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用後の食用油に粉末状吸着剤を加えたものを濾過して下方の油受け容器へ再生油を落下させて溜める食用油濾過装置であって、
底壁及び側壁を備え上端に開口を有し、前記底壁に排出孔が形成された油溜め容器と、
前記排出孔を覆うようにして前記底壁上に置かれる多孔部材と、
前記底壁を覆う大きさを有し前記多孔部材を覆うように置かれる排出濾過シートと、
前記濾過シートの上に置かれる中間部材と、
前記油溜め容器の内壁面を覆う大きさを有し、前記中間部材の上に置かれ、使用後の食用油を受け入れる受容濾過シートとを備え、
前記中間部材は、前記濾過シートの周縁部付近を押さえる水平部材と、該水平部材の縁部から立ち上がった複数の起立部と、多数の開口を有し前記起立部の上部に支持されて前記受容濾過シートの底部を支えるブリッジ部とを備えている
ことを特徴とする食用油濾過装置。
【請求項2】
前記油溜め容器から排出される油を受ける油受け容器、及び前記油溜め容器と油受け容器との間に介在する保持枠をさらに備え、
前記保持枠は、前記油溜め容器底壁の排出孔に臨む位置に開口を有すると共に、前記油溜め容器の底部と前記油受け容器の上端部とに嵌合して、前記油溜め容器上に前記油受け容器を保持することを特徴とする請求項1に記載の食用油濾過装置。
【請求項3】
前記油溜め容器と油受け容器とが同じ形状の壁部からなる容器であり、前記保持枠は、前記油溜め容器の底部の外側に嵌合する上部側壁と、前記油受け容器の上端開口部の内側に嵌合する下部側壁と、これら上部側壁の下端及び下部側壁の上端を結合する中間壁とを備え、該中間壁は前記油受け容器の上端部に載置されることを特徴とする請求項2に記載の食用油濾過装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−115757(P2011−115757A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277658(P2009−277658)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(509336314)株式会社フォーオール (1)
【Fターム(参考)】