説明

飲料ディスペンサのモータ側カップリング部材製造方法及びモータ側カップリング部材

【課題】本発明は、抜止部材の傾きを抑制でき、振動の発生を低減できる飲料ディスペンサのモータ側カップリング部材製造方法及びモータ側カップリング部材を提供することを目的とするものである。
【解決手段】本発明による飲料ディスペンサのカップリング部材製造方法及びモータ側カップリング部材は、抜止周面支持突起201aで抜止部材141の筒部151の外周部153を支持するとともに、抜止部材141を第1及び第2金型201,202で挟持することで第1及び第2金型201,202に対する抜止部材141の位置決めを行い、筒部151の本体先端部151a及び壁部154の壁先端部154aが、カップリング部材本体140のモータ側端面143及びカップリング側端面144から露出される構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撹拌用モータのシャフトが接続されるとともに、ミキシングケース内の粉末原料と水又は湯とを撹拌するための撹拌子に磁気作用を介して前記撹拌用モータの駆動力を伝えるカップリング部材を製造するための飲料ディスペンサのモータ側カップリング部材製造方法及びモータ側カップリング部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来用いられていたこの種の飲料ディスペンサとしては、下記の特許文献1等に示される構成を挙げることができる。すなわち、従来の飲料ディスペンサでは、例えば茶やスープ等の粉末原料と水又は湯とがミキシングケース内で撹拌子によって撹拌されることで、飲料が生成される。
【0003】
撹拌子に駆動力を伝える方法として、撹拌子に撹拌用モータのシャフトを機械的に接続することも考えられるが、例えば下記の特許文献2等に記載されたマグネットカップリングを使用することもできる。マグネットカップリングが使用される場合、撹拌子の軸の一端に撹拌側カップリング部材が設けられるとともに、撹拌用モータのシャフトにモータ側カップリング部材が取付けられる。そして、撹拌側カップリング部材とモータ側カップリング部材との間の磁気作用を介して、撹拌用モータの駆動力が撹拌子に伝えられる。
【0004】
ここで、撹拌子の軸又は撹拌用モータのシャフトに傾きが生じた場合には、撹拌子の回転に伴って撹拌子及び撹拌用モータに振動が生じ、撹拌用モータのシャフトがモータ側カップリング部材から抜けてしまうことがある。これを防ぐためには、シャフトの径よりも僅かに(0.02mm程度)小さな径のシャフト穴が設けられた金属製の抜止部材をモータ側カップリング部材にインサート成形して、シャフト穴にシャフトを圧入することが考えられる。
【0005】
そして、抜止部材をモータ側カップリング部材にインサート成形する方法としては、金型に一体に設けられた軸体を抜止部材のシャフト穴に挿通することで金型に対する抜止部材の位置決めを行った後に、金型のキャビティに樹脂を注入する方法が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−43439号公報
【特許文献2】特開昭61−203864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような従来の飲料ディスペンサのモータ側カップリング製造方法では、軸体をシャフト穴に通すことで金型に対する抜止部材の位置決めを行うので、金型に樹脂を注入した際に、軸体とシャフト穴との間の遊びの分だけ抜止部材が傾いてしまう。このため、抜止部材に圧入された撹拌用モータのシャフトにも傾きが生じてしまい、撹拌子及び撹拌用モータの振動の原因となる。この振動は、撹拌用モータの耐久性の低下や異音を引き起こす。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、抜止部材の傾きを抑制でき、振動の発生を低減できる飲料ディスペンサのモータ側カップリング部材製造方法及びモータ側カップリング部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る飲料ディスペンサのモータ側カップリング部材製造方法は、撹拌用モータのシャフトが接続されるとともに、ミキシングケース内の粉末原料と水又は湯とを撹拌するための撹拌子に磁気作用を介して撹拌用モータの駆動力を伝えるカップリング部材を製造するための飲料ディスペンサのモータ側カップリング部材製造方法であって、撹拌用モータのシャフトが圧入されるシャフト穴が設けられた抜止部材本体、シャフト穴と同軸に抜止部材本体に設けられた外周部、抜止部材本体の底面の外周位置から立設された壁部、及び壁部に設けられた樹脂供給路を有する抜止部材と、外周部を支持する抜止周面支持突起を有し、抜止部材本体の先端側に配置される第1金型と、壁部の内側に進入される突部を有し、第1金型と対向するように壁部の先端側に配置される第2金型とを用い、抜止周面支持突起で外周部を支持するとともに、抜止部材を第1及び第2金型で挟持することで、第1及び第2金型に対する抜止部材の位置決めを行い、抜止部材の位置決め後に、第1及び第2金型間のキャビティに樹脂を注入するとともに、樹脂供給路を通して壁部の内側に樹脂を供給し、壁部の内側に突部に対応した凹部を形成しつつ、抜止部材がインサート成形されたカップリング部材本体を成形する。
従って、抜止周面支持突起で外周部を支持するとともに、抜止部材を第1及び第2金型で挟持することで、第1及び第2金型に対する抜止部材の位置決めを行うので、軸体をシャフト穴に通すだけで抜止部材の位置決めを行う場合に比べて、抜止部材の傾きを抑制でき、振動の発生を低減できる。
【0010】
また、第2金型には、抜止部材が位置決めされた際に壁部の壁先端部に当接される当接部が設けられており、壁先端部の厚み方向に沿う当接部の壁先端部に対する当接幅は壁先端部の厚みよりも狭くされており、当接部が当接されている部分を除いて壁先端部の端面を樹脂で覆うように、カップリング部材本体を成形する。
従って、当接部が当接されている部分を除いて壁先端部の端面を樹脂で覆うように、カップリング部材本体を成形するので、冷却により樹脂の体積が減少するヒケが成形品に生じた場合でも壁先端部が突出することを回避でき、他の部品が壁先端部により傷つけられることを防止できる。
【0011】
また、本発明に係る飲料ディスペンサのモータ側カップリング部材は、撹拌用モータのシャフトが接続されるとともに、ミキシングケース内の粉末原料と水又は湯とを撹拌するための撹拌子に磁気作用を介して撹拌用モータの駆動力を伝えるための飲料ディスペンサのモータ側カップリング部材であって、永久磁石部を含むとともに樹脂で成形されたカップリング部材本体と、カップリング部材本体に設けられたモータ側端面及びカップリング側端面と、撹拌用モータのシャフトが圧入されるシャフト穴が設けられた抜止部材本体、抜止部材本体の底部の外周位置からカップリング側端面に向けて立設された壁部、及び壁部に設けられた樹脂供給路を有し、カップリング部材本体にインサート成形された抜止部材と、カップリング側端面に設けられるとともに、壁部の内側に位置された凹部とを備え、抜止部材本体の本体先端部及び壁部の壁先端部がモータ側端面及びカップリング側端面から露出されている。
従って、抜止部材本体の本体先端部及び壁部の壁先端部がモータ側端面及びカップリング側端面から露出されているので、抜止部材を金型で挟持してカップリング部材本体を成形できる。これにより、軸体をシャフト穴に通すことで抜止部材の位置決めを行う場合に比べて、抜止部材の傾きを抑制でき、振動の発生を低減できる。
【0012】
また、カップリング側端面には、壁先端部を露出させる溝を形成するように、壁先端部の厚みよりも狭い範囲で壁先端部の端面を覆う樹脂である皮膜部が設けられている。
従って、カップリング側端面に壁先端部の端面を覆う皮膜部が設けられているので、成形品にヒケが生じた場合でも壁先端部が突出することをより確実に回避でき、他の部品が壁先端部によって傷つけられることを防止できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の飲料ディスペンサのモータ側カップリング部材製造方法及びモータ側カップリング部材によれば、抜止部材の傾きを抑制でき、振動の発生を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1による飲料ディスペンサのミキシングユニットの断面図である。
【図2】図1のモータ側カップリング部材の斜視図である。
【図3】図2の線III−IIIに沿う断面図である。
【図4】図3の抜止部材の斜視断面図である。
【図5】図4の抜止部材を斜め下方から見た状態を示す斜視図である。
【図6】図2のモータ側カップリング部材の製造に用いられる部材の断面図である。
【図7】図6の部材を用いてのモータ側カップリング部材の製造方法を示す説明図である。
【図8】本発明の実施の形態2による飲料ディスペンサのモータ側カップリング部材を斜め下方から見た状態を示す斜視図である。
【図9】図8のモータ側カップリング部材の断面図である。
【図10】図9のモータ側カップリング部材の製造方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による飲料ディスペンサのミキシングユニットの断面図である。図において、ミキシングユニット1は、飲料ディスペンサの筐体の内部において、例えば茶やスープ等の粉末原料を格納しているキャニスタ2の下方に配置されている。なお、図示はしないが、飲料ディスペンサの筐体の前面には、開閉可能な扉が設けられており、ミキシングユニット1及びキャニスタ2は、扉が開かれることで外部に露出される飲料ディスペンサの内部の前面側に配置されている。キャニスタ2の下部には、原料放出モータ20の駆動力によって回転されるスクリュー21と、スクリュー21の先端側に位置する放出口22とが設けられている。キャニスタ2内の粉末原料は、スクリュー21の回転によって放出口22に向けて搬送されて、放出口22から放出される。すなわち、キャニスタ2内の粉末原料は、ミキシングユニット1の上方からミキシングユニット1に供給される。ミキシングユニット1の背部には液供給機構3が配置されており、液供給機構3は、水又は湯をミキシングユニット1に供給する。
【0016】
ミキシングユニット1には、ミキシングケース10、ミキシングキャップ11、ホルダ12、撹拌用モータ13、モータ側カップリング部材14、及び撹拌子15が設けられている。ミキシングケース10は、粉末原料と水又は湯とを収容するための容器である。ミキシングキャップ11は、ミキシングケース10の後部上方に取付けられたキャップであり、撹拌子15を支持している。ミキシングケース10及びミキシングキャップ11は、ホルダ12の下部に保持されており、ホルダ12に対して引出自在とされている。
【0017】
ホルダ12の上部には、撹拌用モータ13及びモータ側カップリング部材14が保持されている。モータ側カップリング部材14は、撹拌用モータ13のシャフト13aに取付けられている。
【0018】
撹拌子15は、棒状の軸部15aと、軸部15aの上端に一体に設けられた円板状の撹拌側カップリング部材15bと、軸部15aの下端に設けられるとともに下面に撹拌羽15dが形成された円板部15cとを有している。撹拌側カップリング部材15bは、ミキシングキャップ11に保持されており、モータ側カップリング部材14に対向して配置される。モータ側カップリング部材14及び撹拌側カップリング部材15bには磁石が含まれており、撹拌用モータ13の駆動力は、これらカップリング部材14,15b間の磁気作用を介して撹拌子15に伝えられる。
【0019】
撹拌子15の軸部15a及び円板部15cは、ミキシングケース10内に配置されている。撹拌用モータ13の駆動力により円板部15cが回転されると、ミキシングケース10内で撹拌羽15dによって粉末原料と湯又は水とが撹拌されて飲料が生成される。生成された飲料は、ミキシングケース10の下部開口10aから、ミキシングユニット1の下方に配置されたステージ(図示せず)上の容器に注出される。
【0020】
次に、図2は図1のモータ側カップリング部材14の斜視図であり、図3は図2の線III−IIIに沿う断面図であり、図4は図3の抜止部材141の斜視断面図であり、図5は図4の抜止部材141を斜め下方から見た状態を示す斜視図である。図2及び図3に示すように、モータ側カップリング部材14は、樹脂で成形された円板形状のカップリング部材本体140と、カップリング部材本体140にインサート成形された抜止部材141及び永久磁石142とを有している。
【0021】
図3に示すように、カップリング部材本体140には、カップリング部材本体140の表面及び裏面を構成するモータ側端面143とカップリング側端面144とが設けられている。換言すると、モータ側端面143及びカップリング側端面144は、カップリング部材本体140の軸方向に沿って互いに離間されて配置された端面である。モータ側端面143は、撹拌用モータ13(図1参照)に対向する端面であり、カップリング側端面144は、撹拌側カップリング部材15b(図1参照)に対向する端面である。
【0022】
抜止部材141は、カップリング部材本体140の径方向中央位置に配置されている。図4及び図5に示すように、抜止部材141には、抜止部材本体149、シャフト穴152、外周部153、壁部154、及び樹脂供給路155(図5参照)が設けられている。抜止部材本体149は、板部150及び筒部151からなる断面凸字状の部材である。板部150は、円板形状の部位であり、表面及び裏面を構成する第1及び第2端面150a,150bを有している。筒部151は、第1端面150aからモータ側端面143(図3参照)に向けて立設されている。抜止部材本体149すなわち筒部151の先端である本体先端部151aはモータ側端面143から露出される。シャフト穴152は、筒部151に設けられており、モータ側端面143において開口されている。このシャフト穴152は、撹拌用モータ13のシャフト13a(図1参照)の径よりも僅かに(0.02mm程度)小さな径を有しており、撹拌用モータ13のシャフト13aがシャフト穴152に圧入されることで、撹拌用モータ13にモータ側カップリング部材14が取付けられる。シャフト穴152の上部には、本体先端部151aに向かうにつれて拡径された拡径部152aが設けられている。後に図を用いて説明するが、拡径部152aは、抜止部材141がカップリング部材本体140にインサート成形される際に、抜止部材141の位置決めに利用される。
【0023】
外周部153は、筒部151の外周面を形成しており、シャフト穴152と同軸に設けられている。壁部154は、抜止部材本体149の底面、すなわち板部150の第2端面150bの外周位置からカップリング側端面144(図3参照)に向けて立設された壁であり、壁部154の壁先端部154aは、カップリング側端面144から露出される。樹脂供給路155は、壁部154に設けられた切り欠きであり、インサート成形の際に壁部154の内側に樹脂を供給するためのものである。
【0024】
図3に戻り、永久磁石142は、円環状(ドーナッツ形状)に形成されており、カップリング部材本体140の径方向に沿う抜止部材141の外側に配置されている。この永久磁石142には、周方向に沿って複数の磁極が設けられている。すなわち、永久磁石142には、周方向に沿って複数のN極及びS極が交互に設けられている。
【0025】
モータ側端面143には、抜止部材141の外周部153を露出させる4つの中央凹部143aと、永久磁石142の上面を露出させる4つの外周凹部143bとが設けられている。各中央凹部143aは、リブ145によって互いに区画されており、インサート成形の際に抜止部材141及び永久磁石142を支持するための部材が進入されることで形成された部分である。外周凹部143bは、カップリング部材本体140の周方向に沿って等間隔に配置されており、インサート成形の際に永久磁石142の端面を支持するための部材が進入されることで形成された部分である。
【0026】
カップリング側端面144の中央部には、凹部144aが設けられている。図1に示すように、撹拌側カップリング部材15bのカップリング側端面の中央部には、凹部144aに当接される凸部15eが設けられており、モータ側カップリング部材14と撹拌側カップリング部材15bとは、これら凹部144a及び凸部15eによって互いに同軸に配置される。また、凸部15eの突出量は凹部144aの深さよりも大きくされており、モータ側カップリング部材14と撹拌側カップリング部材15bとは、これら凹部144a及び凸部15eのみで接触される。すなわち、モータ側カップリング部材14及び撹拌側カップリング部材15bの外周部には、例えば1〜2mm程度の空隙15fが形成されている。
【0027】
図6は、図2のモータ側カップリング部材14の製造に用いられる部材の断面図である。なお、図6では、線A−Aの上下で各部材の異なる断面を表している。具体的には、線A−Aの上方では抜止部材141の壁部154の断面が現れ、線A−Aの下方では抜止部材141の樹脂供給路155が現れるようにしている。図において、モータ側カップリング部材14の製造には、抜止部材141、永久磁石142、第1金型201、及び第2金型202が用いられる。第1及び第2金型201,202は、互いに対向されて配置される金型であり、抜止部材141及び永久磁石142はこれら第1及び第2金型201,202間に配置される。
【0028】
第1金型201は、抜止部材141の筒部151(抜止部材本体149)の先端側に配置されている。この第1金型201には、複数の抜止周面支持突起201a、円錐突起201b、複数の磁石周面支持突起201c、及び複数の磁石端面当接突起201dが設けられている。詳細には図示しないが、抜止周面支持突起201a、磁石周面支持突起201c、及び磁石端面当接突起201dは、円錐突起201bを中心に配置されるとともに、図2に示す中央凹部143a及び外周凹部143bに対応するように4つずつ設けられている。
【0029】
抜止周面支持突起201aは、内周面で筒部151の外周部153を支持するものである。円錐突起201bは、各抜止周面支持突起201aの中心に配置されており、シャフト穴152の拡径部152aに挿入されるものである。これら抜止周面支持突起201a及び円錐突起201bは、モータ側カップリング部材14の成形時に、モータ側カップリング部材14の径方向14aに沿う抜止部材141の位置決めに利用される。
【0030】
磁石周面支持突起201cは、抜止周面支持突起201aと一体に設けられており、外周面で永久磁石142の内周面を支持するものである。この磁石周面支持突起201cは、モータ側カップリング部材14の成形時に、モータ側カップリング部材14の径方向14aに沿う永久磁石142の位置決めに利用される。
【0031】
磁石端面当接突起201dは、モータ側カップリング部材14の径方向14aに沿う磁石周面支持突起201cの外方に配置されており、永久磁石142の端面に当接されるものである。この磁石端面当接突起201dは、モータ側カップリング部材14の成形時に、モータ側カップリング部材14の軸方向14bに沿う永久磁石142の位置決めに利用される。
【0032】
第2金型202は、抜止部材141の壁部154の先端側に配置される。この第2金型202には、内側に円筒形状の空間を有する溝部202aが形成されており、この溝部202aの中心部には山形の突部202bが形成されている。この突部202bは、モータ側カップリング部材14の成形時に、壁部154の内側に進入されるものであり、カップリング側端面144の凹部144aを形成するものである。
【0033】
次に、図6の部材を用いてのモータ側カップリング部材14の製造方法について説明する。図7は、図6の部材を用いてのモータ側カップリング部材14の製造方法を示す説明図である。なお、図6と同様に、図7においても線B−Bの上下で異なる断面を示している。まず図7に示すように、第1及び第2金型201,202が離間された状態において、磁石周面支持突起201cで永久磁石142の内周面を支持することで、モータ側カップリング部材14の径方向14aに沿う永久磁石142の位置決めを行う。また、磁石端面当接突起201dを永久磁石142の端面に当接させて、磁力により永久磁石142を磁石端面当接突起201dに吸着させることで、モータ側カップリング部材14の軸方向14bに沿う永久磁石142の位置決めを行う。
【0034】
また、第1及び第2金型201,202が離間された状態において、抜止周面支持突起201aで筒部151の外周部153を支持するとともに、円錐突起201bをシャフト穴152の拡径部152aに挿入し、モータ側カップリング部材14の径方向14aに沿う抜止部材141の位置決めを行う。
【0035】
次に、図において矢印にて示すように第2金型202を第1金型201に向けて変位させて、第1及び第2金型201,202で抜止部材141を挟持する。すなわち、筒部151の本体先端部151aを第1金型201の端面に当接させるとともに、壁部154の壁先端部154aを第2金型202の端面に当接させる。これにより、モータ側カップリング部材14の軸方向14bに沿う抜止部材141の位置決めを行うとともに、モータ側カップリング部材14の径方向14aに沿う抜止部材141の位置決めをより強固なものとする。
【0036】
これら第1及び第2金型201,202に対する抜止部材141及び永久磁石142の位置決めを行った後に、第1及び第2金型201,202間のキャビティに樹脂を注入する。このとき、第1及び第2金型201,202で抜止部材141を挟持しているので、成形圧力によって抜止部材141が倒れ込むことが防止される。キャビティに樹脂が注入されると、抜止部材141及び永久磁石142は、樹脂によって取り囲まれる。このとき、樹脂は、樹脂供給路155を通して壁部154の内側に供給され、壁部154の内側に突部202bに対応した凹部144a(図3参照)が形成される。なお、この凹部144aは、抜止部材141と周囲の樹脂との回り止めも兼ねている。そして、樹脂が硬化されることで、抜止部材141及び永久磁石142がインサート成形されたカップリング部材本体140が成形される。
【0037】
このような飲料ディスペンサのモータ側カップリング部材14によれば、筒部151の本体先端部151a及び壁部154の壁先端部154aがモータ側端面143及びカップリング側端面144において露出されているので、抜止部材141を金型201,202で挟持してカップリング部材本体140を成形できる。これにより、軸体をシャフト穴152に通すことで抜止部材141の位置決めを行う場合に比べて抜止部材141の傾きを抑制でき、振動の発生を低減できる。
【0038】
また、このような飲料ディスペンサのモータ側カップリング部材製造方法によれば、抜止周面支持突起201aで筒部151の外周部153を支持するとともに、抜止部材141を第1及び第2金型201,202で挟持することで第1及び第2金型201,202に対する抜止部材141の位置決めを行うので、軸体をシャフト穴152に通すことで抜止部材141の位置決めを行う場合に比べて抜止部材141の傾きを抑制でき、振動の発生を低減できる。
【0039】
実施の形態2.
図8は、本発明の実施の形態2による飲料ディスペンサのモータ側カップリング部材300を斜め下方から見た状態を示す斜視図であり、図9は、図8のモータ側カップリング部材300の断面図である。図8に示すように、この実施の形態2によるモータ側カップリング部材300のカップリング側端面144には、環状溝301が設けられている。環状溝301は、抜止部材141の壁先端部154aの位置に沿って延在されており、凹部144aを取り囲んでいる。図9に示すように、この環状溝301は、壁先端部154aの厚み154bよりも狭い範囲で壁先端部154aの厚み方向に沿って壁先端部154aの端面を覆う樹脂である皮膜部302がカップリング側端面144に設けられることで、形成されている。皮膜部302は、環状溝301の両側から内側に向けて設けられており、厚み方向に沿う壁先端部154aの中央部のみが、環状溝301を通してカップリング側端面144から露出されている。
【0040】
次に、図9のモータ側カップリング部材300の製造方法について説明する。図10は、図9のモータ側カップリング部材300の製造方法を示す説明図である。なお、図6及び図7と同様に、図10においても線C−Cの上下で異なる断面を示している。図10に示すように、第2金型202には、抜止部材141の壁先端部154aに対応するように当接部303が設けられている。図示はしないが、当接部303は、第2金型202を正面から見たときに突部202bを取り囲むように環状に配置されている。壁先端部154aの厚み方向に沿う当接部303の壁先端部154aに対する当接幅303aは、壁先端部154aの厚み154bよりも狭くされている。従って、第1及び第2金型201,202間のキャビティに樹脂が注入された際には、当接部303が当接されている部分を除いて壁先端部154aの端面を樹脂で覆うように、カップリング部材本体300aが成形される。これにより、壁先端部154aに被さる皮膜部302が形成される。
【0041】
このような飲料ディスペンサのモータ側カップリング部材300及びその製造方法によれば、カップリング側端面144に壁先端部154aの端面を覆う皮膜部302が設けられているので、図9に示すように冷却により樹脂の体積が減少するヒケが成形品に生じた場合でも壁先端部154aが突出することをより確実に回避でき、他の部品が壁先端部154aによって傷つけられることを防止できる。
【0042】
なお、実施の形態1,2では円環状の永久磁石142を用いるように説明しているが、モータ側カップリング部材に永久磁石部を形成する方法は任意である。すなわち、抜止部材がインサート成形されたカップリング部材本体を成形した後に永久磁石を貼り付けてもよいし、磁性体が混入された樹脂によってカップリング部材本体を成形した後に、該磁性体を着磁して永久磁石部を構成してもよい。
【0043】
また、実施の形態1,2では、樹脂供給路155は切り欠きであるように説明したが、樹脂供給路は、これに限定されず例えば壁部の内外を連通する貫通孔等でもよい。
【0044】
さらに、実施の形態1,2では、モータ側カップリング部材14の径方向14aに沿う抜止部材141の位置決めに抜止周面支持突起201aと円錐突起201bとの両方を利用するように説明したが、この位置決めを抜止周面支持突起のみを利用して行ってもよい。
【0045】
さらにまた、実施の形態1,2では、抜止部材本体149は、板部150及び筒部151からなる断面凸字状の部材であると説明したが、抜止部材本体は、シャフト穴を有する円筒形状の部材であってもよい。
【符号の説明】
【0046】
10 ミキシングケース、13 撹拌用モータ、13a シャフト、14,300 モータ側カップリング部材、140,300a カップリング部材本体、141 抜止部材、142 永久磁石(永久磁石部)、143 モータ側端面、144 カップリング側端面、144a 凹部、149 抜止部材本体、151a 本体先端部、152 シャフト穴、153 外周部、154 壁部、154a 壁先端部、155 樹脂供給路、201 第1金型、201a 抜止周面支持突起、202 第2金型、202b 突部、301 環状溝(溝)、302 皮膜部、303 当接部、303a 当接部、303a 当接幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撹拌用モータのシャフトが接続されるとともに、ミキシングケース内の粉末原料と水又は湯とを撹拌するための撹拌子に磁気作用を介して前記撹拌用モータの駆動力を伝えるカップリング部材を製造するための飲料ディスペンサのモータ側カップリング部材製造方法であって、
前記撹拌用モータの前記シャフトが圧入されるシャフト穴が設けられた抜止部材本体、前記シャフト穴と同軸に前記抜止部材本体に設けられた外周部、前記抜止部材本体の底面の外周位置から立設された壁部、及び前記壁部に設けられた樹脂供給路を有する抜止部材と、
前記外周部を支持する抜止周面支持突起を有し、前記抜止部材本体の先端側に配置される第1金型と、
前記壁部の内側に進入される突部を有し、前記第1金型と対向するように前記壁部の先端側に配置される第2金型と
を用い、
前記抜止周面支持突起で前記外周部を支持するとともに、前記抜止部材を前記第1及び第2金型で挟持することで、前記第1及び第2金型に対する前記抜止部材の位置決めを行い、
前記抜止部材の位置決め後に、前記第1及び第2金型間のキャビティに樹脂を注入するとともに、前記樹脂供給路を通して前記壁部の内側に樹脂を供給し、前記壁部の内側に前記突部に対応した凹部を形成しつつ、前記抜止部材がインサート成形されたカップリング部材本体を成形する
ことを特徴とする飲料ディスペンサのモータ側カップリング部材製造方法。
【請求項2】
前記第2金型には、前記抜止部材が位置決めされた際に前記壁部の壁先端部に当接される当接部が設けられており、前記壁先端部の厚み方向に沿う前記当接部の前記壁先端部に対する当接幅は前記壁先端部の厚みよりも狭くされており、
前記当接部が当接されている部分を除いて前記壁先端部の端面を樹脂で覆うように、前記カップリング部材本体を成形することを特徴とする請求項1記載の飲料ディスペンサのモータ側カップリング部材製造方法。
【請求項3】
撹拌用モータのシャフトが接続されるとともに、ミキシングケース内の粉末原料と水又は湯とを撹拌するための撹拌子に磁気作用を介して前記撹拌用モータの駆動力を伝えるための飲料ディスペンサのモータ側カップリング部材であって、
永久磁石部を含むとともに樹脂で成形されたカップリング部材本体と、
前記カップリング部材本体に設けられたモータ側端面及びカップリング側端面と、
前記撹拌用モータの前記シャフトが圧入されるシャフト穴が設けられた抜止部材本体、前記抜止部材本体の底部の外周位置から前記カップリング側端面に向けて立設された壁部、及び前記壁部に設けられた樹脂供給路を有し、前記カップリング部材本体にインサート成形された抜止部材と、
前記カップリング側端面に設けられるとともに、前記壁部の内側に位置された凹部と
を備え、
前記抜止部材本体の本体先端部及び前記壁部の壁先端部が前記モータ側端面及び前記カップリング側端面から露出されていることを特徴とする飲料ディスペンサのモータ側カップリング部材。
【請求項4】
前記カップリング側端面には、前記壁先端部を露出させる溝を形成するように、前記壁先端部の厚みよりも狭い範囲で前記壁先端部の端面を覆う樹脂である皮膜部が設けられていることを特徴とする請求項3記載の飲料ディスペンサのモータ側カップリング部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−25558(P2011−25558A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174442(P2009−174442)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(000194893)ホシザキ電機株式会社 (989)
【Fターム(参考)】