飲料用水、飲料用水の利用方法、飲料用水の精製方法、及び、飲料用水生成装置
【課題】気体を長期に亘って液体中に安定に保持して殺菌性、嗜好性、生体活性などの機能性が持続する飲料用水を提供する。
【解決手段】飲料用水は、気体がナノサイズの気泡となって該気体の飽和溶解水に存在している。そして、気泡との界面に存在する水分子の水素結合の距離が、常温常圧であるときの水素結合の距離よりも短い。飲料用水に、圧力変化、温度変化、衝撃波及び超音波などの外力を与えて気泡を崩壊させて、飲料用水中の気体を発生させて飲料用水を利用したり、気体を分離して飲料用水を精製したりする。
【解決手段】飲料用水は、気体がナノサイズの気泡となって該気体の飽和溶解水に存在している。そして、気泡との界面に存在する水分子の水素結合の距離が、常温常圧であるときの水素結合の距離よりも短い。飲料用水に、圧力変化、温度変化、衝撃波及び超音波などの外力を与えて気泡を崩壊させて、飲料用水中の気体を発生させて飲料用水を利用したり、気体を分離して飲料用水を精製したりする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体を水に安定に保持して殺菌性能を高めたり嗜好性を高めたりした、飲料用水、飲料用水の利用方法、飲料用水の精製方法、飲料用水生成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、水道水、井戸水、地下水、河川の水などを殺菌・滅菌して飲料用の水を生成することが知られている。このうち塩素系薬剤などの薬剤を用いて水を殺菌する方法は、広く知られているが、人体への安全性が懸念されており、安全な殺菌方法が望まれている。水の加熱処理は古くから行われている薬剤を用いない殺菌方法であるが、完全な殺菌作用を得るためには長時間かけて水を高温で加熱する必要があり、大量の水を簡単に殺菌することができない。また、加熱直後は殺菌により菌が死滅しているものの、その後の菌の侵入により水が簡単に汚染されるので殺菌効果が持続しない。
【0003】
そのような状況の中、薬剤を用いずに安全で簡単に水を殺菌・滅菌できる方法が提案されている。例えば、特許文献1には、紫外線を照射して発生した活性酸素を水に接触させて殺菌する方法が開示されている。また、特許文献2には、水に電圧を印加して滅菌する方法が開示されている。また、特許文献3には、水に超音波を照射してキャビテーション気泡を発生させて殺菌する方法が開示されている。これらの方法によれば、薬剤を用いずに、水を流しながら殺菌を行うことが可能であり、安全に水を殺菌することができる。
【0004】
しかしながら、これらの方法では、殺菌後、時間の経過に伴い大気などの外部から侵入した菌により水が汚染されるおそれがあり、殺菌効果が持続しないという問題がある。ゆえに、飲料用水として使用・飲用するためには、直前に殺菌する必要があり、長期間に亘って殺菌された水を飲料用水として使用・飲用することができなかった。
【0005】
ところで、気泡を水に混合させて嗜好性のある飲料用水を得ることが知られている。例えば、炭酸ガスが水に混合された炭酸水は清涼飲料水などに利用されている(特許文献4参照)。また、気体を水に溶解させて飲用すれば気体物質を簡単に生体に与えることが可能である。
【0006】
しかし、高圧条件下で炭酸ガスなどの気体を高濃度で溶解させた後、大気圧に戻すと発泡現象が起って液体中の気体は分離して放出するため、液体中に長期に安定に存在する気体の量は飽和溶解濃度が上限であり、液体中に高濃度に気体を存在させて嗜好性を高めたり生体活性を高めたりする飲料用水を得ることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−296248号公報
【特許文献2】特開平11−010155号公報
【特許文献3】特開平11−262515号公報
【特許文献4】特開2002−166148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、気体を長期に亘って液体中に安定に保持して殺菌性、嗜好性、生体活性などの機能性が持続する飲料用水、飲料用水の利用方法、飲料用水の精製方法、飲料用水生成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、気体がナノサイズの気泡となって該気体の飽和溶解水に存在し、該気泡との界面に存在する水分子の水素結合の距離が、水が常温常圧であるときの水素結合の距離よりも短いことを特徴とする飲料用水である。
【0010】
請求項2の発明は、上記の飲料用水において、気泡を形成している気体の圧力が0.12MPa以上であることを特徴とする飲料用水である。
【0011】
請求項3の発明は、上記の飲料用水において、気体が殺菌性の気体であることを特徴とする飲料用水である。
【0012】
請求項4の発明は、上記の飲料用水において、気体が二酸化炭素であることを特徴とする飲料用水である。
【0013】
請求項5の発明は、上記の飲料用水において、気体が水素であることを特徴とする飲料用水である。
【0014】
請求項6の発明は、上記の飲料用水において、気体が空気又は酸素であることを特徴とする飲料用水である。
【0015】
請求項7の発明は、上記の飲料用水に、圧力変化、温度変化、衝撃波及び超音波からなる群から選ばれる少なくとも1種の外力を与えて気泡を崩壊させて飲料用水中の気体を利用することを特徴とする飲料用水の利用方法である。
【0016】
請求項8の発明は、上記の飲料用水に、圧力変化、温度変化、衝撃波及び超音波からなる群から選ばれる少なくとも1種の外力を与えて気泡を崩壊させて飲料用水中の気体を分離することを特徴とする飲料用水の精製方法である。
【0017】
請求項9の発明は、水を含む液体を外部から取り入れる入水部13と、入水部から入った液体に気体を供給する気体供給部2と、気体が供給された液体を加圧する加圧部1と、液体中の気体をナノサイズの気泡にして気液混合液を生成する気液混合部3と、気液混合液からナノサイズを超える大きさの気泡を分離する気体分離部4と、加圧状態の気液混合液をナノサイズの気泡を崩壊させることなく大気圧まで減圧する減圧部5と、減圧された気液混合液を吐出する吐出部7とを備えてなることを特徴とする飲料用水生成装置である。
【0018】
請求項10の発明は、上記の飲料用水生成装置において、入水部13から取り入れられた液体を冷却する冷却部を備えてなることを特徴とする飲料用水生成装置である。
【0019】
請求項11の発明は、上記の飲料用水生成装置において、入水部13から取り入れられた液体を浄化する浄化フィルターを備えてなることを特徴とする飲料用水生成装置である。
【0020】
請求項12の発明は、上記の飲料用水生成装置において、入水部13から取り入れられた液体を脱気する脱気部を備えてなることを特徴とする飲料用水生成装置である。
【0021】
請求項13の発明は、上記の飲料用水生成装置において、気液混合部3の少なくとも一部をベンチュリ管14により構成することを特徴とする飲料用水生成装置である。
【0022】
請求項14の発明は、上記の飲料用水生成装置において、気液混合部3の少なくとも一部を電気分解手段15により構成することを特徴とする飲料用水生成装置である。
【発明の効果】
【0023】
請求項1の発明によれば、気体がナノサイズの気泡となって該気体の飽和溶解水に存在することにより、長期に亘って大量の気体を水に安定に保持することができるので、殺菌性、嗜好性、生体活性などの機能性を長時間維持でき、機能性を向上する飲料用水を得ることができるものである。すなわち、気体がナノサイズの気泡となることにより消滅や合体することなく液体中に安定に存在しており、このナノサイズの気泡が水の殺菌を長期に亘って持続したり、生体活性や嗜好性を持続したりすることができるものである。そして、保持された気体を外力を与えて液体から発生させて溶解したり分離したりすることもでき、気体を発生させて飲料用水を利用したり精製したりすることができるものである。
【0024】
また、気泡界面における水素結合の距離が短くなって気泡の周囲で強固な水素結合を形成した水分子が気体をナノサイズの気泡として取り囲み、この水素結合を形成した水分子は強固な殻となって気泡を包み込むので、気泡同士が衝突しても崩壊することがないのと共に液体からの圧力に対して気泡内部からの応力で対抗でき、ナノサイズの気泡を液体中で消滅させたり合体させたりすることなく安定に存在させることができるものである。つまり、水分子は、O…Hの水素結合、つまり、ある水分子の酸素原子と他の水分子の水素原子との間に強固な結合を形成するので、気泡界面における水素結合が強固になって気泡をより安定化させることができるものである。そして、水素結合の強固な殻で包み込まれ安定に液体中に保持された気泡は内圧が高くなっており、外力が与えられると気泡が崩壊して気体を発生させて液体に溶解したり液体から放出したりする。このように水素結合の強固な界面構造によって液体に大量に保持された気体を利用し、殺菌性や嗜好性や生体活性などの機能性のある飲料用水として使用することができるものである。
【0025】
請求項2の発明によれば、気泡を形成している気体の圧力が高圧になることにより、気泡が高い内部圧で維持されることによってより強固な界面構造を形成することができ、高濃度の気体を気泡として液体中に閉じ込めることができるものである。また、内部圧が高いことにより、静置状態においては安定な気泡を形成すると共に、一旦、気泡を含有する飲料用水に衝撃が加えられると、内部圧の力により液体界面の殻が崩壊して気体が発生し、気体が溶解したり分離したりするため、この発生した気体を利用して飲料用水を使用することができるものである。
【0026】
請求項3の発明によれば、殺菌性の持続した飲料用水にすることができるものである。そして、殺菌性の気体として人体に有害なものを用いた場合でも、外力を与えて気体を液体から分離して、飲用可能な水にすることができ、薬剤を用いることなく、殺菌性と安全性とを高めた飲料用水を簡単に得ることができるものである。
【0027】
請求項4の発明によれば、嗜好性の高い飲料用水にすることができるものである。すなわち、通常の炭酸水は飽和溶解濃度以上の二酸化炭素は泡となって液体からすぐに分離してしまい、発泡による嗜好性の向上が長期間持続しない。しかし、この発明によれば多量の二酸化炭素がナノサイズの気泡となって安定に存在し、飲用した際に口の中などで外力が与えられて気泡が崩壊して二酸化炭素が発泡したり、飲用前に外力を与えて通常の炭酸水の気体量を超える気体量で発泡したりするので、嗜好性を長期間に亘って維持することができると共に、多量の気体が発泡することで嗜好性を高めることができるものである。
【0028】
請求項5の発明によれば、還元力のある多量の水素が生体を活性化させることができるので、生体活性の高い飲料用水を得ることができるものである。すなわち、飲用した際に、還元力のある水素が生体に働きかけて体内の有害な酸化物質を還元して無害化するため、人体を治療したり健康にしたりすることができることができるものである。
【0029】
請求項6の発明によれば、気泡中に含まれる多量の酸素が生体を活性化させることができるので、生体活性の高い飲料用水を得ることができるものである。すなわち、飲用した際に、体内に多量の酸素が供給されて酸素が生体に働きかけるため、人体を治療したり健康にしたりすることができるものである。
【0030】
請求項7の発明によれば、外力を与えて液体中の気泡から気体を発生させて、殺菌性能を発揮したり、嗜好性を高めたり、生体活性を高めたりすることができ、得たいタイミングで飲料用水の機能性を高めて利用することができるものである。
【0031】
請求項8の発明によれば、外力を与えて液体中に溶解している気体やナノサイズの気泡となった気体を液体から分離することができるので、人体に有害性のある気体を用いた場合でも、気体を液体から取り除いて安全な飲料用水を精製して得ることができるものである。
【0032】
請求項9の発明によれば、気体が注入された液体を加圧することにより、強固な界面構造を有する気泡を発生させて、大気圧に戻したときにも安定に存在するナノサイズの気泡を生成することができ、また、界面構造が強固になった気泡を有する気液混合液を徐々に大気圧まで減圧することにより、強固な界面構造を維持して気泡を消滅させたり合体させたりすることなくナノサイズの気泡が混合した飲料用水を安定に得ることができ、飲料用水を効率よく簡単に生成することができるものである。
【0033】
請求項10の発明によれば、冷却状態で気液が混合されることにより、より多くの気体をナノサイズの気泡として液体中に存在させることが可能となり、飲料用水の機能性を向上することができるものである。
【0034】
請求項11の発明によれば、液体が浄化されて気液が混合されることにより、より多くの気体をナノサイズの気泡として液体中に存在させることが可能となり、飲料用水の機能性を向上することができるものである。
【0035】
請求項12の発明によれば、液体が脱気されて気液が混合されることにより、より多くの気体をナノサイズの気泡として液体中に存在させることが可能となり、飲料用水の機能性を向上することができるものである。
【0036】
請求項13の発明によれば、ベンチュリ管を用いることにより、簡単な構成でナノサイズの気泡を形成することができ、装置を簡単なものにすることができるものである。
【0037】
請求項14の発明によれば、電気分解手段を用いることにより、簡単な構成でナノサイズの気泡を形成することができ、装置を簡単なものにすることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】飲料用水生成装置の実施の形態の一例を示す概略図である。
【図2】飲料用水生成装置の一部を示す概略図である。
【図3】(a)(b)はそれぞれ、飲料用水生成装置の一部を示す概略図である。
【図4】(a)〜(c)はそれぞれ、飲料用水生成装置の一部を示す概略図である。
【図5】(a)〜(d)はそれぞれ、飲料用水生成装置の一部を示す概略図である。
【図6】飲料用水生成装置の一部を示す概略図である。
【図7】飲料用水生成装置の実施の形態の他の一例を示す概略図である。
【図8】飲料用水生成装置の実施の形態の他の一例を示す概略図である。
【図9】飲料用水生成装置の実施の形態の他の一例を示す概略図である。
【図10】飲料用水における気泡の気液界面の概念説明図である。
【図11】(a)及び(b)は、飲料用水に外力を与えて気泡が崩壊する様子のモデルを示す概念説明図である。
【図12】気液混合液と窒素飽和水との赤外吸収スペクトルの差分を示すグラフである。
【図13】気液混合液中に含まれる気体容量を示すグラフである。
【図14】走査型電子顕微鏡(SEM)による気液混合液の写真である。
【図15】気液混合液の安定性を示すグラフである。
【図16】飲料用水に衝撃波が加わる様子の一例を示すモデル図であり、(a)は衝突直前、(b)は衝突時、(c)は衝突直後である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、発明を実施するための形態について説明する。
【0040】
本発明の飲料用水は、気体がナノサイズの気泡となって、この気体が飽和溶解濃度で溶解した溶解水に存在しているものである。すなわち、本発明の飲料用水は、気体がナノサイズの気泡となって液体に混合された気液混合液として構成されている。
【0041】
一般に、気体が水に溶解することは知られているが、その飽和溶解濃度は二酸化炭素などの一部の気体を除いて多くない。そして、多量の気体を水の中に存在させることはできず、気体が液中に存在する上限の量は飽和溶解濃度である。しかしながら、本発明の飲料用水においては、気体が水に飽和溶解濃度で溶解し、さらに飽和溶解濃度を超えた気体はナノサイズの気泡となって液体中に安定に存在して気液混合液となっている。つまり、気体は飽和溶解濃度で水に溶解すると共にナノサイズの気泡となって存在している。したがって、飽和溶解濃度以上の気体が液体中に存在しており、長期に亘って大量の気体を液体中に安定に保持することができ、殺菌性能を長時間維持できる飲料用水や、嗜好性・生体活性を向上する飲料用水を得ることができるものである。すなわち、気体はナノサイズの気泡となることにより消滅や合体することなく液体中に安定に存在しているのである。
【0042】
そして、通常、液中に存在する気泡は液体からの圧力により崩壊して液体に溶解してしまうが、上記のような気液混合液では液体には飽和溶解濃度で気体が溶解しているので、気体がそれ以上溶解することができず、気泡が崩壊して気泡中の気体が溶解することがない。崩壊しないナノサイズの気泡は液体からの圧力に応じるようにその内圧が高くなっており、内圧が高くなることで液体圧力との均衡が保たれ、ナノサイズの大きさを維持したまま気泡が安定に液体中に存在する。また、ナノサイズの気泡は極めて微細なサイズになっているため浮力を受けることがなく、気泡が上昇して液体から外部に分離することがない。よって、ナノサイズの気泡が長期に亘って安定に液体中に存在するのである。そして、このナノサイズの気泡に外力を与えて液体から気体を発生させ、この気体を液体に溶解したり分離したりすることができ、気体を発生させて飲料用水を利用したり精製したりすることができるものである。
【0043】
飲料用水に含まれる気泡はナノサイズの気泡であり、具体的には1000nm以下の気泡(いわゆるナノバブル)である。気泡がナノサイズとなり微細なものになることで強固な気泡界面の構造を形成することができ、高濃度の気体を液体中に保持することができるものである。また、ナノオーダーサイズの気泡には浮力が働かないため、気泡が上昇して液体から分離することがないので気泡を長期に亘って安定に存在させることができるものである。気泡のサイズがナノサイズよりも大きくなると気泡を安定化させることができなくなるおそれがある。なお、気泡の大きさは、走査型電子顕微鏡(SEM)により測定することができ、気泡の平均粒径は、測定によって得た気泡の粒径を平均して求めることができる。ところで、マイクロバブルが混合された液体は白濁するため目視により判別可能であるが、ナノバブルが混合された液体は無色透明(あるいは液体が有色の場合は液体の色)になり目視では判別することができない。よって、気液混合液の判別はSEMや密度測定などによって行うこととなる。なお、ナノサイズの気泡の下限は1nmである。
【0044】
飲料用水にあっては、気泡との界面に存在する水分子の水素結合の距離が、常温常圧であるときの水素結合の距離よりも短い。水素結合とは、電気陰性度の大きい原子と水素原子とを有している分子において、水素原子が他の分子の電気陰性度の大きい原子に接近し、系が安定化する結合のことである。そして、飲料用水に存在するナノサイズの気泡の周囲、すなわち気泡との界面に存在する水分子においては、水分子の水素結合の距離が、水分子が常温常圧(25℃、1気圧(0.1013MPa))であるときの水素結合の距離よりも短いものとなっているのである。このように、飲料用水が常温常圧の条件で存在する場合において、気泡界面における水素結合の距離が常温常圧での通常の水素結合の距離よりも短くなることにより、気泡の周囲を強固な水素結合を形成した水分子で取り囲むことになる。そして、この水素結合を形成した水分子は強固な殻となって気泡を包み込む。それによって、気泡同士が衝突しても崩壊することがなくなり、また、液体からの圧力に対して気泡内部からの応力で対抗できるので、気泡を液体中で消滅させたり合体させたりすることなく保持することができるものである。つまり、従来の表面張力で安定している気泡とは異なるものである。そして、この水素結合は長期間に亘って安定であるので、気泡が安定に存在した飲料用水を長期間に亘って利用可能となる。また、ナノオーダーサイズの気泡を、従来レベルより遙かに超えた密度で生成し液体に安定して存在させることが可能となるものである。
【0045】
ここで、水分子は、O…Hの水素結合、つまり、ある水分子の酸素原子と他の水分子の水素原子との間に水素結合を形成するものであり、本発明の飲料用水においては、気液混合液の液体として水が用いられるので、気泡界面において液体中のこの水素結合が強固になって気泡をより安定化させるのである。なお、水としては純度の高い水に限られることはなく、上水道、地下水、河川や池の水などをはじめ、飲料用に用いることが可能なあらゆる水を使用することができる。また、飲料用水を構成する気液混合液に用いる液体としては、水が含まれていればよく、液体が水のみからなっていてもよいし、水が他の成分を溶解させて水溶液の状態に、例えばイオン水などの状態になっていてもよい。
【0046】
気泡との界面における水分子の水素結合の距離としては、常温常圧での水素結合の距離を100%とした場合に、99%以下となるように飲料用水を生成することが好ましい。水素結合の距離がこの範囲になることにより、気泡を水素結合の硬い殻で取り囲んで安定化させることができるものである。水素結合の距離がこれより長いと気泡を安定化させて存在させることができなくなるおそれがある。原子間距離を考慮すると、水素結合の距離の下限は95%である。気液混合液中の気泡界面における水素結合の距離は、後述するように、気液混合液の赤外吸収スペクトル(IR)を解析することにより算出することができる。
【0047】
ところで、水素結合の距離が上記の距離にある水は、通常、氷のように固体やハイドレート結晶構造になるものであるが、上記のような気液混合液においては、気泡界面において局所的に上記のような距離の短い水素結合を形成し、それ以外の液体中は通常の水素結合を形成している。すなわち、気泡界面では距離の短い水素結合により液体分子の硬い殻を形成して、気泡同士が合体することや消滅することを防止すると共に、気泡界面以外では通常の状態で液体が存在して常温常圧では流動性を確保しており、安定な気泡が存在して飲料用水を利用しやすくするものである。
【0048】
飲料用水にあっては、気泡を形成している気体の圧力、すなわち気泡の内圧が、0.12MPa以上になることが好ましく、さらにヤングラプラスの式(次式)で与えられる気泡の内圧より高い圧力であることが好ましい。
【0049】
ヤングラプラスの式
ΔP=2σ/r
[ΔP:気泡内部の上昇圧力、 σ:表面張力、 r:気泡半径]
気泡の内圧がこのような圧力になると気泡が高い内部圧で維持されることになり、より強固な界面構造を形成することができるので、静置状態において安定な気泡を形成することができ、気体を高濃度で液体中に保持することができる。一方、一旦、気液混合液に衝撃が加えられると、内部圧の力により気泡の界面構造が崩壊して、気泡が崩壊して大量の気体が液体に溶解したり液体から放散したりするため、この発生した大量の気体を利用して飲料用水を利用することができるものである。飲料用水を構成する気液混合液中の気泡の内圧は、後述するように気液混合液中の気体総量と密度から計算した気体容量とを気体の状態方程式に当てはめることにより算出することができる。
【0050】
気体としては、特に限定されるものではなく、種々の気体を用いることが可能である。例えば、オゾン、塩素、二酸化塩素などの殺菌性の気体や、水素などの還元力のある気体を始め、二酸化炭素、空気、酸素、窒素、アルゴン、ヘリウム、メタン、プロパン、ブタンなどの気体を単一で又は混合して用いることができる。
【0051】
気体として好ましいものの一つは、殺菌性のある気体である。それにより、殺菌性の気体がナノサイズの気泡となって液体中に長期に保持されるので、殺菌性が高く持続した飲料用水にすることができるものである。そして、殺菌性の気体として人体に有害なものを用いてもよく、その場合には、圧力変化や温度変化や衝撃波や超音波などの外力を与えて気体を液体から分離して、液体を無害化して飲用可能な水にすることができる。殺菌性の気体としては、オゾン、塩素、二酸化塩素が好ましい。これらの気体であれば、殺菌力が高く、また、気液混合液を容易に生成して飲料用水を得ることができる。このように、薬剤を用いることなく、殺菌性と安全性とを高めた飲料用水を簡単に得ることができるものである。
【0052】
また、気体として二酸化炭素を用いることも好ましい。それにより、嗜好性の高い飲料用水にすることができるものである。すなわち、通常の炭酸水は飽和溶解濃度以上の二酸化炭素は泡となって液体からすぐに分離してしまい、発泡による嗜好性の向上が長期間持続しない。しかし、上記の気液混合液によれば多量の二酸化炭素がナノサイズの気泡となって安定に存在させることができるものである。そして、飲用した際に口の中などで外力が与えられて気泡が崩壊して二酸化炭素が発泡するので、嗜好性を長期間に亘って維持することができる。また、飲用前に外力を与えて通常の炭酸水の気体量を超える気体量で発泡させることができ、多量の気体を発泡させた飲料用水にすることで嗜好性を高めることができるものである。
【0053】
また、気体として水素を用いることも好ましい。その場合、還元力のある多量の水素が生体を活性化させることができるので、生体活性の高い飲料用水を得ることができるものである。すなわち、飲用した際に、還元力のある水素が生体に働きかけて体内の有害な酸化物質を還元して無害化するため、人体を治療したり健康にしたりすることができることができるものである。
【0054】
また、気体として酸素又は空気を用いることも好ましい。その場合、気泡中に含まれる多量の酸素が生体を活性化させることができるので、生体活性の高い飲料用水を得ることができるものである。すなわち、飲用した際に、体内に多量の酸素が供給されて酸素が生体に働きかけるため、人体を治療したり健康にしたりすることができるものである。
【0055】
上記のような飲料用水は、液体として純水を用いた場合、ゼータ電位がマイナスとなり、体積1cm3中に存在する気泡界面の面積は1.2m2程度となる。ゼータ電位は電気泳動法により測定できる。
【0056】
飲料用水は、そのまま飲料水として飲用してもよいし、外力を与えて気体を発生し発泡させて清涼飲料水(炭酸水)のような状態にして飲用してもよい。また、外力を与えて気体を発生させて液体から取り除いて気体の存在していない水にして飲用してもよい。また飲料用水を他の成分と混合するなどして、イオン水にしたり、清涼飲料水にしたり、茶やコーヒーなどの飲料にしたりすることができる。
【0057】
本発明の飲料用水の利用方法は、上記のような飲料用水に、圧力変化、温度変化、衝撃波、超音波といった外力を与えて液体中の気泡を崩壊させて、飲料用水中の気体を利用するものである。上述のように、飲料用水には多量の気体が気泡となって液体中に存在しており、この気泡は外力により崩壊したり合体したりする。そこで、飲料用水に圧力変化や温度変化や衝撃波や超音波といった外力を与えると、気泡が崩壊し気体が発生して液体に溶解したり液体から放出したりする。この発生する気体を利用するものである。例えば、殺菌性のある気体を用いると気泡を崩壊して気体を溶解させることにより殺菌力を高めることができる。また、殺菌性のある気体が有害な場合は気体を完全に放出して液体を無害化し、飲用可能な水にすることができる。また、二酸化炭素などの気体を用いて、飲用直前に外力を与えれば、通常の炭酸水をはるかに超える多量の気体を発泡させて、嗜好性を高めることができる。また、水素や酸素や空気などの気体を用いて、飲用直前に外力を与えて発泡させて飲用すれば、飲用後に体内でこれらの気体が液体から放出されて生体の器官に接触し、生体活性を高めることができる。このように外力を与えることによって得たいタイミングで飲料用水の機能性を高めて利用することができるものである。
【0058】
本発明の飲料用水の精製方法は、上記のような飲料用水に、圧力変化、温度変化、衝撃波及び超音波といった外力を与えて液体中の気泡を崩壊させて、飲料用水中の気体を分離するものである。気体として殺菌性のものを用いた場合、通常、殺菌性の気体は人体に有害なものが多く飲料用水をそのまま飲用すると危険である。ところが、飲料用水に圧力変化や温度変化や衝撃波や超音波といった外力を与えると、気泡が崩壊し気体が発生して液体から放出して分離する。この気体が発生し分離する現象を利用するものである。すなわち、飲料用水に外力を与えると、人体に有害な殺菌性の気体は気泡が崩壊することによって液体から放出して液体を無害化するので、飲料用水を飲用可能な水に精製することができるものである。なお、殺菌性の気体としては、特に限定されるものではないが、外力を与えて液体から容易に放出するものであることが好ましく、その観点から、水に溶解しにくいものであることがより好ましい。このように、本発明では、溶解性の低い、あるいは溶解性のない気体をナノサイズの気泡にすることにより安定に存在することができるものであり、殺菌性が高く安全な飲料用水を得ることができるものである。
【0059】
上記の飲料用水の利用方法、及び飲料用水の精製方法にあって、気泡を崩壊させる外力としては、圧力変化、温度変化、衝撃波及び超音波からなる群から選ばれる少なくとも1種のものを用いることが好ましい。それにより効率よく気体を発生させて気体を利用したり、気体を液体から分離して精製したりすることができるものである。
【0060】
圧力変化により外力を与える場合、加圧装置又は減圧装置に飲料用水を入れることにより飲料用水にかかる圧力を常圧よりも高くしたり低くしたりして衝撃を与えることができる。すなわち、圧力が変化された気液混合液は内部エネルギーの増加によって界面構造が崩れて気泡が崩壊したり、気泡が激しく衝突して気泡が合体して大きなマイクロサイズ以上の気泡になったりして、気体が発生する。そしてこの気体が液体に溶解し、また気体が液体から放出するのである。圧力変化としては、液体の圧力を+0.01MPa以上の圧力にすること、又は−0.01MPa以下の圧力にすること、つまり液体圧力と気泡内圧との圧力差を絶対値で0.01MPa以上にすることが好ましく、例えば、これらの圧力を交互に変動させたりして外力を与えることができる。
【0061】
温度変化により外力を与える場合、ヒーターなどの加温手段を用い、加温手段をオンにして常温常圧で貯留された飲料用水の温度を上昇させて気泡を崩壊させることができる。すなわち、温度が上昇された気液混合液は内部エネルギーの増加によって界面構造が崩れて気泡が崩壊したり、気泡が激しく衝突して気泡が合体して大きなマイクロサイズ以上の気泡になったりして、気体が発生する。そしてこの気体が液体に溶解し、また気体が液体から放出するものである。加温する温度としては、気体発生の速度に合わせて適宜に設定し得るものであるが、例えば、急激に気泡を崩壊させて気体を発生させる場合は、飲料用水を10〜30℃程度以上に上昇するように加温するようにすることができ、徐々に気泡を崩壊させて気体を発生させる場合は、飲料用水を1〜10℃程度以上に上昇するように加温するようにすることができる。
【0062】
また、衝撃波により外力を与えることもできる。衝撃波としては、振動や電波、マイクロ波などを用いることができ、例えば衝撃波としてマイクロ波を用いる場合、マイクロ波発生装置を用い、マイクロ波発振子から飲料用水にマイクロ波の振動を与えることができる。このとき、振動波を与えられた気液混合液の内部エネルギーが増加して界面構造が崩れて気泡が崩壊したり、気泡が激しく衝突して気泡が合体して大きなマイクロサイズ以上の気泡になったりして、気体が発生する。そしてこの気体が液体に溶解し、また、気体が液体から放出するものである。マイクロ波の周波数としては、周波数915kHz、2.4〜2.5GHz、5.7〜5.9GHzのいずれかであることが好ましい。周波数の範囲がこの範囲を外れると気泡を崩壊する効果が低下するおそれがある。なお、本発明において衝撃波とは、気液混合液が衝突したときの衝撃で発生する振動波などを含む概念である。
【0063】
また、超音波により外力を与える場合、超音波発生装置を用い、超音波振動子から飲料用水に超音波振動を与えることができる。このとき、振動された気液混合液の内部エネルギーが増加して界面構造が崩れて気泡が崩壊したり、気泡が激しく衝突して気泡が合体して大きなマイクロサイズ以上の気泡になったりして、気体が発生する。そしてこの気体が液体に溶解し、また、気体が液体から放出するものである。超音波の周波数としては、周波数16KHz〜2.4GHzであることが好ましい。周波数の範囲がこれより大きくても小さくても気泡を崩壊する効果が低下するおそれがある。
【0064】
このように、圧力変化、温度変化、衝撃波、超音波といった外力を用いて飲料用水中の気泡を崩壊させることによって、気泡として存在している大量の気体をこれらの手段で瞬時に多量に液体に溶解させたり、液体から放出させたりすることができ、簡単に効率よく気体を発生させて飲料用水を利用したり精製したりすることができるものである。
【0065】
次に、上記のような飲料用水を生成する飲料用水生成装置について説明する。
【0066】
図1は、飲料用水生成装置の実施の形態の一例を示す概略図である。飲料用水生成装置としては、液体中に気体がナノサイズの気泡になって存在する気液混合液を生成する気液混合液生成装置を用いる。
【0067】
図1の気液混合液生成装置は、液体を圧送して連続的に気液混合液を製造するものであり、水道配管などの水供給源から水を取り入れる入水部13と、入水部13から入った液体に気体を供給する気体供給部2と、気体が供給された液体を加圧する加圧部1と、液体中の気体をナノサイズの気泡にして気液混合液を生成する気液混合部3と、気液混合液からナノサイズを超える大きさの気泡を分離する気体分離部4と、加圧状態の気液混合液をナノサイズの気泡を崩壊させることなく大気圧まで減圧する減圧部5と、減圧された気液混合液を吐出する吐出部7と備えており、各部は流路6に接続して設けられている。
【0068】
流路6は、飲料用水生成装置の各部同士や各部と外部とを接続し、液体を上流から下流に流すものであり、例えばパイプなどの管体で構成される。加圧部1と気液混合部3と気体分離部4と減圧部5とは、上側に向かって径が小さくなるテーパ状の円筒型の筐体12にこの順で下側から上側に配置して収容されている。流路6は、筐体12より上流側の流路6a、筐体12内の流路6b、筐体12より下流側の流路6cにて構成されている。流路6bは筐体12全体として上方向に向かって液体が流れるように形成されている。
【0069】
入水部13は、気液混合液生成装置の外部にある水供給源から装置の内部に水を入れるためのものであり、図1の形態では水供給源と接続する流路6aの管体の入口として構成されている。この入水部13には、開閉して水量や水圧を調節できる調節弁などを設けてもよい。
【0070】
気体供給部2は、流路6(流路6a又は6b)に接続されることにより液体に気体を供給して注入するものであり、例えば気体として空気を注入する場合には、一端を大気中に開放させた管体の他端を流路6に接続して気体供給部2を形成することができる。あるいは気体として、オゾン、塩素、二酸化塩素、水素、二酸化炭素、酸素、窒素、アルゴン等を供給する場合には、これらの気体を封入したボンベなどを流路6に接続して気体供給部2を形成することができる。また、オゾンを供給する場合は、気体供給部2をオゾン発生機に接続し、空気から生成したオゾンを供給するようにしてもよい。流路6への気体供給部2の接続位置は、気液混合部3よりも上流側の位置であればよい。この装置のように、加圧部1と気液混合部3とが同体となってポンプ11で構成されている場合は加圧部1より上流側の流路6に接続することになる。また、加圧部1と気液混合部3とが別体で構成されている場合は、加圧部1より上流側の流路6に接続するようにしても、あるいは加圧部1より下流側の流路6に接続するようにしてもいずれでもよい。
【0071】
加圧部1は液体を圧送するものであり、例えば、この装置のように、水供給源から送られた水を加圧して下流側に送り出すポンプ11などで構成することができる。
【0072】
気液混合部3は圧送された液体とこの液体に注入された気体とを混合し、加圧により気体を微細な気泡にして液体中に分散・混合させるものである。気液混合部3としては、流路の断面積変化などで撹拌力を与えるもので構成することもできるし、また液体が撹拌された状態で流路6を流れているのであれば単に流路6で構成することもできる。図1の形態では、加圧部1と気液混合部3とが兼用されてポンプ11で構成されて設けられてある。気液の加圧及び混合をポンプ11により行った場合、液体を急激に加圧・混合することができるので、気泡界面の構造が強固な気液混合液を確実に生成することができる。気液混合部3内においては液体と気体が高圧条件で混合される。それにより、気泡の周囲に強固な界面構造が形成され、この強固な界面構造の殻で気泡を覆うことができ、気体を微細な気泡として安定化することができるものである。
【0073】
上記のような加圧部1及び気液混合部3を構成するポンプ11により、気体が注入された液体に急激に強力な圧力が加わって、液体中に存在している気泡は微細なナノサイズの気泡へと細分されて液体に分散される。また、急激な圧力変化により高圧になった気泡の界面には液体分子により強固な界面構造が形成される。その際、加圧速度ΔP1/t(ΔP1:圧力増加量、t:時間)が0.17MPa/sec以上になることにより、気泡を細分化させて微細なナノサイズの気泡を生成することができ、気液混合部3から気体分離部4に送り出される際の気液混合液の圧力が0.15MPa以上になることにより、気泡の界面が強固な構造となったナノサイズの気泡を生成することができるものである。実質的な加圧条件を考慮すると、加圧速度ΔP1/tの上限は167MPa/secであり、加圧された気液混合液の圧力の上限は50MPaである。
【0074】
図2は、ポンプ11の具体的な形態の一例を示す要部の概略図である。このポンプ11aは回転体21の回転により液体を加圧するものであり、回転体21に取り付けられた回転翼22が連続的に回転してポンプ入口26からポンプ流路室23を介してポンプ出口27への流れ方向へ液体を送り出し加圧するものである。図2において白抜き矢印は液体の流れ方向を示し、実線矢印は回転体21の回転方向を示している。このポンプ11aでは4枚の回転翼22が備えられている。また回転体21の回転軸25は、円筒状に形成されたポンプ壁24の円筒中心よりもポンプ出口27側に偏って配置され、偏心軸となって設けられている。そして、回転軸25の偏心によりポンプ流路室23の第二流路室23bの容積は、第一流路室23aの容積よりも小さく形成されており、液体の流れ方向に沿ってポンプ流路室23の容積が順次小さくなっている。
【0075】
そして、ポンプ流路室23に送り出された液体は、回転翼22で送り出され加圧され、急激な圧力変化により大きな気泡BBが細分化されて微細なナノサイズの気泡BNが生成される。すなわち、回転体21の回転と共に第一流路室23aから第二流路室23bに送られた液体は、ポンプ流路室23の容積が小さくなることにより急速に圧縮されて加圧され、この加圧力によりナノサイズの気泡BNが生成される。また、図示のポンプ11aでは、ポンプ壁24の内面と回転翼22の先端部との間を液体が通過するときに剪断力が与えられて、液体をクリアランスで剪断しながら加圧する。このとき、液体に混合されている気体(大きな気泡BB)は液体に与えられた剪断力によって剪断されて、より微細なナノサイズの気泡(BN)になる。ここで、ポンプ壁24の内面と回転翼22の先端部との間の最も狭くなる部分の距離、すなわちクリアランス距離LCは、5μm〜2mmであることが好ましい。このように、回転体21を用いたポンプ11aによれば、回転体21で急激に強い力で加圧すると共に液体に注入された気体を剪断してナノサイズの気泡を形成することができるので、気泡界面の構造が強固な気液混合液をより確実に生成することができるものである。
【0076】
ポンプ11の回転体21の回転数は100rpm以上であることが好ましい。このとき、0.3秒に1/2回転以上となる。このような回転数となることにより、飽和溶解濃度以上の気体を液体に注入させて水素結合距離が短縮したナノサイズの気泡を確実に生成することができるものである。
【0077】
加圧部1及び気液混合部3による加圧は、加圧部1又は気液混合部3を複数設けて、複数回加圧することができる。液体を送りながら複数回加圧することにより、液体を強力に加圧して、気泡界面の構造が強固な気液混合液を生成することができるものである。具体的には、加圧部1を図1のようにポンプ11で構成すると共に、気液混合部3を一つ又は二つ以上のポンプ11又はベンチュリ管14で構成することができるものである。
【0078】
ここで、図3(a)のように、気体供給部2と流路6aとの接続位置に、負圧をかけて気体を液体に注入するベンチュリ管14を設けることもできる。この場合、ベンチュリ管14を気液混合部3(又は気液混合部3の一部)として機能させて気液を混合することができる。このようにベンチュリ管14を用いることにより、簡単な構成でナノサイズの気泡を形成することができ、装置を簡単なものにすることができるものである。図示のベンチュリ管14は、流入側から流出側に向かって断面積が徐々に小さくなる流入側管部14aと、ベンチュリ管14内において断面積が最も小さくなる絞り管部14bと、流入側から流出側に向かって断面積が徐々に大きくなる流出側管部14cとから構成されている。絞り管部14bに気体供給部2の一端が接続してあり、この気体供給部2から供給された気体は、絞り管部14b内において液体に注入されるようになっている。
【0079】
また、図3(b)のように、気体供給部2と気液混合部3(又は気液混合部3の一部)とを兼用して電気分解手段15で構成し、電気分解して発生する気体を水に供給しナノサイズの気泡にして混合するようにしてもよい。この場合、液体に注入される気体は水の電気分解により発生する水素と酸素になる。そして、電気分解手段15によって気体が発生し供給された液体は、ポンプ11の方に送られて確実にナノサイズの気泡になる。このように電気分解手段15を用いることにより、簡単な構成でナノサイズの気泡を形成することができ、装置を簡単なものにすることができるものである。図示の電気分解手段15では流路6aから送られた液体が電気分解手段15の電気分解槽に貯留され、陽極(+)と陰極(−)とによって電圧が印加されて水が電気分解するようになっている。電気分解により気体が供給された水は流路6aを通りポンプ11の方に送られる。
【0080】
気体分離部4は上記のようにして気体が混合された液体から、ナノサイズを超える気泡、すなわち直径1μmを超える気泡(マイクロサイズ以上の気泡)を取り除くものである。上記のようにしてナノサイズの気泡が形成された液体にはマイクロサイズ以上の気体も一緒に混合して存在している。しかし、マイクロサイズ以上の気泡は安定に液体中に存在することができないのに加え、液体中に存在しているとナノサイズの気泡を合体させたり崩壊させたりしてナノサイズの気泡をも不安定にしてしまう。そこで、マイクロサイズ以上の気泡を気液混合液から取り除いて気泡をナノサイズのものだけにしてナノサイズの気泡を安定化させるものである。
【0081】
気体分離部4は、気泡をそれ自身の浮力で上昇させて取り除くようにした管体などで構成することができる。取り除かれた気泡は気体となって上部に集積するので、この除去された気体を気体除去部8により取り除くことができる。直径1μmを超えるサイズの気泡(マイクロサイズの気泡)は、浮力により上昇するので、このような比較的大きい気泡が取り除かれて微細な気泡であるナノサイズの気泡が液体中に存在することにより、界面構造が強固で安定な気液混合液を得ることができるものである。
【0082】
気体分離部4としては、具体的には、図4のような構成にすることができる。(a)は、地表面に略水平(重力方向に対して略垂直な平面上)になるように形成し、液体Lq中の気泡Bをその浮力によって液面まで上昇させて気泡Bを取り除くようにした管体の例を示している。また、(b)は、形状が正面視逆L字型になるように形成し、液体Lqの流れ方向を水平方向から下方向(重力方向と略同方向)に変化させて液体Lq中の気泡Bをその浮力によって液面まで上昇させて気泡Bを取り除くようにした管体の例を示している。また、(c)は、液体Lqの流れ方向を下方向(重力方向と略同方向)にして液体Lq中の気泡Bをその浮力によって液面まで上昇させて気泡Bを取り除くようにした管体の例を示している。気体分離部4によって分離された気泡は気体となり、管体などで構成された気体除去部8から外部に排出される。
【0083】
減圧部5は気体が混合された液体の圧力を、大きな気泡を発生させることなく徐々に大気圧まで減圧させるものである。上記のようにして加圧により気体と混合された液体は、高圧な状態にありそのまま大気圧下にある外部に排出されると、急激な圧力低下によって、気液混合液中の気泡が合体して気体になって液体から排出されるおそれがあり、またキャビテーションが発生することがある。そこで、減圧部5を設け、加圧された状態の気液混合液を送り出す際に、減圧部5で大気圧まで徐々に減圧をした後に吐出するようにしているものである。減圧部5は、気体が混合された液体を送りながら配管全域での減圧速度ΔP2/t(ΔP2:減圧量、t:時間)の上限を2000MPa/sec以下にして減圧するように構成されている。それにより、強固な気泡界面の構造を維持させたまま、ナノサイズの気泡を消滅させたり合体させたりすることなく気液混合液を取り出すことができるものである。
【0084】
減圧部5としては、図5のような構成にすることができ、具体的には、(a)のように流路断面積が段階的に徐々に小さくなる流路6や、(b)のように流路断面積が連続的に徐々に小さくなる流路6や、(c)のように加圧された液体が流路6内を流れる圧力損失により高圧状態(P1)の気液混合液の圧力を徐々に低下させて(P2、P3、・・・)大気圧(Pn)まで減圧するように流路長さ(L)が調整された流路6や、(d)のように流路6に設けられた複数の圧力調整弁9などにより構成することができる。
【0085】
例えば図5(a)又は(b)のような減圧部5を用いた場合、減圧部5よりも上流側の流路6を内径20mmにし、減圧部5を、流路長さが約1cm〜10mで、内径が20mmから4mmにまで徐々に小さくなることにより流路断面積が小さくなる管体により構成することができる。なお、減圧部5は、入口内径/出口内径=2〜10程度に設定したり、1cmあたりの内径減少値を1〜20mm程度に設定したりすることができる。このとき、減圧部5に気液混合液を流速4×10−6m/s以上で送ると、減圧速度2000MPa/sec以下で、ナノサイズの気泡を消滅させることなく1.0MPa減圧することができ、気液混合液を大気圧にまで減圧することができるものである。
【0086】
減圧された気液混合液は吐出部7から外部に吐出される。なお、その際、図6のように、流路6bと流路6cとの間に、加圧部1における液体の押し込み圧を十分に確保するために延長流路10を設けることもできる。すなわち、減圧部5を含めた全体の圧力損失を算出し、加圧部1からの押し込み圧によって気液混合部3内で液体と気体を加圧するのに必要な圧力と、全体の圧力損失との差を算出し、さらにこの差の圧力損失が生じるように流路長さを調整した延長流路10を流路6に付加するようにしてもよい。押し込み圧の確保には絞り部などを設けることも考えられるが、絞り部などで押し込み圧を調整すると急激な圧力変化により気泡が崩壊するおそれがある。しかし、このように延長流路10を設ければ気泡を安定化させたまま気液混合液を吐出することができるものである。
【0087】
上記のように構成された気液混合液生成装置にあっては、入水部13から入った液体に、気体供給部2により気体を供給して注入する。そして、気体が注入された液体を、ポンプ11で構成された加圧部1及び気液混合部3によって0.17MPa/sec以上の加圧速度ΔP1/t(ΔP1:圧力増加量、t:時間)で加圧し、液体の圧力を0.15MPa以上にする。すなわち、気液混合部3から気体分離部4へ送り出される際の液体の圧力は0.15MPa以上になっている。その後、気体分離部4で気液混合液中のナノサイズを越える気泡を取り除いた後、該液体を減圧部5及び下流側の流路6に送りながら最高減圧速度2000MPa/sec以下の減圧速度ΔP2/t(ΔP2:減圧量、t:時間)で徐々に大気圧まで減圧する。それにより、ナノサイズの気泡が安定に存在した気液混合液を連続的に生成することができ、この気液混合液を飲料用水として利用することができるものである。
【0088】
なお、気液混合部3よりも下流側の流路6は内径2〜50mm程度の管体などに形成することができる。それにより、比較的太い流路断面積で気液混合液を吐出することができ、細路により流路6を構成する場合のような配管の詰まりを防止して、気液混合液を利用しやすくして、飲料用水を簡単に得ることができる。
【0089】
そして、吐出部7から吐出された飲料用水は、容器に入れるなどして、そのまま飲用したり、貯蔵した後に飲用したりすることができ、また、外力を与えて気体を発生させたり分離したりして飲用したりすることができる。また、この飲料用水を用いて清涼飲料水やお茶やコーヒーを作製してもよい。
【0090】
図7は、飲料用水生成装置の実施の形態の他の一例を示す概略図である。この装置は図1の装置の構成に加えて、吐出部7から吐出される飲料用水を受ける容器16を備えており、容器16の下側には、容器16内の液体に与える外力を調節する外力制御部17が設けられている。そして筐体12と容器16は、円盤状の基板18の上に載置されている。
【0091】
容器16は吐出部7から吐出された飲料用水を貯蔵するものである。図示の形態では容器16として上側を開放口としたビーカー状のものが示されているが、容器16は、貯留タンクであってもよいし、飲料用のコップであってもよい。外力制御部17は、温度を制御する温度制御部、圧力変化を制御する圧力制御部、衝撃波を照射する衝撃波制御部、又は超音波を照射する超音波制御部などによって構成され、飲料用水を使用する直前にスイッチをオンして容器16に貯蔵された液体に外力を与えて、飲料用水に含まれているナノサイズの気泡を崩壊させて、気体を液体に溶解したり、気体を液体から分離したりするものである。
【0092】
例えば、外力制御部17としてヒーターなどの温度制御部を用いた場合は、容器16に常温で貯蔵している飲料用水を温度制御部をオンすることにより加温し、飲料用水の温度を10〜30℃以上にするなどして飲料用水中のナノサイズの気泡を崩壊して、気体を液体に溶解したり、気体を発泡させたり、気体を分離したりする。気体を液体に溶解させれば、殺菌性を発揮したりすることができ、また、気体を発泡させれば、嗜好性の高い飲料用水にすることができ、また、気体を分離させれば、通常の水に戻り、その水を飲料用等に使用することができる。
【0093】
このように、気液混合液は所望量又は容器16の容量分生成されて容器16に貯蔵され、必要なときに外力が与えられた後、容器16から取り出されて飲用等されるものであり、図示の装置は作り置きタイプの飲用水生成装置として利用できるものである。圧力制御や温度制御や衝撃波や超音波などの外力の条件としては、上記で説明した飲用用水の利用や精製と同様の条件にすることができる。
【0094】
この装置にあっては、必要な量だけ飲料用水を生成しておき、使用する直前に外力を与えてナノサイズの気泡を崩壊させた後、飲用のために取り出せばよいので、無駄なく飲料用水を生成することができ、また効率よく殺菌性や嗜好性や生体活性などの機能性を発揮させることができるものである。
【0095】
なお、図示の形態では、外力制御部17は容器16に外側(下側)に設けられて容器16の外側から非接触で容器16内部の飲用量水に外力を与えるようにしてあるが、外力制御部17を容器16の内部に飲料用水に接触するようにして設けてもよい。
【0096】
また、外力制御部17による外力の付与は、連続的であってもよいし、断続的であってもよい。連続的に外力を与える場合は、飲料用水中の大量の気体を一気に発生させて機能性を瞬時に高めることができる。一方、断続的に外力を与える場合は、気体を徐々に発生させ、機能性を持続させることができる。
【0097】
図8は、飲料用水生成装置の実施の形態の他の一例を示す概略図である。この装置は図1の装置の構成に加えて、吐出部7から吐出された飲料用水を受ける容器16を備えており、さらに吐出部7と減圧部5との間の流路6に気液混合液に外力を与える外力制御部17が設けられてある。そして筐体12と容器16は、円盤状の基板18の上に取り付けられている。
【0098】
外力制御部17は、温度を制御する温度制御部、圧力変化を制御する圧力制御部、衝撃波を照射する衝撃波制御部、又は超音波を照射する超音波制御部などによって構成され、減圧部から送られてくる飲料用水にスイッチをオンして外力を与えて、飲料用水に含まれているナノサイズの気泡を崩壊させて、気体を液体に溶解したり、気体を液体から分離して精製したりするものである。
【0099】
例えば、外力制御部17としてヒーターなどの温度制御部を用いた場合は、常温で生成した飲料用水を温度制御部をオンすることにより加温し、飲料用水の温度を10〜30℃以上にするなどして飲料用水中のナノサイズの気泡を崩壊して、気体を液体に溶解したり、気体を発泡させたり、気体を分離したりする。気体を液体に溶解させれば、殺菌性を発揮したりすることができ、また、気体を発泡させれば、嗜好性の高い飲料用水にすることができ、また、気体を分離させれば、通常の水に戻り、その水を飲料用等に使用することができる。
【0100】
そして、外力が与えられてナノサイズの気泡が崩壊した飲料用水は吐出7から吐出され、容器16に溜められる。容器16に溜められた飲料用水は、ナノサイズの気泡の崩壊によって機能性が高められており、そのまま飲用等に使用することができる。圧力制御や温度制御や衝撃波や超音波などの外力の条件としては、上記で説明した飲料用水の精製と同様の条件にすることができる。
【0101】
この装置にあっては、気液混合液である飲料用水を生成した後、すぐにナノサイズの気泡を崩壊させて飲用等に使用することができ、効率よく殺菌性や嗜好性や生体活性などの機能性を発揮させることができるものである。
【0102】
図9は、飲料用水生成装置の実施の形態の他の一例を示す概略図である。この装置は図1の装置の構成に加えて、入水部13と気体供給部2との間の流路6に液体の前処理を行う前処理部19が設けられている。
【0103】
前処理部19は、液体の温度を冷却する冷却部、異物など液体中の不純物を取り除く浄化フィルター、又は液体中に含まれる気体を取り除く脱気部などによって構成され、気液混合部3において気体と液体とを混合しやすくするために、入水部13から送られてくる水に前処理を行うものである。この前処理部19で前処理を行うことにより、気体と液体の混合性を高めて、より多くのナノサイズの気泡を生成することができるものであり、高濃度に気体が混合した気液混合液を生成して飲料用水の機能性をさらに向上することができるものである。
【0104】
例えば、前処理部19として冷却部を用いた場合は、入水部15から送られた液体は冷却部で冷却され、冷却された状態のまま気液混合液が生成される。冷却部は、例えば、流路6に冷却熱交換器を巻き付けて取り付けるなどして形成することができる。冷却状態の水を用いて液体と気体の混合を行うと、ナノサイズの気泡が形成され、そのナノサイズの気泡は液体が冷却されているために安定化されて崩壊することなく気体分離部4及び減圧部5に送られることになり、ナノサイズの気泡を形成する気体量を高めて高濃度の気液混合液を生成することができる。そして、飲料用水は常温よりも温度が低い状態で生成される。この冷却状態の飲料用水を吐出部7から吐出して飲用等に利用する。冷却温度としては、液体の温度が常温以下となるようにする程度であればよく、例えば、0〜25℃にすることができる。吐出された飲料用水はそのまま飲用等に使用してもよいし、冷却状態を保つように冷却して貯留してもよい。冷却したまま貯留すると、気泡を長期に安定に保持することができる。そして、外気温や飲用時の口中の温度により気液混合液の温度が上昇して液中の気泡が崩壊して、気体が溶解したり発泡したりして、嗜好性や生体活性などの機能性を高めることができるものである。
【0105】
また、前処理部19として浄化フィルターを用いた場合は、入水部13から送られた液体は浄化フィルターでゴミなどの異物が取り除かれて浄化され、浄化された水で気液混合液が生成される。浄化フィルターは、例えば、流路6の内部に網目状(メッシュ状)のフィルターを取り付けたり、樹脂等が充填されたフィルター管を流路6に設けたりして液体を通すものなどによって形成することができる。具体的には、中空糸膜フィルターや不織布フィルターや糸巻きフィルターなどを利用することができる。そして、この浄化された水で気液混合液を生成することによって、異物などの不純物がない清浄な液体が気体と混合されるので、気体と液体との混合性が高まり、より多くのナノサイズの気泡を形成することができ、高濃度に気体が混合された気液混合液を生成することができるものである。そして、高濃度の気体がナノサイズの気泡となって飲料用水に安定に存在するので、殺菌性や嗜好性や生体活性などの機能性を高めることができるものである。
【0106】
また、前処理部19として脱気部を用いた場合は、入水部13から送られた液体は脱気部で液体内の気体が取り除かれて気体のない状態にされ、気体が含有されていない状態の水で気液混合液が生成される。脱気部は、例えば、流路6の内部に向かって超音波を照射する超音波装置や、急激に液体を減圧して内部の気体を放出させる減圧装置などによって形成することができる。また、中空糸脱気膜などの脱気フィルターを用いて脱気してもよい。そして、気体が取り除かれた水で気液混合液を生成することによって、気体が含有されておらず気体が欠乏状態となった液体が気体と混合されるので、気体と液体との混合性が高まり、より多くのナノサイズの気泡を形成することができ、高濃度に気体が混合された気液混合液を生成することができるものである。そして、高濃度の気体がナノサイズの気泡となって飲料用水に安定に存在するので、殺菌性や嗜好性や生体活性などの機能性を高めることができるものである。
【0107】
そして、前処理部19は、上記の冷却部と浄化フィルターと脱気部とを併用して構成することができる。この場合、単独の処理方法で前処理部19を構成した場合に比べてさらに気液の混合性が高まり、高濃度の気体を液体に混合させることがより可能になるものである。具体的には、例えば、中空糸膜フィルターなどの脱気浄化フィルターを用いれば浄化フィルターと脱気部とを兼用することができる。
【0108】
図10は、飲料用水として生成される気液混合液が、安定化されるメカニズムを説明する概念説明図である。図示のように、気泡Bと液体Lqの界面には水素結合距離が通常よりも短い氷やハイドレートのような強固な水分子の結合で境膜構造(結晶構造体)の保護膜Mが形成されており、気液相互の物質移動が阻止されて気泡が安定な状態になったものと考えられる。そして、気液混合液内の気泡(ナノバブル)の内圧は、ヤングラプラスの式から求められる圧力以上となっている。このように気泡界面の水素結合距離が短く、気泡の内圧が高くなることによって、気泡が安定した気液混合液となるものである。そして、気泡の内圧が高いためにより多くの気体を気泡中に入れることが可能となり、高濃度の気体が混合した気液混合液を得ることができるものである。
【0109】
図11は、気液混合液中の気泡に外力が与えられて崩壊するモデルを説明する概念説明図である。ナノサイズの気泡Bは、気液混合液中では図10のように安定に存在しているが、(a)のように温度変化、圧力変化、衝撃波、超音波等により外力が衝撃として与えられると、気泡界面での構造が崩されて、(b)のように気泡が崩壊する。すなわち、気泡は強固な水素結合の構造により安定して存在しているが、内圧が高くなっており、外力を与えると、高くなった内圧によって気泡の界面構造での均衡が簡単に崩れ、気泡が容易に崩壊するので、人為的に気泡の崩壊を制御できるのである。また、気泡が崩壊し気体分子が液中に放出されることになり、放出された気体分子は液体に溶解しようとするが、液体には飽和溶解濃度で気体が溶解しているため、溶解できない気体は、再度、気泡を形成する。このとき、多くの気泡はナノサイズになるのではなく気泡の合体を起して大きな気泡となって、発泡する現象が生じ、気体が液体から分離するのである。
【0110】
このようにして、気液混合液の状態になることにより、多くの気体を含んだ水を飲料用水として利用することができるものである。そして、例えば、殺菌性の気体を安定なナノサイズの気泡に封入し、長期に保持して殺菌性を持続させ、必要な時に液体から殺菌性の気体を分離して、飲料用の水として利用することができるものである。
【実施例】
【0111】
以下、本発明を実施例により説明する。
【0112】
〔実施例1〕
[飲料用水の生成]
図1の飲料用水生成装置(気液混合液生成装置)を用い、気体として後述の各種の気体を用い、液体として純水を用いてナノサイズの気泡を含有す飲料用水を生成した。
【0113】
気液混合液生成装置としては、加圧部1と気液混合部3とがポンプ11で兼用されて構成された、図1の構成のものを用いた。ポンプ11としては回転体21により加圧する図2のようなポンプ11aを用いた。
【0114】
気体と液体の比(液体に対する気体の注入量)は、容量比(体積比)で1:1に設定した。また、ポンプ11の回転体21の回転数は1700rpmに設定した。この条件により大気圧(0.1MPa)の水に気体が注入された後、加圧速度ΔP1/t=28.3MPa/secで加圧されて、気液混合部3から気体分離部4に送り出される際の気液混合液の圧力が0.6MPaになった。なお、このような条件により、飽和溶解濃度を超えて気体が液体に注入されて水素結合距離が短くなり強固な気泡界面の構造が形成されるものと考えられる。この条件(加圧条件)は現時点における最良の条件であると考えられる。
【0115】
また、減圧部5よりも上流側の流路6を内径20mmのものにした。減圧部5としては図4(a)のような、3段階で内径が徐々に小さくなるものを用い、具体的には、内径が14mm、8mm、4mmで長さが各約3.3mm(減圧部5の全長として約1cm)の三つの流路管部からなるものを用いた。また、減圧部5よりも下流側の流路6及び延長流路10として、内径4mm(外径6mm)のホースを用い、下流側の流路6と延長流路10とを合わせた長さが2mとなるように設定した。この条件により、減圧部5において、最高減圧速度60MPa/sec、時間0.0025秒で気液混合液を減圧し、さらに、下流側の流路6及び延長流路10において、1MPa/sec、時間0.5秒で気液混合液を減圧し、ホース先端部から、大気圧(0.1MPa)まで減圧された気液混合液が得られた。なお、このような条件により、飽和溶解濃度を超えて気体が液体に注入されると共に水素結合距離が短くなり気泡界面の構造が強固になった気液混合液を安定して生成することができるものと考えられる。この条件(減圧条件)は現時点における最良の条件であると考えられる。
【0116】
[水素結合の距離]
図12は、気体として窒素を用い、液体として純水を用いた気液混合液と、窒素が純水に飽和溶解濃度で溶解した窒素飽和水との赤外吸収スペクトルとの差分を示すグラフである。水のOH収縮振動による赤外吸収帯としては通常3400cm−1付近に吸収極大があることが知られているが、グラフに示されるように気液混合液はOH収縮振動の吸収極大が3200cm−1付近にずれている。吸収極大が3400cm−1にある場合、水素結合の距離は0.285nmである。一方、吸収極大が3200cm−1にある場合、水素結合の距離は0.277nmであることが知られており、常温常圧下における通常の水素結合の距離よりも短くなり構造化された氷またはハイドレートに近い水と結論づけられた。窒素の代わりにオゾンや塩素や二酸化塩素などの殺菌性の気体や、空気、酸素、水素、二酸化炭素などの気体を用いても同様の構造が得られるものと考えられ、これらの気液混合液を飲料用水として使用することができるものである。
【0117】
[気体量]
液体として純水を、気体として各種の気体を用い、気液混合液中に気泡として存在する気体量を次の方法により測定した。
(1)25℃、導電率0.1μS/cmの純水に、各種の気体を混合させ気液混合液を得た。
(2)直径1μm以上の大きな気泡を水から分離するために、気液混合液を25℃で1日静置した。なお、静置時間について、ストークスの法則から
気泡上昇速度: V=d2×g/(18×γ)
(d:気泡直径、g:重力加速度、γ:動粘性係数)
の式が成立し、この式より1μmの気泡の上昇速度は約2.4×10−4m/sであるので、例えば静置時の容器の水深が50mmの場合、1日静置すれば気泡を除去することができる。
(3)最小測定値1mgの分析天秤で気液混合液の質量を測定した。
(4)ガス透過度及び透湿度の低いPE+ナイロン樹脂製のビニル袋に気液混合液とスタラーの撹拌子を入れ、空気を追い出して袋に空気が無い状態でシーラーにてビニル袋を密封した。
(5)密封直後に、分析天秤で気液混合液が封入されたビニル袋の質量を測定した。
(6)ホットスタラーにより25℃の気液混合液が密封されたビニル袋を45℃に昇温して気液混合液を約5時間撹拌した。この昇温と撹拌により、微細気泡や、45℃の飽和溶解濃度以上で溶解していた気体が気液混合液から分離されビニル袋の上部に集まった。
(7)室温25℃の条件でホットスタラーの設定温度を25℃にし、25℃の飽和溶解度の液体になるよう数時間撹拌を行った。
(8)分析天秤で、気体と液体が封入されたビニル袋の質量を測定した。
(9)計3回の質量測定から気液混合液の質量と、昇温および撹拌によって気液混合液から分離された気体による浮力によって生じる液体の質量変化量とを得た。質量変化量は、気液混合液から分離された気体容積と同容積の空気の質量と同じであり、この値から分離された気体の容量と質量を算出することができる。
【0118】
図13は、このようにして測定された気体容量を示すグラフである。各棒グラフの下部領域は、測定された気泡として存在していた気体の量であり、上部領域はヘンリー則に従う気体の飽和溶解量である。グラフに示すように、例えば水素と水を用いた気液混合液の場合、25℃の純水1Lに水素が、飽和溶解量として17.6mL溶解し、528mLの気体が微細な気泡として存在することが確認された。すなわち、気液混合液に含有する気体量は過飽和溶解量の30倍であった。また同様に、過飽和溶解量に対して気液混合液に含有する気体量は、窒素では36倍、アルゴンでは16倍、二酸化炭素では1.9倍であった。このように、気液混合液は飽和溶解濃度以上の高濃度で気体を液体中に保持することが可能であり、この高濃度で気体が含有された気液混合液を飲料用水として利用することができるものである。
【0119】
[気泡のサイズ]
上記と同様にして製造した気液混合液を瞬間凍結し、真空中においてカッターで割断し、その割断面にメタン・エチレンを流し放電させ、凹凸を転写した炭化水素膜(レプリカ膜)を作製した。このレプリカ膜に導電性オスミウム薄膜を張り、十分乾燥させて、走査型電子顕微鏡(SEM)で観測した。
【0120】
図14は、窒素と純水の気液混合液について、SEMにより観測された写真の一例である。同様に写真観察することにより、気体として窒素、水素、アルゴン、二酸化炭素を用いた場合、いずれも気液混合液の気泡サイズは、直径の分布ピークが100nmであることが確認された。また、気体としてオゾン、塩素、二酸化塩素、酸素、空気を用いても同様の構造か観測されると考えられる。なお、上記の気体と純水の気液混合液の気泡はレーザーを用いた動的散乱法等の粒子径分布測定装置では正確な検知ができなかった。このように、飲料用水は、気体がナノサイズの気泡となって存在する気液混合液の構造となっている。
【0121】
[気泡の内圧]
気液混合液中の気体総量から気泡内部の圧力を算出した。表1は、窒素又はアルゴンと25℃の純水との気液混合液における、気体総量と、気体総量から算出した気泡の内圧を示している。
【0122】
気泡における気体の内部圧力は次の方法で算出される。
気体の状態方程式は、
PV/T=(const)
(P:内部圧力、V:容積、T:内部温度)
で表され、Tが一定の場合、特に
PV=(const)
で表される。
【0123】
そして、気液混合液の密度から気液混合液中の気泡の容積が計算でき、上式から、
大気圧 × 気体総体積量 = 気泡の内圧 × 液中の気体総体積量
の関係が成立し、この関係式に上記で測定した気体量を当てはめて気泡における気体の内圧が計算され、表1のような圧力値となる。
【0124】
例えば気体が窒素の場合、
気液混合液1リットル中における、水体積がw1リットル、水中での気体体積がw2リットルであると仮定すると、
体積については次の関係式が成り立つ。
【0125】
w1 + w2 =1リットル (式A)
また、質量については次の関係式が成り立つ。
【0126】
w1 × 水の密度 + w2÷22.4(リットル)×28(窒素分子量)=測定質量 (式B)
水の密度 :常温常圧の純水では997.1g/L
22.4リットル :気体1モルの体積
測定質量 :表1の値で988.3
上記の2式(式A,B)の方程式を解くと、
w2=8.84×10^(-3) が算出されるので、
気体の内圧=大気圧 × 気体総体積量 ÷ 液中の気体総体積量
=0.1×(表1の値)÷w2
=0.1×0.56÷(8.84×10^(-3))
=6.3MPa
となる。
【0127】
なお、上記の計算では、気泡の内部温度が一定(常温)であるとして考えたが、実際の気泡の内部温度は大気の温度(常温)よりも高いことも予想され、その場合、気泡の内部圧は上記算出結果より更に高いことが気体の状態方程式から予測できる。
【0128】
ところで、一般には、気泡の内圧は次のようにして算出される。気泡は気液相界面間の界面張力により加圧され、この界面張力はヤングラプラスの式(下記式)で導かれる。
【0129】
ΔP=2σ/r
(ΔP:上昇圧力、σ:表面張力、r:気泡半径)
この式によれば、例えば、直径100nmのサイズの気泡の場合、気泡内部圧力は3MPaになる。
【0130】
一方、気液混合液中の内部圧力は、表1の通り、例えば窒素の場合6.3MPaであり、この気液混合液はSEM写真にて示されるように直径100nmサイズの気泡が分散しているものであることから、気液混合液の気泡は、ヤングラプラスの式から算出される値の約2倍以上の内部圧力を有していることが確認された。したがって、より強固な界面構造が気泡界面において形成されていると結論づけられた。そして、気体が、オゾン、塩素、二酸化塩素、酸素、空気、水素、二酸化炭素である場合も同様に内圧が高くなった気泡が形成されているものと考えられる。このように、内圧が高くなったナノサイズの気泡を含む気液混合液を飲用水として利用することができるものである。
【0131】
【表1】
[気泡の分布量]
気泡の分布量(個数)は表1から算出した。
【0132】
気体が窒素の場合、大気中(0.1MPa)に戻した気泡総量が0.56Lであり、気泡の内圧が6.3MPaであるので、水中での気泡総体積量V1は、等温変化と仮定し、PV=constより
V1=0.56×0.1÷6.3
となる。
【0133】
また、気泡は半径r=50nmの球体であるから、気泡1個当たりの体積V2は
V2=4/3×π×r^3
となる。
【0134】
以上より、水1L当たりの気泡の個数n=V1÷V2=1.7×10^16個と算出される。
【0135】
同じように水1L当たりの気泡の個数は、気体の主成分がアルゴンの場合は1.7×10^16個と算出される。
【0136】
[気液混合液の安定性]
図15は、空気と水とを混合して生成した気液混合液について、ガラスビンに密封し一定温度で保管した場合の、飽和溶解濃度に対する気液混合液中の気体存在量比を過飽和度として表示するグラフである。グラフから、過飽和度は400時間経過してもほぼ一定であり、ほとんど変化していないことが分かる。よって、気液混合液が安定であることが確認され、この安定な気液混合液を飲料用水として利用することができるものである。
【0137】
[温度制御]
上記のように製造した飲料用水(気液混合液)をヒーターにより加温し、液体の温度を25℃から40℃に昇温すると、温度の上昇に伴ってナノサイズの気泡が崩壊して目視で確認できるマイクロサイズ以上となった気泡が発生した。そして、液体がマイクロオーダーの気泡で白濁し、液体表面から気体が放出されるのが確認された。
【0138】
[超音波制御]
上記のように製造した飲料用水(気液混合液)に、40kHzランジュバン型振動子を用い出力100Wで超音波を照射した。時間0.05秒程度の瞬間照射で、ナノサイズの気泡が崩壊して目視で確認できるマイクロサイズ以上となった気泡が瞬間的に発生した。数秒間(3〜30秒程度)超音波を照射することにより、ほぼ全てのナノサイズの気泡が崩壊して目視で確認できるマイクロサイズ以上となった気泡が急激に発生した。そして、液体がマイクロオーダーの気泡で白濁し、液体表面から気体が放出されるのが確認された。
【0139】
[圧力制御]
上記のように製造した飲料用水(気体混合液)を圧力が変えられる密閉容器に入れてポンプ(加圧ポンプ又は減圧ポンプ)を使って、加圧又は減圧した。加圧及び減圧のどちらの場合でも、ナノサイズの気泡が崩壊して目視で確認できるマイクロサイズ以上となった気泡が発生するのが確認された。なお、図7の容器16をポンプなどを使って圧力調整ができる密閉容器にして飲料用水の圧力を制御することができる。
【0140】
また、撹拌によっても飲料用水(気液混合液)内の圧力の分布(偏り)が発生するため、気体を分離することができる。図7の容器16の中に撹拌羽を入れて撹拌したところ、ナノサイズの気泡が崩壊して目視で確認できるマイクロサイズ以上となった気泡が発生するのが確認された。
【0141】
[衝撃波制御]
上記のように製造した飲料用水(気体混合液)を脈動流で液体を噴射する噴射装置に入れ、壁状体に向けて噴射したところ、飲料用水が液滴となって壁状体に衝突し、衝突直後にナノサイズの気泡が崩壊して目視で確認できるマイクロサイズ以上となった気泡が発生するのが確認された。この発泡現象は、液滴が衝突した際に、液滴内部に衝撃波が発生することによるものである。
【0142】
図16は、上記のようにして飲料用水に衝撃波が加わる様子を示すモデル図である。噴射された飲料用水は、図16(a)に示すように、噴射される前は脈動流となっていることで、噴射後に不均一な液滴Wの集団になって、壁状体31の表面に衝突する。このとき、図16(b)に示すように、液滴Wが衝突して壁状体31が振動し、液滴W内部に衝撃波Zが発生する。そして、図16(c)に示すように、この衝撃波Zの衝撃によって、液滴W内部にマイクロサイズ以上の気泡BMの発泡現象が生じるものと考えられる。
【0143】
〔実施例2〕
[冷却状態での生成]
図9の飲料用水生成装置において、前処理部19が冷却部にて構成された飲料用水生成装置を用い、冷却状態(5℃)で空気と水とを用いた飲料用水(気液混合液)を生成した。この飲料用水を常温常圧で大気と接触するように容器に貯留し放置すると、水に対する気体の飽和溶解濃度が1週間以上維持できることが確認できた。したがって、気体が高濃度で安定化して液体に存在しており、例えば、殺菌性のある気体を用いれば長期に亘って殺菌性が持続する飲料用水を得ることができることが確認された。
【符号の説明】
【0144】
1 加圧部
2 気体供給部
3 気液混合部
4 気体分離部
5 減圧部
6 流路
7 吐出部
8 気体除去部
11 ポンプ
13 入水部
14 ベンチュリ管
15 電気分解手段
17 外力制御部
19 前処理部
21 回転体
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体を水に安定に保持して殺菌性能を高めたり嗜好性を高めたりした、飲料用水、飲料用水の利用方法、飲料用水の精製方法、飲料用水生成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、水道水、井戸水、地下水、河川の水などを殺菌・滅菌して飲料用の水を生成することが知られている。このうち塩素系薬剤などの薬剤を用いて水を殺菌する方法は、広く知られているが、人体への安全性が懸念されており、安全な殺菌方法が望まれている。水の加熱処理は古くから行われている薬剤を用いない殺菌方法であるが、完全な殺菌作用を得るためには長時間かけて水を高温で加熱する必要があり、大量の水を簡単に殺菌することができない。また、加熱直後は殺菌により菌が死滅しているものの、その後の菌の侵入により水が簡単に汚染されるので殺菌効果が持続しない。
【0003】
そのような状況の中、薬剤を用いずに安全で簡単に水を殺菌・滅菌できる方法が提案されている。例えば、特許文献1には、紫外線を照射して発生した活性酸素を水に接触させて殺菌する方法が開示されている。また、特許文献2には、水に電圧を印加して滅菌する方法が開示されている。また、特許文献3には、水に超音波を照射してキャビテーション気泡を発生させて殺菌する方法が開示されている。これらの方法によれば、薬剤を用いずに、水を流しながら殺菌を行うことが可能であり、安全に水を殺菌することができる。
【0004】
しかしながら、これらの方法では、殺菌後、時間の経過に伴い大気などの外部から侵入した菌により水が汚染されるおそれがあり、殺菌効果が持続しないという問題がある。ゆえに、飲料用水として使用・飲用するためには、直前に殺菌する必要があり、長期間に亘って殺菌された水を飲料用水として使用・飲用することができなかった。
【0005】
ところで、気泡を水に混合させて嗜好性のある飲料用水を得ることが知られている。例えば、炭酸ガスが水に混合された炭酸水は清涼飲料水などに利用されている(特許文献4参照)。また、気体を水に溶解させて飲用すれば気体物質を簡単に生体に与えることが可能である。
【0006】
しかし、高圧条件下で炭酸ガスなどの気体を高濃度で溶解させた後、大気圧に戻すと発泡現象が起って液体中の気体は分離して放出するため、液体中に長期に安定に存在する気体の量は飽和溶解濃度が上限であり、液体中に高濃度に気体を存在させて嗜好性を高めたり生体活性を高めたりする飲料用水を得ることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−296248号公報
【特許文献2】特開平11−010155号公報
【特許文献3】特開平11−262515号公報
【特許文献4】特開2002−166148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、気体を長期に亘って液体中に安定に保持して殺菌性、嗜好性、生体活性などの機能性が持続する飲料用水、飲料用水の利用方法、飲料用水の精製方法、飲料用水生成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、気体がナノサイズの気泡となって該気体の飽和溶解水に存在し、該気泡との界面に存在する水分子の水素結合の距離が、水が常温常圧であるときの水素結合の距離よりも短いことを特徴とする飲料用水である。
【0010】
請求項2の発明は、上記の飲料用水において、気泡を形成している気体の圧力が0.12MPa以上であることを特徴とする飲料用水である。
【0011】
請求項3の発明は、上記の飲料用水において、気体が殺菌性の気体であることを特徴とする飲料用水である。
【0012】
請求項4の発明は、上記の飲料用水において、気体が二酸化炭素であることを特徴とする飲料用水である。
【0013】
請求項5の発明は、上記の飲料用水において、気体が水素であることを特徴とする飲料用水である。
【0014】
請求項6の発明は、上記の飲料用水において、気体が空気又は酸素であることを特徴とする飲料用水である。
【0015】
請求項7の発明は、上記の飲料用水に、圧力変化、温度変化、衝撃波及び超音波からなる群から選ばれる少なくとも1種の外力を与えて気泡を崩壊させて飲料用水中の気体を利用することを特徴とする飲料用水の利用方法である。
【0016】
請求項8の発明は、上記の飲料用水に、圧力変化、温度変化、衝撃波及び超音波からなる群から選ばれる少なくとも1種の外力を与えて気泡を崩壊させて飲料用水中の気体を分離することを特徴とする飲料用水の精製方法である。
【0017】
請求項9の発明は、水を含む液体を外部から取り入れる入水部13と、入水部から入った液体に気体を供給する気体供給部2と、気体が供給された液体を加圧する加圧部1と、液体中の気体をナノサイズの気泡にして気液混合液を生成する気液混合部3と、気液混合液からナノサイズを超える大きさの気泡を分離する気体分離部4と、加圧状態の気液混合液をナノサイズの気泡を崩壊させることなく大気圧まで減圧する減圧部5と、減圧された気液混合液を吐出する吐出部7とを備えてなることを特徴とする飲料用水生成装置である。
【0018】
請求項10の発明は、上記の飲料用水生成装置において、入水部13から取り入れられた液体を冷却する冷却部を備えてなることを特徴とする飲料用水生成装置である。
【0019】
請求項11の発明は、上記の飲料用水生成装置において、入水部13から取り入れられた液体を浄化する浄化フィルターを備えてなることを特徴とする飲料用水生成装置である。
【0020】
請求項12の発明は、上記の飲料用水生成装置において、入水部13から取り入れられた液体を脱気する脱気部を備えてなることを特徴とする飲料用水生成装置である。
【0021】
請求項13の発明は、上記の飲料用水生成装置において、気液混合部3の少なくとも一部をベンチュリ管14により構成することを特徴とする飲料用水生成装置である。
【0022】
請求項14の発明は、上記の飲料用水生成装置において、気液混合部3の少なくとも一部を電気分解手段15により構成することを特徴とする飲料用水生成装置である。
【発明の効果】
【0023】
請求項1の発明によれば、気体がナノサイズの気泡となって該気体の飽和溶解水に存在することにより、長期に亘って大量の気体を水に安定に保持することができるので、殺菌性、嗜好性、生体活性などの機能性を長時間維持でき、機能性を向上する飲料用水を得ることができるものである。すなわち、気体がナノサイズの気泡となることにより消滅や合体することなく液体中に安定に存在しており、このナノサイズの気泡が水の殺菌を長期に亘って持続したり、生体活性や嗜好性を持続したりすることができるものである。そして、保持された気体を外力を与えて液体から発生させて溶解したり分離したりすることもでき、気体を発生させて飲料用水を利用したり精製したりすることができるものである。
【0024】
また、気泡界面における水素結合の距離が短くなって気泡の周囲で強固な水素結合を形成した水分子が気体をナノサイズの気泡として取り囲み、この水素結合を形成した水分子は強固な殻となって気泡を包み込むので、気泡同士が衝突しても崩壊することがないのと共に液体からの圧力に対して気泡内部からの応力で対抗でき、ナノサイズの気泡を液体中で消滅させたり合体させたりすることなく安定に存在させることができるものである。つまり、水分子は、O…Hの水素結合、つまり、ある水分子の酸素原子と他の水分子の水素原子との間に強固な結合を形成するので、気泡界面における水素結合が強固になって気泡をより安定化させることができるものである。そして、水素結合の強固な殻で包み込まれ安定に液体中に保持された気泡は内圧が高くなっており、外力が与えられると気泡が崩壊して気体を発生させて液体に溶解したり液体から放出したりする。このように水素結合の強固な界面構造によって液体に大量に保持された気体を利用し、殺菌性や嗜好性や生体活性などの機能性のある飲料用水として使用することができるものである。
【0025】
請求項2の発明によれば、気泡を形成している気体の圧力が高圧になることにより、気泡が高い内部圧で維持されることによってより強固な界面構造を形成することができ、高濃度の気体を気泡として液体中に閉じ込めることができるものである。また、内部圧が高いことにより、静置状態においては安定な気泡を形成すると共に、一旦、気泡を含有する飲料用水に衝撃が加えられると、内部圧の力により液体界面の殻が崩壊して気体が発生し、気体が溶解したり分離したりするため、この発生した気体を利用して飲料用水を使用することができるものである。
【0026】
請求項3の発明によれば、殺菌性の持続した飲料用水にすることができるものである。そして、殺菌性の気体として人体に有害なものを用いた場合でも、外力を与えて気体を液体から分離して、飲用可能な水にすることができ、薬剤を用いることなく、殺菌性と安全性とを高めた飲料用水を簡単に得ることができるものである。
【0027】
請求項4の発明によれば、嗜好性の高い飲料用水にすることができるものである。すなわち、通常の炭酸水は飽和溶解濃度以上の二酸化炭素は泡となって液体からすぐに分離してしまい、発泡による嗜好性の向上が長期間持続しない。しかし、この発明によれば多量の二酸化炭素がナノサイズの気泡となって安定に存在し、飲用した際に口の中などで外力が与えられて気泡が崩壊して二酸化炭素が発泡したり、飲用前に外力を与えて通常の炭酸水の気体量を超える気体量で発泡したりするので、嗜好性を長期間に亘って維持することができると共に、多量の気体が発泡することで嗜好性を高めることができるものである。
【0028】
請求項5の発明によれば、還元力のある多量の水素が生体を活性化させることができるので、生体活性の高い飲料用水を得ることができるものである。すなわち、飲用した際に、還元力のある水素が生体に働きかけて体内の有害な酸化物質を還元して無害化するため、人体を治療したり健康にしたりすることができることができるものである。
【0029】
請求項6の発明によれば、気泡中に含まれる多量の酸素が生体を活性化させることができるので、生体活性の高い飲料用水を得ることができるものである。すなわち、飲用した際に、体内に多量の酸素が供給されて酸素が生体に働きかけるため、人体を治療したり健康にしたりすることができるものである。
【0030】
請求項7の発明によれば、外力を与えて液体中の気泡から気体を発生させて、殺菌性能を発揮したり、嗜好性を高めたり、生体活性を高めたりすることができ、得たいタイミングで飲料用水の機能性を高めて利用することができるものである。
【0031】
請求項8の発明によれば、外力を与えて液体中に溶解している気体やナノサイズの気泡となった気体を液体から分離することができるので、人体に有害性のある気体を用いた場合でも、気体を液体から取り除いて安全な飲料用水を精製して得ることができるものである。
【0032】
請求項9の発明によれば、気体が注入された液体を加圧することにより、強固な界面構造を有する気泡を発生させて、大気圧に戻したときにも安定に存在するナノサイズの気泡を生成することができ、また、界面構造が強固になった気泡を有する気液混合液を徐々に大気圧まで減圧することにより、強固な界面構造を維持して気泡を消滅させたり合体させたりすることなくナノサイズの気泡が混合した飲料用水を安定に得ることができ、飲料用水を効率よく簡単に生成することができるものである。
【0033】
請求項10の発明によれば、冷却状態で気液が混合されることにより、より多くの気体をナノサイズの気泡として液体中に存在させることが可能となり、飲料用水の機能性を向上することができるものである。
【0034】
請求項11の発明によれば、液体が浄化されて気液が混合されることにより、より多くの気体をナノサイズの気泡として液体中に存在させることが可能となり、飲料用水の機能性を向上することができるものである。
【0035】
請求項12の発明によれば、液体が脱気されて気液が混合されることにより、より多くの気体をナノサイズの気泡として液体中に存在させることが可能となり、飲料用水の機能性を向上することができるものである。
【0036】
請求項13の発明によれば、ベンチュリ管を用いることにより、簡単な構成でナノサイズの気泡を形成することができ、装置を簡単なものにすることができるものである。
【0037】
請求項14の発明によれば、電気分解手段を用いることにより、簡単な構成でナノサイズの気泡を形成することができ、装置を簡単なものにすることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】飲料用水生成装置の実施の形態の一例を示す概略図である。
【図2】飲料用水生成装置の一部を示す概略図である。
【図3】(a)(b)はそれぞれ、飲料用水生成装置の一部を示す概略図である。
【図4】(a)〜(c)はそれぞれ、飲料用水生成装置の一部を示す概略図である。
【図5】(a)〜(d)はそれぞれ、飲料用水生成装置の一部を示す概略図である。
【図6】飲料用水生成装置の一部を示す概略図である。
【図7】飲料用水生成装置の実施の形態の他の一例を示す概略図である。
【図8】飲料用水生成装置の実施の形態の他の一例を示す概略図である。
【図9】飲料用水生成装置の実施の形態の他の一例を示す概略図である。
【図10】飲料用水における気泡の気液界面の概念説明図である。
【図11】(a)及び(b)は、飲料用水に外力を与えて気泡が崩壊する様子のモデルを示す概念説明図である。
【図12】気液混合液と窒素飽和水との赤外吸収スペクトルの差分を示すグラフである。
【図13】気液混合液中に含まれる気体容量を示すグラフである。
【図14】走査型電子顕微鏡(SEM)による気液混合液の写真である。
【図15】気液混合液の安定性を示すグラフである。
【図16】飲料用水に衝撃波が加わる様子の一例を示すモデル図であり、(a)は衝突直前、(b)は衝突時、(c)は衝突直後である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、発明を実施するための形態について説明する。
【0040】
本発明の飲料用水は、気体がナノサイズの気泡となって、この気体が飽和溶解濃度で溶解した溶解水に存在しているものである。すなわち、本発明の飲料用水は、気体がナノサイズの気泡となって液体に混合された気液混合液として構成されている。
【0041】
一般に、気体が水に溶解することは知られているが、その飽和溶解濃度は二酸化炭素などの一部の気体を除いて多くない。そして、多量の気体を水の中に存在させることはできず、気体が液中に存在する上限の量は飽和溶解濃度である。しかしながら、本発明の飲料用水においては、気体が水に飽和溶解濃度で溶解し、さらに飽和溶解濃度を超えた気体はナノサイズの気泡となって液体中に安定に存在して気液混合液となっている。つまり、気体は飽和溶解濃度で水に溶解すると共にナノサイズの気泡となって存在している。したがって、飽和溶解濃度以上の気体が液体中に存在しており、長期に亘って大量の気体を液体中に安定に保持することができ、殺菌性能を長時間維持できる飲料用水や、嗜好性・生体活性を向上する飲料用水を得ることができるものである。すなわち、気体はナノサイズの気泡となることにより消滅や合体することなく液体中に安定に存在しているのである。
【0042】
そして、通常、液中に存在する気泡は液体からの圧力により崩壊して液体に溶解してしまうが、上記のような気液混合液では液体には飽和溶解濃度で気体が溶解しているので、気体がそれ以上溶解することができず、気泡が崩壊して気泡中の気体が溶解することがない。崩壊しないナノサイズの気泡は液体からの圧力に応じるようにその内圧が高くなっており、内圧が高くなることで液体圧力との均衡が保たれ、ナノサイズの大きさを維持したまま気泡が安定に液体中に存在する。また、ナノサイズの気泡は極めて微細なサイズになっているため浮力を受けることがなく、気泡が上昇して液体から外部に分離することがない。よって、ナノサイズの気泡が長期に亘って安定に液体中に存在するのである。そして、このナノサイズの気泡に外力を与えて液体から気体を発生させ、この気体を液体に溶解したり分離したりすることができ、気体を発生させて飲料用水を利用したり精製したりすることができるものである。
【0043】
飲料用水に含まれる気泡はナノサイズの気泡であり、具体的には1000nm以下の気泡(いわゆるナノバブル)である。気泡がナノサイズとなり微細なものになることで強固な気泡界面の構造を形成することができ、高濃度の気体を液体中に保持することができるものである。また、ナノオーダーサイズの気泡には浮力が働かないため、気泡が上昇して液体から分離することがないので気泡を長期に亘って安定に存在させることができるものである。気泡のサイズがナノサイズよりも大きくなると気泡を安定化させることができなくなるおそれがある。なお、気泡の大きさは、走査型電子顕微鏡(SEM)により測定することができ、気泡の平均粒径は、測定によって得た気泡の粒径を平均して求めることができる。ところで、マイクロバブルが混合された液体は白濁するため目視により判別可能であるが、ナノバブルが混合された液体は無色透明(あるいは液体が有色の場合は液体の色)になり目視では判別することができない。よって、気液混合液の判別はSEMや密度測定などによって行うこととなる。なお、ナノサイズの気泡の下限は1nmである。
【0044】
飲料用水にあっては、気泡との界面に存在する水分子の水素結合の距離が、常温常圧であるときの水素結合の距離よりも短い。水素結合とは、電気陰性度の大きい原子と水素原子とを有している分子において、水素原子が他の分子の電気陰性度の大きい原子に接近し、系が安定化する結合のことである。そして、飲料用水に存在するナノサイズの気泡の周囲、すなわち気泡との界面に存在する水分子においては、水分子の水素結合の距離が、水分子が常温常圧(25℃、1気圧(0.1013MPa))であるときの水素結合の距離よりも短いものとなっているのである。このように、飲料用水が常温常圧の条件で存在する場合において、気泡界面における水素結合の距離が常温常圧での通常の水素結合の距離よりも短くなることにより、気泡の周囲を強固な水素結合を形成した水分子で取り囲むことになる。そして、この水素結合を形成した水分子は強固な殻となって気泡を包み込む。それによって、気泡同士が衝突しても崩壊することがなくなり、また、液体からの圧力に対して気泡内部からの応力で対抗できるので、気泡を液体中で消滅させたり合体させたりすることなく保持することができるものである。つまり、従来の表面張力で安定している気泡とは異なるものである。そして、この水素結合は長期間に亘って安定であるので、気泡が安定に存在した飲料用水を長期間に亘って利用可能となる。また、ナノオーダーサイズの気泡を、従来レベルより遙かに超えた密度で生成し液体に安定して存在させることが可能となるものである。
【0045】
ここで、水分子は、O…Hの水素結合、つまり、ある水分子の酸素原子と他の水分子の水素原子との間に水素結合を形成するものであり、本発明の飲料用水においては、気液混合液の液体として水が用いられるので、気泡界面において液体中のこの水素結合が強固になって気泡をより安定化させるのである。なお、水としては純度の高い水に限られることはなく、上水道、地下水、河川や池の水などをはじめ、飲料用に用いることが可能なあらゆる水を使用することができる。また、飲料用水を構成する気液混合液に用いる液体としては、水が含まれていればよく、液体が水のみからなっていてもよいし、水が他の成分を溶解させて水溶液の状態に、例えばイオン水などの状態になっていてもよい。
【0046】
気泡との界面における水分子の水素結合の距離としては、常温常圧での水素結合の距離を100%とした場合に、99%以下となるように飲料用水を生成することが好ましい。水素結合の距離がこの範囲になることにより、気泡を水素結合の硬い殻で取り囲んで安定化させることができるものである。水素結合の距離がこれより長いと気泡を安定化させて存在させることができなくなるおそれがある。原子間距離を考慮すると、水素結合の距離の下限は95%である。気液混合液中の気泡界面における水素結合の距離は、後述するように、気液混合液の赤外吸収スペクトル(IR)を解析することにより算出することができる。
【0047】
ところで、水素結合の距離が上記の距離にある水は、通常、氷のように固体やハイドレート結晶構造になるものであるが、上記のような気液混合液においては、気泡界面において局所的に上記のような距離の短い水素結合を形成し、それ以外の液体中は通常の水素結合を形成している。すなわち、気泡界面では距離の短い水素結合により液体分子の硬い殻を形成して、気泡同士が合体することや消滅することを防止すると共に、気泡界面以外では通常の状態で液体が存在して常温常圧では流動性を確保しており、安定な気泡が存在して飲料用水を利用しやすくするものである。
【0048】
飲料用水にあっては、気泡を形成している気体の圧力、すなわち気泡の内圧が、0.12MPa以上になることが好ましく、さらにヤングラプラスの式(次式)で与えられる気泡の内圧より高い圧力であることが好ましい。
【0049】
ヤングラプラスの式
ΔP=2σ/r
[ΔP:気泡内部の上昇圧力、 σ:表面張力、 r:気泡半径]
気泡の内圧がこのような圧力になると気泡が高い内部圧で維持されることになり、より強固な界面構造を形成することができるので、静置状態において安定な気泡を形成することができ、気体を高濃度で液体中に保持することができる。一方、一旦、気液混合液に衝撃が加えられると、内部圧の力により気泡の界面構造が崩壊して、気泡が崩壊して大量の気体が液体に溶解したり液体から放散したりするため、この発生した大量の気体を利用して飲料用水を利用することができるものである。飲料用水を構成する気液混合液中の気泡の内圧は、後述するように気液混合液中の気体総量と密度から計算した気体容量とを気体の状態方程式に当てはめることにより算出することができる。
【0050】
気体としては、特に限定されるものではなく、種々の気体を用いることが可能である。例えば、オゾン、塩素、二酸化塩素などの殺菌性の気体や、水素などの還元力のある気体を始め、二酸化炭素、空気、酸素、窒素、アルゴン、ヘリウム、メタン、プロパン、ブタンなどの気体を単一で又は混合して用いることができる。
【0051】
気体として好ましいものの一つは、殺菌性のある気体である。それにより、殺菌性の気体がナノサイズの気泡となって液体中に長期に保持されるので、殺菌性が高く持続した飲料用水にすることができるものである。そして、殺菌性の気体として人体に有害なものを用いてもよく、その場合には、圧力変化や温度変化や衝撃波や超音波などの外力を与えて気体を液体から分離して、液体を無害化して飲用可能な水にすることができる。殺菌性の気体としては、オゾン、塩素、二酸化塩素が好ましい。これらの気体であれば、殺菌力が高く、また、気液混合液を容易に生成して飲料用水を得ることができる。このように、薬剤を用いることなく、殺菌性と安全性とを高めた飲料用水を簡単に得ることができるものである。
【0052】
また、気体として二酸化炭素を用いることも好ましい。それにより、嗜好性の高い飲料用水にすることができるものである。すなわち、通常の炭酸水は飽和溶解濃度以上の二酸化炭素は泡となって液体からすぐに分離してしまい、発泡による嗜好性の向上が長期間持続しない。しかし、上記の気液混合液によれば多量の二酸化炭素がナノサイズの気泡となって安定に存在させることができるものである。そして、飲用した際に口の中などで外力が与えられて気泡が崩壊して二酸化炭素が発泡するので、嗜好性を長期間に亘って維持することができる。また、飲用前に外力を与えて通常の炭酸水の気体量を超える気体量で発泡させることができ、多量の気体を発泡させた飲料用水にすることで嗜好性を高めることができるものである。
【0053】
また、気体として水素を用いることも好ましい。その場合、還元力のある多量の水素が生体を活性化させることができるので、生体活性の高い飲料用水を得ることができるものである。すなわち、飲用した際に、還元力のある水素が生体に働きかけて体内の有害な酸化物質を還元して無害化するため、人体を治療したり健康にしたりすることができることができるものである。
【0054】
また、気体として酸素又は空気を用いることも好ましい。その場合、気泡中に含まれる多量の酸素が生体を活性化させることができるので、生体活性の高い飲料用水を得ることができるものである。すなわち、飲用した際に、体内に多量の酸素が供給されて酸素が生体に働きかけるため、人体を治療したり健康にしたりすることができるものである。
【0055】
上記のような飲料用水は、液体として純水を用いた場合、ゼータ電位がマイナスとなり、体積1cm3中に存在する気泡界面の面積は1.2m2程度となる。ゼータ電位は電気泳動法により測定できる。
【0056】
飲料用水は、そのまま飲料水として飲用してもよいし、外力を与えて気体を発生し発泡させて清涼飲料水(炭酸水)のような状態にして飲用してもよい。また、外力を与えて気体を発生させて液体から取り除いて気体の存在していない水にして飲用してもよい。また飲料用水を他の成分と混合するなどして、イオン水にしたり、清涼飲料水にしたり、茶やコーヒーなどの飲料にしたりすることができる。
【0057】
本発明の飲料用水の利用方法は、上記のような飲料用水に、圧力変化、温度変化、衝撃波、超音波といった外力を与えて液体中の気泡を崩壊させて、飲料用水中の気体を利用するものである。上述のように、飲料用水には多量の気体が気泡となって液体中に存在しており、この気泡は外力により崩壊したり合体したりする。そこで、飲料用水に圧力変化や温度変化や衝撃波や超音波といった外力を与えると、気泡が崩壊し気体が発生して液体に溶解したり液体から放出したりする。この発生する気体を利用するものである。例えば、殺菌性のある気体を用いると気泡を崩壊して気体を溶解させることにより殺菌力を高めることができる。また、殺菌性のある気体が有害な場合は気体を完全に放出して液体を無害化し、飲用可能な水にすることができる。また、二酸化炭素などの気体を用いて、飲用直前に外力を与えれば、通常の炭酸水をはるかに超える多量の気体を発泡させて、嗜好性を高めることができる。また、水素や酸素や空気などの気体を用いて、飲用直前に外力を与えて発泡させて飲用すれば、飲用後に体内でこれらの気体が液体から放出されて生体の器官に接触し、生体活性を高めることができる。このように外力を与えることによって得たいタイミングで飲料用水の機能性を高めて利用することができるものである。
【0058】
本発明の飲料用水の精製方法は、上記のような飲料用水に、圧力変化、温度変化、衝撃波及び超音波といった外力を与えて液体中の気泡を崩壊させて、飲料用水中の気体を分離するものである。気体として殺菌性のものを用いた場合、通常、殺菌性の気体は人体に有害なものが多く飲料用水をそのまま飲用すると危険である。ところが、飲料用水に圧力変化や温度変化や衝撃波や超音波といった外力を与えると、気泡が崩壊し気体が発生して液体から放出して分離する。この気体が発生し分離する現象を利用するものである。すなわち、飲料用水に外力を与えると、人体に有害な殺菌性の気体は気泡が崩壊することによって液体から放出して液体を無害化するので、飲料用水を飲用可能な水に精製することができるものである。なお、殺菌性の気体としては、特に限定されるものではないが、外力を与えて液体から容易に放出するものであることが好ましく、その観点から、水に溶解しにくいものであることがより好ましい。このように、本発明では、溶解性の低い、あるいは溶解性のない気体をナノサイズの気泡にすることにより安定に存在することができるものであり、殺菌性が高く安全な飲料用水を得ることができるものである。
【0059】
上記の飲料用水の利用方法、及び飲料用水の精製方法にあって、気泡を崩壊させる外力としては、圧力変化、温度変化、衝撃波及び超音波からなる群から選ばれる少なくとも1種のものを用いることが好ましい。それにより効率よく気体を発生させて気体を利用したり、気体を液体から分離して精製したりすることができるものである。
【0060】
圧力変化により外力を与える場合、加圧装置又は減圧装置に飲料用水を入れることにより飲料用水にかかる圧力を常圧よりも高くしたり低くしたりして衝撃を与えることができる。すなわち、圧力が変化された気液混合液は内部エネルギーの増加によって界面構造が崩れて気泡が崩壊したり、気泡が激しく衝突して気泡が合体して大きなマイクロサイズ以上の気泡になったりして、気体が発生する。そしてこの気体が液体に溶解し、また気体が液体から放出するのである。圧力変化としては、液体の圧力を+0.01MPa以上の圧力にすること、又は−0.01MPa以下の圧力にすること、つまり液体圧力と気泡内圧との圧力差を絶対値で0.01MPa以上にすることが好ましく、例えば、これらの圧力を交互に変動させたりして外力を与えることができる。
【0061】
温度変化により外力を与える場合、ヒーターなどの加温手段を用い、加温手段をオンにして常温常圧で貯留された飲料用水の温度を上昇させて気泡を崩壊させることができる。すなわち、温度が上昇された気液混合液は内部エネルギーの増加によって界面構造が崩れて気泡が崩壊したり、気泡が激しく衝突して気泡が合体して大きなマイクロサイズ以上の気泡になったりして、気体が発生する。そしてこの気体が液体に溶解し、また気体が液体から放出するものである。加温する温度としては、気体発生の速度に合わせて適宜に設定し得るものであるが、例えば、急激に気泡を崩壊させて気体を発生させる場合は、飲料用水を10〜30℃程度以上に上昇するように加温するようにすることができ、徐々に気泡を崩壊させて気体を発生させる場合は、飲料用水を1〜10℃程度以上に上昇するように加温するようにすることができる。
【0062】
また、衝撃波により外力を与えることもできる。衝撃波としては、振動や電波、マイクロ波などを用いることができ、例えば衝撃波としてマイクロ波を用いる場合、マイクロ波発生装置を用い、マイクロ波発振子から飲料用水にマイクロ波の振動を与えることができる。このとき、振動波を与えられた気液混合液の内部エネルギーが増加して界面構造が崩れて気泡が崩壊したり、気泡が激しく衝突して気泡が合体して大きなマイクロサイズ以上の気泡になったりして、気体が発生する。そしてこの気体が液体に溶解し、また、気体が液体から放出するものである。マイクロ波の周波数としては、周波数915kHz、2.4〜2.5GHz、5.7〜5.9GHzのいずれかであることが好ましい。周波数の範囲がこの範囲を外れると気泡を崩壊する効果が低下するおそれがある。なお、本発明において衝撃波とは、気液混合液が衝突したときの衝撃で発生する振動波などを含む概念である。
【0063】
また、超音波により外力を与える場合、超音波発生装置を用い、超音波振動子から飲料用水に超音波振動を与えることができる。このとき、振動された気液混合液の内部エネルギーが増加して界面構造が崩れて気泡が崩壊したり、気泡が激しく衝突して気泡が合体して大きなマイクロサイズ以上の気泡になったりして、気体が発生する。そしてこの気体が液体に溶解し、また、気体が液体から放出するものである。超音波の周波数としては、周波数16KHz〜2.4GHzであることが好ましい。周波数の範囲がこれより大きくても小さくても気泡を崩壊する効果が低下するおそれがある。
【0064】
このように、圧力変化、温度変化、衝撃波、超音波といった外力を用いて飲料用水中の気泡を崩壊させることによって、気泡として存在している大量の気体をこれらの手段で瞬時に多量に液体に溶解させたり、液体から放出させたりすることができ、簡単に効率よく気体を発生させて飲料用水を利用したり精製したりすることができるものである。
【0065】
次に、上記のような飲料用水を生成する飲料用水生成装置について説明する。
【0066】
図1は、飲料用水生成装置の実施の形態の一例を示す概略図である。飲料用水生成装置としては、液体中に気体がナノサイズの気泡になって存在する気液混合液を生成する気液混合液生成装置を用いる。
【0067】
図1の気液混合液生成装置は、液体を圧送して連続的に気液混合液を製造するものであり、水道配管などの水供給源から水を取り入れる入水部13と、入水部13から入った液体に気体を供給する気体供給部2と、気体が供給された液体を加圧する加圧部1と、液体中の気体をナノサイズの気泡にして気液混合液を生成する気液混合部3と、気液混合液からナノサイズを超える大きさの気泡を分離する気体分離部4と、加圧状態の気液混合液をナノサイズの気泡を崩壊させることなく大気圧まで減圧する減圧部5と、減圧された気液混合液を吐出する吐出部7と備えており、各部は流路6に接続して設けられている。
【0068】
流路6は、飲料用水生成装置の各部同士や各部と外部とを接続し、液体を上流から下流に流すものであり、例えばパイプなどの管体で構成される。加圧部1と気液混合部3と気体分離部4と減圧部5とは、上側に向かって径が小さくなるテーパ状の円筒型の筐体12にこの順で下側から上側に配置して収容されている。流路6は、筐体12より上流側の流路6a、筐体12内の流路6b、筐体12より下流側の流路6cにて構成されている。流路6bは筐体12全体として上方向に向かって液体が流れるように形成されている。
【0069】
入水部13は、気液混合液生成装置の外部にある水供給源から装置の内部に水を入れるためのものであり、図1の形態では水供給源と接続する流路6aの管体の入口として構成されている。この入水部13には、開閉して水量や水圧を調節できる調節弁などを設けてもよい。
【0070】
気体供給部2は、流路6(流路6a又は6b)に接続されることにより液体に気体を供給して注入するものであり、例えば気体として空気を注入する場合には、一端を大気中に開放させた管体の他端を流路6に接続して気体供給部2を形成することができる。あるいは気体として、オゾン、塩素、二酸化塩素、水素、二酸化炭素、酸素、窒素、アルゴン等を供給する場合には、これらの気体を封入したボンベなどを流路6に接続して気体供給部2を形成することができる。また、オゾンを供給する場合は、気体供給部2をオゾン発生機に接続し、空気から生成したオゾンを供給するようにしてもよい。流路6への気体供給部2の接続位置は、気液混合部3よりも上流側の位置であればよい。この装置のように、加圧部1と気液混合部3とが同体となってポンプ11で構成されている場合は加圧部1より上流側の流路6に接続することになる。また、加圧部1と気液混合部3とが別体で構成されている場合は、加圧部1より上流側の流路6に接続するようにしても、あるいは加圧部1より下流側の流路6に接続するようにしてもいずれでもよい。
【0071】
加圧部1は液体を圧送するものであり、例えば、この装置のように、水供給源から送られた水を加圧して下流側に送り出すポンプ11などで構成することができる。
【0072】
気液混合部3は圧送された液体とこの液体に注入された気体とを混合し、加圧により気体を微細な気泡にして液体中に分散・混合させるものである。気液混合部3としては、流路の断面積変化などで撹拌力を与えるもので構成することもできるし、また液体が撹拌された状態で流路6を流れているのであれば単に流路6で構成することもできる。図1の形態では、加圧部1と気液混合部3とが兼用されてポンプ11で構成されて設けられてある。気液の加圧及び混合をポンプ11により行った場合、液体を急激に加圧・混合することができるので、気泡界面の構造が強固な気液混合液を確実に生成することができる。気液混合部3内においては液体と気体が高圧条件で混合される。それにより、気泡の周囲に強固な界面構造が形成され、この強固な界面構造の殻で気泡を覆うことができ、気体を微細な気泡として安定化することができるものである。
【0073】
上記のような加圧部1及び気液混合部3を構成するポンプ11により、気体が注入された液体に急激に強力な圧力が加わって、液体中に存在している気泡は微細なナノサイズの気泡へと細分されて液体に分散される。また、急激な圧力変化により高圧になった気泡の界面には液体分子により強固な界面構造が形成される。その際、加圧速度ΔP1/t(ΔP1:圧力増加量、t:時間)が0.17MPa/sec以上になることにより、気泡を細分化させて微細なナノサイズの気泡を生成することができ、気液混合部3から気体分離部4に送り出される際の気液混合液の圧力が0.15MPa以上になることにより、気泡の界面が強固な構造となったナノサイズの気泡を生成することができるものである。実質的な加圧条件を考慮すると、加圧速度ΔP1/tの上限は167MPa/secであり、加圧された気液混合液の圧力の上限は50MPaである。
【0074】
図2は、ポンプ11の具体的な形態の一例を示す要部の概略図である。このポンプ11aは回転体21の回転により液体を加圧するものであり、回転体21に取り付けられた回転翼22が連続的に回転してポンプ入口26からポンプ流路室23を介してポンプ出口27への流れ方向へ液体を送り出し加圧するものである。図2において白抜き矢印は液体の流れ方向を示し、実線矢印は回転体21の回転方向を示している。このポンプ11aでは4枚の回転翼22が備えられている。また回転体21の回転軸25は、円筒状に形成されたポンプ壁24の円筒中心よりもポンプ出口27側に偏って配置され、偏心軸となって設けられている。そして、回転軸25の偏心によりポンプ流路室23の第二流路室23bの容積は、第一流路室23aの容積よりも小さく形成されており、液体の流れ方向に沿ってポンプ流路室23の容積が順次小さくなっている。
【0075】
そして、ポンプ流路室23に送り出された液体は、回転翼22で送り出され加圧され、急激な圧力変化により大きな気泡BBが細分化されて微細なナノサイズの気泡BNが生成される。すなわち、回転体21の回転と共に第一流路室23aから第二流路室23bに送られた液体は、ポンプ流路室23の容積が小さくなることにより急速に圧縮されて加圧され、この加圧力によりナノサイズの気泡BNが生成される。また、図示のポンプ11aでは、ポンプ壁24の内面と回転翼22の先端部との間を液体が通過するときに剪断力が与えられて、液体をクリアランスで剪断しながら加圧する。このとき、液体に混合されている気体(大きな気泡BB)は液体に与えられた剪断力によって剪断されて、より微細なナノサイズの気泡(BN)になる。ここで、ポンプ壁24の内面と回転翼22の先端部との間の最も狭くなる部分の距離、すなわちクリアランス距離LCは、5μm〜2mmであることが好ましい。このように、回転体21を用いたポンプ11aによれば、回転体21で急激に強い力で加圧すると共に液体に注入された気体を剪断してナノサイズの気泡を形成することができるので、気泡界面の構造が強固な気液混合液をより確実に生成することができるものである。
【0076】
ポンプ11の回転体21の回転数は100rpm以上であることが好ましい。このとき、0.3秒に1/2回転以上となる。このような回転数となることにより、飽和溶解濃度以上の気体を液体に注入させて水素結合距離が短縮したナノサイズの気泡を確実に生成することができるものである。
【0077】
加圧部1及び気液混合部3による加圧は、加圧部1又は気液混合部3を複数設けて、複数回加圧することができる。液体を送りながら複数回加圧することにより、液体を強力に加圧して、気泡界面の構造が強固な気液混合液を生成することができるものである。具体的には、加圧部1を図1のようにポンプ11で構成すると共に、気液混合部3を一つ又は二つ以上のポンプ11又はベンチュリ管14で構成することができるものである。
【0078】
ここで、図3(a)のように、気体供給部2と流路6aとの接続位置に、負圧をかけて気体を液体に注入するベンチュリ管14を設けることもできる。この場合、ベンチュリ管14を気液混合部3(又は気液混合部3の一部)として機能させて気液を混合することができる。このようにベンチュリ管14を用いることにより、簡単な構成でナノサイズの気泡を形成することができ、装置を簡単なものにすることができるものである。図示のベンチュリ管14は、流入側から流出側に向かって断面積が徐々に小さくなる流入側管部14aと、ベンチュリ管14内において断面積が最も小さくなる絞り管部14bと、流入側から流出側に向かって断面積が徐々に大きくなる流出側管部14cとから構成されている。絞り管部14bに気体供給部2の一端が接続してあり、この気体供給部2から供給された気体は、絞り管部14b内において液体に注入されるようになっている。
【0079】
また、図3(b)のように、気体供給部2と気液混合部3(又は気液混合部3の一部)とを兼用して電気分解手段15で構成し、電気分解して発生する気体を水に供給しナノサイズの気泡にして混合するようにしてもよい。この場合、液体に注入される気体は水の電気分解により発生する水素と酸素になる。そして、電気分解手段15によって気体が発生し供給された液体は、ポンプ11の方に送られて確実にナノサイズの気泡になる。このように電気分解手段15を用いることにより、簡単な構成でナノサイズの気泡を形成することができ、装置を簡単なものにすることができるものである。図示の電気分解手段15では流路6aから送られた液体が電気分解手段15の電気分解槽に貯留され、陽極(+)と陰極(−)とによって電圧が印加されて水が電気分解するようになっている。電気分解により気体が供給された水は流路6aを通りポンプ11の方に送られる。
【0080】
気体分離部4は上記のようにして気体が混合された液体から、ナノサイズを超える気泡、すなわち直径1μmを超える気泡(マイクロサイズ以上の気泡)を取り除くものである。上記のようにしてナノサイズの気泡が形成された液体にはマイクロサイズ以上の気体も一緒に混合して存在している。しかし、マイクロサイズ以上の気泡は安定に液体中に存在することができないのに加え、液体中に存在しているとナノサイズの気泡を合体させたり崩壊させたりしてナノサイズの気泡をも不安定にしてしまう。そこで、マイクロサイズ以上の気泡を気液混合液から取り除いて気泡をナノサイズのものだけにしてナノサイズの気泡を安定化させるものである。
【0081】
気体分離部4は、気泡をそれ自身の浮力で上昇させて取り除くようにした管体などで構成することができる。取り除かれた気泡は気体となって上部に集積するので、この除去された気体を気体除去部8により取り除くことができる。直径1μmを超えるサイズの気泡(マイクロサイズの気泡)は、浮力により上昇するので、このような比較的大きい気泡が取り除かれて微細な気泡であるナノサイズの気泡が液体中に存在することにより、界面構造が強固で安定な気液混合液を得ることができるものである。
【0082】
気体分離部4としては、具体的には、図4のような構成にすることができる。(a)は、地表面に略水平(重力方向に対して略垂直な平面上)になるように形成し、液体Lq中の気泡Bをその浮力によって液面まで上昇させて気泡Bを取り除くようにした管体の例を示している。また、(b)は、形状が正面視逆L字型になるように形成し、液体Lqの流れ方向を水平方向から下方向(重力方向と略同方向)に変化させて液体Lq中の気泡Bをその浮力によって液面まで上昇させて気泡Bを取り除くようにした管体の例を示している。また、(c)は、液体Lqの流れ方向を下方向(重力方向と略同方向)にして液体Lq中の気泡Bをその浮力によって液面まで上昇させて気泡Bを取り除くようにした管体の例を示している。気体分離部4によって分離された気泡は気体となり、管体などで構成された気体除去部8から外部に排出される。
【0083】
減圧部5は気体が混合された液体の圧力を、大きな気泡を発生させることなく徐々に大気圧まで減圧させるものである。上記のようにして加圧により気体と混合された液体は、高圧な状態にありそのまま大気圧下にある外部に排出されると、急激な圧力低下によって、気液混合液中の気泡が合体して気体になって液体から排出されるおそれがあり、またキャビテーションが発生することがある。そこで、減圧部5を設け、加圧された状態の気液混合液を送り出す際に、減圧部5で大気圧まで徐々に減圧をした後に吐出するようにしているものである。減圧部5は、気体が混合された液体を送りながら配管全域での減圧速度ΔP2/t(ΔP2:減圧量、t:時間)の上限を2000MPa/sec以下にして減圧するように構成されている。それにより、強固な気泡界面の構造を維持させたまま、ナノサイズの気泡を消滅させたり合体させたりすることなく気液混合液を取り出すことができるものである。
【0084】
減圧部5としては、図5のような構成にすることができ、具体的には、(a)のように流路断面積が段階的に徐々に小さくなる流路6や、(b)のように流路断面積が連続的に徐々に小さくなる流路6や、(c)のように加圧された液体が流路6内を流れる圧力損失により高圧状態(P1)の気液混合液の圧力を徐々に低下させて(P2、P3、・・・)大気圧(Pn)まで減圧するように流路長さ(L)が調整された流路6や、(d)のように流路6に設けられた複数の圧力調整弁9などにより構成することができる。
【0085】
例えば図5(a)又は(b)のような減圧部5を用いた場合、減圧部5よりも上流側の流路6を内径20mmにし、減圧部5を、流路長さが約1cm〜10mで、内径が20mmから4mmにまで徐々に小さくなることにより流路断面積が小さくなる管体により構成することができる。なお、減圧部5は、入口内径/出口内径=2〜10程度に設定したり、1cmあたりの内径減少値を1〜20mm程度に設定したりすることができる。このとき、減圧部5に気液混合液を流速4×10−6m/s以上で送ると、減圧速度2000MPa/sec以下で、ナノサイズの気泡を消滅させることなく1.0MPa減圧することができ、気液混合液を大気圧にまで減圧することができるものである。
【0086】
減圧された気液混合液は吐出部7から外部に吐出される。なお、その際、図6のように、流路6bと流路6cとの間に、加圧部1における液体の押し込み圧を十分に確保するために延長流路10を設けることもできる。すなわち、減圧部5を含めた全体の圧力損失を算出し、加圧部1からの押し込み圧によって気液混合部3内で液体と気体を加圧するのに必要な圧力と、全体の圧力損失との差を算出し、さらにこの差の圧力損失が生じるように流路長さを調整した延長流路10を流路6に付加するようにしてもよい。押し込み圧の確保には絞り部などを設けることも考えられるが、絞り部などで押し込み圧を調整すると急激な圧力変化により気泡が崩壊するおそれがある。しかし、このように延長流路10を設ければ気泡を安定化させたまま気液混合液を吐出することができるものである。
【0087】
上記のように構成された気液混合液生成装置にあっては、入水部13から入った液体に、気体供給部2により気体を供給して注入する。そして、気体が注入された液体を、ポンプ11で構成された加圧部1及び気液混合部3によって0.17MPa/sec以上の加圧速度ΔP1/t(ΔP1:圧力増加量、t:時間)で加圧し、液体の圧力を0.15MPa以上にする。すなわち、気液混合部3から気体分離部4へ送り出される際の液体の圧力は0.15MPa以上になっている。その後、気体分離部4で気液混合液中のナノサイズを越える気泡を取り除いた後、該液体を減圧部5及び下流側の流路6に送りながら最高減圧速度2000MPa/sec以下の減圧速度ΔP2/t(ΔP2:減圧量、t:時間)で徐々に大気圧まで減圧する。それにより、ナノサイズの気泡が安定に存在した気液混合液を連続的に生成することができ、この気液混合液を飲料用水として利用することができるものである。
【0088】
なお、気液混合部3よりも下流側の流路6は内径2〜50mm程度の管体などに形成することができる。それにより、比較的太い流路断面積で気液混合液を吐出することができ、細路により流路6を構成する場合のような配管の詰まりを防止して、気液混合液を利用しやすくして、飲料用水を簡単に得ることができる。
【0089】
そして、吐出部7から吐出された飲料用水は、容器に入れるなどして、そのまま飲用したり、貯蔵した後に飲用したりすることができ、また、外力を与えて気体を発生させたり分離したりして飲用したりすることができる。また、この飲料用水を用いて清涼飲料水やお茶やコーヒーを作製してもよい。
【0090】
図7は、飲料用水生成装置の実施の形態の他の一例を示す概略図である。この装置は図1の装置の構成に加えて、吐出部7から吐出される飲料用水を受ける容器16を備えており、容器16の下側には、容器16内の液体に与える外力を調節する外力制御部17が設けられている。そして筐体12と容器16は、円盤状の基板18の上に載置されている。
【0091】
容器16は吐出部7から吐出された飲料用水を貯蔵するものである。図示の形態では容器16として上側を開放口としたビーカー状のものが示されているが、容器16は、貯留タンクであってもよいし、飲料用のコップであってもよい。外力制御部17は、温度を制御する温度制御部、圧力変化を制御する圧力制御部、衝撃波を照射する衝撃波制御部、又は超音波を照射する超音波制御部などによって構成され、飲料用水を使用する直前にスイッチをオンして容器16に貯蔵された液体に外力を与えて、飲料用水に含まれているナノサイズの気泡を崩壊させて、気体を液体に溶解したり、気体を液体から分離したりするものである。
【0092】
例えば、外力制御部17としてヒーターなどの温度制御部を用いた場合は、容器16に常温で貯蔵している飲料用水を温度制御部をオンすることにより加温し、飲料用水の温度を10〜30℃以上にするなどして飲料用水中のナノサイズの気泡を崩壊して、気体を液体に溶解したり、気体を発泡させたり、気体を分離したりする。気体を液体に溶解させれば、殺菌性を発揮したりすることができ、また、気体を発泡させれば、嗜好性の高い飲料用水にすることができ、また、気体を分離させれば、通常の水に戻り、その水を飲料用等に使用することができる。
【0093】
このように、気液混合液は所望量又は容器16の容量分生成されて容器16に貯蔵され、必要なときに外力が与えられた後、容器16から取り出されて飲用等されるものであり、図示の装置は作り置きタイプの飲用水生成装置として利用できるものである。圧力制御や温度制御や衝撃波や超音波などの外力の条件としては、上記で説明した飲用用水の利用や精製と同様の条件にすることができる。
【0094】
この装置にあっては、必要な量だけ飲料用水を生成しておき、使用する直前に外力を与えてナノサイズの気泡を崩壊させた後、飲用のために取り出せばよいので、無駄なく飲料用水を生成することができ、また効率よく殺菌性や嗜好性や生体活性などの機能性を発揮させることができるものである。
【0095】
なお、図示の形態では、外力制御部17は容器16に外側(下側)に設けられて容器16の外側から非接触で容器16内部の飲用量水に外力を与えるようにしてあるが、外力制御部17を容器16の内部に飲料用水に接触するようにして設けてもよい。
【0096】
また、外力制御部17による外力の付与は、連続的であってもよいし、断続的であってもよい。連続的に外力を与える場合は、飲料用水中の大量の気体を一気に発生させて機能性を瞬時に高めることができる。一方、断続的に外力を与える場合は、気体を徐々に発生させ、機能性を持続させることができる。
【0097】
図8は、飲料用水生成装置の実施の形態の他の一例を示す概略図である。この装置は図1の装置の構成に加えて、吐出部7から吐出された飲料用水を受ける容器16を備えており、さらに吐出部7と減圧部5との間の流路6に気液混合液に外力を与える外力制御部17が設けられてある。そして筐体12と容器16は、円盤状の基板18の上に取り付けられている。
【0098】
外力制御部17は、温度を制御する温度制御部、圧力変化を制御する圧力制御部、衝撃波を照射する衝撃波制御部、又は超音波を照射する超音波制御部などによって構成され、減圧部から送られてくる飲料用水にスイッチをオンして外力を与えて、飲料用水に含まれているナノサイズの気泡を崩壊させて、気体を液体に溶解したり、気体を液体から分離して精製したりするものである。
【0099】
例えば、外力制御部17としてヒーターなどの温度制御部を用いた場合は、常温で生成した飲料用水を温度制御部をオンすることにより加温し、飲料用水の温度を10〜30℃以上にするなどして飲料用水中のナノサイズの気泡を崩壊して、気体を液体に溶解したり、気体を発泡させたり、気体を分離したりする。気体を液体に溶解させれば、殺菌性を発揮したりすることができ、また、気体を発泡させれば、嗜好性の高い飲料用水にすることができ、また、気体を分離させれば、通常の水に戻り、その水を飲料用等に使用することができる。
【0100】
そして、外力が与えられてナノサイズの気泡が崩壊した飲料用水は吐出7から吐出され、容器16に溜められる。容器16に溜められた飲料用水は、ナノサイズの気泡の崩壊によって機能性が高められており、そのまま飲用等に使用することができる。圧力制御や温度制御や衝撃波や超音波などの外力の条件としては、上記で説明した飲料用水の精製と同様の条件にすることができる。
【0101】
この装置にあっては、気液混合液である飲料用水を生成した後、すぐにナノサイズの気泡を崩壊させて飲用等に使用することができ、効率よく殺菌性や嗜好性や生体活性などの機能性を発揮させることができるものである。
【0102】
図9は、飲料用水生成装置の実施の形態の他の一例を示す概略図である。この装置は図1の装置の構成に加えて、入水部13と気体供給部2との間の流路6に液体の前処理を行う前処理部19が設けられている。
【0103】
前処理部19は、液体の温度を冷却する冷却部、異物など液体中の不純物を取り除く浄化フィルター、又は液体中に含まれる気体を取り除く脱気部などによって構成され、気液混合部3において気体と液体とを混合しやすくするために、入水部13から送られてくる水に前処理を行うものである。この前処理部19で前処理を行うことにより、気体と液体の混合性を高めて、より多くのナノサイズの気泡を生成することができるものであり、高濃度に気体が混合した気液混合液を生成して飲料用水の機能性をさらに向上することができるものである。
【0104】
例えば、前処理部19として冷却部を用いた場合は、入水部15から送られた液体は冷却部で冷却され、冷却された状態のまま気液混合液が生成される。冷却部は、例えば、流路6に冷却熱交換器を巻き付けて取り付けるなどして形成することができる。冷却状態の水を用いて液体と気体の混合を行うと、ナノサイズの気泡が形成され、そのナノサイズの気泡は液体が冷却されているために安定化されて崩壊することなく気体分離部4及び減圧部5に送られることになり、ナノサイズの気泡を形成する気体量を高めて高濃度の気液混合液を生成することができる。そして、飲料用水は常温よりも温度が低い状態で生成される。この冷却状態の飲料用水を吐出部7から吐出して飲用等に利用する。冷却温度としては、液体の温度が常温以下となるようにする程度であればよく、例えば、0〜25℃にすることができる。吐出された飲料用水はそのまま飲用等に使用してもよいし、冷却状態を保つように冷却して貯留してもよい。冷却したまま貯留すると、気泡を長期に安定に保持することができる。そして、外気温や飲用時の口中の温度により気液混合液の温度が上昇して液中の気泡が崩壊して、気体が溶解したり発泡したりして、嗜好性や生体活性などの機能性を高めることができるものである。
【0105】
また、前処理部19として浄化フィルターを用いた場合は、入水部13から送られた液体は浄化フィルターでゴミなどの異物が取り除かれて浄化され、浄化された水で気液混合液が生成される。浄化フィルターは、例えば、流路6の内部に網目状(メッシュ状)のフィルターを取り付けたり、樹脂等が充填されたフィルター管を流路6に設けたりして液体を通すものなどによって形成することができる。具体的には、中空糸膜フィルターや不織布フィルターや糸巻きフィルターなどを利用することができる。そして、この浄化された水で気液混合液を生成することによって、異物などの不純物がない清浄な液体が気体と混合されるので、気体と液体との混合性が高まり、より多くのナノサイズの気泡を形成することができ、高濃度に気体が混合された気液混合液を生成することができるものである。そして、高濃度の気体がナノサイズの気泡となって飲料用水に安定に存在するので、殺菌性や嗜好性や生体活性などの機能性を高めることができるものである。
【0106】
また、前処理部19として脱気部を用いた場合は、入水部13から送られた液体は脱気部で液体内の気体が取り除かれて気体のない状態にされ、気体が含有されていない状態の水で気液混合液が生成される。脱気部は、例えば、流路6の内部に向かって超音波を照射する超音波装置や、急激に液体を減圧して内部の気体を放出させる減圧装置などによって形成することができる。また、中空糸脱気膜などの脱気フィルターを用いて脱気してもよい。そして、気体が取り除かれた水で気液混合液を生成することによって、気体が含有されておらず気体が欠乏状態となった液体が気体と混合されるので、気体と液体との混合性が高まり、より多くのナノサイズの気泡を形成することができ、高濃度に気体が混合された気液混合液を生成することができるものである。そして、高濃度の気体がナノサイズの気泡となって飲料用水に安定に存在するので、殺菌性や嗜好性や生体活性などの機能性を高めることができるものである。
【0107】
そして、前処理部19は、上記の冷却部と浄化フィルターと脱気部とを併用して構成することができる。この場合、単独の処理方法で前処理部19を構成した場合に比べてさらに気液の混合性が高まり、高濃度の気体を液体に混合させることがより可能になるものである。具体的には、例えば、中空糸膜フィルターなどの脱気浄化フィルターを用いれば浄化フィルターと脱気部とを兼用することができる。
【0108】
図10は、飲料用水として生成される気液混合液が、安定化されるメカニズムを説明する概念説明図である。図示のように、気泡Bと液体Lqの界面には水素結合距離が通常よりも短い氷やハイドレートのような強固な水分子の結合で境膜構造(結晶構造体)の保護膜Mが形成されており、気液相互の物質移動が阻止されて気泡が安定な状態になったものと考えられる。そして、気液混合液内の気泡(ナノバブル)の内圧は、ヤングラプラスの式から求められる圧力以上となっている。このように気泡界面の水素結合距離が短く、気泡の内圧が高くなることによって、気泡が安定した気液混合液となるものである。そして、気泡の内圧が高いためにより多くの気体を気泡中に入れることが可能となり、高濃度の気体が混合した気液混合液を得ることができるものである。
【0109】
図11は、気液混合液中の気泡に外力が与えられて崩壊するモデルを説明する概念説明図である。ナノサイズの気泡Bは、気液混合液中では図10のように安定に存在しているが、(a)のように温度変化、圧力変化、衝撃波、超音波等により外力が衝撃として与えられると、気泡界面での構造が崩されて、(b)のように気泡が崩壊する。すなわち、気泡は強固な水素結合の構造により安定して存在しているが、内圧が高くなっており、外力を与えると、高くなった内圧によって気泡の界面構造での均衡が簡単に崩れ、気泡が容易に崩壊するので、人為的に気泡の崩壊を制御できるのである。また、気泡が崩壊し気体分子が液中に放出されることになり、放出された気体分子は液体に溶解しようとするが、液体には飽和溶解濃度で気体が溶解しているため、溶解できない気体は、再度、気泡を形成する。このとき、多くの気泡はナノサイズになるのではなく気泡の合体を起して大きな気泡となって、発泡する現象が生じ、気体が液体から分離するのである。
【0110】
このようにして、気液混合液の状態になることにより、多くの気体を含んだ水を飲料用水として利用することができるものである。そして、例えば、殺菌性の気体を安定なナノサイズの気泡に封入し、長期に保持して殺菌性を持続させ、必要な時に液体から殺菌性の気体を分離して、飲料用の水として利用することができるものである。
【実施例】
【0111】
以下、本発明を実施例により説明する。
【0112】
〔実施例1〕
[飲料用水の生成]
図1の飲料用水生成装置(気液混合液生成装置)を用い、気体として後述の各種の気体を用い、液体として純水を用いてナノサイズの気泡を含有す飲料用水を生成した。
【0113】
気液混合液生成装置としては、加圧部1と気液混合部3とがポンプ11で兼用されて構成された、図1の構成のものを用いた。ポンプ11としては回転体21により加圧する図2のようなポンプ11aを用いた。
【0114】
気体と液体の比(液体に対する気体の注入量)は、容量比(体積比)で1:1に設定した。また、ポンプ11の回転体21の回転数は1700rpmに設定した。この条件により大気圧(0.1MPa)の水に気体が注入された後、加圧速度ΔP1/t=28.3MPa/secで加圧されて、気液混合部3から気体分離部4に送り出される際の気液混合液の圧力が0.6MPaになった。なお、このような条件により、飽和溶解濃度を超えて気体が液体に注入されて水素結合距離が短くなり強固な気泡界面の構造が形成されるものと考えられる。この条件(加圧条件)は現時点における最良の条件であると考えられる。
【0115】
また、減圧部5よりも上流側の流路6を内径20mmのものにした。減圧部5としては図4(a)のような、3段階で内径が徐々に小さくなるものを用い、具体的には、内径が14mm、8mm、4mmで長さが各約3.3mm(減圧部5の全長として約1cm)の三つの流路管部からなるものを用いた。また、減圧部5よりも下流側の流路6及び延長流路10として、内径4mm(外径6mm)のホースを用い、下流側の流路6と延長流路10とを合わせた長さが2mとなるように設定した。この条件により、減圧部5において、最高減圧速度60MPa/sec、時間0.0025秒で気液混合液を減圧し、さらに、下流側の流路6及び延長流路10において、1MPa/sec、時間0.5秒で気液混合液を減圧し、ホース先端部から、大気圧(0.1MPa)まで減圧された気液混合液が得られた。なお、このような条件により、飽和溶解濃度を超えて気体が液体に注入されると共に水素結合距離が短くなり気泡界面の構造が強固になった気液混合液を安定して生成することができるものと考えられる。この条件(減圧条件)は現時点における最良の条件であると考えられる。
【0116】
[水素結合の距離]
図12は、気体として窒素を用い、液体として純水を用いた気液混合液と、窒素が純水に飽和溶解濃度で溶解した窒素飽和水との赤外吸収スペクトルとの差分を示すグラフである。水のOH収縮振動による赤外吸収帯としては通常3400cm−1付近に吸収極大があることが知られているが、グラフに示されるように気液混合液はOH収縮振動の吸収極大が3200cm−1付近にずれている。吸収極大が3400cm−1にある場合、水素結合の距離は0.285nmである。一方、吸収極大が3200cm−1にある場合、水素結合の距離は0.277nmであることが知られており、常温常圧下における通常の水素結合の距離よりも短くなり構造化された氷またはハイドレートに近い水と結論づけられた。窒素の代わりにオゾンや塩素や二酸化塩素などの殺菌性の気体や、空気、酸素、水素、二酸化炭素などの気体を用いても同様の構造が得られるものと考えられ、これらの気液混合液を飲料用水として使用することができるものである。
【0117】
[気体量]
液体として純水を、気体として各種の気体を用い、気液混合液中に気泡として存在する気体量を次の方法により測定した。
(1)25℃、導電率0.1μS/cmの純水に、各種の気体を混合させ気液混合液を得た。
(2)直径1μm以上の大きな気泡を水から分離するために、気液混合液を25℃で1日静置した。なお、静置時間について、ストークスの法則から
気泡上昇速度: V=d2×g/(18×γ)
(d:気泡直径、g:重力加速度、γ:動粘性係数)
の式が成立し、この式より1μmの気泡の上昇速度は約2.4×10−4m/sであるので、例えば静置時の容器の水深が50mmの場合、1日静置すれば気泡を除去することができる。
(3)最小測定値1mgの分析天秤で気液混合液の質量を測定した。
(4)ガス透過度及び透湿度の低いPE+ナイロン樹脂製のビニル袋に気液混合液とスタラーの撹拌子を入れ、空気を追い出して袋に空気が無い状態でシーラーにてビニル袋を密封した。
(5)密封直後に、分析天秤で気液混合液が封入されたビニル袋の質量を測定した。
(6)ホットスタラーにより25℃の気液混合液が密封されたビニル袋を45℃に昇温して気液混合液を約5時間撹拌した。この昇温と撹拌により、微細気泡や、45℃の飽和溶解濃度以上で溶解していた気体が気液混合液から分離されビニル袋の上部に集まった。
(7)室温25℃の条件でホットスタラーの設定温度を25℃にし、25℃の飽和溶解度の液体になるよう数時間撹拌を行った。
(8)分析天秤で、気体と液体が封入されたビニル袋の質量を測定した。
(9)計3回の質量測定から気液混合液の質量と、昇温および撹拌によって気液混合液から分離された気体による浮力によって生じる液体の質量変化量とを得た。質量変化量は、気液混合液から分離された気体容積と同容積の空気の質量と同じであり、この値から分離された気体の容量と質量を算出することができる。
【0118】
図13は、このようにして測定された気体容量を示すグラフである。各棒グラフの下部領域は、測定された気泡として存在していた気体の量であり、上部領域はヘンリー則に従う気体の飽和溶解量である。グラフに示すように、例えば水素と水を用いた気液混合液の場合、25℃の純水1Lに水素が、飽和溶解量として17.6mL溶解し、528mLの気体が微細な気泡として存在することが確認された。すなわち、気液混合液に含有する気体量は過飽和溶解量の30倍であった。また同様に、過飽和溶解量に対して気液混合液に含有する気体量は、窒素では36倍、アルゴンでは16倍、二酸化炭素では1.9倍であった。このように、気液混合液は飽和溶解濃度以上の高濃度で気体を液体中に保持することが可能であり、この高濃度で気体が含有された気液混合液を飲料用水として利用することができるものである。
【0119】
[気泡のサイズ]
上記と同様にして製造した気液混合液を瞬間凍結し、真空中においてカッターで割断し、その割断面にメタン・エチレンを流し放電させ、凹凸を転写した炭化水素膜(レプリカ膜)を作製した。このレプリカ膜に導電性オスミウム薄膜を張り、十分乾燥させて、走査型電子顕微鏡(SEM)で観測した。
【0120】
図14は、窒素と純水の気液混合液について、SEMにより観測された写真の一例である。同様に写真観察することにより、気体として窒素、水素、アルゴン、二酸化炭素を用いた場合、いずれも気液混合液の気泡サイズは、直径の分布ピークが100nmであることが確認された。また、気体としてオゾン、塩素、二酸化塩素、酸素、空気を用いても同様の構造か観測されると考えられる。なお、上記の気体と純水の気液混合液の気泡はレーザーを用いた動的散乱法等の粒子径分布測定装置では正確な検知ができなかった。このように、飲料用水は、気体がナノサイズの気泡となって存在する気液混合液の構造となっている。
【0121】
[気泡の内圧]
気液混合液中の気体総量から気泡内部の圧力を算出した。表1は、窒素又はアルゴンと25℃の純水との気液混合液における、気体総量と、気体総量から算出した気泡の内圧を示している。
【0122】
気泡における気体の内部圧力は次の方法で算出される。
気体の状態方程式は、
PV/T=(const)
(P:内部圧力、V:容積、T:内部温度)
で表され、Tが一定の場合、特に
PV=(const)
で表される。
【0123】
そして、気液混合液の密度から気液混合液中の気泡の容積が計算でき、上式から、
大気圧 × 気体総体積量 = 気泡の内圧 × 液中の気体総体積量
の関係が成立し、この関係式に上記で測定した気体量を当てはめて気泡における気体の内圧が計算され、表1のような圧力値となる。
【0124】
例えば気体が窒素の場合、
気液混合液1リットル中における、水体積がw1リットル、水中での気体体積がw2リットルであると仮定すると、
体積については次の関係式が成り立つ。
【0125】
w1 + w2 =1リットル (式A)
また、質量については次の関係式が成り立つ。
【0126】
w1 × 水の密度 + w2÷22.4(リットル)×28(窒素分子量)=測定質量 (式B)
水の密度 :常温常圧の純水では997.1g/L
22.4リットル :気体1モルの体積
測定質量 :表1の値で988.3
上記の2式(式A,B)の方程式を解くと、
w2=8.84×10^(-3) が算出されるので、
気体の内圧=大気圧 × 気体総体積量 ÷ 液中の気体総体積量
=0.1×(表1の値)÷w2
=0.1×0.56÷(8.84×10^(-3))
=6.3MPa
となる。
【0127】
なお、上記の計算では、気泡の内部温度が一定(常温)であるとして考えたが、実際の気泡の内部温度は大気の温度(常温)よりも高いことも予想され、その場合、気泡の内部圧は上記算出結果より更に高いことが気体の状態方程式から予測できる。
【0128】
ところで、一般には、気泡の内圧は次のようにして算出される。気泡は気液相界面間の界面張力により加圧され、この界面張力はヤングラプラスの式(下記式)で導かれる。
【0129】
ΔP=2σ/r
(ΔP:上昇圧力、σ:表面張力、r:気泡半径)
この式によれば、例えば、直径100nmのサイズの気泡の場合、気泡内部圧力は3MPaになる。
【0130】
一方、気液混合液中の内部圧力は、表1の通り、例えば窒素の場合6.3MPaであり、この気液混合液はSEM写真にて示されるように直径100nmサイズの気泡が分散しているものであることから、気液混合液の気泡は、ヤングラプラスの式から算出される値の約2倍以上の内部圧力を有していることが確認された。したがって、より強固な界面構造が気泡界面において形成されていると結論づけられた。そして、気体が、オゾン、塩素、二酸化塩素、酸素、空気、水素、二酸化炭素である場合も同様に内圧が高くなった気泡が形成されているものと考えられる。このように、内圧が高くなったナノサイズの気泡を含む気液混合液を飲用水として利用することができるものである。
【0131】
【表1】
[気泡の分布量]
気泡の分布量(個数)は表1から算出した。
【0132】
気体が窒素の場合、大気中(0.1MPa)に戻した気泡総量が0.56Lであり、気泡の内圧が6.3MPaであるので、水中での気泡総体積量V1は、等温変化と仮定し、PV=constより
V1=0.56×0.1÷6.3
となる。
【0133】
また、気泡は半径r=50nmの球体であるから、気泡1個当たりの体積V2は
V2=4/3×π×r^3
となる。
【0134】
以上より、水1L当たりの気泡の個数n=V1÷V2=1.7×10^16個と算出される。
【0135】
同じように水1L当たりの気泡の個数は、気体の主成分がアルゴンの場合は1.7×10^16個と算出される。
【0136】
[気液混合液の安定性]
図15は、空気と水とを混合して生成した気液混合液について、ガラスビンに密封し一定温度で保管した場合の、飽和溶解濃度に対する気液混合液中の気体存在量比を過飽和度として表示するグラフである。グラフから、過飽和度は400時間経過してもほぼ一定であり、ほとんど変化していないことが分かる。よって、気液混合液が安定であることが確認され、この安定な気液混合液を飲料用水として利用することができるものである。
【0137】
[温度制御]
上記のように製造した飲料用水(気液混合液)をヒーターにより加温し、液体の温度を25℃から40℃に昇温すると、温度の上昇に伴ってナノサイズの気泡が崩壊して目視で確認できるマイクロサイズ以上となった気泡が発生した。そして、液体がマイクロオーダーの気泡で白濁し、液体表面から気体が放出されるのが確認された。
【0138】
[超音波制御]
上記のように製造した飲料用水(気液混合液)に、40kHzランジュバン型振動子を用い出力100Wで超音波を照射した。時間0.05秒程度の瞬間照射で、ナノサイズの気泡が崩壊して目視で確認できるマイクロサイズ以上となった気泡が瞬間的に発生した。数秒間(3〜30秒程度)超音波を照射することにより、ほぼ全てのナノサイズの気泡が崩壊して目視で確認できるマイクロサイズ以上となった気泡が急激に発生した。そして、液体がマイクロオーダーの気泡で白濁し、液体表面から気体が放出されるのが確認された。
【0139】
[圧力制御]
上記のように製造した飲料用水(気体混合液)を圧力が変えられる密閉容器に入れてポンプ(加圧ポンプ又は減圧ポンプ)を使って、加圧又は減圧した。加圧及び減圧のどちらの場合でも、ナノサイズの気泡が崩壊して目視で確認できるマイクロサイズ以上となった気泡が発生するのが確認された。なお、図7の容器16をポンプなどを使って圧力調整ができる密閉容器にして飲料用水の圧力を制御することができる。
【0140】
また、撹拌によっても飲料用水(気液混合液)内の圧力の分布(偏り)が発生するため、気体を分離することができる。図7の容器16の中に撹拌羽を入れて撹拌したところ、ナノサイズの気泡が崩壊して目視で確認できるマイクロサイズ以上となった気泡が発生するのが確認された。
【0141】
[衝撃波制御]
上記のように製造した飲料用水(気体混合液)を脈動流で液体を噴射する噴射装置に入れ、壁状体に向けて噴射したところ、飲料用水が液滴となって壁状体に衝突し、衝突直後にナノサイズの気泡が崩壊して目視で確認できるマイクロサイズ以上となった気泡が発生するのが確認された。この発泡現象は、液滴が衝突した際に、液滴内部に衝撃波が発生することによるものである。
【0142】
図16は、上記のようにして飲料用水に衝撃波が加わる様子を示すモデル図である。噴射された飲料用水は、図16(a)に示すように、噴射される前は脈動流となっていることで、噴射後に不均一な液滴Wの集団になって、壁状体31の表面に衝突する。このとき、図16(b)に示すように、液滴Wが衝突して壁状体31が振動し、液滴W内部に衝撃波Zが発生する。そして、図16(c)に示すように、この衝撃波Zの衝撃によって、液滴W内部にマイクロサイズ以上の気泡BMの発泡現象が生じるものと考えられる。
【0143】
〔実施例2〕
[冷却状態での生成]
図9の飲料用水生成装置において、前処理部19が冷却部にて構成された飲料用水生成装置を用い、冷却状態(5℃)で空気と水とを用いた飲料用水(気液混合液)を生成した。この飲料用水を常温常圧で大気と接触するように容器に貯留し放置すると、水に対する気体の飽和溶解濃度が1週間以上維持できることが確認できた。したがって、気体が高濃度で安定化して液体に存在しており、例えば、殺菌性のある気体を用いれば長期に亘って殺菌性が持続する飲料用水を得ることができることが確認された。
【符号の説明】
【0144】
1 加圧部
2 気体供給部
3 気液混合部
4 気体分離部
5 減圧部
6 流路
7 吐出部
8 気体除去部
11 ポンプ
13 入水部
14 ベンチュリ管
15 電気分解手段
17 外力制御部
19 前処理部
21 回転体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体がナノサイズの気泡となって該気体の飽和溶解水に存在し、該気泡との界面に存在する水分子の水素結合の距離が、水が常温常圧であるときの水素結合の距離よりも短いことを特徴とする飲料用水。
【請求項2】
気泡を形成している気体の圧力が0.12MPa以上であることを特徴とする請求項1に記載の飲料用水。
【請求項3】
気体が殺菌性の気体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の飲料用水。
【請求項4】
気体が二酸化炭素であることを特徴とする請求項1又は2に記載の飲料用水。
【請求項5】
気体が水素であることを特徴とする請求項1又は2に記載の飲料用水。
【請求項6】
気体が空気又は酸素であることを特徴とする請求項1又は2に記載の飲料用水。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の飲料用水に、圧力変化、温度変化、衝撃波及び超音波からなる群から選ばれる少なくとも1種の外力を与えて気泡を崩壊させて飲料用水中の気体を利用することを特徴とする飲料用水の利用方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の飲料用水に、圧力変化、温度変化、衝撃波及び超音波からなる群から選ばれる少なくとも1種の外力を与えて気泡を崩壊させて飲料用水中の気体を分離することを特徴とする飲料用水の精製方法。
【請求項9】
水を含む液体を外部から取り入れる入水部と、入水部から入った液体に気体を供給する気体供給部と、気体が供給された液体を加圧する加圧部と、液体中の気体をナノサイズの気泡にして気液混合液を生成する気液混合部と、気液混合液からナノサイズを超える大きさの気泡を分離する気体分離部と、加圧状態の気液混合液をナノサイズの気泡を崩壊させることなく大気圧まで減圧する減圧部と、減圧された気液混合液を吐出する吐出部とを備えてなることを特徴とする飲料用水生成装置。
【請求項10】
入水部から取り入れられた液体を冷却する冷却部を備えてなることを特徴とする請求項9に記載の飲料用水生成装置。
【請求項11】
入水部から取り入れられた液体を浄化する浄化フィルターを備えてなることを特徴とする請求項9又は10に記載の飲料用水生成装置。
【請求項12】
入水部から取り入れられた液体を脱気する脱気部を備えてなることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の飲料用水生成装置。
【請求項13】
気液混合部の少なくとも一部をベンチュリ管により構成することを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載の飲料用水生成装置。
【請求項14】
気液混合部の少なくとも一部を電気分解手段により構成することを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載の飲料用水生成装置。
【請求項1】
気体がナノサイズの気泡となって該気体の飽和溶解水に存在し、該気泡との界面に存在する水分子の水素結合の距離が、水が常温常圧であるときの水素結合の距離よりも短いことを特徴とする飲料用水。
【請求項2】
気泡を形成している気体の圧力が0.12MPa以上であることを特徴とする請求項1に記載の飲料用水。
【請求項3】
気体が殺菌性の気体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の飲料用水。
【請求項4】
気体が二酸化炭素であることを特徴とする請求項1又は2に記載の飲料用水。
【請求項5】
気体が水素であることを特徴とする請求項1又は2に記載の飲料用水。
【請求項6】
気体が空気又は酸素であることを特徴とする請求項1又は2に記載の飲料用水。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の飲料用水に、圧力変化、温度変化、衝撃波及び超音波からなる群から選ばれる少なくとも1種の外力を与えて気泡を崩壊させて飲料用水中の気体を利用することを特徴とする飲料用水の利用方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の飲料用水に、圧力変化、温度変化、衝撃波及び超音波からなる群から選ばれる少なくとも1種の外力を与えて気泡を崩壊させて飲料用水中の気体を分離することを特徴とする飲料用水の精製方法。
【請求項9】
水を含む液体を外部から取り入れる入水部と、入水部から入った液体に気体を供給する気体供給部と、気体が供給された液体を加圧する加圧部と、液体中の気体をナノサイズの気泡にして気液混合液を生成する気液混合部と、気液混合液からナノサイズを超える大きさの気泡を分離する気体分離部と、加圧状態の気液混合液をナノサイズの気泡を崩壊させることなく大気圧まで減圧する減圧部と、減圧された気液混合液を吐出する吐出部とを備えてなることを特徴とする飲料用水生成装置。
【請求項10】
入水部から取り入れられた液体を冷却する冷却部を備えてなることを特徴とする請求項9に記載の飲料用水生成装置。
【請求項11】
入水部から取り入れられた液体を浄化する浄化フィルターを備えてなることを特徴とする請求項9又は10に記載の飲料用水生成装置。
【請求項12】
入水部から取り入れられた液体を脱気する脱気部を備えてなることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の飲料用水生成装置。
【請求項13】
気液混合部の少なくとも一部をベンチュリ管により構成することを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載の飲料用水生成装置。
【請求項14】
気液混合部の少なくとも一部を電気分解手段により構成することを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載の飲料用水生成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図14】
【公開番号】特開2011−62669(P2011−62669A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217336(P2009−217336)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]