説明

飼料配合剤

【課題】 天然物由来の安全な成分で構成され、より効果的に動物の下痢を予防し、腸内環境を整えて動物の健康状態を向上させるための飼料配合剤及びそれを配合した飼料を提供する。
【解決手段】 マンノース及び/又はマンノオリゴ糖と生菌剤とを有効成分とすることを特徴とする飼料配合剤であって、好ましくは、さらに、生薬及び/又は死菌を含み、また、好ましくは、生薬が、枸杞葉、麦芽、枇杷葉、人参、大棗、山薬、黄精、金銀花、蒲公英、南瓜子、車前子、柿の葉、杜仲の葉、山梔子、エキナケア及びハコベからなる群から選ばれる1又は2以上の生薬である前記の飼料配合剤であり、また、好ましくは、死菌が、酵母細胞破砕物又は乳酸菌死菌体である前記の飼料配合剤である前記の飼料配合剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物飼料用の飼料配合剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鶏、豚、羊、牛などの家畜は幼少期に大腸菌、あるいは、サルモネラ菌などの有害細菌や病原性ウィルスなどに感染すると下痢を起こすことが知られている。これらの家畜が下痢を起こすと、摂取した栄養を腸管から十分吸収することができずに成長が停滞するうえ、また、体力や抵抗力も低下して他の感染症にもかかりやすくなるという問題がある。また、養殖魚等の魚介類においても、細菌やウィルスなど病原性微生物に感染すれば成長が停滞し、斃死率が増加するという問題がある。
【0003】
一方、近年の畜産業では、家畜の生産性を高めより高い経済効果を得るための工夫がなされてきた。たとえば、面積あたりの飼養頭数を多くすることによって生産性を高めようとしてきたが、逆に過密飼育によるストレスが家畜の体力や抵抗力を低下させ生産性に悪影響を及ぼしていると言われている。さらに、過密飼育の畜舎内でひとたび感染症が発生すれば、それが畜舎内全体に蔓延し、さらに生産性を悪化させるという問題があった。これに対して家畜の病気予防と成長促進を目的として抗生物質や抗菌剤などの薬剤が飼料に混ぜて給与されるようになったが、耐性菌出現の問題、あるいは、薬剤漬けで生産された畜産物の安全性の問題が指摘されるようになり、抗生物質などの薬剤に代わる安全な資材が求められている。
【0004】
このような要望に応えるものとして天然物に由来する添加物などが提案されている。具体的には、枸杞葉、麦芽、枇杷葉、人参、大棗、山薬、黄精、金銀花、蒲公英、または、ハコベを構成成分とする豚の肉質向上と生育促進用飼料が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、シュガー系フレーバーと甘草、ステビア抽出物からなる嗜好性向上と下痢軽減を目的とした家畜用飼料添加剤が知られている(例えば、特許文献2参照)。さらに、9種類のハーブ類、酵母、乳酸菌、および有機酸を含有する豚用飼料添加剤が知られている(例えば、特許文献3参照)。あるいは、ハーブと酵母細胞壁、生菌剤、有機酸からなる動物用飼料添加剤が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開2004−222547号公報
【特許文献2】特開2001−95502号公報
【特許文献3】特開2004−49174号公報
【特許文献4】特開2002−58434号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では効果が十分に発揮されるには至っていなかった。
【0006】
本発明は、天然物由来の安全な成分で構成され、より効果的に動物の下痢を予防し、腸内環境を整えて動物の健康状態を向上させるための飼料配合剤及びそれを配合した飼料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、このような課題を解決するために、鋭意検討した結果、マンノースまたはマンノオリゴ糖あるいはそれらの両方と生菌剤を必須構成成分とし、さらに、生薬または死菌あるいはそれらの両方を配合した飼料を動物に与えることによって動物の下痢防止と整腸作用が相乗的に飛躍的に高まり、さらにこれらの飼料配合剤を家畜に与えた場合には、家畜の生産性が向上することを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明の第一は、マンノース及び/又はマンノオリゴ糖と生菌剤とを有効成分とすることを特徴とする飼料配合剤を要旨とするものであり、好ましくは、さらに、生薬及び/又は死菌を含むものである。また、好ましくは、生薬が、枸杞葉、麦芽、枇杷葉、人参、大棗、山薬、黄精、金銀花、蒲公英、南瓜子、車前子、柿の葉、杜仲の葉、山梔子、エキナケア及びハコベからなる群から選ばれる1又は2以上の生薬である前記の飼料配合剤であり、また、好ましくは、死菌が、酵母細胞破砕物又は乳酸菌死菌体である前記の飼料配合剤であり、また、好ましくは、マンノース及び/又はマンノオリゴ糖が、マンナン分解物である前記の飼料配合剤であり、また、好ましくは、生菌剤が、乳酸産生菌である前記の飼料配合剤であり、また、好ましくは、乳酸産生菌が、有胞子性乳酸菌である前記の飼料配合剤である。
【0009】
本発明の第二は、上記したいずれかの飼料配合剤を配合したことを特徴とする動物用飼料を要旨とするもんである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、天然物由来の成分であるマンノースまたはマンノオリゴ糖と生菌剤が、相乗的に動物の下痢を予防し、腸内環境を整えて動物の健康状態を向上させ、さらに成長を促進するなどの効果を十分に発揮するものである。特に仔牛、子豚、幼雛などの幼少期の家畜・家禽に適用した場合に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。まず、本発明に用いられるマンノース及びマンノオリゴ糖について説明する。マンノース又はマンノオリゴ糖は、天然由来のマンナン含有物を酸あるいは酵素によって加水分解することによって得られるものであり、精製物であっても粗精製物であっても構わない。天然由来のマンナン含有物としては、例えば、グアガム、ローカスビーンガム、パーム核、コプラミールなどの植物由来の多糖類のほか、酵母細胞壁などの微生物由来の多糖類などが使用できる。これらのマンナン含有物から酵素処理によってマンノース及びマンノオリゴ糖を得るには、マンナナーゼ、マンノシダーゼ、グルコシダーゼ、ガラクトシダーゼ、ヘミセルラーゼなどの酵素を作用させる公知の方法を用いればよい。
【0012】
次に、本発明で用いられる生菌剤について説明する。生菌剤とは動物の飼料として摂取させ、動物の腸内で増殖させることによって腸内細菌叢を好ましい状態に維持させることができる有用腸内微生物のことである。一例として、ラクトバチルス アシドフィルス、ラクトバチルス サリバリウス、ラクトバチルス カゼイなどのラクトバチルス(Lactobacillus)属、ビフィドバクテリウム サーモフィラム、ビフィドバクテリウム シュードロンガム、ビフィドバクテリウム ロンガムなど一般にビフィズス菌といわれているビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属、エンテロコッカス フェーカリス、エンテロコッカス フェシウムなどのエンテロコッカス(Enterococcus)属、ストレプトコッカス サーモフィルス、ストレプトコッカス ミュータンスどのストレプトコッカス(Streptococcus)属、ペディオコッカス(Pediococcus)属、ロイコノストック(Leuconostoc)属、ラクトコッカス(Lactococcus)など、一般に乳酸菌といわれる生菌、あるいは、クロストリジウム ブチリカムなどの酪酸菌(Clostridium属)、バチルス サブチルス(枯草菌)、バチルス セレウス、バチルス バディウス、バチルス コアグランスなどのバチルス(Bacillus)属、など一般に生菌剤として動物の飼料に用いられている菌体を使用することができる。
【0013】
これらの生菌剤の中でも、ラクトバチルス属等の乳酸産生菌であるものが好ましく、さらに、有胞子性乳酸菌として知られているバチルス コアグランス(Bacillus coagulans)が、特に好ましく使用することができる。有胞子性乳酸菌は、胞子の状態で存在するときには耐熱性、耐酸性の性質を有しているため、飼料の製造工程中での加熱劣化や、家畜体内の胃酸による劣化が少なく、家畜の腸内でより高い効果を発揮することができる。
【0014】
続いて、本発明に用いる生薬について説明する。枸杞葉とは、ナス科Solanaceae枸杞Lycium ch-inenseMiller(クコ)の葉を乾燥したものである。麦芽とは、イネ科Gramine-ae大麦Hordeum vulgare Linne var. vulgare(オオムギ)の発芽した種子を乾燥したものである。枇杷葉とは、バラ科Rosaceae枇杷Eriobotrya japonica L-indleyの葉を乾燥したものである。また、人参とは、ウコギ科Araliaceae人参Panax ginseng C.A.Meyer(オタネニンジン)の根を乾燥したものをいう。大棗とは、クロウメモドキ科Rhamnaceae棗Zizyphus jujuba Miller var. ine-rmis Rehder(ナツメ)の果実を乾燥したものをいう。山薬とは、ヤマノイモ科 Dioscoreaceae薯蕷Dioscorea japonicaThunberg(ヤマノイモ)又はDioscorea batatasDecaisne(ナガイモ)の周皮を除いた根茎(担根体)を乾燥したものをいう。金銀花とは、スイカズラ科Caprifoliaceae忍冬Lonicera japonica Thunb-erg(スイカズラ)の花蕾を乾燥したものをいう。さらに、黄精とは、ユリ科Liliaceae黄精Polygonatum falcatum A.Gray(ナルコユリ)Polygonat-um sibiricum Redoute(カギクルマバナルコユリ)の根茎を蒸したものである。蒲公英とは、キク科Compositae蒲公英Taraxacum officinale Weberの根を乾燥したものである。南瓜子とは、ウリ科のカボチャの種子である。車前子とは、オオバコ科PlantaginaceaeオオバコPlantago asiatica Linneの種子である。柿の葉とは、カキノキ科EbenaceaeカキノキDiospyros kakiの葉であり、杜仲の葉とは、トチュウの木の葉である。山梔子とは、アカネ科RubiaceaeのクチナシGardenia jasminoides Ellisの果実であり、エキナケアとは、キク科の多年草、Echinacea angustifolia、Echinacea purpura、Echinacea pallidaなどの根あるいは根茎を乾燥したものである。また、ハコベとは、ナデシコ科Caryophyllaceae繁縷Stella-ria neglecta Weiheの地上部を乾燥したものである。
【0015】
これらの生薬は一般に人あるいは家畜用の漢方薬として使用されているものであり、滋養、強壮、健胃、整腸、解毒、清熱等の効果により、動物の健康状態を向上させる働きを有している。
【0016】
これらの生薬については、市販のものを好適に用いることができる。これらの生薬は、数mm〜1cm程度の大きさに裁断し、あるいは、1mm以下の大きさに粉砕して使用すればよい。
【0017】
これらの生薬の中で、特に枸杞葉、麦芽、枇杷葉、人参、大棗、山薬、黄精、蒲公英、金銀花、エキナケア、および、ハコベから選ばれた生薬の組み合わせが好ましい。その場合の混合割合は、例えば、枸杞葉5〜30質量部、麦芽5〜30質量部、人参5〜30質量部、大棗5〜30質量部、エキナケア5〜30質量部の組み合わせ、あるいは、人参5〜30質量部、大棗5〜30質量部、山薬5〜30質量部、蒲公英5〜30質量部、およびハコベ5〜30質量部の組み合わせなどを挙げることができる。
【0018】
一方、本発明で用いられる死菌とは、細菌、酵母等の微生物を滅菌、殺菌、破砕、自己消化、酵素分解等の方法によって死滅させたものであり、動物に摂取させても有害性を示さないものでなければならない。一例として、酵母細胞破砕物や乳酸菌死菌などを使用することができる。酵母の場合は、アルコールの醸造、パンの製造などに用いられる酵母(Saccromyces cerevisiae)、あるいはトルラ酵母(Candida utilis)等の酵母を自己消化、酵素処理、超音波処理、圧力などの手段によって細胞を破砕した酵母細胞破砕物を使用することができる。また、乳酸菌死菌とは、乳酸球菌(エンテロコッカス属)、あるいは、乳酸桿菌(ラクトバシラス属)などの菌体を加熱等の方法により殺菌したものが使用できる。
【0019】
これらの死菌体は家畜の腸管免疫系を刺激して免疫を賦活させて動物の抗病性を高めることが知られている。
【0020】
本発明の飼料配合剤は、上記した成分を所定量混合することによって得られるものである。混合する方法としては、どのような混合方法を採用してもよい。
【0021】
本発明の飼料配合剤1g中に含まれる各成分の含有量は以下のとおりである。マンノース及び/又はマンノオリゴ糖は、0.001〜0.9gが好ましく、0.02〜0.8gがさらに好ましく、0.05〜0.5gが最も好ましい。
【0022】
生菌剤は、1.0×10〜1.0×1012cells/gが好ましく、1.0×10〜1.0×1010cells/gがさらに好ましく、1.0×10〜1.0×10cells/gが最も好ましい。
【0023】
生薬は、0.05〜0.99gが好ましく、0.08〜0.9gがさらに好ましく、0.1〜0.5gが最も好ましい。
【0024】
死菌は、0.05〜0.99gが好ましく、0.08〜0.9gがさらに好ましく、0.1〜0.5gが最も好ましい。
【0025】
また、本発明の飼料配合剤には、他の単糖、オリゴ糖、発酵性有機酸、水溶性食物繊維、デンプン、不溶性食物繊維などのプレバイオティクスを添加してもよい。さらに、必要に応じて、安定剤や賦形剤が含まれても構わない。安定剤としては、無水ケイ酸などが挙げられ、賦形剤としては、ふすま、小麦粉、コーンスターチ、コーングルテンフィード、デキストリン、米糠などが挙げられる。
【0026】
本発明の第二の動物用飼料は、上記の飼料配合剤を配合したものである。配合割合は、0.005〜5質量%が好ましく、0.02〜2質量%がさらに好ましく、0.1〜2質量%が最も好ましいい。
【実施例】
【0027】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0028】
実施例1
酵素処理コプラミール由来マンノース(商品名「コッコエース」、ユニチカ株式会社製)0.2gと、有胞子性乳酸菌バチルス コアグランス(商品名「ラクリス−10」、三共ライフテック製)1×10cells(0.1g相当)と、ふすま0.7gを混合し、本発明の飼料配合剤を作製した。
【0029】
実施例2
酵素処理コプラミール由来マンノース(商品名「コッコエース」、ユニチカ株式会社製)0.2gと、飼料用生菌剤(B.サーモフィラス、E.フェシウム、L.アシドフィルス配合、商品名「L・E・Bミックス」、森永乳業製)2×10cells(0.1g相当)と、ふすま0.7gを混合し、本発明の飼料配合剤を作製した。
【0030】
実施例3
酵素処理コプラミール由来マンノース(商品名「コッコエース」、ユニチカ株式会社製)0.2gと、有胞子性乳酸菌バチルス コアグランス(商品名「ラクリス−10」、三共ライフテック製)1×10cells(0.1g相当)と、枸杞葉20質量部、麦芽20質量部、山薬15質量部、人参10質量部、大棗10質量部、枇杷葉5質量部、黄精5質量部、金銀花5質量部、蒲公英5質量部、および、ハコベ5質量部の割合で混合した生薬0.2gと、ふすま0.5gを混合し、本発明の飼料配合剤を作製した。
【0031】
実施例4
酵素処理コプラミール由来マンノース(商品名「コッコエース」、ユニチカ株式会社製)0.2gと、飼料用生菌剤(B.サーモフィラス、E.フェシウム、L.アシドフィルス配合、商品名「L・E・Bミックス」、森永乳業製)2×10cells(0.1g相当)と、枸杞葉20質量部、麦芽20質量部、蒲公英15質量部、山梔子15質量部、枇杷葉10質量部、人参10質量部、エキナケア5質量部、および、柿の葉5質量部の割合で混合した生薬0.2gと、ふすま0.5gを混合し、本発明の飼料配合剤を作製した。
【0032】
実施例5
酵素処理コプラミール由来マンノース(商品名「コッコエース」、ユニチカ株式会社製)0.2gと、有胞子性乳酸菌バチルス コアグランス(商品名「ラクリス−10」、三共ライフテック製)1×10cells(0.1g相当)と、飼料用酵素処理酵母(商品名「ニュートリセルモス」)0.2gと、ふすま0.5gを混合し、本発明の飼料配合剤を作製した。
【0033】
実施例6
酵素処理コプラミール由来マンノース(商品名「コッコエース」、ユニチカ株式会社製)0.2gと、飼料用生菌剤(B.サーモフィラス、E.フェシウム、L.アシドフィルス配合、商品名「L・E・Bミックス」、森永乳業製)2×10cells(0.1g相当)と、乳酸球菌(エンテロコッカ スフェカリス)死菌0.2gと、ふすま0.5gを混合し、本発明の飼料配合剤を作製した。
【0034】
実施例7
酵素処理コプラミール由来マンノース(商品名「コッコエース」、ユニチカ株式会社製)0.2gと、有胞子性乳酸菌バチルス コアグランス(商品名「ラクリス−10」、三共ライフテック製)1×10cells(0.1g相当)と、枸杞葉20質量部、麦芽20質量部、山薬15質量部、人参10質量部、大棗10質量部、枇杷葉5質量部、黄精5質量部、金銀花5質量部、蒲公英5質量部、および、ハコベ5質量部の割合で混合した生薬0.2gと、飼料用酵素処理酵母(商品名「ニュートリセルモス」)0.2gと、ふすま0.3gを混合し、本発明の飼料配合剤を作製した。
【0035】
実施例8
酵素処理コプラミール由来マンノース(商品名「コッコエース」、ユニチカ株式会社製)0.2gと、飼料用生菌剤(B.サーモフィラス、E.フェシウム、L.アシドフィルス配合、商品名「L・E・Bミックス」、森永乳業製)2×10cells(0.1g相当)と、枸杞葉20質量部、麦芽20質量部、蒲公英15質量部、山梔子15質量部、枇杷葉10質量部、人参10質量部、エキナケア5質量部、および、柿の葉5質量部の割合で混合した生薬0.2gと、乳酸球菌(エンテロコッカ スフェカリス)死菌0.2gと、ふすま0.3gを混合し、本発明の飼料配合剤を作製した。
【0036】
実施例9
酵母細胞由来マンノース(商品名「バイオモス」、オルテック社製)0.2gと、有胞子性乳酸菌バチルス コアグランス(商品名「ラクリス−10」、三共ライフテック製)1×10cells(0.1g相当)と、ふすま0.7gを混合し、本発明の飼料配合剤を作製した。
【0037】
実施例10
酵母細胞由来マンノース(商品名「バイオモス」、オルテック社製)0.2gと、飼料用生菌剤(B.サーモフィラス、E.フェシウム、L.アシドフィルス配合、商品名「L・E・Bミックス」、森永乳業製)2×10cells(0.1g相当)と、ふすま0.7gを混合し、本発明の飼料配合剤を作製した。
【0038】
比較例1
酵素処理コプラミール由来マンノース(商品名「コッコエース」、ユニチカ株式会社製)0.2gと、枸杞葉20質量部、麦芽20質量部、山薬15質量部、人参10質量部、大棗10質量部、枇杷葉5質量部、黄精5質量部、金銀花5質量部、蒲公英5質量部、および、ハコベ5質量部の割合で混合した生薬0.2gと、ふすま0.6gを混合し飼料配合剤を作製した。
【0039】
比較例2
酵素処理コプラミール由来マンノース(商品名「コッコエース」、ユニチカ株式会社製)0.2gと、枸杞葉20質量部、麦芽20質量部、蒲公英15質量部、山梔子15質量部、枇杷葉10質量部、人参10質量部、エキナケア5質量部、および、柿の葉5質量部の割合で混合した生薬0.2gと、ふすま0.6gを混合し飼料配合剤を作製した。
【0040】
比較例3
酵素処理コプラミール由来マンノース(商品名「コッコエース」、ユニチカ株式会社製)0.2gと、飼料用酵素処理酵母(商品名「ニュートリセルモス」)0.2gと、ふすま0.6gを混合し飼料配合剤を作製した。
【0041】
比較例4
酵素処理コプラミール由来マンノース(商品名「コッコエース」、ユニチカ株式会社製)0.2gと、乳酸球菌(エンテロコッカ スフェカリス)死菌0.2gと、ふすま0.6gを混合し飼料配合剤を作製した。
【0042】
比較例5
有胞子性乳酸菌バチルス コアグランス(商品名「ラクリス−10」、三共ライフテック製)1×10cells(0.1g相当)と、枸杞葉20質量部、麦芽20質量部、蒲公英15質量部、山梔子15質量部、枇杷葉10質量部、人参10質量部、エキナケア5質量部、および、柿の葉5質量部の割合で混合した生薬0.2gと、ふすま0.7gを混合し飼料配合剤を作製した。
【0043】
比較例6
飼料用生菌剤(B.サーモフィラス、E.フェシウム、L.アシドフィルス配合、L・E・Bミックス、森永乳業製)2×10cells(0.1g相当)と、枸杞葉20質量部、麦芽20質量部、蒲公英15質量部、山梔子15質量部、枇杷葉10質量部、人参10質量部、エキナケア5質量部、および、柿の葉5質量部の割合で混合した生薬0.2gと、ふすま0.7gを混合し飼料配合剤を作製した。
【0044】
比較例7
有胞子性乳酸菌バチルス コアグランス(商品名「ラクリス−10」、三共ライフテック製)1×10cells(0.1g相当)と、飼料用酵素処理酵母(商品名「ニュートリセルモス」)0.2gと、ふすま0.7gを混合し飼料配合剤を作製した。
【0045】
比較例8
飼料用生菌剤(B.サーモフィラス、E.フェシウム、L.アシドフィルス配合、L・E・Bミックス、森永乳業製)2×10cells(0.1g相当)と、乳酸球菌(エンテロコッカ スフェカリス)死菌0.2gと、ふすま0.7gを混合し飼料配合剤を作製した。
【0046】
試験例1
実施例1〜10、比較例1〜8で作製した飼料配合剤を市販の子豚用人工乳に添加し配合飼料を作製した。飼料配合剤の添加率は0.5%とし、子豚用人工乳は子豚の生育ステージに応じて変更した。1群30頭の子豚に5日齢から作製した飼料を給与開始し、25日齢で離乳させた後、70日齢まで飼育した。また比較として、飼料配合剤を添加せずに市販の子豚用人工乳のみを給与して同様に飼育した(比較例9)。飼育期間中の糞便状態を毎日観察し、平均下痢日数を表1に示した。
【0047】
【表1】

以上の結果、比較例で作製した飼料配合剤を与えて飼育した子豚に比べれば、実施例で作製した飼料配合剤を与えて飼育した子豚の方が下痢発生日数は少なく、すなわち、マンノースまたはマンノオリゴ糖と生菌剤と、生薬または死菌を組み合わせた飼料配合剤給与した場合に子豚の下痢防止効果が相乗的に高まることが示された。特に、子豚用人工乳のみで飼育した比較例9は観察期間中の1/3以上の期間にわたって下痢症状を示した。
【0048】
また、上記試験1で飼育した子豚の30日齢時の糞便を採取し、細菌叢を調べた結果を表2に示した。
【0049】
【表2】

以上の結果より、有用腸内微生物であるビフィドバクテリウム属、ラクトバシラス属細菌は比較例で作製した飼料配合剤を与えて飼育した子豚よりも、実施例で作製した飼料配合剤を与えて飼育した子豚の方が多く検出された。一方、悪玉菌であるサルモネラ菌については、試験例で作製した飼料配合剤を与えて飼育した子豚の糞便中からは検出されず、大腸菌はわずかにしか検出されなかったのに対し、比較例で作製した飼料配合剤を与えて飼育した子豚の糞便からは多く検出された。すなわち、マンノースまたはマンノオリゴ糖と生菌剤と、生薬または死菌あるいはそれらの両方を組み合わせた飼料配合剤には、子豚の腸内細菌叢を整える整腸作用が高いことが認められた。
【0050】
さらに、上記試験1で飼育した子豚の飼育期間中の健康状態を目視観察した結果を表3に示した。
【0051】
【表3】

以上の結果より、比較例で作製した飼料配合剤を与えて飼育した子豚に比べ、実施例で作製した飼料配合剤を与えて飼育した子豚の方が、元気で活発に運動し、肌の色艶が良く、また、腹の張り具合も良好であり、全体的に健康状態が良好であることがわかった。
【0052】
また、上記試験1で飼育した豚の飼育期間中のうち出生時、21日齢、70日齢の平均体重を比較した結果を表4に示した。
【0053】
【表4】

以上の結果より、比較例で作製した飼料配合剤を与えて飼育した子豚に比べ、実施例で作製した飼料配合剤を与えて飼育した子豚の方が21日齢体重、70日齢体重ともに大きく、すなわち、子豚の健康状態、免疫能が向上した結果、成長が促進されたことが示された。
【0054】
試験例2
実施例1、3、5、7,9および、比較例1,3,5,7で作製した飼料配合剤を市販の仔牛用人工乳に添加し飼料を作製した。飼料配合剤の添加率は0.2%とし、飼料は仔牛の生育ステージに応じて変更した。1群3頭の乳牛仔牛に作製した飼料を給与し、1ヶ月齢から3ヶ月齢まで飼育した。また、比較として飼料配合剤を添加せずに市販の人工乳のみを給与して同様に飼育した(比較例10)。
【0055】
上記、試験2で飼育した仔牛の試験期間中の糞便状態を毎日観察し、糞便スコアを記録した。糞便スコアは、正常便:0ポイント、軟便:1ポイント、下痢便:2ポイント、水様便:3ポイントとした。表3に観察期間中に平均下痢日数と糞便スコア平均値を表5に示した。
【0056】
【表5】

以上の結果、比較例で作製した飼料配合剤を与えて飼育した仔牛に比べれば、実施例で作製した飼料配合剤を与えて飼育した仔牛の方が、下痢発生日数が少なく、また、糞便状態も良好であった。すなわち、マンノースまたはマンノオリゴ糖と生菌剤と、生薬または死菌を組み合わせた飼料配合剤を与えた場合に仔牛の下痢防止効果が相乗的に高まることが示された。
【0057】
また、上記試験2で飼育した仔牛の60日齢時の糞便を採取し、細菌叢を調べた結果を表6に示した。
【0058】
【表6】

以上の結果より、比較例で作製した飼料配合剤を与えて飼育した仔牛に比べて、実施例で作製した飼料配合剤を与えて飼育した仔牛の糞便中からは、有用微生物であるビフィドバクテリウム属、ラクトバシラス属細菌が多く検出され、逆に、大腸菌やサルモネラ菌などの悪玉細菌はわずかにしか検出されなかった。すなわち、マンノースまたはマンノオリゴ糖と生菌剤と、生薬または死菌を組み合わせた飼料配合剤には、仔牛に対しても腸内細菌叢を整える整腸作用が高いことが認められた。
【0059】
以上の結果、本発明の飼料配合剤を動物に給与することによって、動物の下痢防止と整腸作用を相乗的に高めることができた。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンノース及び/又はマンノオリゴ糖と生菌剤とを有効成分とすることを特徴とする飼料配合剤。
【請求項2】
さらに、生薬及び/又は死菌を含むことを特徴とする請求項1記載の飼料配合剤。
【請求項3】
生薬が、枸杞葉、麦芽、枇杷葉、人参、大棗、山薬、黄精、金銀花、蒲公英、南瓜子、車前子、柿の葉、杜仲の葉、山梔子、エキナケア及びハコベからなる群から選ばれる1又は2以上の生薬であることを特徴とする請求項2記載の飼料配合剤。
【請求項4】
死菌が、酵母細胞破砕物又は乳酸菌死菌体であることを特徴とする請求項2又は3記載の飼料配合剤。
【請求項5】
マンノース及び/又はマンノオリゴ糖が、マンナン分解物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の飼料配合剤。
【請求項6】
生菌剤が、乳酸産生菌であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の飼料配合剤。
【請求項7】
乳酸産生菌が、有胞子性乳酸菌であることを特徴とする請求項6記載の飼料配合剤。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の飼料配合剤を配合したことを特徴とする動物用飼料。



【公開番号】特開2006−333842(P2006−333842A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−165655(P2005−165655)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】