説明

駆動モータ付き歯車装置

【課題】 装置全体を小型化するとともに、製作費を安価とする。
【解決手段】 偏心差動減速機56において、駆動モータ58の出力軸59の回転を、前記2本以上のクランクシャフト50のうちのいずれか1本50aに伝達して回転させるとともに、残りのクランクシャフト50bを前記1本のクランクシャフト50aに同期して回転させるようにしたので、装置全体の軸方向長さを短縮することができて、小型化することができるとともに、製作費を安価とすることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、2本以上のクランクシャフトを有し、該クランクシャフトを回転させることによってピニオンを偏心回転させる偏心差動減速機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の偏心差動減速機としては、例えば図4、5に示すようなものが知られている。このものは、内周に多数の歯13が設けられた回転ケース14と、回転ケース14内に設けられ、外周に回転ケース14の歯13より歯数が若干少なくかつ回転ケース14の歯13に噛み合う外歯15が設けられたピニオン16と、ピニオン16にクランク部18が挿入された2本以上のクランクシャフト19と、クランクシャフト19を回転可能に支持するキャリア17と、外周に外歯車21、22が取り付けられた回転体20と、を備え、駆動モータ26の出力軸24の一端に固定された外歯車25が前記外歯車22に噛み合うとともに、前記外歯車21が各クランクシャフト19の他端に固定された2個の外歯車23に噛み合うようにしたものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来の偏心差動減速機にあっては、駆動モータ26の回転を外歯車25、22、21、23を介してクランクシャフト19に伝達するようにしているため、装置全体が軸方向に長くなるという問題点がある。
【0004】
この発明は、装置全体を小型化することができるとともに、製作費を安価とすることができる偏心差動減速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的は、内周に多数の歯が設けられた回転ケースと、回転ケース内に設けられ、外周に回転ケースの歯より歯数が若干少なくかつ回転ケースの歯に噛み合う外歯が設けられたピニオンと、ピニオンにクランク部が挿入された2本以上のクランクシャフトと、クランクシャフトを回転可能に支持するキャリアとを備えた偏心差動減速機において、駆動モータの出力軸の回転を、前記2本以上のクランクシャフトのうちのいずれか1本に伝達して回転させるとともに、残りのクランクシャフトを前記1本のクランクシャフトに同期して回転させることにより達成することができる。
【発明の効果】
【0006】
この偏心差動減速機によれば、駆動モータの出力軸の回転を、前記2本以上のクランクシャフトのうちのいずれか1本に伝達して回転させるとともに、残りのクランクシャフトを前記1本のクランクシャフトに同期して回転させるようにしたので、装置全体の軸方向長さを短縮することができ、また、製作費を安価とすることもできる。
【0007】
また、請求項2に記載のように、2本以上のクランクシャフトのうちのいずれか1本の回転軸線上に駆動モータを配置するとともに、該1本のクランクシャフトと駆動モータの出力軸とを直結し、該クランクシャフトに駆動モータからの駆動力が歯車を介することなく直接付与されるようにすれば、歯車の噛み合いに基づくバックラッシや騒音が生じることはなく、これにより、低騒音としながら回転ケースを高精度で減速回転させることができる。しかも、前述のように歯車を省略して駆動モータの出力軸とクランクシャフトを直結したので、製作費を安価とすることもできる。
【実施例】
【0008】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1、2、3において、29は図示していない産業ロボット機体やインデックス装置等の装置本体に固定されたフランジ部材であり、このフランジ部材29の中央近傍に設けられた孔(通路)には筒体32、33が挿入されて固定されている。これら筒体32、33は中央近傍に孔32a、33aを有し、これらの孔32a、33aは配管、配線を通す通路30として使用される。前述したフランジ部材29、筒体32、33は全体として中央近傍に通路を有する固定部材31を構成する。
【0009】
この固定部材31の外側には該固定部材31と同軸で円筒状をした回転ケース36が遊嵌され、この回転ケース36の内周でその軸方向中央部には円柱状をした多数のピン歯37がほぼ半分だけ埋設された状態で設けられている。そして、これらのピン歯37は軸方向に延びるとともに周方向に等距離離れて配置されている。39は円板状をした2個のピニオンであり、これらのピニオン39の中央部には前記筒体32より大径の貫通孔40が形成されている。そして、これらピニオン39は貫通孔40内に筒体32が遊嵌された状態で固定部材31と回転ケース36との間、ここでは、回転ケース36の内部で、筒体32の外側に設けられている。また、これらピニオン39の外周には回転ケース36のピン歯37より若干歯数が少ない外歯41が形成され、これらの外歯41はサイクロイド歯から構成されるとともに、前記ピン歯37に全歯で噛み合っている。44は固定部材31と回転ケース36との間に設けられ、固定部材31に取り付けられたキャリアであり、このキャリア44はピニオン39の軸方向一側に配置された一側フランジ45と、ピニオン39の軸方向他側に配置された他側フランジ46と、これら一側、他側フランジ45、46同士を連結するとともにピニオン39内に遊嵌された軸方向に延びる複数本の連結ロッド47と、から構成されている。そして、このキャリア44の一側フランジ45には筒体32の一端部が取り付けられ、他側フランジ46にはフランジ部材29が取り付けられている。49は一側、他側フランジ45、46と回転ケース36との間に介装された一対の軸受であり、これらの軸受49によってキャリア44と回転ケース36とは相対回転可能となる。50は周方向に等距離離れて配置された軸方向に延びる2本以上、ここでは2本のクランクシャフトであり、各クランクシャフト50はその一端が軸受51を介して一側フランジ45に、他端部が軸受52を介して他側フランジ46に回転可能に支持されている。また、各クランクシャフト50は中央部に偏心した2個のクランク部53を有し、各クランク部53はそれぞれピニオン39に形成された貫通孔54にニードル軸受55を介装した状態で挿入されている。前述した回転ケース36、ピニオン39、キャリア44、クランクシャフト50は全体として、入力回転を高比で減速することができる偏心差動減速機56を構成する。
【0010】
58は他側フランジ46より他側で固定部材31の外側に配置、詳しくは筒体33の外周に固定された1台の駆動モータ(サーボモータ)であり、この駆動モータ58は、図1に示すように、いずれか1本のクランクシャフト50aの回転軸線上に配置されるとともに、その出力軸59の一端が継手60を介して前記1本のクランクシャフト50aの他端に直結されている。この結果、前記駆動モータ58が作動して出力軸59からクランクシャフト50aに駆動力が直接付与されると、該クランクシャフト50aが回転してピニオン39が偏心回転(公転)する。61は他側フランジ46より他側で固定部材31の外側に配置、詳しくは筒体33の外周に固定され、前記駆動モータ58に重なり合う(軸方向位置が一致し、並設している)検出器としてのエンコーダであり、このエンコーダ61は前記駆動モータ58から 180度離れて配置されるとともに、その検出軸62が残りのクランクシャフト50の1本、即ちクランクシャフト50bの他端に継手63を介して連結されている。そして、このエンコーダ61は同期して回転するクランクシャフト50の回転量を検出し、その検出結果を基に駆動モータ58を制御する。65は前記フランジ部材29と筒体33の他端とに連結され、駆動モータ58およびエンコーダ61を覆う有底円筒状のカバーであり、66は回転ケース36と一側フランジ45との間および回転ケース36とフランジ部材29との間にそれぞれ介装されたオイルシールである。
【0011】
次に、この発明の実施例の作用について説明する。
今、駆動モータ58が作動して出力軸59の回転がクランクシャフト50aに伝達され、これにより、ピニオン39が該クランクシャフト50aと同一回転数で偏心回転(公転)し、また、クランクシャフト50bも同一回転数で回転しているとする。このとき、ピニオン39の外歯41は歯数が回転ケース36のピン歯37より若干少なく、かつ、該回転ケース36のピン歯37に全歯で噛み合っており、しかも、キャリア44が回転できないよう固定部材31に固定されているため、前記駆動モータ58の回転は高比に減速されて回転ケース36から取り出される。このとき、駆動モータ58の出力軸59の回転を、前記2本以上のクランクシャフト50のうちのいずれか1本50aに伝達して回転させるとともに、残りのクランクシャフト50bを前記1本のクランクシャフト50aに同期して回転させるようにしたので、装置全体の軸方向長さを短縮することができ、また、製作費を安価とすることもできる。
【0012】
ここで、前述のように駆動モータ58の出力軸59をクランクシャフト50aに直結し、該クランクシャフト50aに駆動モータ58からの駆動力を、従来技術のような歯車を介することなく直接付与するようにしているため、歯車の噛み合いに基づくバックラッシや騒音が生じることはなく、これにより、低騒音としながら回転ケース36を高精度で減速回転させることができる。しかも、前述のように歯車を省略して駆動モータ58の出力軸59とクランクシャフト50aを直結することにより、駆動モータ58をクランクシャフト50aに接近させるとともに、エンコーダ61を駆動モータ58から分離して駆動モータ58から離れた他のクランクシャフト50bに連結するようにしているため、これら駆動モータ58とエンコーダ61とを互いに重なり合わせた状態(軸方向位置を一致させた並設状態)で配置することができ、これにより、装置全体の軸方向長さを飛躍的に短縮することができる。さらに、前述のことからエンコーダ61は発熱する駆動モータ58から離隔して配置され、これにより、エンコーダ61に対する駆動モータ58からの熱影響が低減してエンコーダ61の検出精度の低下が防止される。さらに、前述のように歯車を省略したので、製作費を安価とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0013】
この発明は、偏心差動減速機に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の一実施例を示す正面断面図である。
【図2】図1のIーI矢視断面図である。
【図3】その概要を説明する正面断面図である。
【図4】従来の偏心差動減速機の概要を示す正面断面図である。
【図5】その図2と同様の断面図である。
【符号の説明】
【0015】
31…固定部材 36…回転ケース
37…歯 39…ピニオン
41…外歯 44…キャリア
50…クランクシャフト 53…クランク部
58…駆動モータ 59…出力軸
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、クランクシャフトを回転させることによってピニオンを偏心回転させる偏心差動減速機を有する駆動モータ付き歯車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の駆動モータ付き歯車装置としては、例えば図4、5に示すようなものが知られている。このものは、内周に多数の歯13が設けられた回転ケース14と、回転ケース14内に設けられ、外周に回転ケース14の歯13より歯数が若干少なくかつ回転ケース14の歯13に噛み合う外歯15が設けられたピニオン16と、ピニオン16にクランク部18が挿入された2本以上のクランクシャフト19と、クランクシャフト19を回転可能に支持するキャリア17と、外周に外歯車21、22が取り付けられた回転体20と、を備え、クランクシャフト19の回転軸線に平行な駆動モータ26の出力軸24の一端に固定された外歯車25が前記外歯車22に噛み合うとともに、前記外歯車21が各クランクシャフト19の他端に固定された2個の外歯車23に噛み合うようにしたものである。
【0003】
また、従来の駆動モータ付き歯車装置としては、例えば以下の特許文献1、2に記載されているようなものも知られている
【特許文献1】実開昭64−38352号公報
【特許文献2】実開平6−6786号公報
【0004】
この特許文献1に記載のものは、内周に多数のピンが設けられた内歯歯車、外周に内歯歯車のピンより歯数が若干少なくかつ内歯歯車のピンに噛み合う歯形部が設けられた外歯歯車、外歯歯車に偏心カムが挿入されたカム軸およびカム軸を回転可能に支持する第1、2支持部材からなるキャリアを備えた偏心差動減速機と、その出力軸が前記カム軸の回転軸線と直交するよう、前記偏心差動減速機の外歯歯車の偏心運動中心から半径方向外側に配置された駆動モータとを備え、前記駆動モータからの駆動力を前記外歯歯車の偏心運動中心と同軸の中空である入力軸を介してカム軸に付与するとともに、前記偏心差動減速機の中心部に、前記入力軸の中空部に連通する中空孔を形成したものである。
【0005】
また、特許文献2に記載のものは、前記特許文献1と同様の構造をした偏心差動減速機の環状部材および保持部材の他側部間にシール部材を介装する一方、前記保持部材および偏心ギア内に第2サーボモータによって駆動回転される円筒状の第1駆動シャフトを遊嵌するとともに、該第1駆動シャフト内に第3サーボモータによって駆動回転される円筒状の第2駆動シャフトを挿入したものである、
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の駆動モータ付き歯車装置にあっては、駆動モータ26の回転を外歯車25、22、21、23を介してクランクシャフト19に伝達するようにしているため、装置全体が軸方向に長くなるという問題点がある。
【0007】
この発明は、装置全体を小型化することができるとともに、製作費を安価とすることができる駆動モータ付き歯車装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、内周に多数の歯が設けられたケス、外にケースの歯より歯数が若干少なくかつケースの歯に噛み合う外歯が設けられたピニオン、ピニオンにクランク部が挿入されたクランクシャフトおよびクランクシャフトを回転可能に支持するキャリアを備えた偏心差動減速機と、その中央近傍に設けられた孔を有し、前記キャリアの他側部に取り付けられたモータ取着部材と、前記偏心差動減速機のピニオンの偏心運動中心から半径方向外側に配置され、前記モータ取着部材に取り付けられるとともに、前記クランクシャフトに駆動力を付与する駆動モータとを備え、前記偏心差動減速機の中心部が中空に構成された駆動モータ付き歯車装置において、前記ケースおよび前記キャリアの一側部間にオイルシールを介装するとともに、ケースおよびキャリアの他側部間にオイルシールを介装し、さらに、前記キャリアの一側部に取り付けられるとともに、前記ピニオン内に遊嵌されかつ前記モータ取着部材の孔に挿入された筒体を設けたことにより達成することができる。
【発明の効果】
【0009】
この駆動モータ付き歯車装置によれば、駆動モータの出力軸の回転を、前記2本以上のクランクシャフトのうちのいずれか1本に伝達して回転させるとともに、残りのクランクシャフトを前記1本のクランクシャフトに同期して回転させるようにしたので、装置全体の軸方向長さを短縮することができ、また、製作費を安価とすることもできる
【実施例】
【0010】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1、2、3において、29は図示していない産業ロボット機体やインデックス装置等の装置本体に固定されたフランジ部材であり、このフランジ部材29の中央近傍に設けられた孔(通路)には筒体32、33が挿入されて固定されている。これら筒体32、33は中央近傍に孔32a、33aを有し、これらの孔32a、33aは配管、配線を通す通路30として使用される。前述したフランジ部材29、筒体32、33は全体として中央近傍に通路を有する固定部材31を構成する。
【0011】
この固定部材31の外側には該固定部材31と同軸で円筒状をした回転ケース36が遊嵌され、この回転ケース36の内周でその軸方向中央部には円柱状をした多数のピン歯37がほぼ半分だけ埋設された状態で設けられている。そして、これらのピン歯37は軸方向に延びるとともに周方向に等距離離れて配置されている。39は円板状をした2個のピニオンであり、これらのピニオン39の中央部には前記筒体32より大径の貫通孔40が形成されている。そして、これらピニオン39は貫通孔40内に筒体32が遊嵌された状態で固定部材31と回転ケース36との間、ここでは、回転ケース36の内部で、筒体32の外側に設けられている。また、これらピニオン39の外周には回転ケース36のピン歯37より若干歯数が少ない外歯41が形成され、これらの外歯41はサイクロイド歯から構成されるとともに、前記ピン歯37に全歯で噛み合っている。44は固定部材31と回転ケース36との間に設けられ、固定部材31に取り付けられたキャリアであり、このキャリア44はピニオン39の軸方向一側に配置された一側フランジ45と、ピニオン39の軸方向他側に配置された他側フランジ46と、これら一側、他側フランジ45、46同士を連結するとともにピニオン39内に遊嵌された軸方向に延びる複数本の連結ロッド47と、から構成されている。そして、このキャリア44の一側フランジ45(一側部)には筒体32の一端部が取り付けられ、他側フランジ46(キャリア44の他側部)にはフランジ部材29が取り付けられている。このように、この偏心差動減速機56の中心部は中空に構成されている。49は一側、他側フランジ45、46と回転ケース36との間に介装された一対の軸受であり、これらの軸受49によってキャリア44と回転ケース36とは相対回転可能となる。50は周方向に等距離離れて配置された軸方向に延びる2本以上、ここでは2本のクランクシャフトであり、各クランクシャフト50はその一端が軸受51を介して一側フランジ45に、他端部が軸受52を介して他側フランジ46に回転可能に支持されている。また、各クランクシャフト50は中央部に偏心した2個のクランク部53を有し、各クランク部53はそれぞれピニオン39に形成された貫通孔54にニードル軸受55を介装した状態で挿入されている。前述した回転ケース36、ピニオン39、キャリア44、クランクシャフト50は全体として、入力回転を高比で減速することができる偏心差動減速機56を構成する。
【0012】
58は他側フランジ46より他側で固定部材31の外側に配置、詳しくは筒体33の外周側でモータ取着部材としてのフランジ部材29に取り付けられて固定された1台の駆動モータ(サーボモータ)であり、この結果、該駆動モータ58はピニオン39の偏心運動中心から半径方向外側に配置されることになる。また、この駆動モータ58は、図1に示すように、いずれか1本のクランクシャフト50aの回転軸線上に配置されるとともに、その出力軸59の一端が継手60を介して前記1本のクランクシャフト50aの他端に直結されている。この結果、前記駆動モータ58が作動して出力軸59からクランクシャフト50aに駆動力が直接付与されると、該クランクシャフト50aが回転してピニオン39が偏心回転(公転)する。61は他側フランジ46より他側で固定部材31の外側に配置、詳しくは筒体33の外周に固定され、前記駆動モータ58に重なり合う(軸方向位置が一致し、並設している)検出器としてのエンコーダであり、このエンコーダ61は前記駆動モータ58から 180度離れて配置されるとともに、その検出軸62が残りのクランクシャフト50の1本、即ちクランクシャフト50bの他端に継手63を介して連結されている。そして、このエンコーダ61は同期して回転するクランクシャフト50の回転量を検出し、その検出結果を基に駆動モータ58を制御する。65は前記フランジ部材29と筒体33の他端とに連結され、駆動モータ58およびエンコーダ61を覆う有底円筒状のカバーであり、66は回転ケース36と一側フランジ45との間および回転ケース36と他側フランジ46との間にフランジ部材29を介してそれぞれ介装されたオイルシールである。
【0013】
次に、この発明の実施例の作用について説明する。
今、駆動モータ58が作動して出力軸59の回転がクランクシャフト50aに伝達され、これにより、ピニオン39が該クランクシャフト50aと同一回転数で偏心回転(公転)し、また、クランクシャフト50bも同一回転数で回転しているとする。このとき、ピニオン39の外歯41は歯数が回転ケース36のピン歯37より若干少なく、かつ、該回転ケース36のピン歯37に全歯で噛み合っており、しかも、キャリア44が回転できないよう固定部材31に固定されているため、前記駆動モータ58の回転は高比に減速されて回転ケース36から取り出される。このとき、駆動モータ58の出力軸59の回転を、前記2本以上のクランクシャフト50のうちのいずれか1本50aに伝達して回転させるとともに、残りのクランクシャフト50bを前記1本のクランクシャフト50aに同期して回転させるようにしたので、装置全体の軸方向長さを短縮することができ、また、製作費を安価とすることもできる。
【0014】
ここで、前述のように駆動モータ58の出力軸59をクランクシャフト50aに直結し、該クランクシャフト50aに駆動モータ58からの駆動力を、従来技術のような歯車を介することなく直接付与するようにしているため、歯車の噛み合いに基づくバックラッシや騒音が生じることはなく、これにより、低騒音としながら回転ケース36を高精度で減速回転させることができる。しかも、前述のように歯車を省略して駆動モータ58の出力軸59とクランクシャフト50aを直結することにより、駆動モータ58をクランクシャフト50aに接近させるとともに、エンコーダ61を駆動モータ58から分離して駆動モータ58から離れた他のクランクシャフト50bに連結するようにしているため、これら駆動モータ58とエンコーダ61とを互いに重なり合わせた状態(軸方向位置を一致させた並設状態)で配置することができ、これにより、装置全体の軸方向長さを飛躍的に短縮することができる。さらに、前述のことからエンコーダ61は発熱する駆動モータ58から離隔して配置され、これにより、エンコーダ61に対する駆動モータ58からの熱影響が低減してエンコーダ61の検出精度の低下が防止される。さらに、前述のように歯車を省略したので、製作費を安価とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0015】
この発明は、駆動モータ付き歯車装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の一実施例を示す正面断面図である。
【図2】図1のIーI矢視断面図である。
【図3】その概要を説明する正面断面図である。
【図4】従来の駆動モータ付き歯車装置の概要を示す正面断面図である。
【図5】その図2と同様の断面図である。
【符号の説明】
【0017】
31…固定部材 36…回転ケース
37…歯 39…ピニオン
41…外歯 44…キャリア
50…クランクシャフト 53…クランク部
58…駆動モータ 59…出力軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周に多数の歯が設けられた回転ケースと、回転ケース内に設けられ、外周に回転ケースの歯より歯数が若干少なくかつ回転ケースの歯に噛み合う外歯が設けられたピニオンと、ピニオンにクランク部が挿入された2本以上のクランクシャフトと、クランクシャフトを回転可能に支持するキャリアとを備えた偏心差動減速機において、駆動モータの出力軸の回転を、前記2本以上のクランクシャフトのうちのいずれか1本に伝達して回転させるとともに、残りのクランクシャフトを前記1本のクランクシャフトに同期して回転させるようにしたことを特徴とする偏心差動減速機。
【請求項2】
前記いずれか1本のクランクシャフトの回転軸線上に駆動モータを配置するとともに、該1本のクランクシャフトと駆動モータの出力軸とを直結するようにした請求項1記載の偏心差動減速機。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周に多数の歯が設けられたケス、外にケースの歯より歯数が若干少なくかつケースの歯に噛み合う外歯が設けられたピニオン、ピニオンにクランク部が挿入されたクランクシャフトおよびクランクシャフトを回転可能に支持するキャリアを備えた偏心差動減速機と、その中央近傍に設けられた孔を有し、前記キャリアの他側部に取り付けられたモータ取着部材と、前記偏心差動減速機のピニオンの偏心運動中心から半径方向外側に配置され、前記モータ取着部材に取り付けられるとともに、前記クランクシャフトに駆動力を付与する駆動モータとを備え、前記偏心差動減速機の中心部が中空に構成された駆動モータ付き歯車装置において、前記ケースおよび前記キャリアの一側部間にオイルシールを介装するとともに、ケースおよびキャリアの他側部間にオイルシールを介装し、さらに、前記キャリアの一側部に取り付けられるとともに、前記ピニオン内に遊嵌されかつ前記モータ取着部材の孔に挿入された筒体を設けたことを特徴とする駆動モータ付き歯車装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−10089(P2006−10089A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−269033(P2005−269033)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【分割の表示】特願2005−236416(P2005−236416)の分割
【原出願日】平成7年2月21日(1995.2.21)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【Fターム(参考)】