説明

駆動力伝達機構

【課題】 従来、全方向への駆動を行う機構として、球体を2つ以上の駆動力伝達機構により駆動を駆動を行う方式があった。しかしながら、対となる駆動力伝達機構が動力伝達する際に、被駆動体との接触位置において、滑りを生じ、表面で磨耗が発生するという問題があった。
【解決手段】 本発明における駆動力伝達機構は、被駆動体、差動機構、駆動輪、回転力発生体を有する。差動機構により、駆動輪における回転数の差を吸収し、接触面の磨耗の抑制の実現が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動力を伝達する機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動体において、その操舵角を変えることで方向変換するものが存在した。しかしながら、この方式では、操舵角を所望する進行方向に向けるのに時間を有し、瞬時に任意の方向に動くホロノミックな移動の実現は不可能であるという問題があった。
【0003】
上記問題を解決するために、球体を駆動させて全方向移動を行う方法が報告されている(例えば、非特許文献1参照。)。これは図1に示すように、被駆動体1である球体を、2組の回転力発生部3a、3bと駆動輪2a、2bにより駆動させる機構である。
【非特許文献1】“4個の球を用いた全方向移動機構に関する研究”;山田 健介、宮本 共生、臼井 清一;日本機械学會論文集。C編、Transactions of the Japan Society of Mechanical Engineers。C 71(708)pp。2557−2562 20050825
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の駆動機構は、対となる駆動機構が駆動する際に、被駆動体との接触位置において、滑りを生じ、表面の磨耗を発生するという問題がある。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、駆動させる際に、回転数の差を吸収し、接触面の磨り減りを抑えた駆動機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の駆動機構は、差動機構を用いて、左右の駆動輪の回転数の差を吸収し、被駆動体との表面における滑りおよび、滑りによる磨耗を抑えるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、以下に記載されるような効果を奏する。
請求項1記載の駆動力伝達機構によれば、駆動する際の左右の回転数の差を、差動機構の原理により吸収し、被駆動体との接触面での滑りおよび滑りによる磨耗の低減・抑制を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0009】
図2は本発明の従来の主に移動体用に用いられていた駆動力伝達機構を示す上面図である。
図2において、駆動力伝達機構は、被駆動体1、駆動輪2、回転力発生体3、回転力伝達機構4、差動機構外郭5、傘歯車6a、6b、傘歯車7a、7bにより構成される。
【0010】
被駆動体1について説明する。被駆動体は球形であることが望ましいが、これに限定されない。また、材質は、推進力発生のためにはゴムが望ましいが、これに限定されるものではなく、金属、木材、樹脂などでもよい。
【0011】
駆動輪2について説明する。駆動輪2は、円形もしくは球形であることが望ましいが、これに限定されない。また、材質は、推進力発生のためにはゴムが望ましいが、これに限定されるものではなく、金属、木材、樹脂などでもよく、構造ともにこれに限定されるものではない。
【0012】
回転力発生体3について説明する。回転力発生体3は、電磁アクチュエータであることが望ましいが、これに限定されるものではなく、超音波や流体をもち他ものでも可能である。
【0013】
回転力伝達機構4について説明する。回転力伝達機構4は回転力発生体3の回転力を伝達するものであり、平歯車であることが望ましいが、ベルト、チェーン、摩擦車など、回転力が伝達できれば、これに限定されるものではない。また、材質は、金属が望ましいが、これに限定されるものではなく、木材、樹脂などでもよく、構造ともにこれに限定されるものではない。
【0014】
差動機構外郭5について説明する。差動機構外郭5は回転力伝達機構4によって回転駆動される。材質は、金属が望ましいが、これに限定されるものではなく、木材、樹脂などでもよく、構造ともにこれに限定されるものではない。
【0015】
傘歯車6a、傘歯車6bについて説明する。傘歯車6a、傘歯車6bは、差動機構外郭5により、回転対偶を維持できるものである。材質は、金属が望ましいが、これに限定されるものではなく、木材、樹脂などでもよく、構造ともにこれに限定されるものではない。
【0016】
傘歯車7a、傘歯車7bについて説明する。傘歯車7a、傘歯車7bは、傘歯車6a、傘歯車6bにかみ合わされており、傘歯車6a、傘歯車6bと合わせることで、差動機構を構成する。
材質は、金属が望ましいが、これに限定されるものではなく、木材、樹脂などでもよく、構造ともにこれに限定されるものではない。
【0017】
支持輪8について説明する。支持輪8は、駆動輪2の反対側に位置し、被駆動体の支持を目的としたものである。材質は、金属が望ましいが、これに限定されるものではなく、木材、樹脂などでもよく、構造ともにこれに限定されるものではない。
【0018】
駆動力伝達機構9について説明する。駆動力伝達機構は、回転力発生体、差動機構、駆動輪、被駆動体を有し、回転数の差を吸収する駆動伝達を行うものである。
【0019】
駆動機構10について説明する。駆動機構10は、駆動力伝達機構の数は2個持つことが簡易さの点では望ましいがこれに限定されるものではない。また、支持輪8を有する。
【0020】
図3は本発明の駆動力伝達機構を2対用いた場合の構成例を示す図である。駆動力伝達機構の数は2個であることが簡易さの点では望ましいがこれに限定されるものではない。
【0021】
図4は駆動力伝達機構を用いた移動体の一例を示す図である。移動体本体11について説明する。移動体本体11は金属が望ましいが、これに限定されるものではなく、木材、樹脂などでもよく、構造ともにこれに限定されるものではない。
また、駆動機構10の数は3個以上あれば、全方向移動および任意旋回運動を実現可能である。その際には非特許文献1に示されたように、駆動輪と回転力発生体を、駆動機構同士で共有し、全体としての駆動輪、回転力発生体の数を減らすことも可能である。
以上のことから、本発明を実施するための最良の形態によれば、差動機構により、駆動輪における回転数の差を吸収し、接触面の磨耗の抑制した駆動力伝達の実現が可能となる。
【0022】
なお、本発明は上述の発明を実施するための最良の形態に限らず本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】従来の全方向移動体用の駆動力伝達機構の上面図である。
【図2】本発明の駆動力伝達機構の被駆動体との接触部分の拡大図である。
【図3】本発明の駆動力伝達機構を2対用いた場合の構成例を示す図である。
【図4】駆動力伝達機構を用いた移動体の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0024】
1‥‥被駆動体、2‥‥駆動輪、3‥・回転力発生体、4‥‥回転力伝達機構、5‥‥差動機構外郭、6a‥‥傘歯車、6b‥‥傘歯車、7a‥‥傘歯車、7b‥‥傘歯車、8‥‥支持輪、9‥‥駆動力伝達機構、10‥‥駆動機構、11‥‥移動体本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の回転力発生体、差動機構、駆動輪、被駆動体、を有する駆動力伝達機構
(イ)回転力を発生させる回転力発生体
(ロ)上記回転力発生部により発生した回転力を伝達する差動機構
(ハ)上記差動機構に搭載された駆動輪
(ニ)上記駆動輪により回転される被駆動体
上記差動機構を有し、回転数の差を吸収することで、表面での磨耗を抑える駆動力伝達機構

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−112217(P2011−112217A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282154(P2009−282154)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(509342120)
【Fターム(参考)】