説明

駆動装置、定着装置、及び画像形成装置

【課題】直線的に移動させる回転体の移動範囲を従来よりも大きく取れ、省スペースで、確実にギヤ駆動を行える駆動装置を提供する。
【解決手段】駆動装置に備える駆動機構160は、加圧ローラ64の加圧駆動ギヤ164には、m=1、Z69のギヤを配し、加圧駆動ギヤ164に噛み合うアイドラギヤA165にはm=1、Z22のギヤを配している。また、加圧ローラ64に玉軸受Φ62を加圧円形形状部材162として、アイドラギヤA165には、アイドラギヤA165の軸心を中心としたΦ29の円形形状部を有したアイドラ円形形状部材163を設けている。また、アイドラ円形形状部材163は、アイドラギヤA165の軸心と、このアイドラギヤA165に噛み合うアイドラギヤB166の軸心に保持しており、アイドラギヤB166の軸心を中心にアイドラギヤA165とともに回動するように構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、複写機、ファクシミリ、複合機等の画像形成装置に用いられる駆動装置、この駆動装置を具備した定着装置、及びこの定着装置を備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、プリンタ、複写機、ファクシミリ、複合機等の画像形成装置に用いられる駆動装置において、回転体にギヤを介して駆動力を伝達する様々な駆動機構を備えた駆動装置が提案されてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、次のような感光体ドラムの駆動機構が開示されている。4つの感光体ドラムY、M、C、Kを有するタンデム式の画像形成装置において、感光体ドラムKは感光体ドラムK用の駆動モータで回転駆動され、感光体ドラムY、M、Cは1つのカラー駆動モータで回転駆動されている。ここで、感光体ドラムY、M、Cには、それぞれ同軸上に感光体ギヤが設けれれておリ、駆動モータの回転軸に接続されたギヤで、感光体ドラムY、Mの感光体ギヤに直接駆動力を伝達し、感光体ドラムCの感光体ギヤには、感光体ドラムMの感光体ギヤからアイドラギヤを介して駆動力を伝達する。
【0004】
また、特許文献2には、次のような給紙装置の駆動機構が開示されている。画像形成装置に用いられる給紙装置において、シート収容手段に積載されたシートを確実に送り出すために、送り出すシートの積載面の高さに応じ、回転自在に支持されたアーム部材の先端に給紙ローラを設け、アーム部材のアーム軸(支持点)を中心に回動させて移動させる。ここで、給紙ローラへの回転駆動力の伝達は、アーム軸の同軸上に設けた駆動ギヤから、アーム上にそれぞれの回転軸を設けた複数のアイドラギヤを介して行なわれるというものである。
【0005】
また、1つの駆動モータで複数の回転体を回転駆動させ、かつ、少なくとも1つの回転体を移動させる駆動機構の代表的な例としては、画像形成装置に用いられる定着装置に用いられるものが挙げられる。従来から、駆動モータにより回転駆動される軸心が移動しない回転体である定着ローラと、軸心が移動する回転体である加圧ローラとを備える定着装置が用いられてきた。ここで、加圧ローラを移動可能に設ける目的は、定着するシートに形成した画像形成種別(両面/片面、モノクロ/フルカラー等)、シートの種別、厚み等により、定着ローラと加圧ローラとで形成するニップ部の幅や、シートを挟持する圧力を調整するためである。このような定着装置の駆動機構では、定着ローラに設けた駆動ギヤと複数のアイドラギヤを介して、加圧ローラに設けた駆動ギヤに回転駆動力を伝達するのが一般的であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そして、加圧ローラを移動させる定着装置では、定着装置の前後の装置とのシートの受け渡しをスムーズに行ないジャム等に不具合を抑制するため、加圧ローラを直線的に移動させる必要がある。これは次ぎの理由による。
【0007】
定着装置で定着を行なうシートの、ニップ部を形成する定着ローラと加圧ローラの軸心を結ぶ線分に対する、ニップ部への搬入角度とニップ部からの搬出角度とはほぼ等しくなる。また、このニップ部へのシートの搬出入角度は、ニップ部の幅、シートの種類、シート厚等によっても変化する。しかし、加圧ローラを直線的に移動できず、定着ローラと加圧ローラの軸心を結ぶ線分自体が定着ローラの軸心を中心に振れると、変化する要素が増えてしまう。変化する要素が増えることで、加圧ローラを直線的に移動できる場合と比べて、定着装置の前後の装置とのシートの受け渡しをスムーズに行なうことが困難となる。また、それに対処する手段も、大型化、複雑化、高コスト化するとともに、故障の要因も増してしまう。さらに、ジャム等の不具合等が発生する確率も高くなる。そのため従来から、定着ローラの軸心を基点とする基準線分を定めて、この基準線分に沿って加圧ローラをできるだけ直線的に移動させ、変化する要素を減らし、ニップ部へのシートの基準線分に対する搬出入角度をほぼ等しく保ち、前後の装置との受渡しをスムーズに行うための手段を講じてジャム等の不具合等を抑制していた。
【0008】
また、近年、画像形成装置の様々な分野での利用の広がりにともない、画像形成できるシート厚の増加に対する要求が高まってきた。つまり、定着ローラとニップ部を形成する加圧ローラの直線的な移動範囲を広げる要求が高まってきた。
【0009】
しかしながら、従来の加圧ローラを回動する加圧レバーで押圧する構成の定着装置の駆動装置では、加圧ローラを移動させた場合でも加圧ローラの駆動ギヤに回転駆動力を得るために、噛み合うアイドラギヤのギヤピッチ円(以下、基準円という)に沿って加圧ローラを移動させる必要がある。加圧ローラに噛み合うアイドラギヤの基準円に沿って加圧ローラを移動させると、その移動の軌跡は円弧状になってしまう。そして、定着ローラと加圧ローラの軸心を結ぶ線分が定着ローラの軸心を中心に振れ、定着を行なうシートの基準線分に対するニップ部からの搬出入角度が変化してしまい、定着装置の前後の装置とのシートの受け渡しが不安定となって、ジャム等の不具合が発生する可能性高くなる。そして、加圧ローラを直線的に移動させることを優先し、噛み合うアイドラギヤの基準円から多少ずらしてギア駆動を行なうと、歯飛びが発生しギア駆動が不安定になってしい、確実なギア駆動が行なえなくなってしまう。
【0010】
また、加圧ローラの直線的な移動範囲を広げるためには、加圧ローラの駆動ギアか、加圧ローラの駆動ギアに基準円で噛み合うアイドラギヤのいずれかを大きくして、アイドラギヤの軸心から加圧ローラの駆動ギアの軸心への距離を大きくする必要がある。しかし、加圧ローラの駆動ギアかアイドラギヤのいずれかを大きくすると、定着装置が大型化してしまう。
【0011】
従来の加圧レバーを用いた定着装置の駆動装置における、加圧ローラが移動する場合の駆動機構の例を、図7を用いて説明する。図7は、従来の駆動装置の、定着ローラの定着駆動ギヤの基準円、加圧ローラの加圧駆動ギヤの基準円、及びアイドラギヤの基準円を用いた、加圧ローラと加圧レバーの移動についての説明図である。この駆動機構200では、定着駆動ギヤ201(定着ローラ)と加圧駆動ギヤ202(加圧ローラ)は、定着駆動ギヤ201と加圧駆動ギヤ202との軸心を最も近づけた際に、定着駆動ギヤ201の軸心の鉛直下方に加圧駆動ギヤ202の軸心が位置するように配置している。そして、定着駆動ギヤ201の軸心の鉛直下方に加圧駆動ギヤ202の軸心が位置する際の、定着駆動ギヤ201と加圧駆動ギヤ202の軸心を結ぶ線分を基準線分としている。また、本体側の駆動モータ(不図示)から定着駆動ギヤ201に伝達された回転駆動力を、加圧駆動ギヤ202に伝達するために、加圧駆動ギヤ202に噛み合うアイドラギヤ203と、このアイドラギヤ203と定着駆動ギヤ201に噛み合うアイドラギヤ204とが設けられている。なお、図7においては、説明の関係上、加圧駆動ギヤ202の移動範囲や、後述する押圧手段206の配置位置等は誇張・簡略化し、また、図示し易い位置としている。
【0012】
加圧駆動ギヤ202に噛み合うアイドラギヤ203の軸心の鉛直方向の位置は加圧駆動ギヤ202の鉛直方向の移動範囲Lの中心であり、また、この軸心の水平方向の位置は軸心が移動しない定着駆動ギヤ201の軸心からβだけ図中右側である。また、アイドラギヤ204は、定着駆動ギヤ201とアイドラギヤ203とに噛み合うように配置されている。また、加圧駆動ギヤ202を移動させる加圧レバー205は、図中右側の端部は、アイドラギヤ203の軸心で回転可能に保持され、その中間部分に加圧駆動ギヤ202の軸心を回転可能に保持し、図中左側の端部近傍を押圧手段206で押圧されている。この押圧手段206は、加圧レバー205の左端部の上方に設けられたスプリング207とカム208からなり、このスプリング207とカム208は装置本体に支持されており、カム208が回転することで、アイドラギヤ203の軸心を中心に加圧レバー205を回動させる。この加圧レバー205の回動にともない、加圧レバー205に保持された加圧駆動ギヤ202が円弧状に移動することとなる。
【0013】
加圧駆動ギヤ202が円弧状に移動する場合、基準線分との水平方向のズレαは、加圧駆動ギヤ202の鉛直方向の移動範囲Lの中心位置で最大値となる。ここで、基準線分との水平方向のズレαが大きくなると、定着ローラと加圧ローラの軸心を結ぶ線分も、水平方向のズレαに比例して、定着ローラの軸心を中心に、基準線分に対して振れてしまう。
そして、定着を行なうシートの基準線分に対する搬出入角度を、ほぼ等しく保つことができなくなる。そして、定着装置の前後の装置とのシートの受け渡しが不安定となって、ジャム等の不具合が発生する可能性高くなる。そのため、水平方向のズレαは、できるだけ小さな値が望ましい。また、加圧駆動ギヤ202の鉛直方向の移動範囲Lも、近年の画像形成できるシート厚の増加に対する要求に応えるために大きく取れる方が望ましい。
【0014】
この駆動機構の例の構成では、加圧ローラの、定着ローラの軸心との水平方向のズレを小さく、かつ、鉛直方向の移動範囲を大きくするには、定着ローラの軸心から、加圧ローラの回動中心となるアイドラギヤの軸心への水平方向の距離を大きくする必要があった。すなわち、加圧駆動ギヤ202かアイドラギヤ203のいずれかを大きくする必要があった。そして、加圧駆動ギヤ202をあまり大きくすると、定着駆動ギヤ201又はその軸部材等に干渉してしまうため、アイドラギヤ203を大きくせざるを得ない。しかし、アイドラギヤ203を大きくするためのスペースを確保することは非常に困難であった。
【0015】
このように、1つの駆動モータで複数の回転体を回転駆動させ、かつ、少なくとも1つの回転体を直線的に移動させる構成で、移動させる回転体の移動範囲を大きく取り、省スペースで、確実にギヤ駆動を行う駆動装置を提供することをは困難であった。
【0016】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、直線的に移動させる回転体の移動範囲を従来よりも大きく取れ、省スペースで、確実にギヤ駆動を行える駆動装置を提供することを提供することである。
さらに、この駆動装置を具備することで、従来よりも直線的に移動させる回転体である加圧部材の移動範囲を大きく取れ、省スペースで、確実にギヤ駆動できる定着装置、及びこの定着装置を備えた画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、軸心が移動する回転体である軸移動回転体に取り付けられた駆動ギヤである移動駆動ギヤと、それに接続するアイドラギヤを有した駆動機構を備えた駆動装置において、前記軸移動回転体は一定距離を直線方向に移動可能であり、前記移動駆動ギヤと前記アイドラギヤは、それぞれギヤと同軸心の円形形状部を有した部材をギヤ又はギヤの軸部材に保持しており、前記移動駆動ギヤと前記アイドラギヤの円形形状部の半径の和は、前記駆動ギヤと前記アイドラギヤのギヤピッチ円の半径の和と同じ値であることを特徴とするものである。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の駆動装置において、駆動ギヤとアイドラギヤのピッチ間距離は、それぞれの円形形状部を有した部材の円形形状部が互いに押し当ることにより決まることを特徴とするものである。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の駆動装置において、軸心が移動しない回転体である軸固定回転体に取り付けられた駆動ギヤである固定駆動ギヤと、複数のアイドラギヤと、軸移動回転体に取り付けられた移動駆動ギヤとを有し、回転駆動される前記軸固定回転体の回転駆動力を、前記固定駆動ギヤと、前記複数のアイドラギヤとを介して、前記移動駆動ギヤに伝達し、前記軸移動回転体をギヤ駆動する駆動機構を備えた駆動装置であって、前記軸固定回転体と前記軸移動回転体とはニップ部を形成しており、前記軸移動回転体は前記ニップ部を介しても回転駆動され、前記移動駆動ギヤは、ワンウェイギヤであり、ギヤ駆動される前記軸移動回転体の回転速度より、前記ニップ部を介して回転駆動される該軸移動回転体の回転速度が速い場合には空転し、該ニップ部を介して回転駆動される該軸移動回転体の回転速度が遅い場合にはギヤ駆動することを特徴とするものである。
また、請求項4に記載の定着装置の発明は、請求項1又は2に記載の記載の駆動装置と、定着部材と、加圧部材とを、少なくとも備える定着装置であって、軸移動回転体が、加圧部材である加圧ローラでることを特徴とするものである。
また、請求項5に記載の定着装置の発明は、請求項3に記載の記載の駆動装置と、定着部材と、加圧部材とを、少なくとも備える定着装置であって、軸移動回転体が、加圧部材である加圧ローラであり、軸固定回転体が、定着部材である定着ローラ、又は定着部材を回転させる定着ローラであることを特徴とするものである。
また、請求項6に記載の画像形成装置の発明は、請求項4に記載の定着装置を備えたことを特徴とするものである。
また、請求項7に記載の発明は、請求項5記載の定着装置を備え、定着部材の回転速度に対し、加圧部材の回転速度が3%遅くなった場合にギヤ駆動とすることを特徴とするものである。
本発明は、直線的に移動する移動駆動ギヤとアイドラギヤとを噛み合せるために、アイドラギヤも移動させることができる。そして、互いのギヤピッチ円で噛み合せるために、移動駆動ギヤとアイドラギヤにそれぞれ円形形状部を有した部材を保持させ、それぞれの円形形状部の半径の和と、移動駆動ギヤとアイドラギヤのギヤピッチ円の半径の和とが同じ値になるようにしている。それぞれの円形形状部の半径の和と、移動駆動ギヤとアイドラギヤのギヤピッチ円の半径の和とが同じ値であるので、互いの円形形状部を押し当てることで、確実に互いのギヤピッチ円で噛み合せることができる。したがって、従来の構成のように、互いのギヤピッチ円を噛み合わせるために、移動駆動ギヤを保持する加圧レバーの回動中心をアイドラギヤの軸心にする必要がない。そのため、加圧レバーの移動駆動ギヤを保持する部分にルーズホール等を設けて、移動駆動ギヤを直線的に移動でき、移動駆動ギヤ又はアイドラギヤを大きくする必要もない。よって、直線的に移動させる回転体の移動範囲を従来よりも大きく取れ、省スペースで、確実に移動駆動ギヤとアイドラギヤとのギヤ駆動を行える。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、移動駆動ギヤ又はアイドラギヤを大きくすることなく、直線的に移動させる回転体の移動範囲を従来よりも大きく取れ、省スペースで、確実に移動駆動ギヤとアイドラギヤとのギヤ駆動を行える駆動装置を提供することができる。
さらに、この駆動装置を用いることで、ジャム等の不具合を抑制することができ、従来よりもギヤ移動範囲を大きく取れ、省スペースで、確実にギヤ駆動できる定着装置、及びこの定着装置を備えた画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置の概要図。
【図2】定着装置の要部の説明図。
【図3】加圧ローラと、加圧ローラの駆動ギヤに噛み合うアイドラギヤの説明図。
【図4】定着ローラの定着駆動ギヤの基準円、加圧ローラの加圧駆動ギヤの基準円、及び各アイドラギヤの基準円を用いた、加圧ローラと加圧レバーの移動についての説明図。
【図5】回転駆動される定着ローラから、加圧ローラへの回転駆動力伝達に関する説明図。
【図6】定着ローラと加圧ローラの回転速度差と、ジャム発生率との関係を示したグラフ。
【図7】従来の駆動装置の、定着ローラの定着駆動ギヤの基準円、加圧ローラの加圧駆動ギヤの基準円、及びアイドラギヤの基準円を用いた、加圧ローラと加圧レバーの移動についての説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を電写真方式の画像形成装置である複合機に備えた定着装置の駆動装置に適用した一実施形態について図を用いて説明する。本実施形態は、いわゆる中間転写方式のタンデム型のフルカラーの画像形成装置を例に挙げて説明するが、これに限られるものではない。また、図1は、本実施形態に係る画像形成装置の概要図、図2は、定着装置の要部の説明図、図3は、加圧ローラと、加圧ローラの駆動ギヤに噛み合うアイドラギヤの説明図である。図4は、定着ローラの定着駆動ギヤの基準円、加圧ローラの加圧駆動ギヤの基準円、及び各アイドラギヤの基準円を用いた、加圧ローラと加圧レバーの移動についての説明図、図5は、回転駆動される定着ローラから、加圧ローラへの回転駆動力伝達に関する説明図である。図6は、定着ローラと加圧ローラとの回転速度差と、ジャム発生率との関係を示したグラフである。
【0021】
まず、図1を用いてこの複合機100の概略について説明する。この複合機100は、原稿自動供給ユニット10と、原稿読取ユニット20と、書き込みユニット30と、画像形成ユニット40と、転写ユニット50と、定着ユニット60と両面ユニット70と、給紙ユニット80とを備えている。また、この複合機100は、中間転写方式のタンデム型カラー複合機である。
【0022】
原稿自動供給ユニット10は、原稿供給部11に載置された原稿(不図示)を後述する原稿読取ユニット20のコンタクトガラス21上に自動で供給し、後述する原稿読取ユニット20による原稿の画像情報の読み込みが行なわれた後、原稿排紙部12に排紙する。
【0023】
原稿読取ユニット20は、原稿の画像情報を読み取るためのものである。ユーザーの手作業、原稿読取ユニット20の上部に設けられたコンタクトガラス21上に原稿が置かれた状態で、操作部(不図示)のスタートスイッチが操作されると、原稿読取ユニット20による原稿読取が直ちに開始される。また、原稿自動供給ユニット10の原稿供給部11上に原稿が積載された状態でスタートスイッチが操作されると、積載された最上面の原稿がコンタクトガラス21上に自動給紙された後、原稿読取ユニット20による原稿読取が開始される。原稿読取ユニット20による読取開始により、コンタクトガラス21上に置かれた原稿は図中右方向へ移動する光源により光照明される。原稿からの反射光像は、反射光像を読み取るためのCCD等からなるイメージセンサ22により画像信号として画像情報が読み取られる。
【0024】
書き込みユニット30は、原稿読取ユニット20で読み取られた画像情報の信号に基づいてY、M、C、Kの各色毎にレーザ光を光変調し、後述する画像形成ユニット40の潜像担持体である感光体ドラム41Y、M、C、Kを、それぞれ露光して各感光体ドラム41上に静電潜像を形成する。
【0025】
画像形成ユニット40は、Y、M、C、Kの各色に対応した作像ユニット46Y、M、C、Kを備えている。各作像ユニット46は、潜像担持体たる感光体ドラム41の周囲に、帯電装置42、現像手段たる現像装置43、ドラムクリーニング装置44等を備えている。そして、潜像担持体としての各感光体ドラム41上の静電潜像を対応する色トナーで現像してトナー像化して、後述する転写ユニットの中間転写ベルト51上にフルカラーのトナー像を形成する。
【0026】
転写ユニット50は、中間転写ベルト51、各色に対応した一次転写ローラ52、複数の架張ローラ、駆動ローラ等を備えている。さらに、中間転写ベルト51の周囲には、中間転写ベルト51上に形成されたフルカラートナー像を記録体であるシートに転写するための転写装置53を備えている。また、この転写装置53によりフルカラーのトナー像が記録体に転写された後の中間転写ベルト51表面に残留しているトナーを除去回収するための中間転写クリーニング装置54、二次転写部にシートを適性なタイミングで受入れるためのレジストローラ89や、二次転写後のシートを後述する定着ユニット60へ搬送する搬送手段等が配置されている。
【0027】
定着ユニット60は、図2に示すように、少なくとも、定着部材である定着ベルト63、定着ローラ61、加熱ローラ62、加圧部材である加圧ローラ64等を備える定着装置からなる。また、加熱ローラ62内には赤外線ヒータ65を、加圧ローラ64内には赤外線ヒータ66を、それぞれ加熱源として有している加熱定着装置でもある。また、定着ローラ61と加熱ローラとに架け渡された無端状の定着ベルト63を内側から上方へ押圧して、所定の張力を発生させるテンションローラ67が設けられており、このテンションローラ67を保持部材を介して上方へ押圧するスプリング68が定着ユニット60の筐体に保持されている。また、無端状の定着ベルト63の開口端には寄り止めの突起リブ部69が形成されている。そして、転写ユニット50でシート上に形成されたフルカラートナー像を、定着ベルト63を介した定着ローラ61と、加圧ローラ64とで形成する定着ニップ部で、加圧及び加熱してシート上に定着する。
【0028】
また、定着ユニット60は、ユニット内の回転体を回転駆動させる駆動装置(不図示)を備えている。この駆動装置は、主に本体装置側に設けられた駆動モータ(不図示)と、駆動モータからの回転力を伝達される駆動軸(不図示)と、定着ローラ61と加圧ローラ64のそれぞれの同軸に設けれた駆動ギヤ(不図示)と、これらの駆動ギヤに回転力を伝達するアイドラギヤ(不図示)等からなる。そして、本体装置側に設けられた駆動モータの回転駆動力は、駆動軸やアイドラギヤ等を介して、定着ローラ61の駆動ギヤに伝達されて回転体である定着ローラ61を回転駆動する。ここで、本体装置側に設けられた駆動モータは、定着ユニット60の駆動装置用の専用のものであっても、他の装置の駆動装置と兼用であるものでも良い。
【0029】
定着ローラ61に伝達された回転駆動力は、定着ローラ61と加熱ローラ62とで架張している定着ベルト63に伝達されて定着ベルト63が回転し、定着ベルト63の回転にともない、回転体である加熱ローラ62が従動回転することとなる。また、定着ローラ61に伝達された回転駆動力は、定着ベルト63を介した定着ローラ61と加圧ローラ64とで形成されるニップ部、及び後述する駆動機構を介して加圧ローラ64に伝達されて回転体である加圧ローラ64が回転することとなる。
【0030】
また、上述した例では、加熱源に関して赤外線ヒータを加熱ローラ62と加圧ローラ64内有している構成について説明したが、これに限定されるものではなく、他加熱源としてはIHコイルを用いたIHヒータや面状発熱ヒータ等いずれでもニップ部を加熱することができればいずれでもよい。
【0031】
両面ユニット70は、片面に画像形成され定着済みのシートの表裏を反転させるものである。この表裏が反転されたシートは、再度の転写ユニット50の二次転写部へ搬送されることとなる。
【0032】
給紙ユニット80は、多段配設された4つの給紙カセット81を備えており、それぞれに複数枚のシートを積載している。また、複数組の搬送ローラ対82を有する給紙路も備えている。給紙カセット81には回動可能に支持された底板83を設けられており、この底板83上にシート束が積載される。また、給紙ユニット80には、この底板83上のシート束の最上位のシートを搬送するピックアップローラ84と、1枚に分離するリバースローラ85と、1枚に分離された最上位のシートを給紙経路に搬送する給紙ローラ86を備えている。そして、給紙経路下流側にはレジストローラ89が配置されている。
【0033】
また、複合機100の図中右側には、手差しトレイ90が設けられており、シートを積載して、転写ユニット50のレジストローラ89に向けて給紙することが可能である。そして、複合機100の図中左側には、定着ユニット60で定着され、排紙口から排紙ローラ93の回転により排紙されたシートを積載する排紙積載トレイ91を備えている。また、排紙口と定着ユニット60との間には、分岐部92が設けられており、排紙口側へ導くシートと、両面ユニット70へ導くシートとを分岐する。
【0034】
次に、この複合機100の作像プロセスについて説明する。図1に示すように、画像形成ユニット40の各作像ユニット46では、周知の電子写真プロセスにより、中間転写ベルト51の回転に合せて、各感光体ドラム41上に所定のタイミングで4色のトナー像が形成される。まず、作像ユニット46Yでは、左端の感光体上に形成されたイエロートナー像が中間転写ベルト51に転写される。作像ユニット46Mでは、次の感光体上に形成されたマゼンタトナー像がイエロートナー像の上に重ね合わされて中間転写ベルト51に転写される。作像ユニット46Cでは、更に次の感光体上に形成されたシアントナー像がマゼンタトナー像の上に重ね合わされて中間転写ベルト51に転写される。ブラック作像部46Kでは、右端の感光体上に形成されたブラックトナー像がシアントナー像の上に重ね合わされて中間転写ベルト51に転写される。このように、各感光体上に形成された4色のトナー像が順次重ね合わされて転写されることにより、中間転写ベルト51にフルカラートナー像が形成される。
【0035】
一方、中間転写ベルト51上へのフルカラートナー像の画像形成動作に平行して、給紙ユニット80の選択された給紙カセット81からシートが順次1枚ずつ分離給紙される。ここで、給紙カセット81に回動可能に支持された底板83上にシート束が積載されている。この底板83の回動によりシート束の最上位のシートがピックアップローラ84に当接可能な位置まで上昇する。この最上位のシートは、ピックアップローラ84の回転により給紙されて、リバースローラ85により1枚に分離される。そして、1枚に分離された最上位のシートは、給紙ローラ86の回転により、給紙カセット81から送り出されて、その搬送経路下流側に配置されているレジストローラ89へと搬送される。
【0036】
このようにして分離搬送されたシートは、レジストローラ89のニップに突き当たることにより搬送が一時止められ待機することとなる。レジストローラ89は、中間転写ベルト51上に形成されたフルカラートナー像と、シートの先端との位置関係が所定の位置になるよう、タイミングをとって回転を開始するように制御される。このレジストローラ89の回転により、待機しているシートが再び搬送される。これにより、このシートの所定位置に、転写装置53によって中間転写ベルト51上に形成されたフルカラートナー像が転写される。
【0037】
このようにしてフルカラートナー像が転写されたシートは、その搬送経路の下流側の定着手段たる定着ユニット60に送り込まれる。この定着ユニット60は、転写装置53により転写されたフルカラートナー像をシート上に定着する。フルカラートナー像が定着されたシートは、排紙ローラ93の回転により排紙積載トレイ91に排紙積載される。ここで、シートの両面に画像形成を行う場合には、分岐部92により定着済みのシートの搬送経路を切替え、両面ユニット70を経由させることにより、シートの表裏を反転させる。この表裏が反転されたシートは、上述した片面への画像形成時と同様にして裏面への画像形成が行われる。
【0038】
次に、本実施形態の特徴部である、定着装置である定着ユニット60に用いる駆動装置が備える駆動機構の例について、実施例を挙げ図を用いて説明する。
【0039】
(実施例1)
まず、第1の実施例である実施例1について、図3を用いて説明する。本実施例の駆動機構160は、本体装置側に備えた駆動モータから駆動軸や複数のアイドラギヤを介してアイドラギヤB166に伝達された回転駆動力を、アイドラギヤA165を介して加圧ローラ64に設けた加圧駆動ギヤ164に伝達する構成に特徴がある。したがって、以下の説明は、回転駆動されているアイドラギヤB166の回転駆動力をアイドラギヤA165を介して、加圧駆動ギヤ164に伝達し、加圧ローラ64を回転駆動させる構成について説明するものとし、他の駆動機構の構成については適宜省略して説明する。
【0040】
図3に示すように、この駆動機構160は、主に、加圧ローラ64の加圧駆動ギヤ164と、アイドラギヤA165、アイドラギヤB166とを有している。また、加圧ローラ64の同軸に設けられ、軸心に平行な側面の全周が円形形状部である部材(以下、加圧円形形状部材162という)と、アイドラギヤA165の軸心と同軸の円形形状部を有した部材(以下、アイドラ円形形状部材163という)とを有している。
【0041】
ここで、図3に示す、加圧ローラ64の加圧駆動ギヤ164には、m=1、Z69のギヤを配しており、また、この加圧駆動ギヤ164に噛み合うアイドラギヤA165にはm=1、Z22のギヤを配している。また、円形形状部を有する部材として、加圧ローラ64には玉軸受Φ62を加圧円形形状部材162として用い、アイドラギヤA165には、アイドラギヤA165の軸心を中心としたΦ29の円形形状部を有したアイドラ円形形状部材163を用いている。このように、加圧円形形状部材162とアイドラ円形形状部材163の円形形状部の半径距離の和を、加圧駆動ギヤ164とアイドラギヤA165の基準円の半径距離の和と同じ値としている。なお、本実施例の駆動機構に用いている各アイドラギヤは、全てm=1の1段ギヤを用いている。
【0042】
また、アイドラ円形形状部材163は、アイドラギヤA165の軸心と、このアイドラギヤA165に噛み合うアイドラギヤB166の軸心に保持されており、アイドラギヤB166の軸心を中心に、アイドラギヤA165とともに回動するように設けられいる。また、アイドラギヤB166とアイドラギヤA165とが噛み合うことで、アイドラギヤB166の回転駆動力が伝達されて、アイドラギヤA165が駆動される。そして、アイドラ円形形状部材163の円形形状部は、加圧ローラ64の移動にともなって移動するとともに、加圧駆動ギヤ164とアイドラギヤA165の軸心を結ぶ直線上で、回転する加圧円形形状部材162の玉軸受端面に接触するように形成され、配置された円弧状の部分からなる。このように形成され、配置されたアイドラ円形形状部材163が、加圧円形形状部材162の玉軸受端面に接触することで、加圧駆動ギヤ164とアイドラギヤA165は基準円にて噛み合いアイドラギヤA165の回転駆動力が伝達されて加圧駆動ギヤ164が駆動される。そして、アイドラ円形形状部材163は、アイドラギヤB166の軸心を中心として回動可能であり、加圧ローラ64が一定距離移動する場合にも加圧円形形状部材162の玉軸受端面との接点を移動しながらギヤ同士は基準円で噛み合い駆動を行うことができる。
【0043】
ここで、加圧ローラ64が一定距離を直線方向に移動した場合について、図4を用いてより具体的に説明する。ここで、図4は、定着ローラの定着駆動ギヤの基準円、加圧ローラの加圧駆動ギヤの基準円、及び各アイドラギヤの基準円を用いた、加圧ローラと加圧レバーの移動についてのである。また、説明の関係上、定着駆動ギヤ161(定着ローラ61)と加圧駆動ギヤ164(加圧ローラ64)の軸心を垂直方向に上下に配置した記載としているが、この構成に限定されるものではない。図4に示すように示すように、本実施例の駆動機構では、従来の駆動機構とは異なり、加圧駆動ギヤ164を移動させる加圧レバー205の回動中心から加圧ローラ64の軸心までの距離を一定に保つ必要はない。また、加圧レバー205の回動中心をアイドラギヤA165の軸心とする必要もない。
【0044】
したがって、本実施例の定着ユニット60では、例えば、加圧レバー205の加圧駆動ギヤ164の軸心を保持する部分にレバー軸方向のルーズホール(不図示)等を設け、定着ユニット60側に加圧駆動ギヤ164の軸心を垂直方向にガイドするガイド部材(不図示)を設けることができる。このように、加圧駆動ギヤ164を一定距離を垂直方向(直線方向)に移動させることができることで、従来のように、加圧駆動ギヤ164が円弧状の軌跡を描いて移動してしまうことに起因して、加圧駆動ギヤ164の移動範囲が制約されることはない。さらに、図4に示すように、本実施例の駆動機構では、加圧駆動ギヤ164とアイドラギヤA165を基準円で噛み合わせた状態で、アイドラギヤA165をアイドラギヤB166の軸心を中心に回動させることができる。
【0045】
よって、本実施例の駆動機構では、アイドラギヤA165を従来のように大きくすることなく、確実に回転駆動力を伝達できるとともに、加圧ローラ64の移動範囲を従来の駆動機構より大きく取ることができる。また、本実施例では、円形形状部を有した部材としては、上述したような形状の部材を採用したが、例えば各ギヤの端面に、それぞれ基準円のフランジ面を形成したものであってもよい。また、本実施例では、定着ローラ61の定着駆動ギヤ161から伝達された回転駆動力を、アイドラギヤD168、アイドラギヤC167、アイドラギヤB166を介して、アイドラギヤA165に伝達し、アイドラギヤA165に伝達された回転駆動力を加圧駆動ギヤ164に伝達して加圧ローラ64を回転駆動させる伝達機構について説明した。しかし、これに限定されるものではなく、例えば、本体装置側に備えた駆動モータから、駆動軸や複数のアイドラギヤを介して、アイドラギヤB166に回転駆動力を伝達し、このアイドラギヤB166に伝達された駆動力をアイドラギヤA165に伝達し、アイドラギヤA165に伝達された回転駆動力を加圧駆動ギヤ164に伝達して加圧ローラ64を回転駆動させる。
【0046】
(実施例2)
次に、第2の実施例である実施例2について、図5を用いて説明する。上述した実施例1の駆動機構は、アイドラギヤB166に伝達された回転駆動力を、アイドラギヤA165を介して加圧ローラ64に設けた加圧駆動ギヤ164に伝達する構成であった。それに対し、本実施例の駆動機構160では、実施例1の構成に加え、定着ローラ61に伝達された回転駆動力の加圧ローラ64への伝達を定着ニップ部を介して行うか、加圧駆動ギヤ164を介して行うかを、加圧駆動ギヤ164にワンウェイギヤを設けて設定していることに関わる点のみが異なる。したがって、以下の説明では、実施例1と共通する構成、及び作用・効果については、適宜省略して説明する。
【0047】
定着ローラ61の直径はφ90、加圧ローラ64の直径はφ80であり、定着駆動ギヤ161にはm=1、Z81、加圧駆動ギヤ164にはm=1、Z69を用いている。そして、これらのギヤをアイドラギヤA165及びアイドラギヤB166、アイドラギヤC167、アイドラギヤD168にて連結している。また、実施例1と同様に、加圧駆動ギヤ164とアイドラギヤA165との連結は、アイドラ円形形状部材163を加圧円形形状部材162である玉軸受に接触させ基準円にて噛み合い駆動させている。
【0048】
本実施例の駆動機構は、本体装置側に設けられた駆動モータにより回転駆動される定着駆動ギヤ161による回転駆動力の入力を行い回転させる。しかし、定着ベルト63を介して定着ローラ61と加圧ローラ64とによりニップ部が形成されており、このニップ部を介しても定着ローラ61の回転駆動力が、加圧ローラ64に伝達でれる。そのため、このニップ幅によって、又は、各ローラの熱による膨張によっても定着ローラ61の回転速度(周方向の速度)に対する、加圧ローラ64の回転速度は一定とはならない。加圧ローラ64では、ニップ部による回転速度とギヤ連結による回転速度差が発生するため、ニップ部でのスリップないしギヤの歯飛びが発生してしまう。
【0049】
そこで、本実施例の駆動機構160では、加圧駆動ギヤ164にワンウェイクラッチを搭載している。この加圧駆動ギヤ164は、定着ローラ61から定着駆動ギヤ161、及びアイドラギヤ(A、B、C、D)を介して回転駆動される加圧ローラ64の回転速度(以下、ギヤ駆動回転速度という)より、定着ベルト63を架け渡した定着ローラ61からニップ部を介して回転駆動される加圧ローラ64の回転速度(以下、ニップ駆動回転速度という)が速い場合には空転する。そして、加圧ローラ64のギヤ駆動回転速度より、加圧ローラ64のニップ駆動回転速度が遅くなった場合にはギヤ駆動するように設定した。なお、いずれの回連速度も周方向の速度である。
【0050】
このように構成することで、加圧ローラ64は、定着ローラ61に対しスリップしない限りギヤ駆動せず、連れ回り回転を行う。したがって、アイドラギヤ(A、B、C、D)を介して連結した定着ローラ61と加圧ローラ64の互いの駆動ギヤ同士がスムースに回転し必要に応じ、ギヤ駆動させることができるため、確実にギヤ駆動を行える。ただし、空転時にはワンウェイギヤに空転トルクが発生し、この空転トルクはアイドラギヤA165を歯飛びさせる方向となる。そのため、本実施例では、アイドラ円形形状部材163に、付勢手段169を設けてスプリングで、アイドラギヤA165を加圧駆動ギヤ164へ向け付勢することで、アイドラギヤA165を歯飛びさせる方向に発生する空転トルク対処している。
【0051】
また、本発明の発明者は、定着ユニット60におけるジャムの発生率と、定着ローラ61に架け渡された定着部材である定着ベルト63の回転速度(ニップ部中心の線速)と加圧ローラ64の回転速度(線速)との回転速度差との関係を調査したところ、図5に示すような調査結果を得た。この図5のグラフからも明らかなように、加圧ローラ64の回転速度が遅くなり、定着ローラ61に架け渡された定着部材である定着ベルト63との回転速度差が、−3.0(%)以下となった場合、及び、加圧ローラ64の回転速度が速くなり、定着ローラ61との回転速度差が、+3.0(%)以上となった場合に、ジャムの発生率が高くなっていくのが分かる。なお、回転速度差の計算式は、以下の式(1)を用いた。

回転速度差(%)=(加圧ローラ64のニップ駆動回転速度−定着ローラ61に架け渡された定着ベルト63の回転速度)×100/定着ローラ61の回転速度 ・・・(1)
【0052】
ここで、定着部材である定着ベルトを介した定着ローラと加圧ローラとでニップ部を形成する定着装置では、ニップ幅が狭くなるほど、定着ベルトに対する、ニップ部を介して連れ回り回転する加圧ローラのニップ駆動回転速度は遅くなる傾向がある。そこで、本実施例では、ニップ部を介して連れ回り回転する加圧ローラのニップ駆動回転速度が最も遅くなるニップ部の幅、つまり最も狭いニップ幅で、加圧ローラ64と定着ローラ61との回転速度差が、−3.0(%)以下となった場合には、確実にギヤ駆動させるために上述した構成としている。言い換えると、定着ベルト63の回転速度(線速)の−3.0(%)の回転速度より僅かに速いギヤ駆動回転速度(安全側の回転速度)で加圧ローラ64をギヤ駆動させる、定着ローラ61及び加圧ローラ64の径、及び、それぞれの駆動ギヤのm、Zを設定した。
【0053】
このように、定着ローラ61に架け渡された定着部材である定着ベルト63の回転速度に対し、ニップ部を介して連れ回り回転する加圧ローラ64の回転速度が−3%遅くなった場合には、確実にギヤ駆動とすることによって、定着を行なう画像形成済みのシートにダメージを与えることをなくせる。また、加圧ローラ64へのダメージを最小限におさえることもでき、従来より大きくギヤ移動を行っても、確実にギヤ駆動を行える駆動機構を有した、画像形成装置を提供することができる。
【0054】
以上、本実施形態の駆動機構160を備えた駆動装置では、直線的に移動する加圧駆動ギヤ164とアイドラギヤA165とを噛み合せるために、アイドラギヤA165も移動させることができる。そして、互いの基準円で噛み合せるために、加圧駆動ギヤ164とアイドラギヤA165にそれぞれ円形形状部を有した部材を保持させ、それぞれの円形形状部の半径の和と、加圧駆動ギヤ164とアイドラギヤA165の基準円の半径の和とが同じ値になるようにしている。それぞれの円形形状部の半径の和と、移動駆動ギヤとアイドラギヤの基準円の半径の和とが同じ値であるので、互いの円形形状部を押し当てることで、確実に互いの基準円で噛み合せることができる。したがって、従来の構成のように、互いの基準円を噛み合わせるために、加圧駆動ギヤ164を保持する加圧レバー205の回動中心をアイドラギヤA165の軸心にする必要がない。そのため、加圧レバー205の加圧駆動ギヤ164を保持する部分にルーズホール等を設けて、加圧駆動ギヤ164を直線的に移動でき、加圧駆動ギヤ164又はアイドラギヤA165を大きくする必要もない。よって、直線的に移動させる加圧駆動ギヤ164の移動範囲を従来よりも大きく取れ、省スペースで、確実に加圧駆動ギヤ164とアイドラギヤA165とのギヤ駆動を行える。
また、本実施形態の駆動機構160を備えた駆動装置では、加圧駆動ギヤ164にワンウェイギヤを設けており、定着ローラ61がニップ部を介して加圧ローラ64を回転させる加圧ローラ64のニップ駆動回転速度が、ギヤ駆動する加圧ローラ64のギヤ駆動回転速度より早い場合には、このワンウェイギヤが空転する。そして、加圧ローラ64のギヤ駆動回転速度より、加圧ローラ64のニップ駆動回転速度が遅くなった場合にはギヤ駆動するように設定した。したがって、アイドラギヤ(A、B、C、D)を介して連結した定着ローラ61と加圧ローラ64の互いの駆動ギヤ同士がスムースに回転し、必要に応じてギヤ駆動させることができるため、確実にギヤ駆動を行える。
また、本実施形態の定着装置である定着ユニット60では、上述した駆動装置を備えることで、従来より大きくギヤ移動を行っても、省スペースで、確実にギヤ駆動を行える。
また、本実施形態の定着装置である定着ユニット60では、上述した駆動装置を備えることで、アイドラギヤ(A、B、C、D)を介して連結した定着ローラ61と加圧ローラ64の互いの駆動ギヤ同士がスムースに回転し、必要に応じてギヤ駆動させることができる。よって、従来より大きくギヤ移動を行っても、省スペースで、確実にギヤ駆動を行える。
また、本実施形態の画像形成装置である複合機100では、上述した定着装置を備えることで、従来より大きくギヤ移動を行っても、省スペースで、確実にギヤ駆動を行える。
また、本実施形態の画像形成装置である複合機100では、定着ローラ61に架け渡された定着部材である定着ベルト63の回転速度に対し加圧ローラ64のニップ駆動回転速度が3%遅くなった場合には、確実にギヤ駆動に切り替えることによって、定着を行なうシートにダメージを与えることなく、また加圧ローラ64へのダメージを最小限におさえることができる。そして、従来より大きくギヤ移動を行っても、省スペースで、確実にギヤ駆動を行える。
【符号の説明】
【0055】
10 原稿自動供給ユニット
20 原稿読取ユニット
30 書き込みユニット
40 画像形成ユニット
46 作像ユニット
50 転写ユニット
60 定着ユニット
61 定着ローラ
62 加熱ローラ
63 定着ベルト
64 加圧ローラ
65・66 赤外線ヒータ
67 テンションローラ
68 スプリング
69 突起リブ部
70 両面ユニット
80 給紙ユニット
81 給紙カセット
89 レジストローラ
100 複合機
160 駆動機構
161 定着駆動ギヤ
162 加圧円形形状部材
163 アイドラ円形形状部材
164 加圧駆動ギヤ
165 アイドラギヤA
166 アイドラギヤB
167 アイドラギヤC
168 アイドラギヤD
169 付勢手段
205 加圧レバー
206 押圧手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0056】
【特許文献1】特開2010−152280号公報
【特許文献2】特開2003−048634号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心が移動する回転体である軸移動回転体に取り付けられた駆動ギヤである移動駆動ギヤと、それに接続するアイドラギヤを有した駆動機構を備えた駆動装置において、
前記軸移動回転体は一定距離を直線方向に移動可能であり、
前記移動駆動ギヤと前記アイドラギヤは、それぞれギヤと同軸心の円形形状部を有した部材をギヤ又はギヤの軸部材に保持しており、
前記移動駆動ギヤと前記アイドラギヤの円形形状部の半径の和は、前記駆動ギヤと前記アイドラギヤのギヤピッチ円の半径の和と同じ値であることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
駆動ギヤとアイドラギヤのピッチ間距離は、それぞれの円形形状部を有した部材の円形形状部が互いに押し当ることにより決まることを特徴とする、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
軸心が移動しない回転体である軸固定回転体に取り付けられた駆動ギヤである固定駆動ギヤと、複数のアイドラギヤと、軸移動回転体に取り付けられた移動駆動ギヤとを有し、
回転駆動される前記軸固定回転体の回転駆動力を、前記固定駆動ギヤと、前記複数のアイドラギヤとを介して、前記移動駆動ギヤに伝達し、前記軸移動回転体をギヤ駆動する駆動機構を備えた駆動装置であって、
前記軸固定回転体と前記軸移動回転体とはニップ部を形成しており、
前記軸移動回転体は前記ニップ部を介しても回転駆動され、
前記移動駆動ギヤは、ワンウェイギヤであり、ギヤ駆動される前記軸移動回転体の回転速度より、前記ニップ部を介して回転駆動される該軸移動回転体の回転速度が速い場合には空転し、該ニップ部を介して回転駆動される該軸移動回転体の回転速度が遅い場合にはギヤ駆動することを特徴とする、請求項1又は2に記載の駆動装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の記載の駆動装置と、定着部材と、加圧部材とを、少なくとも備える定着装置であって、
軸移動回転体が、加圧部材である加圧ローラでることを特徴とする定着装置。
【請求項5】
請求項3に記載の記載の駆動装置と、定着部材と、加圧部材とを、少なくとも備える定着装置であって、
軸移動回転体が、加圧部材である加圧ローラであり、
軸固定回転体が、定着部材である定着ローラ、又は定着部材を回転させる定着ローラであることを特徴とする定着装置。
【請求項6】
請求項4に記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項5記載の定着装置を備え、定着部材の回転速度に対し、加圧部材の回転速度が3%遅くなった場合にギヤ駆動とすることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−63623(P2012−63623A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208432(P2010−208432)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】