説明

駆動装置

【課題】 筐体を合理的に駆動するとともにスピーカの音響効果を向上してなる駆動装置を得ること。
【解決手段】 下部筐体210と、下部筐体の上部に設けられた上部筐体220と、上部筐体を下部筐体に対して回転可能に支持するシャフト300と、上部筐体の内部に配置されるとともにシャフトを中心に上部筐体を下部筐体に対して回転する駆動手段400と、上部筐体の内面に支持されたスピーカ500とを備え、上部筐体がスピーカのエンクロージャとして作用するものであり、上部筐体が回転すると同時にスピーカから音を発生するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体を駆動する駆動装置に関し、特に、筐体を駆動すると同時にスピーカから音を発生するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、人形型の目覚し時計等、玩具としての様相に富んだ時計が好まれる傾向にある。この種の時計は、筐体の所定の部位を駆動する駆動装置を用いてなり、予定時刻になるとスピーカから報知音を発生するとともに、筐体が駆動する構成となっている。特許文献1乃至3には、この種の時計に利用される優れた駆動装置が開示されている。
【特許文献1】特許第3737735号明細書
【特許文献2】特許第3813904号明細書
【特許文献3】特開2003−66165号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
さて、このような駆動装置については、面白い動きを設定するとともに、より優れた音質を確保することが重要とされている。例えば、スピーカの音質が満足に確保されていないと、駆動に伴うモータ音が耳障りとなる場合があり、こうした問題に対処するための構造的工夫が必要と考えられる。
【0004】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、筐体を合理的に駆動するとともにスピーカの音響効果を向上してなる駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願第1請求項に記載した発明は、下部筐体と、前記下部筐体の上部に設けられた上部筐体と、前記上部筐体を前記下部筐体に対して回転可能に支持するシャフトと、前記上部筐体の内部に配置されるとともに前記シャフトを中心に前記上部筐体を前記下部筐体に対して回転する駆動手段と、前記上部筐体の内面に支持されたスピーカとを備え、前記上部筐体が前記スピーカのエンクロージャとして作用するものであり、前記上部筐体が回転すると同時に前記スピーカから音を発生するようにした構成の駆動装置である。
【0006】
本願第2請求項に記載した発明は、請求項1において、前記上部筐体は、前記シャフトの上端部を遊嵌する軸受ボスを備え、前記駆動手段は、モータと、前記モータの動力にて水平方向に回転する回転出力部と、前記回転出力部と係合するとともに前記軸受ボスを中心に揺動可能に設けられたカム体と、前記カム体と前記上部筐体とを支持する弾性体とを備え、前記カム体が前記回転出力部に連動して揺動し、前記上部筐体が前記弾性体に牽引されつつ正逆回転するものであり、前記上部筐体に外部負荷がかかると、前記弾性体が弾性変形して前記上部筐体が前記カム体に対して相対移動する構成の駆動装置である。
【0007】
本願第3請求項に記載した発明は、請求項1又は2において、前記下部筐体は、所定の形状の第1下部筐体部材及び第2下部筐体部材を組み付けてなるとともに、前記第1下部筐体部材及び前記第2下部筐体部材に跨るプレート部材を備え、
【0008】
前記シャフトの下端部は、前記第1下部筐体部材及び前記第2下部筐体部材の間に挟み込むものとし、前記第1下部筐体部材及び前記第2下部筐体部材には、前記シャフトの下端部を嵌装する一対の半円筒部をそれぞれ設け、前記プレート部材は、前記一対の半円筒部を合わせた状態で挿入する孔部を備えた構成の駆動装置である。
【0009】
本願第4請求項に記載した発明は、請求項3において、前記プレート部材は、前記上部筐体の内部に位置するとともに、前記駆動手段は、前記プレート体に支持した構成の駆動装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、筐体を合理的に駆動するとともにスピーカの音響効果を向上してなる駆動装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1乃至図7に示す本例の駆動装置1は、人形型の目覚し時計を構成するものとなっている。この駆動装置1は、下部筐体210と、下部筐体210の上部に設けられた上部筐体220と、上部筐体220を下部筐体210に対して回転可能に支持するシャフト300と、上部筐体220の内部に配置されるとともにシャフト300を中心に上部筐体220を下部筐体210に対して回転する駆動手段400と、上部筐体220の内面に支持されたスピーカ500とを備えたものである。
【0012】
下部筐体210は、人形の胴体を模したものであり、上部筐体220は、人形の頭部を模したものである。そして、予め設定された所定の時刻になると、上部筐体220が水平方向に正逆回転すると同時に、スピーカ500から音を発生する構成となっている。
【0013】
下部筐体210の内部には、計時手段110、電池ボックス120、及び制御回路(図示は省略)が収納されている。下部筐体210の正面には、時刻表示部130が設けられており、背面には、所要の操作子140が露呈されている。計時手段110、駆動手段400、及びスピーカ500は、制御回路にて制御される構成となっている。
【0014】
上部筐体220は、スピーカ500に対応する位置に音孔220aが設けられたものである。また、スピーカの音が上部筐体220の内部で共鳴することにより、その音質を向上するものとなっている。すなわち、上部筐体220がスピーカ500のエンクロージャとして作用するものとなっている。
【0015】
本例の場合、上部筐体220は、シャフト300の上端部を遊嵌する軸受ボス220bを備えている。上部筐体220の内面要所には、軸受ボス220bの構成部材を装着する装着部220cが設けられている。シャフト300の下端部は、下部筐体210側に支持されている。
【0016】
駆動手段400は、モータ410と、モータ410の動力にて水平方向に回転する回転出力部420と、回転出力部420と係合するとともに軸受ボス220bを中心に揺動可能に設けられたカム体430と、カム体430と上部筐体220とを支持する弾性体440とを備えている。具体的な構造は特に限定しないが、本例ではモータ410の出力カナに連結されたウォームギアが回転出力部420を回転するものとなっている。カム体430は、回転出力部420を係合する長溝を有する部材であり、軸受ボス220bに貫通された状態で設けられている。本例の弾性体440は、一方の端部をカム体430に固定されるとともに、他方の端部を上部筐体220の内面に固定されたコイルばねである。弾性体440の一方の端部及びカム体の要所、並びに、弾性体440の他方の端部及び上部筐体220の内面の要所には、フック及びフックの係止部がそれぞれ設けられている。弾性体440は、各フックを各係止部に係止して、ある程度伸張した状態で装着されている。
【0017】
この駆動手段400は、下部筐体210の上部に設けられたプレート部材213に支持して設けられている。
【0018】
尚、軸受ボス220bの内部上面には、リング状の突片220dが形成されており、シャフト300の頂部との磨耗によっても当接面積が変化しないように工夫が施されている。
【0019】
上部筐体220は、前後2分割タイプの筐体であり、シャフト300及び駆動手段400を覆うように組み付けられる。下部筐体210に対しては、その底面がプレート部材213に突き当たることよって抜け止めされている。
【0020】
このような構成によると、カム体430が回転出力部420に連動して揺動し、上部筐体220が弾性体440に牽引されつつ正逆回転する。また、上部筐体440に外部負荷がかかると、弾性体440が弾性変形して上部筐体220がカム体430に対して相対移動する。
【0021】
つまり、上部筐体220は、手で押える等して自在に移動させることができる。また、駆動中の上部筐体220に触れても、弾性体440が弾性変形するので、駆動手段400が停止したり破損したりする心配はない。上部筐体220は、負荷が解消されると弾性体440の復元力にて本来の位置に復帰する。
【0022】
本例の構成によれば、上部筐体220がスピーカ500のエンクロージャとして作用するので、スピーカ500の音質が確実に向上されるという利点がある。特に、その上部筐体220の内部に駆動手段400を配置しているので、駆動手段400の駆動に伴うモータ音が効率よくかき消されるという効果がある。すなわち、モータ音が耳障りとなる不都合を解消することができる。
【0023】
尚、上部筐体220の内面に対するスピーカ500の支持構造は、特に限定はしないが、本例では、上部筐体200の内面に音孔220aを囲む円筒部220eを設け、この円筒部220の先端にスピーカ500を支持している。円筒部220eには、適宜間隔で複数の開口部220fが設けられており、スピーカ500から発生した音は、開口部220fから漏れて上部筐体220の内部に発散する構成となっている。
【0024】
また、駆動手段400の動力は、弾性体440を介して上部筐体220に伝達される。従って、上部筐体220は、駆動中においても空気振動に対して比較的共鳴しやすいものとなっており、これがスピーカ500の音質を向上するという点で、非常に効果的な構成となっている。
【0025】
次に、本例の下部筐体210について説明する。この下部筐体210は、上部筐体220と同じく前後2分割タイプの筐体である。具体的には、所定の形状の第1下部筐体部材211及び第2下部筐体部材212を組み付けてなるとともに、第1下部筐体部材211及び第2下部筐体部材212に跨るプレート部材213を備え、シャフト300の下端部は、第1下部筐体部材211及び第2下部筐体部材212の間に挟み込むものとなっている。
【0026】
第1下部筐体部材211及び第2下部筐体部材212には、シャフト300の下端部を嵌装する一対の半円筒部211a,212aをそれぞれ設けている。一対の半円筒部211a,212aは、上部筐体220の内部に向って突出している。シャフト300の下端部と一対の半円筒部211a,212aとは、上下方向に凹凸嵌合する形状となっており、これにより、下部筐体210に対するシャフト300の抜け止めがなされている。
【0027】
プレート部材213は、一対の半円筒部211a,212aを合わせた状態で挿入する孔部213aと、これを第1下部筐体部材211にねじ止め又はピン止めするための通孔213bと、これを第1下部筐体部材211にねじ止め又はピン止めするための通孔213cと、駆動手段400を固定するための雌ねじボス213dとを備えた部材である。このプレート部材213は、上部筐体220の内部に位置するとともに、駆動手段400は、プレート体213に支持されている。
【0028】
シャフト300に負荷がかかると、一対の半円筒部211a,212aには、それらを分離しようとする力がかかるが、それらは孔部213aに挿入されているため、それらの分離はプレート体213によって抑え込まれる。つまり、プレート部材213が補強部材として効果的に作用する構成となっている。
【0029】
このような構成によると、シャフト300の支持強度を十分に確保するとともに、駆動装置1の内部構造を簡素化し、更に組み付け作業を容易化することができる。すなわち、シャフト300を中心に上部筐体220を下部筐体210に対して回転する駆動装置については、下部筐体210に対するシャフト300の支持構造が非常に重要な課題となる。シャフト300が下部筐体210の内部に延出していると、下部筐体210の内部のレイアウトが著しく制約されてしまうためである。本例によれば、そのような不都合を確実に回避することができる。
【0030】
以上説明したように、本例の駆動装置は、人形型の目覚し時計を構成する装置として極めて合理的に構成されたものである。尚、本例における各部の構成は、特許請求の範囲に記載した技術的範囲において適宜に設計変更が可能であり、図例説明したものに限定されないことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の駆動装置は、人形型の目覚し時計を構成する装置として好適に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施例に係り、駆動装置を示す正面図である。
【図2】本発明の実施例に係り、駆動装置を示す部分透視正面断面図である。
【図3】本発明の実施例に係り、駆動装置を示す部分透視側面断面図である。
【図4】本発明の実施例に係り、軸受ボス、カム体、シャフト、第1下部筐体部材、第2下部筐体部材、及びプレート部材を示す側面断面図である。
【図5】本発明の実施例に係り、(a)は軸受ボス及びシャフトを示す正面断面図であり、(b)は(a)のA部拡大図である。
【図6】本発明の実施例に係り、プレート部材及び駆動手段の要部を示す部分透視上面図である。
【図7】本発明の実施例に係り、(a)はプレート部材の上面図、(b)はプレート部材の正面断面図、(c)はプレート部材の側面図、(d)はプレート部材の下面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 駆動装置
110 計時手段
120 電池ボックス
130 時刻表示部
140 操作子
210 下部筐体
211 第1下部筐体部材
211a 半円筒部
212 第2下部筐体部材
212a 半円筒部
213 プレート部材
213a 孔部
213b 通孔
213c 通孔
213d 雌ねじボス
220 上部筐体
220a 音孔
220b 軸受ボス
220c 装着部
220d 突片
220e 円筒部
220f 開口部
300 シャフト
400 駆動手段
410 モータ
420 回転出力部
430 カム体
440 弾性体
500 スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部筐体と、前記下部筐体の上部に設けられた上部筐体と、前記上部筐体を前記下部筐体に対して回転可能に支持するシャフトと、前記上部筐体の内部に配置されるとともに前記シャフトを中心に前記上部筐体を前記下部筐体に対して回転する駆動手段と、前記上部筐体の内面に支持されたスピーカとを備え、
前記上部筐体が前記スピーカのエンクロージャとして作用するものであり、
前記上部筐体が回転すると同時に前記スピーカから音を発生するようにしたことを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記上部筐体は、前記シャフトの上端部を遊嵌する軸受ボスを備え、
前記駆動手段は、モータと、前記モータの動力にて水平方向に回転する回転出力部と、前記回転出力部と係合するとともに前記軸受ボスを中心に揺動可能に設けられたカム体と、前記カム体と前記上部筐体とを支持する弾性体とを備え、
前記カム体が前記回転出力部に連動して揺動し、前記上部筐体が前記弾性体に牽引されつつ正逆回転するものであり、
前記上部筐体に外部負荷がかかると、前記弾性体が弾性変形して前記上部筐体が前記カム体に対して相対移動することを特徴とする請求項1記載の駆動装置。
【請求項3】
前記下部筐体は、所定の形状の第1下部筐体部材及び第2下部筐体部材を組み付けてなるとともに、前記第1下部筐体部材及び前記第2下部筐体部材に跨るプレート部材を備え、
前記シャフトの下端部は、前記第1下部筐体部材及び前記第2下部筐体部材の間に挟み込むものとし、
前記第1下部筐体部材及び前記第2下部筐体部材には、前記シャフトの下端部を嵌装する一対の半円筒部をそれぞれ設け、
前記プレート部材は、前記一対の半円筒部を合わせた状態で挿入する孔部を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の駆動装置。
【請求項4】
前記プレート部材は、前記上部筐体の内部に位置するとともに、前記駆動手段は、前記プレート体に支持したことを特徴とする請求項3記載の駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−201666(P2009−201666A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−46416(P2008−46416)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(000115773)リズム時計工業株式会社 (208)
【Fターム(参考)】