説明

駆動装置

【課題】簡易なシステム構成で、小型・軽量化することができる駆動装置を提供する。
【解決手段】駆動装置1が、エンジン3と、このエンジン3の動力を断続する第1の断続部5と、この第1の断続部5から伝達される動力を第1の速比で伝達する第1の動力伝達部7と、第1の断続部5から伝達される動力を第2の速比で伝達する第2の動力伝達部9と、出力部11に伝達される第1の動力伝達部7の動力を断続する第2の断続部13と、出力部11に伝達される第2の動力伝達部9の動力を断続する第3の断続部15と、第1の動力伝達部7及び第2の動力伝達部9に動力伝達可能に連結するモータジェネレータ16とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に適用される駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンとモータジェネレータとの起動源を備えた駆動装置としては、エンジンと、第1モータジェネレータと、エンジンの出力を第1モータジェネレータ及び出力部材に分配する動力分配機構と、第2モータジェネレータとを第1軸線上に備え、第1軸線と平行な第2軸線上に中間軸が配設され、出力部材及び第2モータジェネレータの出力を中間軸を介して駆動輪側へ伝達するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この駆動装置では、出力部材と中間軸との間で動力伝達を行う第1動力伝達装置が設けられこの第1動力伝達装置から中間軸を介して駆動輪側へ動力を伝達する第1の出力系路と、第2モータジェネレータと中間軸との間で動力伝達を行う第2動力伝達装置が設けられこの第2動力伝達装置から中間軸を介して駆動輪側へ動力を伝達する第2の出力系路とを備えている。
【0004】
そして、第1の出力系路と第2の出力系路とでは、それぞれ変速比が異なって設定されており、登坂性能を損なうことなく、高速巡航時のエネルギーロスを低減させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−97058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような駆動装置では、動力伝達機構と、第1の出力系路と、変速比の異なる第2の出力系路とを備えているので、駆動装置全体の動力伝達システム構成が複雑であると共に、大型で重量が増加してしまっていた。
【0007】
そこで、この発明は、簡易なシステム構成で、小型・軽量化することができる駆動装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の駆動装置は、エンジンと、このエンジンの動力を断続する第1の断続部と、この第1の断続部から伝達される動力を第1の速比で伝達する第1の動力伝達部と、前記第1の断続部から伝達される動力を第2の速比で伝達する第2の動力伝達部と、出力部に伝達される前記第1の動力伝達部の動力を断続する第2の断続部と、前記出力部に伝達される前記第2の動力伝達部の動力を断続する第3の断続部と、前記第1の動力伝達部及び前記第2の動力伝達部に動力伝達可能に連結するモータジェネレータとを備えていることを特徴とする。
【0009】
この駆動装置では、第2の断続部と第3の断続部とによって第1の動力伝達部及び第2の動力伝達部の動力を断続することができるので、エンジン及びモータジェネレータから出力部までの出力系路を2つに削減することができ、動力伝達システム構成を簡易化することができる。加えて、2つのモータジェネレータやエンジンと第1の動力伝達部との間の動力伝達機構を必要とすることがなく、小型化することができ、軽量化することができる。
【0010】
また、速比の異なる第1の動力伝達部及び第2の動力伝達部を第2の断続部及び第3の断続部で断続することができるので、2つの変速状態でエンジン駆動、又はモータ駆動することができ、広範囲の走行駆動状態とエネルギー回生とに対応することができる。
【0011】
従って、このような駆動装置では、簡易なシステム構成で、小型・軽量化することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡易なシステム構成で、小型・軽量化することができる駆動装置を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る駆動装置が搭載された車両の駆動システムを示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る駆動装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1,図2を用いて本発明の実施の形態に係る駆動装置について説明する。
【0015】
本実施の形態に係る駆動装置1は、エンジン3と、このエンジン3の動力を断続する第1の断続部5と、この第1の断続部5から伝達される動力を第1の速比で伝達する第1の動力伝達部7と、第1の断続部5から伝達される動力を第2の速比で伝達する第2の動力伝達部9と、出力部11に伝達される第1の動力伝達部7の動力を断続する第2の断続部13と、出力部11に伝達される第2の動力伝達部9の動力を断続する第3の断続部15と、第1の動力伝達部7及び第2の動力伝達部9に動力伝達可能に連結するモータジェネレータ16とを備えている。
【0016】
また、第1の動力伝達部7と第2の動力伝達部9とは、それぞれが互いに平行に配置される入力ギヤ17,21と出力ギヤ19,23とからなる。
【0017】
さらに、第1の動力伝達部7と第2の動力伝達部9とは、軸方向に隣接配置されている。
【0018】
また、第2の断続部13と第3の断続部15とは、径方向に隣接配置されている。
【0019】
さらに、第2の断続部13と第3の断続部15とは、出力部11と同軸上に配置されている。
【0020】
また、出力部11は、互いに平行に配置されたピニオン25とリングギヤ27とからなり、ピニオン25は、第1の動力伝達部7と軸方向に隣接配置されている。
【0021】
さらに、第2の断続部13と第3の断続部15とは、操作部29によって断続操作され、操作部29は、ピニオン25と同軸的に配置されている。
【0022】
まず、図1を用いて本発明の実施の形態に係る駆動装置が適用された車両のシステムについて説明する。
【0023】
図1に示すように、車両には、駆動源としてのエンジン3とモータジェネレータ16とが搭載されている。エンジン3からの駆動力は、乾式単板クラッチからなる第1の断続部5に伝達され、第1の断続部5が接続状態であると、第1の駆動軸31に伝達される。モータジェネレータ16からの駆動力は、第2の駆動軸33に伝達され、変速ギヤ組37を介して第1の駆動軸31に伝達される。このエンジン3及びモータジェネレータ16から駆動力が入力される第1の駆動軸31には、速比の異なる第1の動力伝達部7と第2の動力伝達部9とにおける入力ギヤ17,21が配置されている。
【0024】
入力ギヤ17と出力ギヤ19とからなる第1の動力伝達部7に伝達された駆動力は、第2の断続部13に伝達され、第2の断続部13が接続状態であると、第3の駆動軸35に伝達される。入力ギヤ21と出力ギヤ23とからなる第2の動力伝達部9に伝達された駆動力は、第3の断続部15に伝達され、第3の断続部15が接続状態であると、第3の駆動軸35に伝達される。この第2の断続部13と第3の断続部15とを選択的に接続させることにより、車両の走行状態に合わせて駆動源としてのエンジン3とモータジェネレータ16の適切な使用回転(駆動力)を適切に変速させ、第3の駆動軸35に伝達させることができる。
【0025】
この第3の駆動軸35に伝達された駆動力は、ピニオン25とリングギヤ27とからなる出力部11を介して差動機構39に伝達される。この差動機構39に伝達された駆動力は、一対のサイドギヤ41,43にそれぞれ連結されたシャフト45,47を介して左右輪に分配される。
【0026】
このような車両において、モータジェネレータ16のモータ機能のみで車両を駆動させるEVモードでは、第1の断続部5を切り離し、第2の断続部13又は第3の断続部15を接続して、モータジェネレータ16のモータ機能による駆動力を第1の動力伝達部7又は第2の動力伝達部9を介して出力部11から差動機構39に出力する。なお、このモードにおけるモータジェネレータ16による電力の回生は、車両の減速時などの車両のブレーキエネルギーに対してモータジェネレータ16をジェネレータとして機能させることによって行われる。
【0027】
エンジン3のみ、モータジェネレータ16のモータ機能のみ、もしくはエンジン3とモータジェネレータ16のモータ機能とで車両を駆動させるパラレルモードでは、第1の断続部5を接続又は解除し、第2の断続部13と第3の断続部15とを操作部29によって選択的に接続して、車両の走行状態に合わせてエンジン3及びモータジェネレータ16のモータ機能による駆動力を選択された第1の動力伝達部7又は第2の動力伝達部9を介して出力部11から差動機構39に出力する。
【0028】
モータジェネレータ16のジェネレータ機能によってバッテリに蓄電させる発電モードでは、車両の停車時に第1の断続部5を接続し、第2の断続部13及び第3の断続部15を切り離して、第1の駆動軸31から変速ギヤ組37を介して第2の駆動軸33を駆動し、エンジン3でモータジェネレータ16のジェネレータ機能を駆動し、図示外のバッテリに蓄電させる。なお、車両の停車時には、第3の駆動軸35に設けられたパークロックギヤ49がパークロックアクチュエータ51によってロックされ、第3の駆動軸35の回転が阻止される。
【0029】
このように車両は、走行状況によってエンジン3とモータジェネレータ16との駆動源を選択すると共に、第1の断続部5や、第2の断続部13及び第3の断続部15の断続を選択的に行うことによって、第1の動力伝達部7及び第2の動力伝達部9で適切に変速された駆動力により駆動される。以下、このような車両に搭載された駆動装置1について説明する。
【0030】
図2に示すように、駆動装置1は、第1の駆動軸31と、第2の駆動軸33と、第3の駆動軸35と、差動機構39の回転軸線とが平行に配置されている。
【0031】
第1の駆動軸31は、軸方向両側を一対のベアリング53,55を介してケーシング57に回転可能に支持されている。また、第1の駆動軸31の端部外周には、連結部59が形成され、第1の断続部5(図1参照)を構成するクラッチ部材が一体回転可能に連結される。また、第1の駆動軸31とケーシング57との径方向間には、ケーシング57の内部と外部とを区画するシール部材61が配置されている。
【0032】
この第1の駆動軸31には、第1の断続部5を介してエンジン3(図1参照)からの駆動力が入力されると共に、変速ギヤ組37と第2の駆動軸33とを介してモータジェネレータ16(図1参照)のモータ機能による駆動力が入力される。なお、モータジェネレータ16がジェネレータとして機能している場合には、第1の駆動軸31に入力された駆動力が変速ギヤ組37と第2の駆動軸33とを介してモータジェネレータ16に出力される。
【0033】
第2の駆動軸33は、中空状に形成され、軸方向両側を一対のベアリング63,65を介してケーシング57に回転可能に支持されている。また、第2の駆動軸33の端部内周には、連結部67が形成され、モータジェネレータ16のモータ軸が一体回転可能に連結される。また、第2の駆動軸33の中央部には、第1の駆動軸31と一体回転可能に形成された第1の動力伝達部7の大径の入力ギヤ17と噛み合う小径のギヤ部69が形成されている。このギヤ部69と入力ギヤ17とは、互いに平行に配置され、変速ギヤ組37を構成している。なお、第2の駆動軸33のギヤ部69を第2の動力伝達部9の入力ギヤ21と噛み合わせて変速ギヤ組37を構成してもよい。また、第2の駆動軸33とケーシング57との径方向間には、ケーシング57の内部と外部とを区画するシール部材71が配置されている。
【0034】
この第2の駆動軸33には、モータジェネレータ16がモータとして機能したとき、モータジェネレータ16からの駆動力が入力され、変速ギヤ組37を介して第1の駆動軸31に出力する。また、モータジェネレータ16がジェネレータとして機能したとき、変速ギヤ組37を介して入力される第1の駆動軸31側からの駆動力をモータジェネレータ16に出力する。このようなエンジン3及びモータジェネレータ16のモータ機能による駆動力は、第1の駆動軸31を介して第3の駆動軸35に出力される。
【0035】
第3の駆動軸35は、軸方向両側を一対のベアリング73,75を介してケーシング57に回転可能に支持されている。この第3の駆動軸35には、第2の断続部13及び第3の断続部15を介して第1の駆動軸31側から駆動力が入力され、出力部11を介して差動機構39に出力する。
【0036】
差動機構39は、デフケース77と、ピニオンシャフト79と、ピニオン81と、一対のサイドギヤ41,43とを備えている。デフケース77は、軸方向両側に形成されたボス部でそれぞれベアリング83,85を介してケーシング57に回転可能に支持されている。このデフケース77は、出力部11を介して駆動力が伝達されて回転駆動される。このようなデフケース77には、ピニオンシャフト79とピニオン81と一対のサイドギヤ41,43とが収容されている。
【0037】
ピニオンシャフト79は、端部をデフケース77に係合してピンで抜け止めされデフケース77と一体に回転駆動される。このピニオンシャフト79には、ピニオン81が支承されている。
【0038】
ピニオン81は、ピニオンシャフト79に支承されてデフケース77の回転によって公転する。また、ピニオン81は、一対のサイドギヤ41,43に駆動力を伝達すると共に、噛み合っている一対のサイドギヤ41,43に差回転が生じると回転駆動されるようにピニオンシャフト79に自転可能に支持されている。
【0039】
一対のサイドギヤ41,43は、デフケース77に相対回転可能に支持され、ピニオン81と噛み合っている。この一対のサイドギヤ41,43は、内周側にスプライン形状の連結部87,89が設けられ、左右輪側に連結されたシャフト45,47(図1参照)がサイドギヤ41,43と一体回転可能に連結されている。また、シャフト45,47とケーシング57との径方向間には、ケーシング57の内部と外部とを区画するシール部材91,93が配置されている。このように一対のサイドギヤ41,43は、デフケース77に入力された駆動力をシャフト45,47を介して左右輪側へ出力する。
【0040】
このような第1の駆動軸31と第2の駆動軸33と第3の駆動軸35と差動機構39とは、第1の動力伝達部7と、第2の動力伝達部9と、第2の断続部13と、第3の断続部15と、出力部11とを介して動力伝達可能に配置されている。
【0041】
第1の動力伝達部7は、互いに平行に配置された入力ギヤ17と出力ギヤ19とからなる。入力ギヤ17は、第1の駆動軸31に連続する一部材で形成され、第1の駆動軸31と一体回転される。この入力ギヤ17は、出力ギヤ19よりも大径に形成され、出力ギヤ19と噛み合っている。出力ギヤ19は、第3の駆動軸35上にニードルベアリング95,97を介して第3の駆動軸35と相対回転可能に配置されている。
【0042】
この第1の動力伝達部7は、第1の断続部5から第1の駆動軸31を介して伝達される動力を第1の速比で第2の断続部13に伝達する。詳細には、第1の断続部5が接続状態であるとき、エンジン3からの駆動力を第1の速比で第2の断続部13に伝達する。第1の断続部5が接続解除状態であるときには、モータジェネレータ16のモータ機能による駆動力を第2の駆動軸33から変速ギヤ組37を介して第1の駆動軸31に伝達し、第1の速比で第2の断続部13に伝達する。このような第1の動力伝達部7には、第2の動力伝達部9が軸方向に隣接配置されている。
【0043】
第2の動力伝達部9は、互いに平行に配置された入力ギヤ21と出力ギヤ23とからなる。入力ギヤ21は、第1の駆動軸31に連結部99を介して第1の駆動軸31と一体回転可能に連結されている。この入力ギヤ21は、出力ギヤ23よりも大径で且つ入力ギヤ17よりも小径に形成され、出力ギヤ23と噛み合っている。出力ギヤ23は、出力ギヤ19よりも大径に形成され、出力ギヤ19の外周上にニードルベアリング101を介して出力ギヤ19及び第3の駆動軸35と相対回転可能に配置されている。
【0044】
この第2の動力伝達部9は、第1の断続部5から第1の駆動軸31を介して伝達される動力を第2の速比で第3の断続部15に伝達する。詳細には、第1の断続部5が接続状態であるとき、エンジン3からの駆動力を第2の速比で第3の断続部15に伝達する。第1の断続部5が接続解除状態であるときには、モータジェネレータ16のモータ機能による駆動力を第2の駆動軸33から変速ギヤ組37を介して第1の駆動軸31に伝達し、第2の速比で第3の断続部15に伝達する。
【0045】
このような第1の動力伝達部7と第2の動力伝達部9とから伝達される駆動力は、それぞれ第1の速比と第2の速比とで第2の断続部13と第3の断続部15とに伝達され、第2の断続部13及び第3の断続部15の接続によって第3の駆動軸35に伝達される。
【0046】
第2の断続部13は、出力ギヤ19と連結部103で一体回転可能に連結された第2クラッチハウジング105と、第2クラッチハウジング105の内周と第3の駆動軸35の外周とにそれぞれ軸方向移動可能で一体回転可能に連結された複数のクラッチ板とからなる。この第2の断続部13は、接続されると第1の動力伝達部7によって第1の速比に変速された駆動力を第3の駆動軸35に伝達する。この第2の断続部13の外径側には、第3の断続部15が径方向にオーバーラップして配置されている。
【0047】
第3の断続部15は、出力ギヤ23とボルトで一体回転可能に固定された第3クラッチハブ107と、第3の駆動軸35と溶接などの固定手段によって一体回転可能に固定された第3クラッチハウジング109と、第3クラッチハブ107の外周と第3クラッチハウジング109の内周とにそれぞれ軸方向移動可能で一体回転可能に連結された複数のクラッチ板とからなる。この第3の断続部15は、接続されると第2の動力伝達部9によって第2の速比に変速された駆動力を第3の駆動軸35に伝達する。
【0048】
このような第2の断続部13と第3の断続部15とは、第3の駆動軸35の端部に配置された操作部29によって断続操作される。
【0049】
操作部29は、ピニオン25と同軸的に設けられ、より詳しくは後述する油圧機構111やオイルポンプ119が第3の駆動軸35と同軸的に連結配置されている。操作部29は、油圧機構111と、第2押圧部材113と、第3押圧部材115とを備えている。操作部29の作動を制御する制御機構としての油圧機構111は、ケーシング57の内部に配置される内装タイプの2分割からなるバルブボディ117内に配置され、図示外の小型電動モータで駆動されるオイルポンプ119と、バルブボディ117内に設けられた油圧回路121とを備えている。
【0050】
オイルポンプ119は、2つのポンプギヤが組み合わされたギヤポンプからなる。このオイルポンプ119は、バルブボディ117内で第3の駆動軸35の端部側に配置されている。このオイルポンプ119は、ケーシング57内の油溜まりに貯留されたオイルを、異物をろ過するオイルストレーナを介して吸入し、オイルに油圧を付与して油圧回路121を流通させる。
【0051】
油圧回路121は、バルブボディ117内に設けられ、複数の油路などで形成され、図示外の小型電動モータで駆動されるオイルポンプ119により、規定油圧を油圧室125内に蓄え、図示外のソレノイドバルブにより油圧が制御されたオイルが、径方向孔131,133から軸方向孔135,137を介して第2油圧シリンダ127及び第3油圧シリンダ129へ供給され、第2押圧部材113及び第3押圧部材115が移動操作される。
【0052】
第2押圧部材113及び第3押圧部材115は、それぞれ第3の駆動軸35上に軸方向相対移動可能に配置されている。第2押圧部材113は、スナップリングなどの固定手段によって軸方向位置が固定され、第2の断続部13の複数のクラッチ板と軸方向に対向配置されている。第3押圧部材115は、第3クラッチハウジング109によって軸方向位置が固定され、第3の断続部15の複数のクラッチ板と軸方向に対向配置されている。また、第2押圧部材113と第3押圧部材115とには、それぞれを第2の断続部13及び第3の断続部15の接続解除方向に付勢するリターンスプリング143が配置されている。
【0053】
この第2押圧部材113は、油圧機構111から油圧が制御されたオイルが第2油圧シリンダ127に供給されることによって第2の断続部13の接続方向に軸方向移動される。この第2押圧部材113の軸方向移動により、第2の断続部13が押圧操作されて接続状態となる。この第2の断続部13の接続により、第1の駆動軸31から第1の動力伝達部7を介して第1の速比に変速された駆動力が第3の駆動軸35に伝達される。
【0054】
また、第3押圧部材115は、油圧機構111から油圧が制御されたオイルが第3油圧シリンダ129に供給されることによって第3の断続部15の接続方向に軸方向移動される。この第3押圧部材115の軸方向移動により、第3の断続部15が押圧操作されて接続状態となる。この第3の断続部15の接続により、第1の駆動軸31から第2の動力伝達部9を介して第2の速比に変速された駆動力が第3の駆動軸35に伝達される。
【0055】
このように第2の断続部13及び第3の断続部15を介して第3の駆動軸35に伝達された駆動力は、出力部11から差動機構39側に出力される。
【0056】
なお、第2油圧シリンダ127と第3油圧シリンダ129は、第3の駆動軸35と同軸上に配置されているが、第2油圧シリンダ127と第3油圧シリンダ129をケーシング57側に形成し、ロッドとベアリングなどの相対回転吸収手段を介して第2と第3の断続部13,15の断続制御を行うこともできる。
【0057】
出力部11は、互いに平行に配置されたピニオン25とリングギヤ27とからなる。ピニオン25は、操作部29が配置された第3の駆動軸35の反対側の端部に連結部145を介して第3の駆動軸35と一体回転可能に連結されている。また、ピニオン25は、第1の動力伝達部7の出力ギヤ19と軸方向に隣接配置されている。このピニオン25は、リングギヤ27よりも小径に形成され、リングギヤ27と噛み合い、車輪側への出力系路としては減速ギヤ機構をなしている。リングギヤ27は、差動機構39のデフケース77とボルトなどの固定手段によって一体回転可能に固定されている。
【0058】
この出力部11は、第3の駆動軸35に伝達された駆動力を差動機構39に出力する。この差動機構39に伝達された駆動力は、一対のサイドギヤ41,43に連結されたシャフト45,47(図1参照)を介して左右輪側へ出力される。なお、ピニオン25には、パークロックギヤ49が一体回転可能に設けられており、このパークロックギヤ49は、車両の停車時にパークロックアクチュエータ51(図1参照)によってロックされ、第3の駆動軸35の回転を阻止する。
【0059】
このような駆動装置1では、第2の断続部13と第3の断続部15とによって第1の動力伝達部7及び第2の動力伝達部9の動力を断続することができるので、エンジン3及びモータジェネレータ16から出力部11までの出力系路を2つに削減することができ、動力伝達システム構成を簡易化することができる。加えて、2つのモータジェネレータやエンジン3と第1の動力伝達部7との間の動力伝達機構を必要とすることがなく、小型化することができ、軽量化することができる。
【0060】
また、速比の異なる第1の動力伝達部7及び第2の動力伝達部9を第2の断続部13及び第3の断続部15で断続することができるので、2つの変速状態でエンジン駆動、又はモータ駆動することができ、駆動源としてのエンジン3と変速ギヤ組37と第2の駆動軸33とを介してモータジェネレータ16に出力される。
【0061】
第2の駆動軸33の適切な使用回転(駆動力)を組み合わせて広範囲の走行駆動状態とエネルギー回生とに対応することができる。
【0062】
従って、このような駆動装置1では、簡易なシステム構成で、小型・軽量化することができる。
【0063】
また、第1の動力伝達部7と第2の動力伝達部9とは、それぞれが互いに平行に配置される入力ギヤ17,21と出力ギヤ19,23とからなるので、ギヤの径方向サイズを変更することによって様々な速比に対応することができ、動力伝達システム設計の自由度を向上することができる。
【0064】
さらに、第1の動力伝達部7と第2の動力伝達部9とは、軸方向に隣接配置されているので、第1の動力伝達部7と第2の動力伝達部9との軸方向の配置スペースを縮小することができ、駆動装置1を小型化することができる。
【0065】
また、第2の断続部13と第3の断続部15とは、径方向に隣接配置されているので、第2の断続部13と第3の断続部15との軸方向の配置スペースを大幅に縮小することができ、駆動装置1を小型化することができる。
【0066】
さらに、第2の断続部13と第3の断続部15とは、出力部11及び出力ギヤ19,23と同軸上に配置されているので、第2の断続部13及び第3の断続部15と出力部11と第1の動力伝達部7及び第2の動力伝達部9との支持安定性を向上することができ、動力断続特性と動力伝達特性とを安定化させることができる。
【0067】
また、出力部11は、互いに平行に配置されたピニオン25とリングギヤ27とからなるので、ギヤの径方向サイズを変更することによって様々な速比に対応することができ、動力伝達システム設計の自由度を向上することができる。
【0068】
さらに、ピニオン25は、第1の動力伝達部7と軸方向に隣接配置されているので、出力部11と第1の動力伝達部7との軸方向の配置スペースを縮小することができ、駆動装置1を小型化することができる。
【0069】
また、操作部29は、ピニオン25と同軸的に配置されているので、操作部29と出力部11との支持安定性を向上することができ、動力断続特性と動力伝達特性とを安定化させることができる。
【0070】
なお、本発明の実施の形態に係る駆動装置では、第2の断続部と第3の断続部とが径方向に隣接配置されているが、軸方向に隣接配置してもよい。この場合にも、第2の断続部と第3の断続部との軸方向の配置スペースを縮小することができ、駆動装置を小型化することができる。
【0071】
また、操作部として油圧機構のような油圧式アクチュエータを適用しているが、電磁式アクチュエータ、磁性流体、電動モータ、或いはシフトロッドとシフトフォークを用いるなど第2の断続部と第3の断続部とを断続できる構成であれば、操作部はどのような形態であってもよい。
【0072】
さらに、第1の断続部5は、乾式単板クラッチを用いずに、乾式又は湿式の多板クラッチ、磁性流体クラッチやパウダークラッチなど、他の形態のクラッチを用いることもできる。
【0073】
また、第3の駆動軸35と同軸的に配置された第2の断続部と第3の断続部は、第1の駆動軸31と同軸上であって、第1の駆動軸31と入力ギヤ17,21それぞれとの間に設けられてもよい。
【0074】
さらに、第1の駆動軸31と第2の駆動軸33との間の変速ギヤ組37は、平行な2軸の関係上で変速機能を持たせているが、モータジェネレータ16の規定回転数の許容設定によっては、変速ギヤ組37を設けずにモータジェネレータ16を第1の駆動軸31と直接連結させてもよく、或いはプラネタリーギヤを用いた変速ギヤ組を第1の駆動軸31と同軸的に配置し、第1の駆動軸31と同軸的にモータジェネレータ16が連結されてもよい。
【0075】
また、第2の断続部と第3の断続部とは、多板クラッチに限定されるものではなく、軸方向に対向する一対のドグ歯からなるドグクラッチ、電磁式などの摩擦単板クラッチ、軸方向に隣接する一対のスプライン歯と軸方向に可動する断続スリーブからなるスリーブクラッチ、断続制御可能な2ウェイクラッチ或いは1ウェイクラッチ、磁性流体クラッチなど、装置の特性に応じて実用に供する断続部を備えることができる。
【符号の説明】
【0076】
1…駆動装置
3…エンジン
5…第1の断続部
7…第1の動力伝達部
9…第2の動力伝達部
11…出力部
13…第2の断続部
15…第3の断続部
16…モータジェネレータ
17,21…入力ギヤ
19,23…出力ギヤ
25…ピニオン
27…リングギヤ
29…操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、このエンジンの動力を断続する第1の断続部と、この第1の断続部から伝達される動力を第1の速比で伝達する第1の動力伝達部と、前記第1の断続部から伝達される動力を第2の速比で伝達する第2の動力伝達部と、出力部に伝達される前記第1の動力伝達部の動力を断続する第2の断続部と、前記出力部に伝達される前記第2の動力伝達部の動力を断続する第3の断続部と、前記第1の動力伝達部及び前記第2の動力伝達部に動力伝達可能に連結するモータジェネレータとを備えていることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載の駆動装置であって、
前記第1の動力伝達部と前記第2の動力伝達部とは、それぞれが互いに平行に配置される入力ギヤと出力ギヤとからなることを特徴とする駆動装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の駆動装置であって、
前記第1の動力伝達部と前記第2の動力伝達部とは、軸方向に隣接配置されていることを特徴とする駆動装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の駆動装置であって、
前記第2の断続部と前記第3の断続部とは、軸方向又は径方向に隣接配置されていることを特徴とする駆動装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の駆動装置であって、
前記第2の断続部と前記第3の断続部は、前記出力部と同軸上に配置されていることを特徴とする駆動装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の駆動装置であって、
前記出力部は、互いに平行に配置されたピニオンとリングギヤとからなり、前記ピニオンは、前記第1の動力伝達部と前記第2の動力伝達部とのうちいずれか一方に軸方向に隣接配置されていることを特徴とする駆動装置。
【請求項7】
請求項6記載の駆動装置であって、
前記第2の断続部と前記第3の断続部とは、操作部によって断続操作され、前記操作部は、前記ピニオンと同軸的に配置されていることを特徴とする駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−224219(P2012−224219A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93820(P2011−93820)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000225050)GKNドライブラインジャパン株式会社 (409)
【Fターム(参考)】