説明

駐車支援システム

【課題】日常的に使用する駐車場について、駐車枠の設定の手間を軽減することが可能な駐車支援システムを提供すること。
【解決手段】目標とする駐車領域のコーナー部に駐車支援シート40を配置する。この駐車支援シート40には、駐車領域のコーナー点及びそのコーナーから延びる2本の直交する駐車枠線の位置を定めるための模様が描かれている。CCDカメラ10によって撮影したカメラ画像を、画像処理ECU20において画像処理することにより、カメラ画像内で駐車支援シート40が検出できたとき、コーナー位置を示す仮想コーナーポール、仮想駐車枠線、及び仮想駐車枠線と自車両との最短距離などを重畳表示した車両周辺画像を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転者が当該車両を所望の領域に駐車させる際に、駐車のための運転操作を支援する駐車支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の駐車支援システムとして、例えば特許文献1に示すものが知られている。特許文献1のシステムは、車両の周囲の状況を映し出す鳥瞰画像内で任意の位置がユーザによって指定されると、その指定された位置を駐車位置として設定するとともに、指定された位置の周辺を画像解析して検出された方向を駐車方向として設定する。そして、設定された駐車位置と駐車方向と自車両のサイズとに基づいて駐車枠を設定し、その駐車枠を表す駐車枠図形を鳥瞰画像に重ねて表示する。このようにして、ユーザが鳥瞰画像を見ながら任意の位置を指定することで、目標とする駐車枠を設定できるようにしている。
【0003】
駐車枠が設定されると、その駐車枠の位置と方向などに基づいて、自車両の現在位置から駐車位置までの全体の進路を計算し、鳥瞰画像に重ねて表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−239048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された駐車支援システムによれば、自車両を含み、車両の周囲の様子が表示された鳥瞰画像において駐車位置を指定することができるので、自車両と周辺環境との位置関係が直感的に理解しやすく、容易に所望の位置に駐車枠を設定することができる。
【0006】
しかしながら、上述した駐車支援システムでは、例えば自宅駐車場など、日常的にかつ頻繁に使用する駐車場についても、駐車の都度、鳥瞰画像において駐車位置を指定する操作を行なわなければならず、運転者によっては煩わしさを感じる虞がある。
【0007】
本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであり、特に、日常的に使用する駐車場について、駐車枠の設定の手間を軽減することが可能な駐車支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の駐車支援システムは、
車両を駐車させるべき領域を示す駐車枠線として、少なくとも交差する2本の駐車枠線の位置を定めるために路面に設けられる目印パターンと、
車両に搭載され、車両の周辺の画像を撮影する撮影手段と、
撮影手段によって撮影された画像において、目印パターンを探索して、目印パターンを検出する目印パターン検出手段と、
目印パターン検出手段によって検出された目印パターンの位置に基づいて、交差する2本の駐車枠線の位置を定め、それらの駐車枠線の位置と車両との位置関係を車両の運転者に報知する報知手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
このように、請求項1の駐車支援システムには、路面に設けられた目印パターンを利用して、駐車枠線の位置を定める。従って、頻繁に使用する駐車場などに、一旦、目印パターンを所望の位置に設けてしまえば、駐車の度に、画面上において駐車位置を定めるなどの特別な操作を行なう必要がない。
【0010】
目印パターンは、少なくとも交差する2本の駐車枠線の位置を定めるものであるため、その2本の駐車枠線を基準として、車両を適切な位置に駐車できるように駐車支援を行なうことができる。そして、目印パターンにより2本の駐車枠線の位置を定めることにより、駐車支援システムは、車両を駐車すべき領域を示す駐車枠線の位置を一義的に定めることができる。
【0011】
請求項2に記載したように、前記目印パターンは、移動可能な、路面上に置かれるシートに描かれたものであることが望ましい。このように目印パターンがシートに描かれたものであれば、頻繁に使用する駐車場にシートを配置するだけで、容易に所望の路面位置に目印パターンを設けることができる。さらに、目印パターンを描いたシートを携帯しておけば、日常的には使用しないが、駐車の難易度が高い駐車場についても、駐車支援システムによる駐車支援を受けることが可能になる。すなわち、狭い駐車場、障害物の多い駐車場、脱輪の可能性がある駐車場などの駐車の難易度が高い駐車場に駐車する必要がある場合に、車両の運転者が、目標とする駐車位置に応じた位置に、携帯しているシートを臨時に設置することが可能である。これにより、駐車の難易度が高い駐車場においても、安全に駐車することが可能となる。
【0012】
請求項3に記載したように、シートは、車両を駐車させるべき領域のコーナー部に置かれ、そのシートに描かれた目印パターンは、コーナー位置とそのコーナー位置から延びる2本の駐車枠線の位置を示すものであることが好ましい。この場合、1枚のシートを置くだけで、車両を駐車させるべき領域を囲む、2本の交差する駐車枠線の位置を定めることができる。
【0013】
請求項3に記載のシートが、車両を駐車させるべき領域の隣接する2つのコーナー部にそれぞれ置かれた場合、請求項4に記載したように、報知手段は、シートが置かれたコーナー部間の駐車枠線に関して、それぞれのシートの目印パターンにより示されるコーナー位置を結ぶように、駐車枠線の位置を定めることが好ましい。それぞれのシートに描かれた目印パターンに基づいて、それぞれのシート毎に交差する2本の駐車枠線の位置を定めた場合、各シートが置かれたコーナー部間において、駐車枠線が重複してしまうことになる。このような問題に対して、上述したように、それぞれのシートの目印パターンにより示されるコーナー位置同士を結ぶように、駐車枠線の位置を定めることにより、駐車枠線の重複をなくして、統一した1本の駐車枠線を定めることができる。
【0014】
請求項5に記載したように、目印パターンは、1本の駐車枠線の位置を示すためのものであり、その目印パターンが描かれたシートが、交差する2本の駐車枠線に対応した路面上の位置にそれぞれ置かれても良い。このような目印パターンが描かれたシートを用いても、駐車支援システムは、各シートに描かれた目印パターンに基づいて、2本の交差する駐車枠線の位置及びその間のコーナー位置を定めることができる。
【0015】
請求項6に記載されたように、報知手段は、駐車枠線と車両との距離が所定の閾値を下回ると、車両の運転者に警告を発することが好ましい。これにより、車両の運転者は、車両が駐車枠線に対して所定の閾値距離以下に接近したことを警告により正しく認識することができる。
【0016】
請求項7に記載されたように、報知手段は、車室内に設けられた表示装置を有し、撮影手段によって撮影された画像に基づく車両周辺画像を表示装置に表示するとともに、目印パターンの位置に基づいて定めた駐車枠線の位置に仮想駐車枠線を車両周辺画像に重畳して表示することが好ましい。これにより、車両の運転者は、表示装置に表示される車両周辺画像から、車両と駐車枠線との位置関係を把握することができる。
【0017】
請求項8に記載したように、報知手段は、車両から仮想駐車枠線までの最短距離を求め、車両周辺画像に、求めた最短距離を表示するようにしても良い。これにより、車両の運転者は、車両と駐車枠線との位置関係を、より客観的かつ明確に把握することができる。
【0018】
請求項9に記載したように、報知手段は、車両周辺画像において、交差する2本の駐車枠線の交点に対応する位置に、仮想コーナーポールを重畳表示しても良い。これにより、車両の運転者は、表示装置に表示される車両周辺画像から、2本の駐車枠線が交差するコーナーとの位置関係を認識しやすくなる。
【0019】
請求項10に記載したように、報知手段は、車両とコーナーポールとの接近度合に応じて、コーナーポールの表示形態を変化させても良い。例えば、コーナーポールの表示形態として、その表示色を、車両が遠距離に存在する状態から、徐々に接近するにつれて、青色→緑色→黄色→赤色と変化させる。これにより、車両の運転者は、車両とコーナーポールとの位置関係を直感的に理解できるようになる。
【0020】
請求項11に記載したように、報知手段は、車室内に設けられた表示装置を有し、少なくとも交差する2本の駐車枠線の位置に基づいて矩形状の駐車領域を定め、この駐車領域に収まるまでに車両が辿る経路を算出し、駐車枠線の位置と車両との位置関係として、駐車領域及びその駐車領域に収まるまでの車両の経路を前記表示装置に表示し、車両の運転者による指示に基づいて、報知手段によって表示された経路に従って車両が自動的に移動するように、車両の駐車制御を行う駐車制御手段を備えるようにしても良い。
【0021】
目印パターンから、少なくとも交差する2本の駐車枠線の位置が定められた場合、車両の縦方向及び横方向の長さなどを用いることにより、その車両を駐車するための矩形状の駐車領域を定めることができる。駐車枠線の位置と車両との位置関係として、これらの駐車領域及び経路を表示することにより、運転者は、車両の駐車領域が意図通りに設定されているか、またその駐車領域までの経路で、安全上問題がないかなどを確認することができる。さらに、請求項11に記載の駐車支援システムでは、運転者の指示に基づいて、駐車制御手段が、車両を、表示された経路に従って、現在の位置から駐車領域に収まる位置まで自動的に移動させる駐車制御を行う。従って、車両を駐車するための駐車領域の設定などを運転者が手動にて行う必要がなく、駐車制御を実行する上での手間を大幅に軽減することができる。
【0022】
請求項12に記載したように、目印パターンは、矩形状の駐車領域のコーナー部に配置されるものであり、位置特定手段によって、駐車領域の各辺の両端に位置する複数の目印パターンが探索されたとき、報知手段は、探索された複数の目印パターンの間の辺上を通過する経路を算出するようにしても良い。目印パターンの間を通る経路上に車両の進行の妨げとなる障害物が存在する場合、車両に搭載された撮影手段によって撮影された画像では、その障害物によって目印パターンが隠されてしまうことが多い。従って、撮影手段によって撮影された画像に、駐車領域の各辺の両端に位置する複数の目印パターンが写し出されている場合、それら複数の目印パターンの間に、車両の進行の妨げとなる障害物が存在する可能性は低いと言える。そのため、探索された複数の目印パターンの間を通過する経路を算出することにより、車両を安全に進行させることができる可能性が高い経路を提示することができる。
【0023】
請求項13に記載したように、報知手段は、駐車領域に収まるまでに車両が辿る経路として、複数の異なる経路を算出して表示し、駐車制御手段は、表示された複数の経路の中から、運転者によって一の経路が選択されたとき、その選択された経路に従って駐車制御を行うようにしても良い。例えば、車両の駐車領域と隣接する位置に障害物(他車両、柱、壁など)があると、駐車領域までの経路によっては、車両がその障害物に接触してしまうことも起こりえる。その点、上述したように、複数の経路を算出して表示するようにすれば、障害物が存在しても、車両を安全に駐車できる経路を提示する可能性を高めることができるので、運転者による駐車制御の利用機会が増え、より効果的な駐車支援を行うことができる。
【0024】
請求項14に記載したように、駐車領域に収まるまでに車両が辿る経路は、撮影手段によって撮影された画像に基づく車両周辺画像に重畳表示されることが好ましい。これにより、表示装置に表示された画像により、車両の周辺に実際に存在する障害物を確認できるとともに、駐車領域及び経路と、障害物との位置関係も確認できるようになる。
【0025】
請求項15に記載したように、報知手段は、撮影手段によって撮影された画像を鳥瞰変換した鳥瞰画像を生成する鳥瞰画像生成手段を有し、車両周辺画像として、撮影手段によって撮影された画像と、鳥瞰画像生成手段によって生成された鳥瞰画像とを表示装置に並べて表示しても良い。あるいは、請求項16に記載したように、報知手段は、車両周辺画像として、撮影手段によって撮影された画像と、鳥瞰画像生成手段によって生成された鳥瞰画像とを、車両の運転者の指示に応じて切り替えて表示装置に表示しても良い。いずれの場合であっても、車両の運転者は、表示装置に表示される車両周辺画像から、車両と駐車枠との位置関係を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態による駐車支援システムの構成を示す構成図である。
【図2】本駐車支援システムにおいて用いられる駐車支援シートの一例を示す図である。
【図3】図1の駐車支援システムの画像処理ECUにおいて実行される、駐車支援のための処理を示すフローチャートである。
【図4】駐車支援シートにおいて、SIFT特徴量を持つ点の例を示す図である。
【図5】予め駐車支援シートに関して保存された基本SIFT特徴量を持つ点と、実画像において抽出されたテストSIFT特徴量を持つ点との対応関係を示す図である。
【図6】車両周辺画像として表示装置に表示されるガイド付実画像の一例を示す図である。
【図7】車両周辺画像として表示装置に表示されるガイド付鳥瞰画像の一例を示す図である。
【図8】第2実施形態による駐車支援システムの構成を示す構成図である。
【図9】3枚の駐車支援シート40だけが、画像処理ECU20の駐車支援シート探索部21によって検出されている場合における、駐車領域の設定処理について説明するための説明図である。
【図10】3枚の駐車支援シート40が検出されている場合において、車両を駐車領域内の駐車位置へ移動させるための経路を算出する処理について説明するための説明図である。
【図11】駐車領域の短手方向に並んだ2枚の駐車支援シート40しか検出されない場合の駐車領域の設定処理について説明するための説明図である。
【図12】2枚の駐車支援シート40が検出されている場合において、車両を駐車領域内の駐車位置へ移動させるための経路を算出する処理について説明するための説明図である。
【図13】図12に示す経路を設定する際に利用する、車両の中間位置を示す図である。
【図14】1枚の駐車支援シート40しか検出されない場合の駐車領域の設定処理について説明するための説明図である。
【図15】駐車領域内の駐車位置に達するまでに車両が辿る経路として、複数の異なる経路を算出して表示する表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態による駐車支援システムについて、図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態による駐車支援システムの全体の構成を示す構成図である。本実施形態においては、撮影手段としてのCCDカメラ10が車両後部に搭載されて車両後方の様子を撮影する例について説明する。
【0028】
図1に示すように、駐車支援システム100は、CCDカメラ10、画像処理ECU20、表示装置30、及び駐車支援シート40から構成される。
【0029】
CCDカメラ10は、車両の後部、具体的には、車両の後部ドアやトランクに、光軸が地面と平行な方向よりも下向きとなり、その撮影領域に車両後方近傍の地面が含まれるように設置される。CCDカメラ10の車両後方の撮影範囲は、予め定められており、CCDカメラ1を車両の後部に設置する際に、実際の撮影範囲が予め定められた撮影範囲に一致するように、CCDカメラ1の取り付け方向が調整される(キャリブレーション)。
【0030】
画像処理ECU20は、内部にCPU、ROM、RAM、I/Oおよびこれらを接続するためのバスラインなどを備えたマイコンからなる。ただし、図1では、画像処理ECU20が実行する機能を機能ブロック図として表している。図1に示すように、画像処理ECU20は、機能ブロックとして、駐車支援シート探索部21、接触距離算出部22、及び画像生成部23を備えている。
【0031】
駐車支援シート探索部21はCCDカメラ10によって撮影されたカメラ画像(実画像)内に駐車支援シート40が映し出されている場合、画像処理により駐車支援シートを探索して、検出するものである。
【0032】
駐車支援シート40は、車両を駐車すべき領域(駐車領域)のコーナー部に置かれ、その表面に描かれた模様により、駐車領域のコーナー位置とそのコーナー位置から延びる2本の駐車枠線の位置を示すものである。この駐車支援シート40は、ゴム、金属、プラスチップ等の材料からなり、車両の乗員が携帯可能なものである。駐車支援シート40には、図2に示す如く、コーナーの向きを示すことができるように、直角となる模様が表されている。そして、その直角となる模様が画像処理において識別されやすくなるように、コーナー位置に直角模様の第1の図形パターン41が形成され、さらに、コーナーから延びる2本の直交する直線に沿って第2及び第3の図形パターン42,43が形成されている。
【0033】
第1〜第3の図形パターン41〜43は、それぞれ異なる図柄に形成されている。従って、これらの第1〜第3の図形パターン41〜43を手掛かりとして、駐車支援シート40の位置及び向きを定めることができる。具体的には、第1〜第3の図形パターンをそれぞれ認識することにより、それらの相互の位置関係から、駐車支援シート40に表されている直角の模様の位置及び向きが確定する。この結果、コーナーの位置及びそのコーナーから延びる2本の直交する直線の位置を特定することができる。このようにして特定されたコーナーの位置は、矩形状の駐車領域の1つの頂点に対応し、そのコーナーから延びる2本の直線は、図2に示すように、第1及び第2の駐車枠線に対応する。
【0034】
なお、駐車支援シート40は、画像認識技術により高い検出率が得られるように、その表面にて光が拡散反射されるように形成されるとともに、第1〜第3の図形パターン41〜43を含む駐車支援シート40の模様は、明度のコントラストの違いがはっきりする塗料を用いて作成される。この駐車支援シート40に描かれた模様全体が、本発明における目印パターンに相当する。
【0035】
接触距離算出部22は、駐車支援シート探索部21により特定されたコーナー位置及び2本の駐車枠線と、自車両との最小距離を接触距離として算出するものである。具体的には、自車両を路面に正射影した像の上の点と、コーナー位置及び2本の駐車枠線とのそれぞれの最小距離を算出して、これを接触距離とする。
【0036】
なお、CCDカメラ10は、搭載される各車両ごとに搭載位置が定められている。従って、そのカメラの搭載位置を基準として、路面に対応するXY座標系に、自車両を正射影した像を予め算出し、保存しておくことができる。そして、CCDカメラ10によって撮影されたカメラ画像において駐車支援シート40の探索結果からコーナー位置及びそのコーナーから延びる2本の駐車枠線の位置が特定されると、CCDカメラ10の撮影領域は予め定められておりかつ駐車支援シート40は路面に置かれるものであるため、路面に対応するXY座標系において、コーナー位置及び2本の駐車枠線の位置を定めることができる。すると、そのXY座標系において、それぞれ位置が定められた自車両の像と、コーナー位置及び2本の駐車枠線との最小距離を算出することができる。
【0037】
画像生成部23は、CCDカメラ10によって撮影されたカメラ画像と、駐車支援シート探索部21によって定められたコーナー位置及び2本の駐車枠線の位置と、接触距離算出部22において算出された接触距離とに基づいて、ガイド付実画像及び/又はガイド付鳥瞰画像を生成して、表示装置30に出力する。
【0038】
ガイド付実画像は、図6に示されるように、CCDカメラ10によって撮影されたカメラ画像において、コーナー位置を示すための仮想コーナーポール、2本の駐車枠線の位置を示すための仮想駐車枠線、及びそれぞれの仮想駐車枠線と自車両との最小距離を示すための距離表示を重畳したものである。これら重畳表示される、仮想コーナーポール、仮想駐車枠線、及び距離表示は、コンピュータグラフィックスにより描画される。なお、図6はガイド付き実画像の一部であって、駐車支援シート40が置かれたコーナー部を含む部分画像の例を示している。
【0039】
仮想駐車枠線を重畳表示することにより、車両の運転者は、表示装置30に表示されるガイド付実画像から、車両と駐車枠線との位置関係を明確に把握することができる。また、駐車枠線との最短距離を表示することにより、車両の運転者は、車両と駐車枠線との位置関係を、より客観的かつ明確に把握することができる。
【0040】
さらに、仮想コーナーポールを重畳表示することにより、車両の運転者は、表示装置30に表示されるガイド付実画像から、自車両とコーナー位置との位置関係を認識しやすくなる。
【0041】
仮想コーナーポールは、着色されており、仮想コーナーポールと自車両との最短距離に応じて、表示色が変化する。例えば、最短距離が90cmより長い場合には青色で表示され、60cm〜90cmのとき緑色で表示され、30cm〜60cmのとき黄色で表示され、30cm以下のとき赤色で表示される。このように、最短距離に応じて表示色を変化させることにより、車両の運転者は、自車両と仮想コーナーポールとの接近度合いを直感的に理解することができる。なお、表示色を変化させる以外に、仮想コーナーポールの透過度(接近するほど濃く表示する)や明度(接近するほど明るく表示する)などを変化させても良い。
【0042】
また、ガイド付鳥瞰画像は、図7に示されるように、カメラ画像を鳥瞰変換した鳥瞰画像において、自車両を示す像、仮想駐車枠線、それぞれの仮想駐車枠線と自車両との最小距離などを重畳したものである。このようなガイド付鳥瞰画像を表示することにより、車両の運転者は、駐車場における自車両の姿勢や駐車枠線までの距離を直感的に把握することが可能となる。なお、重畳される自車両は、図7に示す例では車両全体としているが、車両の後部のみとしても良い。また、ガイド付鳥瞰画像に、仮想コーナーポールを重畳表示しても良い。
【0043】
ガイド付実画像とガイド付鳥瞰画像は、画像生成部23にて、いずれか一方のみが生成されても良いし、両方が生成されても良い。画像生成部23がガイド付実画像とガイド付鳥瞰画像との両方を生成する場合には、表示装置30において、ガイド付実画像とガイド付鳥瞰画像とを並べて同時に表示しても良いし、車両の運転者によって操作される選択スイッチを設け、車両の運転者によって選択されたいずれかの画像のみを切替表示しても良い。
【0044】
表示装置30は、運転者により視認されるように、車両のインストルメントパネルに装着される。この表示装置30には、画像生成部23によって生成されたガイド付実画像及び/又はガイド付鳥瞰画像が表示される。
【0045】
なお、上述した構成に加え、例えば、上述した接触距離が所定の閾値以下となったか否かを判定し、所定の閾値以下となったときには、警告音や音声の出力により、あるいは表示装置30における警告メッセージの表示により、車両の運転者に警告を発する警告部を、画像処理ECU20に設けても良い。
【0046】
次に、本実施形態による駐車支援システムにおける画像処理ECU20によって実行される駐車支援のための制御処理について、図3のフローチャートに基づいて説明する。なお、図3のフローチャートに示す制御処理は、車両が駐車のための走行を開始してから、停止するまでの間、繰り返し実行される。
【0047】
ここで、画像処理ECU20において、駐車支援シート40に描かれた模様(目印パターン)を画像処理により認識する手法としては、種々の方法を採用することができる。例えば、予め駐車支援シート40の模様を、種々の撮影角度から撮影した画像をテンプレート画像として用意しておき、CCDカメラ10によって撮影されたカメラ画像から、所定の大きさの切り出し窓により画像を切り出して、テンプレート画像との対比を行なって駐車支援シート40の模様の認識を行なっても良い(いわゆるテンプレートマッチング)。この場合、切り出し窓の大きさを変化させることにより、駐車支援シート40までの距離の変化に対応することができる。
【0048】
ただし、本実施形態では、SIFT(Scale Invariant Feature Transform)特徴量を用いて、駐車支援シート40の模様の認識を行なう。SIFT特徴量は、認識対象を含む画像のスケールや回転に不変な特徴量であり、また微小なアフィン変換に対しても頑健な認識を行なうことができるためである。SIFT特徴量については、以下の参考文献1に詳しく説明されているので、以下の制御処理の説明においては、SIFT特徴量の説明を簡潔なものに留める。また、アフィン変換に対して不変なASIFTと呼ばれる特徴量も報告されているが(参考文献2)、本実施形態では通常のSIFT特徴量を用いた例について説明する。
【0049】
(参考文献1)
D. G. Lowe, "Distinctive image features from scale-invariant keypoints," International Journal of Computer Vision, 60, 2 (2004), pp. 91-110.
(参考文献2)
J.M. Morel and G.Yu, "ASIFT, A New Framework for Fully Affine Invariant Image Comparison," SIAM Journal on Imaging Sciences, vol. 2, issue 2, 2009.
まず、一般的なSIFT特徴量の算出法について説明する。SIFT特徴量の算出は、特徴の抽出に適した特徴点の検出と、スケール変化、回転などに不変な特徴量の記述との2段階からなる。
【0050】
特徴点の検出では、まず、特徴点候補となる極値を検出する。そのため、スケールの異なるガウシアンフィルタを用いて画像を平滑化する。次に各平滑化画像の差分画像であるDoG(Difference of Gaussian)画像を求める。このDoG画像を求める処理を、k倍ずつ大きくした異なるスケール間で行なうことで、複数のDoG画像を得る。
【0051】
次に、得られたDoG画像から極値を検出し、特徴点とスケールを決定する。極値は、スケールの異なるDoG画像3枚を1組とし、注目画素のDoG値を、上下のスケールのDoG画像を含めて、注目画素の近傍の26画素と比較することで検出する。つまり、注目画素のDoG値が極大となるようなとき,その注目画素を特徴点の候補とする。さらに、候補点について,DoG値,主曲率,及びサブピクセルのDoG値がある範囲にあるものを特徴点とする。特徴点にはスケールの情報を持たせておく。
【0052】
次に特徴量の記述に関しては、まず、検出された各特徴点の代表となる方向を求める。具体的には、各特徴点について,その近傍領域で輝度勾配の方向ヒストグラムを計算し、最も頻度が高い方向を探す。そして、特徴点を中心として、画像座標系をその方向に回転した局所座標系を作成する。
【0053】
この局所座標系で、特徴点を中心とし、保持しているスケール情報に比例した大きさの局所領域を考え、その領域を4×4のブロックに分割する。そして、各ブロック毎に8方向の輝度勾配のヒストグラムを作成する。これにより、4×4×8=128次元のSIFT特徴量が得られる。
【0054】
本実施形態では、図2に示す駐車支援シート40を撮影した画像に対して、予め上述したSIFT特徴量の算出処理を適用することにより、駐車支援シート40の模様における各特徴点のSIFT特徴量を算出して、画像処理ECU20に保存しておく。この各特徴点のSIFT特徴量を基本SIFT特徴量と呼ぶ。図4は、駐車支援シートの模様に関して、基本SIFT特徴量が算出された特徴点の例を示している。
【0055】
図3のフローチャートに示す制御処理では、まずステップS110にて、CCDカメラ10によって撮影されたカメラ画像を取り込む。続くステップS120では、カメラ画像において、所定の大きさの矩形状の検出窓を設定し、その検出窓内の画像を切り出す。なお、検出窓の位置は、カメラ画像において所定画素(例えば3画素)ずつ移動されるように更新される。そして、この検出窓による移動が、画像全領域をカバーするように、検出窓の移動が繰り返される。また、窓の大きさは、1枚の駐車支援シート40が入るのに充分な大きさを持ち、かつ車幅方向に離された2枚の駐車支援シート40が同時に入ることがないように設定される。
【0056】
ステップS130では、検出窓が画像全領域をカバーするように移動済みであり、すなわち最後の検出窓であって、ステップS120の処理において検出窓の更新ができなかったか否かを判定する。このとき、最後の検出窓と判定されると、ステップS210の処理に進む。一方、最後の検出窓ではなく、新たな検出窓による画像の切り出しが行なわれた場合には、ステップS140の処理に進む。
【0057】
ステップS140では、検出窓により切り出した画像に対して、上述したSIFT特徴量の算出処理を適用することにより、その画像の各特徴点についてSIFT特徴量を算出する。この算出したSIFT特徴量をテストSIFT特徴量と呼ぶ。続くステップS150では、基本SIFT特徴量が算出された各特徴点と、テストSIFT特徴量が算出された各特徴点との対応付けを行なう。具体的には、各特徴点ごとに算出された基本SIFT特徴量に対して、最もユークリッド距離の近いテストSIFT特徴量を1つ選択する。このとき、ユークリッド距離が予め定められた閾値よりも小さい場合には、そのテストSIFT特徴量を持つ特徴点を対応点とし、大きなものは対応点が存在しないものとする。このような処理を、全ての特徴点の基本SIFT特徴量に関して行なうことにより、対応点の総数を算出する。
【0058】
ステップS160では、対応点の総数が所定の閾値よりも多いか否かを判定する。このとき、対応点の総数が所定の閾値よりも多ければ、検出窓により切り出された画像内に、駐車支援シート候補が検出されたとみなす。駐車支援シート候補が検出された場合、ステップS170に進み、カメラ画像における対応点の画像座標から、駐車支援シートの3次元位置の割り出しを以下の手順で行なう。
【0059】
対応の取れたカメラ画像の特徴点の画像座標を(x,y)とする。この画像座標(x,y)は、CCDカメラ10の焦点距離fと、路面を基準とする3次元座標(X,Y,Z)と、以下の数式1に示す関係を持つ。
【0060】
(数1)
x=f・X/Z
y=f・Y/Z
また、車両に対するCCDカメラ10の搭載位置及び取り付け角度などは予め定められているため、路面上の点が満たす平面の式は、以下の数式2によって表すことができる。
【0061】
(数2)
aX+bY+Z=C
ここで、駐車支援シート40は、路面に置かれるものであるので、式(1)、(2)から、X、Y、Zを一意に決定することができ、3次元座標における対応点の位置を求めることができる。この位置の算出を、対応の取れた点すべてに対して行なう。
【0062】
ステップS180では、ステップS170により求められた3次元座標における対応点の配置が、駐車支援シート40の模様に対応した基本点配置と一致するか否かを判定する。つまり、対応点の配置と、基本点配置とが相似形状をなすか否かを判定する。ステップS180の処理において、対応点の配置と基本点配置とが相似形状をなすと判定した場合、検出窓によって切り出した画像に駐車支援シート40が検出されたとみなすことができるので、ステップS190の処理に進む。一方、相似形状をなさないと判定した場合には、駐車支援シート候補は、駐車支援シートに該当しないと判断され、ステップS120の処理に戻る。
【0063】
ステップS190では、コーナーの位置及びそのコーナーから延びる2本の駐車枠線の位置を求める。すなわち、コーナーの位置及び駐車枠線の位置は、予め基本SIFT特徴量を持つ特徴点の座標によって定義されている。よって、駐車支援シートが検出され、そのシート上の点配置が求まった場合、コーナーの位置と駐車枠線の位置とが求まる。そして、ステップS200では、算出されたコーナー位置及び2本の駐車枠線と、自車両との最小距離を接触距離として算出する。
【0064】
検出窓が画像全領域をカバーするように移動済みである場合に実行されるステップS210では、ステップS190にて算出されたコーナーの位置及び駐車枠線の位置、ステップS200にて算出された接触距離に基づいて、上述したガイド付実画像及び/又はガイド付鳥瞰画像を車両周辺画像として表示する。これにより、車両の運転者は、駐車すべき領域を示す駐車枠線やコーナーとの位置関係を正確に把握することができる。従って、安全かつ確実に、車両を駐車させるための操作を行なうことが可能となる。
【0065】
本実施形態では、駐車枠線及びコーナー点の位置を示すことができる駐車支援シート40を用いているので、頻繁に使用する駐車場などに、一度、駐車支援シート40を設置してしまえば、駐車の度に、画面上において駐車位置を定めるなどの特別な操作を行なう必要がない。
【0066】
駐車支援シート40の模様は、コーナー点及びそのコーナー点から延びる2本の交差する駐車枠線の位置を定めるものであるため、その2本の駐車枠線を基準として、車両を適切な位置に駐車できるように駐車支援を行なうことができる。さらに、本実施形態では、上述した駐車支援シート40を用いているので、駐車支援システム100は、車両を駐車すべき領域を示す駐車枠線の位置を一義的に定めることができる。
【0067】
また、駐車支援シート40は、車両の乗員が携帯可能なものであるため、日常的には使用しないが、駐車の難易度が高い駐車場についても、駐車支援システム100による駐車支援を受けることが可能になる。すなわち、狭い駐車場、障害物の多い駐車場、脱輪の可能性がある駐車場などの駐車の難易度が高い駐車場に駐車する必要がある場合に、車両の運転者が、目標とする駐車位置に応じた位置に、携帯している駐車支援シート40を臨時に設置することができる。これにより、駐車の難易度が高い駐車場においても、安全に駐車することが可能となる。
【0068】
以上、本発明の第1実施形態について説明したが、第1実施形態による駐車支援システム100は、上述した具体例になんら制限されることなく、種々の変形が可能である。
【0069】
例えば、上述した第1実施形態では、1枚の駐車支援シート40を駐車領域のコーナー部に配置する例について説明した。しかしながら、駐車支援シート40は、複数枚組み合わせて使用しても良い。例えば、2枚の駐車支援シート40を目標駐車領域の対角コーナー位置に設置すれば、駐車枠線の4辺全てを示すことができる。また、2枚の駐車支援シート40を目標駐車領域のある1辺の両端の2つのコーナー位置に設置すると、駐車枠線の3辺を示すことができる。ただし、この場合、それぞれの駐車支援シート40に描かれた模様に基づいて、それぞれのシート40毎に交差する2本の駐車枠線の位置を定めてしまうと、各シート40が置かれたコーナー間において、駐車枠線が重複してしまうことになる。このような問題を防ぐには、それぞれのシート40の模様により定まるコーナー位置同士を結ぶように、駐車枠線の位置を定めれば良い。これにより、駐車枠線の重複をなくして、統一した1本の駐車枠線を定めることができる。
【0070】
また、上述した実施形態では、1枚の駐車支援シート40により、コーナー点とそのコーナーから延びる2本の駐車枠線の位置を定めるものであった。しかしながら、駐車支援シートとして、単に駐車枠線の位置を定める模様のみを描き(例えば、上述した駐車支援シート40の第2もしくは第3の図形パターンのみを描く)、そのような駐車支援シートを2枚組み合わせて、交差する2本の駐車枠線の位置を定めても良い。この場合、コーナー位置は、2本の駐車枠線の交点によって定義される。
【0071】
上述した第1実施形態では、CCDカメラ10が車両の後部に取り付けられる例について説明したが、カメラは車両の前部に取り付けられて、車両の前方の様子を撮影するものであっても良いし、車両の側部に取り付けられて、側方の様子を撮影するものであっても良い。さらには、複数のカメラを車両に搭載しても良い。
【0072】
さらに、シート40は、車両の駐車領域の奥側の駐車枠線ではなく、手前側の駐車枠線を示す位置に配置されても良い。この場合、例えば、シート40の模様から把握される駐車枠線との距離表示に加え、車両の縦方向及び横方向を考慮して残りの(奥側の)駐車枠線の位置を定め、その定めた駐車枠線との距離表示などを行っても良い。
【0073】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態による駐車支援システムについて図面に基づいて説明する。なお、上述した第1実施形態と同様の構成に関しては同じ参照番号を付与することにより、詳細な説明を省略する。
【0074】
上述した第1実施形態においては、カメラによって撮影された画像に、仮想コーナーポール、仮想駐車枠線、及びそれぞれの仮想駐車枠線との最小距離などを重畳表示したガイド付実画像及び/又はガイド付鳥瞰画像を表示するものであった。
【0075】
それに対して、本実実施形態による駐車支援システムは、少なくとも交差する2本の駐車枠線の位置に基づいて矩形状の駐車領域を定め、この駐車領域に収まるまでに車両が辿る経路を算出する。そして、駐車枠線の位置と車両との位置関係を示す情報として、駐車領域及びその駐車領域に収まるまでに車両が辿る経路を表示する。このように駐車領域及び経路を表示することにより、運転者は、車両の駐車領域が意図通りに設定されているか、またその駐車領域までの経路で、安全上問題がないかなどを確認することができる。
【0076】
さらに、本実施形態による駐車支援システムは、車両の運転者によって、表示された経路に従って駐車領域まで車両を自動的に移動させる駐車制御の実行が指示されると、車両を自動的に駐車領域内に移動させる駐車制御を実行する。従って、車両を駐車するための駐車領域の設定などを運転者が手動にて行う必要がないので、駐車制御を実行する上での手間を大幅に軽減することができる。
【0077】
図8は、本実施形態による駐車支援システムの構成を示す構成図である。図8に示すように、画像処理ECU20は、接触距離算出部22の代わりに、駐車領域及び経路算出部24を備えている。
【0078】
駐車領域及び経路算出部24は、駐車支援シート探索部21によって探索された駐車支援シート40により定められるコーナー位置やそのコーナー位置から伸びる2本の直線(駐車枠線)を用いて、車両を駐車するための矩形状の駐車領域を定める。さらに、車両の現在の位置から駐車領域内の駐車位置まで車両を移動させる際に、車両が辿る経路を算出する。
【0079】
駐車領域及び経路算出部24による駐車領域の設定処理について、以下に説明する。まず、図9に示すように、駐車支援シート40が、矩形状の駐車領域の四隅のコーナー部に置かれているが、その内、3枚の駐車支援シート40だけが、画像処理ECU20の駐車支援シート探索部21によって検出されている場合について説明する。
【0080】
この場合、検出されている3枚の駐車支援シート40によって挟まれる、駐車領域の二辺の駐車枠線については、第1実施形態において説明したのと同様に、それぞれの駐車支援シート40の模様により定まるコーナー位置同士を結ぶように、駐車枠線の位置を定める。そして、残りの二辺の駐車枠線は、検出されている駐車支援シート40の模様により定まる直線から、その位置を定める。このようにして、残り二辺の駐車枠線の位置が定まると、それらの交点位置から、残り1つのコーナー位置も定めることができる。
【0081】
3枚の駐車支援シート40が検出されている場合、このようにして、4辺の駐車枠線によって囲まれる矩形状の駐車領域を定めることができる。なお、駐車領域及び経路算出部24は、自車両の縦方向及び横方向の長さを記憶しており、定められた駐車領域が、自車両の縦方向及び横方向の長さに対して適性であるか不足しているかを判定し、不足していると判定した場合には、その旨を警告するようにしても良い。
【0082】
次に、図11に示すように、障害物などにより、駐車領域の短手方向に並んだ2枚の駐車支援シート40しか検出されない場合の駐車領域の設定処理について説明する。この場合、2枚の駐車支援シート40によって挟まれる、駐車領域の一辺の駐車枠線については、それぞれの駐車支援シート40により定まるコーナー位置同士を結ぶように、その位置を定める。そして、その駐車枠線に対して、直角に伸びる二辺の駐車枠線については、各駐車支援シート40の模様により定まる直線から、その位置を定める。さらに、残りの一辺の駐車枠線については、駐車領域及び経路算出部24が記憶している車両の縦方向の長さを用いて、車両が納まるように、その位置を定める。なお、この場合は、駐車枠線によって囲まれる駐車領域が、車両の横方向の長さに対して適性であるか不足しているかを判定し、不足している場合には、その旨を警告するようにしても良い。
【0083】
さらに、図14に示すように、1枚の駐車支援シート40しか検出されない場合の駐車領域の設定処理について説明する。この場合、1枚の駐車支援シート40の模様から、駐車領域の1つのコーナー位置とそのコーナー位置から延びる2本の駐車枠線の位置を定めることができる。従って、その2本の駐車枠線を基にして、自車両が収まる駐車領域を区画する残り二辺の駐車枠線を定めることができる。すなわち、駐車支援シート40から定められる駐車枠線に対して直角となり、自車両の縦方向及び横方向の長さに対して所定のマージン距離加えた位置に、残り二辺の駐車枠線の位置を定めることができる。
【0084】
このように、駐車領域及び経路算出部24は、駐車支援シート探索部21によって検出された駐車支援シート40の数に応じて、それぞれ適切な駐車領域を設定することができる。なお、4つの駐車支援シート40がすべて検出された場合には、それらの駐車支援シート40により定まるコーナー位置を相互に結ぶように、駐車枠線の位置を定めることができる。
【0085】
次に、駐車領域及び経路算出部24による経路の算出処理について説明する。駐車領域及び経路算出部24は、検出された駐車支援シート40に基づいて駐車領域を定めると、現在の車両の位置から駐車領域内の駐車位置に達するまでに車両が辿る経路を算出する。この経路算出のためのアルゴリズムは公知であるため説明を省略する。
【0086】
ただし、本実施形態では、駐車領域及び経路算出部24は、駐車領域の各辺の両端に位置する複数の駐車支援シート40が検出された場合、その検出された複数の駐車支援シート40の間の駐車枠線上を通過する経路を算出する。駐車支援シート40の間を通る経路上に車両の進行の妨げとなる障害物が存在する場合、車両に搭載されたCCDカメラ10によって撮影された画像においては、その障害物によって駐車支援シート40が隠されてしまうことが多い。従って、逆の見方をすると、CCDカメラ10によって撮影された画像に、駐車領域の各辺の両端に位置する複数の駐車支援シート40が写し出されている場合、それら複数の駐車支援シート40の間に、車両の進行の妨げとなる障害物が存在する可能性は低いと言える。そのため、検索された複数の駐車支援シートの間を通過する経路を算出して、その経路を表示することにより、車両を安全に進行させることができる可能性が高い経路を提示することができる。
【0087】
具体的には、例えば、図10に示すように、駐車領域の4つのコーナー部の内、3つのコーナー部に配置された駐車支援シート40が検出されている場合には、それら3つの駐車支援シート40の間の2本の駐車枠線上を通過する経路を算出する。
【0088】
なお、この場合、まず、車両の現在の位置から駐車領域内の駐車位置まで車両を移動させるための経路を算出し、この算出した経路が、3つの駐車支援シート40間の2本の駐車枠線上を通過するものであれば、その経路をそのまま採用し、通過しなければ、通過するまで、異なる経路の算出を繰り返すことにより、駐車位置まで車両を移動させるための経路を算出しても良い。また、2本の駐車枠線上を通過するための車両の中間位置を定め、車両の現在位置から中間位置までの経路、及び中間位置から駐車位置までの経路をそれぞれ求めてつなぎ合わせることにより、駐車位置まで車両を移動させるための経路を算出しても良い。
【0089】
図12に示すように、駐車領域の短手方向に並んだ2枚の駐車支援シート40しか検出されていない場合も、図10の場合と同様の考え方から、その2枚の駐車支援シート40によって挟まれる駐車枠線上を通過する経路を算出する。
【0090】
但し、この場合には、無闇に経路を算出しても、2枚の駐車支援シート40によって挟まれる駐車枠線上を通過する経路が算出されないので、図13に示すように、車両の後端部の中央位置が、その通過すべき駐車枠線の中間点に接する車両位置を、中間位置に定める。そして、車両の現在位置から中間位置までの経路、及び中間位置から駐車位置までの経路をそれぞれ求めてつなぎ合わせて、駐車位置まで車両を移動させるための経路を算出する。なお、単純に車両を後退させるだけでは、車両の現在の位置から中間位置まで車両を移動させることが不可能である場合には、切り返しを含む経路を算出しても良い。切り返しを含む経路の算出手法も、例えば特開2010−18074号公報などにより公知であるため、説明を省略する。
【0091】
また、図14に示すように、1枚の駐車支援シート40しか検出されない場合には、いずれの駐車枠線上を通過することが可能であるか不明であるため、図15に示すように、駐車領域内の駐車位置に達するまでに車両が辿る経路として、複数の異なる経路を算出して表示する。図15に示す例では、2種類の異なる経路を一画面にて表示しているが、3種類以上の経路を表示しても良いし、それぞれの経路を別画面で表示するようにしても良い。なお、2枚以上の駐車支援シート40が検出されている場合においても、図15に示す例のように、複数の異なる経路を算出するようにしても良い。
【0092】
例えば、車両の駐車領域と隣接する位置に障害物(他車両、柱、壁など)があると、駐車領域までの経路によっては、車両が移動する際に、その障害物に接触してしまうことも起こりえる。その点、上述したように、複数の経路を算出して表示するようにすれば、障害物が存在しても、車両を安全に駐車できる経路を提示する可能性を高めることができるので、運転者による駐車制御の利用機会が増え、より効果的な駐車支援を行うことができる。
【0093】
このようにして、駐車領域及び経路算出部24において、駐車領域及び経路の算出が行われると、その算出結果が、画像生成部23に出力される。画像生成部23は、CCDカメラ10によって撮影されたカメラ画像と、駐車領域及び経路算出部24によって算出された駐車領域及び経路とを用いて、駐車領域及び経路が重畳表示された実画像及び/又は鳥瞰画像を生成して、表示装置30に出力する。
【0094】
表示装置30において、駐車枠線によって規定される駐車領域及びその駐車領域までの経路が表示されているときに、図示しない操作スイッチにより、自車両の運転者が、駐車位置まで車両を自動的に移動させる駐車制御の実行を指示すると、画像処理ECU20から駐車領域及び経路に関する情報が、駐車制御ECU50に出力され、駐車制御が開始される。
【0095】
なお、表示装置30の画面に、複数の経路が表示されている場合には、運転者はいずれか1つの経路を選択しつつ、駐車制御の実行を指示するためのスイッチ操作を行う。
【0096】
駐車制御の実行が指示されると、駐車制御ECU50は、図示しない各種のセンサにより車両の挙動(速度、操舵角など)を検出し、車両が、運転者により指示された経路に従って移動するようにブレーキ、エンジン、ステアリングなどを制御する。そのため、それぞれの機器を制御するブレーキECU60、エンジンECU70、ステアリングECU90などに制御信号を出力する。なお、指示された経路に、切り返しが含まれる場合には、駐車制御ECU50は、変速機ECU80にも制御信号を出力し、シフト位置の制御も行う。このような、設定した経路に従って車両を自動的に移動させる制御も公知であるため、これ以上の説明は省略する。
【0097】
上述した第2実施形態による駐車支援システムは、第1実施形態による駐車支援システムと組み合わせて実施することができる。すなわち、運転者が車両を駐車しようとする際に、まず、第2実施形態による駐車支援システムにより、駐車領域及び経路を表示しつつ、運転者が自ら運転操作を行って車両を駐車させるか、駐車制御により自動的に駐車位置まで車両を移動させるかを運転者に選択させる。そして、運転者が自ら運転操作を行って車両を駐車させることを選択した場合には、第1実施形態による駐車支援システムによる駐車支援を行い、駐車制御を選択した場合には、第2実施形態による駐車支援システムにより駐車制御を実行すれば良い。
【符号の説明】
【0098】
10 CCDカメラ
20 画像処理ECU
30 表示装置
40 駐車支援シート
100 駐車支援システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転者が当該車両を所望の領域に駐車させる際に、駐車のための運転操作を支援する駐車支援システムであって、
車両を駐車させるべき領域を示す駐車枠線として、少なくとも交差する2本の駐車枠線の位置を定めるために路面に設けられる目印パターンと、
車両に搭載され、車両の周辺の画像を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段によって撮影された周辺画像において、前記目印パターンを探索して、その位置を特定する位置特定手段と、
前記位置特定手段によって特定された目印パターンの位置に基づいて、交差する2本の駐車枠線の位置を定め、それらの駐車枠線の位置と車両との位置関係を車両の運転者に報知する報知手段と、を備えることを特徴とする駐車支援システム。
【請求項2】
前記目印パターンは、移動可能な、路面上に置かれるシートに描かれたものであることを特徴とする請求項1に記載の駐車支援システム。
【請求項3】
前記シートは、前記車両を駐車させるべき領域のコーナー部に置かれ、そのシートに描かれた目印パターンは、コーナー位置とそのコーナー位置から延びる2本の駐車枠線の位置を示すものであることを特徴とする請求項2に記載の駐車支援システム。
【請求項4】
前記目印パターンが描かれたシートが、前記車両を駐車させるべき領域の隣接する2つのコーナー部にそれぞれ置かれた場合、前記報知手段は、シートが置かれたコーナー部間の駐車枠線に関して、それぞれのシートの目印パターンにより示されるコーナー位置を結ぶように、駐車枠線の位置を定めることを特徴とする請求項3に記載の駐車支援システム。
【請求項5】
前記目印パターンは、1本の駐車枠線の位置を示すためのものであり、その目印パターンが描かれたシートが、交差する2本の駐車枠線に対応した路面上の位置にそれぞれ置かれることを特徴とする請求項2に記載の駐車支援システム。
【請求項6】
前記報知手段は、前記駐車枠線と前記車両との距離が所定の閾値を下回ると、前記車両の運転者に警告を発することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の駐車支援システム。
【請求項7】
前記報知手段は、車室内に設けられた表示装置を有し、前記撮影手段によって撮影された画像に基づく車両周辺画像を前記表示装置に表示するとともに、前記目印パターンの位置に基づいて定めた駐車枠線の位置に仮想駐車枠線を前記車両周辺画像に重畳して表示することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の駐車支援システム。
【請求項8】
前記報知手段は、前記車両から前記仮想駐車枠線までの最短距離を求め、前記車両周辺画像に、求めた最短距離を表示することを特徴とする請求項7に記載の駐車支援システム。
【請求項9】
前記報知手段は、前記車両周辺画像において、交差する2本の駐車枠線の交点に対応する位置に、仮想コーナーポールを重畳表示することを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の駐車支援システム。
【請求項10】
前記報知手段は、前記車両と前記コーナーポールとの接近度合に応じて、前記コーナーポールの表示形態を変化させることを特徴とする請求項9に記載の駐車支援システム。
【請求項11】
前記報知手段は、車室内に設けられた表示装置を有し、少なくとも交差する2本の駐車枠線の位置に基づいて矩形状の駐車領域を定め、この駐車領域に収まるまでに車両が辿る経路を算出し、前記駐車枠線の位置と車両との位置関係として、前記駐車領域及びその駐車領域に収まるまでの車両の経路を前記表示装置に表示し、
前記車両の運転者による指示に基づいて、前記報知手段によって表示された経路に従って車両が自動的に移動するように、前記車両の駐車制御を行う駐車制御手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の駐車支援システム。
【請求項12】
前記目印パターンは、前記矩形状の駐車領域のコーナー部に配置されるものであり、前記位置特定手段によって、前記駐車領域の各辺の両端に位置する複数の目印パターンが探索されたとき、前記報知手段は、探索された複数の目印パターンの間の辺上を通過する経路を算出することを特徴とする請求項11に記載の駐車支援システム。
【請求項13】
前記報知手段は、前記駐車領域に収まるまでに車両が辿る経路として、複数の異なる経路を算出して表示し、
前記駐車制御手段は、表示された複数の経路の中から、運転者によって一の経路が選択されたとき、その選択された経路に従って前記駐車制御を行うことを特徴とする請求項11に記載の駐車支援システム。
【請求項14】
前記駐車領域に収まるまでに車両が辿る経路は、前記撮影手段によって撮影された画像に基づく車両周辺画像に重畳表示されることを特徴とする請求項11乃至請求項13のいずれかに記載の駐車支援システム。
【請求項15】
前記報知手段は、
前記撮影手段によって撮影された画像を鳥瞰変換した鳥瞰画像を生成する鳥瞰画像生成手段を有し、
前記車両周辺画像として、前記撮影手段によって撮影された画像と、前記鳥瞰画像生成手段によって生成された鳥瞰画像とを前記表示装置に並べて表示することを特徴とする請求項7乃至請求項10及び請求項14のいずれかに記載の駐車支援システム。
【請求項16】
前記報知手段は、
前記撮影手段によって撮影された画像を鳥瞰変換した鳥瞰画像を生成する鳥瞰画像生成手段を有し、
前記車両周辺画像として、前記撮影手段によって撮影された画像と、前記鳥瞰画像生成手段によって生成された鳥瞰画像とを、車両の運転者の指示に応じて切り替えて前記表示装置に表示することを特徴とする請求項7乃至請求項10及び請求項14のいずれかに記載の駐車支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−173585(P2011−173585A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3307(P2011−3307)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(502324066)株式会社デンソーアイティーラボラトリ (332)
【Fターム(参考)】