説明

駐車装置の建設方法

【課題】ユニットをクレーンで吊り上げるときユニットが変形したり捻れたりするのを防ぐことができる駐車装置の建設方法を提供する。
【解決手段】ユニット6の平面形状に対応した枠状の吊りビーム15を作製し、ユニット6をクレーンで吊り上げるとき、クレーンの索23に吊りビーム15を連結すると共に、吊りビーム15にユニット6を鉛直下方に延びる索24を介して連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車装置等の塔状の鉄骨構造物の建設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
駐車装置を建設する工法としては、所定長さに形成された柱間に梁を掛け渡してなるユニットを地上にて複数作製し、これらユニットを順次クレーンで吊り上げると共に積み上げて建設する工法が知られている。
【0003】
この工法によれば、地上から順次鉄骨を組み上げていく工法(特許文献1、2参照)と比べて高所での作業を減らすことができ、安全かつ効率よく駐車装置を構築できる。
【0004】
【特許文献1】特開平6−73887号公報
【特許文献2】特開平11−117523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ユニットをクレーンで吊り上げるとき、図5に示すようにユニット30の四隅にワイヤ31を掛け、このワイヤ31をクレーンの索23に連結して吊ると、ユニット30に横力やモーメント等が働き、ユニット30に変形やねじれを生じる虞があるという課題があった。特に駐車装置の鉄骨においては、一般の建築物と比べて精度が要求される。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、ユニットをクレーンで吊り上げるときユニットが変形したり捻れたりするのを防ぐことができる駐車装置の建設方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、所定長さに形成された複数の柱間に梁を掛け渡してなるユニットを複数作製し、これらユニットを順次クレーンで吊り上げると共に積み上げて駐車装置を建設する駐車装置の建設工法において、上記ユニットの平面形状に対応した枠状の吊りビームを作製し、上記ユニットをクレーンで吊り上げるとき、クレーンの索に上記吊りビームを連結すると共に、該吊りビームに上記ユニットを鉛直下方に延びる索を介して連結するものである。
【0008】
クレーンで上記ユニットを吊り上げるとき、このユニットと上記吊りビームの対向する隅部同士を索を介して連結するとよい。
【0009】
クレーンで吊り上げる前の上記ユニットに、駐車装置の付属品を予め設けておくとよい。
【0010】
前記付属品が、車両を格納する格納棚であるとよい。
【0011】
前記付属品が、前記格納棚上に、車両を載置するパレットであってもよい。
【0012】
また、前記付属品が、車両を載置するパレットを昇降させる昇降用駆動装置であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ユニットをクレーンで吊り上げるときユニットが変形したり捻れたりするのを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の好適実施の形態を添付図面を用いて説明する。
【0015】
図1は、ユニットを吊りビームを介して吊り上げる状態を示し、図2(a)は駐車装置の建設予定地上にユニットを設けると共に、このユニット上に積み上げるためのユニットを地上で組み立てた状態を示す概略説明図であり、図2(b)は、建設予定地上のユニットに他のユニットを積み上げる状態を示す概略説明図であり、図3は、全てのユニットを積み上げた状態を示す概略説明図である。
【0016】
図2(a)に示すように、駐車装置1を建設する場合、建設予定地2に図示しない基礎を設置したのち、基礎上に駐車装置本体4の最下部を構成する第1ユニット5を立設すると共に、第1ユニット5と同じ平面形状の第2ユニット6を地上にて組み立てる。これらユニット5、6は、少なくとも4隅の柱7を含む複数の柱7と、四隅の柱7間に前後左右に掛け渡して設けられた複数の梁8とを備えて構成される。柱7と梁8はそれぞれ鉄骨からなる。柱7は所定の長さに形成され、梁8は柱7間に上下に離間して複数設けられる。
【0017】
この後、図1に示すように第2ユニット6に、車両を格納する格納棚9や、格納棚9上に車両を載置するパレット11等の駐車装置1の付属品を予め設ける。具体的には、第2ユニット6の左右両側に、車両を格納するための格納棚9を設けると共に、はしご10等を設け、格納棚9上に、車両を載置するためのパレット11を載置する。格納棚9は、左右方向に延びる梁8に設けられた複数の棚柱12と、これら棚柱12に沿って多段に設けられ水平方向に延びる支持フレーム13と、これら支持フレーム13上に多段に掛け渡して設けられパレット11を走行可能に支持するためのレール14とからなる。
【0018】
また、第2ユニット6に格納棚9等を設ける作業と並行して、第2ユニット6の平面形状に対応した枠状の吊りビーム15を作製する。吊りビーム15は、第2ユニット6と同じ外形形状に形成されると共に同じ寸法に形成され、ユニット5、6上に重ね合わせたときそれぞれの隅部16、17が互いに対向されるようになっている。具体的には、吊りビーム15は、ユニット5、6の幅方向に延びる一対の横材18と横材18に対して直交する一対の縦材19とを矩形枠状に組み立てて構成される。また、横材18と縦材19の端部20、21間には、横材18と縦材19を補強するための斜材22が斜めに掛け渡して設けられる。
【0019】
このようにして、第2ユニット6に格納棚9等が設けられると共に格納棚9上にパレット11が載置され、かつ、吊りビーム15が作製されたら、クレーンの索23に吊りビーム15を連結すると共に、吊りビーム15に第2ユニット6を鉛直下方に延びる第1玉掛けワイヤ24を介して連結する。具体的には、吊りビーム15の四隅に2本の第2玉掛けワイヤ25をタスキ状(X字状)に掛け渡すと共にこれら第2玉掛けワイヤ25をクレーンのフック26に掛け、第2ユニット6と吊りビーム15の対向する隅部16、17同士を第1玉掛けワイヤ24を介して連結する。
【0020】
この後、図1及び図2(b)に示すように、第2ユニット6を吊りビーム15を介してクレーンで吊り上げ、第1ユニット5上に積み上げる。このとき、第2ユニット6は吊りビーム15に鉛直に延びる第1玉掛けワイヤ24を介して吊られるため、第2ユニット6に横方向の力やモーメントが働くことはなく、第2ユニット6が変形したりねじれたりする虞はない。
【0021】
第2ユニット6が第1ユニット5上に正確に積み上げられて第1ユニット5の四隅の柱7と第2ユニット6の四隅の柱7とがそれぞれ突き合わされたら、突き合わされた柱7同士を溶接又は添接板(図示せず)を介してボルト締結する等により一体に連結する。また、地上にて第2ユニット6と同様の第3ユニット(図示せず)を柱7の連結作業と並行して組み立てておく。第3ユニットに格納棚9等を設けたら、第2ユニット6と同様に第3ユニットを吊りビーム15を介してクレーンで吊り上げ、第2ユニット6上に積み上げる。
【0022】
以降、上述と同様の手順でユニット6を順次積み上げて図3に示すように駐車装置本体4を構築する。このとき、クレーンで吊り上げる前の最上段のユニット6には、パレット11を昇降させる昇降用駆動装置28を予め設けておくとよい。駐車装置本体4に外壁(図示せず)等を設けて駐車装置1を完成する。
【0023】
このように、第2ユニット6の平面形状に対応した枠状の吊りビーム15を作製し、第2ユニット6等のユニットをクレーンで吊り上げるとき、クレーンの索23に吊りビーム15を連結すると共に、吊りビーム15にユニットを鉛直下方に延びる第1玉掛けワイヤ24を介して連結するため、吊り上げたユニットに横力やモーメント等が働くのを防ぐことができ、ユニットが変形したりねじれたりするのを防ぐことができる。
【0024】
クレーンでユニットを吊り上げるとき、ユニットと吊りビーム15の対向する隅部16、17同士を第1玉掛けワイヤ24を介して連結するものとしたため、吊りビーム15とユニットの連結を容易にできると共に、ユニット6を容易に水平に吊ることができ、効率よく作業できる。
【0025】
また、クレーンで吊り上げる前の第2ユニット6等のユニットに、車両を格納する格納棚9や、格納棚9上に車両を載置するためのパレット11、パレット11を昇降させる昇降用駆動装置28などの駐車装置1の付属品を予め設けておくため、高所での作業を更に減らすことができ、更に安全かつ効率よく作業を行うことができる。
【0026】
なお、クレーンで第2ユニット6等のユニットを吊り上げる前に、ユニット6に格納棚9を設け、格納棚9上にパレット11を載置したり、昇降用駆動装置28などの付属品を設けておくものとしたが、これに限るものではない。図4に示すように、第2ユニット6等のユニットを吊りビーム15を介してクレーンで吊り上げ、第1ユニット5等の既設ユニット上に積み上げた後、積み上げたユニットに格納棚9を設けると共に、格納棚9上にパレット11を載置したり、昇降用駆動装置28などの付属品を設けるものとしてもよい。小さなクレーンでもユニット6を積み上げることができる。
【0027】
また、吊りビーム15と第2ユニット6等のユニットは、玉掛けワイヤ24、25を介してクレーンで吊るものとしたが、玉掛けワイヤ24、25に換えてチェーンや他の索を用いてもよいのは勿論である。
【0028】
吊りビーム15は第2ユニット6等のユニットと同じ外形形状に形成されるものとしたが、吊りビーム15は第2ユニット6等のユニットとは異なる外形形状に形成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の好適実施の形態を示すユニットをクレーンで吊り上げる状態を示す斜視図である。
【図2】(a)はユニットを複数作製した状態の概略説明図であり、(b)はユニットを積み上げる状態を示す概略説明図である。
【図3】ユニットを全て積み上げた状態を示す概略説明図である。
【図4】他の実施の形態を示すユニットをクレーンで吊り上げる状態を示す斜視図である。
【図5】従来の工法でユニットを吊り上げる状態を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1 駐車装置
6 第2ユニット(ユニット)
7 柱
8 梁
9 格納棚
11 パレット
15 吊りビーム
16 隅部
17 隅部
24 第1玉掛けワイヤ(索)
28 昇降用駆動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定長さに形成された複数の柱間に梁を掛け渡してなるユニットを複数作製し、これらユニットを順次クレーンで吊り上げると共に積み上げて駐車装置を建設する駐車装置の建設工法において、上記ユニットの平面形状に対応した枠状の吊りビームを作製し、上記ユニットをクレーンで吊り上げるとき、クレーンの索に上記吊りビームを連結すると共に、該吊りビームに上記ユニットを鉛直下方に延びる索を介して連結することを特徴とする駐車装置の建設方法。
【請求項2】
クレーンで上記ユニットを吊り上げるとき、このユニットと上記吊りビームの対向する隅部同士を索を介して連結する請求項1記載の駐車装置の建設方法。
【請求項3】
クレーンで吊り上げる前の上記ユニットに、駐車装置の付属品を予め設けておく請求項1又は2記載の駐車装置の建設方法。
【請求項4】
前記付属品が、車両を格納する格納棚である請求項3記載の駐車装置の建設方法。
【請求項5】
前記付属品が、前記格納棚上に、車両を載置するパレットである請求項3記載の駐車装置の建設方法。
【請求項6】
前記付属品が、車両を載置するパレットを昇降させる昇降用駆動装置である請求項3記載の駐車装置の建設方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−47957(P2010−47957A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212681(P2008−212681)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(000198363)IHI運搬機械株式会社 (292)
【Fターム(参考)】