説明

髄膜炎菌(Neisseriameningitidis)のプロテイナーゼK抵抗性表面蛋白質

【課題】髄膜炎菌の表面に存在する、高度に保存された、免疫学的に結合可能な抗原、また、髄膜炎病の治療、防止および診断において有用な、免疫療法的、予防的かつ診断的な組成物および方法の提供。
【解決手段】外見上の分子量が22 kDaである、プロテイナーゼK抵抗性の髄膜炎菌表面蛋白質、それに対応する特定の塩基配列および推定アミノ酸配列、髄膜炎菌の22 kDa表面蛋白質を産生するための組換えDNA技術、ならびに髄膜炎菌の22 kDa表面蛋白質に結合する抗体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、髄膜炎菌の表面にある、高度に保存された、免疫学的に結合しうる抗原に関する。この独特な抗原により、髄膜炎病を治療、防止または診断する上で有用な、免疫療法的、予防的かつ診断的な新しい薬剤のための基礎が提供される。より特異的には、本発明は、外見上の分子量が22 kDaである、プロテイナーゼK抵抗性の髄膜炎菌表面蛋白質、それに対応する塩基配列および推定アミノ酸配列(配列番号:1から配列番号:26)、髄膜炎菌の22 kDa表面蛋白質を産生するための組換えDNA技術、髄膜炎菌の22 kDa表面蛋白質に結合する抗体、ならびに髄膜炎病を診断、治療または予防するための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
髄膜炎菌は、全世界で、死亡および罹病の主な原因となっている。髄膜炎菌は、主に、髄膜炎および髄膜炎血症などの、風土病および流行病の原因となる[非特許文献1、2]。実際、この生物は、米国における細菌性髄膜炎の最も普遍的な原因菌の一つで、b型ヘモフィルス・インフルエンザ菌(Haemophilusinfluenzae)に次いで多く、すべての病因の約20%を占める。血清の殺菌活性が、髄膜炎菌に対する主要な防御機構であるため、細菌による侵入からの防御は、血清中の抗髄膜炎菌抗体の存在に相関する[非特許文献3、4]。
【0003】
髄膜炎菌は、莢膜抗原の存在によって、血清グループに下位分類される。目下、12の血清グループが認知されているが、血清グループA、B、C、YおよびW-135が最も普通に見られる。血清グループの中で、血清型、サブタイプおよび免疫型は、外膜蛋白質とリポ多糖によって同定することができる[非特許文献5 ]。
【0004】
現在利用できる莢膜多糖ワクチンは、すべての髄膜炎菌株に対して効果的なわけではなく、幼若な乳児において、防御抗体の産生を効果的には誘導しない[非特許文献6、7、8]。この生物に対するワクチンにおいて、現在、血清グループA、B、C、YおよびW-135の莢膜多糖が用いられている。これらの多糖ワクチンは、短期間では有効であるが、ワクチンを投与された患者が、免疫学的記憶を発達させることがないため、抵抗性の程度を維持するためには、3年以内の間隔でワクチンを再接種しなければならない。
【0005】
さらに、これらの多糖ワクチンは、この病気の主な犠牲者である、2才未満の幼児において必要とされる防御を行うのに十分な量の殺菌性抗体を誘導しない。血清グループBの菌株は、先進国における髄膜炎菌病の一次的な原因菌であるが、現在のところ、この生物に対して効果的なワクチンで利用可能なものはない。実際、血清グループBの多糖は、防御効果もなく特異性の低い、IgMの弱い応答しか誘導しないため、よい免疫原ではない[非特許文献4、9、10]。さらに、非常によく似た、交差反応性の構造物が、ヒト新生児の脳組織の糖蛋白質の中に存在するため[非特許文献11]、血清グループBの多糖類の免疫原性を増強しようという試みはうまく行かないかもしれない。
【0006】
より効果的なワクチンを得るために、リポ多糖などの別の髄膜炎菌表面抗原、ピリ線毛蛋白質、外膜に存在する蛋白質が調べられている。これらの蛋白質性表面抗原のいくつかに対する、ヒトの免疫応答と殺菌性抗体が、自発的被験者と回復期患者の血清中に存在することが明らかにされた[非特許文献12、13、14、15、16]。
【0007】
さらに、クラス1、2/3および5などの、外膜蛋白質に対して作成されたモノクローナル抗体も、殺菌性があり、動物では実験的な感染に対して防御効果があった[非特許文献17、18、19、20]。
【0008】
髄膜炎菌の外膜蛋白質に基づく抗原調製物が、動物とヒトの体内で免疫原効果を有することが明らかになり、それらのうちのいくつかは、臨床試験で調べられてきた[非特許文献21、22、23、24、25、26、27、28、29、15、16、10、30]。しかし、外膜蛋白質には、菌株間で大きな抗原多様性があるため、これらをワクチンに用いることには限界がある[非特許文献6]。実際、これらの調製物の殆どが、抗原を抽出したのと同じか、それに関連した血清型だけに限定される殺菌性抗体を誘導した[非特許文献8 ]。さらに、幼児において、これらのワクチンによって付与される防御力は、まだ、明確に立証されてはいない。クラス4のように、高度に保存されている髄膜炎菌外膜蛋白質[非特許文献31]と、リップ(lip)蛋白質(H.8とも呼ばれる)[非特許文献32]は、有望なワクチン候補とはいえない。なぜなら、これらの蛋白質は、殺菌性抗体の産生を誘導しないからである。これらのワクチン調製物を改良するためには、すべての髄膜炎菌の菌株の表面に存在し、広域スペクトルを有するワクチンを作製するための殺菌性抗体を誘導できる、高度に保存された蛋白質が必要である。
【0009】
髄膜炎菌の最近の検査室診断は、塗沫調製物のグラム染色、ラテックス凝集もしくは共同凝集、または、養分に富んだ選択培地での培養と単離などの技術を用いて行われる[非特許文献33]。髄膜炎菌の単離株を同定するためには、通常、炭水化物分解試験が行われる。説明されている手順の殆どは、熟練者を必要とする、時間のかかる処理過程である。髄膜炎菌の迅速な同定には、有病率が最も高い血清グループによって発現されている莢膜抗原に対して作製された多価血清を含む、市販の凝集キットおよび共同凝集キットが用いられる。しかし、これらの多価血清は、しばしば、別種の細菌と非特異的に交差反応するため、常に、グラム染色および培養とともに用いられなければならない。したがって、このような診断解析法に代わる効果的な方法で、診断の迅速性と信頼性を向上させる方法が必要とされている。
【0010】
【非特許文献1】Gold, 髄膜炎血症病の進化、p. 69, Vodros N.A., CRC Press (1987)
【非特許文献2】Schwartzら、Clin. Microbiol. Rev., 2, p. S118 (1989)
【非特許文献3】Goldschneiderら、J. Exp. Med. 129, p. 1307 (1969)
【非特許文献4】Goldschneiderら、J. Exp. Med. 129, p.1327 (1969)
【非特許文献5】Fraschら、Rev. Infect. Dis. 7, p.504 (1985)
【非特許文献6】Frasch , Clin. Microbiol. Rev. 2, p. S134 (1989)
【非特許文献7】Reingoldら、Lancet, p. 114(1985)
【非特許文献8】Zolliger, in Woodrow and Levine, 「新世代ワクチン(New generation vaccines)」、p.325, Marcel Dekker Inc. N.Y. (1990)
【非特許文献9】Skevakisら、J. Infect. Dis., 149, p.387 (1984)
【非特許文献10】Zollingerら、J. Clin. Invest., 63, p.836 (1979)
【非特許文献11】Finneら、Lancet, p.355 (1983)
【非特許文献12】MandrellおよびZollinger, Infect. Immun., 57, p. 1590 (1989)
【非特許文献13】Poolmanら、Infect. Immun., 40, p.398 (1983)
【非特許文献14】Rosenquistら、J. Clin. Microbiol., 26, p. 1543 (1988)
【非特許文献15】WedegeおよびFroholm, Infect. Immun., 51, p. 571 (1986)
【非特許文献16】WedegeおよびMichaelsen, J. Clin.Microbiol., 25, p.1349 (1987)
【非特許文献17】Brodeurら、Infect. Immun., 50, p. 510 (1985)
【非特許文献18】Fraschら、Clin. Invest.Med. 9, p. 101 (1986)
【非特許文献19】Saukkonenら、Microb. Pathogen., 3, p. 261,(1987)
【非特許文献20】Saukkonenら、Vaccine, 7, p. 325, (1989)
【非特許文献21】Bjuneら、Lancet, p. 1093 (1991)
【非特許文献22】Costaら、NIPH Annals, 14, p. 215(1991)
【非特許文献23】Fraschら、Med. Trop., 43, p. 177 (1982)
【非特許文献24】Fraschら、Eur.J. Clin. Microbiol., 4, p. 533 (1985)
【非特許文献25】Fraschら、in Robbins, Bacterial Vaccines, p. 262, Praeger Publications, N. Y. (1987)
【非特許文献26】Frasch, J. Infect.Dis., 158, p. 710 (1988)
【非特許文献27】Morenoら、Infect. Immun., 47, p. 527 (1985)
【非特許文献28】Rosenquistら、J. Clin. Microbiol., 26, p. 1543 (1988)
【非特許文献29】Sierraら、NIPH Annals, 14, p. 195 (1991)
【非特許文献30】Zollingerら、NIPH Annals, 14, p. 211 (1991)
【非特許文献31】Munkleyら、Microb. Pathogen., 11, p. 447 (1991)
【非特許文献32】Woodsら、Infect. Immun., 55, p. 1927 (1987)
【非特許文献33】Morelloら、in Balows, 「臨床微生物学マニュアル(Manual of Clinical Microbiology)」, p. 258, 米国微生物学協会(American Society for Microbiology), Washington (1991)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、髄膜炎菌体の表面にある、高度に保存された、免疫学的に結合しうる抗原を提供することによって、上記の課題を解決する。また、上記の抗原をコードする組換えDNA分子、これらのDNA分子で形質転換された単細胞宿主、および、実質的に純粋な組換え抗原を作製するための処理方法も提供される。また、上記髄膜炎菌抗原に特異的な抗体も提供される。本発明に係る抗原および抗体は、髄膜炎菌病の検出、予防および治療のための独自の方法と医薬組成物を提供する。
【0012】
好ましい抗原は、髄膜炎菌の22 kDaの表面蛋白質であり、その断片、相同体および誘導体も含まれる。好ましい抗体は、髄膜炎菌の22 kDaの表面蛋白質に特異的なMe-1およびMe-7モノクローナル抗体である。これらの抗体は、髄膜炎菌に対して非常に溶菌性があり、実験感染に対し、マウスを受動的に防御する。
【0013】
本発明は、さらに、新しい髄膜炎菌表面抗原と、それに対し特異的な抗体を単離するための方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
髄膜炎菌の外膜の超構造を研究する過程で、本発明者らは、非常に変わった性質を有する、22 kDaという低分子量の新しい蛋白質を同定した。この外膜蛋白質は、糸状菌のトリティラキウム・アルバム・リンバー(Tritirachium album limber)に由来するセリンプロテイナーゼのプロテイナーゼKなどの蛋白質分解酵素による広範な処理に対して強い抵抗性を有する。これは非常に驚くべきことである。なぜなら、プロテイナーゼKの効力、至適pH範囲の広さ、およびペプチド結合特異性の低さのために、この酵素に対して抵抗性を有する蛋白質は、自然界では非常に稀だからである[Barrett, A.J.およびN.D. Rawlings, Biochem. Soc. Transactions (1991) 19: 707〜715]。僅かな数の報告だけが、プロテイナーゼKの酵素的分解に対して抵抗性を有する、原核生物起源の蛋白質について説明している。レプトスピラ属(Leptospira)の種[Nicholson, V.M.およびJ.F. Prescott, Veterinary Microbiol. (1993) 36: 123〜138]、マイコプラズマ属(Mycoplasma)の種[Butler, G.H.ら、Infect. Immun. (1991) 59: 1037〜1042]、スピロプラズマ・ミラム(Spiroplasma mirum)[Bastian, F.O.ら、J. Clin. Microbiol. (1987) 25: 2430〜2431]、ならびに、ウイルスおよびプリオン[Onodera,T.ら、Microbiol. Immunol. (1993) 37: 311〜316; Prusiner, S.B.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: (1993) 2793〜2797]において、プロテイナーゼK抵抗性蛋白質が発見されている。本明細書において、本発明者らは、髄膜炎菌感染の予防および治療、診断を改良するための方法として、この蛋白質を利用することを説明している。
【0015】
このように、本発明の局面の一つによって、本発明者らは、高度に保存された、免疫学的に結合しうる髄膜炎菌の表面蛋白質、および、その断片、相同蛋白質、または誘導蛋白質を提供する。本明細書において用いられるとき、「髄膜炎菌表面蛋白質」とは、天然に存在する髄膜炎菌遺伝子によってコードされている、髄膜炎菌の、いずれかの表面蛋白質を意味する。本発明による髄膜炎菌蛋白質は、天然に生じたものでもよいし、組換え蛋白質、または、その断片を産生するという目的をもって、分子生物学を応用して得られたものでもよい。
【0016】
本明細書で用いるとき、「高度に保存された」とは、髄膜炎菌表面蛋白質の遺伝子と、その蛋白質自体が、既知の髄膜炎菌菌株の50%以上に存在することを意味する。好ましくは、遺伝子と、その蛋白質は、既知の髄膜炎菌菌株の99%以上に存在する。さまざまな髄膜炎菌の異なった表面蛋白質が、「高度に保存されている」か否かを判定するために、当業者がそれらを試験することができる方法を、実施例2および4に示す。
【0017】
本明細書で用いるとき、「免疫学的に結合しうる」とは、髄膜炎菌の表面蛋白質が菌体の表面に存在し、抗体に結合できることを意味する。実施例2に、「免疫学的に結合しうる」か否かを判定するために、当業者が、さまざまに異なる髄膜炎菌表面蛋白質を検査しうる方法を示す。免疫学的な結合可能性は、凝集アッセイやELISA法、RIA法、イムノブロッティング法、ドット・エンザイム法、表面結合アッセイ、電子顕微鏡、または、これらのアッセイ法を組み合わせた方法を含む、その他の方法によって判定してもよい。
【0018】
本明細書で用いるとき、髄膜炎菌の表面蛋白質の「断片」には、少なくとも1個のペプチド・エピトープを有するポリペプチド、または、その相同体および誘導体が含まれる。この型のペプチドは、分子生物学の応用によって作製するか、または従来の液相もしくは固相ペプチド合成技術を用いて合成することができる。
【0019】
本明細書で用いる、髄膜炎菌の表面蛋白質の「相同体」には、この蛋白質の全体的な機能性と防御的特性が保持されるように、天然に存在する配列中のアミノ酸残基の1個以上を別のアミノ酸残基で置換した蛋白質、または、その断片が含まれる。このような相同体は、組換えDNA技術、例えば、天然に存在する髄膜炎菌表面蛋白質の突然変異誘発などによって、合成されて作出される。このような処理手順については、当業においてよく知られている。
【0020】
例えば、このような相同体の一つとして、図10に示した髄膜炎菌株b2に由来する22kDaの蛋白質の遺伝子から作製される組換え蛋白質が選ばれている。ナイセリア・ラクタミカ(Neisseria lactamica)から採取した関連遺伝子を単離して、さらに別の相同体を得ることもできる。
【0021】
本明細書で用いるとき、髄膜炎菌の表面蛋白質の「誘導体」とは、ヒトに免疫原性を付与するために、例えば、ジニトロフェノールによって、共有結合的に修飾した蛋白質またはその断片を意味する。また、本発明に係る誘導体には、本発明に係るアミノ酸の相同体の誘導体が含まれる。
【0022】
当業者は、本発明の実施例に従い、過度な実験をせずに、特定の断片、相同体または誘導体が、髄膜炎菌病の診断、予防または治療に有効であるか否かを判定できるようになることは明らかであると思われる。
【0023】
また、本発明には、髄膜炎菌の表面蛋白質、断片、相同体または誘導体を重合させたものも含まれる。これらの重合体には、例えば、アビジン/ビオチン、グルタルアルデヒド、ジメチルスベルミデート(dimethylsubermidate)などの架橋剤とクロスリンクした1個以上のポリペプチドが含まれる。また、このような重合体には、組換えDNA技術によって作製されたポリシストロニックなmRNAから産生される、髄膜炎菌の配列で、直列または逆向きに続く2個以上の連続的な配列を含むポリペプチドが含まれる。
【0024】
本発明は、実質的に純粋な髄膜炎菌の表面蛋白質を提供する。「実質的に純粋な」という語は、本発明に係る髄膜炎菌表面蛋白質が、髄膜炎菌に由来する他の蛋白質から分離されていることを意味する。例えば、実施例3および11で説明されている実験手順など、さまざまな常法によって、実質的に純粋な髄膜炎菌の表面蛋白質の調製物を得ることができる。
【0025】
更なる局面において、本発明は、特に、図1のアミノ酸配列(配列番号:2)もしくはその断片、またはその相同体もしくは誘導体のアミノ酸配列を有する髄膜炎菌の22kDaの表面蛋白質を提供する。
【0026】
更なる局面において、本発明は、特に、図8のアミノ酸配列(配列番号:4)および図9のアミノ酸配列(配列番号:6)もしくはその断片、またはその相同体もしくは誘導体のアミノ酸配列を有する髄膜炎菌の22 kDaの表面蛋白質を提供する。このような断片は、図15に列挙されているペプチド(配列番号:9から26)から選択してもよい。
【0027】
更なる局面において、本発明は、図10のアミノ酸配列(配列番号:2)もしくはその断片、またはその相同体もしくは誘導体の配列を有する淋菌の22 kDaの表面蛋白質を提供する。上記したところから明らかになるように、髄膜炎菌の22 kDaの蛋白質というときには、例えば、淋菌、ナイセリア・ラクタミカなどの、他のナイセリア属の種から単離した遺伝子から単離されたまたは作製された22 kDaの蛋白質も含まれる。
【0028】
本発明に係る、髄膜炎菌の22 kDaの表面蛋白質は、さらに、以下の性質の1つ以上によって特徴づけられる。
(1)SDS-PAGEゲルで測ると、約22 kDaの分子量を有する、
(2)還元剤で処理しても、SDS-PAGEゲル上での電気泳動度が変化しない、
(3)等電点(pI)が、約pI8からpI10の範囲内にある、
(4)α-キモトリプシン、トリプシン、プロテイナーゼKなどの蛋白質分解酵素による分解に対して強度の抵抗性を有する、
(5)過ヨウ素酸酸化によって、髄膜炎菌の22 kDaの表面蛋白質に対して作製された抗体の特異的結合が損なわれない、
(6)高度に保存された抗原である、
(7)無処理の髄膜炎菌体の表面で抗体と結合できる、
(8)殺菌性抗体の産生を誘導できる、
(9)実験感染に対し防御することができる抗体の産生を誘導することができる、
(10)動物宿主に注射すると、髄膜炎菌感染に対し防御できるような免疫反応の開始を誘導することができる。
【0029】
本発明は、また、髄膜炎菌の22 kDaの表面蛋白質をコードするDNA配列(配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5および配列番号:7)を初めて提供している。本発明の好ましいDNA配列は、
(a)図1のDNA配列(配列番号:1)、
(b)図8のDNA配列(配列番号:3)、
(c)図9のDNA配列(配列番号:5)、
(d)図10のDNA配列(配列番号:7)、
(e)上記のDNA配列の相同配列または誘導配列、
(f)上記のDNA配列のいずれかと縮重するDNA配列、および、
(g)上記のDNA配列のいずれかの断片
からなる群より選択されたものであるが、ここで、該配列は、髄膜炎菌22 kDa表面蛋白質の免疫活性を示す産物をコードしている。
このような断片は、好ましくは、図15に示されているようなペプチド(配列番号:9から配列番号:26まで)である。
【0030】
また、好ましくは、本発明により、髄膜炎菌の22 kDaの表面蛋白質をコードするDNA配列が初めて提供される。本発明に係る、より好ましいDNA配列は、
(a)図1のDNA配列(配列番号:1)、
(b)上記のDNA配列の相同配列または誘導配列、
(c)上記のDNA配列のいずれかと縮重するDNA配列、および、
(d)上記のDNA配列のいずれかの断片
からなる群より選択されるが、ここで、該配列は、髄膜炎菌22 kDa表面蛋白質の免疫活性を示す産物をコードしている。
【0031】
髄膜炎菌22 kDa表面蛋白質の相同体または誘導体をコードする遺伝子は、実施例4で説明されている条件の下で、22 kDaの表面蛋白質をコードする遺伝子とハイブリダイズする。
【0032】
本発明の目的にとっては、髄膜炎菌の22 kDa表面蛋白質の断片、相同体および誘導体が、動物宿主に注射されたときに、髄膜炎菌感染を防ぐことができる免疫反応の開始を誘導することができれば、これらは、髄膜炎菌の22 kDa表面蛋白質の「免疫活性」を有するといえる。当業者は、本明細書の実施例6に示されている手順に従って、特定のDNA配列が、髄膜炎菌の22 kDa表面蛋白質の免疫活性を示す産物をコードしているか否かを判定してもよい。
【0033】
本発明に係る髄膜炎菌の22 kDa表面蛋白質を、以下の段階を含む方法によって単離してもよい。
a)髄膜炎菌バクテリアの培養物を分離し、
b)バクテリア培養物から外膜部分を分離し、および、
c)この外膜部分から該抗原を分離すること。
特に、上記の段階(c)は、髄膜炎菌の外膜蛋白質抽出物をプロテイナーゼKで処理した後、イオン交換、ゲルクロマトグラフィーおよび電気泳動など、従来からの単離技術を用いて、蛋白質分画を行うという付加的な段階を含む。
【0034】
これに代わるもので、好ましいのは、本明細書においては実施例3により詳細に説明されているように、分子生物学的技術を用いて、本発明に係る髄膜炎菌の表面蛋白質を産生させてもよい。分子生物学的技術の使用は、実質的に純粋な、髄膜炎菌の22 kDaの表面蛋白質の組換え蛋白質を調製するのに、特に適している。
【0035】
このように、本発明の更なる局面によって、本発明者らは、髄膜炎菌の22 kDa表面蛋白質と、その断片、相同体および誘導体を含む組換え蛋白質を産生するための過程で、(1)該蛋白質、断片、相同体または誘導体をコードするDNA配列と、このDNA配列に機能的に結合した、1個以上の発現調節配列とを含む組換えDNA分子で形質転換された単細胞宿主生物を培養することと、(2)実質的に純粋な蛋白質、断片、相同体または誘導体を回収する段階を含む過程を提供する。
【0036】
当業において周知のように、宿主の中での、形質転換遺伝子の高い発現レベルを得るためには、この遺伝子を、選択した発現宿主の中で機能する、転写および翻訳の発現調節配列に機能的に結合させなければならない。好ましくは、配列調節配列と、目的の遺伝子とが、さらにバクテリア選抜マーカーと複製開始点とを含む配列ベクターの中に含まれている。発現宿主が真核細胞であるときは、さらに、発現ベクターは、発現宿主で有用な発現マーカーを含んでいなければならない。
【0037】
広い範囲の多様な発現宿主/ベクターの組み合わせが、本発明に係るDNAを発現させる上で用いられうる。真核生物宿主にとって有用な発現ベクターには、例えば、SV40、ウシパピローマウイルス、アデノウイルスおよびサイトメガロウイルス由来の発現調節配列を含むベクターが含まれる。バクテリア宿主にとって有用な発現ベクターには、col E1, pCR1, pBR322, pMB9、および、それらの誘導体を含む、大腸菌由来のプラスミド、ならびに、RP4など、より宿主範囲が広いプラスミド、また、NM989などのラムダファージの多くの誘導体などのファージDNA、または、M13および繊維状の単鎖DNAファージなど、既知のバクテリアのプラスミドが含まれる。酵母細胞にとって有用な発現ベクターには、2ミュー(mu)プラスミドおよびその誘導体が含まれる。昆虫細胞にとって有用なベクターには、pVL941が含まれる。
【0038】
さらに、本発明に係るDNA発現を発現させるために、これらのベクターにおいて、広く多様な発現調節配列のいずれかが用いられうる。このような、有用な配列調節配列には、上記の発現ベクターの構造遺伝子と結合した発現調節配列が含まれる。有用な発現調節配列の実例には、例えば、SV40とアデノウイルスの初期と後期のプロモーター、lacシステム、trpシステム、TACまたはTRCシステム、ラムダファージの主要オペレーターとプロモーター領域、fdコート蛋白質の調節領域、3-ホスホグリセリン酸キナーゼ、その他の糖分解酵素のプロモーター、例えば、Pho5など、酸性ホスファターゼのプロモーター、酵母のアルファ接合システムのプロモーター、原核細胞と真核細胞またはそのウイルスの遺伝子の発現を調節することが知られているその他の配列、および、これらの配列のさまざまな組み合わせが含まれる。大腸菌の中で、髄膜炎菌の22 kDa表面蛋白質を発現させる上では、髄膜炎菌の22 kDa表面蛋白質の発現調節配列が特に有用である(実施例3)。
【0039】
上記のベクターで形質転換した宿主細胞が、本発明のさらなる局面を形成する。さまざまな単細胞宿主が、本発明に係るDNA配列を発現させる上で有用である。これらの宿主には、大腸菌、シュードモナス(Pseudomonas)、バチルス(Bacillus)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、菌類、酵母、スポドプテラフルギペルダ(Spodoptera frugiperda(SF9))などの昆虫細胞、CHOおよびマウス細胞などの動物細胞、COS1、COS7、BSC1、BSC40およびBMT10などのアフリカミドリザルの細胞、また、組織培養したヒト細胞および植物細胞が含まれる。好ましい宿主生物には、大腸菌もしくは枯草菌(Bacillus subtilis)などのバクテリア、および組織培養した哺乳動物細胞が含まれる。
【0040】
すべてのベクターと発現調節配列のすべてが、本発明のDNA配列を発現させるために、同じように充分に機能するわけではないことは、当然ながら、理解されると思われる。また、すべての宿主が、同じ発現システムで、同じようにうまく機能するわけではない。しかし、当業者は、過度な実験を行うことなく、また、本発明の範囲から逸脱することなく、これらのベクター、発現調節配列、および宿主を選択することができると考えられる。例えば、ベクターの選択においては、ベクターを複製させなければならないため、宿主を考慮する必要がある。ベクターのコピー数、このコピー数を調節する能力、または、抗生物質耐性マーカーなど、ベクターによってコードされているその他の蛋白質の発現についても考慮すべきである。
【0041】
発現調節配列の選択においても、さまざまな要素を考慮すべきである。これらの要素には、例えば、配列の相対的な強度、調節可能性、また、本発明に係るDNA配列との親和性、特に、二次構造を形成する可能性が含まれる。単細胞宿主は、選択したベクターとの親和性、本発明に係るDNA配列がコードする産物の毒性、分泌特性、蛋白質を正確に組み立てる能力、発酵または培養要求性、および、本発明に係るDNA配列によってコードされる産物の精製の容易さなどを考慮して選択すべきである。
これらのパラメータの中で、当業者は、本発明に係るDNA配列を、発酵によって、または、動物細胞の大規模培養によって発現させる、さまざまなベクター/発現調節配列/宿主の組み合わせを選択することができる。
【0042】
本発明に係るDNA配列によってコードされるポリペプチドを、さまざまな常法を用いて、発酵物または細胞培養液から単離して精製することができる。当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、最も適切な単離精製技術を選択することができる。
【0043】
本発明に係る、髄膜炎菌の表面蛋白質は、髄膜炎菌感染によって起こる病気を予防、治療および診断するための予防薬、治療薬、または、診断薬組成物において有用である。
【0044】
本発明に係る、髄膜炎菌の表面蛋白質は、淋菌またはナイセリア・ラクタミカの感染によって起こる病気を予防、治療および診断するための予防薬、治療薬、または、診断薬組成物において有用である。
【0045】
髄膜炎菌病に対する抗体を作製したり、防御反応を発生させるためには、本発明による髄膜炎菌の表面蛋白質が特に適している。
【0046】
淋病またはナイセリア・ラクタミカ病に対する抗体を作製したり、防御反応を発生させるためには、本発明による髄膜炎菌の表面蛋白質が特に適している。
【0047】
特に、本発明者らは、免疫原またはワクチンとして使用するために、図1のアミノ酸配列(配列番号:2)、その断片、相同体または誘導体のアミノ酸配列を有する髄膜炎菌の22 kDa表面蛋白質を提供する。
【0048】
特に、本発明者らは、免疫原またはワクチンとして使用するために、図1のアミノ酸配列(配列番号:2)、図8のアミノ酸配列(配列番号:4)、図9のアミノ酸配列(配列番号:6)、または、図10のアミノ酸配列(配列番号:8)、または、その断片、相同体もしくは誘導体のアミノ酸配列を有する髄膜炎菌の22 kDa表面蛋白質を提供する。
【0049】
標準的な免疫学的技術において、免疫原またはワクチンとして使用するために、髄膜炎菌の表面蛋白質が用いられる。特に、モノクローナル抗体および多価抗髄膜炎菌抗体を作製したり、髄膜炎菌病に対する防御的な免疫反応の発生を誘導するために、適当な宿主に、薬学的有効量の髄膜炎菌22 kDa表面蛋白質を注射することができる。宿主に注射する前に、髄膜炎菌の表面蛋白質を適当な賦形剤の中に処方することができるため、本発明者らは、1個以上の髄膜炎菌の表面抗原または、その断片を含む薬学的組成物を提供する。好ましくは、この抗原は、1種以上の薬学的に許容される補形薬を一緒に入れた、髄膜炎菌の22 kDa表面蛋白質か、その断片または、その相同体もしくは誘導体である。本明細書で用いられるとき、「薬学的有効量」とは、髄膜炎菌感染を治療または予防するのに充分な力価を誘導する、髄膜炎菌の、1種類以上の表面抗原または、その断片の用量を意味する。
【0050】
本発明に係る髄膜炎菌の表面蛋白質は、また、髄膜炎菌感染に関する診断試験の基礎を構成する。いくつかの診断方法が可能である。例えば、本発明は、髄膜炎菌抗原を含むかまたは含むと思われる生物試料において、髄膜炎菌抗原を検出するための方法で、
a)患者から生物試料を分離すること、
b)抗髄膜炎菌22 kDa表面蛋白質抗体、または、その断片を、生物試料とともにインキュベートして、混合液を作ること、および、
c)髄膜炎菌抗原の存在を示唆する、特異的な結合抗体または結合断片を、混合液の中で検出することを含む方法を提供する。
上記の診断法において好ましい抗体は、Me-1およびMe-7である。
【0051】
または、本発明は、髄膜炎菌抗原に特異的な抗体を含むかまたは含むと思われる生物試料において、該抗体を検出するための方法において、
a)患者から生物試料を分離すること、
b)本発明に係る抗髄膜炎菌表面蛋白質抗体、または、その断片を、生物試料とともにインキュベートして、混合液を作ること、および、
c)髄膜炎菌抗原に特異的な抗体の存在を示唆する、特異的な結合抗原または結合断片を、混合液の中で検出することを含む方法を提供する。当業者は、蛋白質に特異的な抗体が生物の中に存在しているか否かを、主に判定するために、この診断試験が、固相酵素免疫測定法(ELISA)、放射性免疫測定法、またはラテックス凝集測定法などの免疫学的試験を含む、いくつかの形を取りうることが分かると思われる。
【0052】
また、本発明に係るDNA配列を、病原性のナイセリア菌を有すると思われる生物試料の中に、この菌が存在することを検出するのに使用するDNAプローブを設計するために用いてもよい。本発明に係る検出方法は、
a)患者から生物試料を分離する段階、
b)本発明に係るDNA配列を有するDNAプローブを、生物試料とともにインキュベートして混合液を作る段階、および、
c)ナイセリア菌が存在することを示唆する、特異的な結合DNAプローブを、混合液の中で検出する段階を含む。
好ましいDNAプローブは、図1(配列番号:1)、図8(配列番号:3)、図9(配列番号:5)、もしくは図10(配列番号:7)の塩基対配列、または、図11の保存配列(配列番号:29)を有する。
より好ましいDNAプローブには、図1(配列番号:1)の525塩基対の配列が含まれる。
【0053】
本発明に係るDNAプローブは、髄膜炎菌感染を診断する方法として、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応を用いて、試料中に髄膜炎菌の核酸が広がっていることを検出するためにも用いることができる。プローブは、従来の技術を用いて合成され、固相に固定したり、検出可能な標識で標識付けしてもよい。
【0054】
このような応用において好ましいDNAプローブは、髄膜炎菌22 kDa表面蛋白質遺伝子の、図1(配列番号:1)、図8(配列番号:3)、図9(配列番号:5)、もしくは図10(配列番号:7)の塩基対配列、または、図11の保存配列(配列番号:29)の少なくとも約6個以上連続した塩基に相補的な配列を有するオリゴマーである。
【0055】
このような応用において、より好ましいDNAプローブは、図1(配列番号:1)の、髄膜炎菌22 kDa表面蛋白質遺伝子の、少なくとも約6個以上連続した塩基に相補的な配列を有するオリゴマーである。
【0056】
患者の中で、髄膜炎菌を検出するための、別の診断方法は、
a)本発明に係る抗体またはその断片を、検出可能な標識で標識付けする段階、
b)標識した抗体または標識した断片を患者に投与する段階、および、
c)ナイセリア菌が存在することを示唆する、特異的に結合する標識抗体または標識断片を、患者の体内で検出する段階を含む。
【0057】
抗髄膜炎菌表面蛋白質抗体のいずれを精製するためにも、親和性媒体に、固定化した髄膜炎菌の表面蛋白質を用いたアフィニティー・クロマトグラフィーを行なってもよい。
【0058】
このように、本発明の別の局面により、本発明者らは、図1(配列番号:2)、図8(配列番号:4)、図9(配列番号:6)、もしくは図10(配列番号:8)の配列を含むアミノ酸配列もしくはその一部、またはその相同配列を有する不溶性の支持体に共有結合した髄膜炎菌の22 kDaの表面蛋白質を提供する。
【0059】
このように、本発明の別の局面により、本発明者らは、図1(配列番号:2)の配列を含むアミノ酸配列、またはその一部もしくはその相同配列を有する不溶性の支持体に共有結合した髄膜炎菌の22 kDaの表面蛋白質を提供する。
【0060】
本発明のさらに別の特徴は、本発明に係る髄膜炎菌の表面蛋白質を、髄膜炎菌感染の診断と、特に治療のための特異的な抗体を産生するための免疫原として用いることである。適当なスクリーニング法を用いて、例えば、試験モデルにおける髄膜炎菌感染に対する、特定の抗体の受動的な防御能力を測定することによって、適切な抗体が決定されうる。動物モデルの実例の一つが、本明細書の実施例において説明されている。抗体は、全抗体であってもよいし、抗原に結合する抗体の断片であってもよく、一般的には、免疫グロブリンのいずれかのクラスに属する。抗体または断片は、動物に由来するもので、特異的には、哺乳動物由来で、より特異的には、マウス、ラット、または、ヒトに由来するものである。それは、天然の抗体またはその断片であり、必要に応じて、組換え抗体または抗体断片であってもよい。組換え抗体または抗体断片という語は、分子生物学的な技術を用いて産生された抗体または抗体断片を意味する。抗体または抗体断片は、ポリクローナル抗体であってもよいが、選択すべきは、モノクローナル抗体に由来するものである。それは、髄膜炎菌の表面蛋白質に関連した、いくつかのエピトープに特異的であるが、好ましくは、一つのエピトープに特異的なものである。好ましくは、抗体およびその断片は、髄膜炎菌の22 kDa表面蛋白質に関する、1個以上のエピトープに特異的なものである。本明細書において説明されているモノクローナル抗体Me-1およびMe-7も好ましい。
【実施例】
【0061】
本発明をよりよく理解するために、以下の実施例を示す。これらの実施例は、例示のためだけのものであり、いかなる態様においても、本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
実施例1は、髄膜炎菌の外膜調製物を、蛋白質分解酵素で処理し、その後、髄膜炎菌の22 kDaの表面蛋白質を同定することを説明している。
実施例2は、髄膜炎菌の22 kDaの表面蛋白質に特異的なモノクローナル抗体調製物の説明をしている。
実施例3は、髄膜炎菌の組換え22 kDa表面蛋白質の調製物の説明をしている。
実施例4は、髄膜炎菌の22 kDa表面蛋白質を発現している生物を同定するためのDNAプローブの使用について説明している。
実施例5は、髄膜炎菌感染からマウスを守るための抗髄膜炎菌22 kDa表面蛋白質のモノクローナル抗体の使用について説明している。
実施例6は、髄膜炎菌感染に対する防御反応を誘導するために、精製された組換え22kDa表面蛋白質を使用することを説明している。
実施例7は、22 kDaの蛋白質の配列を同定することと、髄膜炎菌の別の菌株(MCH88とz4063)および淋菌の一つの菌株で、この蛋白質をコードする遺伝子を同定することとを説明している。
実施例8は、22 kDaの、髄膜炎菌の表面蛋白質に対する、ウサギとサルの免疫反応について説明している。
実施例9は、22 kDaの髄膜炎菌表面蛋白質の、異なる免疫エピトープをマップするために用いた処理法について説明している。
実施例10は、22 kDaの表面蛋白質を大規模に生産するため、熱によって、発現ベクターを誘導することを説明している。
実施例11は、組換え技術によって産生されたとき、22 kDaの表面蛋白質の精製方法について説明している。
実施例12は、22 kDaの表面蛋白質を、ヒトのワクチンとして利用することを説明している。
【0062】
実施例1 蛋白質分解酵素による髄膜炎菌の外膜調製物処理、及びその後の酵素抵抗性の髄膜炎菌22 kDa表面蛋白質の同定
全細胞、塩化リチウム抽出物、または、サルコシル抽出物由来の、いくつかの抗原調製物が、髄膜炎菌の外膜の超構造を調べるために用いられた。グラム陰性菌の外膜は、外部環境と細胞内部との間にある中間面であり、宿主の免疫防御に自由に曝される抗原の殆どを含む。本研究の主要目的は、髄膜炎菌に対する防御反応を誘導することができる新しい抗原を同定することであった。このような抗原を同定するために、本発明者らによって用いられた研究方法は、上記の抗原調製物を、蛋白質分解酵素で部分的に分解することであった。そして、酵素処理によって生じた抗原決定基を、その後、これらの処理済み抗原調製物の免疫学的な防御特性を解析することによって同定することができた。驚いたことに、本発明者らは、髄膜炎菌の外膜のリチウム抽出物を電気泳動で分離した後、クマシーブリリアントブルーR-250で染色された低分子量のバンドを1本観察した。クマシーブルーは、蛋白質およびペプチドを染色するために用いられ、これも外膜の主要構成物である多糖類または脂質に対しては全く親和性がないか、僅かな親和性しかない。この低分子量抗原がクマシーブルーで染色されたという事実は、少なくともその一部が、蛋白質分解酵素では分解されないポリペプチド、または、別の表面構造によって、酵素の作用から守られているポリペプチドから出来ていることを示唆している。さらに、後述されるように、非常に強力な酵素であるプロテイナーゼKは、大量の酵素で処理しても、この低分子量抗原を分解しなかった。
【0063】
髄膜炎菌の異なった菌株から外膜調製物を得るために、塩化リチウム抽出物が用いられ、本発明者らが以前説明していた[Brodeurら、Infect. Immun., 50, p. 510 (1985)]ようにして塩化リチウム抽出を行なった。膜分画に適合させたローリー法[Lowryら、J. Biol. Chem. 193, p.265 (1951)]によって、これらの調製物の蛋白質含有量を判定した。髄膜炎菌菌株608B(B:2a:P1.2)に由来する外膜調製物を、ウシ膵臓由来のα-キモトリプシン(E.C. 3.4.21.1)(Sigma社)か、ウシ膵臓由来の1型トリプシン(E.C. 3.4.21.4)(Sigma社)で、連続的に振とうしながら、37℃で24時間処理した。酵素の濃度は、処理される蛋白質1 mg当たり2 mgとなるように調整した。また、同じ外膜調製物を、トリティラキウム・アルバム・リンバー(Tritirachium album limber)に由来するプロテイナーゼK(Sigma社またはベーリンガー・マンハイム社、カナダ国ラヴァル)(E.C. 3.4.21.14)で、酵素の濃度を変えて処理した。プロテイナーゼKによる蛋白質の分解を促進させるため、異なった実験条件を用いた。試料は、1時間、2時間、24時間または48時間、37℃または56℃で、振とうするか、しないかにしてインキュベートした。混合試料のpHは、pH 7.2またはpH 9.0に調整した。一定の試料には、1%(容量/容量)のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)も加えた。処理直後に、ミニプロテーンII(MiniProteanII)(バイオラド社、カナダ国オンタリオ州ミシソーガ)を、製造業者の指示に従って用いて、14%(重量/容量)ゲルでSDS-PAGE電気泳動して、試料を解析した。蛋白質は、2-メルカプトエタノールとSDSとともに、5分間、100℃に加熱し、14%SDSゲルで分離して、クマシー・ブリリアント・ブルーR-250で染色した。
【0064】
図2は、髄膜炎菌株608B(B:2a:P1.2)に由来する外膜調製物中に存在する蛋白質を、α-キモトリプシンおよびトリプシンで24時間、37℃で処理したものの、14%SDS-PAGEゲルにおける電気泳動プロフィールを示している。無処理の対照(図2、レーン2)と比較すると、処理した試料(図2、レーン3と4)では、高分子量蛋白質と主要な外膜蛋白質の広範な蛋白質分解を見ることができる。これに対して、外見上22 kDaの分子量を有する蛋白質のバンドは、2つの酵素のいずれで24時間処理しても、変化しなかった。
【0065】
プロテイナーゼKによる、より強力な分解処理を用いて、この珍しい蛋白質について、さらに調査した(図3)。プロテイナーゼKは、ペプチド結合特異性が低く、至適pH範囲が広いため、最も強力な蛋白質分解酵素一つである。驚いたことに、この22 kDaの蛋白質は、2国際単位(IU)のプロテイナーゼKによる、24時間56℃の消化に対しても抵抗性であった(図3、レーン2)。この処理は、本発明者らの実験室で、蛋白質を殆ど含まないリポ多糖またはDNAを作製するときに、しばしば用いられる。実際、このように強力な蛋白質分解処理を外膜調製物に行うと、小さなポリペプチドだけが見られようになる。さらに、処理時間を48時間まで延ばし、酵素濃度を上げて(24IUまで)も、22kDaの蛋白質の量は変化しなかった。反応混合液のpHをpH 9.0まで上昇させても、強力な蛋白質変性剤である1%SDSを加えても、SDS-PAGEゲル上での22 kDaの蛋白質の量と移動度は変化しなかった(図3、レーン3、レーン4、6、8)。これら2つの変性条件を組み合わせて用いると、通常は、外膜調製物中に存在する蛋白質は完全に分解されて、アミノ酸残基だけになるはずである。分解物中には、低分子量のポリペプチドがしばしば観察されたが、これらは、酵素処理の過程で充分に分解されなかった感受性蛋白質の断片であると考えられた。これらの断片は、外膜に存在する糖と脂質によって、さらに分解されることから保護された可能性が最も高い。処理した試料に現れる、外見上28 kDaと34 kDaの分子量を有する蛋白質のバンドは、それぞれ、残存酵素と調べた酵素調製物のすべてに混入していた蛋白質である。
【0066】
興味深いことに、プロテイナーゼに対する22 kDaの蛋白質の抵抗性に関するこの研究によって、外見上18 kDaの分子量のものも、酵素分解に対して抵抗性に見える(図3a)。アフィニティー精製した組換え22 kDa蛋白質を、SDS-PAGEゲルでの電気泳動プロフィール解析したとき(図3b)に、この18 kDaの蛋白質のバンドに関する糸口が得られた。18 kDaのバンドは、アフィニティー精製した組換え22 kDa蛋白質を、ゲルにのせる前に、界面活性剤SDSを含むサンプルバッファーに入れて、時間を延長して加熱したときにだけ現れた。エドマン(Edman)分解を用いたアミノ酸のN末端解析(実施例3)によって、18 kDaのバンドで同定されたアミノ酸残基(E-G-A-S-G-F-Y-V-Q)が、アミノ酸1-9(配列番号:1)に対応することが明らかに示された。この結果は、SDS-PAGEゲルに現れる18 kDaと22 kDaのバンドは、実は、同じ蛋白質に由来することを示している。この最後の結果は、また、18 kDaの成熟蛋白質からリーダー配列が切り出されることを示している。この外見上の分子量の変化を説明する分子修飾を確認し、この蛋白質の抗原性と防御特性に与える影響を評価するための実験をさらに行なうつもりである。
【0067】
結論として、蛋白質分解消化に対し抵抗性を示すという非常に珍しい性質を有する、髄膜炎菌の外膜蛋白質を発見したことによって、この蛋白質の分子的性質と免疫学的性質をさらに調べる必要が出てきた。実施例3で、大腸菌によって産生された精製組換え22 kDa表面蛋白質も、プロテイナーゼKによる分解に対して高度に抵抗性である。本発明者らは、現在、この蛋白質分解酵素に対する並外れた抵抗性を髄膜炎菌の22 kDa表面蛋白質に付与しているメカニズムを解明しようとしているところである。
【0068】
実施例2 22 kDaの髄膜炎菌表面蛋白質に特異的なモノクローナル抗体の作製
本明細書で説明されているモノクローナル抗体を、3回の独立した融合実験から得た。それぞれ血清グループA、BおよびCに属する髄膜炎菌菌株604A、606Bおよび2241Cから採取した外膜調製物で、メスのBalb/cマウス(チャールスリバー研究所、カナダ国ケベック州サンコンスタン)を免疫した。これらの外膜調製物を得るために、本発明者らが以前説明したところ[Brodeurら、Infect. Immun. 50, p.510 (1985)]に従って、塩化リチウム抽出を行なった。膜画分に適合させたローリー法[Lowryら、J. Biol. Chem. 193, p. 265 (1951)]によって、これらの調製物の蛋白質含量を判定した。マウスのグループに、3週間の間隔で、上記の外膜調製物を異なった組み合わせで10 mgずつ、腹腔内または皮下から2回注射した。マウスグループによって、免疫するのに用いられたアジュバントは、フロイントの完全アジュバントか不完全アジュバント(Gibco Laboratories, Grand Island, N.Y.)、または、QuilA(Dedarlane Laboratories, Hornby, Ont., Canada)であった。融合処理を行う3日前に、免疫されたマウスに、上記の外膜調製物の一つを最後に10 mg静脈注射した。望ましいモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ細胞系を作製するために用いられた融合プロトコールは、以前、本発明者らが説明している[Hamelら、J. Med. Microbiol., 25, p.2434 (1987)]。以前、報告されたELISA法[Martinら、J. Clin. Microbiol., 28, p. 1720 (1990)]によって、モノクローナル抗体Me-1、Me-2、Me-3、Me-5、Me-6およびMe-7の分類、下位分類および軽鎖型を判定し、結果を表1に示す。
【0069】
本発明者らが以前説明した方法[Martinら、Eur. J. Immunol. 18, p.601 (1988)]に次の修正を加えたウェスタン・免疫ブロッティングを用いて、モノクローナル抗体の特異性を明らかにした。髄膜炎菌の異なる菌株から得た外膜調製物を、14%SDS-PAGEゲルで解析した。蛋白質は、セミドライ装置(Biorad社)を用いて、ゲルからニトロセルロース膜に移した。25 mMのトリス塩酸、192 mMのグリシンと20%(容量/容量)メタノール、pH 8.3を成分とする電気ブロットバッファーに入れて、ゲル1枚(6X10 cm)当たり60 mAの電流を10分間流した。ウェスタン免疫ブロッティング実験によって、モノクローナル抗体Me-1、Me-2、Me-3、Me-5、Me-6およびMe-7が、髄膜炎菌の22 kDaの蛋白質の特異的なエピトープを認識したことが明らかになった(図4A)。SDS-PAGEゲルと、これに対応するウェスタン免疫ブロッティングの解析によっても、この蛋白質の外見上の分子量は、菌株の違いによって変化しないことが示された。しかし、外膜調製物中に存在する蛋白質の量は菌株毎に異なり、菌株の血清グループとの関連はなかった。しかも、蛋白質1 mgあたり2 IUのプロテイナーゼKで外膜調製物を処理した後でも、これらのモノクローナル抗体は、髄膜炎菌の22 kDa表面蛋白質上のエピトープを認識した(実施例1で説明された処理、前掲)(図4B)。興味深いことに、酵素消化した後もエピトープは無傷のままであったことから、これらが膜調製物中で、抗体と結合可能であっても、酵素処理によって分解さないことが確認された。この後者の結果は、観察されたプロテイナーゼK抵抗性が、酵素の蛋白質への結合を妨害するような表面構造または、膜の中に蛋白質を深く包埋して保護することには関係している可能性がないことを示している。図4には示さなかったが、Me-1に関する免疫ブロットの結果も、他の5つのモノクローナル抗体についての結果と一致していた。
【0070】
髄膜炎菌の22 kDaの表面蛋白質の部分的な特徴を調べ、その他の既知の髄膜炎菌の表面蛋白質と区別するために、一連の実験を行なった。外膜調製物を電気泳動用サンプル・バッファー中で、2-メルカプトエタノールを入れたり、入れなかったりして、100℃で5分間加熱するか、37℃もしくは56℃で30分間加熱しても、髄膜炎菌の22 kDaの表面蛋白質のSDS-PAGEゲルでの外見上の分子量に変化がないことが分かった。これは、外膜に存在するとき、22 kDa表面蛋白質の移動度は、熱または2-メルカプトエタノールでは変更されないことを示していた。
【0071】
過ヨウ素酸ナトリウム酸化を用いて、モノクローナル抗体が、髄膜炎菌から抽出した外膜調製物に存在する糖エピトープと反応するか否かを判定した。この実験を行うために用いられた方法は、以前、本発明者らが説明している[Martinら、Infect. Immun., 60, pp. 2718〜2725 (1992)]。外膜調製物を100 mMの過ヨウ素酸ナトリウムで、室温で1時間処理しても、髄膜炎菌の22 kDaの表面蛋白質に対するモノクローナル抗体の反応性に変化はなかった。この処理によって、通常、糖特異的な抗体の結合は失われる。
【0072】
モノクローナル抗体2-1-CA2(ワシントンD.C.にあるウォルターリード陸軍研究所のBhattacharjee博士によって提供された)は、すべての病原性髄膜炎菌種に共通の表面抗原であるlip蛋白質(H.8とも呼ばれる)に特異的である。このモノクローナル抗体の、外膜調製物との反応性を、モノクローナル抗体Me-5の反応性と比較した。モノクローナル抗体Me-5は、22 kDaの蛋白質バンドと反応したのに対し、lip特異的なモノクローナル抗体は、外見上30 kDaの分子量を有する蛋白質バンドと反応した。この結果は、髄膜炎菌の22 kDaの表面蛋白質と、もう一つの高度に保存された蛋白質であるlip蛋白質との間には、何の関係もないことを示している。
【0073】
本来の髄膜炎菌の細菌細胞の表面における22 kDa蛋白質の露出を明らかにするために、本発明者らが以前説明したところ[Proulxら、Infect. Immun.. 59, p.963 (1991)]にしたがって、放射性免疫測定法を行なった。この測定を行うために、6時間および18時間培養した菌液を用いた。6種類のモノクローナル抗体が、9種の髄膜炎菌株(菌株の血清グループを、図5の括弧の中に示す)、2種の淋菌株(「NG」)、2種のモラクセラ・カタリス(Moraxella catarrhalis)菌株(「MC」)、および、2種のナイセリア・ラクタミカ菌株(「NL」)と反応した。放射性免疫測定法によって、モノクローナル抗体によって認識されるエピトープは、異なった血清型および血清グループの髄膜炎菌で無処理の単離菌株の表面に露出していて、蛋白質分解酵素とも接触可能であることが確認された(図5)。これらのモノクローナル抗体は、調査したすべての髄膜炎菌株の表面にあるエピトープに強く結合した。記録された結合値は(3,000CPMから35,000 CPM)は、菌株によって異なり、また、バクテリアの生理学的状態によっても異なっていた。ヘモフィルス・インフルエンザ菌のポーリン特異的モノクローナル抗体を、陰性対照として用いた。500 CPMより低いカウントが得られたので、その後、各結合値から引き算した。図5に示されたMe-5とMe-7についての結果は、モノクローナル抗体Me-1、Me-2、Me-3およびMe-6で得られた結果を代表するものである。調査した他の細菌の菌株に関して、Me-7について示された結合活性は、同じ細菌株を認識したモノクローナル抗体に関して得られた結合活性を代表するものである。
【0074】
モノクローナル抗体によって認識される、エピトープの抗原保存性も評価された。多数のバクテリア菌株に対して、モノクローナル抗体を迅速にスクリーニングするために、ドット酵素免疫測定法を用いた。本発明者らが以前説明したところ[Lussierら、J. Immunoassay, 10, p.373 (1989)]にしたがって、この測定法を行なった。この研究には、71の髄膜炎菌が用いられた。サンプルには、血清グループAの菌株が19菌株、血清グループBの菌株が23菌株、血清グループCの菌株が13菌株、血清グループ29Eの菌株が1菌株、血清グループW-135の菌株が6菌株、血清グループXの菌株が1菌株、血清グループYの菌株が2菌株、血清グループZの菌株が2菌株、そして、血清グループに分けられない菌株(「NS」)が4菌株含まれていた。これらの菌株は、トリニダードのポートオブスペインにあるカリブ疫学センター(Caribbean Epidemiology);カナダ、オタワにある東オンタリオ子供病院(Children's Hospital of Eastern Ontario);カナダ、レジナにあるサスカチェワン厚生部(Department of Saskatchewan Health);カナダ、モントリオールにあるセントパブリックラボラトリー(Laboratoire de Sante Publique du Quebec);ドイツ連邦、ベルリンにあるマックスプランク分子遺伝学研究所(Max-Planck Institute fur Molekulare Genetik);カナダ、モントリオールにあるモントリオール子供病院(Montreal ChildrenHospital);カナダ、ハリファックスにあるビクトリア総合病院(Victoria GeneralHospital);および、本発明者ら自身が収集した菌株から入手した。次の細菌種も調べた。淋菌16菌株、ナイセリア・シネレア(Neisseria cinerea)4菌株、ナイセリア・ラクタミカ5菌株、ナイセリア・フラバ(Neisseria flava)1菌株、ナイセリア・フラバセンス(Neisseria flavescens)1菌株、ナイセリア・ムコサ(Neisseria micosa)3菌株、ナイセリア・パーフラバ/シッカ(Neisseria perflava/sicca)4菌株、ナイセリア・パーフラバ(Neisseria perflava)4菌株、ナイセリア・シッカ(Neisseria sicca)1菌株、ナイセリア・サブフラバ(Neisseria subflava)1菌株、および、モラクセラ・カタリス5菌株、アルカリゲネス・フェカリス(Alcaligenes feacalis)(ATCC 8750)1菌株、シトロバクター・フロインディ(Citrobacter freundii)(ATCC 2080)1菌株、エドワードシエラ・タルダ(Edwardsiella tarda)(ATCC 15947)1菌株、エンテロバクター・クロアセア(Enterobacter cloacea)(ATCC 23355)1菌株、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)(ATCC 13048)1菌株、大腸菌1菌株、フラボバクテリウム・オドラタム(Flavobacterium odoratum)1菌株、b型ヘモフィルス・インフルエンザ(イーガン(Eagan)株)1菌株、肺炎杆菌(Klebsiella pneumoniae )(ATCC 13883)1菌株、プロテウス・レットゲリ(Proteus rettgeri)(ATCC 25932)1菌株、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)(ATCC 13315)1菌株、シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)(ATCC 9027)1菌株、ネズミチフス菌(Salmonellatyphimurium)(ATCC 14028)1菌株、霊菌(Serratia marcescens)(ATCC 8100)1菌株、フレクスナー赤痢菌(Shigella flexneri)(ATCC 12022)1菌株、ソネ赤痢菌(Shigella sonnei)(ATCC 9290)1菌株。これらは、米国培養細胞コレクション(American Type Culture Collection)から、またはカナダ、オタワにある疾病防御研究センター(Laboratory Center for Disease Control)が保存しているコレクションから入手した。モノクローナル抗体と、最も関連のあるナイセリア菌株との反応を表1に示す。モノクローナル抗体の一つ、Me-7は、調査した髄膜炎菌の71菌株の100%で、それに特異的なエピトープを認識した。このモノクローナル抗体は、Me-2、Me-3、Me-5、およびMe-6と同様に、他のナイセリア属の種に属する一定の菌株とも反応したが、これは、これらの特異的なエピトープが、近縁のナイセリア属によっても発現されていることを示している。ナイセリア・ラクタミカの1菌株と僅かに反応したことを除いけば、モノクローナル抗体Me-1は、髄膜炎菌の菌株としか反応しなかった。さらに、別のサンプルである髄膜炎菌の単離株177株を用いて、Me-1を試験したところ、試験に用いた全髄膜炎菌株の99%以上を正確に認識することができた。表1に示したナイセリア菌株の他は、別のバクテリア種で上記したいずれの菌株とも反応しなかった。
【0075】
結論として、髄膜炎菌の22 kDaの表面蛋白質と、特異的に反応した6種類の抗体が本発明者らによって作製された。これらのモノクローナル抗体を用いて、本発明者らは、それらの特異的なエピトープが、1)髄膜炎菌の外膜に存在する、プロテイナーゼKに抵抗性の22 kDaの蛋白質に局在し、2)髄膜炎菌の単離株間で保存されており、3)本来の髄膜炎菌の表面に露出していて、抗体と結合することができ、さらに、4)これらの抗体の、髄膜炎菌の22 kDaの表面蛋白質との反応性は、過ヨウ素酸ナトリウムで処理しても変化しなかったが、このことは、これらの特異的エピトープが、糖の上には局在していないことを示唆している。
【0076】
本発明者らは、髄膜炎菌の22 kDa蛋白質の移動度は、厳密度の高い条件下で加熱すると、外見上約18 kDaの分子量のところに動くことを発見したが、2-メルカプトエタノール処理によっては、移動度に変化がないことを観察した。
【0077】
本発明者らは、髄膜炎菌の22 kDaの表面蛋白質が、髄膜炎菌の外膜に存在する別の低分子量蛋白質で、高度に保存された蛋白質であるlip蛋白質とは、抗原類似性をもっていないことも明らかにした。
【0078】
実施例3で示すように、これらのモノクローナル抗体は、髄膜炎菌の22 kDaの表面蛋白質をコードしている遺伝子を有するプラスミドベクターpNP2202で、大腸菌株BL21(DE3)を形質転換して産生された、組換え22 kDa表面蛋白質を精製したものとも反応した。
【0079】
【表1】

-血清グループに属さない菌株
【0080】
実施例3 髄膜炎菌の22 kDaの表面蛋白質の分子クローニング、遺伝子の配列決定、高発現および精製
A.分子クローニング
製造業者(プロメガ社、ウィスコンシン州マディソン)の推奨するところに従って、髄膜炎菌株608B(B:2a:P1.2)に由来するLambdaGEM-11ゲノミックライブラリーを構築した。簡単にいうと、608B菌株のゲノムDNAをSau3Aで部分消化し、LambdaGEM-11のアームのBamHI部位にライゲーションする前に、9 Kbから23 Kbの大きさの断片をアガロースゲルで精製した。この結果できた組換えファージを用いて、大腸菌の菌株LE392(プロメガ社)を形質転換して、次に、LB寒天培地で培養した。髄膜炎菌の22 kDa表面蛋白質に特異的な、実施例2のモノクローナル抗体によって、以下のプロトコールを用いて、ライブラリーの免疫スクリーニングをして、19個の陽性プラークを同定した。トップアガーを固まらせるために、-20℃で15分間プレートをインキュベートした。組換えウイルスクローンによって産生された蛋白質を吸着させるために、プレートの表面にニトロセルロースフィルターをゆっくりと載せて、4℃に30分間置いた。そして、PBS-Tween 0.02%(容量/容量)で洗浄し、以前に説明したところ[Lussierら、J. Immunoassay, 10, p.373 (1989)]にしたがって免疫ブロットを行なった。増幅してDNA精製した後、サブクローニング実験のために、クローン8と名付けた、13 Kbの挿入配列を有するウイルスクローンを1個選んだ。このクローンをSacIで消化したところ、5 Kbと8 Kbの断片が得られた。これらの断片をアガロースゲルで精製して、低コピー数プラスミドpWKS30のSacI制限酵素部位の中にライゲイションした[WangおよびKusher, Gene, 100, p. 195 (1991)]。組換えプラスミドを用い、製造業者の推奨するところにしたがって、エレクトロポレーション(バイオラド社、カナダ、オンタリオ州ミシソーガ)によって、大腸菌株JM109(プロメガ社)を形質転換した。そして、この結果できたコロニーを、髄膜炎菌の22 kDa表面蛋白質特異的な、実施例2のモノクローナル抗体を用いてスクリーニングした。8 Kbの挿入配列を有するプラスミドでバクテリアを形質転換したときだけ、陽性のコロニーが観察された。陽性コロニーのウェスタンブロット解析(方法は実施例2で説明されている)によって、大腸菌によって発現される蛋白質は、完全で、SDS-PAGEゲル上でも髄膜炎菌の22 kDaの表面蛋白質と同じように移動した。挿入配列の長さをさらに短くするために、8 Kbの断片を有するクローンをClaIで制限酵素消化して、2.75 Kbの断片をpWKS30プラスミドのClaI部位にライゲーションした。この結果できたクローンのウェスタンブロット解析によって、大腸菌によって発現される蛋白質が、完全であり、SDS-PAGEゲルでも本来の髄膜炎菌の22 kDaの表面蛋白質と同じように移動することが再び明らかになった。
制限酵素解析の後、pNP2202とpNP2203と名付けられた、2つのクローンが、2.75 Kbの挿入配列を逆向きに有することが分かり、髄膜炎菌の22 kDa表面蛋白質をコードしている遺伝子の配列決定に続けるためにこれらを選んだ。ファルマシア・バイオテク社(ニュージャージー州ピスカタウエイ)の「二本鎖ネスティド・デリーションキット」を、製造業者の指示に従って用いて、2つのクローンから連続的なネスティド・デリーションを作製した。そして、この結果できた欠削挿入配列を、製造業者の推奨するところにしたがって、アプライド・バイオシステムズ社(カリフォルニア州フォスターシティ)の自動シークエンサーモデル373Aを用いて、「タック(Taq)ダイ・デオキシターミネーター・サイクルシークエンシングキット」によって、pWKS30ベクター上にあるM13前向きプライマーから配列決定を行なった。
【0081】
B.配列解析
挿入配列を両方向に配列決定すると、この塩基配列には、推定分子量18,000ダルトンで、pI 9.93の蛋白質で、174アミノ酸を含む蛋白質をコードする、525塩基の(終止コドンを含む)読み枠があることが明らかになった。塩基配列と推定アミノ酸配列を図1に示す(配列番号:1;配列番号:2)。
クローン化した遺伝子の正確な発現を確認するため、塩基配列データから推定したアミノ酸配列と比較するために、髄膜炎菌株608Bに由来する本来の22 kDa表面蛋白質のN末側のアミノ酸配列を決定した。髄膜炎菌株608Bに由来する外膜調製物を、14%SDS-PAGEゲルで電気泳動して解析し、以前説明された方法[Shambrookら、「分子クローニング;実験マニュアル(Molecular Cloning; A Laboratory Mannual)」、コールドスプリングハーバー研究所出版(1989)]にしたがって、ポリビニルイジン・ジフルオリド(polyvinylidine difluoride)膜(ミリポア・プロダクツ社、マサチューセッツ州ベドフォード)の上に移した。ゲルから22 kDaの蛋白質のバンドを切り出して、製造業者の推奨するところにしたがって、アプライド・バイオシステムズ社(カリフォルニア州フォスターシティ)の自動蛋白質シークエンサーモデル473Aを用いて、エドマン分解を行なった。アミノ酸配列、E-G-A-S-G-F-Y-V-Qは、読み枠のアミノ酸1〜10(配列番号:2)に対応していて、髄膜炎菌株608Bの22 kDa表面蛋白質には、19アミノ酸のリーダーペプチド(配列番号:2の-19から-1のアミノ酸残基)があることを示していた。
確立したデータベースを検索したところ、髄膜炎菌株608Bの22 kDa表面蛋白質(配列番号:2)とその遺伝子(配列番号:1)は、既に記述されていることが確認された。
【0082】
C.髄膜炎菌の組換え22 kDa表面蛋白質の高収量発現と精製
大腸菌で発現される、髄膜炎菌の組換え22 kDa表面蛋白質の産生と精製を最大にするために、以下の処理方法を開発した。この処理方法は、プラスミドpNP2202を有する大腸菌株BL21(DE3)[StudierおよびMoffat, J. Mol. Biol., 189, p.113 (1986)]によって産生される組換え22 kDa表面蛋白質は、外膜に大量に見られるが、培養上清からも得ることができ、培養上清の中では、これが最も豊富な蛋白質であるという観察に基づいている。このため、培養上清を材料にして、アフィニティー・クロマトグラフィーを用いて組換え22 kDa蛋白質の精製を行なった(図6A)。
アフィニティー・クロマトグラフィーの基質を作製するために、モノクローナル抗体Me-2、Me-3およびMe-5(実施例2で説明した)を、製造業者の指示に従って、CNBrで活性化したセファロース4B(ファルマシア・バイオテク社、ニュージャージー州ピスカタウエイ)に固定した。
培養上清を調製するために、プラスミドpNP2202を有する大腸菌株BL21(DE3)を一晩培養したものを、25 mg/mlのアンピシリン(シグマ社)を含むLB培地(ギブコ研究所、ニューヨーク、グランドアイランド)に接種し、振とうしながら、37℃で4時間インキュベートした。4℃で10分間、10,000 X gで2回遠心分離して、培養培地からバクテリアの細胞を取り除いた。培養上清は、0.22 mmのメンブレン(ミリポア・プロダクツ社、マサチューセッツ州ベドフォード)で濾過し、次に、10,000ダルトン以下の分子を切り捨てる限外濾過膜(アミコン社、マサチューセッツ州ビバリー)を用いて、約100倍に濃縮した。膜小胞体を完全に可溶化するために、最終濃度が1%(容量/容量)となるように、濃縮された培養上清にエンピジェンBB(Empigen BB)(カルバイオケム社、カリフォルニア州ラホヤ)を加えた。この懸濁液を室温で1時間インキュベートし、0.05%エンピジェンBB(容量/容量)を含む、数リットルの10 mMのトリス塩酸バッファー、pH 7.3に対して透析を行なってから、4℃で20分間、10,000 X gで遠心分離した。アフィニティー基質に抗原調製物を加えて、定常的に振とうしながら、4℃で一晩インキュベートした。ゲルの懸濁液をクロマトグラフィーカラムに注ぎ込んで、0.05%エンピジェンBB(容量/容量)を含む10 mMのトリス塩酸バッファー、pH 7.3で念入りに洗浄した。そして、1 Mの塩酸リチウム入りの10 mMトリス塩酸バッファー、pH 7.3によって、カラムから組換え22 kDa蛋白質を溶出した。溶出した蛋白質を含む溶液を、0.05%エンピジェンBBを含む数リットルの10 mMトリス塩酸バッファー、pH 7.3に対して何回も透析した。クマシーブルーと銀で染色したSDS-PAGEゲル[TsaiおよびFrasch, Analytical Biochem., 119, pp. 19 (1982)]を用いて、精製処理の各段階で、組換え22 kDa蛋白質の精製度を評価した。代表的な結果が、図6Aに示されている。精製処理によって、大腸菌のリポ多糖を少量含むだけの、かなり純粋な組換え22 kDa蛋白質が作製されたことが、ゲルの銀染色によって明らかに示された。
精製された組換え22 kDa表面蛋白質の、蛋白質分解性切断に対する抵抗性も明らかになり、この結果は、図6Bに示されている。精製された組換え22 kDa表面蛋白質を、実施例1で説明したように、蛋白質1 mg当たり2 mgのα-キモトリプシンとトリプシン、および、蛋白質1 mg当たり2 IUのプロテイナーゼKで処理して、37℃で1時間、定常的に振とうしながらインキュベートした。これらの処理の何れの後にも、蛋白質の量の減少は見られなかった。比較すると、選択した酵素に依存した部分消化または完全消化が、対照蛋白質では観察された。ここで、この場合には、対照蛋白質はウシ血清アルブミン(BSA、シグマ社)であった。さらに、処理時間を長くしても、蛋白質に変化をもたらさなかった。これら後者の結果は、形質転換された大腸菌が、完全な組換え22 kDa表面蛋白質を発現できることを示しており、この蛋白質はまた、髄膜炎菌の中に見られる本来の蛋白質と同じように、これら3つの蛋白質分解酵素の作用に対して、強い抵抗性を有することも示している。さらに、大腸菌の外膜に包埋されない、精製した組換え22 kDa表面蛋白質も、やはり、蛋白質分解酵素の作用に対して強い抵抗性を示す。
【0083】
本発明者らは、また、組換え22 kDa蛋白質の抗原特性に対する、酵素処理の効果を明らかにした。ELISAとウェスタン免疫ブロッティングによって判定されたところによると、実施例2で説明されたモノクローナル抗体は、上記の処理方法にしたがって精製された組換え22 kDa表面蛋白質を容易に認識した(図6C)。その上、モノクローナル抗体Me-5の、精製された組換え22 kDa表面蛋白質との反応性は、その他の22 kDa蛋白質特異的なモノクローナル抗体の反応性も同様であるが、いずれの酵素によっても変わらなかったため、組換え22 kDa蛋白質の抗原特性は、もとの蛋白質について説明された特性と同じだと考えられることが確認された。
【0084】
実施例3では、重要なデータが示されたが、次のように要約される、すなわち、
1)髄膜炎菌の22 kDaの表面蛋白質の完全な塩基配列とアミノ酸配列が得られ(配列番号:1;配列番号:2)、
2)もとの蛋白質のN末の配列決定によって、髄膜炎菌の22 kDa遺伝子が本当にクローン化されたことが確認され、
3)この蛋白質は、以前に説明されておらず、
4)大腸菌などの宿主を形質転換して、髄膜炎菌の組換え22 kDa表面蛋白質を高収率で発現させることができ、
5)髄膜炎菌の別の分子を含まず、大腸菌が産生する成分をほとんど含まない組換え蛋白質を得ることができ、
6)精製された組換え22 kDa表面蛋白質は、α-キモトリプシン、トリプシン、およびプロテイナーゼKなどの蛋白質分解酵素の作用に対して、依然として強い抵抗性をもち、また、
7)組換え22 kDa蛋白質の抗原特性は、もとの髄膜炎菌22 kDa蛋白質について説明された特性に匹敵する。
【0085】
実施例4 髄膜炎菌の22 kDaの表面蛋白質をコードする遺伝子の分子的な保存性
髄膜炎菌の22 kDaの表面蛋白質をコードしている遺伝子の、髄膜炎菌の単離株間における分子的な保存性を明らかにするために、DNAドットブロット・ハイブリダイゼーション・アッセイ法を用いて、異なった髄膜炎菌種と、その他のバクテリア種を調べた。まず、髄膜炎菌の22 kDaの表面蛋白質をコードする525塩基対の遺伝子を、PCRによって増幅し、アガロースゲルで精製して、製造業者の指示にしたがって、非放射性のDIG DNA標識および検出システム(ベーリンガー・マンハイム社、カナダ、ラバル)を用いたランダムプライミングによって標識した。
DNAドットブロットアッセイ法は、製造業者(ベーリンガー・マンハイム社)の指示にしたがって行われた。簡単に説明すると、調べようとしているバクテリアの菌株を、正に荷電したナイロン膜(ベーリンガー・マンハイム社)の上にドットし、乾燥させてから、DIGシステムの使用手引きの中でコロニーのつり上げについて説明されているところにしたがって処理した。プレハイブリダイゼーションとハイブリダイゼーションは、50%ホルムアミド(シグマ社)を含む溶液を用いて、42℃で行なった。また、プレハイブリダイゼーション溶液には、DNAプローブが非特異的にハイブリダイゼーションするのを防止するための付加的な遮断剤として、100 mg/mlの変性ニシン精子DNA(ベーリンガー・マンハイム社)が含まれていた。DIGシステムの使用手引きの中で説明されているところにしたがって、厳密な洗滌と、化学発光するルミゲンPPD基質を用いて検出段階も行なった。
試験した71種の髄膜炎菌株について、モノクローナル抗体Me-7と525塩基対のDNAプローブを用いて得られた結果は、完全に一致していた。この結果によれば、調べた髄膜炎菌株のすべては、モノクローナル抗体によって認識されるため、それらはすべて、髄膜炎菌の22 kDa表面蛋白質遺伝子をもち、その蛋白質を発現している。つまり、髄膜炎菌の単離株の間で、この蛋白質が高度に保存されていることが確認されたことになる(表2)。
試験した淋菌株のすべてでも、DNAプローブによって、髄膜炎菌の22 kDaの表面蛋白質をコードしている遺伝子が検出された。
【0086】
これに対して、モノクローナル抗体Me-7は、淋菌の16菌株のうち2菌株とだけ反応したが、これは、どういうわけか、淋菌株では、特異的なエピトープが存在しないか、結合不可能か変化していることを示している。または、淋病菌株のほとんどは、ゲノムの中にコーディング配列を有するにも拘わらず、この蛋白質を発現させないことを示している(表2)。
ナイセリア・ラクタミカの1菌株だけが蛋白質を発現させない遺伝子を有することが分かったため、2つの検出方法の間によい相関関係があることが、ナイセリア・ラクタミカについても観察された(表2)。この結果は、最後の段落で提示されているのと同じ理由で説明することができると考えられる。
これは、淋菌株の表面では22 kDaは発現されないか、結合不可能であるが、淋病菌株とナイセリア・ラクタミカ菌株の22 kDa蛋白質をコードする遺伝子は、22 kDa表面蛋白質または、その相同体を産生するために用いられる組換えプラスミドを構築するために用いることができることを示しているかもしれない。このような蛋白質または相同体は、すべて、ナイセリア菌感染を予防、検出または診断するために用いることができる。より特定すれば、この感染は、髄膜炎菌、淋菌、およびナイセリア・ラクタミカによる感染から選択されるものである。したがって、22 kDa表面蛋白質、または、その相同体は、このような感染に対するワクチンを製造するために用いてもよい。さらに、22 kDa表面蛋白質、または、その相同体は、このような感染を検出または診断するためのキットを製造するために用いてもよい。
モラクセラ・カタリスの菌株で得られた結果は、調査した5菌株のうち、3つがモノクローナル抗体Me-7とは反応したが、DNAプローブと反応した株はないことを明らかにした。このことは、髄膜炎菌の22 kDaの表面蛋白質をコードする遺伝子が、これらの菌株のゲノムには存在しないことを示している(表2)。
いくつかの他のナイセリア種と、その他のバクテリア種(表2の脚注を参照のこと)を調べたが、2つの試験のいずれによっても陽性のものは見つからなかった。この後者の結果は、22 kDaの表面蛋白質をコードする遺伝子は、ナイセリア属の近縁種だけに共通していることを示していると考えられる。
【0087】
【表2】

【0088】
以下のナイセリア菌種と、その他のバクテリア種も、2つのアッセイ法で調べられたが、ネガティブな結果となった。ナイセリア・シネレア(Neisseria cinerea)1菌株、ナイセリア・フラバ(Neisseria flava)1菌株、ナイセリア・フラバセンス(Neisseria flavescens)1菌株、ナイセリア・ムコサ(Neisseria micosa)2菌株、ナイセリア・パーフラバ/シッカ(Neisseria perflava/sicca)4菌株、ナイセリア・パーフラバ(Neisseria perflava)1菌株、ナイセリア・シッカ(Neisseria sicca)1菌株、ナイセリア・サブフラバ(Neisseria subflava)1菌株、アルカリゲネス・フェカリス(Alcaligenes feacalis)(ATCC 8750)1菌株、百日咳菌(Bordetella pertussis)(9340)1菌株、気管支肺血症(Bordetella bronchiseptica)1菌株、シトロバクター・フロインディ(Citrobacter freundii)(ATCC 2080)1菌株、エドワードシエラ・タルダ(Edwardsiella tarda)(ATCC 15947)1菌株、エンテロバクター・クロアセア(Enterobacter cloacea)(ATCC 23355)1菌株、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)(ATCC 13048)1菌株、大腸菌1菌株、フラボバクテリウム・オドラタム(Flavobacterium odoratum)1菌株、b型ヘモフィルス・インフルエンザ(イーガン(Eagan)株)1菌株、肺炎杆菌(Klebsiella pneumoniae )(ATCC 13883)1菌株、プロテウス・レットゲリ(Proteus rettgeri)(ATCC 25932)1菌株、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)(ATCC 13315)1菌株、シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)(ATCC 9027)1菌株、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)(ATCC 14028)1菌株、霊菌(Serratia marcescens)(ATCC 8100)1菌株、フレクスナー赤痢菌(Shigella flexneri)(ATCC 12022)1菌株、ソネ赤痢菌(Shigella sonnei)(ATCC 9290)1菌株、および、ザンソモナス・マルトフィラ(Xanthomonas maltophile)1菌株。
【0089】
結論として、DNAハイブリダイゼーションアッセイ法は、髄膜炎菌の22 kDaの表面蛋白質をコードする遺伝子が、病原性ナイセリア菌の間で高度に保存されていることを明確に示した。さらに、得られた結果は、このDNAプローブが、臨床試料の中の病原性ナイセリア菌を迅速に、また、直接的に検出するための貴重なツールとなりうることを明確に示した。このプローブは、髄膜炎菌と淋菌を区別できるように、さらに工夫することもできる。
【0090】
実施例5 モノクローナル抗体のバクテリア分解特性と防御特性
精製された、髄膜炎菌の22 kDaの表面蛋白質特異的なモノクローナル抗体のバクテリア分解活性を、以前から説明されている方法[Broederら、Infect. Immun. 50, p.510 (1985); Martinら、Infect. Immun. 60, p.2718 (1992)]にしたがって、インビトロで評価した。モルモットの血清補体存在下で、精製モノクローナル抗体Me-1およびMe-7は、髄膜炎菌株608Bを効率的に殺菌した。これらのモノクローナル抗体のいずれも、比較的低い濃度で、バクテリアの生存数を50以上減少させる。精製モノクローナル抗体Me-1およびMe-7を高い濃度で利用すると、バクテリアのコロニー形成単位数を急激に低下させる(99%まで)結果となった。モルモットの血清を30分間、56℃で加熱して不活性化すると、殺菌活性がなくなることから、重要なのは、これらのモノクローナル抗体のバクテリア分解活性は、補体依存的だということである。これ以外のモノクローナル抗体は、これと同じ菌株に対して有意なバクテリア分解活性を示さなかった。いくつかの実験を組み合わせた代表的な結果が図7に示されているが、ここで、Me-7について示された結果は、代表的なものであり、Me-1について得られた結果と一致している。Me-2に関する結果も代表的なものであり、他のモノクローナル抗体Me-3、Me-5およびMe-6について得られた結果と一致している。
本発明者らの一人によって既に説明されている[Brodeurら、Infect. Immun., 50, p.510 (1985); Brodeurら、Can. J. Microbiol., 32, p.33 (1986)]、マウスの感染モデルを用いて、各モノクローナル抗体の防御活性を測定した。簡単に説明すると、Balb/cマウスに、バクテリア抗原投与を行う18時間前に、モノクローナル抗体を含む腹水液600 mlを腹腔内から注射した。そして、1000コロニー形成単位の髄膜炎菌株608Bと4%ムチン(シグマ社)および1.6%ヘモグロビン(シグマ社)を含む懸濁液1mlを、これらのマウスに抗原投与した。いくつかの実験を組み合わせた結果が、表3に示されている。バクテリア分解性モノクローナル抗体Me-1およびMe-7だけが、髄膜炎菌の実験感染からマウスを防御したことに留意することが重要である。実際、バクテリアを抗原投与する前に、これら2つのモノクローナル抗体を含む腹水液注射すると、Balb/cマウスの生存率が70%以上に上昇した。これに対し、Sp2/0に誘導された腹水液600 mlを注射するか、無関係のモノクローナル抗体を含む腹水液を600 ml注射したグループでは、生存率は9%であった。これらの結果は、また、バクテリア抗原投与を行う18時間前に、プロテインAで精製したMe-7を400μg、予め注射しておけば、80%のマウスが感染を生き延びることも示した。50%のマウスを防御するのに必要な抗体最低濃度を決定するために、これに続く実験が現在行われているところである。20%から40%という低い生存率は、髄膜炎菌22 kDa表面蛋白質特異的な、他のモノクローナル抗体でも観察された。
【0091】
【表3】

【0092】
結論として、これらの結果は、髄膜炎菌の22 kDaの表面蛋白質に対して特異的な抗体は、実験的な致死的抗原投与から、マウスを有効に防御した。抗原による防御抗体の誘導は、ワクチン候補となりうるものをさらに研究する上で、最も重要な基準の一つである。
【0093】
実施例6 精製組換え22 kDa表面蛋白質を用いた免疫化による、その後のバクテリア抗原投与に対する防御力付与
実施例3に示されているプロトコールにしたがって、精製された組換え22 kDa表面蛋白質を調製し、これを用いて、致死的用量の髄膜炎菌株608B(B:2a:P1.2)抗原投与に対する防御効果を測定するために、Balb/cマウスを免疫した。これらの実験過程で用いるワクチン調製物の中に、別の髄膜炎菌抗原が確実に存在しないようにするために、本来の髄膜炎菌蛋白質の代わりに精製された組換え蛋白質を用いることにした。これらの実験で用いたマウスの感染モデルは、本発明者らの一人によって既に説明されている[Brodeurら、Infect. Immun., 50, p.510 (1985); Brodeurら、Can. J. Microbiol., 32, p.33 (1986)]。3週間間隔で3回、マウス1頭につき、10μgまたは20μgの精製された組換え22 kDa表面蛋白質を含む抗原調製物を100 mg、各マウスに皮下注射した。これらの実験において、QuilAを、注射1回あたり25μgの濃度で、アジュバントとして用いた。対照グループのマウスには、同じ処理手順にしたがって、10μgまたは20μgのBSAか、実施例3で説明されているようにして調製した、髄膜炎菌蛋白質をコードする遺伝子を挿入していないプラスミドpWKS30を有する大腸菌株BL21(DE3)の濃縮培養上清またはリン酸緩衝食塩水を20μg注射した。組換え蛋白質に対する免疫応答の発生を解析するために、注射を打つ前毎に、各マウスから血清サンプルを採取した。3回目の免疫の2週間後に、すべてのグループのマウスへ、4%ムチン(シグマ社)および1.6%ヘモグロビン(シグマ社)の中に1000コロニー形成単位の髄膜炎菌株608Bを含む懸濁液1mlを、腹腔内注射した。
【0094】
これらの実験の結果は、表4に示されている。精製された組換え22 kDa表面蛋白質で免疫したマウスの80%は、バクテリア抗原を投与しても死ななかったが、これに対して、対照グループでの生存率は、0〜42%であった。重要なのは、大腸菌の濃縮培養上清を注射した対照グループのマウスは、バクテリア抗原投与から防御されなかったということである。この最後の結果によって、培養基の中に存在している成分も、精製後も僅かな量存在していると思われる大腸菌抗原も、髄膜炎菌に対して観察された防御には全く寄与していないことが明確に示された。
【0095】
【表4】

【0096】
結論
精製された組換え22 kDa表面蛋白質の注射により、免疫されたマウスは、髄膜炎菌の致死的な感染の進行から、非常に強く防御された。
本発明による抗体の例は、モノクローナル抗体Me-1およびMe-7を産生するマウスハイブリドーマ細胞株であるが、これらは、1995年7月21日に、米国メリーランド州ロックビルにある米国基準培養株コレクション(American Type Culture Collection )に寄託された。
【0097】
実施例7 髄膜炎菌の他の菌株と淋菌の配列解析
実施例3で説明したようにして、髄膜炎菌の異なった菌株と淋菌のゲノムDNAから、22 kDaの表面蛋白質をコードしている遺伝子を含む2.75 KbのClaI消化したDNA断片を単離した。
a)MCH88菌株:菌株MCH88(臨床単離株)の塩基配列が、図8に示されている(配列番号:3)。菌株608Bから得られた実験的な証拠(実施例3)から、アミノ酸配列の-19から-1に相当する推定リーダー配列(M-K-K-A-L-A-A-L-I-A-L-A-L-P-A-A-A-L-A)を導き出した。確立したデータベースを検索したところ、髄膜炎菌株MCH88に由来する22 kDaの表面蛋白質(配列番号:4)も、その遺伝子(配列番号:3)も、以前には報告されていないことが確認された。
b)Z4063菌株:菌株Z4063(Wang J.-F.ら、Infect. Immun., 60, p.5267 (1992))の塩基配列は、図9に示されている(配列番号:5)。菌株608Bから得られた実験的な証拠(実施例3)から、アミノ酸配列の-19から-1に相当する推定リーダー配列(M-K-K-A-L-A-T-L-I-A-L-A-L-P-A-A-A-L-A)を導き出した。確立したデータベースを検索したところ、髄膜炎菌株Z4063に由来する22 kDaの表面蛋白質(配列番号:6)も、その遺伝子(配列番号:5)も、以前には報告されていないことが確認された。
c)淋菌株b2:淋菌株b2(血清型1、Nat. Ref. Center for Neisseria, LCDC, Ottawa, Canada)の塩基配列は、図10に示されている(配列番号:7)。菌株608Bから得られた実験的な証拠(実施例3)から、アミノ酸配列の-19から-1に相当する推定リーダー配列(M-K-K-A-L-A-A-L-I-A-L-A-L-P-A-A-A-L-A)を導き出した。確立したデータベースを検索したところ、淋菌株b2に由来する22 kDaの表面蛋白質(配列番号:8)も、その遺伝子(配列番号:7)も、以前には報告されていないことが確認された。
図11は、調べられた4つの菌株すべてのDNA配列で確認された保存配列を示している。MCH88菌株では、217番目の塩基のところに、1コドン(TCA)の挿入があることが分かったが、一般的に、これら4つの菌株は著しい相同性を示していた。
図12は、4つの菌株から得た推定アミノ酸配列の間に見られる相同性を示したものである。4つの菌株すべての間で、90%以上の一致が見られる。
【0098】
実施例8 22 kDaの髄膜炎菌表面蛋白質に対するウサギおよびサルの免疫応答
マウス以外の生物種での抗体の応答を測定するために、組換え22 kDa蛋白質で、ウサギおよびサルを免疫した。
a)ウサギ
プラスミドpN2202または対照用プラスミドpWKS30を有する大腸菌株JM109から得た外膜調製物(菌株およびプラスミドは、実施例3で説明されている)で、オスのニュージーランド・ラビット(New Zealand rabbit)を免疫した。本発明者らが以前述べた[Brodeurら、Infect. Immun., 50, p.510 (1985)]ようにして、これらの外膜調製物を得るために用いた塩化リチウム抽出を行った。これらの調製物の蛋白質含有量を、膜画分に適合させたローリー法[Lowryら、J. Biol. Chem.193, 265 (1951)]によって測定した。ウサギには、上記の外膜調製物の一つを150μg、3週間の間隔で2回、いくつかの部位に皮下注射または筋肉内注射をした。QuilAを、最終濃度20%(用量/用量)(シーダーレーン研究所、カナダ、オンタリオ州ホーンバイ)で、アジュバントとして、これらの免疫に用いた。髄膜炎菌株608B(B:2a:P1.2)から抽出した外膜調製物を、被覆抗原として用いたELISAと、本発明者らによって既に説明された方法[Broederら、Infect. Immun. 50, p.510 (1985); Martinら、Eur. J. Immunol. 18, p.601 (1988)]に従うウェスタン免疫ブロッティングによって、特異的な液性応答の発生を解析した。アルカリホスファターゼまたはパーオキシダーゼで標識したロバ抗ウサギ免疫グロブリン(ジャクソン免疫研究所(Jackson ImmunoResearch Laboratories)、ペンシルバニア州グローブ)をこれらの測定法で用いた。
22 kDaの組換え蛋白質を含む大腸菌の外膜調製物を、QuilAアジュバントと組み合わせて注射すると、ELISAで測定したところ、1/32,000の特異的な強い液性応答がウサギで誘導された(図13)。組換え22 kDa蛋白質を注射して誘導された抗体は、精製された組換え22 kDa蛋白質と反応したが、さらに重要なことに、それらは、髄膜炎菌の外膜の中で発現し、折り畳まれ、包埋している本来の蛋白質を認識した。ウェスタン免疫ブロッティング実験によって、第二回目の注射の後で現れた抗体が、22 kDa蛋白質に特異的なMab Me-2(実施例2で説明されている)によって明らかにされたバンドと同じ蛋白質バンドを、ニトロセルロース膜上で認識したことが明確に示された。
【0099】
b)サル
2頭のマカカ・ファシキュラリス(Macaca fascicularis)(カニクイザル)に、1回の注射につき、アフィニティー精製した組換え22 kDa蛋白質を、それぞれ、100μg(K28)および200μg(I276)ずつ、2回注射して免疫した。大腸菌株BL21(DE3)に蛋白質を産生させ、それから蛋白質を精製するために用いた方法は、実施例3において説明した。最終濃度20%(用量/用量)(シーダーレーン研究所、カナダ、オンタリオ州ホーンバイ)のアルヒドロゲル(Alhydrogel)をアジュバントとして、これらの免疫に用いた。このサルたちに、3週間間隔で筋肉内注射を行なった。同じ処理手順に従って、無関係な組換え蛋白質調製物で、対照用のサル(K65)を免疫した。上述したところにしたがって、血清を解析した。これらの測定法では、アルカリホスファターゼまたはパーオキシダーゼ標識したヤギ抗ヒト免疫グロブリン(ジャクソン免疫研究所(Jackson ImmunoResearch Laboratories)、ペンシルバニア州グローブ)を用いた。
1回の注射につき100μgの精製蛋白質で免疫したサルにおいて、K28の特異的な抗体反応は、200μgの蛋白質を注射したサル、I276で観察された免疫反応よりも急速で強力であるように示された(図14)。ウェスタン免疫ブロッティングによって検出されたところによると、天然の22 kDa蛋白質に特異的な抗体は、最初の注射の後21日目の、免疫したサルの血清の中に既に現れていたが、対照用の抗原を2回注射した後の対照用のサルの中にはなかった。
【0100】
結論
実施例2および5に示されたデータは、組換え22 kDa蛋白質の注射によって、髄膜炎菌株に対する防御液性反応をマウスで誘導することができることを明確に示した。さらに重要なことは、本実施例で示されている結果から、この免疫学的応答が、一つの生物種のみに限られることなく、この組換え表面蛋白質が、ウサギおよびサルなどの別の生物種の免疫システムを刺激することもできることが明らかにされたことである。
【0101】
実施例9 22 kDaの髄膜炎菌蛋白質のエピトープマッピング
本発明者らの一人によって説明された方法[Martinら、Infect. Immun. (1992): 59: 1457〜1464]を用いて、髄膜炎菌の22 kDa表面蛋白質をエピトープマッピングした。菌株608Bに由来する髄膜炎菌の22 kDa蛋白質の全長配列をカバーずる18個の重複した合成ペプチドを用いて、直線的に位置するエピトープ同定を行ない(図15)、この蛋白質で免疫することにより過免疫血清を得た。22 kDa蛋白質上の免疫優性な部位の同定は、新しい有効ワクチンの設計を行なう上で有用であると考えられる。さらに、これらのB細胞エピトープの位置づけにより、髄膜炎菌の外膜における、この蛋白質の構造的配置に関する貴重な情報も提供される。
すべてのペプチドは、アプライド・バイオシステムズ(カリフォルニア州フォスターシティ)を用いて、バイオケム・イムノシステムズ社(カナダ、モントリオール)によって合成された。合成ペプチドは、逆相高圧液体クロマトグラフィーによって精製した。ペプチドCS-845、CS-847、CS-848、CS-851、CS-852およびCS-856(図15)を、少量の6Mグアニジン塩酸(J. T. Baker, Ontario, Canada)またはジメチルスルホキシド(J. T. Baker)の中で可溶化した。そして、これらのペプチドを蒸留水で1 mg/mlに調整した。この他のペプチドはすべて、蒸留水中でそのままで可溶性であったので、これらも1 mg/mlに調整した。
50 mMの炭酸バッファー、pH 9.6の中に50μg/mlの濃度で、合成ペプチドで微量滴定用プレート(Immulon 4, Dynatech Laboratories Inc., Chantilly, VA)を覆って、ペプチドの固相酵素免疫測定法(ELISA)を行なった。室温で一晩インキュベートした後、0.05%(重量/容量)Tween 20(Sigma Chemichal Co., St.-Louis, MO)入りのリン酸緩衝食塩水(PBS)でプレートを洗浄して、0.5%(重量/容量)ウシ血清アルブミン(シグマ社)入りのPBSでブロックした。アフィニティー精製した組換え22 kDa表面蛋白質で免疫したマウスおよびサルから採取した血清を希釈して、この希釈液をウェル1個に100μlずつELISAプレートに加えて、37℃で1時間インキュベートした。このプレートを3回洗浄し、製造業者が推奨するところにしたがって、アルカリホスファターゼを結合したヤギ抗マウスまたは抗ヒト免疫グロブリン(ジャクソン免疫研究所(Jackson ImmunoResearch Laboratories)、ペンシルバニア州グローブ)100μlを希釈した。37℃で1時間インキュベートした後、プレートを洗浄し、1 mg/mlのリン酸p-ニトロフェニル(シグマ社)を含むジエタノールアミンを100μl(10%(容量/容量))加えた。60分後に、微量プレート読み取り器を用いて、反応を分光光度計で読み取った(λ=410 nm)。
アフィニティー精製した組換え22 kDa表面蛋白質で免疫して得た、マウスおよびサルの抗血清(実施例8)を、18個の重複した合成ペプチドとうまく組み合わせて用い、蛋白質上のB細胞のエピトープの位置を決定した。これらのエピトープは、蛋白質の3つの抗原ドメインに集中していた。
第一の領域は、51番目から86番目のアミノ酸残基の間に位置している。異なるアルゴリズムを用いたコンピュータ解析により、この領域は疎水的で表面に露出しているため、この領域が免疫学的に重要である可能性が最も高いことが示唆された。さらに、図12に示されている4つの蛋白質配列を比較することにより、73番目のアミノ酸に1アミノ酸残基の挿入があるという大きな変異も、この領域にあることが示される。
110番目から140番目のアミノ酸残基の間にある第二の抗原ドメインが、抗血清を用いて同定された。興味深いことに、配列解析によって、4つの蛋白質の配列の間で保存されていない14のアミノ酸残基のうち7個が、蛋白質のこの領域に集中していることが明らかになった。
31番目から55番目のアミノ酸残基の間の、高度に保存された部位に位置する第三の抗原ドメインは、サルの血清によってのみ認識された。
【0102】
実施例10 22 kDaの表面蛋白質を大量に生産するための熱誘導発現ベクター
髄膜炎菌の22 kDa表面蛋白質をコードする遺伝子を、プラスミドp629に挿入した[Georgeら、Bio/technology 5: 600〜603 (1987)]。バクテリオファージλのcI857温度感受性リプレッサー遺伝子のカセットを用いて機能的なPrプロモーターを削除したものが、22 kDaの表面蛋白質の合成を調節するためにPLプロモーターを用いるプラスミドp629に含まれている。温度を30℃から38℃以上に変化させて、cI857リプレッサーを不活性化することにより、プラスミドにコードされた蛋白質が産生される。大腸菌細胞における遺伝子発現を温度変化によって誘導することは、近代的な発酵装置を用いて簡単に行えるという点で、大量の発酵を行う上では利点がある。別の誘導発現ベクターでは、望ましい遺伝子の発現を誘導するためには、通常、ラクトースまたはイソプロピルチオ-β-D-ガラクトシド(IPTG)のような特異的な分子を、培養培地の中に添加する必要がある。
2つのヌクレオチドプライマー(配列番号:27および28)(OCRR8:5'-TAATAGATCTATGAAAAAAGCACTTGCCAC-3'およびOCRR9:3'-CACGCGCAGTTTAAGACTTCTAGATTA-5')を用いて、髄膜炎菌株608BのゲノムDNAから、PCRによって、540の塩基断片を増幅した。これらのプライマーは、22kDa遺伝子の両末端に見られる塩基配列に相当している。PCR産物のクローニングを簡単にするために、これらのプライマーの塩基配列中にBgl II(AGATCT)制限酵素部位を取り込ませた。PCR産物は、Bgl IIで制限酵素消化する前に、アガロースゲルで精製した。次に、この約525塩基対のBgl II断片を、プラスミドp629のBgl IIとBam HI部位に挿入した。このPCR産物を含む、pNP2204と名付けられたプラスミドを用いて、大腸菌株DH5αF'IQを形質転換した。pNP2204の部分的なマップを図16に示す。実施例2で説明している、髄膜炎菌の22 kDa表面蛋白質に特異的なモノクローナル抗体を用いて、この結果生じたコロニーをスクリーニングした。この結果選択されたクローンのウェスタンブロット解析によって、大腸菌によって合成される蛋白質は、完全なもので、天然の髄膜炎菌の22 kDa表面蛋白質と同じように、SDS-PAGEゲルを移動することが明らかにされた。選択されたクローンからプラスミドDNAを精製し配列決定した。プラスミドの中にある挿入配列の塩基配列は、図1に示されている髄膜炎菌の22kDa蛋白質をコードする遺伝子の塩基配列と完全に一致した。
22 kDaの表面蛋白質の合成レベルを調べるために、温度誘導プラスミドpNP2204を用いて、次の大腸菌株を形質転換した。すなわち、W3110、JM105、BL21、TOPP1、TOPP2、および、TOPP3である。22 kDaの表面蛋白質の合成レベルと、この蛋白質の異なる細胞分画中での局在を、各菌株毎に判定した。LB培地(Gibco BRL, Life Technologies, Grand Island, NY)のフラスコ振とう培養により、温度を30℃から39℃に変化させると、遺伝子の発現が効率的に誘導されることが示された。合成レベルの時間的な経過を調べると、SDS-PAGEゲルで判定することにより、誘導後30分で早くも蛋白質が出現することが分かり、また、誘導している間中、蛋白質量は定常的に増加することが分かった。大腸菌株W3110およびTOPP1について、1リットル当たり8 mgから10 mgの22 kDa蛋白質の発現レベルが測定された。両菌株において、22 kDa蛋白質の大部分は、バクテリアの外膜に取り込まれていた。
【0103】
実施例11 髄膜炎菌の22 kDa蛋白質の精製
22 kDa蛋白質の大部分が大腸菌株の外膜に埋まっていることが示されたため、この実施例で示す精製プロトコールは、大部分の蛋白質が培養上清に放出される実施例3で説明されているプロトコールとは異なる。プラスミドpNP2204を有する大腸菌株のW3110またはTOPP1のいずれかを30℃で一晩インキュベートした培養液を、50μg/mlのアンピシリン(シグマ社)を含むLB培地に接種し、細胞密度が0.6(λ=600nm)に達するまで、振とうさせながら30℃で増殖させ、この時点で培養温度を39℃に変化させ、蛋白質の産生を誘導するために、3時間から5時間培養した。4℃、8,000 X gで15分間遠心分離して、バクテリアの細胞を回収し、リン酸緩衝食塩水(PBS)、pH7.3で2回洗浄した。バクテリアの細胞を超音波で破砕した(衝撃による破砕、またはフレンチプレスによる機械的な破砕を用いてもよい)。破砕されなかった細胞は、5,000 X gで5分間遠心分離して採集し除去した。10℃、100,000 X gで10分間遠心分離して、外膜を細胞質成分から分離した。膜を含む沈殿物を、少量のPBS、pH7.3で再懸濁した。膜から採取した22 kDa表面蛋白質を可溶化するために、エンピジェンBB(Calbiochem Co., LaJolla, CA)、ツウィッタージェント-3,14(Zwittergent-3,14)(Calbiochem Co.)、ベータ-オクチルグリコシド(β-octylglycoside)(シグマ社)などの界面活性剤を用いた。界面活性剤を、最終濃度3%で膜画分に加え、この混合液を、20℃で1時間インキュベートした。10℃、100,000 X gで10分間遠心分離して、不溶物質を取り除いた。
これらの3つの界面活性剤のいずれかによって、22 kDa蛋白質が効果的に可溶化されたが、ベータ-オクチルグリコシドには、不必要な膜蛋白質のいくつかを容易に取り除くことができるという利点がある。これらの蛋白質は可溶化しないため、遠心分離によって上清から分離することができるからである。界面活性剤を取り除くために、22 kDaを含む上清を、PBS緩衝液を何回か取り替えて念入りに透析した。22 kDaの表面蛋白質調製物から不要な蛋白質を、さらに取り除くために、プロテイナーゼK処理(実施例1と同じ)を用いることもできる。ゲル浸透クロマトグラフィーまたはイオン交換クロマトグラフィーを用いて、効率的に精製された22 kDa蛋白質を採集する前に、硫酸アンモニウムまたは有機溶剤を用いた分画沈澱または限外濾過という付加的な2つの段階を用いて、不要な核酸およびリポ多糖の混入物を蛋白質から取り除くこともできる。実施例3で説明されているように、アフィニティー・クロマトグラフィーを用いて、22 kDa蛋白質を精製してもよい。
【0104】
実施例12 ヒト用ワクチンとしての22 kDaの表面蛋白質の使用
ヒトに使用するためのワクチンを処方するために、適当な22 kDa表面蛋白質抗原を、本明細書で説明されているポリペプチドから選択することができる。例えば、当業者は、免疫原エピトープを含む22 kDaのポリペプチドまたはその断片について、ワクチンを設計することができる。実質的に純粋な組換え抗原を調製するためには、分子生物学的手法を使用するのが、特に適切である。
ワクチン組成物は、さまざまな形状をとりうる。これらには、例えば、固形状、半固形状、および、粉末などの、流動投薬形態、液状溶液または懸濁液、および、リポソームなどが含まれる。本発明に係る22 kDa表面蛋白質抗原をヒトに投与した場合、防御的な免疫反応が誘導されると考えられる本発明者らの考察により、本発明に係る組成物は、例えば、破傷風またはジフテリアなど、他の蛋白質またはポリペプチドによってヒトを免疫するために用いられる組成物に類似しているはずである。このため、本発明に係る組成物には、好ましくは、フロイントの不完全アジュバント、水酸化アルミニウム、ムラミルペプチド、水中油型乳剤、リポソーム、ISCOMもしくはCTB、または無毒Bサブユニット型コレラ毒素など、薬学的に許容されるアジュバントが含まれる。最も好ましくは、本組成物には、アジュバントとして、水中油型乳剤または水酸化アルミニウムが含まれる。
本組成物は、筋肉内、皮内、皮下または局所からの投与を含む、数多くある薬学的に許容される形態のいずれかによって、患者に投与される。好ましくは、本ワクチンは、筋肉内から投与される。
一般的に、投薬は、各患者について、通常アジュバントと共に約0.01 mgから10 mgの、好ましくは0.1 mgから10 mgの22 kDa表面蛋白質抗原の初回注射を行ない、その後、通常1回以上の追加免疫を行なうことから構成される。好ましくは、追加免疫は、初回注射の約1ヶ月から6ヶ月後に行われる。
ワクチン開発について考慮しなければならないことは、粘膜免疫の問題である。理想的な粘膜ワクチンは、1回または数回分の投与量を口腔または鼻腔から安全に摂取されて、全身性免疫とともに適正な表面の上へ防御的抗体を誘導する。粘膜ワクチン組成物には、アジュバント、不活性粒子担体、または、組換え生ベクターが含まれうる。
【0105】
本発明に係る抗22 kDa表面蛋白質抗体は、髄膜炎菌、または淋菌もしくはナイセリア・ラクタミカなどの関連バクテリアに感染したヒトの受動免疫療法および免疫防御を行なうのに有用である。このような受動免疫についての投薬形態および養生法は、他の受動免疫療法の投薬形態および養生法と同じであると思われる。
【0106】
本発明による抗体の実例は、1995年7月21日に、米国メリーランド州ロックビルにある米国基準培養株コレクション(American Type Culture Collection )に寄託された、モノクローナル抗体Me-1またはMe-7を産生するハイブリドーマで、それぞれ、マウスハイブリドーマ細胞株、Me-1およびMe-7として確認されている。これらの寄託株には、寄託番号HB 11959(Me-1)およびHB 11958(Me-7)が付与されている。
【0107】
本発明者らは、本明細書において、数多くの本発明の態様を説明してきたが、基本的な態様を、本発明に係る組成物および処理方法を利用する別の態様を提供するために変更することができる。したがって、上記の明細書および添付の請求の範囲によって定義される代替的な態様および変更のすべてが、本発明の範囲に含まれることが認識されると思われる。そして、本発明は、本明細書において実施例のために提示した特異的な態様によって制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】図1は、髄膜炎菌株608Bの22 kDaの表面蛋白質の塩基配列とアミノ酸配列を示したものである(配列番号:1;配列番号:2)。アミノ酸残基は従来からの3文字表記法を用いて示されている。オープン・リーディング・フレーム(読み枠)は、143塩基目の開始コドンから667塩基目の終止コドンまで続いている。リボソーム結合部位と推定される部位を四角で囲み、-10プロモーター配列と推定される部位を下線で示した。19アミノ酸を含むシグナルペプチドも下線で示した。
【図2】図2は、α-キモトリプシンとトリプシンで分解した、髄膜炎菌株608B(B:2a:P1.2)の外膜調製物を示す、クマシーブルー染色した14%SDS-PAGEゲルの写真である。レーン1は、次の分子量マーカーを含む。ホスホリラーゼb(97,400);ウシ血清アルブミン(66,200);オボアルブミン(45,000);カルボニックアンヒドラーゼ(31,000);ダイズ・トリプシンインヒビター(21,500);リゾチーム(14,400)。レーン2は、未分解の対照用外膜調製物である。レーン3は、α-キモトリプシン処理した調製物(蛋白質1 mg当たり2 mgの酵素);レーン4は、トリプシン処理した調製物である。
【図3】図3aは、プロテイナーゼKで分解した、髄膜炎菌株608B(B:2a:P1.2)の外膜調製物を示す、クマシーブルー染色した14%SDS-PAGEゲルの写真である。レーン1、3、5、7は、未分解の対照である。レーン2、4、6、8は、プロテイナーゼKで分解した外膜調製物(蛋白質1 mg当たり2 IU);レーン1から4は、pH 7.2で処理した調製物である。レーン5から8は、pH 9.0で処理した調製物である。レーン1、2、5、6は、SDSなしで処理した調製物である。レーン3、4、7、8は、SDS存在下で処理した調製物である。分子量マーカーを左側に(キロダルトンで)示す。 図3bは、アフィニティー精製した22 kDaの組換え蛋白質の電気泳動プロフィールを示す、クマシーブルー染色した14%SDS-PAGEゲルの写真である。レーン1は、次の分子量マーカーを含む。ホスホリラーゼb(97,400);ウシ血清アルブミン(66,200);オボアルブミン(45,000);カルボニックアンヒドラーゼ(31,000);ダイズ・トリプシンインヒビター(21,500);リゾチーム(14,400)。レーン2は、対照用の、5μgのアフィニティー精製した22 kDaの組換え蛋白質である。レーン3は、100℃で5分間加熱した、5μgのアフィニティー精製した22 kDaの組換え蛋白質である。レーン4は、100℃で10分間加熱した、5μgのアフィニティー精製した22 kDaの組換え蛋白質である。レーン5は、100℃で15分間加熱した、5μgのアフィニティー精製した22 kDaの組換え蛋白質である。
【図4】図4は、髄膜炎菌の22 kDaの表面蛋白質に特異的なモノクローナル抗体の反応性を示す、クマシーブルー染色した14%SDS-PAGEゲルと、それに対応するウェスタン・イムノブロッティングの写真である。髄膜炎菌株608B(B:2a:P1.2)の外膜調製物の、(A)は、無処理の調製物、(B)は、プロテイナーゼKで処理した調製物(蛋白質1 mg当たり2 IU)である。レーン1は、分子量マーカーと、外膜調製物の14%SDS-PAGEゲルでの特徴的な電気泳動プロフィールを示す。レーン2はMe-2;レーン3はMe-3;レーン4はMe-5;レーン5はMe-7;レーン6は、無関係の、対照用モノクローナル抗体である。分子量マーカーは、ホスホリラーゼb(97,400)、ウシ血清アルブミン(66,200)、オボアルブミン(45,000)、カルボニックアンヒドラーゼ(31,000)、ダイズ・トリプシンインヒビター(21,500)、および、リゾチーム(14,400)である。図4に示したイムノブロットの結果のうち、Me-2、Me-3、Me-5、Me-6、Me-7については、Me-1で得られたイムノブロットの結果と一致している。
【図5】図5は、無処理のバクテリア菌株に対する、モノクローナル抗体の結合活性を図示したものである。典型的なモノクローナル抗体であるMe-5とMe-7に関する結果が、縦軸のカウント数/分(「CPM」)で示されている。このアッセイに用いられたバクテリア菌株が横軸に示されている。陰性対照には、ヘモフィルス・インフルエンザ菌のポーリン特異的モノクローナル抗体が用いられた。500 CPM以下の、バックグラウンドのカウント数を記録して、これを結合値から減じた。
【図6】図6は、大腸菌(E. coli)株BL21(DE3)の濃縮培養上清から精製した髄膜炎菌の22 kDaの組換え表面蛋白質を示す、クマシーブルー染色した14%SDS-PAGEゲルと、それに対応するウェスタン・イムノブロッティングの写真である。図6(A)は、クマシーブルーと銀で染色した14%SDS-PAGEゲルの写真である。レーン1には、次の分子量マーカーが含まれている。ホスホリラーゼb(97,400);ウシ血清アルブミン(66,200);オボアルブミン(45,000);カルボニックアンヒドラーゼ(31,000);ダイズ・トリプシンインヒビター(21,500);リゾチーム(14,400)。レーン2は、髄膜炎菌株608B(血清型B:2a:P1.2)から精製した外膜蛋白質調製物(10 mg)である。レーン3は、大腸菌株BL21(DE3)の濃縮培養上清(10 mg)である。レーン4は、アフィニティー精製した、22 kDaの組換え髄膜炎菌表面蛋白質(1 mg)である。図6(B)は、アフィニティー精製した22 kDaの組換え髄膜炎菌表面蛋白質をα-キモトリプシン、トリプシン、または、プロテイナーゼKで分解したものをクマシーブルーで染色した、14%SDS-PAGEゲルの写真である。レーン1には、次の分子量マーカーが含まれている。ホスホリラーゼb(97,400);ウシ血清アルブミン(66,200);オボアルブミン(45,000);カルボニックアンヒドラーゼ(31,000);ダイズ・トリプシンインヒビター(21,500);リゾチーム(14,400)。レーン2から5は、精製した22 kDaの組換え髄膜炎菌表面蛋白質(2 mg)である。レーン7から10は、ウシ血清アルブミン(2 mg)である。レーン2と7は、未分解蛋白質(「NT」)である。レーン3と8は、α-キモトリプシン(「C」)で処理した蛋白質(蛋白質1 mg当たり2 mgの酵素)。レーン4と9は、トリプシン(「T」)で処理した蛋白質(蛋白質1 mg当たり2 mgの酵素)。レーン5と10は、プロテイナーゼK(「K」)で処理した蛋白質(蛋白質1 mg当たり2 IU)。図6(C)は、モノクローナル抗体Me-5を用いた、複製ゲルのウェスタン・イムノブロッティングの写真である。
【図7】図7は、髄膜炎菌株608B(B:2a:P1.2)に対する、プロテインA精製した抗髄膜炎菌22 kDa表面蛋白質モノクローナル抗体の殺菌活性をグラフで示したものである。グラフの縦軸は、さまざまな濃度(グラフの横軸に示されている)のモノクローナル抗体に接触させた後の、髄膜炎菌バクテリアの生存率を示している。
【図8】図8は、髄膜炎菌株MCH88の22 kDaの表面蛋白質の塩基配列とアミノ酸配列を示したものである(配列番号:3;配列番号:4)。アミノ酸残基は従来からの3文字表記法を用いて示されている。オープン・リーディング・フレーム(読み枠)は、116塩基目の開始コドンから643塩基目の終止コドンにまで続いている。
【図9】図9は、髄膜炎菌株Z4063の22 kDaの表面蛋白質の塩基配列とアミノ酸配列を示したものである(配列番号:5;配列番号:6)。アミノ酸残基は従来からの3文字表記法を用いて示されている。オープン・リーディング・フレーム(読み枠)は、208塩基目の開始コドンから732塩基目の終止コドンにまで続いている。
【図10】図10は、淋病菌(Neisseria gonorrhoeae)株b2の22 kDaの表面蛋白質の塩基配列とアミノ酸配列を示したものである(配列番号:7;配列番号:8)。アミノ酸残基は従来からの3文字表記法を用いて示されている。オープン・リーディング・フレーム(読み枠)は、241塩基目の開始コドンから765塩基目の終止コドンにまで続いている。
【図11】図11は、ナイセリア属の4つの菌株のDNA配列(配列番号:29)から確定された保存配列を表し、各菌株に特異的なヌクレオチドの置換または挿入を示している。
【図12】図12は、ナイセリア属の4つの菌株の蛋白質配列(配列番号:30)から確定された保存配列を表し、各菌株に特異的なアミノ酸残基の置換または挿入を示している。
【図13】図13は、ウサギにおける、組換え22 kDa蛋白質に対する免疫反応の時間的な変化を、交互ELISA力価で表したものである。ウサギには、プラスミドpN2202または対照用プラスミドpWKS30を有する大腸菌株JM109から調製した外膜を注射した。髄膜炎菌株608B(B:2a:P1.2)から採取した外膜調製物を被覆抗体として用いたELISAによって、特異的な液性反応の進行を解析した。
【図14】図14は、カニクイザル(Macaca fascicularis)における、組換え22 kDa蛋白質に対する免疫反応の時間的な変化を、交互ELISA力価で表したものである。2匹のサルを、それぞれ、一回の注射につき、100μg(R28)と200μg(I276)の、アフィニティー精製した22 kDa蛋白質で免疫した。対照に用いたサル(R65)は、同じ処理方法に従って得た、150μgの無関係な組換え蛋白質で免疫した。髄膜炎菌株608B(B:2a:P1.2)から採取した外膜調製物を被覆抗体として用いたELISAによって、特異的な液性反応の進行を解析した。
【図15】図15は、本発明に係る合成ペプチド(配列番号:2)と、髄膜炎菌株608B(B:2a:P1.2)の全長22 kDa蛋白質における、それぞれの合成ペプチドの位置を図示したものである。
【図16】図16は、髄膜炎菌の22 kDaの表面蛋白質をコードする遺伝子を有するプラスミドpNP2204のマップである。22 kDa、髄膜炎菌の22 kDa表面蛋白質遺伝子;AmpiR、アンピシリン抵抗性をコードする領域;ColE1、複製開始点;cI857、バクテリオファージλcI857温度感受性リプレッサー遺伝子;λPL、バクテリオファージλ転写プロモーター;T1、転写終結因子。転写の方向を矢印で示す。BglIIとBamHIが、22 kDa遺伝子をp629プラスミドに挿入するために用いられた制限酵素部位である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)の既知の菌株の50%以上に対して免疫学的に結合可能な、単離された抗原またはその断片。
【請求項2】
髄膜炎菌の既知の菌株の約99%に対して免疫学的に結合可能な、請求項1記載の単離された抗原またはその断片。
【請求項3】
免疫学的な結合性が、凝集アッセイ、ELISA法、RIA法、イムノブロッティング解析、ドット・エンザイム解析、表面結合解析、またはこれらの解析法を組み合わせた方法を用いて判定される、請求項1記載の単離された抗原またはその断片。
【請求項4】
蛋白質である、請求項1記載の単離された抗原またはその断片。
【請求項5】
約22キロダルトンの分子量を有する、請求項4記載の蛋白質。
【請求項6】
約18キロダルトンの分子量を有する、請求項4記載の蛋白質。
【請求項7】
図1(配列番号:2)、図8(配列番号:4)、図9(配列番号:6)および、図10(配列番号:8)の配列から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項5記載の蛋白質。
【請求項8】
図1(配列番号:2)のアミノ酸配列を有する、請求項5記載の蛋白質。
【請求項9】
実質的に純粋な形状の、請求項5記載の蛋白質。
【請求項10】
実質的に純粋な形状が、
a)髄膜炎菌バクテリアの培養物を分離し、
b)バクテリア培養物から外膜部分を分離し、および、
c)この外膜部分から該抗原を分離すること、という段階によって得られる、請求項9記載の蛋白質。
【請求項11】
段階(c)に、外膜部分をプロテイナーゼKで処理してた後蛋白質分画を行うという段階がさらに含まれる、請求項10記載の蛋白質。
【請求項12】
髄膜炎菌の22 kDaの表面蛋白質の少なくとも1つの抗原の少なくとも1つの部位をコードするDNA配列で、該配列が、
a)図1のDNA配列(配列番号:1)、
b)図8のDNA配列(配列番号:3)、
c)図9のDNA配列(配列番号:5)、
d)図10のDNA配列(配列番号:7)、
e)上記のDNA配列の相同配列または誘導配列、
f)上記のDNA配列のいずれかと縮重するDNA配列、および、
g)上記のDNA配列のいずれかの断片
からなる群より選択され、
該配列が、髄膜炎菌22 kDa表面蛋白質の免疫活性を示す産物をコードしている、DNA配列。
【請求項13】
髄膜炎菌の22 kDaの表面蛋白質の少なくとも1つの抗原の少なくとも1つの部位をコードするDNA配列で、該配列が、
a)図1のDNA配列(配列番号:1)、
b)上記DNA配列の相同配列または誘導配列、
c)上記DNA配列のいずれかと縮重するDNA配列、および、
e)上記DNA配列のいずれかの断片
からなる群より選択され、
該配列が、髄膜炎菌22 kDa表面蛋白質の免疫活性を示す産物をコードしている、DNA配列。
【請求項14】
相同配列が、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)のDNAから選択される、請求項12記載のDNA配列。
【請求項15】
相同配列が、ナイセリア・ラクタミカ(Neisseria lactamica)のDNAから選択される、請求項12記載のDNA配列。
【請求項16】
図1(配列番号:1)の式の143塩基目から667塩基目までのDNA配列。
【請求項17】
図1(配列番号:1)の式の200塩基目から667塩基目までのDNA配列。
【請求項18】
図8(配列番号:3)の式の116塩基目から643塩基目までのDNA配列。
【請求項19】
図8(配列番号:3)の式の173塩基目から643塩基目までのDNA配列。
【請求項20】
図9(配列番号:5)の式の208塩基目から732塩基目までのDNA配列。
【請求項21】
図9(配列番号:5)の式の265塩基目から732塩基目までのDNA配列。
【請求項22】
図10(配列番号:7)の式の241塩基目から765塩基目までのDNA配列。
【請求項23】
図10(配列番号:7)の式の298塩基目から765塩基目までのDNA配列。
【請求項24】
断片が、図15に示されているペプチドの一つ(配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:23、配列番号:24、配列番号:25、および配列番号:26)からなる群より選択される、請求項13記載のDNA配列の断片。
【請求項25】
図1(配列番号:1)の31番目のアミノ酸から55番目のアミノ酸までを含むDNA配列の断片。
【請求項26】
図1(配列番号:1)の51番目のアミノ酸から86番目のアミノ酸までを含むDNA配列の断片。
【請求項27】
図1(配列番号:1)の110番目のアミノ酸から140番目のアミノ酸までを含むDNA配列の断片。
【請求項28】
請求項13、16または17記載のDNA配列からなる群より選択されるDNA配列と、このDNA配列に機能的に結合された1個以上の発現調節配列とを含む、組換えDNA分子。
【請求項29】
請求項14、15記載のDNA配列または請求項18から27のいずれか一項に記載のDNA配列からなる群より選択されるDNA配列と、このDNA配列に機能的に結合された1個以上の発現調節配列とを含む、組換えDNA分子。
【請求項30】
発現調節配列が、発現誘導できるベクターである、請求項28記載の組換えDNA分子。
【請求項31】
発現調節配列が、発現誘導できるベクターである、請求項29記載の組換えDNA分子。
【請求項32】
ベクターが、熱、ラクトースの存在、および、IPTGの存在から選択される刺激によって誘導される、請求項30または31記載の組換えDNA分子。
【請求項33】
ベクターが、λPL、λPR、TAC、T7、T3、LACおよびTRPプロモーターから選択される、請求項32記載の組換えDNA分子。
【請求項34】
pNP2202、pNP2203およびpNP2204からなる群より選択されるプラスミド。
【請求項35】
請求項28記載の組換えDNA分子で形質転換された単細胞宿主。
【請求項36】
請求項29記載の組換えDNA分子で形質転換された単細胞宿主。
【請求項37】
宿主が、大腸菌JM109、大腸菌BL21(DE3)、大腸菌DH5αF'IQ、大腸菌W3110、大腸菌JM105、大腸菌BL21、大腸菌TOPP1、大腸菌TOPP2、および、大腸菌TOPP3からなる群より選択される、請求項35または36記載の単細胞宿主。
【請求項38】
宿主が、大腸菌JM109および大腸菌BL21(DE3)からなる群より選択される、請求項35または36記載の単細胞宿主。
【請求項39】
請求項35または36記載の単細胞宿主を培養することおよび該蛋白質を単離することによって得られる、実質的に純粋な形状の髄膜炎菌の22 kDa表面蛋白質。
【請求項40】
請求項13、16および17のいずれか一項に記載のDNA配列によってコードされるポリペプチド。
【請求項41】
請求項14、15および18から27のいずれか一項に記載のDNA配列によってコードされるポリペプチド。
【請求項42】
請求項35または36記載の単細胞宿主を培養する段階と、該DNA配列を単離する段階とを含む、DNA配列を作製するための方法。
【請求項43】
請求項35または36記載の単細胞宿主を培養する段階と、該ポリペプチドを単離する段階とを含む、ポリペプチドを作製するための方法。
【請求項44】
請求項43記載の方法によって得られる、実質的に純粋な形状のポリペプチド。
【請求項45】
a)髄膜炎菌バクテリアの培養物の分離、
b)バクテリア培養物からの外膜部分の分離、および、
c)この外膜部分からの抗原の分離、
を含む、請求項1記載の抗原を単離するための方法。
【請求項46】
段階(c)に、外膜部分をプロテイナーゼKで処理した後蛋白質分画を行うという段階がさらに含まれる、請求項45記載の方法。
【請求項47】
請求項1から5、8、13、16および17のいずれか一項に記載の1個以上の抗原またはその断片を含む薬学的成物。
【請求項48】
請求項40記載の1個以上の抗原またはその断片を含む、薬学的組成物。
【請求項49】
請求項41記載の1個以上の抗原またはその断片を含む、薬学的組成物。
【請求項50】
請求項6、7、9、12、14、15、および18から27のいずれか一項に記載の1個以上の抗原またはその断片を含む、薬学的組成物。
【請求項51】
ワクチンである、請求項49記載の薬学的組成物。
【請求項52】
ワクチンである、請求項50記載の薬学的組成物。
【請求項53】
薬学的に許容される一つ以上の賦形剤をさらに含む、請求項49記載の薬学的組成物。
【請求項54】
薬学的に許容される一つ以上の賦形剤をさらに含む、請求項50記載の薬学的組成物。
【請求項55】
請求項51または52記載のワクチンを薬学的有効量投与することを含む、患者の髄膜炎菌による感染を予防するための方法。
【請求項56】
ヒトにおいて髄膜炎菌感染を予防するための、髄膜炎菌22 kDa表面蛋白質またはその断片、相同体もしくは誘導体の、薬学的有効量の使用。
【請求項57】
ヒトにおいて淋菌感染を予防するための、髄膜炎菌22 kDa表面蛋白質またはその断片、相同体もしくは誘導体の、薬学的有効量の使用。
【請求項58】
ヒトにおいて髄膜炎菌感染を予防するためのワクチンの製造を目的とする、髄膜炎菌22 kDa表面蛋白質またはその断片、相同体もしくは誘導体の使用。
【請求項59】
ヒトにおいて淋菌感染を予防するためのワクチンの製造を目的とする、髄膜炎菌22 kDa表面蛋白質またはその断片、相同体もしくは誘導体の使用。
【請求項60】
髄膜炎菌の既知の菌株の50%以上に存在する約22 kDaの分子量を有する蛋白質に特異的に結合する抗体またはその断片。
【請求項61】
髄膜炎菌の既知の菌株の約99%に特異的に結合する、請求項60記載の抗体またはその断片。
【請求項62】
モノクローナル抗体またはその断片である、請求項60記載の抗体またはその断片。
【請求項63】
マウス由来である、請求項62記載のモノクローナル抗体またはその断片。
【請求項64】
IgGアイソタイプである、請求項63記載のモノクローナル抗体またはその断片。
【請求項65】
Me-1、Me-2、Me-3、Me-5、Me-6、またはMe-7である、請求項62記載のモノクローナル抗体またはその断片。
【請求項66】
Me-1またはMe-7モノクローナル抗体である、請求項62記載のモノクローナル抗体。
【請求項67】
a)髄膜炎菌の調製物を哺乳動物に導入すること、および、
b)抗体を含む哺乳動物から血清を分離すること、
を含む、請求項60記載の抗体を単離するための方法。
【請求項68】
a)髄膜炎菌の調製物を、哺乳動物の抗体産生細胞に導入すること、
b)ハイブリドーマ細胞を形成させるために、ミエローマ細胞と抗体産生細胞とを融合させること、および、
c)該ハイブリドーマ細胞から、モノクローナル抗体を単離すること、
を含む、請求項62記載のモノクローナル抗体を単離するための方法。
【請求項69】
請求項60〜66のいずれか一項に記載の抗体またはその断片を1つ以上含む薬学的組成物。
【請求項70】
ワクチンである、請求項69記載の薬学的組成物。
【請求項71】
薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項69記載の薬学的組成物。
【請求項72】
抗体がMe-1またはMe-7である、請求項69記載の薬学的組成物。
【請求項73】
請求項70記載のワクチンを薬学的有効量投与することを含む、髄膜炎菌に感染している患者または感染の疑いのある患者を治療するための方法。
【請求項74】
髄膜炎菌抗原を含む生物試料または含むと思われる生物試料において、髄膜炎菌抗原を検出するための、以下を含む方法:
a)患者から生物試料を分離すること、
b)請求項60記載の抗体またはその断片を、混合液を作るために生物試料とともにインキュベートすること、および、
c)髄膜炎菌抗原の存在を示す特異的な結合抗原または結合断片を、混合液中から検出すること。
【請求項75】
抗体がMe-1またはMe-7である、請求項72記載の方法。
【請求項76】
髄膜炎菌抗体を含む生物試料または含むと思われる生物試料において、髄膜炎菌抗原に特異的な抗体を検出するための、以下を含む方法:
a)患者から生物試料を分離すること、
b)請求項1記載の抗原またはその断片を、混合液を作るため生物試料とともにインキュベートすること、および、
c)髄膜炎菌抗原に特異的な抗体の存在を示す特異的な結合抗原または結合断片を、混合液中から検出すること。
【請求項77】
抗原が髄膜炎菌の22 kDa表面蛋白質である、請求項76記載の方法。
【請求項78】
病原性のナイセリア菌を含む生物試料または含むと思われる生物試料において、該菌を検出するための、以下を含む方法:
a)患者から生物試料を分離すること、
b)請求項13記載のDNA配列を有するDNAプローブを、混合液を作るため生物試料とともにインキュベートすること、および、
c)ナイセリア菌が存在することを示す特異的な結合DNAプローブを、混合液中から検出すること。
【請求項79】
病原性のナイセリア菌を含む生物試料または含むと思われる生物試料において、該菌を検出するための、以下を含む方法:
a)患者から生物試料を分離すること、
b)請求項12記載のDNA配列を有するDNAプローブを、混合液を作るため生物試料とともにインキュベートすること、および、
c)ナイセリア菌が存在することを示す特異的な結合DNAプローブを、混合液中から検出すること。
【請求項80】
DNAプローブが、図1(配列番号:1)の525塩基対配列を有する、請求項78記載の方法。
【請求項81】
DNAプローブが、図1(配列番号:1)の525塩基対配列の部分配列を有する、請求項78記載の方法。
【請求項82】
DNAプローブが、図8(配列番号:3)の528塩基対配列の全部または一部を有する、請求項79記載の方法。
【請求項83】
DNAプローブが、図9(配列番号:5)の525塩基対配列の全部または一部を有する、請求項79記載の方法。
【請求項84】
DNAプローブが、図10(配列番号:7)の525塩基対配列の一部または全部を有する、請求項79記載の方法。
【請求項85】
DNAプローブが、図1(配列番号:1)の髄膜炎菌の22 kDa表面蛋白質の、連続した少なくとも約6ヌクレオチドに相補的な配列を有するオリゴマーである、請求項78記載の方法。
【請求項86】
DNAプローブが、図8(配列番号:3)、図9(配列番号:5)、および図10(配列番号:7)の中から選択される配列を有する髄膜炎菌の22 kDa表面蛋白質の、連続した少なくとも約6ヌクレオチドに相補的な配列を有するオリゴマーである、請求項79記載の方法。
【請求項87】
a)ポリメラーゼ連鎖反応法のためのプライマーであり、標的領域に隣接した位置にあるオリゴマーのセットを提供すること、および、
b)ポリメラーゼ連鎖反応法によって、標的領域を増幅すること、をさらに含む、請求項85または86記載の方法。
【請求項88】
以下を含む、患者から髄膜炎菌を検出するための方法:
a)請求項60記載の抗体またはその断片を、検出可能な標識で標識すること、
b)標識した抗体または標識した断片を患者に投与すること、および、
c)髄膜炎菌が存在することを示す特異的結合標識抗体または標識断片を、患者から検出すること。
【請求項89】
ヒトにおける髄膜炎菌感染の予防を目的とする、髄膜炎菌22 kDa表面蛋白質に特異的な抗体の薬学的有効量の使用。
【請求項90】
ヒトにおける髄膜炎菌感染を検出または診断するためのキットの製造を目的とする、髄膜炎菌22 kDa表面蛋白質またはその断片、相同体もしくは誘導体の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−159583(P2007−159583A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−335179(P2006−335179)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【分割の表示】特願2002−269639(P2002−269639)の分割
【原出願日】平成8年3月15日(1996.3.15)
【出願人】(592107462)シャイアー バイオケム インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】