説明

高い出力性能とコンパクトな構造を有する広帯域高線形性LED増幅器

本発明は、発光ダイオードを駆動制御する増幅回路に関する。この増幅回路は、約3オームの小さい出力インピーダンスと、200KHzの下方境界周波数と例えば5MHzの上方境界周波数とを備えた広い帯域幅と、例えば数100mAの出力電流振幅とを有する。この増幅回路は、直流電流供給部(6)によって発光ダイオードを駆動制御するドライバー回路(2)を駆動制御する入力段を有している、という特徴を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオードを駆動制御する増幅回路に関する。
【0002】
室内照明は、変調によって、高いデータレートを伝送するために使用されるべきである。実験では、LED-モジュール-Osram OSTAR E3B等の高性能発光ダイオード(LED)照明システムが適切であることが判明している。
【0003】
LEDモジュール OSTAR E3B用に、LEDモジュールの低い入力インピーダンスにもかかわらず、出力性能、帯域幅および線形性に対する非常に高い要求を満たす、高性能の増幅器が開発される必要があった。この他に、増幅器を含んだLEDモジュールを室内照明内に組み込むことを可能にするために、小型の構造も重要な役割を担う。
【0004】
発光ダイオードのインピーダンスは、数100KHz〜数10MHzの全周波数領域にわたって、非常に小さい。50オームの出力インピーダンスを有する従来の高周波増幅器がLEDの駆動制御に使用される場合には、その出力インピーダンスは全周波数領域にわたって、インピーダンス変換器によって、LEDの非常に小さい入力インピーダンスに整合されなければならない。トランス形式のインピーダンス変換器は高価、狭帯域であり、かつ非常に大きい構造サイズを有する。二桁のMHz領域用の特別に入手される演算増幅器は、約5オームの比較的低い出力インピーダンスを有する。その代わり、周波数領域と線形性は十分なものではない。
【0005】
本発明の課題は、約3オームの小さい出力インピーダンスと、200KHzの下方境界周波数と50MHzの上方境界周波数とを備えた広い帯域幅と数100mAの出力電流振幅とを有する、発光ダイオードを駆動制御する増幅回路を提供することである。さらに、増幅回路と発光ダイオードの小型の構造が実現されるべきである。増幅回路の入力インピーダンスはデジタルスイッチング回路に整合されるべきである。
【0006】
この課題は、独立請求項に記載されている増幅回路によって解決される。
【0007】
第1のアスペクトでは、発光ダイオードを駆動制御する増幅回路が提供される。ここでこの増幅回路は、ドライバー回路を駆動制御する入力段を有している。このドライバー回路は、直流電流供給部を用いて発光ダイオードを駆動制御する。ドライバー回路は、第1のトランジスタと第2のトランジスタを有する。これらのトランジスタは互いに相補関係にある。ここでこれらのトランジスタのエミッタは電気的に相互に接続されており、第1のトランジスタのベースとコレクタとの間に第1の電流源が電気的に接続されており、第2のトランジスタのベースとコレクタとの間に第2の電流源が電気的に接続されており、これらの2つのトランジスタのベースの間には、電圧調整回路が電気的に接続されている。
【0008】
LEDを駆動制御するために、増幅回路は以下の特徴を有している:
1.この増幅器は小さい出力インピーダンスを有している。既存のOSTAR発光ダイオードに必要な出力インピーダンスは約3オームである。
2.この増幅器は広い帯域幅を有している。発光ダイオードを駆動制御するために、200KHzの下方境界周波数と50MHzの上方境界周波数とが必要である。
3.この増幅回路は十分に高い出力性能を供給する。既存の発光ダイオードを変調することが可能であるために、出力電流の振幅は数100mAでなければならない。
4.この増幅回路の入力インピーダンスは大きいので、この増幅回路は、従来設計のデジタルスイッチング回路によって直接的に駆動制御可能である。
5.この増幅回路のサイズは小さい。増幅回路とLEDとが適切に分離している場合には、変調信号はケーブルによって伝送されなければならない。しかしケーブルは、LEDの入力インピーダンスよりも格段に大きいインピーダンスを有しているので、これによって、LEDと増幅回路との間にマッチングエラーが生じる恐れがある。これによって、システムの周波数特性が平坦ではなくなってしまう。従って、増幅回路とLEDとがきちんと1つのユニットで構成されることが望ましい。天井覆いの上などの、光源取り付け位置を考慮する場合、このシステムが小さくなくてはならないことを意味する。
【0009】
本発明の増幅回路の特徴として、優れた広帯域性、線形性、出力性能および大きさを兼ね備えている。
【0010】
別の有利な実施形態は従属請求項に記載されている。
【0011】
有利な構成では、電圧調整回路が、2つのトランジスタのベース端子の間の電圧を、2つのトランジスタの温度に依存して調整し、第1のトランジスタと第2のトランジスタのコレクタ電流が一定に保たれる。従って電圧調整回路は、2つのトランジスタの温度に依存するコレクタ電流を一定に調整する。温度は例えば、温度に依存する抵抗またはダイオードによって検出される。
【0012】
別の有利な構成では、直流電流供給部は、第1の電気端子を使って2つのトランジスタのエミッタに電気的に接続されている結合コンデンサを有している。この結合コンデンサの第2の電気端子は、電気的なコイルおよび第3の電流源を介して、アースと電気的に接続される。ここで発光ダイオードは順方向で、コイルに対して、および、発光ダイオードに閉回路電流を供給する第3の電流源に対して並列に、電気的に接続されている。
【0013】
別の有利な構成では、入力段は、入力信号の電圧を増幅する増幅器、殊に演算増幅器である。この演算増幅器はインピーダンスマッチングに用いられ、その出力側は電気的に、電圧調整回路に接続される。
【0014】
別の有利な構成では、入力段は、集積回路として構成された増幅器である。これは、ドライバー回路よりも広い帯域幅を有している。
【0015】
別の有利な構成では、第1のトランジスタのコレクタとアースとの間に第1の電圧源が電気的に接続されており、第2のトランジスタのコレクタとアースの間に第2の電圧源が電気的に接続されており、それぞれ供給電圧を供給する。
【0016】
別の有利な構成では第1のトランジスタはnpnトランジスタであり、第1の電流源の正極は電気的に、第1のトランジスタのベースに接続されている。
【0017】
別の有利な構成では、第1のトランジスタはpnpトランジスタであり、第2の電流源の負極は電気的に、第2のトランジスタのベースに接続されている。
【0018】
別の有利な構成では、第3の電流源の負極は電気的にアースに接続されている。
【0019】
別の有利な構成では、第1の電圧源の−極は電気的にアースに接続されており、第1の電圧源の負極は、第1のトランジスタのコレクタに電気的に接続されている。
【0020】
別の有利な構成では、第2の電圧源の−極は電気的にアースに接続されており、第2の電圧源の−極は、第2のトランジスタのコレクタに電気的に接続されている。
【0021】
別の有利な構成では、2つのトランジスタは相補的な電界効果トランジスタであり、ここでソースはエミッタであり、ゲートはベースであり、ドレインはコレクタであり得る。
【0022】
本発明を、図面に関連した実施例に基づきより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による増幅回路の実施例
【実施例】
【0024】
図1は、本発明による増幅回路の実施例を示している。本発明の課題に即した特徴は以下のように実現される。入力段は、高抵抗入力側を備えた増幅器1であり、入力信号の電圧を増幅する。この増幅器1は、後続のドライバー回路2を駆動制御することができる。ドライバー回路2は、入力段と、直流電流供給部を備えた発光ダイオードとの間に位置する。ドライバー回路2は、比較的大きい入力抵抗を有している。従って入力段として同じように、組み込まれた増幅器1を使用することができる。これは必然的に、ドライバー回路2よりも若干広い帯域幅を有している。ドライバー回路2は、2つの相補的なトランジスタ3、2つの電流源4および電圧調整回路5から成る。この電圧調整回路5は、2つのトランジスタ3の間の2つのベース端子の間の電圧を、トランジスタ温度に依存して調整する。発光ダイオード用の直流電流供給部6は、結合コンデンサCdsとコイルLsとから成る。発光ダイオードLEDは、この直流電流供給部の直後に位置し、これによって、ドライバー回路2とLEDとの間の総インダクタンスが可及的に小さくなる。このインダクタンスが大きければ、周波数とともに増大する電圧降下がこれを介して生じるであろう。これは、上方の境界周波数の低減を意味するであろう。直流電流供給部6によって、ドライバー回路(2)の増幅器出力側からの交流電流に、コイルLsを通る直流電流が加えられる。
【0025】
本発明の増幅回路は同様に相補関係にある電界効果トランジスタによっても構成される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ダイオードを駆動制御する増幅回路であって、
当該増幅回路は、ドライバー回路(2)を駆動制御する入力段を有しており、
当該ドライバー回路は、直流電流供給部(6)によって前記発光ダイオードを駆動制御する、増幅回路において、
前記ドライバー回路(2)は、第1のトランジスタ(3)と第2のトランジスタ(3)を有しており、当該2つのトランジスタは相補関係にあり、
当該2つのトランジスタのエミッタは相互に電気的に接続されており、前記第1のトランジスタ(3)のベースとコレクタとの間に第1の電流源(4)が電気的に接続されており、前記第2のトランジスタ(3)のベースとコレクタとの間に第2の電流源(4)が電気的に接続されており、前記2つのトランジスタ(3)のベースの間に、電圧調整回路(5)が電気的に接続されている、
ことを特徴とする増幅回路。
【請求項2】
前記電圧調整回路(5)は、前記2つのトランジスタ(3)のベース端子の間の電圧を、前記2つのトランジスタ(3)の温度に依存して調整し、前記第1のトランジスタ(3)と第2のトランジスタ(3)のコレクタ電流は一定に保たれる、請求項1記載の増幅回路。
【請求項3】
前記直流電流供給部(6)は、前記2つのトランジスタ(3)のエミッタに第1の電気端子によって電気的に接続されている結合コンデンサ(Cds)を有しており、当該結合コンデンサの第2の電気端子は電気コイル(Ls)と第3の電流源とを介してアースと電気的に接続されており、
前記発光ダイオードは順方向で、コイル(Ls)に対して、および、前記発光ダイオードに閉回路電流を供給する前記第3の電流源に対して、電気的に並列に接続されている、請求項1または2記載の増幅回路。
【請求項4】
前記入力段は、入力信号の電圧を増幅する増幅器(1)、殊に演算増幅器であり、当該演算増幅器はインピーダンスマッチングに用いられ、当該演算増幅器の出力側は、前記電圧調整回路(5)に電気的に接続されている、請求項1〜3いずれか1項記載の増幅回路。
【請求項5】
前記入力段は、集積回路として形成された増幅器(1)であり、当該増幅器は、前記ドライバー回路(2)よりも広い帯域幅を有している、請求項4記載の増幅回路。
【請求項6】
供給電圧を供給するために、前記第1のトランジスタ(3)のコレクタとアースとの間に第1の電圧源(7)が電気的に接続されており、前記第2のトランジスタ(3)のコレクタとアースとの間に第2の電圧源(7)が電気的に接続されている、請求項1〜5いずれか1項記載の増幅回路。
【請求項7】
前記第1のトランジスタ(3)はnpnトランジスタであり、前記第1の電流源(4)の正極は電気的に、前記第1のトランジスタ(3)のベースに接続されている、請求項1記載の増幅回路。
【請求項8】
前記第2のトランジスタ(3)はpnpトランジスタであり、前記第2の電流源(4)の負極は電気的に、前記第2のトランジスタ(3)のベースに接続されている、請求項1または7記載の増幅回路。
【請求項9】
前記第3の電流源(4)の負極は電気的にアースに接続されている、請求項3記載の増幅回路。
【請求項10】
前記第1の電圧源(7)の負極は電気的にアースに接続されており、前記第1の電圧源(7)の正極は、前記第1のトランジスタ(3)のコレクタに電気的に接続されている、請求項6記載の増幅回路。
【請求項11】
前記第2の電圧源(7)の正極は電気的にアースに接続されており、前記第2の電圧源(7)の負極は、前記第2のトランジスタ(3)のコレクタに電気的に接続されている、請求項6または10記載の増幅回路。
【請求項12】
前記2つのトランジスタは相補関係にある電界効果トランジスタであり、ソースはエミッタであり、ゲートはベースであり、ドレインはコレクタである、請求項2から11までのいずれか1項記載の増幅回路。

【図1】
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【公表番号】特表2013−512604(P2013−512604A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540341(P2012−540341)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065731
【国際公開番号】WO2011/064052
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】