説明

高い結晶性を有する部分芳香族コポリアミド

本発明は、A)a1)テレフタル酸から誘導された構成単位30〜44mol%、a2)イソフタル酸から誘導された構成単位6〜20mol%、a3)ヘキサメチレンジアミンから誘導された構成単位42〜49.5mol%、a4)炭素原子6〜30個を有する芳香族ジアミンから誘導された構成単位0.5〜8mol%からなるコポリアミド40〜100質量%、その際、成分a1)〜a4)のモル百分率は、合わせて100%であり、かつB)繊維状又は粒状の充填剤0〜50質量%、C)弾性重合体0〜30質量%、D)他の添加剤及び加工助剤0〜30質量%を含有し、その際、成分A)〜D)の質量百分率は、合わせて100%である、半芳香族の半結晶質熱可塑性ポリアミドの成形材料に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
A)a1)テレフタル酸から誘導した構成単位30〜44mol%、
a2)イソフタル酸から誘導した構成単位6〜20mol%、
a3)ヘキサメチレンジアミンから誘導した構成単位42〜49.5mol%、
a4)炭素原子6〜30個を有する芳香族ジアミンから誘導した構成単位0.5〜8mol%、
からなるコポリアミド40〜100質量%、
その際、成分a1)〜a4)のモル百分率は、合わせて100%であり、かつ
B)繊維状又は粒状の充填剤0〜50質量%、
C)弾性重合体0〜30質量%、
D)他の添加剤及び加工助剤0〜30質量%、
を含有し、その際、成分A)〜D)の質量百分率は、合わせて100%である、半芳香族の半結晶質熱可塑性ポリアミドの成形材料に関する。
【0002】
本発明は、さらに、繊維の、箔の、又は成形物の製造のための前記成形材料の使用に、及びまた本発明の成形材料から得ることができる成形物に関する。
【0003】
テレフタル酸/イソフタル酸(IPS/TPS)及びヘキサメチレンジアミン(HMD)、並びにm−又はp−キシリレンジアミン(MXD/PXD)からなる透明な非結晶質ポリアミドは、US5,028,462号及びGB−766927号から公知である。
【0004】
JP−A08/3312号は、非常に難しい方法で、TPSの非常に高い割合を開示している。
【0005】
それらの明細書の技術教示によると、公知の非結晶質コポリアミドは、透明であり、かつ非常に小さな結晶部分のみを呈する。
【0006】
これは、成形物の薬品に対する抵抗又は透過性が必要条件である適用のために有利であるが、非結晶質ポリアミドが、適用、例えば高い周囲温度での耐久性を要求するエンジンコンパートメントの区分などの用途において欠点を呈する。種々の他の構造部分を有するテレフタル/イソフタル酸構成単位からなる半芳香族コポリアミドは、とりわけ、EP−A121984号、EP−A291096号、US4,607,073号、EP−A217960号、及びEP−A299444号から公知である。
【0007】
ヘキサメチレンジアミン/テレフタル酸の高い割合は、結晶化度を改良し、かつガラス転移温度を極めて増加するが、しかしながら、それらの構成単位の含量の増加は、加工性(主に320℃、又は350℃より高い、充填されたポリアミドのための温度)及びこのタイプのポリアミドの調製(R.D.Chapman et al.、Textile Research Journal 1981、564頁を参照)を損なう。
【0008】
本発明の課題は、十分に高い融点を有する高い結晶化度及び高いガラス転移温度を有する、半結晶質の半芳香族コポリアミドの成形材料を提供し、コポリアミドのよりよい加工性を与えることであった。同時に、その意図は、該コポリアミドが、よりよい機械的特性(特に多軸の耐衝撃性)及び繊維強化成形物の表面品質を呈することである。
【0009】
従って、冒頭に定義された成形材料は、見出されている。
【0010】
好ましい実施態様は、従属形式請求項において与えられる。
【0011】
本発明の半芳香族の半結晶質熱可塑性ポリアミドの成形材料は、
成分A)として、
a1)テレフタル酸から誘導した構成単位30〜44mol%、有利には32〜40mol%、及び特に32〜38mol%、
a2)イソフタル酸から誘導した構成単位6〜20mol%、有利には10〜18mol%、及び特に12〜18mol%、
a3)ヘキサメチレンジアミンから誘導した構成単位42〜49.5mol%、有利には45〜48.5mol%、及び特に46.5〜48mol%、
a4)炭素原子6〜30個、有利には6〜29個、及び特に6〜17個を有する芳香族ジアミンから誘導した構成単位0.5〜8mol%、有利には1.5〜5mol%、及び特に2〜3.5mol%、
からなるコポリアミド40〜100質量%、有利には50〜100質量%、及び特に70〜100質量%を含有し、その際、成分a1)〜a4)のモル百分率は、合わせて100%である。
【0012】
ジアミン構成単位a3)及びa4)は、有利には、等分子的にジカルボン酸構成単位a1)及びa2)と反応させる。
【0013】
好適なモノマーa4)は、有利には、式
【化1】

[式中、R1は、NH2又はNHR3であり、
2は、R1に対してm−位、o−位、又はp−位にあり、かつNH2又はNHR3であり、
その際、R3は、炭素原子1〜6個、有利には炭素原子1〜4個を有するアルキル基である]で示される環状ジアミンである。
【0014】
特に好ましいジアミンは、p−及び/又はm−キシリレンジアミン、もしくはそれらの混合物である。
【0015】
挙げられる他のモノマーa4)は、o−キシリレンジアミン及びアルキル置換されたキシリレンジアミンである。
【0016】
半芳香族コポリアミドA)は、前記で記載された構成単位a1)〜a4)と共に、A)に対して、4質量%まで、有利には3.5質量%までの他のポリアミド形成モノマーa5)を含有することができ、その際、該モノマーは、他のポリアミドから公知である。
【0017】
芳香族ジカルボン酸a5)は、炭素原子8〜16個を有する。好適な芳香族ジカルボン酸の例は、置換されたテレフタル酸及びイソフタル酸、例えば3−tert−ブチルイソフタル酸、多核性ジカルボン酸、例えば4,4’−及び3,3’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−及び3,3’−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−及び3,3’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、1,4−又は2,6−ナフタレンジカルボン酸、並びにフェノキシテレフタル酸である。
【0018】
他のポリアミド形成モノマーa5)は、炭素原子4〜16個を有するジカルボン酸から、及び炭素原子4〜16個を有する脂肪族ジアミンから、或いは、炭素原子7〜12個を有するアミノカルボン酸又は相応するラクタムから誘導することができる。それらのタイプのわずかな好適なモノマーは、脂肪族ジカルボン酸の代表としてスベリン酸、アゼライン酸又はセバシン酸、ジアミンの代表として1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン又はピペラジン、並びにラクタムもしくはアミノカルボン酸の代表としてカプロラクタム、カプリロラクタム、エナントラクタム、アミノウンデカン酸及びラウロラクタムを本明細書で挙げることができる。
【0019】
特に利点を証明されている他の半芳香族コポリアミドは、そのトリアミン含有率が0.5質量%未満、有利には0.3質量%未満であるものである。
【0020】
大抵の公知の方法(US−A 4 603 166号を参照)によって製造された半芳香族コポリアミドのトリアミン含有率は、0.5質量%より高く、かつこれは、生成物の品質の低下、及び連続製造方法における問題を導く。挙げられてよく、かつ特にそれらの問題を引き起こすトリアミンは、ジヘキサメチレントリアミンであり、それは製造方法において使用されるヘキサメチレンジアミンから形成する。
【0021】
低いトリアミン含有率を有するコポリアミドは、より高いトリアミン含有率を有する同一の構成の生成物と比較した場合に、低い溶融粘度を有するが、しかし同一の溶液粘度を有する。その結果は、加工性においてだけでなく、生成物の品質におけるかなりの改良である。
【0022】
半芳香族コポリアミドの融点は、290℃〜340℃、有利には292℃〜330℃であり、かつこの融点は、通常、一般に120℃より高い、特に130℃より高い(乾燥状態で)、高いガラス転移温度と関連がある。
【0023】
本発明によると、半芳香族コポリアミドは、一般に、30%より多い、有利には35%より多い、及び特に40%より多い結晶化度を特徴とする。
【0024】
該結晶化度は、コポリアミドにおける結晶断片の割合の尺度であり、かつX線回折によって、又は間接的にΔHcrist.を測定することによって決定される。
【0025】
もちろん、半芳香族コポリアミドの混合物をあらゆる望ましい比において使用することも可能である。
【0026】
本発明のコポリアミドの好適な製造方法は、当業者に公知である。
【0027】
好ましい製造方法は、回分法である。これについて、モノマー水溶液を、圧力が10〜50bar、特に15〜40barに到達したままで、オートクレーブ中で、0.5〜3時間、280〜340℃に加熱し、そしてこの圧力を、過剰な水蒸気を放出することによって2時間まで、できるだけ安定して保つ。そしてオートクレーブ中の圧力を、一定温度で、0.5〜2時間の範囲内で、1〜5barの最終的な圧力に達するまで、放出する。そしてポリマー溶融物を、排出し、冷却し、かつ造粒する。
【0028】
他の方法は、EP−A 129195号及び129196号で記載されている方法に基づく。
【0029】
前記の方法によって、モノマーa1)〜a4)と、適宜a5)のモノマー含有率30〜70質量%、有利には40〜65質量%を有するモノマー水溶液を、高圧下(1〜10bar)で、同時に水を蒸発させ、かつプレポリマーを形成させつつ、60s未満の範囲内で、280〜330℃の温度まで加熱し、そしてプレポリマー及び蒸気を連続して分離し、該蒸気を精留し、そして連行させたジアミンを戻す。最終的にそのプレポリマーを、縮重合域に通過し、そしてゲージ圧力1〜10barで、280〜330℃で、5〜30分の滞留時間で縮重合する。もちろん、反応器中の温度は、製造されたプレポリマーを溶融するためのそれぞれの水蒸気圧で要求された温度より高い。
【0030】
前記の短い滞留時間は、実質的に、トリアミンの形成を妨げる。
【0031】
記載された方法で得られ、かつ一般に、25℃で96%の濃度の硫酸中の溶液の0.5質量%の濃度から測定された粘度数40〜70ml/g、有利には40〜60ml/gを有するポリアミドプレポリマーは、連続して縮合域から取り出される。
【0032】
1つの好ましい操作方法によると、得られたポリアミドプレポリマーを、溶融物として排出域を通って排出し、そして同時に、溶融物中に存在する残留の水を除去する。好適な排出域の例は、ベント式押出機である。そして水を除去した溶融物を、押出物に注型し、かつ造粒してよい。
【0033】
特に好ましい一実施態様において、成分B)と適宜、C)及び/又はD)を、その物質がベント式押出機を出る前に、成分A)のプレポリマーに添加することも可能である。この場合には、該ベント式押出機は、通常、好適な混合エレメント、例えば混練ブロックを有する。ここでさらに、これを、続いて押出、冷却、及び造粒してよい。
【0034】
それらのペレットは、不活性ガス下での固相中で、連続して又は回分式で、それらの融点未満で、例えば170〜240℃で、所望の粘度に縮合される。回分式の固相縮合の使用に関しては、例えば、回転乾燥機で製造されてよい。連続的な固相縮合に関して、熱い不活性ガス流を通す調整管が使用されてよい。使用される不活性ガスが、窒素又は、特に過熱蒸気、有利には塔の頂部で製造された蒸気を含有する、連続的な固相縮合が好ましい。
【0035】
固相中での後縮合の後、又は前記の他の製造方法の後の粘度数は、一般に、25℃で96%の濃度の硫酸中の0.5質量%の濃度の溶液から測定される100〜500ml/g、有利には110〜200ml/gである。
【0036】
本発明のコポリアミドは、他の構成成分として、繊維状もしくは粒状の充填剤(成分(B))、又はそれらの混合物0〜50質量%、有利には35質量%まで、特に15〜35質量%を含有しうる。
【0037】
好ましい繊維強化材は、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカ、アラミド繊維、及び特に有利にはガラス繊維である。ガラス繊維が使用される場合に、それは、熱可塑性ポリアミド(A)との適合性を改良するために、カップリング剤及びサイズ剤を備えていてよい。使用されるガラス繊維の直径は、一般に、6〜20μmの範囲内である。
【0038】
取り込まれるガラス繊維は、短いガラス繊維の形状をとるか、或いは連続フィラメントの束(粗紡)の形状をとるかのどちらかであってよい。完成射出成形品におけるガラス繊維の平均の長さは、有利には0.08〜0.5mmの範囲内である。
【0039】
好適な粒状の充填剤は、非結晶形質シリカ、炭酸マグネシウム(チョーク)、カオリン(特に焼成カオリン)、粉末石英、雲母、タルク、長石、及び特にケイ酸カルシウム、例えば珪灰石である。
【0040】
充填剤の好適な組合せの例は、ガラス繊維20質量%と珪灰石15質量%、及びガラス繊維15質量%と珪灰石15質量%である。
【0041】
他の添加剤C)の例は、30質量%まで、有利には1〜40質量%、特に10〜15質量%の量の弾性重合体(しばしば強化剤、エラストマー又はゴムとも呼ばれる)である。
【0042】
有利には、少なくとも2つの次のモノマー:エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブテン、イソプレン、クロロプレン、ビニルアセテート、スチレン、アクリロニトリル、並びにアルコール成分中で炭素原子1〜18個を有するアクリレート及び/又はメタクリレートからなる、非常に一般的なコポリマーがある。
【0043】
このタイプのポリマーは、例えば、Houben−Weyl、Methoden der organischen Chemie、14/1巻(Georg−Thieme−Verlag、Stuttgart、1961)、392〜406頁において、及びC.B.Bucknallによる研究論文、"Toughened Plastics"(Applied Science Publishers、London、1977)において記載されている。
【0044】
前記エラストマーのいくつかの好ましいタイプを、以下に記載する。
【0045】
好ましいエラストマーは、エチレン−プロピレン(EPM)及びエチレン−プロピレン−ジエン(EPDM)ゴムとして公知である。
【0046】
一般に、EPMゴムは、残存の二重結合を殆ど有さないのに対して、EPDMゴムは、炭素原子100個につき二重結合1〜20個を有してよい。
【0047】
EPDMゴムのためのジエンモノマーの挙げられる例は、共役ジエン、例えばイソプレン及びブタジエン、炭素原子5〜25個を有する非共役ジエン、例えば1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン及び1,4−オクタジエン、環状ジエン、例えばシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン及びジシクロペンタジエン、並びにアルキルノルボルネン、例えば5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ブチリデン−2−ノルボルネン、2−メタリル−5−ノルボルネン及び2−イソプロペニル−5−ノルボルネン、並びにトリシクロジエン、例えば3−メチル−トリシクロ(5.2.1.0.2.6)−3,8−デカジエン、並びにそれらの混合物である。1,5−ヘキサジエン、5−エチリデンノルボルネン及びジシクロペンタジエンが好ましい。前記のEPDMゴムのジエン含有率は、ゴムの全質量に対して、有利には0.5〜50質量%、特に1〜8質量%である。
【0048】
EPM及びEPDMゴムは、有利には、反応性カルボン酸で、又はそれらの誘導体でグラフトされてもよい。それらの例は、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの誘導体、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、並びに無水マレイン酸である。
【0049】
アクリル酸及び/又はメタクリル酸を有し、並びに/又はそれら酸のエステルを有するエチレンのコポリマーは、好ましいゴムの他の群である。該ゴムは、ジカルボン酸、例えばマレイン酸及びフマル酸、又はそれら酸の誘導体、例えばエステル及び無水物、並びに/又はエポキシ基を含有するモノマーを含有してもよい。ジカルボン酸誘導体を含有し、かつ/又はエポキシ基を含有するそれらのモノマーは、有利には、モノマー混合物に、ジカルボン酸基及び/又はエポキシ基を含有し、かつ一般式I、II、III又はIV:
【化2】

[式中、R1〜R9は、水素基、又は炭素原子1〜6個を有するアルキル基であり、及びmは、0〜20の整数であり、gは、0〜10の整数であり、かつpは、0〜5の整数である]を有するモノマーを添加することによって、ゴムに取り込まれる。
【0050】
1〜R9は、有利には、水素であり、その際、mは、0又は1であり、かつgは、1である。相応の化合物は、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、アリルグリシジルエーテル及びビニルグリシジルエーテルである。
【0051】
式I、II及びIVの好ましい化合物は、マレイン酸、無水マレイン酸、並びにエポキシ基を含有する(メタ)アクリレート、例えばグリシジルアクリレート及びグリシジルメタクリレート、並びに第三級アルコールを有するエステル、例えばtert−ブチルアクリレートである。後者は遊離カルボキシ基を有さないが、それらの性質は遊離酸の性質に近く、かつ従ってそれらは、潜在性のカルボキシ基を有するモノマーと呼ばれる。
【0052】
コポリマーは、有利には、エチレン50〜98質量%、エポキシ基及び/又はメタクリル酸を含有するモノマー並びに/又は無水物基を含有するモノマーの0.1〜20質量%からなり、その際、残量は、(メタ)アクリレートである。
【0053】
エチレン50〜98.9質量%、特に55〜95質量%、
グリシジルアクリレート及び/又はグリシジルメタクリレート、(メタ)アクリル酸、並びに/又は無水マレイン酸0.1〜40質量%、特に0.3〜20質量%、かつ
n−ブチルアクリレート及び/又は2−エチルヘキシルアクリレート1〜45質量%、特に5〜40質量%のコポリマーが、特に好ましい。
【0054】
他の好ましい(メタ)アクリレートは、メチル、エチル、プロピル、イソブチル及びtert−ブチルエステルである。
【0055】
それらに加えて、使用されてよいコモノマーは、ビニルエステル及びビニルエーテルである。
【0056】
前記に記載されているエチレンコポリマーは、それ自体公知の方法によって、有利には、高圧及び高温でのランダム共重合によって製造されてよい。適切な方法は、よく知られている。
【0057】
他の好適なエラストマーは、エマルションポリマーであり、その製造は、例えば、Blackleyによる研究論文"Emulsion Polymerization"中で記載されている。使用されてよい乳化剤及び触媒は、それ自体公知である。
【0058】
原則として、均一的に構築されたエラストマー、或いは殻構造を有するエラストマーを使用することができる。殻タイプの構造は、個々のモノマーの添加の順序によって決定される。ポリマーの形態は、この添加の順序によっても影響される。
【0059】
単なる例として、エラストマーのゴム断片の製造のための、本明細書で挙げられるモノマーは、メタクリレート、ブタジエン及びイソプレンに対応する、アクリレート、例えばn−ブチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレート、並びにそれらの混合物である。それらのモノマーは、他のモノマー、例えばスチレン、アクリロニトリル、ビニルエーテルで、及び他のアクリレート又はメタクリレート、例えばメチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレートもしくはプロピルアクリレートで共重合されてよい。
【0060】
エラストマーの軟質の又はゴムの相(0℃未満のガラス転移温度を有する)は、中核、外被又は中間の殻(2より多くの殻を有するエラストマーの構造の場合において)であってよい。1つより多くの殻を有するエラストマーは、ゴム相からなる1つより多くの殻を有してもよい。
【0061】
1つ以上の硬質成分(20℃より高いガラス転移温度を有する)が含まれる場合に、ゴム相に加えて、エラストマーの構造において、一般に、重合によって、主なモノマー、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、又はアクリレートもしくはメタクリレート、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレートもしくはメチルメタクリレートとして製造される。それらに加えて、他のコモノマーの比較的小さい割合を使用することが可能でもある。
【0062】
有利には、いくつかの場合において、それらの表面で反応性基を有するエマルションポリマーを使用することが証明されてきた。このタイプの基の例は、エポキシ基、カルボキシ基、潜在性カルボキシ基、アミノ基及びアミド基、並びに一般式
【化3】

[式中、置換基は、次のように定義されてよい:
10は、水素、又はC1〜C4のアルキル基であり、
11は、水素、又はC1〜C8のアルキル基もしくはアリール基、特にフェニルであり、
12は、水素、C1〜C10のアルキル基、C6〜C12のアリール基、又は−OR13であり、
13は、適切な場合に、O−もしくはN−を含有する基による置換を有する、C1〜C8のアルキル基又はC6〜C12のアリール基であり、
Xは、化学結合、又はC1〜C10のアルキレン基、又はC6〜C12のアリーレン基、又は
【化4】

であり、
Yは、O−Z又はNH−Zであり、かつ
Zは、C1〜C10のアルキレン基又はC6〜C12のアリーレン基である]で示されるモノマーの併用によって導入されてよい官能基でもある。
【0063】
EP−A 208 187号において記載されているグラフトモノマーは、表面での反応性基を導入するためにも適している。
【0064】
挙げられる他の例は、アクリルアミド、メタクリルアミド、並びに置換されたアクリレート又はメタクリレート、例えば(N−tert−ブチルアミノ)エチルメタクリレート、(N,N−ジメチルアミノ)エチルアクリレート、(N,N−ジメチルアミノ)メチルアクリレート及び(N,N−ジエチルアミノ)エチルアクリレートである。
【0065】
ゴム相の粒子は、架橋されていてもよい。架橋性モノマーの例は、1,3−ブタジエン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、及びジヒドロジシクロペンタジエニルアクリレート、並びにEP−A 50 265号において記載されている化合物である。
【0066】
グラフト結合モノマーとして公知のモノマー、すなわち、重合中に種々の比で反応する2つ以上の重合可能な二重結合を有するモノマーを使用することも可能である。少なくとも1つの反応性基は、他のモノマーとほぼ同一の比で重合するが、一方で他の1つ又は複数の反応性基は、例えば、極めてよりゆっくりと重合する、このタイプの化合物の使用が好ましい。種々の重合比は、ゴム中の不飽和二重結合の一定の割合を引き起こす。そして他の相がこのタイプのゴム上にグラフトされる場合に、ゴム中に存在する少なくともいくつかの二重結合が、グラフトモノマーと反応して、化学結合を形成する。すなわち、グラフトされた相は、グラフト基材に対する化学結合の少なくともいくつかの割合を有する。
【0067】
このタイプのグラフト結合モノマーの例は、アリル基を含有するモノマー、特にエチレン性不飽和カルボン酸のアリルエステル、例えばアリルアクリレート、アリルメタクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート及びジアリルイタコネート、並びにそれらジカルボン酸の相応するモノアリル化合物である。それらに加えて、広く様々な他の好適なグラフト結合モノマーがある。さらなる詳細については、ここでは、例えばUS−A 4 148 846号を参照できる。
【0068】
強化ポリマー中のそれら架橋モノマーの割合は、一般に、強化ポリマーに対して、5質量%まで、有利には3質量%以下である。
【0069】
いくつかの好ましいエマルションポリマーは、以下で挙げられている。最初に、本明細書で、中核を有し及び少なくとも1つの外殻を有し、かつ以下の構成を有するグラフトポリマーが挙げられる:
【表1】

【0070】
1つ以上の殻を有する構造のグラフトポリマーの代わりとして、1,3−ブタジエン、イソピレン、及びn−ブチルアクリレートからなる、又はそれらからのコポリマーからの、均一の、すなわち単殻のエラストマーを使用することも可能である。それらの生成物も、架橋性モノマーの又は反応性基を有するモノマーの併用によって製造されてよい。
【0071】
好ましいエマルションポリマーの例は、n−ブチルアクリレート−(メタ)アクリル酸コポリマー、n−ブチルアクリレート−グリシジルアクリレートもしくはn−ブチルアクリレート−グリシジルメタクリレートコポリマー、n−ブチルアクリレートからなり、もしくはブタジエンを基礎とする内殻を有し、かつ前記のコポリマーからなる外被を有するグラフトポリマーであり、他の例は、反応性基を供給するコモノマーを有するエチレンのコポリマーである。
【0072】
記載されているエラストマーは、例えば懸濁重合を介した他の従来の方法によって製造することもできる。
【0073】
DE−A 37 25 576号、EP−A 235 690号、DE−A 38 00 603号、及びEP−A 319 290号において記載されているようなシリコーンゴムが、同様に好ましい。
【0074】
もちろん、前記で挙げられたゴムのタイプの混合物を使用することも可能である。
【0075】
本発明の成形材料は、必須の成分A)と一緒に、適宜、B)及びC)、他の添加剤、並びに加工助剤D)を含有することができる。それらの割合は、一般に、成分(A)〜(D)の総量に対して、30質量%まで、有利には15質量%である。
【0076】
通常の添加物の例は、安定剤及び酸化防止剤、熱分解及び紫外線を介した分解を妨げるための作用剤、滑剤及び離型剤、染料、顔料、並びに可塑剤である。
【0077】
その材料は、一般に、顔料及び染料の4質量%まで、有利には0.5〜3.5質量%、及び特に0.5〜3質量%の量を含有する。
【0078】
顔料着色熱可塑性樹脂のための顔料は、よく知られている(例えば、R.Gaechter及びH.Mueller、Taschenbuch der Kunststoffadditive[Plastic additives handbook]、Carl Hanser Verlag、1983、494〜510頁を参照)。まず好ましい顔料の群は、白色顔料、例えば酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白(2PbCO3・Pb(OH)2)、リトポン、アンチモンホワイト及び二酸化チタンの群である。二酸化チタンの最も一般に生じる結晶形(ルチル及びアナターゼ)の2つの中では、特にルチル形が、本発明の成形材料の白い着色のために使用される。
【0079】
本発明によって使用されうる黒色顔料は、黒色酸化鉄(Fe34)、スピネルブラック(Cu(Cr,Fe)24)、マンガンブラック(二酸化マンガン、二酸化ケイ素及び酸化鉄からなる混合物)、コバルトブラック、及びアンチモンブラック、並びに特に有利には主にファーネスブラック又はガスブラックの形で使用されるカーボンブラック(G.Benzing、Pigmente fuer Anstrichmittel[Pigments for paints]、Expert−Verlag(1988),78頁以下参照)である。
【0080】
もちろん、本発明によって、特に無機有彩顔料、例えば酸化クロムグリーン、又は有機有彩顔料、例えばアゾ顔料又はフタロシアニンを使用することによって色彩を得ることもできる。このタイプの顔料は、広く市販されている。
【0081】
例えばカーボンブラックと銅フタロシアニンとの混合物において挙げられた顔料又は染料を使用することも好ましいこともある。それというのも、結果として、一般に、熱可塑性樹脂中で色がより容易に分散するからである。
【0082】
本発明による熱可塑性物質に添加されてよい酸化防止剤及び熱安定剤の例は、元素の周期表の第I族の金属のハロゲン化物、例えばハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カリウム及びハロゲン化リチウム、適宜、ハロゲン化銅(I)との、例えば塩化、臭化又はヨウ化との組み合わせである。特に、第一銅のハロゲン化物は、高電子p−配位子も含有することできる。例えばトリフェニルホスフィンとのハロゲン化Cu複合体は、それらの第一銅複合体の例として挙げられてよい。フッ化亜鉛及び塩化亜鉛を使用することもできる。立体障害フェノール、ヒドロキノン、置換された代表的なこの群、芳香族第二級アミン、適宜、リン含有酸との組合せ、又はそれらの塩、及びそれら化合物の混合物を、有利には混合物の質量に対して、1質量%までの濃度で使用することもできる。
【0083】
UV安定剤の例は、種々の置換されたレソルシノール、サリチレート、ベンゾトリアゾール及びベンゾフェノンであり、その際、使用される量は、一般に2質量%までである。
【0084】
滑剤及び離型剤は、一般に熱可塑性材料の1質量%までの量で使用され、ステアリン酸、ステアリルアルコール、ステアリン酸アルキル、及びステアラミド、並びに長鎖脂肪酸を有するペンタエリトリトールのエステルである。カルシウムの、亜鉛の、もしくはアルミニウムのステアレート、或いはジアルキルケトンを使用することも可能である。
【0085】
添加剤の中には、水分及び大気酸素の存在下で赤リンの分解を阻害する安定剤もある。挙げられてよい例は、カドミウムの、亜鉛の、アルミニウムの、スズの、マグネシウムの、マンガンの、及びチタンの化合物である。特に好適な化合物の例は、挙げられた金属の酸化物、及びカーボネート、もしくはオキシカーボネート、水酸化物、或いは有機酸のもしくは無機酸の塩、例えば酢酸塩もしくはリン酸塩、又はリン酸水素塩でもある。
【0086】
本明細書で挙げられるであろう唯一の難燃剤は、赤リン、及びポリアミドとしてそれ自体知られている他の難燃剤である。
【0087】
成分B)〜D)が存在する場合に、本発明の熱可塑性成形材料を、それ自体知られている方法によって、通常の混合装置、例えばスクリュー押出機、ブラベンダーミキサー、又はバンバリーミキサー中で出発成分を混合し、そしてそれらを押出すことによって製造することができる。その押出物は、冷却され、そして微粉砕される。
【0088】
本発明の成形材料は、比較的高い耐熱性、良好な多軸の耐衝撃性、並びに高いガラス転移温度及び高い結晶化度と共に十分に高い融点を特徴とする。特に、それらは、容易な熱可塑処理を与え、かつ従って、繊維の、箔の、又は成形物の製造のために好適である。繊維強化成形物は、非常に良好な表面を有し、かつ従って、車両構造における用途のために、並びに電気的な及び電子工学の用途のために、特に好適である。
【0089】
実施例
一般の製造の仕様
HMD溶液(水中で濃度70%)X2gと、メタキシリレンジアミンX3gと、テレフタル酸X4gと、イソフタル酸X5gと、プロピオン酸X6gとを、90℃で、プラスチック容器中で、水X1gと混合した。
【0090】
得られた溶液を、1.5lのオートクレーブに移した。オートクレーブの操作時間は60分であり、外側の温度は340℃であり、回転速度は40rpmであり、そして圧力は20bar(絶対圧)であった。
【0091】
そして、その混合物を、圧力2barまで60分間減圧した。
【0092】
得られたPAポリマーを造粒した。
【0093】
次の測定を行った。
【0094】
熱分析(DSC)を、DIN 53765(TAI−Q 1000装置を使用して)に応じて、Tm、Tg、Tkk及びΔHについて実施した。第二の加熱曲線を測定した(加熱曲線及び冷却曲線に対して20K/min)。
【0095】
VNを、ISO 307に応じて測定した。
【0096】
成形材料の構成及び測定の結果は、表中に見られる。
【0097】
【表2】

【0098】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
半芳香族の半結晶質の熱可塑性ポリアミドの成形材料であって、
A)a1)テレフタル酸から誘導した構成単位30〜44mol%、
a2)イソフタル酸から誘導した構成単位6〜20mol%、
a3)ヘキサメチレンジアミンから誘導した構成単位42〜49.5mol%、
a4)炭素原子6〜30個を有する芳香族ジアミンから誘導した構成単位0.5〜8mol%、
からなるコポリアミド40〜100質量%、
その際、成分a1)〜a4)のモル百分率は、合わせて100%であり、かつ
B)繊維状又は粒状の充填剤0〜50質量%、
C)弾性重合体0〜30質量%、
D)他の添加剤及び加工助剤0〜30質量%、
を含有し、その際、成分A)〜D)の質量百分率は、合わせて100%である、半芳香族の半結晶質熱可塑性ポリアミドの成形材料。
【請求項2】
前記のコポリアミドA)が、
a1)32〜40mol%
a2)10〜18mol%
a3)45〜48.5mol%
a4)1.5〜5mol%
からなる、請求項1に記載のポリアミド成形材料。
【請求項3】
前記の芳香族ジアミンa4)が、
p−キシリレンジアミンもしくは
m−キシリレンジアミンもしくは
o−キシリレンジアミンもしくは
アルキル置換キシリレンジアミン
又はそれらの混合物
からなる、請求項1又は2に記載のポリアミド成形材料。
【請求項4】
前記のコポリアミドA)が、トリアミン含有率0.5質量%未満を有する、請求項1から3までのいずれか1項に記載のポリアミド成形材料。
【請求項5】
該コポリアミドA)が、20%より高い結晶化度を有する、請求項1から4までのいずれか1項に記載のポリアミド成形材料。
【請求項6】
繊維の、箔の、又は成形物の製造のための、請求項1から5までのいずれか1項に記載のポリアミド成形材料の使用。
【請求項7】
請求項1から5までのいずれか1項に記載のポリアミド成形材料から得ることができる成形物。

【公表番号】特表2009−529074(P2009−529074A)
【公表日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557719(P2008−557719)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【国際出願番号】PCT/EP2007/051865
【国際公開番号】WO2007/101809
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】