説明

高オクタン価ガソリン基材の製造方法

【課題】接触改質処理の際の液収率の低下を抑制してオクタンバレルの損失を抑えつつ、分解ガソリンのオクタン価を向上させ、分解ガソリンから効率良く高オクタン価ガソリン基材を製造する方法を提供すること。
【解決手段】沸点範囲が70〜210℃の範囲に含まれる分解ガソリンを原料として、高オクタン価ガソリン基材を製造する方法であって、前記原料分解ガソリン全体の30〜90容量%を水素化処理し、次いで該水素化処理で得た生成油を接触改質処理して接触改質処理油を得、該接触改質処理油に、前記原料分解ガソリンの残部を全量混合することを特徴とする高オクタン価ガソリン基材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分解ガソリンを原料とし、オクタンバレルの損失を抑えつつ効率良く分解ガソリンのオクタン価を向上させた、高オクタン価ガソリン基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の燃費改善は、省エネルギー、CO削減の効果が期待されるため、社会的な要求が高まっている。そのため、燃費改善に有効な高オクタン価ガソリンをより効率的に製造する技術が必要とされている。
高オクタン価ガソリンは、一般に分解ガソリン、改質ガソリンなどの高オクタン価基材を用いて製造されており、例えば、特許文献1には、接触分解ガソリン、接触改質ガソリン、アルキレートガソリンなどから成るリサーチ法オクタン価(RON)96以上の無鉛高オクタン価ガソリンを製造する技術が開示されている。
分解ガソリンは、減圧軽油あるいは常圧残油等を接触分解して、分解生成物を回収、蒸留することによって得られる沸点範囲約30〜210℃の蒸留生成物である。そして、この分解ガソリン中の高オクタン価成分であるオレフィン分は、比較的沸点の低い軽質留分に多く含まれていることから、こういったオレフィン分を多く含む軽質留分は分解ガソリンから蒸留等の処理によって抜き出され、高オクタン価基材として多用されている。そのため、軽質留分が抜き出された後の分解ガソリンは必然的にオクタン価が低下するため、高オクタン価基材としての価値が低下し有効に活用することができない。
【0003】
一方、分解ガソリンのオクタン価の向上を目的にした技術として、例えば、特許文献2には、分解ガソリンを水素化処理した後、接触改質処理により高オクタン価基材に変換する技術が開示されている。これらに従えば、接触改質処理により分解ガソリンに含まれる成分の一部を芳香族化合物に転化させることにより、RON98〜102の高オクタン価ガソリン基材を得ることができる。また、特許文献3には、分解ガソリンを軽質、中質、重質留分に分留し、オクタン価の低い中質留分について接触改質処理をすることで高オクタン価ガソリン基材を得る技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−282070号公報
【特許文献2】米国特許第3,044,950号明細書
【特許文献3】特開2006−182996号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、一般に、接触改質処理において高オクタン価の生成油を得ようとすると、原料油がガス化する分解副反応が起こりやすく液収率の低下が大きいため、オクタンバレル(オクタン価と基材量の積)の損失が大きい。
本発明の目的は、接触改質処理の際の液収率の低下を抑制してオクタンバレルの損失を抑えつつ効率良く分解ガソリンのオクタン価を向上させ、分解ガソリンから効率良く高オクタン価ガソリン基材を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、発明者らは、分解ガソリンの接触改質処理の影響について鋭意検討を重ねた結果、原料分解ガソリンの全量を接触改質処理に供すのではなく、一部を接触改質処理に供し、得られた接触改質油に、残部の未処理原料分解ガソリンを混合することによって、分解ガソリンのオクタン価を向上させると同時に、接触改質処理の際の液収率の低下を抑制してオクタンバレルの損失を抑え、効率的に高オクタン価ガソリン基材を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の高オクタン価ガソリン基材を製造する方法に関する。
(1)沸点範囲が70〜210℃の範囲に含まれる分解ガソリンを原料として、高オクタン価ガソリン基材を製造する方法であって、原料分解ガソリン全体の30〜90容量%を水素化処理し、次いで該水素化処理で得た生成油を接触改質処理して接触改質処理油を得、該接触改質処理油に、原料分解ガソリンの残部を全量混合することを特徴とする高オクタン価ガソリン基材の製造方法。
(2)前記接触改質処理で得た接触改質処理油のオクタン価が、前記原料分解ガソリンのオクタン価より6〜20向上されていることを特徴とする(1)に記載の高オクタン価ガソリン基材の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、分解ガソリンを接触改質処理等して高オクタン価ガソリン基材を製造するに際し、原料分解ガソリンの接触改質処理に付す比率を適切に規定することよって、オクタン価を向上させると共に、接触改質処理の際の液収率の低下を抑制してオクタンバレル(オクタン価と基材量の積)の損失を抑えることも可能となり、効率良く高オクタン価ガソリン基材を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で原料に用いる分解ガソリンは、灯・軽油から常圧残油に至る広範囲の石油留分、好ましくは重質軽油や減圧軽油を、熱分解法や触媒存在下で分解する接触分解法等により分解して得られる。また、エチレンやプロピレンなど石油化学品の製造に際して副生するナフサ熱分解ガソリン及びコーカーナフサ等も原料に用いることができる。このうち、特に、流動接触分解法(UOP法、シェル二段式法、フレキシクラッキング法、ウルトラオルソフロー法、テキサコ法、ガルフ法、ウルトラキャットクラッキング法、RCC法、HOC法など)により、固体酸触媒(例えばシリカ、アルミナ、あるいはシリカ・アルミナにゼオライトを配合したもの等)を用いて分解して得られる接触分解ガソリンを好ましく用いることができる。
【0010】
本発明の原料油としては、上記のような種々の分解法の分解装置から留出する分解ガソリンの全留分の内、沸点範囲が70〜210℃、好ましくは70〜180℃の範囲に含まれる留分を用いる。この範囲に含まれる留分は、通常、RONが87〜90程度と分解ガソリンの中でもやや低いためである。
原料油は、沸点範囲がこの範囲に含まれる留分であれば、80〜180℃や90〜170℃等、どのような沸点範囲のものでも用いることができるが、210℃を超える留分は水素化処理や接触改質処理の際にコーク生成による触媒劣化を生じるため好ましくない。また、沸点範囲は180℃以下とすることで、水素化処理や接触改質処理の際のコーク生成による触媒劣化を一層抑制することができるため、さらに好ましい原料となる。
なお、分解ガソリン全留分の内、本発明の原料油としては供しない、より軽質な留分またはより重質な留分は、比較的オクタン価が高いため(通常、RON92〜97程度)、接触改質処理を行うことなく、適宜、本発明で得られた高オクタン価ガソリン基材と混合することができる。
【0011】
本発明の高オクタン価ガソリン基材の製造方法では、上記の原料分解ガソリン全体の内、30〜90容量%を接触改質処理に供するために分離する。なお、接触改質処理に先立ち、接触改質触媒の触媒毒となる硫黄分、窒素分およびオレフィン分等を分解ガソリンから予め除去するために、水素化処理を行う。原料分解ガソリンの30〜90容量%を水素化処理して得た生成油を接触改質処理して接触改質処理油を得、ここへ、残部の未処理原料分解ガソリンの全量を混合して高オクタン価ガソリン基材を製造する。
原料分解ガソリンの処理比率を90容量%以下とすることで、オクタンバレル(オクタン価と基材量の積)の損失を抑制することができ、また、処理比率を30容量%以上とすることで、より高オクタン価の基材を得ることが可能となる。この処理比率は、好ましくは30〜80容量%、さらに好ましくは40〜70容量%、最も好ましくは40〜60容量%とすることで、より効率良くオクタンバレルの損失を抑制しつつ、高オクタン価ガソリン基材を得ることができる。
【0012】
本発明の製造方法においては、必要に応じて、上記水素化処理に付す原料分解ガソリン、又は上記水素化処理で得た生成油に、従来から改質ガソリン用の原料として用いられてきた重質ナフサを混合して、上記水素化処理や接触改質処理を実施することができる。この際、重質ナフサとしては、原油を常圧蒸留して得られる沸点範囲60〜210℃に含まれるナフサ留分が好ましく用いられる。さらに、重質成分によるコーク生成、触媒劣化を抑制するためには、沸点範囲が60〜180℃に含まれる留分が好ましく用いられる。また、重質ナフサを、水素化処理で得た生成油に混合する場合は、重質ナフサを、予め、本発明の製造方法の製造工程とは別途の脱硫工程で十分脱硫した上で用いることが好ましい。重質ナフサの混合割合は、水素化処理に付す原料分解ガソリン又は水素化処理で得た生成油10容量部に対して10〜200容量部が好ましい。水素化処理や接触改質処理を、重質ナフサを混合して実施すれば、装置の効率的な運用が可能である。
【0013】
本発明における水素化処理は、次いで実施する接触改質処理の触媒の保護のために、原料分解ガソリンに含まれる硫黄分、窒素分及びオレフィン分を除く目的で行われる。水素化処理は、公知の技術を用いることができ、例えば水素化脱硫用触媒を用いて、原料油を高温、高圧の反応条件下で反応させる方法が挙げられる。水素化脱硫触媒としては、無機酸化物担体上に水素化機能を有する活性金属を担持した触媒を用いることができる。ここで用いられる無機酸化物担体としては、アルミナ、シリカ、チタニア、マグネシア、シリカ−アルミナ等の種々の多孔質無機酸化物を用いることができ、これらを組み合わせたものも用いることができる。この内、シリカ又はシリカ−アルミナが好ましく用いられる。活性金属としては、モリブデンやタングステンなどの第VI族金属、ニッケルやコバルトなどの第VIII族金属が用いられ、例えばNi−Mo又はCo−Moなどの組み合わせが好ましく用いられる。水素化処理の条件は、原料分解ガソリンに含まれる硫黄分、窒素分、オレフィン分の量によって最適な条件を選択すれば良く、通常、反応温度200〜500℃、水素分圧0.5〜10MPa、液空間速度(LHSV)1.0〜20hr−1、水素油比100〜1000NL/L の範囲内で設定される。
【0014】
水素化処理で得た生成油は、次いで接触改質処理に付される。この生成油は、接触改質処理で用いられる触媒の劣化を抑制するために、上記水素化処理において、硫黄分、窒素分はともに、1質量ppm以下、好ましくは0.5質量ppm以下に、オレフィン分は、5容量%以下、好ましくは3容量%以下、さらに好ましくは1容量%以下に低下されていることが好ましい。硫黄分、窒素分は、改質触媒の活性金属の性能を低下させる被毒物質となる場合があり、オレフィン分は、重合してコークを析出する場合があり、いずれも改質触媒の寿命低下の原因となるため、上記の含有量に低下されていることが好ましい。
【0015】
本発明における接触改質処理は、公知の技術を用いることができ、固定床半再生式、サイクリック式、連続再生式等いずれの方法であってもよい。接触改質反応に使用される触媒としては、種々のものを用いることができるが、白金を0.2〜0.8質量%含有している白金/アルミナ系触媒を好ましく用いることができ、さらに第2成分としてレニウム、ゲルマニウム、すず、イリジウム等が含まれるものも用いることができる。
【0016】
接触改質処理の反応条件としては、固定床半再生式の場合には、反応温度約470〜540℃、反応圧力1〜3.5MPa、水素油比76〜3000NL/L、LHSV:1〜4h−1であることが好ましい。反応温度が470℃以上であれば、得られる接触改質処理油のオクタン価を所期のように向上させることができ、540℃以下であれば、水素化分解が進行して液収率が低下することや、コークの生成により触媒活性が低下することを抑制できる。反応圧力が1MPa以上であれば、コークの生成を抑制することができる。
また、連続再生式の場合には、反応温度510〜530℃、反応圧力0.35〜1MPa、水素油比140〜530NL/L、LHSV:1〜4h−1であることが好ましい。反応温度が510℃以上であれば、得られる接触改質処理油のオクタン価を所期のように向上させることができ、530℃以下であれば、水素化分解が進行して液収率が低下することや、コークの生成により触媒活性が低下することを抑制できる。反応圧力が0.35MPa以上であれば、コークの生成を抑制することができる。
【0017】
本発明においては、接触改質処理で得た接触改質処理油のオクタン価は、原料分解ガソリンのオクタン価よりも6〜20、好ましくは9〜19、さらに好ましくは12〜19、最も好ましくは16〜18向上されていることが好ましい。このオクタン価向上幅を20以下に抑えることによって、反応温度を抑えて接触改質用触媒の劣化を抑制しながら、高オクタン価基材を得ることが可能になる。また、このオクタン価向上幅を6以上とすることで、高オクタン価の基材を得ることが可能になる。
【0018】
上記接触改質処理で得た接触改質処理油は、上記のような処理を行わない未処理の原料分解ガソリンの残部の全量と混合される。本発明では、原料分解ガソリンの水素化処理と接触改質処理に付す比率と、接触改質処理油の原料分解ガソリンに対するオクタン価の向上幅を適切に選択することよって、オクタンバレルの損失を抑えた高オクタン価ガソリン基材の製造が可能になる。
【0019】
本発明の製造方法においては、接触改質処理で得た接触改質処理油と、未処理の原料分解ガソリンの残部を混合するに当たり、必要に応じて、接触改質処理で得た接触改質処理油を脱ベンゼン処理し、ベンゼンを除いた後に未処理の原料分解ガソリンの残部と混合することができる。この際、脱ベンゼン処理には、公知の技術を用いることができる。その例として、蒸留法や溶剤抽出法等が挙げられる。
また、必要に応じて、未処理の原料分解ガソリンの残部を水素化脱硫処理し、硫黄分を除いた後に、接触改質処理で得た接触改質処理油、又は上記脱ベンゼン処理した後の接触改質処理で得た接触改質処理油に混合することができる。この際、ガソリン脱硫処理には、公知の技術を用いることができる。その例として、OCTGAIN、ISAL、SCANfining、PRIME-G,G+、CD-Hydro、S-Zorb、S-Brain OATSプロセス等が挙げられる。
【0020】
以下に本発明の実施態様を、図面を用いて説明する。
図1〜3は、本発明の実施態様の基本的な一例を概念的に示すプロセス・フローシートである。
【0021】
図1に示す実施態様においては、接触分解工程から留出する分解ガソリン全留分を分離工程において、沸点範囲が70〜210℃の範囲に含まれる重質留分と、それより軽質な留分とに分離し、このうちの重質留分が原料分解ガソリンとして用いられる。
この原料分解ガソリンは、その全体に対する比率で30〜90容量%に相当する量が水素化処理工程を経て、さらに接触改質処理工程で処理されて、オクタン価が向上された接触改質処理油となる。また、原料分解ガソリン全体に対する比率で10〜70容量%に相当する残部は未処理の原料分解ガソリンであり、オクタン価が向上された接触改質処理油と混合することによって、高オクタン価ガソリン基材が製造される。そして、この得られた混合物に、分離工程で分離されたオクタン価の高い軽質留分の一部又は全量を混合して、高オクタン価ガソリン基材が製造される。なお、この軽質留分は、マーロックス(Merox)処理等により、メルカプタン分を除去した後に、混合することが好ましい。
また、図1に示す実施態様においては、必要に応じて、接触改質処理油を、脱ベンゼン工程(図示省略)で処理した後に、残部の未処理の原料分解ガソリンと混合することができる。さらに、必要に応じて、原料分解ガソリンは、常圧蒸留塔から留出する重質ナフサ留分と混合してから水素化処理工程に供することができる。
なお、この重質ナフサは、この図における水素化処理工程とは別の水素化処理工程により脱硫した後に、本発明の水素化処理後の原料油に混合して接触改質処理を行うこともできる。
【0022】
図2に示す実施態様は、残部の未処理の原料分解ガソリンを、予め、ガソリン脱硫工程で水素化脱硫処理して、その硫黄分を通常10質量ppm以下に低減し、その後に、接触改質処理油及び分離工程で分離されたオクタン価の高い軽質留分の一部又は全量と混合すること以外は、図1に示す実施態様と同様である。原料分解ガソリンの残部をガソリン脱硫工程で処理することにより、図1に示す実施態様の場合に比べて、より硫黄分の低減された高オクタン価ガソリン基材を製造することができる。
【0023】
図3に示す実施態様においては、接触分解工程から留出する分解ガソリン全留分を分離工程において、沸点範囲が70〜210℃の範囲に含まれる中質留分と、それより軽質な留分、および重質な留分の3留分に分離し、この3留分の内の中質留分が原料分解ガソリンとして用いられる。この原料分解ガソリンは、図1の実施態様における原料分解ガソリンと同様に処理される。そして、この原料分解ガソリンの処理で得られた接触改質処理油と残部の未処理の原料分解ガソリンの混合物に、分離工程で分離された軽質留分及び重質留分の各一部又は各全量を混合して、高オクタン価ガソリン基材が製造される。
また、図3に示す実施態様においても、必要に応じて、原料分解ガソリンは、常圧蒸留塔から留出する重質ナフサ留分と混合してから水素化処理工程に供することができる。
なお、この重質ナフサは、この図における水素化処理工程とは別の水素化処理工程により脱硫した後に、本発明の水素化処理後の原料油に混合して接触改質処理を行うこともできる。
【0024】
本発明の製造方法によれば、高オクタン価基材をオクタンバレルの損失を抑制しつつ製造することができる。具体的には、最終基材のオクタン価がRON92以上のものを得ることができ、さらにはRON95以上や、RON98以上の基材もオクタンバレルの損失を抑制しつつ製造することができる。
【0025】
さらに、接触改質処理のオクタン価向上幅が同一である原料油100%処理時と比べ、オクタンバレル損失改善率を5%以上改善することができる。また、好ましい条件を選択することで8%以上、さらには10%以上改善することもできる。ここでオクタンバレル損失改善率とは、次式によって定義される、オクタンバレル損失の抑制効果を計る指標である。
オクタンバレル =(オクタン価)×(基材量)
オクタンバレル損失改善率=(「得られたガソリン基材のオクタンバレル」−「同じオクタン価向上幅で100%処理した場合のオクタンバレル」)÷(同じオクタン価向上幅で100%処理した場合のオクタンバレル)
また、本発明では、接触改質処理直後または最終基材から、脱ベンゼン処理をすることもできる。
【実施例1】
【0026】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
以下の各実施例、比較例では、原料分解ガソリンとして、表1に示す性状を有する接触分解ガソリンを用いた。
【0027】
【表1】

【0028】
以下の各実施例、比較例では、上記原料分解ガソリンを、それぞれ表2〜5に記載した「原料分解ガソリン」欄の「(A)水素化・接触改質処理原料」項に示した量を用いて、下記の条件にて水素化処理を行った。なお、この水素化処理により得られた生成油、すなわち接触改質処理の原料油の性状は、いずれの実施例、比較例とも硫黄分1質量ppm未満、窒素分1質量ppm未満、オレフィン分0.4容量%であった。
水素化処理条件 :高圧固定床流通式反応装置
使用触媒 市販Ni/Mo系水素化触媒
反応温度 307℃
反応圧力 4.0 MPa
液空間速度(LHSV)1.6h−1
水素/油 200 NL/L
【0029】
次いで、上記水素化処理で得た生成油全量を、接触改質用触媒を5ml充填した高圧固定床反応装置を用いて、下記の条件にて接触改質処理した。
接触改質処理条件:高圧固定床流通式反応装置
使用触媒 市販Pt/アルミナ系改質触媒
反応温度484〜528℃
反応圧力 1.6 MPa
液空間速度(LHSV) 2.0h−1
水素/油 760 NL/L
*反応温度を変化させることで、反応前後でのオクタン価の向上幅を変化させた。
【0030】
その後、上記接触改質処理で得た接触改質処理油に、未処理の上記原料分解ガソリンを、それぞれ表2〜5に記載した「原料分解ガソリン」欄の「(B)未処理原料」項に示した量混合し、最終的な高オクタン価ガソリン基材を得た。
得られた高オクタン価ガソリン基材の収率(液収率)、オクタン価、オクタンバレル及び同損失改善率を表2〜5に記載した。ここで、オクタンバレル及び同損失改善率は以下のように定義した。
オクタンバレル =(オクタン価)×(基材量)
オクタンバレル損失改善率=(「得られたガソリン基材のオクタンバレル」−「同じオクタン価向上幅で100%処理した場合のオクタンバレル」)÷(同じオクタン価向上幅で100%処理した場合のオクタンバレル)
【0031】
以下、表2〜5に示した実施例及び比較例の実験データをもとに、本発明の特徴を説明する。
【0032】
【表2】

【0033】
〔表2の実験データの説明〕
実施例1、2:オクタン価向上幅約8、原料分解ガソリンの処理比率(以下、水素化処理とそれに続く接触改質処理を総称して単に「処理」という)52容量%又は71容量%の条件で処理をした場合、得られたガソリン基材のオクタン価はいずれも92以上と高オクタン価基材を得るのに十分なレベルであり、かつ、オクタンバレル損失改善率はいずれも5%以上であった。
比較例1:処理比率を20.2容量%にしたこと以外、実施例1、2と同じ条件で処理をした場合、オクタンバレル損失改善率は実施例を上回ったが、得られたガソリン基材のオクタン価は89.8であり、高オクタン価基材を得ることはできなかった。
比較例2:処理比率を95.2容量%にしたこと以外、実施例と同じ条件で処理をした場合、得られたガソリン基材のオクタン価は96.0と高い値を示したが、オクタンバレル損失は殆ど改善されかった。
比較例3:オクタン価向上幅は実施例と同じ条件で、原料分解ガソリン全量を処理をした場合である。オクタンバレル損失改善率の比較基準とした。
【0034】
【表3】

【0035】
〔表3の実験データの説明〕
実施例3〜6:オクタン価向上幅が約13.5、原料分解ガソリンの処理比率が本願発明の範囲内である38.2〜80.0容量%の場合、得られたガソリン基材のオクタン価はいずれも92以上と高オクタン価基材を得るのに十分なレベルであり、かつ、オクタンバレル損失改善率はいずれも5%以上であった。
比較例4:処理比率を20.2容量%にし、オクタン価向上幅が実施例と同じになる条件で処理をした場合、オクタンバレル損失改善率は実施例を上回ったが、得られたガソリン基材のオクタン価は90.4であり、高オクタン価基材を得ることはできなかった。
比較例5:処理比率を95.1容量%にし、オクタン価向上幅が実施例と同じになる条件で処理をした場合、得られたガソリン基材のオクタン価は101.1と高い値を示したが、オクタンバレル損失は殆ど改善されかった。
比較例6:オクタン価向上幅は実施例と同じ条件で、原料分解ガソリン全量を処理をした場合である。オクタンバレル損失改善率の比較基準とした。
【0036】
【表4】

【0037】
〔表4の実験データの説明〕
実施例7〜10:オクタン価向上幅が約18、原料分解ガソリンの処理比率が32 容量%〜85容量%の場合、得られたガソリン基材のオクタン価はいずれも92以上と高オクタン価基材を得るのに十分なレベルであり、かつ、オクタンバレル損失改善率はいずれも5%以上であった。
比較例7:処理比率が20.1容量%であること以外、実施例と同じ条件で処理をした場合、オクタンバレル損失改善率は実施例を上回ったが、得られたガソリン基材のオクタン価は90.9と低かった。
比較例8:オクタン価向上幅は実施例と同じ条件で、原料分解ガソリン全量を処理した場合である。オクタンバレル損失改善率の比較基準とした。
【0038】
【表5】

【0039】
〔表5の実験データの説明〕
実施例11〜13:オクタン価向上幅が約19、原料分解ガソリンの処理比率が31.8 容量%〜72.0容量%の場合、得られたガソリン基材のオクタン価はいずれも92以上と高オクタン価基材を得るのに十分なレベルであり、かつ、オクタンバレル損失改善率はいずれも10%以上であった。
比較例9:処理比率が20容量%であること以外、実施例と同じ条件で処理をした場合、オクタンバレル損失改善率は実施例を上回ったが、得られたガソリン基材のオクタン価は91と低かった。
比較例 10:処理比率を95.2容量%に上げたこと以外、実施例と同じ条件で処理をした場合、得られたガソリン基材のオクタン価は106と高い値を示したが、オクタンバレル損失は殆ど改善されかった。
比較例11:オクタン価向上幅は実施例と同じ条件で、原料分解ガソリン全量を処理した場合である。オクタンバレル損失改善率の比較基準とした。
【0040】
以上のように、本発明の製造方法は、従来の原料分解ガソリン全量を水素化処理、接触改質処理する方法に比較して、水素化処理、接触改質処理の条件が同じ場合、得られるガソリン基材のオクタン価を十分に向上しつつ、オクタンバレルの損失をも有意に抑制しながら実施できることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施態様の基本的な一例を概念的に示すプロセス・フローシートである。
【図2】本発明の実施態様の必要に応じて行い得る他の例をそれぞれ概念的に示すプロセス・フローシートである。
【図3】本発明の実施態様の必要に応じて行い得る他の例をそれぞれ概念的に示すプロセス・フローシートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
沸点範囲が70〜210℃の範囲に含まれる分解ガソリンを原料として、高オクタン価ガソリン基材を製造する方法であって、原料分解ガソリン全体の30〜90容量%を水素化処理し、次いで該水素化処理で得た生成油を接触改質処理して接触改質処理油を得、該接触改質処理油に、原料分解ガソリンの残部を全量混合することを特徴とする高オクタン価ガソリン基材の製造方法。
【請求項2】
前記接触改質処理で得た接触改質処理油のオクタン価が、前記原料分解ガソリンのオクタン価より6〜20向上されていることを特徴とする請求項1に記載の高オクタン価ガソリン基材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−74998(P2008−74998A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−257020(P2006−257020)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(000105567)コスモ石油株式会社 (443)
【Fターム(参考)】