説明

高コレステロール血症治療用の医薬組成物

【課題】 コレステロール生合成を抑制する高コレステロール血症治療用の医薬組成物を提供することである。
【解決手段】 血中コレステロールを低下させるのに有効な量の[R−(R*,R*)]−2−(4−フルオロフェニル)−β,δ−ジヒドロキシ−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−ヘプタン酸のヘミマグネシウム塩またはN−メチルグルカミン塩、および薬学的に許容しうる担体を含有する高コレステロール血症治療用の医薬組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コレステロール生合成を抑制する高コレステロール血症治療用の医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
コレステロール生合成の抑制剤として有用である特許文献1記載の化合物の中にはトランス−(±)−5−(4−フルオロフェニル)−2−(1−メチルエチル)−N,4−ジフェニル−1−[2−(テトラヒドロ−4−ヒドロキシ−6−オキソ−2H−ピラン−2−イル)エチル]−1H−ピロール−3−カルボキサミドがある。そこに記載の化合物は4−ヒドロキシピラン−2−オン類およびそれから誘導される対応する開環した酸を広く包含している。
【特許文献1】米国特許第4,681,893号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明によれば、予想外なことに、トランス−5−(4−フルオロフェニル)−2−(1−メチルエチル)−N,4−ジフェニル−1−[2−(テトラヒドロ−4−ヒドロキシ−6−オキソ−2H−ピラン−2−イル)エチル]−1H−ピロール−3−カルボキサミドの開環した酸のR型の対掌体、すなわち[R−(R*,R*)]−2−(4−フルオロフェニル)−β,δ−ジヒドロキシ−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−ヘプタン酸がコレステロール生合成の驚くべき抑制をもたらすということが見出された。
【0004】
3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル補酵素A(HMG−CoA)が3R−立体異性体として存在することは知られている。さらに、Stokker et al.,“3-Hydroxy-3-methylglutaryl-Coenzyme A Reductase Inhibitors. 1. Structural Modification of 5-Substituted 3,5-Dihydroxypentanoic acids and Their Lactone Derivatives,”J. Med. Chem. 1985, 28, 347-358による一連の5−置換3,5−ジヒドロキシペンタン酸の研究に示されているように、本質的に全ての生物活性は正の旋光度を有する(E)−6−[2−(2,4−ジクロロフェニル)エテニル]−3,4,5,6−テトラヒドロ−4−ヒドロキシ−2H−ピラノンのトランスジアステレオマーにあった。さらに、式(Ia)
【化1】

のメビノリンおよび式(Ib)
【化2】

のコンパクチンに共通のβ−ヒドロキシ−δ−ラクトン部分のための絶対配置がHMG−CoAリダクターゼの阻害に必要であることは明らかである。これは Lynch et al.,“Synthesis of an HMG-CoA Reductase Inhibitor; A Diastereo-selectic Aldol Approach in Tetrahedron Letters, Vol.28, No.13, pp.1385-1388(1987)”中に4R,6R配置として報告されている。
しかし、当業者は前記の開示によってコレステロール生合成の本発明による予想外かつ驚くべき抑制を予想することはできないであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、本発明は式I
【化3】

で表される[R−(R*,R*)]−2−(4−フルオロフェニル)−β,δ−ジヒドロキシ−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−ヘプタン酸、その薬学的に許容しうる塩および上記ヘプタン酸のラクトン体である式II
【化4】

で表される(2R−トランス)−5−(4−フルオロフェニル)−2−(1−メチルエチル)−N,4−ジフェニル−1−[2−(テトラヒドロ−4−ヒドロキシ−6−オキソ−2H−ピラン−2−イル)エチル]−1H−ピロール−3−カルボキサミドからなる化合物を提供する。
【0006】
本発明はまた、低コレステロール血症剤として有用な医薬組成物、すなわち血中コレステロールを低下させるのに有効な量の[R−(R*,R*)]−2−(4−フルオロフェニル)−β,δ−ジヒドロキシ−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−ヘプタン酸、その薬学的に許容しうる塩または(2R−トランス)−5−(4−フルオロフェニル)−2−(1−メチルエチル)−N,4−ジフェニル−1−[2−(テトラヒドロ−4−ヒドロキシ−6−オキソ−2H−ピラン−2−イル)エチル]−1H−ピロール−3−カルボキサミド並びに薬学的に許容しうる担体からなる医薬組成物にも関する。さらに、本発明はまた該医薬組成物の剤形を投与することによる高コレステロール血症の哺乳動物例えばヒトの治療方法でもある。
【0007】
本発明の薬学的に許容しうる塩は、遊離酸またはラクトン好ましくはラクトンを適当な塩基とともに水性もしくは水性アルコール溶媒またはその他の適当な溶媒中に溶解しついで溶液を蒸発させて塩を単離することにより、または塩を直接分離させるかまたは塩を溶液の濃縮によって得ることができる有機溶媒中において遊離酸またはラクトン好ましくはラクトンおよび塩基を反応させることにより一般的に誘導される塩である。
【0008】
実際には、塩形態の使用は酸またはラクトン形態の使用に等しい。本発明の範囲内にある薬学的に許容しうる適当な塩は、塩基例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、1−デオキシ−1−(メチルアミノ)−D−グルシトール、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化第一鉄もしくは水酸化第二鉄、水酸化アンモニウムまたは有機アミン例えばN−メチルグルカミン、コリン、アルギニン等から誘導される塩である。好ましくは、リチウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムおよび第一鉄もしくは第二鉄の各塩は、そのナトリウム塩またはカリウム塩から該塩の溶液に適当な試薬を加えることによって製造される。すなわち、式Iの化合物のナトリウム塩またはカリウム塩の溶液に塩化カルシウムを加えるとそれのカルシウム塩が得られる。
【0009】
遊離酸は式IIのラクトン体の加水分解によりまたは塩を陽イオン交換樹脂(H+樹脂)に通しついで水を蒸発させることによって製造され得る。
本発明の最も好ましい態様は[R−(R*,R*)]−2−(4−フルオロフェニル)−β,δ−ジヒドロキシ−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−ヘプタン酸、ヘミカルシウム塩である。
【0010】
一般に、本発明の化合物IおよびIIは(1)参考までに本明細書中に組込まれる米国特許第4,681,893号明細書に記載の方法で製造されるラセミ体を分割することによりまたは(2)知られているかまたは知られた手法に類似の手法を使用して容易に製造される出発物質から始めて所望のキラル形態を合成することにより製造できる。
【0011】
詳しく言えば、ラセミ体の分割は下記のスキーム1(ここでPhはフェニルである)に示すようにして達成され得る。
【化5】

【0012】
スキーム1の“トランスラセミ混合物”は下記:
【化6】


の混合物を意味する。
【0013】
スキーム1の工程1および工程2の条件は一般的に後記実施例6および7に見出されるとおりである。
キラル合成は下記のスキーム2(ここでPhはフェニルである)に示すとおりである。
【0014】
【化7】

【0015】
一般に、スキーム2での条件は後記実施例1〜5に示すとおりである。
当業者ならば本発明化合物の製造に適当なスキーム1および2における変法が容易に分かるであろう。
【0016】
本発明化合物、特に式Iの化合物は参考までに本明細書中に組込まれる米国特許第4,681,893号明細書に開示されているCSIスクリーンで見出されるようにコレステロール生合成を抑制する。式Iの化合物、その対掌体およびこれら2種の化合物のラセミ混合物のCSIデータは下記のとおりである。
【0017】
【表1】

【0018】
従って、本発明は式IもしくはIIの化合物またはその薬学的に許容しうる塩から調製される医薬組成物である。これらの組成物は、再び参考までにここに組込まれる米国特許第4,681,893号明細書に記載のようにして調製される。
【0019】
同様に、本発明は低脂血症剤または低コレステロール血症剤としての使用法である。本発明の製薬法で使用される本発明化合物は、1日当たり10〜500mgの用量で患者に投与される。約70kgの普通の成人では1日当たり0.14〜7.1mg/kgの用量である。好ましくはこの用量は1日当たり0.5〜1.0mg/kgであるのがよい。
【0020】
この用量は単位剤形で投与されるのが好ましい。経口または非経口用の単位剤形は個々の適用および活性成分の効力によって10〜500mg、好ましくは20〜100mgで変更または調整され得る。該組成物は所望によりその他の活性治療剤をも含有することができる。個々の状態における最適用量の決定は、当業者ならば容易である。
【0021】
式Iおよび式IIの化合物並びにその薬学的に許容し得る塩は、ここに記載の用途の活性に関して一般的に等価である。
以下に本発明化合物の特定の製造方法を実施例により説明するがこれらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0022】
実施例1
窒素下、1000mlの1頚フラスコ中において−50〜−60℃のTHF 300ml中のジイソプロピルアミン92mlに2.2M n−ブチルリチウム(ヘキサン中)285mlを滴下漏斗により滴加する。十分に撹拌した黄色の溶液を約−20℃に加温させる。次にそれを、2Lの3頚フラスコ中で−70℃に保持した、無水THF 500ml中に懸濁されたS(+)−2−アセトキシ−1,1,2−トリフェニルエタノール99gの懸濁液中にカニューレで加える。添加終了後、反応混合物を2時間かけて−10℃に加温させる。その間に還流冷却器およびオーバーヘッド撹拌機を具備した3Lフラスコ中において、THF
500ml中に懸濁したマグネシウム15.3g(0.63モル)の懸濁液中に臭素564ml(0.63モル)を滴下することによって0.63モルMgBr2懸濁液を調製する。懸濁液の調製が完了したらMgBr2懸濁液を−78℃に冷却し、これに先のエノレート溶液(濃茶色)を30分以内にカニューレで加える。−78℃で60分間撹拌を続ける。無水THF 800ml中に入れた5−(4−フルオロフェニル)−2−(1−メチルエチル)−1−(3−オキソプロピル)−N,4−ジフェニル−1H−ピロール−3−カルボキサ
ミド150gを30分かけて滴加し、次に−78℃で90分間撹拌しついでAcOH 200mlを用いて−78℃でクエンチする。これを冷却浴中に移し、H2O 500mlを加えついでその混合物を真空中において40〜50℃で濃縮する。この黄色がかったスラリーにEtOAc/ヘプタン(1:1)500mlを加えついで濾過する。濾過物を0.5N HClで十分に洗浄し次にH2Oで数回洗浄しそして最後にドライアイスで−20℃に冷却したEtOAc/ヘプタン(3:1)で洗浄する。淡茶色の結晶性生成物(実施例1A)を真空オーブン中において40℃で乾燥する。収量は194gである。
【0023】
生成物1Aを−10℃でEtOAcから再結晶して生成物1B 100gを得、次にこれをアセトン/ペンタンから再結晶して生成物1C 90gを得る。母液を粗製物質の洗液から集めて合一し、それをEtOAc/ヘキサンから再結晶する。1B 33gはHPLCでR,S対S,S異性体比97.4:2.17を示す。1C 28.5gはHPLC95.7:3.7を示す。1Bと1Cを合一した物をCHCl3:MeOH(10:1)から再結晶して白色結晶48.7gの収量を有する生成物1Fを得る。
【0024】
第1の洗浄水溶液の母液を結晶化して(EtOAc/ヘプタン)生成物1D 21.4gを得る。HPLC:71.56:25.52。
1Bおよび1Cの母液を合一し、CHCl3/MeOH/ヘプタンから再結晶して白色結晶の生成物1G 55.7gを得る。
1DをCHCl3/MeOHから再結晶して生成物1Hを得る。
【0025】
すべての母液を合一し、濃縮し次に残留物を熱CHCl3/MeOH(10:1)中に溶解し、シリカゲルカラム上に置きついでEtOAc/ヘキサン(40:60)で溶離する。物質をカラム上に晶出させ、シリカゲルをCHCl3/MeOHで抽出しついで濃縮する。残留物をCHCl3/ヘプタン(3:1)から再結晶して生成物1I 33.7gを得る。
1Iの母液を再結晶して生成物1K 18.7gを得る。
1Kの母液を結晶化して生成物1L 6.3gを得る。
【0026】
1I、1Kおよび1Lを合一し、CHCl3/ヘプタンから再結晶して48gを得る。
1I、1Kおよび1Lの合一した母液を濃縮して1M 31gを得る。
生成物1Fは下記のデータを示す。
元素分析値:1F 融点229〜230℃
計算値:C, 77.84; H, 6.02; N, 3.56
実測値:C, 77.14; H, 6.45; N, 3.13
【0027】
これらのデータは下記の式
【化8】

に一致する。
【0028】
実施例2
実施例1の1F、1G、1Hおよび1Lの合一生成物162g(0.206M)をメタノール/THF(5:3)800ml中に懸濁する。これを0℃に冷却し、ナトリウムメトキシド11.7gに加える。この混合物を全てが溶解するまで撹拌しついでフリーザー中に一夜入れる。反応混合物を室温まで戻し、HOAc 15mlで急冷し次に真空中、40℃で濃縮して下記のような予想された生成物を得る。
【0029】
【化9】

【0030】
この生成物をH2O 500mlに加えついでEtOAc(300ml)で2回抽出する。合一した抽出物を飽和NaHCO3、ブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過しそして溶媒を蒸発させる。残留物を溶離剤としてEtOAc/ヘプタン(1:4)中においてシリカゲルでクロマトグラフィー処理して無色油状物109gを得、それをEt2O/ヘプタンから再結晶して下記の生成物を得る。
【0031】
第1群 73.9g; 白色結晶
第2群 8.2g; 白色結晶
これらの結晶は下記のデータを示す。
融点125〜126℃、[α]D20=4.23°(1.17M、CH3OH)
計算値:C, 72.76; H, 6.30; N, 5.30
実測値:C, 72.51; H, 6.23; N, 5.06
これらのデータは下記の式に一致する。
【化10】

【0032】
実施例3
温度計および滴下漏斗を具備した2000mlの3頚フラスコ中においてジイソプロピルアミン77mlをTHF 250ml中に溶解する。反応混合物は窒素下に保持する。混合物を−42℃に冷却し、20分かけて2.2Mのn−ブチルリチウム(ヘキサン中)200mlに滴加し、20分間撹拌しついでTHF 200ml中に溶解されたt−ブチルアセテート62mlを(約30分かけて)滴加する。この混合物を−40℃で30分撹拌し次に2.2Mのn−ブチルリチウム140mlを20分かけて加える。添加終了後、温度を−40℃より上昇させずにできるだけ迅速に、無水THF 500ml中における実施例2の生成物81gを加える。−70℃で4時間撹拌を続ける。次に反応混合物を氷酢酸69mlでクエンチしついで室温に戻す。混合物を真空中で濃縮し、残留物をEtOAc中に取り入れ、水で十分に洗浄し、次に飽和NH4Cl、NaHCO3(飽和)で洗浄しそして最後にブラインで洗浄する。有機層を無水MgSO4で乾燥し、濾過しついで溶媒を蒸発させる。この反応混合物のNMRはほぼ等量の出発物質および生成物、並びにTLCの基線上にある若干の物質に一致する。TLCの基線上のこの物質を出発物質から分離し、生成物を酸/塩基抽出により抽出する。有機相を真空中で乾燥し、そして濃縮して73gを得る。NMRおよびTLCは下記の式に一致する。
【0033】
【化11】

【0034】
実施例4
実施例3の粗製生成物73gを無水THF 500ml中に溶解し、トリエチルボラン120mlを加え次にt−ブチルカルボン酸0.7gを加える。混合物を乾燥雰囲気下で10分間撹拌し、−78℃に冷却し、メタノール70mlを加えそしてさらに水素化ホウ素ナトリウム4.5gを加える。この混合物を再び−78℃で6時間撹拌する。次にこれを氷/30% H22/H2Oの4:1:1混合物中に徐々に注ぐ。この混合物を一夜撹拌しついで室温に戻す。
【0035】
CHCl3(400ml)を加え、その混合物を分配する。水層を再びCHCl3で抽出する。有機抽出物を合一し、過酸化物を全く見出すことができなくなるまでH2Oで徹底的に洗浄する。有機層をMgSO4で乾燥し、濾過しそして溶媒を蒸発させる。
残留物をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによりEtOAc/ヘキサン(1:3)で処理して51gを得る。
【0036】
生成物をTHF/MeOH中に溶解し、NaOH 100mlに加え、室温で4時間撹拌する。溶液を室温で濃縮して有機溶媒を除去し、H2O 100mlに加えついでEt2Oで2回抽出する。水性層を1N HClで酸性化し、EtOAcで3回抽出する。合一した有機層をH2Oで洗浄する。有機層を無水MgSO4で乾燥し、濾過し、ついで溶媒を蒸発させる。残留物をトルエン2L中に取り入れ、ディーン−スターク(Dean-Stark)トラップを用いて10分間加熱還流する。反応混合物を一夜かけて室温まで戻す。還流を10分
間繰返しついで24時間冷却する。この操作を繰返す。反応混合物を室温で次の10日間放置し、濃縮して無色の泡状物51gを得る。この生成物を少量のCHCl3中に溶解し、EtOAc/ヘプタン(50:50)を溶離剤として用いてシリカゲルでのクロマトグラフィー処理に付して純粋物質23gを得る。CHCl3/2−プロパノール(98.5:1.5)中でのシリカゲル上のクロマトグラフィーによって13.2gが得られる。
計算値:C, 73.31; H, 6.15; N, 5.18
【0037】
実施例5
2R−トランス−5−(4−フルオロフェニル)−2−(1−メチルエチル)−N,4−ジフェニル−1−[2−(テトラヒドロ−4−ヒドロキシ−6−オキソ−2H−ピラン−2−イル)エチル]−1H−ピロール−3−カルボキサミドの製造
実施例4の生成物をEtOAc/ヘキサンから再結晶する。フラクション1からは4A
8.20gが得られる。母液からは4B 4.60gが得られる。4BのHPLCは生成物の100%が[R−(R*,R*)]異性体であることを示す。4Aを再結晶して4C 4.81gが得られる。4BをCHCl3/2−プロパノール中でシリカゲルのクロマトグラフィー処理に付して無色泡状物の4D 4.18gが得られる。[α]D23+24.53°(CHCl3中0.53%)。4Cを再結晶しそして4Cの母液からは2.0gが得られる。このHPLCは100%のR−トランス異性体、2R−トランス−5−(4−フルオロフェニル)−2−(1−メチルエチル)−N,4−ジフェニル−1−[2−(テトラヒドロ−4−ヒドロキシ−6−オキソ−2H−ピラン−2−イル)エチル]−1H−ピロール−3−カルボキサミドを示す。
【0038】
実施例6
ジアステレオマーのα−メチルベンジルアミド類の製造
(R)−(+)−α−メチルベンジルアミン(575ml、4.45モル、98%アルドリッチ)中に溶解したラセミ体、トランス−(±)−5−(4−フルオロフェニル)−2−(1−メチルエチル)−N,4−ジフェニル−1−[2−(テトラヒドロ−4−ヒドロキシ−6−オキソ−2H−ピラン−2−イル)エチル]−1H−ピロール−3−カルボキサミド(30g、55.5ml)の溶液を室温で一夜撹拌する。次に得られた溶液をエーテル(2L)で希釈し、2M HCl(4×500ml)、水(2×500ml)およびブライン(2×500ml)で徹底的に洗浄する。有機抽出物をMgSO4で乾燥し、濾過しついで真空中で濃縮してジアステレオマーのα−メチルベンジルアミド類28.2gを白色固形物として得る。融点174.0〜177°。これらのα−メチルベンジルアミドは、その混合物1.5gを98:1.9:0.1のCHCl3:CH3OH:NH4OH(1000mg/ml)1.5ml中に溶解しそして気密注射器により調製用HPLCカラム(シリカゲル、300mm×41.4mm I.D.)上に注入しついで前記溶媒混合物で溶離することによって分離される。各フラクションUVモニターによって集めた。ジアステレオマー1は41分で溶離する。ジアステレオマー2は49分で溶離する。センターカットの各フラクションを集める。この操作を3回繰返し、同様なフラクションを合一しそして濃縮する。分析用HPLCにより各々を試験したところジアステレオマー1は99.84%純粋でありそしてジアステレオマー2は96.53%純粋であることが示される。各異性体は別個に以下の実施例でとりあげる。
【0039】
実施例7
2R−トランス−5−(4−フルオロフェニル)−2−(1−メチルエチル)−N,4−ジフェニル−1−[2−(テトラヒドロ−4−ヒドロキシ−6−オキソ−2H−ピラン−2−イル)エチル]−1H−ピロール−3−カルボキサミドの製造
実施例6のジアステレオマー1、[3R−[3R*(R*),5R*]]−2−(4−フルオロフェニル)−[β],[δ]−ジヒドロキシ−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−N−(1−フェニルエチル−1H−ピロ
ール−1−ヘプタナミド(ヒドロキシ中心が両方ともRである)(1g、1.5ミリモル)のエタノール溶液(50M)に1N NaOH(3.0ml、3ミリモル)を加える。得られた溶液を48時間加熱還流する。この溶液を室温に冷却し、真空中で濃縮する。残留物を水中に再懸濁しついで6N HClで慎重に酸性化する。得られた酸性溶液を酢酸エチルで抽出する。有機抽出物を水、ブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過しついで真空中で濃縮する。この残留物をトルエン(100ml)中に再溶解し、水を共沸蒸留除去させながら3時間加熱還流する。これを室温に冷却し、真空中で濃縮して黄色の半固形物1.2gを得る。40% EtOAc/ヘキサンで溶離させる、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー処理に付して白色固形物0.42gを得るが、これはまだ不純物を含有している。これを再びクロマトグラフィー処理して本質的に純粋なR,R光学対掌体、2R−トランス−5−(4−フルオロフェニル)−2−(1−メチルエチル)−N,4−ジフェニル−1−[2−(テトラヒドロ−4−ヒドロキシ−6−オキソ−2H−ピラン−2−イル)エチル]−1H−ピロール−3−カルボキサミド0.1gを白色の泡状物として得る。HPLCは該物質が94.6%化学的に純粋であることを示す。[α]D23:CHCl3中0.51%=25.5°。室温でのピーク=53.46分は、アルドリッチのα−メチルベンジルアミン中に存在する(S)−(−)−α−メチルベンジルアミン2%から生ずる知られていないジアステレオマーとして仮に指定する。
【0040】
実施例8
2S−トランス−5−(4−フルオロフェニル)−2−(1−メチルエチル)−N,4−ジフェニル−1−[2−(テトラヒドロ−4−ヒドロキシ−6−オキソ−2H−ピラン−2−イル)エチル]−1H−ピロール−3−カルボキサミド(実施例5で製造された化合物のS,S光学対掌体)の製造
実施例7に記載の操作をジアステレオマー2について実施することにより泡状固形物0.6gを得、それをシリカゲルでフラッシュクロマトグラフィー処理した。50% EtOAc/ヘキサンで溶離して本質的に純粋なS,S光学対掌体、2S−トランス−5−(4−フルオロフェニル)−2−(1−メチルエチル)−N,4−ジフェニル−1−[2−(テトラヒドロ−4−ヒドロキシ−6−オキソ−2H−ピラン−2−イル)エチル]−1H−ピロール−3−カルボキサミド0.46g白色の泡状物として得た。HPLCは該物質が97.83%化学的に純粋であることを示した。[α]D23:CHCl3中0.51%=−24.8°。
【0041】
実施例9
式IIのラクトンの加水分解
THF中に溶解したラクトンの室温溶液に、水中に溶解した水酸化ナトリウムの溶液を加える。混合物を2時間撹拌する。HPLC:99.65%(生成物);0.34%(出発ラクトン)。混合物を水3Lで希釈し、酢酸エチル1Lずつで2回抽出し、次に5N塩酸37mlを加えてpH4の酸性にする。水性層を酢酸エチル1.5Lずつで2回抽出する。合一した酢酸エチル抽出物を水1Lずつで2回次にブラインで洗浄し、乾燥しついで濾過して必要とされる遊離酸の酢酸エチル溶液を得る。この溶液はN−メチルグルカミン塩のフラクション中で直接用いられる。ブライン−水からの酢酸エチル抽出物を濃縮して灰色がかった白色固形物15.5gが得られる。
【0042】
実施例10
ナトリウム塩および(または)ラクトンからのカルシウム塩
ラクトン1モル(540.6g)をMeOH 5L中に溶解しついで溶解後にH2O 1Lを加える。撹拌下に1当量のNaOHを加え、HPLCより追跡するとラクトン並びにジオール酸のメチルエステル2%以下が残留している(過剰のNaOHは使用不可。Ca(OH)2が生成し、CaCl2の添加を必要とするため)。NaOHは苛性ソーダ(51.3ml、0.98eq.)またはペレット(39.1g、0.98eq.)として仕込むことができる
。この手法は下記のように示される。
【0043】
【化12】

【0044】
加水分解の完了と同時にH2O 10Lを加えついでEtOAc/ヘキサンの1:1混合物で少なくとも2回洗浄する。各洗浄液はそれぞれEtOAc/ヘキサン10Lを含有すべきである。ナトリウム塩が純粋である場合にはMeOH 15Lを加える。それが不純でありそして(または)着色物を含有する場合にはG−60木炭100gを加え、2時間撹拌しついでスーパーセル上で濾過する。MeOH 15Lで洗浄する。反応混合物について重量/容量%をHPLCにより算定して溶液中における塩の正確な量を測定する。
【0045】
1当量または僅かに過剰のCaCl2・2H2O(73.5g)をH2O 20L中に溶解する。反応混合物およびCaCl2溶液の両方を60℃に加熱する。激しい振とう下にCaCl2溶液を徐々に加える。添加終了後、徐々に15℃に冷却しついで濾過する。フィルターケークをH2O 5Lで洗浄する。真空オーブン中50℃で乾燥する。EtOAc 4L中に溶解し(50℃)、スーパーセル上で濾過し、EtOAc 1Lで洗浄しついで50℃rxn溶液にヘキサン3Lを仕込むことによって再結晶を行うことができる。この手法は下記のように示される。
【0046】
【化13】

【0047】
実施例11
N−メチルグルカミンによる、式Iの遊離酸の酢酸エチル溶液の処理
酢酸エチル(3L)中に溶解した式Iの遊離酸の溶液(0.106M)に、(1:1)水−アセトン(120ml、120ml)中に溶解したN−メチルグルカミン(20.3g、0.106M)の溶液を激しく撹拌しながら室温で加える。16時間撹拌を続け、その濁った溶液を真空中で約250mlに濃縮する。トルエン(1L)を加え、その混合物を濃縮して白色固形物100gを得る。この固形物をアセトン1670ml中に溶解し、機械的撹拌機およびサーモスタット制御の温度計を具備した3頚フラスコ中で濾過する。フラスコおよびフィルターを(1:1)水−アセトン115mlで洗浄し、その透明溶液を徐々に冷却する。これにより沈殿を得、ついでそれを65℃にまた加熱することによって再溶解する。さらに水20mlを加え、洗浄して結晶性生成物を得、それを濾過により単離する。固形物をCH3Cl 1200mlで洗浄し、255°で真空乾燥して白色固形物を得る。該物質を分析すると、アミン4%並びに残留アセトン0.4%および水0.67%を含有することが示される。分析結果は下記のとおりである。
【0048】
融点:105〜155℃(分解)。
元素分析値(予想値):
C,63.73; H, 6.95; N, 5.57; F2, 9.53
元素分析値(実測値):
C, 62.10; H, 6.89; N, 5.34; F2
C, 61.92; H, 7.02; N, 5.38; F2
2O=0.47%(KF)
HPLC:MeOH、H2O、THF(40;550;250)
エコノシル(Econosil):C18,5μ、25CM
256nm:1.0ml/分
6〜81分:98.76%
Opt.Ret.:[α]・b=−10.33°(c=1.00、MeOH)
残留溶媒:CH2CH=0.26%
滴定:HClO4(0.1N)=203.8%
Bu4NOH(0.1N)=98.5%
【0049】
前記実施例10および11から適当に選択される手法と類似の手法で製造されるその他の塩は式Iの化合物のカリウム塩、ヘミマグネシウム塩、ヘミ亜鉛塩または1−デオキシ−1−(メチルアミノ)−D−グルシトール錯体であることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血中コレステロールを低下させるのに有効な量の[R−(R*,R*)]−2−(4−フルオロフェニル)−β,δ−ジヒドロキシ−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−ヘプタン酸のヘミマグネシウム塩および薬学的に許容しうる担体を含有する高コレステロール血症治療用の医薬組成物。
【請求項2】
血中コレステロールを低下させるのに有効な量の[R−(R*,R*)]−2−(4−フルオロフェニル)−β,δ−ジヒドロキシ−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−ヘプタン酸のN−メチルグルカミン塩および薬学的に許容しうる担体を含有する高コレステロール血症治療用の医薬組成物。

【公開番号】特開2007−197460(P2007−197460A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−122005(P2007−122005)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【分割の表示】特願2002−365972(P2002−365972)の分割
【原出願日】平成2年7月20日(1990.7.20)
【出願人】(503181266)ワーナー−ランバート カンパニー リミテッド ライアビリティー カンパニー (167)
【Fターム(参考)】