高出力レーザー加速イオン用の標的の設計
【解決手段】 レーザー加速イオンビームを設計する方法を開示している。当該方法は、重イオン層と、電場と、最大の軽い陽イオンエネルギーを有した高エネルギーの軽い陽イオンとを含むシステムをモデル化する工程と、前記重イオン層と、前記電場と、前記最大の軽い陽イオンエネルギーとの物理パラメータを、前記モデルを使って相関する工程と、前記高エネルギーの軽い陽イオンのエネルギー分布を最適化するため、前記重イオン層の前記パラメータを変化させる工程とを含む。一方法は、2次元PIC(particle in cell)シミュレーションおよび1次元解析モデルを使って、高出力レーザーパルスと2層構造の標的との相互作用から軽い陽イオン(例えば陽子)の加速を解析する工程を含む。加速された軽い陽イオン(陽子など)が獲得する最大エネルギーは、このモデルにおいて、前記重イオン層の物理特性―電子とイオンとの質量比およびイオンの実効荷電状態―に依存する。電子種および重イオン種の双方についての流体力学方程式の解と、陽子についてのテスト粒子近似値とが、適用される。前記重イオンの運動が長手方向の電場分布を修正し、軽い陽イオンに対する加速条件を変化させることがわかった。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この特許出願は、2004年12月22日付で出願された米国仮特許出願第60/638,821号(この参照によりその全体が本明細書に組み込まれるものである)に基づく利益を主張するものである。
【0002】
本研究の一部は、契約番号CA78331として米国国立衛生研究所保健社会福祉省により支援された。このため、米国政府はこれらの発明に対し権利を有する。
【0003】
本発明の分野は、超高強度レーザーパルスおよび標的材料の相互作用から生成する、レーザー加速した陽子などの軽い陽イオンに関する。また、本発明の分野は、高エネルギーの軽い陽イオンを生成するための超高強度レーザーパルスと相互作用する標的と、その設計とにも関する。
【背景技術】
【0004】
超高強度レーザーパルスとプラズマとの相互作用は、硬X線、中性子、電子、及び高エネルギーイオンの生成など、種々の分野で有望な応用が期待されるため、これまで著しく注目されてきている。レーザー加速イオンビームは、コリメーション効果が高く、粒子束も高いなど特定の特性を有するため、制御核融合、材料科学、医療診断のための短寿命同位元素の生成、およびハドロン治療(癌治療のための陽子線照射など)といった用途で非常に魅力的である。
【0005】
現在、組成およびエネルギー分布を制御したイオンビームを制御可能に提供することができる標的材料の作製が必要とされている。これまでの実験研究は、超高強度レーザーパルスを薄い固体構造(標的)と相互作用させる間に高速陽子/イオンを生成するための異なる機構を理解することに向けられてきた。その標的としては、厚さが数ミクロン(μm)から100μmを超える範囲の金属および絶縁体のものが使用されてきている。観測されるイオンの源および加速機構は、まだ議論され続けている。これらのイオンは、入射レーザーに直接照射される前面、または空間電荷分離で生成される静電場により加速が起こる後面で作成および加速される。加速方式は特定の実験条件(レーザー台および標的特性の影響)により決定されるが、一部の実験では、標的の後面で陽子が加速されることが示されている。このため、強いレーザーパルスと材料との相互作用の力学をより理解することが必要とされている。この理解により、標的の設計と、レーザー加速イオンビームを生成するための標的設計の方法論とを改善することができる。
【0006】
標的後面でのイオン加速に関する理論モデルの1つは、真空内への準中性プラズマ膨張に基づいている。このモデルにおいて、加速電場は、中性と想定される膨張プラズマ雲の前部の薄い層内で、空間電荷分離により生じる。超短超高強度レーザーパルスと固体構造との相互作用では、準中性の仮定は放棄される。コンピュータシミュレーションによると、ペタワットレーザーパルスとプラズマ膜との相互作用が、プラズマの準中性が破られる膨張領域の形成につながるという結果が示唆されており、これは超高強度パルスによるイオン加速を考える際に考慮すべき要因である。Passoniら、Phys.Rev.E69、026411(2004)は、それぞれ異なる熱エネルギーを伴ったボルツマン分布に従う2つの電子群により生成される電場構造について説明している。電荷分離の効果は、(イオンが存在する)膜内部および(電子が存在する)膜外部の静電ポテンシャル分布について(2つの温度の電子成分を伴う)ポアソン方程式を解くことにより考慮されている。このアプローチは、本質的に時間とは独立した記述を提供するものであるため、限界がある。イオンエネルギーを定量的に推定するには、電場プロファイルの(時間に依存した)経時変化がわからなければならない。S.V.BulanovらがPlasma Phys.Rep.30、21(2004)で提案した取り扱いでは、自己無撞着静電場の時空変化が解明される可能性を示しているが、場の中でイオンが獲得できる最大エネルギーを理解および推定するには更なる研究が必要とされる。また、医療に有用なエネルギー分布を有する陽イオンを生成できるレーザー加速イオンビームシステムの設計および最適化についても、さらに研究が必要である。
【0007】
強い電荷分離の条件下における陽子/イオンの加速については、いくつか理論的な例があり、その1つが、イオンクラスターのクーロン爆発である。レーザーパルスが標的と相互作用すると、標的から電子が飛び出して膜内に強い電場が生じ、この強電場がイオン加速工程で重要な役割を果たす。他の場合、陽子は電離した標的の(時間非依存の)電場により加速され、その力学はテスト粒子近似アプローチを使って記述できる。多層構造の標的システム、より具体的には2層構造の標的システムは、この加速方式について特に良好な構造を有する。この構造において、第1の層は質量miの重イオンおよび特定の電離状態Ziを有し、(前記第1の層の後面に付着した)第2の層は電離水素を有する。レーザー動重力の作用により、電子は、標的を出て重イオンの帯電層を飛び出す。イオンの質量が陽子の質量よりはるかに大きい場合、イオンクラスター(クーロン爆発)の力学は、通常、陽子の実効加速時間中、無視される。この時間中、イオンクラスターの電場は時間から独立していると見なされ、空間的に不均一な静止電場における陽子加速の問題が残る。
【0008】
上述の研究はイオン加速力学を記述する上で有用だが、陽子加速時間は、実際は次式のように比較的長く、自己無撞着電子力学およびイオンクラスター爆発の双方の影響から、電場は一般に時間依存することになる。
【0009】
【数1】
【0010】
その結果、最大陽子エネルギーは、通常、クラスター(例えば、イオン質量および荷電状態)の物理特性に依存する。従って、レーザーと2層構造の標的との相互作用における加速電場および最大陽子エネルギーに、クラスターの特性が及ぼす影響は、完全には理解されていない。このため、現在、高エネルギーレーザーパルスと標的材料との相互作用をより深く理解し、標的の設計を改善することが求められている。この理解により、標的の設計と、レーザー加速イオンビームを生成するための標的設計の方法論とを改善することができる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、クーロン爆発効果の影響を説明する電場変化のモデルを提供するものである。このモデルは、標的と、高エネルギー軽イオンを有するレーザー加速イオンビームとを設計するために使用される。本明細書における用語「高エネルギー」とは、約50MeV〜約250MeVの範囲のエネルギーを有するイオンビームをいう。前記モデルは、電子成分およびイオン成分に関する1次元流体力学方程式の解に基づくものである。このモデルの領域内で得られる結果を使って、標的内の重イオン層の物理パラメータと、電場および最大陽子エネルギーの構造との相関をとる。これらの結果から、陽子などの高エネルギーの軽い陽イオンの生成に有用な2層標的を設計するための設計方程式が得られる。
【0012】
本発明は、更に、レーザー加速イオンビームの生成に使用する標的を設計する方法を提供する。これらの方法は、通常、重イオン層と、電場と、最大陽子エネルギーを伴うエネルギー分布を有した高エネルギー陽子とを含むシステムをモデル化する工程と、前記重イオン層と、前記電場と、前記最大陽子エネルギーとの物理パラメータを、前記モデルを使って相関する工程と、前記高エネルギー陽子のエネルギー分布を最適化するため、前記重イオン層の前記パラメータを変化させる工程とを含む。
【0013】
本発明はまた、レーザー加速イオンビームの生成に使用する標的を設計する方法と、そのような方法に基づき作製された標的とを提供し、前記方法は、重イオン層と、電場と、最大陽子エネルギーを伴うエネルギー分布を有した高エネルギー陽子とを含むシステムをモデル化する工程を有し、ここで前記システムは、パラメータχで記述でき、またパラメータχを変化させることにより前記高エネルギー陽子のエネルギー分布を最適化することができるものである。
【0014】
本発明は、レーザー加速イオンビームを設計する方法も提供し、この方法は、重イオン層と、電場と、最大の軽い陽イオンエネルギーを伴うエネルギー分布を有した高エネルギーの軽い陽イオンとを含むシステムをモデル化する工程と、前記重イオン層と、前記電場と、前記最大の軽い陽イオンエネルギーとの物理パラメータを、前記モデルを使って相関する工程と、前記高エネルギーの軽い陽イオンのエネルギー分布を最適化するため、前記重イオン層の前記パラメータを変化させる工程とを含む。
【0015】
本発明は、レーザー加速イオンビームの生成に使用する標的を設計する方法も提供し、この方法は、標的と、電場と、最大の軽い陽イオンエネルギーを伴うエネルギー分布を有した高エネルギーの軽い陽イオンとを含むシステムをモデル化する工程であって、前記標的は、パラメータχにより特徴付けられる重イオン層を有するものである、前記モデル化する工程と、前記高エネルギーの軽い陽イオンのエネルギー分布を最適化するため、前記パラメータχを変化させる工程とを有する。
【0016】
本発明は、レーザー加速された高エネルギーの軽い陽イオンビームをシステムにおいて生成するために使用する標的も提供し、前記標的の作製は、当該標的と、電場と、最大の軽い陽イオンエネルギーを伴うエネルギー分布を有した高エネルギーの軽い陽イオンとを含むシステムをモデル化する工程であって、前記標的は、パラメータχにより特徴付けられる重イオン層を有するものである、前記モデル化する工程と、前記高エネルギーの軽い陽イオンのエネルギー分布を最適化するため、前記パラメータχを変化させる工程とにより行う。
【0017】
本発明は、レーザー加速イオンビームをシステムにおいて生成するために使用する標的も提供し、前記システムは、前記標的と、電場と、最大の軽い陽イオンのエネルギーを伴うエネルギー分布を有した高エネルギーの軽い陽イオンとを含み、前記標的は、パラメータχにより特徴付けられる重イオン層を有し、前記パラメータχを変化させると、モデル化した前記システムの高エネルギーの軽い陽イオンのエネルギー分布が最大化されるものである。
【0018】
本発明の、これらの及び別の観点は、以下の図面および詳細な説明を考慮することにより、当業者に容易かつ明確に理解される。本要約及び以下の詳細な説明は、添付の請求項で定義された本発明を限定するものと見なすべきでなく、本発明の例および説明を提供する役割を果たすのみである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、本開示の一部を形成する添付の図面及び実施例と併せて以下の詳細な説明を参照することで、より容易に理解されるであろう。本発明は、本明細書に記載し及び/若しくは示す具体的な装置、方法、条件、若しくはパラメータに限定されるものではないこと、また本明細書で使用する用語は、一例として特定の実施形態を説明するためだけのものであり、本発明に係る請求項を限定することを意図したものではないことを理解すべきである。また、添付の請求項を含む本明細書で使用するとおり、不定冠詞「a」、「an」、及び「the」を伴う単数形名称は複数形名称を包含し、特定の数値への言及は、別段の断わりがない限り、少なくともその特定の値を包含する。ある範囲で値を表現している場合、別の実施形態は、特定の1つの値から、および/または他の特定の値までを包含する。同様に、直前に「約」を伴う近似値として値を表現している場合、特定の値は、別の実施形態を形成することが理解されるであろう。すべての範囲は、包括的で組み合わせ自在である。
【0020】
本発明の特定の特徴は、明瞭化のため、別個の実施形態の文脈で本明細書に説明されており、組み合わせて単一の実施形態として提供することもできることを理解すべきである。逆に、簡略化のため単一の実施形態の文脈で説明している本発明の種々の特徴はまた、別個に、若しくは任意のサブコンビネーションで提供しても良い。さらに、範囲として値に言及している場合は、その範囲内のすべての個々の値が含まれる。
【0021】
本発明の一の観点において、クラスター特性が加速電場および最大陽子エネルギーに及ぼす影響は、レーザーと2層標的との相互作用についてPIC(particle in cell)シミュレーションを使って決定される。クーロン爆発効果の影響を説明する電場変化の理論モデルが提供されている。このモデルは、電子成分およびイオン成分に関する1次元の流体力学方程式の解に基づくものである。このモデルの領域内で得られた結果から、重イオン層の物理パラメータと、電場の構造および最大陽子エネルギーとの相関を説明することができる。
【0022】
コンピュータシミュレーションの結果。高出力レーザーパルスと2層標的との相互作用を説明するため、2次元のPIC数値シミュレーションコードを使用した。このPICシミュレーションにより、具体的には、非線形かつ動力学的な効果の寄与が多次元解析アプローチを極度に困難にする場合において、レーザーとプラズマとの相互作用の特徴が明らかになる。陽子の加速は、レーザーパルスと2層標的との相互作用で考慮される。計算は、2048×512シミュレーションボックスで、グリッドサイズをΔ=0.04μm、シミュレートする準粒子の総数を4×106として行った。粒子および電磁場には、周期的境界条件を使用した。この境界条件が前記シミュレーションの結果に及ぼす影響を最小限に抑えるため、最大シミュレーション時間は以下のように設定した。
【0023】
【数2】
【0024】
ここで、ωpeは電子プラズマ周波数(電子プラズマ振動数)である。異なる電子−イオン質量比および電離状態の複数の型の標的について調べた。イオンの電離状態は、超高強度レーザーパルスが存在する所与の多電子系に関する波動方程式の解から計算できる。2若しくはそれ以上の電子の系に関する電離状態の計算は一般に非常に長時間を要するため、イオンの荷電状態は、一部の実施形態において、計算値としてではなくパラメータとして提供できる。
【0025】
図1は、2層標的の一実施形態の模式図を示したものである。一実施形態では、厚さ0.4μmの高密度重イオン膜と、その後面に付着した厚さ0.16μmの低密度水素層とを含めることができる。その密度をそれぞれ以下に示す。
【0026】
【数3】
【0027】
【数4】
【0028】
この標的を、レーザーパルスが左から相互作用領域に入射するシミュレーションボックスの中央に配置した。前記レーザーパルスの電場をY軸に沿って偏光させ、その無次元振幅a=eE0/meωc=30は、レーザー波長λ=0.8μmの場合1.9×1021W/cm2のレーザーピーク強度に対応する。前記レーザーパルスはガウス分布の形状であり、長さ(持続時間)および幅(ビーム直径)がそれぞれ15λおよび8λ(FWHM)で、これは約890TWのシステムに対応する。
【0029】
図2では、Ex(長手方向)成分およびEy(垂直方向)成分のt=40/ωpeにおける電場の空間分布を示している。標的の厚さは無衝突表皮厚さよりはるかに大きいが、入射パルスは、電子プラズマ周波数の相対論的低下により、反射される成分と伝搬される成分とに分かれる。その結果、レーザーエネルギーの一部は、臨界密度を超えた標的を貫通する。陽子を加速する長手方向の電場は、前記標的の両側で空間的に長距離にわたり延在する。この場は、伝播するレーザーパルスにより順方向および逆方向に加速される電子雲の膨張により生成される。
【0030】
図3は、基板の構造パラメータχ=Zime/miの異なる値について、t=32/ωpeにおける(a)電子、(b)陽子、および(c)重イオンのエネルギー分布を示したものである。電子および重イオンのエネルギースペクトルは準熱的分布に類似する一方、陽子のエネルギースペクトルは、χの値に依存した特徴的エネルギーを伴う準単一エネルギー形状を有することがわかる。T.Z.Esirkepov,S.V.ら、Phys.Rev.Lett.89、175003(2002)には、高品質の陽子線は、2層の標的構造から生成できることが示されている。レーザーパルスが標的と相互作用すると、第1層内の重原子および第2層内の水素原子はどちらも電離し、これにより、高Z重イオンプラズマと、その後面に「付着した」電離水素とから成るプラズマサンドイッチ構造が生じる。動重力の作用下では、一部の電子がプラズマから(順方向および逆方向に)放出されることにより、薄い層を加速する長手方向の電場が生じ、この加速は、前記長手方向の電場が有意に摂動を受けなくなる程度に前記薄い層が十分小さくなるまで起こる。この条件下では、荷電重イオン層と高速電子雲との間で生じた電場により陽子が加速される。この実施形態では、陽子層をより薄くすると、加速される陽子のエネルギーの広がりはより狭くなる。特定の作用理論に制限されるわけではないが、これは、薄いスラブ内の陽子に常にほぼ等しい加速電場がかかるためである。陽子力学におけるこの特性は、(x,y)平面における(a)電子密度、(b)陽子密度、およびプラチナイオン(Zi=4、mi/mp=195)密度について図4に示した粒子の空間分布からも見られる。t=32/ωpeにおける陽子層は、すでにこの高Z標的から離れ、ほぼ歪みなく順方向に移動している。同時に、この重イオン層は質量がはるかに大きいため、はるかに緩慢な率で拡張している。イオンの特徴的な応答時間は、以下のプラズマ周波数のオーダーになる。
【0031】
【数5】
【0032】
ここで、n0はイオン密度である。電子が標的を離れると、前記イオン層は、クーロン反発力(斥力)の作用下で膨張し始める。陽子と比べイオンの応答時間は長いが、その力学は、長手方向の電場に影響を及ぼすことにより陽子線の加速に作用すると見られる。
【0033】
図3からわかるように、パラメータχ=Zime/miの値が大きいと、より効果的な陽子加速が得られる(プラチナの場合と比べ、電離状態が同じZi=4であると仮定すると、炭素基板の場合50%弱もの増加が見られる)。すなわち、イオン膨張が強靭なほど、陽子加速も効果的になる。イオン膨張は長手方向の電場低下を伴い(電場エネルギーの一部が、膨張するイオンの運動エネルギーに変わる)、陽子エネルギーの低下につながると推定されるため、一見して上記の結果は、若干直観に反しているように感じられる。
【0034】
最大陽子エネルギーの単純な推定値は、S.V.BalanovらのPlasma Phys.Rep.28、975(2002)により示唆された画像から確かめることができ、その場合、重イオンの荷電層の長手方向電場は、長半径が標的の横断方向の寸法R0に等しく短半径がI(2Iは標的の厚さ)に等しい帯電した楕円形により生じる電場で近似される。この場合、前記長手方向電場および静電ポテンシャルは、以下で記述される(LandauおよびLifshits、Electrodynamics of Continuous Media、Pergamon Press、Oxford、1988)。
【0035】
【数6】
【0036】
この場で陽子が獲得できる最大運動エネルギーは、前記標的の表面におけるポテンシャルエネルギーに等しい。前記標的の厚さが前記横断方向の寸法未満であると仮定すると、次式が得られる。
【0037】
【数7】
【0038】
一実施形態において、標的内の電場の引力を克服して標的を飛び出し標的に戻らないほどの十分な運動エネルギーをすべての電子が取得すると仮定することにより、式(3)の推定値により最大陽子エネルギーの上限が得られる。ただし実際にシミュレーションで使われるレーザー強度では、通常、電子全体の小さい割合しか標的を脱出することはできない。残りの電子は、前記標的の近傍にとどまり、その一部がかなり複雑な振動運動を呈する(下記参照)。この効果で膜内の総電荷密度が大幅に減少し、これにより式(3)で推定される最大陽子エネルギーが実質的に低下する。式(3)は、明らかに(所与の初期電子密度について)イオン質量と、膜の電離状態とに対する陽子エネルギーの依存性を説明しない。前記標的のクーロン爆発と、自己無撞着電場における電子力学との双方を組み合わせると、式(1)で得られる単純化モデルとは対照的な時間依存場が得られる。
【0039】
最大陽子エネルギーの標的パラメータへの依存性は、一般に、長手方向の電場によるイオン運動の影響から来るものである。図5は、同じ電離状態Zi=4を有する異なる3つのイオン−陽子質量比について、t=32/ωpeにおける、標的からの長手方向(陽子加速の方向)の距離の関数として電場プロファイルを示した図である。電場構造は、膨張している重イオン層の表面(電場が距離とともに減少し始める点)におけるその電場の大きさが、場エネルギーのイオン運動エネルギーへの変換効率の低下のため、イオン質量とともに増加するようになっている。一方、標的からさらに離れた場所では電場が逆の傾向を呈し、すなわち、その電場の値はイオン−陽子質量比の増加とともに減少する。陽子の層は、(有意な標的膨張が起こる前に)標的の表面をすばやく離れるため、通常、膜外の場の分布が最大陽子エネルギーを決定する。
【0040】
一実施形態において、膨張する電子雲および重イオン雲により生成された自己無撞着電場における陽子加速の問題も考慮できる。また、この実施形態及び他の実施形態において、クーロン爆発の効果が加速電場の構造に及ぼす影響も評価できる。高強度レーザーパルスとプラズマとの相互作用は極度に複雑な物理現象を伴うため、明確化すべき長手方向電場の発生については特定の態様を可能にする若干単純化した物理像を考えることができる。
【0041】
電子は、初期、標的内部において、以下の平坦な密度分布で位置すると推定される。
【0042】
【数8】
【0043】
ここで、ne,0=Zin0であり、θ(x)はヘビサイドの単位ステップ関数である。高強度短レーザーパルスの作用下では、電子は一般的に長手方向の相対論的運動量Pe,0を獲得する。この運動量は、初期電子位置xi(0)の関数である。この場合、(区間0<x<l/2に位置する)半分の電子が前記レーザーパルスから運動量Pe,0を獲得し、(区間−l/2<x<0に位置する)残りの半分の電子が負の運動量−Pe,0を獲得するというモデルが得られる。このモデルは、順方向に運動する粒子が動重力により加速される粒子に対応する一方、逆方向に運動する電子が「真空加熱」として知られる過程により反対方向に抽出される状況では、電子とレーザーパルスとの相互作用による電子の流体運動を若干記述することができる。このモデルは、初期の電子の流体運動量分布の記述を著しく単純化するが、電場変化の関連した物理機序を適切に記述することができる。
【0044】
A.電子雲の自己無撞着的な変化。真空中へのプラズマ膨張は、電子成分およびイオン成分に対する1次元の流体力学方程式を使って記述できる。一実施形態において、陽子層は、生じた電場に摂動を与えないと仮定できる。この場合、両成分についての流体力学方程式は、次のようになる。
【0045】
【数9】
【0046】
ここで、neおよびniはそれぞれ電子密度およびイオン密度で、υeおよびPeはそれぞれ、以下の式を介し関連し合う電子の速度および運動量である。
【0047】
【数10】
【0048】
下記の式(7)では、クーロン爆発の過程で非相対論的イオン運動学を使用することができる。
【0049】
式(4)を解くにはオイラー変数(x,t)をラグランジュ変数(x0,t)に変換する。ここで、x0は、t=0における電子流体要素の座標である。双方の座標セットは、以下の式を介して関連し合っている。
【0050】
【数11】
【0051】
ここで、ξe(x0,t)は、電子流体要素の、時刻tにおける初期位置x0からの変位である。新しい変数方程式(4)は次のようになる。
【0052】
【数12】
【0053】
ここで、波形符号は新しい変数での関数であることを示すために使われ、以下の式及びviは電子流速およびイオン流速である。
【0054】
【数13】
【0055】
また以下の式は、初期電子密度である。
【0056】
【数14】
【0057】
この新しい変数により電子流体成分の流体力学方程式は大幅に単純化できるが、イオンについての方程式は(x,t)を使ったものより若干複雑なものになってしまう。小ささのパラメータx=Zime/mi<<1により、式(6)におけるイオンの運動は、ゼロ次解への摂動と考えることができ、これは静止したイオンの場合に対応する初期の電子運動量分布が一定である場合、vi=0および次式での式(6)の解は、以下の(7)、(8a)、及び(8b)の式で与えられる。
【0058】
【数15】
【0059】
【数16】
【0060】
ここで、次式は電子が標的内部にある際(0<x<l/2)の通過時間である。
【0061】
【数17】
【0062】
またγ(Pe,0)は、初期電子運動量Pe,0に依存できるパラメータである。その値は、電子が標的内部にある場合の式(6)の数値解から得ることができ、その単純な解析表現γ(Pe,0)=(1+a(Pe,0/mec)2)bは図7に示している。式(8)は、次の条件を満たす電子を記述するものである。
【0063】
【数18】
【0064】
これから、電子が標的の境界に達することがわかる(初期に標的の内部深くに位置している一部の電子は、標的の表面に到達しない場合もある)。式(8a〜8b)はBulanovらが公開したものとやや異なるが、これは電子が標的を脱出するためにかかる有限時間を考慮しているためである。次の時刻において、電子流体の変位は、以下の最大値に達する。
【0065】
【数19】
【0066】
【数20】
【0067】
そして、その後減少する。最終的に、電子流体要素は標的へ戻り、他方の側に再出現する。
【0068】
これにより、電子成分の全般的な力学は、標的を中心とした振動運動として記述することができる。戻り時間または振動周期は、流体要素の初期位置x0に依存する。初期、プラズマスラブ((l/2−x0)→0)の境界により近かった電子は、戻り時間がより長くなる。電子流体運動におけるこの非同期性の存在は、初期に(初期条件により設定され)「秩序付けられた」電子軌跡の急速な「混合」につながる。数10プラズマ周期後には、電子の位相空間分布および密度分布は、標的の周囲に大半の電子が局在化して当該標的の電荷を遮蔽するように変化する。図6は、1次元PICシミュレーションで得られた時刻t=150/ωpeにおける電子の位相空間分布(a)および密度分布(b)を示したものである。上述のとおり、電子運動量分布の初期条件は次式であった。
【0069】
【数21】
【0070】
それ以降の時刻における位相空間分布は、運動量分布のかなり広い、膨張するイオン層と同心の電子雲が形成されることを示している。電子構造は、標的から距離をおいて現れ、νe,ρにほぼ等しい速度で標的から離れた方向へ伝播する。これらは、電子雲の前部に由来する粒子である(|x0|→l/2)。
【0071】
B.標的面を越えた位置でのクーロン爆発および電場構造。特定の作用理論に制限されるわけではないが、標的のクーロン爆発はイオン層の段階的な膨張につながり、イオン密度の時間依存性をもたらすと見られる。式(4e)によれば、イオン密度の変化は、長手方向の電場プロファイルに影響を及ぼす。前項で計算された電場分布(式(7)を参照)では、無限のイオン質量を仮定することができる(χ=0)。したがって、場の構造が膨張イオン層とともにいかに変化するかを知るには、イオン密度の空間的および時間的な変化を理解する必要がある。その変化は、標的内部の電場の作用により支配される可能性がある。電子が標的を離れたと仮定すると、1Dイオン流体力学方程式の解からイオン変化が自己無撞着性であることがわかる。前項と同様、双方の座標間のつながりがイオン流体要素の変位により表現されるラグランジュ表現を利用すると有利である。
【0072】
【数22】
【0073】
ラグランジュ座標でのイオン流体力学方程式は、次の形態になる。
【0074】
【数23】
【0075】
ここで、Einは標的内部の電場を表す。平坦な以下の初期密度分布についての式(10)の解は次式(11a)及び(11b)のようになる。
【0076】
【数24】
【0077】
【数25】
【0078】
式(11a)からわかるように、電場は標的の中央で消滅し、そこから離れる方向へ(絶対値で)線形的に増加する。式(11b)および関係(9)を使うと、電場およびイオン密度はオイラー変数(x,t)で次のように表せる。
【0079】
【数26】
【0080】
式(12a)は、クーロン反発力(クーロン爆発)の作用下での1次元イオンスラブの変化を記述している。
【0081】
上記のように、シミュレーションの結果からは、加速された陽子の最大運動エネルギーが、標的面を越えた長手方向の場の構造により決定可能であることが示される。したがって、関心があるのは、膨張する電子雲の前部付近における電場の時空間変化である。これら電子の初期条件はx0→l/2であってよく、l/2<x0+ξe(x0,t)についての変位ξe(x0,t)は次のようになる。
【0082】
【数27】
【0083】
式(13)はl/2−x0→0の極限における式(8b)の解から得られたもので、定義(式(5))と合わせると、逆の手続きが得られ、それによりオイラー座標(x,t)へ戻ることができ、Bulanovらのように電子雲の前部における電場構造を((x,t)座標で)決定できる。ただし算出される場分布には、通常、イオン運動の影響が反映されない。イオンの寄与を知るには、式(12a)から式(6e)に密度分布関数を代入することにより、小ささのパラメータχにおける電場展開で次に高次の項を得る。
【0084】
【数28】
【0085】
式(13)で与えられる電子についてのラグランジュ変位を使うと、式(14)は次のように積分できる。
【0086】
【数29】
【0087】
ここで、次式およびC(t)は、不定積分の結果である時間の任意関数である。
【0088】
【数30】
【0089】
その表現はχ=0の場合にわかり、電場は式(7)により得られる。電子雲の前部における電場の構造は次のようになる。
【0090】
【数31】
【0091】
双方の成分の流体力学的記述にイオンの動きを導入すると、(膨張する電子雲の前部における)長手方向の電場が得られ、この電場はイオンの物理パラメータに依存する。その依存性は、以下の相対論的電子に対しt<τ〜1000/ωpeについて、パラメータχの値が大きいほど電場が大きくなるようになる。
【0092】
【数32】
【0093】
このように場の強度が増加することにより、通常、陽子エネルギーは高まるが、これは2D PICシミュレーションでも見られた(図3を参照)。なお、式(15)は電子が標的に戻らないと仮定して得られたものである。前項で説明したように、電子の大半は最終的に標的に戻り、スラブの周囲で複雑な振動運動を見せる。これらの電子の存在により、標的内の総電荷の一部が遮蔽され、その実効電荷密度が低下する。このためイオン運動の寄与は過大評価されるが、標的の物理特性に対する依存性は、通常、元のまま残る。
【0094】
ペタワットレーザーパルスと2層標的とが相互作用している間の陽子加速は、PICシミュレーションおよび流体力学的解析モデルを使って研究されてきている。陽子加速の効率に対し重イオンスラブが果たす役割、より具体的には、クーロン爆発効果が長手方向の静電場に及ぼす影響は、定量的に理解することができる。電子が標的から放出される際は、標的面と膨張する電子雲前部との間の領域で強い静電場が生じうる。この場の時空的変化は、標的内部のイオン力学(クーロン爆発)と、標的外部の自己無撞着電子力学との双方により決定できる。PICシミュレーションの結果では、イオン膨張が強靭であるほど陽子が高エネルギーになることが示されている。シミュレートされた長手方向の電場プロファイルは、パラメータχ=Zime/miの値が大きいほど標的面を越えた領域における電場の値が大きくなる傾向を呈している。この場の強度の増加により、通常、陽子は高エネルギーになる。本明細書で説明する例では、炭素とプラチナとは電離状態が同じであるにもかかわらず、炭素基板の場合、プラチナから作製されたものに対し最大陽子エネルギーに最高50%の差が見られた。単純化した1次元の流体力学モデルを使うと、膨張する電子雲の前部における電場プロファイルが得られる。電子−イオンプラズマの流体力学的な記述にイオン運動を考慮すると、標的面を越えた領域における電場強度は増加する。式(12b,12c)からわかるように、電子が存在しないと、膨張するイオン標的内部の電場は、構造パラメータχの値が大きい基板の場合、典型的に低くなる一方、標的面外部の電場の大きさはχの値にかかわらず変化しない。これは最終的に加速される陽子のエネルギー低下につながり、シミュレーション結果および解析的予測と矛盾する。このため、標的面を越えた領域で観測される電場強度の増加は、イオン成分および電子成分双方の力学が重ね合わせられた結果でありうる。
【0095】
上述のとおり、イオンの電離状態は、計算値としてではなく、パラメータとして扱うことができる。定性的レベルでは、所与のレーザー強度について、原子質量が大きな基板ほど、より高度に電離できると考えることが実際的であろう。一方、どの基板が陽子エネルギーを最大限に伸ばすかを定量的に予測するには、有効な原子電離状態について信頼度の高い計算方法が必要である。その点では、希ガスに関するAugstら、Phys.Rev.Lett.、63、2212、1989の研究を可能な出発点として使うと、他の元素についてさらに調べることができる。
【0096】
本明細書で提供する方法は、衝突効果を含めるよう修正することもできる。レーザー光の存在下で電子およびイオンが衝突すると、逆制動放射による電子成分の加熱が起こり、光吸収の機序が付加的に導入される。衝突の効果は、通常表皮効果および異常表皮効果を記述する場合重要になる可能性があり、これにより標的内で伝搬されるレーザー光の一部が影響を受ける。
【0097】
本明細書で提供する方法の次元は、修正も可能である。2次元PICシミュレーションは、電気素量間のクーロン相互作用ポテンシャルの形態が異なるため、3次元のものと定量的に異なる場合がある(2Dの場合φ〜lnτであるのに対し、3Dの場合はφ〜l/τ)。その悪影響の1つは、2Dの方法で予測される最大陽子エネルギーが、3Dの方法と比べて過大評価される場合があることである。最大陽子エネルギーに予測される基板構造パラメータχへの依存性も、この方法の次元により決定できる。最大陽子エネルギーは1Dの理論モデルでも2Dのシミュレーションでもχに依存するため、この相関は3Dの方法でも見られることが期待される。
【0098】
このモデル化の結果とシミュレーションの結果とから、本発明のレーザー加速イオンビームを設計する方法が得られる。これらの方法には、重イオン層と、電場と、最大の軽い陽イオンエネルギーを伴うエネルギー分布を有した高エネルギーの軽い陽イオンとを含むシステムのモデル化が含まれる。PICなどの適切なモデル化方法は、上記のとおりである。前記重イオン層と、前記電場と、前記最大の軽い陽イオンエネルギーとの物理パラメータは、前記モデル化方法を使って相関される。レーザー加速イオンビームは、重イオン層のパラメータを変化させて高エネルギーの軽い陽イオンのエネルギー分布を最適化することにより設計する。重イオン層のパラメータを例えばシミュレーションにより変化させる適切な方法は、上述のとおりである。
【0099】
いかなるタイプの標的材料も使用が可能で、標的は、重イオン層を生じる少なくとも1つの材料と、軽イオン材料を生じる1つの材料とを有することが好ましい。本発明の種々の実施形態の標的および方法において、重イオン層は、高エネルギーの軽い陽イオンの原子質量にほぼ等しい質量より大きい原子質量を有する原子、イオン、若しくはこれらの組み合わせから構成された材料を適切に有する。適切な重イオン層は、約10ダルトンより大きい分子質量を有する原子、例えば炭素、任意の金属、またはこれらの組み合わせから構成された材料から得られる。適切な標的の重イオン層への使用に適した金属の例としては、金、銀、プラチナ、パラジウム、銅、またはこれらの任意の組み合わせなどが含まれる。適切な高エネルギーの軽い陽イオンは、水素、ヘリウム、リチウム、ベリリウム、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、ネオン、アルゴン、またはこれらの任意の組み合わせから得られる。陽子は、イオン、分子、組成物、またはこれらの任意の組み合わせから構成された水素含有物質から適切に調製される。適切な水素含有材料は、標的の金属層に隣接した層として形成される。特定の実施形態では、前記高エネルギーの軽い陽イオンは、軽い原子を多く含む材料の層から生成される。適切な軽い原子を多く含む材料としては、水素、ヘリウム、リチウム、ベリリウム、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、ネオン、アルゴン、またはこれらの任意の組み合わせを、重イオン層に隣接して、またはそれに近接して維持できる任意タイプの物質が含まれる。軽い原子を多く含む材料の適切な例としては、水、有機材料、希ガス、高分子、無機材料、またはこれらの任意の組み合わせなどがある。一部の実施形態では、陽子は、固体標的の表面に存在する炭化水素または水蒸気の薄い層から生じる。標的の調製には、いかなるタイプのコーティング技術も使用できる。高エネルギーの軽い陽イオンを提供するための適切な材料は、重イオンを生じる重原子から構成された1若しくはそれ以上の材料(基板など)に容易にコーティングできる。
【0100】
一部の実施形態では、多層軽イオン材料を使うことができる。他の実施形態では、場において分離が可能な複数のイオンタイプを生成する材料を導入することもできる。軽いイオンを効果的に加速するには、レーザーパルスを高密度の標的材料と相互作用させて非常に強力な電場を生成する。適切なレーザーパルスはペタワットの範囲である。一部の実施形態では、軽イオンから構成され材料中の電子密度が高い種々の材料を使用することができる。2003年6月2日付で出願された米国特許出願第60/475,027号の優先権を主張する「High Energy Polyenergetic Ion Selection Systems,Ion Beam Therapy Systems,and Ion Beam Treatment Centers」、WO2004109717、国際特許出願第PCT/US2004/017081号(これらに含まれるイオン選択システムに関する部分は、参照により本明細書に組み込まれるものである)に詳述されているように、サンドイッチタイプの標的システムでは、異なる種のイオンを加速でき、それらを電磁場の印加により分離することができる。本発明における使用に適合させることが可能な、放射線治療用にレーザー加速陽子を変調する方法の例は、2003年6月2日付で出願された米国特許出願第60/475,027号と、2003年12月2日付で出願された米国特許出願第60/526,436号と(これらに含まれる放射線治療用にレーザー加速陽子を変調する方法に関する部分は、参照により本明細書に組み込まれるものである)の優先権を主張する「Methods of Modulating Laser−Accelerated Protons for Radiation Therapy」、国際公開第WO2005057738、米国特許出願第 号に詳述されている。
【0101】
前記モデル化およびシミュレーションの結果からは、レーザー加速イオンビームの生成に使用する標的を設計する方法も得られる。これらの方法には、標的と、電場と、最大の軽い陽イオンエネルギーを伴うエネルギー分布を有した高エネルギーの軽い陽イオンとを含むシステムをモデル化する工程が含まれる。これらの方法では、構造パラメータχで特徴付けられる重イオン層が、標的に含まれる。前記構造パラメータχはZime/miと定義され、ここでZiは重イオン層内の重イオンの特定の電離状態、meは電子の質量、miは前記重イオン層内の前記重イオンの質量を表す。これらの実施形態における標的を設計する方法は、前記高エネルギーの軽い陽イオンのエネルギー分布を最適化するため、標的を特徴付ける前記構造パラメータχを変化させる工程を含む。この構造パラメータχは、約10−6〜約10−3の範囲、特に約10−5〜約10−4の範囲で変化させることができる。これらの値は、前記高エネルギーの軽いイオンに陽子が含まれる実施形態で、特に有用である。前記構造パラメータの値は、特定の重イオンの特定の電離状態と、電子の質量(約9×10−31kg)と、特定の重イオンの質量とについて知識を有する当業者が材料を適切に選択することにより選択可能である。適切な高エネルギーの軽い陽イオンは、大部分の実施形態で最高約50MeV、一部の実施形態では最高約250MeVもの最適なエネルギー分布を有する。
【0102】
重イオン層は、約10ダルトンを超える原子質量を有した原子を含む材料から適切に得られ、その例としては、炭素、金属、またはこれらの任意の組み合わせなどがある。適切な金属には、金、銀、プラチナ、パラジウム、銅、またはこれらの任意の組み合わせなどがある。一部の実施形態では、前記高エネルギーの軽い陽イオンは、陽子、炭素、またはこれらの任意の組み合わせを有する。適切な高エネルギーの軽い陽イオンは、水素、ヘリウム、リチウム、ベリリウム、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、ネオン、アルゴン、またはこれらの任意の組み合わせから得られる。適切な高エネルギーの軽い陽イオンは、適切に強いペタワットレーザーパルスの選択により電場強度を調整し、かつ標的材料の構造パラメータχの値を調整することにより、約50MeV〜約250MeV範囲のエネルギーを有する。陽子は、イオン、分子、組成物、またはこれらの任意の組み合わせから構成された水素含有物質から適切に調製される。適切な水素含有材料は、標的の金属層に隣接した層として形成される。
【0103】
前記モデル化およびシミュレーションの結果からは、システム内においてレーザー加速された高エネルギーの軽い陽イオンビームの生成に有用な標的も得られる。本発明のこの実施形態に係る標的は、標的と、電場と、最大の軽い陽イオンエネルギーを伴うエネルギー分布を有した高エネルギーの軽い陽イオンとを含むシステムをモデル化する工程により設計が可能である。これらの実施形態では、上記で定義済みの構造パラメータχで特徴付けられる重イオン層が、標的に含まれる。この方法には、前記高エネルギーの軽い陽イオンのエネルギー分布を最適化するため、前記構造パラメータχを変化させる工程が含まれる。前記構造パラメータχは、前記エネルギー分布を最適化するため、反復またはPICシミュレーションにより変化させることができる。適切な材料は、上記のように前記構造パラメータχを制御するため選択できる。
【0104】
前記モデル化およびシミュレーションの結果からは、標的と、電場と、高エネルギーの軽い陽イオンとを含むシステムにおいてレーザー加速イオンビームを生成する上で有用な標的も得られる。このシステムで生成される適切な高エネルギー陽イオンは、最大の軽い陽イオンエネルギーを含んだエネルギー分布を有する。これらのシステムにおける適切な標的は、構造パラメータχにより特徴付けられる重イオン層を含み、その場合、前記構造パラメータχを変化させると、モデル化したシステムの高エネルギーの軽い陽イオンのエネルギー分布が最大化される。この構造パラメータχの選択および材料の選択については、上記のとおりである。
【0105】
種々の実施形態では、重原子を含んだ材料および軽原子材料を組み合わせることにより、標的を調製するための重イオンおよび軽イオンをそれぞれ提供することができる。例えば、一実施形態は、炭化水素(炭素および陽子など)から構成される軽原子層と、金属(金または銅など)から構成される重原子層とを有する2層標的である。一実施形態では、サンドイッチ状の標的システムを使って高品質(高エネルギーで、エネルギー分布の広がりが狭く、低放射)の軽イオンビームを生成することができる。このようなサンドイッチ状の標的システムには、構造パラメータχが無限小値でなく、より重い原子を含有した、高電子密度の第1の層基板を含めることができる。これらの実施形態では、第2の層は、高エネルギー軽イオンを生じさせる軽原子を有しており、前記第1の層基板よりはるかに薄くなければならない。このような標的構造が強レーザーパルスと相互作用すると、上記のように軽イオンが加速されて、高エネルギーの軽イオンビームが形成される。上述のとおり、この技術を使うと、多種多様な軽イオンを加速することができる。
【0106】
適切な標的を設計する際は、高分子を使うこともできる。種々の実施形態で、種々のタイプの高分子材料およびプラスチック材料が使用可能である。本発明に係る標的を調製する場合、いかなるプラスチック材料も良好な候補となりうる。炭素、水素、酸素、窒素、硫黄、およびリンの原子と、これらの任意の組み合わせとの高分子から構成されたプラスチック材料は、レーザーによる電離後に高い電子濃度を生成できるよう適切に十分な密度を有する。適切な軽イオンは、低質量を有し、構造パラメータχを有限値にする。
【0107】
一部の実施形態では、高エネルギー炭素イオンから構成された高エネルギー軽イオンビームを生成する標的を設計することができる。例えば、炭素イオンを加速するサンドイッチ状の標的は、厚さ約50nm〜約100nm範囲の炭素層で金属基板をコーティングすることにより作製できる。適切な金属基板としては、銅、金、銀、プラチナ、パラジウム等の金属膜などがある。
【0108】
想定される種々の更なる実施形態では、異なる層のパラメータを計算できる。例えば、所与のレーザーパルス特性について基板中のイオン荷電状態分布を予測する場合、信頼度の高いモデルを提供することができる。PICシミュレーションに加え、またはそれを補うため、ビームまたは標的を最適化する他の方法も実施可能である。例えば一実施形態では、メインパルス前のプリパルス(レーザーペデスタルなど)により、レーザーパルスの形状を修正することができる。レーザープリパルスは、メインレーザーパルスが、標的への到達時に特性の変化した基板と相互作用するよう、メイン基板の形状および物理条件を劇的に変化させる上で十分な強さがある。これにより、PICシミュレーションと同時に(基板に関する信頼度の高い電離モデルと併せて)レーザープリパルスおよび標的の相互作用をモデル化すると、発生する物理過程についてさらに正確な理解を得ることができる。このプリパルス効果の結果を含めると、高エネルギー軽イオンビームを合成するための標的設計および方法の開発・改善に役立つ。
【0109】
更なる実施形態では、この方法を使って、種々の標的を設計し高エネルギー軽イオンビームを合成できることが想定される。本明細書で説明するように流体力学的およびPICシミュレーションを組み合わせると、所与の初期レーザーパルスおよび標的特性についての軽イオンエネルギースペクトルをもたらすことができる。異なる材料と形状と寸法との標的についてパラメータ研究を行う当業者が通常の実験を行えば、癌その他の疾患を治療するためのハドロン治療に適した高品質の加速軽イオンをもたらす、更なる最適レーザー/標的特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
上述の要約および以下の詳細な説明は、添付の図面を参照することで、さらに明確に理解される。本発明を例示する目的で本発明の例示的な実施形態を図面に示すが、本発明は、開示している具体的な方法、組成、および装置に限定されるものではない。当該図面は、以下のとおりである。
【図1】図1は、レーザー標的システムの一実施形態の模式図であり、前記標的は、高密度重イオンスラブと、その後面に付着している低密度水素層とから成る。
【図2a】図2は、t=40/ωpeにおける(x,y)平面の電場の(a)長手方向の成分(Ex)、および(b)それを横断する方向の成分(Ey)の分布を示した図である。
【数33】
【図2b】図2は、t=40/ωpeにおける(x,y)平面の電場の(a)長手方向の成分(Ex)、および(b)それを横断する方向の成分(Ey)の分布を示した図である。
【数34】
【図3a】図3は、構造パラメータχの異なる3つの値について、t=32/ωpeにおける(a)電子、(b)陽子、および(c)重イオンのエネルギー分布を示した図である。
【図3b】図3は、構造パラメータχの異なる3つの値について、t=32/ωpeにおける(a)電子、(b)陽子、および(c)重イオンのエネルギー分布を示した図である。
【図3c】図3は、構造パラメータχの異なる3つの値について、t=32/ωpeにおける(a)電子、(b)陽子、および(c)重イオンのエネルギー分布を示した図である。
【図4a】図4は、t=32/ωpeにおける(x,y)平面の(a)電子密度、(b)陽子密度、およびプラチナイオン密度の空間分布を示した図である。
【数35】
【図4b】図4は、t=32/ωpeにおける(x,y)平面の(a)電子密度、(b)陽子密度、およびプラチナイオン密度の空間分布を示した図である。
【数36】
【図5】図5は、t=32/ωpeにおけるxの関数として、異なる3つのイオン−陽子質量比について、等しい電離状態Zi=4での長手方向の電場プロファイルEx(x,Ly/2)を示した図である。
【数37】
【図6a】図6は、t=150/ωpeにおける、電子(実線)およびイオン(点線)の電子位相空間分布(a)および密度分布(b)を示した図である。初期の電子運動量分布は、(0<x<l/2)についてPe,0=10mec、(−l/2<x<0)についてPe,0=−10mecである。
【図6b】図6は、t=150/ωpeにおける、電子(実線)およびイオン(点線)の電子位相空間分布(a)および密度分布(b)を示した図である。初期の電子運動量分布は、(0<x<l/2)についてPe,0=10mec、(−l/2<x<0)についてPe,0=−10mecである。
【図7】図7は、以下の単純な表現により近似して数値的に得られたパラメータγを示した図である。
【数38】
ここで、a=0.691(4)、b=0.2481(2)であり、以下の関数は正規化した電子初期運動量である。
【数39】
【技術分野】
【0001】
この特許出願は、2004年12月22日付で出願された米国仮特許出願第60/638,821号(この参照によりその全体が本明細書に組み込まれるものである)に基づく利益を主張するものである。
【0002】
本研究の一部は、契約番号CA78331として米国国立衛生研究所保健社会福祉省により支援された。このため、米国政府はこれらの発明に対し権利を有する。
【0003】
本発明の分野は、超高強度レーザーパルスおよび標的材料の相互作用から生成する、レーザー加速した陽子などの軽い陽イオンに関する。また、本発明の分野は、高エネルギーの軽い陽イオンを生成するための超高強度レーザーパルスと相互作用する標的と、その設計とにも関する。
【背景技術】
【0004】
超高強度レーザーパルスとプラズマとの相互作用は、硬X線、中性子、電子、及び高エネルギーイオンの生成など、種々の分野で有望な応用が期待されるため、これまで著しく注目されてきている。レーザー加速イオンビームは、コリメーション効果が高く、粒子束も高いなど特定の特性を有するため、制御核融合、材料科学、医療診断のための短寿命同位元素の生成、およびハドロン治療(癌治療のための陽子線照射など)といった用途で非常に魅力的である。
【0005】
現在、組成およびエネルギー分布を制御したイオンビームを制御可能に提供することができる標的材料の作製が必要とされている。これまでの実験研究は、超高強度レーザーパルスを薄い固体構造(標的)と相互作用させる間に高速陽子/イオンを生成するための異なる機構を理解することに向けられてきた。その標的としては、厚さが数ミクロン(μm)から100μmを超える範囲の金属および絶縁体のものが使用されてきている。観測されるイオンの源および加速機構は、まだ議論され続けている。これらのイオンは、入射レーザーに直接照射される前面、または空間電荷分離で生成される静電場により加速が起こる後面で作成および加速される。加速方式は特定の実験条件(レーザー台および標的特性の影響)により決定されるが、一部の実験では、標的の後面で陽子が加速されることが示されている。このため、強いレーザーパルスと材料との相互作用の力学をより理解することが必要とされている。この理解により、標的の設計と、レーザー加速イオンビームを生成するための標的設計の方法論とを改善することができる。
【0006】
標的後面でのイオン加速に関する理論モデルの1つは、真空内への準中性プラズマ膨張に基づいている。このモデルにおいて、加速電場は、中性と想定される膨張プラズマ雲の前部の薄い層内で、空間電荷分離により生じる。超短超高強度レーザーパルスと固体構造との相互作用では、準中性の仮定は放棄される。コンピュータシミュレーションによると、ペタワットレーザーパルスとプラズマ膜との相互作用が、プラズマの準中性が破られる膨張領域の形成につながるという結果が示唆されており、これは超高強度パルスによるイオン加速を考える際に考慮すべき要因である。Passoniら、Phys.Rev.E69、026411(2004)は、それぞれ異なる熱エネルギーを伴ったボルツマン分布に従う2つの電子群により生成される電場構造について説明している。電荷分離の効果は、(イオンが存在する)膜内部および(電子が存在する)膜外部の静電ポテンシャル分布について(2つの温度の電子成分を伴う)ポアソン方程式を解くことにより考慮されている。このアプローチは、本質的に時間とは独立した記述を提供するものであるため、限界がある。イオンエネルギーを定量的に推定するには、電場プロファイルの(時間に依存した)経時変化がわからなければならない。S.V.BulanovらがPlasma Phys.Rep.30、21(2004)で提案した取り扱いでは、自己無撞着静電場の時空変化が解明される可能性を示しているが、場の中でイオンが獲得できる最大エネルギーを理解および推定するには更なる研究が必要とされる。また、医療に有用なエネルギー分布を有する陽イオンを生成できるレーザー加速イオンビームシステムの設計および最適化についても、さらに研究が必要である。
【0007】
強い電荷分離の条件下における陽子/イオンの加速については、いくつか理論的な例があり、その1つが、イオンクラスターのクーロン爆発である。レーザーパルスが標的と相互作用すると、標的から電子が飛び出して膜内に強い電場が生じ、この強電場がイオン加速工程で重要な役割を果たす。他の場合、陽子は電離した標的の(時間非依存の)電場により加速され、その力学はテスト粒子近似アプローチを使って記述できる。多層構造の標的システム、より具体的には2層構造の標的システムは、この加速方式について特に良好な構造を有する。この構造において、第1の層は質量miの重イオンおよび特定の電離状態Ziを有し、(前記第1の層の後面に付着した)第2の層は電離水素を有する。レーザー動重力の作用により、電子は、標的を出て重イオンの帯電層を飛び出す。イオンの質量が陽子の質量よりはるかに大きい場合、イオンクラスター(クーロン爆発)の力学は、通常、陽子の実効加速時間中、無視される。この時間中、イオンクラスターの電場は時間から独立していると見なされ、空間的に不均一な静止電場における陽子加速の問題が残る。
【0008】
上述の研究はイオン加速力学を記述する上で有用だが、陽子加速時間は、実際は次式のように比較的長く、自己無撞着電子力学およびイオンクラスター爆発の双方の影響から、電場は一般に時間依存することになる。
【0009】
【数1】
【0010】
その結果、最大陽子エネルギーは、通常、クラスター(例えば、イオン質量および荷電状態)の物理特性に依存する。従って、レーザーと2層構造の標的との相互作用における加速電場および最大陽子エネルギーに、クラスターの特性が及ぼす影響は、完全には理解されていない。このため、現在、高エネルギーレーザーパルスと標的材料との相互作用をより深く理解し、標的の設計を改善することが求められている。この理解により、標的の設計と、レーザー加速イオンビームを生成するための標的設計の方法論とを改善することができる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、クーロン爆発効果の影響を説明する電場変化のモデルを提供するものである。このモデルは、標的と、高エネルギー軽イオンを有するレーザー加速イオンビームとを設計するために使用される。本明細書における用語「高エネルギー」とは、約50MeV〜約250MeVの範囲のエネルギーを有するイオンビームをいう。前記モデルは、電子成分およびイオン成分に関する1次元流体力学方程式の解に基づくものである。このモデルの領域内で得られる結果を使って、標的内の重イオン層の物理パラメータと、電場および最大陽子エネルギーの構造との相関をとる。これらの結果から、陽子などの高エネルギーの軽い陽イオンの生成に有用な2層標的を設計するための設計方程式が得られる。
【0012】
本発明は、更に、レーザー加速イオンビームの生成に使用する標的を設計する方法を提供する。これらの方法は、通常、重イオン層と、電場と、最大陽子エネルギーを伴うエネルギー分布を有した高エネルギー陽子とを含むシステムをモデル化する工程と、前記重イオン層と、前記電場と、前記最大陽子エネルギーとの物理パラメータを、前記モデルを使って相関する工程と、前記高エネルギー陽子のエネルギー分布を最適化するため、前記重イオン層の前記パラメータを変化させる工程とを含む。
【0013】
本発明はまた、レーザー加速イオンビームの生成に使用する標的を設計する方法と、そのような方法に基づき作製された標的とを提供し、前記方法は、重イオン層と、電場と、最大陽子エネルギーを伴うエネルギー分布を有した高エネルギー陽子とを含むシステムをモデル化する工程を有し、ここで前記システムは、パラメータχで記述でき、またパラメータχを変化させることにより前記高エネルギー陽子のエネルギー分布を最適化することができるものである。
【0014】
本発明は、レーザー加速イオンビームを設計する方法も提供し、この方法は、重イオン層と、電場と、最大の軽い陽イオンエネルギーを伴うエネルギー分布を有した高エネルギーの軽い陽イオンとを含むシステムをモデル化する工程と、前記重イオン層と、前記電場と、前記最大の軽い陽イオンエネルギーとの物理パラメータを、前記モデルを使って相関する工程と、前記高エネルギーの軽い陽イオンのエネルギー分布を最適化するため、前記重イオン層の前記パラメータを変化させる工程とを含む。
【0015】
本発明は、レーザー加速イオンビームの生成に使用する標的を設計する方法も提供し、この方法は、標的と、電場と、最大の軽い陽イオンエネルギーを伴うエネルギー分布を有した高エネルギーの軽い陽イオンとを含むシステムをモデル化する工程であって、前記標的は、パラメータχにより特徴付けられる重イオン層を有するものである、前記モデル化する工程と、前記高エネルギーの軽い陽イオンのエネルギー分布を最適化するため、前記パラメータχを変化させる工程とを有する。
【0016】
本発明は、レーザー加速された高エネルギーの軽い陽イオンビームをシステムにおいて生成するために使用する標的も提供し、前記標的の作製は、当該標的と、電場と、最大の軽い陽イオンエネルギーを伴うエネルギー分布を有した高エネルギーの軽い陽イオンとを含むシステムをモデル化する工程であって、前記標的は、パラメータχにより特徴付けられる重イオン層を有するものである、前記モデル化する工程と、前記高エネルギーの軽い陽イオンのエネルギー分布を最適化するため、前記パラメータχを変化させる工程とにより行う。
【0017】
本発明は、レーザー加速イオンビームをシステムにおいて生成するために使用する標的も提供し、前記システムは、前記標的と、電場と、最大の軽い陽イオンのエネルギーを伴うエネルギー分布を有した高エネルギーの軽い陽イオンとを含み、前記標的は、パラメータχにより特徴付けられる重イオン層を有し、前記パラメータχを変化させると、モデル化した前記システムの高エネルギーの軽い陽イオンのエネルギー分布が最大化されるものである。
【0018】
本発明の、これらの及び別の観点は、以下の図面および詳細な説明を考慮することにより、当業者に容易かつ明確に理解される。本要約及び以下の詳細な説明は、添付の請求項で定義された本発明を限定するものと見なすべきでなく、本発明の例および説明を提供する役割を果たすのみである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、本開示の一部を形成する添付の図面及び実施例と併せて以下の詳細な説明を参照することで、より容易に理解されるであろう。本発明は、本明細書に記載し及び/若しくは示す具体的な装置、方法、条件、若しくはパラメータに限定されるものではないこと、また本明細書で使用する用語は、一例として特定の実施形態を説明するためだけのものであり、本発明に係る請求項を限定することを意図したものではないことを理解すべきである。また、添付の請求項を含む本明細書で使用するとおり、不定冠詞「a」、「an」、及び「the」を伴う単数形名称は複数形名称を包含し、特定の数値への言及は、別段の断わりがない限り、少なくともその特定の値を包含する。ある範囲で値を表現している場合、別の実施形態は、特定の1つの値から、および/または他の特定の値までを包含する。同様に、直前に「約」を伴う近似値として値を表現している場合、特定の値は、別の実施形態を形成することが理解されるであろう。すべての範囲は、包括的で組み合わせ自在である。
【0020】
本発明の特定の特徴は、明瞭化のため、別個の実施形態の文脈で本明細書に説明されており、組み合わせて単一の実施形態として提供することもできることを理解すべきである。逆に、簡略化のため単一の実施形態の文脈で説明している本発明の種々の特徴はまた、別個に、若しくは任意のサブコンビネーションで提供しても良い。さらに、範囲として値に言及している場合は、その範囲内のすべての個々の値が含まれる。
【0021】
本発明の一の観点において、クラスター特性が加速電場および最大陽子エネルギーに及ぼす影響は、レーザーと2層標的との相互作用についてPIC(particle in cell)シミュレーションを使って決定される。クーロン爆発効果の影響を説明する電場変化の理論モデルが提供されている。このモデルは、電子成分およびイオン成分に関する1次元の流体力学方程式の解に基づくものである。このモデルの領域内で得られた結果から、重イオン層の物理パラメータと、電場の構造および最大陽子エネルギーとの相関を説明することができる。
【0022】
コンピュータシミュレーションの結果。高出力レーザーパルスと2層標的との相互作用を説明するため、2次元のPIC数値シミュレーションコードを使用した。このPICシミュレーションにより、具体的には、非線形かつ動力学的な効果の寄与が多次元解析アプローチを極度に困難にする場合において、レーザーとプラズマとの相互作用の特徴が明らかになる。陽子の加速は、レーザーパルスと2層標的との相互作用で考慮される。計算は、2048×512シミュレーションボックスで、グリッドサイズをΔ=0.04μm、シミュレートする準粒子の総数を4×106として行った。粒子および電磁場には、周期的境界条件を使用した。この境界条件が前記シミュレーションの結果に及ぼす影響を最小限に抑えるため、最大シミュレーション時間は以下のように設定した。
【0023】
【数2】
【0024】
ここで、ωpeは電子プラズマ周波数(電子プラズマ振動数)である。異なる電子−イオン質量比および電離状態の複数の型の標的について調べた。イオンの電離状態は、超高強度レーザーパルスが存在する所与の多電子系に関する波動方程式の解から計算できる。2若しくはそれ以上の電子の系に関する電離状態の計算は一般に非常に長時間を要するため、イオンの荷電状態は、一部の実施形態において、計算値としてではなくパラメータとして提供できる。
【0025】
図1は、2層標的の一実施形態の模式図を示したものである。一実施形態では、厚さ0.4μmの高密度重イオン膜と、その後面に付着した厚さ0.16μmの低密度水素層とを含めることができる。その密度をそれぞれ以下に示す。
【0026】
【数3】
【0027】
【数4】
【0028】
この標的を、レーザーパルスが左から相互作用領域に入射するシミュレーションボックスの中央に配置した。前記レーザーパルスの電場をY軸に沿って偏光させ、その無次元振幅a=eE0/meωc=30は、レーザー波長λ=0.8μmの場合1.9×1021W/cm2のレーザーピーク強度に対応する。前記レーザーパルスはガウス分布の形状であり、長さ(持続時間)および幅(ビーム直径)がそれぞれ15λおよび8λ(FWHM)で、これは約890TWのシステムに対応する。
【0029】
図2では、Ex(長手方向)成分およびEy(垂直方向)成分のt=40/ωpeにおける電場の空間分布を示している。標的の厚さは無衝突表皮厚さよりはるかに大きいが、入射パルスは、電子プラズマ周波数の相対論的低下により、反射される成分と伝搬される成分とに分かれる。その結果、レーザーエネルギーの一部は、臨界密度を超えた標的を貫通する。陽子を加速する長手方向の電場は、前記標的の両側で空間的に長距離にわたり延在する。この場は、伝播するレーザーパルスにより順方向および逆方向に加速される電子雲の膨張により生成される。
【0030】
図3は、基板の構造パラメータχ=Zime/miの異なる値について、t=32/ωpeにおける(a)電子、(b)陽子、および(c)重イオンのエネルギー分布を示したものである。電子および重イオンのエネルギースペクトルは準熱的分布に類似する一方、陽子のエネルギースペクトルは、χの値に依存した特徴的エネルギーを伴う準単一エネルギー形状を有することがわかる。T.Z.Esirkepov,S.V.ら、Phys.Rev.Lett.89、175003(2002)には、高品質の陽子線は、2層の標的構造から生成できることが示されている。レーザーパルスが標的と相互作用すると、第1層内の重原子および第2層内の水素原子はどちらも電離し、これにより、高Z重イオンプラズマと、その後面に「付着した」電離水素とから成るプラズマサンドイッチ構造が生じる。動重力の作用下では、一部の電子がプラズマから(順方向および逆方向に)放出されることにより、薄い層を加速する長手方向の電場が生じ、この加速は、前記長手方向の電場が有意に摂動を受けなくなる程度に前記薄い層が十分小さくなるまで起こる。この条件下では、荷電重イオン層と高速電子雲との間で生じた電場により陽子が加速される。この実施形態では、陽子層をより薄くすると、加速される陽子のエネルギーの広がりはより狭くなる。特定の作用理論に制限されるわけではないが、これは、薄いスラブ内の陽子に常にほぼ等しい加速電場がかかるためである。陽子力学におけるこの特性は、(x,y)平面における(a)電子密度、(b)陽子密度、およびプラチナイオン(Zi=4、mi/mp=195)密度について図4に示した粒子の空間分布からも見られる。t=32/ωpeにおける陽子層は、すでにこの高Z標的から離れ、ほぼ歪みなく順方向に移動している。同時に、この重イオン層は質量がはるかに大きいため、はるかに緩慢な率で拡張している。イオンの特徴的な応答時間は、以下のプラズマ周波数のオーダーになる。
【0031】
【数5】
【0032】
ここで、n0はイオン密度である。電子が標的を離れると、前記イオン層は、クーロン反発力(斥力)の作用下で膨張し始める。陽子と比べイオンの応答時間は長いが、その力学は、長手方向の電場に影響を及ぼすことにより陽子線の加速に作用すると見られる。
【0033】
図3からわかるように、パラメータχ=Zime/miの値が大きいと、より効果的な陽子加速が得られる(プラチナの場合と比べ、電離状態が同じZi=4であると仮定すると、炭素基板の場合50%弱もの増加が見られる)。すなわち、イオン膨張が強靭なほど、陽子加速も効果的になる。イオン膨張は長手方向の電場低下を伴い(電場エネルギーの一部が、膨張するイオンの運動エネルギーに変わる)、陽子エネルギーの低下につながると推定されるため、一見して上記の結果は、若干直観に反しているように感じられる。
【0034】
最大陽子エネルギーの単純な推定値は、S.V.BalanovらのPlasma Phys.Rep.28、975(2002)により示唆された画像から確かめることができ、その場合、重イオンの荷電層の長手方向電場は、長半径が標的の横断方向の寸法R0に等しく短半径がI(2Iは標的の厚さ)に等しい帯電した楕円形により生じる電場で近似される。この場合、前記長手方向電場および静電ポテンシャルは、以下で記述される(LandauおよびLifshits、Electrodynamics of Continuous Media、Pergamon Press、Oxford、1988)。
【0035】
【数6】
【0036】
この場で陽子が獲得できる最大運動エネルギーは、前記標的の表面におけるポテンシャルエネルギーに等しい。前記標的の厚さが前記横断方向の寸法未満であると仮定すると、次式が得られる。
【0037】
【数7】
【0038】
一実施形態において、標的内の電場の引力を克服して標的を飛び出し標的に戻らないほどの十分な運動エネルギーをすべての電子が取得すると仮定することにより、式(3)の推定値により最大陽子エネルギーの上限が得られる。ただし実際にシミュレーションで使われるレーザー強度では、通常、電子全体の小さい割合しか標的を脱出することはできない。残りの電子は、前記標的の近傍にとどまり、その一部がかなり複雑な振動運動を呈する(下記参照)。この効果で膜内の総電荷密度が大幅に減少し、これにより式(3)で推定される最大陽子エネルギーが実質的に低下する。式(3)は、明らかに(所与の初期電子密度について)イオン質量と、膜の電離状態とに対する陽子エネルギーの依存性を説明しない。前記標的のクーロン爆発と、自己無撞着電場における電子力学との双方を組み合わせると、式(1)で得られる単純化モデルとは対照的な時間依存場が得られる。
【0039】
最大陽子エネルギーの標的パラメータへの依存性は、一般に、長手方向の電場によるイオン運動の影響から来るものである。図5は、同じ電離状態Zi=4を有する異なる3つのイオン−陽子質量比について、t=32/ωpeにおける、標的からの長手方向(陽子加速の方向)の距離の関数として電場プロファイルを示した図である。電場構造は、膨張している重イオン層の表面(電場が距離とともに減少し始める点)におけるその電場の大きさが、場エネルギーのイオン運動エネルギーへの変換効率の低下のため、イオン質量とともに増加するようになっている。一方、標的からさらに離れた場所では電場が逆の傾向を呈し、すなわち、その電場の値はイオン−陽子質量比の増加とともに減少する。陽子の層は、(有意な標的膨張が起こる前に)標的の表面をすばやく離れるため、通常、膜外の場の分布が最大陽子エネルギーを決定する。
【0040】
一実施形態において、膨張する電子雲および重イオン雲により生成された自己無撞着電場における陽子加速の問題も考慮できる。また、この実施形態及び他の実施形態において、クーロン爆発の効果が加速電場の構造に及ぼす影響も評価できる。高強度レーザーパルスとプラズマとの相互作用は極度に複雑な物理現象を伴うため、明確化すべき長手方向電場の発生については特定の態様を可能にする若干単純化した物理像を考えることができる。
【0041】
電子は、初期、標的内部において、以下の平坦な密度分布で位置すると推定される。
【0042】
【数8】
【0043】
ここで、ne,0=Zin0であり、θ(x)はヘビサイドの単位ステップ関数である。高強度短レーザーパルスの作用下では、電子は一般的に長手方向の相対論的運動量Pe,0を獲得する。この運動量は、初期電子位置xi(0)の関数である。この場合、(区間0<x<l/2に位置する)半分の電子が前記レーザーパルスから運動量Pe,0を獲得し、(区間−l/2<x<0に位置する)残りの半分の電子が負の運動量−Pe,0を獲得するというモデルが得られる。このモデルは、順方向に運動する粒子が動重力により加速される粒子に対応する一方、逆方向に運動する電子が「真空加熱」として知られる過程により反対方向に抽出される状況では、電子とレーザーパルスとの相互作用による電子の流体運動を若干記述することができる。このモデルは、初期の電子の流体運動量分布の記述を著しく単純化するが、電場変化の関連した物理機序を適切に記述することができる。
【0044】
A.電子雲の自己無撞着的な変化。真空中へのプラズマ膨張は、電子成分およびイオン成分に対する1次元の流体力学方程式を使って記述できる。一実施形態において、陽子層は、生じた電場に摂動を与えないと仮定できる。この場合、両成分についての流体力学方程式は、次のようになる。
【0045】
【数9】
【0046】
ここで、neおよびniはそれぞれ電子密度およびイオン密度で、υeおよびPeはそれぞれ、以下の式を介し関連し合う電子の速度および運動量である。
【0047】
【数10】
【0048】
下記の式(7)では、クーロン爆発の過程で非相対論的イオン運動学を使用することができる。
【0049】
式(4)を解くにはオイラー変数(x,t)をラグランジュ変数(x0,t)に変換する。ここで、x0は、t=0における電子流体要素の座標である。双方の座標セットは、以下の式を介して関連し合っている。
【0050】
【数11】
【0051】
ここで、ξe(x0,t)は、電子流体要素の、時刻tにおける初期位置x0からの変位である。新しい変数方程式(4)は次のようになる。
【0052】
【数12】
【0053】
ここで、波形符号は新しい変数での関数であることを示すために使われ、以下の式及びviは電子流速およびイオン流速である。
【0054】
【数13】
【0055】
また以下の式は、初期電子密度である。
【0056】
【数14】
【0057】
この新しい変数により電子流体成分の流体力学方程式は大幅に単純化できるが、イオンについての方程式は(x,t)を使ったものより若干複雑なものになってしまう。小ささのパラメータx=Zime/mi<<1により、式(6)におけるイオンの運動は、ゼロ次解への摂動と考えることができ、これは静止したイオンの場合に対応する初期の電子運動量分布が一定である場合、vi=0および次式での式(6)の解は、以下の(7)、(8a)、及び(8b)の式で与えられる。
【0058】
【数15】
【0059】
【数16】
【0060】
ここで、次式は電子が標的内部にある際(0<x<l/2)の通過時間である。
【0061】
【数17】
【0062】
またγ(Pe,0)は、初期電子運動量Pe,0に依存できるパラメータである。その値は、電子が標的内部にある場合の式(6)の数値解から得ることができ、その単純な解析表現γ(Pe,0)=(1+a(Pe,0/mec)2)bは図7に示している。式(8)は、次の条件を満たす電子を記述するものである。
【0063】
【数18】
【0064】
これから、電子が標的の境界に達することがわかる(初期に標的の内部深くに位置している一部の電子は、標的の表面に到達しない場合もある)。式(8a〜8b)はBulanovらが公開したものとやや異なるが、これは電子が標的を脱出するためにかかる有限時間を考慮しているためである。次の時刻において、電子流体の変位は、以下の最大値に達する。
【0065】
【数19】
【0066】
【数20】
【0067】
そして、その後減少する。最終的に、電子流体要素は標的へ戻り、他方の側に再出現する。
【0068】
これにより、電子成分の全般的な力学は、標的を中心とした振動運動として記述することができる。戻り時間または振動周期は、流体要素の初期位置x0に依存する。初期、プラズマスラブ((l/2−x0)→0)の境界により近かった電子は、戻り時間がより長くなる。電子流体運動におけるこの非同期性の存在は、初期に(初期条件により設定され)「秩序付けられた」電子軌跡の急速な「混合」につながる。数10プラズマ周期後には、電子の位相空間分布および密度分布は、標的の周囲に大半の電子が局在化して当該標的の電荷を遮蔽するように変化する。図6は、1次元PICシミュレーションで得られた時刻t=150/ωpeにおける電子の位相空間分布(a)および密度分布(b)を示したものである。上述のとおり、電子運動量分布の初期条件は次式であった。
【0069】
【数21】
【0070】
それ以降の時刻における位相空間分布は、運動量分布のかなり広い、膨張するイオン層と同心の電子雲が形成されることを示している。電子構造は、標的から距離をおいて現れ、νe,ρにほぼ等しい速度で標的から離れた方向へ伝播する。これらは、電子雲の前部に由来する粒子である(|x0|→l/2)。
【0071】
B.標的面を越えた位置でのクーロン爆発および電場構造。特定の作用理論に制限されるわけではないが、標的のクーロン爆発はイオン層の段階的な膨張につながり、イオン密度の時間依存性をもたらすと見られる。式(4e)によれば、イオン密度の変化は、長手方向の電場プロファイルに影響を及ぼす。前項で計算された電場分布(式(7)を参照)では、無限のイオン質量を仮定することができる(χ=0)。したがって、場の構造が膨張イオン層とともにいかに変化するかを知るには、イオン密度の空間的および時間的な変化を理解する必要がある。その変化は、標的内部の電場の作用により支配される可能性がある。電子が標的を離れたと仮定すると、1Dイオン流体力学方程式の解からイオン変化が自己無撞着性であることがわかる。前項と同様、双方の座標間のつながりがイオン流体要素の変位により表現されるラグランジュ表現を利用すると有利である。
【0072】
【数22】
【0073】
ラグランジュ座標でのイオン流体力学方程式は、次の形態になる。
【0074】
【数23】
【0075】
ここで、Einは標的内部の電場を表す。平坦な以下の初期密度分布についての式(10)の解は次式(11a)及び(11b)のようになる。
【0076】
【数24】
【0077】
【数25】
【0078】
式(11a)からわかるように、電場は標的の中央で消滅し、そこから離れる方向へ(絶対値で)線形的に増加する。式(11b)および関係(9)を使うと、電場およびイオン密度はオイラー変数(x,t)で次のように表せる。
【0079】
【数26】
【0080】
式(12a)は、クーロン反発力(クーロン爆発)の作用下での1次元イオンスラブの変化を記述している。
【0081】
上記のように、シミュレーションの結果からは、加速された陽子の最大運動エネルギーが、標的面を越えた長手方向の場の構造により決定可能であることが示される。したがって、関心があるのは、膨張する電子雲の前部付近における電場の時空間変化である。これら電子の初期条件はx0→l/2であってよく、l/2<x0+ξe(x0,t)についての変位ξe(x0,t)は次のようになる。
【0082】
【数27】
【0083】
式(13)はl/2−x0→0の極限における式(8b)の解から得られたもので、定義(式(5))と合わせると、逆の手続きが得られ、それによりオイラー座標(x,t)へ戻ることができ、Bulanovらのように電子雲の前部における電場構造を((x,t)座標で)決定できる。ただし算出される場分布には、通常、イオン運動の影響が反映されない。イオンの寄与を知るには、式(12a)から式(6e)に密度分布関数を代入することにより、小ささのパラメータχにおける電場展開で次に高次の項を得る。
【0084】
【数28】
【0085】
式(13)で与えられる電子についてのラグランジュ変位を使うと、式(14)は次のように積分できる。
【0086】
【数29】
【0087】
ここで、次式およびC(t)は、不定積分の結果である時間の任意関数である。
【0088】
【数30】
【0089】
その表現はχ=0の場合にわかり、電場は式(7)により得られる。電子雲の前部における電場の構造は次のようになる。
【0090】
【数31】
【0091】
双方の成分の流体力学的記述にイオンの動きを導入すると、(膨張する電子雲の前部における)長手方向の電場が得られ、この電場はイオンの物理パラメータに依存する。その依存性は、以下の相対論的電子に対しt<τ〜1000/ωpeについて、パラメータχの値が大きいほど電場が大きくなるようになる。
【0092】
【数32】
【0093】
このように場の強度が増加することにより、通常、陽子エネルギーは高まるが、これは2D PICシミュレーションでも見られた(図3を参照)。なお、式(15)は電子が標的に戻らないと仮定して得られたものである。前項で説明したように、電子の大半は最終的に標的に戻り、スラブの周囲で複雑な振動運動を見せる。これらの電子の存在により、標的内の総電荷の一部が遮蔽され、その実効電荷密度が低下する。このためイオン運動の寄与は過大評価されるが、標的の物理特性に対する依存性は、通常、元のまま残る。
【0094】
ペタワットレーザーパルスと2層標的とが相互作用している間の陽子加速は、PICシミュレーションおよび流体力学的解析モデルを使って研究されてきている。陽子加速の効率に対し重イオンスラブが果たす役割、より具体的には、クーロン爆発効果が長手方向の静電場に及ぼす影響は、定量的に理解することができる。電子が標的から放出される際は、標的面と膨張する電子雲前部との間の領域で強い静電場が生じうる。この場の時空的変化は、標的内部のイオン力学(クーロン爆発)と、標的外部の自己無撞着電子力学との双方により決定できる。PICシミュレーションの結果では、イオン膨張が強靭であるほど陽子が高エネルギーになることが示されている。シミュレートされた長手方向の電場プロファイルは、パラメータχ=Zime/miの値が大きいほど標的面を越えた領域における電場の値が大きくなる傾向を呈している。この場の強度の増加により、通常、陽子は高エネルギーになる。本明細書で説明する例では、炭素とプラチナとは電離状態が同じであるにもかかわらず、炭素基板の場合、プラチナから作製されたものに対し最大陽子エネルギーに最高50%の差が見られた。単純化した1次元の流体力学モデルを使うと、膨張する電子雲の前部における電場プロファイルが得られる。電子−イオンプラズマの流体力学的な記述にイオン運動を考慮すると、標的面を越えた領域における電場強度は増加する。式(12b,12c)からわかるように、電子が存在しないと、膨張するイオン標的内部の電場は、構造パラメータχの値が大きい基板の場合、典型的に低くなる一方、標的面外部の電場の大きさはχの値にかかわらず変化しない。これは最終的に加速される陽子のエネルギー低下につながり、シミュレーション結果および解析的予測と矛盾する。このため、標的面を越えた領域で観測される電場強度の増加は、イオン成分および電子成分双方の力学が重ね合わせられた結果でありうる。
【0095】
上述のとおり、イオンの電離状態は、計算値としてではなく、パラメータとして扱うことができる。定性的レベルでは、所与のレーザー強度について、原子質量が大きな基板ほど、より高度に電離できると考えることが実際的であろう。一方、どの基板が陽子エネルギーを最大限に伸ばすかを定量的に予測するには、有効な原子電離状態について信頼度の高い計算方法が必要である。その点では、希ガスに関するAugstら、Phys.Rev.Lett.、63、2212、1989の研究を可能な出発点として使うと、他の元素についてさらに調べることができる。
【0096】
本明細書で提供する方法は、衝突効果を含めるよう修正することもできる。レーザー光の存在下で電子およびイオンが衝突すると、逆制動放射による電子成分の加熱が起こり、光吸収の機序が付加的に導入される。衝突の効果は、通常表皮効果および異常表皮効果を記述する場合重要になる可能性があり、これにより標的内で伝搬されるレーザー光の一部が影響を受ける。
【0097】
本明細書で提供する方法の次元は、修正も可能である。2次元PICシミュレーションは、電気素量間のクーロン相互作用ポテンシャルの形態が異なるため、3次元のものと定量的に異なる場合がある(2Dの場合φ〜lnτであるのに対し、3Dの場合はφ〜l/τ)。その悪影響の1つは、2Dの方法で予測される最大陽子エネルギーが、3Dの方法と比べて過大評価される場合があることである。最大陽子エネルギーに予測される基板構造パラメータχへの依存性も、この方法の次元により決定できる。最大陽子エネルギーは1Dの理論モデルでも2Dのシミュレーションでもχに依存するため、この相関は3Dの方法でも見られることが期待される。
【0098】
このモデル化の結果とシミュレーションの結果とから、本発明のレーザー加速イオンビームを設計する方法が得られる。これらの方法には、重イオン層と、電場と、最大の軽い陽イオンエネルギーを伴うエネルギー分布を有した高エネルギーの軽い陽イオンとを含むシステムのモデル化が含まれる。PICなどの適切なモデル化方法は、上記のとおりである。前記重イオン層と、前記電場と、前記最大の軽い陽イオンエネルギーとの物理パラメータは、前記モデル化方法を使って相関される。レーザー加速イオンビームは、重イオン層のパラメータを変化させて高エネルギーの軽い陽イオンのエネルギー分布を最適化することにより設計する。重イオン層のパラメータを例えばシミュレーションにより変化させる適切な方法は、上述のとおりである。
【0099】
いかなるタイプの標的材料も使用が可能で、標的は、重イオン層を生じる少なくとも1つの材料と、軽イオン材料を生じる1つの材料とを有することが好ましい。本発明の種々の実施形態の標的および方法において、重イオン層は、高エネルギーの軽い陽イオンの原子質量にほぼ等しい質量より大きい原子質量を有する原子、イオン、若しくはこれらの組み合わせから構成された材料を適切に有する。適切な重イオン層は、約10ダルトンより大きい分子質量を有する原子、例えば炭素、任意の金属、またはこれらの組み合わせから構成された材料から得られる。適切な標的の重イオン層への使用に適した金属の例としては、金、銀、プラチナ、パラジウム、銅、またはこれらの任意の組み合わせなどが含まれる。適切な高エネルギーの軽い陽イオンは、水素、ヘリウム、リチウム、ベリリウム、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、ネオン、アルゴン、またはこれらの任意の組み合わせから得られる。陽子は、イオン、分子、組成物、またはこれらの任意の組み合わせから構成された水素含有物質から適切に調製される。適切な水素含有材料は、標的の金属層に隣接した層として形成される。特定の実施形態では、前記高エネルギーの軽い陽イオンは、軽い原子を多く含む材料の層から生成される。適切な軽い原子を多く含む材料としては、水素、ヘリウム、リチウム、ベリリウム、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、ネオン、アルゴン、またはこれらの任意の組み合わせを、重イオン層に隣接して、またはそれに近接して維持できる任意タイプの物質が含まれる。軽い原子を多く含む材料の適切な例としては、水、有機材料、希ガス、高分子、無機材料、またはこれらの任意の組み合わせなどがある。一部の実施形態では、陽子は、固体標的の表面に存在する炭化水素または水蒸気の薄い層から生じる。標的の調製には、いかなるタイプのコーティング技術も使用できる。高エネルギーの軽い陽イオンを提供するための適切な材料は、重イオンを生じる重原子から構成された1若しくはそれ以上の材料(基板など)に容易にコーティングできる。
【0100】
一部の実施形態では、多層軽イオン材料を使うことができる。他の実施形態では、場において分離が可能な複数のイオンタイプを生成する材料を導入することもできる。軽いイオンを効果的に加速するには、レーザーパルスを高密度の標的材料と相互作用させて非常に強力な電場を生成する。適切なレーザーパルスはペタワットの範囲である。一部の実施形態では、軽イオンから構成され材料中の電子密度が高い種々の材料を使用することができる。2003年6月2日付で出願された米国特許出願第60/475,027号の優先権を主張する「High Energy Polyenergetic Ion Selection Systems,Ion Beam Therapy Systems,and Ion Beam Treatment Centers」、WO2004109717、国際特許出願第PCT/US2004/017081号(これらに含まれるイオン選択システムに関する部分は、参照により本明細書に組み込まれるものである)に詳述されているように、サンドイッチタイプの標的システムでは、異なる種のイオンを加速でき、それらを電磁場の印加により分離することができる。本発明における使用に適合させることが可能な、放射線治療用にレーザー加速陽子を変調する方法の例は、2003年6月2日付で出願された米国特許出願第60/475,027号と、2003年12月2日付で出願された米国特許出願第60/526,436号と(これらに含まれる放射線治療用にレーザー加速陽子を変調する方法に関する部分は、参照により本明細書に組み込まれるものである)の優先権を主張する「Methods of Modulating Laser−Accelerated Protons for Radiation Therapy」、国際公開第WO2005057738、米国特許出願第 号に詳述されている。
【0101】
前記モデル化およびシミュレーションの結果からは、レーザー加速イオンビームの生成に使用する標的を設計する方法も得られる。これらの方法には、標的と、電場と、最大の軽い陽イオンエネルギーを伴うエネルギー分布を有した高エネルギーの軽い陽イオンとを含むシステムをモデル化する工程が含まれる。これらの方法では、構造パラメータχで特徴付けられる重イオン層が、標的に含まれる。前記構造パラメータχはZime/miと定義され、ここでZiは重イオン層内の重イオンの特定の電離状態、meは電子の質量、miは前記重イオン層内の前記重イオンの質量を表す。これらの実施形態における標的を設計する方法は、前記高エネルギーの軽い陽イオンのエネルギー分布を最適化するため、標的を特徴付ける前記構造パラメータχを変化させる工程を含む。この構造パラメータχは、約10−6〜約10−3の範囲、特に約10−5〜約10−4の範囲で変化させることができる。これらの値は、前記高エネルギーの軽いイオンに陽子が含まれる実施形態で、特に有用である。前記構造パラメータの値は、特定の重イオンの特定の電離状態と、電子の質量(約9×10−31kg)と、特定の重イオンの質量とについて知識を有する当業者が材料を適切に選択することにより選択可能である。適切な高エネルギーの軽い陽イオンは、大部分の実施形態で最高約50MeV、一部の実施形態では最高約250MeVもの最適なエネルギー分布を有する。
【0102】
重イオン層は、約10ダルトンを超える原子質量を有した原子を含む材料から適切に得られ、その例としては、炭素、金属、またはこれらの任意の組み合わせなどがある。適切な金属には、金、銀、プラチナ、パラジウム、銅、またはこれらの任意の組み合わせなどがある。一部の実施形態では、前記高エネルギーの軽い陽イオンは、陽子、炭素、またはこれらの任意の組み合わせを有する。適切な高エネルギーの軽い陽イオンは、水素、ヘリウム、リチウム、ベリリウム、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、ネオン、アルゴン、またはこれらの任意の組み合わせから得られる。適切な高エネルギーの軽い陽イオンは、適切に強いペタワットレーザーパルスの選択により電場強度を調整し、かつ標的材料の構造パラメータχの値を調整することにより、約50MeV〜約250MeV範囲のエネルギーを有する。陽子は、イオン、分子、組成物、またはこれらの任意の組み合わせから構成された水素含有物質から適切に調製される。適切な水素含有材料は、標的の金属層に隣接した層として形成される。
【0103】
前記モデル化およびシミュレーションの結果からは、システム内においてレーザー加速された高エネルギーの軽い陽イオンビームの生成に有用な標的も得られる。本発明のこの実施形態に係る標的は、標的と、電場と、最大の軽い陽イオンエネルギーを伴うエネルギー分布を有した高エネルギーの軽い陽イオンとを含むシステムをモデル化する工程により設計が可能である。これらの実施形態では、上記で定義済みの構造パラメータχで特徴付けられる重イオン層が、標的に含まれる。この方法には、前記高エネルギーの軽い陽イオンのエネルギー分布を最適化するため、前記構造パラメータχを変化させる工程が含まれる。前記構造パラメータχは、前記エネルギー分布を最適化するため、反復またはPICシミュレーションにより変化させることができる。適切な材料は、上記のように前記構造パラメータχを制御するため選択できる。
【0104】
前記モデル化およびシミュレーションの結果からは、標的と、電場と、高エネルギーの軽い陽イオンとを含むシステムにおいてレーザー加速イオンビームを生成する上で有用な標的も得られる。このシステムで生成される適切な高エネルギー陽イオンは、最大の軽い陽イオンエネルギーを含んだエネルギー分布を有する。これらのシステムにおける適切な標的は、構造パラメータχにより特徴付けられる重イオン層を含み、その場合、前記構造パラメータχを変化させると、モデル化したシステムの高エネルギーの軽い陽イオンのエネルギー分布が最大化される。この構造パラメータχの選択および材料の選択については、上記のとおりである。
【0105】
種々の実施形態では、重原子を含んだ材料および軽原子材料を組み合わせることにより、標的を調製するための重イオンおよび軽イオンをそれぞれ提供することができる。例えば、一実施形態は、炭化水素(炭素および陽子など)から構成される軽原子層と、金属(金または銅など)から構成される重原子層とを有する2層標的である。一実施形態では、サンドイッチ状の標的システムを使って高品質(高エネルギーで、エネルギー分布の広がりが狭く、低放射)の軽イオンビームを生成することができる。このようなサンドイッチ状の標的システムには、構造パラメータχが無限小値でなく、より重い原子を含有した、高電子密度の第1の層基板を含めることができる。これらの実施形態では、第2の層は、高エネルギー軽イオンを生じさせる軽原子を有しており、前記第1の層基板よりはるかに薄くなければならない。このような標的構造が強レーザーパルスと相互作用すると、上記のように軽イオンが加速されて、高エネルギーの軽イオンビームが形成される。上述のとおり、この技術を使うと、多種多様な軽イオンを加速することができる。
【0106】
適切な標的を設計する際は、高分子を使うこともできる。種々の実施形態で、種々のタイプの高分子材料およびプラスチック材料が使用可能である。本発明に係る標的を調製する場合、いかなるプラスチック材料も良好な候補となりうる。炭素、水素、酸素、窒素、硫黄、およびリンの原子と、これらの任意の組み合わせとの高分子から構成されたプラスチック材料は、レーザーによる電離後に高い電子濃度を生成できるよう適切に十分な密度を有する。適切な軽イオンは、低質量を有し、構造パラメータχを有限値にする。
【0107】
一部の実施形態では、高エネルギー炭素イオンから構成された高エネルギー軽イオンビームを生成する標的を設計することができる。例えば、炭素イオンを加速するサンドイッチ状の標的は、厚さ約50nm〜約100nm範囲の炭素層で金属基板をコーティングすることにより作製できる。適切な金属基板としては、銅、金、銀、プラチナ、パラジウム等の金属膜などがある。
【0108】
想定される種々の更なる実施形態では、異なる層のパラメータを計算できる。例えば、所与のレーザーパルス特性について基板中のイオン荷電状態分布を予測する場合、信頼度の高いモデルを提供することができる。PICシミュレーションに加え、またはそれを補うため、ビームまたは標的を最適化する他の方法も実施可能である。例えば一実施形態では、メインパルス前のプリパルス(レーザーペデスタルなど)により、レーザーパルスの形状を修正することができる。レーザープリパルスは、メインレーザーパルスが、標的への到達時に特性の変化した基板と相互作用するよう、メイン基板の形状および物理条件を劇的に変化させる上で十分な強さがある。これにより、PICシミュレーションと同時に(基板に関する信頼度の高い電離モデルと併せて)レーザープリパルスおよび標的の相互作用をモデル化すると、発生する物理過程についてさらに正確な理解を得ることができる。このプリパルス効果の結果を含めると、高エネルギー軽イオンビームを合成するための標的設計および方法の開発・改善に役立つ。
【0109】
更なる実施形態では、この方法を使って、種々の標的を設計し高エネルギー軽イオンビームを合成できることが想定される。本明細書で説明するように流体力学的およびPICシミュレーションを組み合わせると、所与の初期レーザーパルスおよび標的特性についての軽イオンエネルギースペクトルをもたらすことができる。異なる材料と形状と寸法との標的についてパラメータ研究を行う当業者が通常の実験を行えば、癌その他の疾患を治療するためのハドロン治療に適した高品質の加速軽イオンをもたらす、更なる最適レーザー/標的特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
上述の要約および以下の詳細な説明は、添付の図面を参照することで、さらに明確に理解される。本発明を例示する目的で本発明の例示的な実施形態を図面に示すが、本発明は、開示している具体的な方法、組成、および装置に限定されるものではない。当該図面は、以下のとおりである。
【図1】図1は、レーザー標的システムの一実施形態の模式図であり、前記標的は、高密度重イオンスラブと、その後面に付着している低密度水素層とから成る。
【図2a】図2は、t=40/ωpeにおける(x,y)平面の電場の(a)長手方向の成分(Ex)、および(b)それを横断する方向の成分(Ey)の分布を示した図である。
【数33】
【図2b】図2は、t=40/ωpeにおける(x,y)平面の電場の(a)長手方向の成分(Ex)、および(b)それを横断する方向の成分(Ey)の分布を示した図である。
【数34】
【図3a】図3は、構造パラメータχの異なる3つの値について、t=32/ωpeにおける(a)電子、(b)陽子、および(c)重イオンのエネルギー分布を示した図である。
【図3b】図3は、構造パラメータχの異なる3つの値について、t=32/ωpeにおける(a)電子、(b)陽子、および(c)重イオンのエネルギー分布を示した図である。
【図3c】図3は、構造パラメータχの異なる3つの値について、t=32/ωpeにおける(a)電子、(b)陽子、および(c)重イオンのエネルギー分布を示した図である。
【図4a】図4は、t=32/ωpeにおける(x,y)平面の(a)電子密度、(b)陽子密度、およびプラチナイオン密度の空間分布を示した図である。
【数35】
【図4b】図4は、t=32/ωpeにおける(x,y)平面の(a)電子密度、(b)陽子密度、およびプラチナイオン密度の空間分布を示した図である。
【数36】
【図5】図5は、t=32/ωpeにおけるxの関数として、異なる3つのイオン−陽子質量比について、等しい電離状態Zi=4での長手方向の電場プロファイルEx(x,Ly/2)を示した図である。
【数37】
【図6a】図6は、t=150/ωpeにおける、電子(実線)およびイオン(点線)の電子位相空間分布(a)および密度分布(b)を示した図である。初期の電子運動量分布は、(0<x<l/2)についてPe,0=10mec、(−l/2<x<0)についてPe,0=−10mecである。
【図6b】図6は、t=150/ωpeにおける、電子(実線)およびイオン(点線)の電子位相空間分布(a)および密度分布(b)を示した図である。初期の電子運動量分布は、(0<x<l/2)についてPe,0=10mec、(−l/2<x<0)についてPe,0=−10mecである。
【図7】図7は、以下の単純な表現により近似して数値的に得られたパラメータγを示した図である。
【数38】
ここで、a=0.691(4)、b=0.2481(2)であり、以下の関数は正規化した電子初期運動量である。
【数39】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー加速イオンビームを設計する方法であって、
重イオン層と、電場と、最大の軽い陽イオンエネルギーを伴うエネルギー分布を有した高エネルギーの軽い陽イオンとを含むシステムをモデル化する工程と、
前記重イオン層と、前記電場と、前記最大の軽い陽イオンエネルギーとの物理パラメータを、前記モデルを使って相関する工程と、
前記高エネルギーの軽い陽イオンのエネルギー分布を最適化するため、前記重イオン層の前記パラメータを変化させる工程と
を有する方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記重イオン層は炭素を有するものである。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、前記重イオン層は、金属、または金属の任意の組み合わせを有するものである。
【請求項4】
請求項3記載の方法において、前記金属は、金、銀、プラチナ、パラジウム、銅、またはこれらの任意の組み合わせを有するものである。
【請求項5】
請求項1記載の方法において、前記高エネルギーの軽い陽イオンは、水素、ヘリウム、リチウム、ベリリウム、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、ネオン、アルゴン、またはこれらの任意の組み合わせから得られるものである。
【請求項6】
請求項1記載の方法において、前記高エネルギーの軽い陽イオンは、軽い陽イオンを多く含む材料の層から生成されるものである。
【請求項7】
請求項6記載の方法において、前記軽い陽イオンを多く含む材料は、水、炭化水素、希ガス、高分子、無機材料、またはこれらの任意の組み合わせを有するものである。
【請求項8】
レーザー加速イオンビームの生成に使用する標的を設計する方法であって、
標的と、電場と、最大の軽い陽イオンエネルギーを伴うエネルギー分布を有した高エネルギーの軽い陽イオンとを含むシステムをモデル化する工程であって、前記標的は、構造パラメータχにより特徴付けられる重イオン層を有するものである、前記モデル化する工程と、
前記高エネルギーの軽い陽イオンのエネルギー分布を最適化するため、前記構造パラメータχを変化させる工程と
を有する方法。
【請求項9】
請求項8記載の方法において、前記重イオン層は炭素を有するものである。
【請求項10】
請求項8記載の方法において、前記重イオン層は、金属、または金属の任意の組み合わせを有するものである。
【請求項11】
請求項10記載の方法において、前記金属は、金、銀、プラチナ、パラジウム、銅、またはこれらの任意の組み合わせを有するものである。
【請求項12】
請求項10記載の方法において、前記金属は銅を有するものである。
【請求項13】
請求項8記載の方法において、前記高エネルギーの軽い陽イオンは、陽子、炭素、またはこれらの任意の組み合わせを有するものである。
【請求項14】
請求項8記載の方法において、前記高エネルギーの軽い陽イオンは、軽い陽イオンを多く含む材料の層から生成されるものである。
【請求項15】
請求項14記載の方法において、前記軽い陽イオンを多く含む材料は、水、炭化水素、希ガス、高分子、またはこれらの任意の組み合わせを有するものである。
【請求項16】
レーザー加速された高エネルギーの軽い陽イオンビームをシステムにおいて生成するために使用する標的であって、
前記標的と、電場と、最大の軽い陽イオンエネルギーを伴うエネルギー分布を有した高エネルギーの軽い陽イオンとを含むシステムをモデル化する工程であって、前記標的は、構造パラメータχにより特徴付けられる重イオン層を有するものである、前記モデル化する工程と、
前記高エネルギーの軽い陽イオンのエネルギー分布を最適化するため、前記構造パラメータχを変化させる工程と
により作製される標的。
【請求項17】
請求項16記載の工程により作製される標的において、前記重イオン層は炭素を有するものである。
【請求項18】
請求項16記載の工程により作製される標的において、前記重イオン層は、金属、または金属の任意の組み合わせを有するものである。
【請求項19】
請求項18記載の工程により作製される標的において、前記金属は金を有するものである。
【請求項20】
請求項18記載の工程により作製される標的において、前記金属は銅を有するものである。
【請求項21】
請求項16記載の工程により作製される標的において、前記高エネルギーの軽い陽イオンは、陽子、炭素、またはこれらの任意の組み合わせを有するものである。
【請求項22】
請求項16記載の工程により作製される標的において、前記高エネルギーの軽い陽イオンは、軽い陽イオンを多く含む材料の層から生成されるものである。
【請求項23】
請求項22記載の工程により作製される標的において、前記軽い陽イオンを多く含む材料は、水、炭化水素、希ガス、高分子、またはこれらの任意の組み合わせを有するものである。
【請求項24】
システムにおいてレーザー加速イオンビームを生成するために使用する標的であって、このシステムは、前記標的と、電場と、最大の軽い陽イオンのエネルギーを伴うエネルギー分布を有した高エネルギーの軽い陽イオンとを含むものである、標的であって、
構造パラメータχにより特徴付けられる重イオン層であって、前記構造パラメータχを変化させると、モデル化した前記システムの高エネルギーの軽い陽イオンのエネルギー分布が最大化される、重イオン層
を有する標的。
【請求項25】
請求項24記載の工程により作製される標的において、前記重イオン層は炭素を有するものである。
【請求項26】
請求項24記載の工程により作製される標的において、前記重イオン層は、金属、または金属の任意の組み合わせを有するものである。
【請求項27】
請求項26記載の工程により作製される標的において、前記金属は金を有するものである。
【請求項28】
請求項26記載の工程により作製される標的において、前記金属は銅を有するものである。
【請求項29】
請求項24記載の工程により作製される標的において、前記高エネルギーの軽い陽イオンは、陽子、炭素、またはこれらの任意の組み合わせを有するものである。
【請求項30】
請求項24記載の工程により作製される標的において、前記高エネルギーの軽い陽イオンは、軽い陽イオンを多く含む材料の層から生成されるものである。
【請求項31】
請求項30記載の工程により作製される標的において、前記軽い陽イオンを多く含む材料は、水、炭化水素、希ガス、高分子、またはこれらの任意の組み合わせを有するものである。
【請求項32】
請求項8記載の方法において、前記構造パラメータχはZime/miと定義されるものであり、Ziは前記重イオン層内の重イオンの特定の電離状態、meは電子の質量、miは前記重イオン層内の前記重イオンの質量を表すものである。
【請求項33】
請求項32記載の方法において、前記構造パラメータχは、約10−6〜約10−3の範囲の値を有するものである。
【請求項34】
請求項33記載の方法において、前記構造パラメータχは、約10−5〜約10−4の範囲の値を有するものである。
【請求項35】
請求項16記載の標的において、前記構造パラメータχはZime/miと定義されるものであり、Ziは前記重イオン層内の重イオンの特定の電離状態、meは電子の質量、miは前記重イオン層内の前記重イオンの質量を表すものである。
【請求項36】
請求項35記載の方法において、前記構造パラメータχは、約10−6〜約10−3の範囲の値を有するものである。
【請求項37】
請求項36記載の方法において、前記構造パラメータχは、約10−5〜約10−4の範囲の値を有するものである。
【請求項38】
請求項24記載の標的において、前記構造パラメータχはZime/miと定義されるものであり、Ziは前記重イオン層内の重イオンの特定の電離状態、meは電子の質量、miは前記重イオン層内の前記重イオンの質量を表すものである。
【請求項39】
請求項38記載の方法において、前記構造パラメータχは、約10−6〜約10−3の範囲の値を有するものである。
【請求項40】
請求項39記載の方法において、前記構造パラメータχは、約10−5〜約10−4の範囲の値を有するものである。
【請求項41】
請求項1記載の方法において、前記最大の軽い陽イオンエネルギーは、約50MeV〜約250MeVの範囲である。
【請求項42】
請求項8記載の方法において、前記最大の軽い陽イオンエネルギーは、約50MeV〜約250MeVの範囲である。
【請求項43】
請求項16記載の標的において、前記最大の軽い陽イオンエネルギーは、約50MeV〜約250MeVの範囲である。
【請求項44】
請求項24記載の標的において、前記最大の軽い陽イオンエネルギーは、約50MeV〜約250MeVの範囲である。
【請求項1】
レーザー加速イオンビームを設計する方法であって、
重イオン層と、電場と、最大の軽い陽イオンエネルギーを伴うエネルギー分布を有した高エネルギーの軽い陽イオンとを含むシステムをモデル化する工程と、
前記重イオン層と、前記電場と、前記最大の軽い陽イオンエネルギーとの物理パラメータを、前記モデルを使って相関する工程と、
前記高エネルギーの軽い陽イオンのエネルギー分布を最適化するため、前記重イオン層の前記パラメータを変化させる工程と
を有する方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記重イオン層は炭素を有するものである。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、前記重イオン層は、金属、または金属の任意の組み合わせを有するものである。
【請求項4】
請求項3記載の方法において、前記金属は、金、銀、プラチナ、パラジウム、銅、またはこれらの任意の組み合わせを有するものである。
【請求項5】
請求項1記載の方法において、前記高エネルギーの軽い陽イオンは、水素、ヘリウム、リチウム、ベリリウム、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、ネオン、アルゴン、またはこれらの任意の組み合わせから得られるものである。
【請求項6】
請求項1記載の方法において、前記高エネルギーの軽い陽イオンは、軽い陽イオンを多く含む材料の層から生成されるものである。
【請求項7】
請求項6記載の方法において、前記軽い陽イオンを多く含む材料は、水、炭化水素、希ガス、高分子、無機材料、またはこれらの任意の組み合わせを有するものである。
【請求項8】
レーザー加速イオンビームの生成に使用する標的を設計する方法であって、
標的と、電場と、最大の軽い陽イオンエネルギーを伴うエネルギー分布を有した高エネルギーの軽い陽イオンとを含むシステムをモデル化する工程であって、前記標的は、構造パラメータχにより特徴付けられる重イオン層を有するものである、前記モデル化する工程と、
前記高エネルギーの軽い陽イオンのエネルギー分布を最適化するため、前記構造パラメータχを変化させる工程と
を有する方法。
【請求項9】
請求項8記載の方法において、前記重イオン層は炭素を有するものである。
【請求項10】
請求項8記載の方法において、前記重イオン層は、金属、または金属の任意の組み合わせを有するものである。
【請求項11】
請求項10記載の方法において、前記金属は、金、銀、プラチナ、パラジウム、銅、またはこれらの任意の組み合わせを有するものである。
【請求項12】
請求項10記載の方法において、前記金属は銅を有するものである。
【請求項13】
請求項8記載の方法において、前記高エネルギーの軽い陽イオンは、陽子、炭素、またはこれらの任意の組み合わせを有するものである。
【請求項14】
請求項8記載の方法において、前記高エネルギーの軽い陽イオンは、軽い陽イオンを多く含む材料の層から生成されるものである。
【請求項15】
請求項14記載の方法において、前記軽い陽イオンを多く含む材料は、水、炭化水素、希ガス、高分子、またはこれらの任意の組み合わせを有するものである。
【請求項16】
レーザー加速された高エネルギーの軽い陽イオンビームをシステムにおいて生成するために使用する標的であって、
前記標的と、電場と、最大の軽い陽イオンエネルギーを伴うエネルギー分布を有した高エネルギーの軽い陽イオンとを含むシステムをモデル化する工程であって、前記標的は、構造パラメータχにより特徴付けられる重イオン層を有するものである、前記モデル化する工程と、
前記高エネルギーの軽い陽イオンのエネルギー分布を最適化するため、前記構造パラメータχを変化させる工程と
により作製される標的。
【請求項17】
請求項16記載の工程により作製される標的において、前記重イオン層は炭素を有するものである。
【請求項18】
請求項16記載の工程により作製される標的において、前記重イオン層は、金属、または金属の任意の組み合わせを有するものである。
【請求項19】
請求項18記載の工程により作製される標的において、前記金属は金を有するものである。
【請求項20】
請求項18記載の工程により作製される標的において、前記金属は銅を有するものである。
【請求項21】
請求項16記載の工程により作製される標的において、前記高エネルギーの軽い陽イオンは、陽子、炭素、またはこれらの任意の組み合わせを有するものである。
【請求項22】
請求項16記載の工程により作製される標的において、前記高エネルギーの軽い陽イオンは、軽い陽イオンを多く含む材料の層から生成されるものである。
【請求項23】
請求項22記載の工程により作製される標的において、前記軽い陽イオンを多く含む材料は、水、炭化水素、希ガス、高分子、またはこれらの任意の組み合わせを有するものである。
【請求項24】
システムにおいてレーザー加速イオンビームを生成するために使用する標的であって、このシステムは、前記標的と、電場と、最大の軽い陽イオンのエネルギーを伴うエネルギー分布を有した高エネルギーの軽い陽イオンとを含むものである、標的であって、
構造パラメータχにより特徴付けられる重イオン層であって、前記構造パラメータχを変化させると、モデル化した前記システムの高エネルギーの軽い陽イオンのエネルギー分布が最大化される、重イオン層
を有する標的。
【請求項25】
請求項24記載の工程により作製される標的において、前記重イオン層は炭素を有するものである。
【請求項26】
請求項24記載の工程により作製される標的において、前記重イオン層は、金属、または金属の任意の組み合わせを有するものである。
【請求項27】
請求項26記載の工程により作製される標的において、前記金属は金を有するものである。
【請求項28】
請求項26記載の工程により作製される標的において、前記金属は銅を有するものである。
【請求項29】
請求項24記載の工程により作製される標的において、前記高エネルギーの軽い陽イオンは、陽子、炭素、またはこれらの任意の組み合わせを有するものである。
【請求項30】
請求項24記載の工程により作製される標的において、前記高エネルギーの軽い陽イオンは、軽い陽イオンを多く含む材料の層から生成されるものである。
【請求項31】
請求項30記載の工程により作製される標的において、前記軽い陽イオンを多く含む材料は、水、炭化水素、希ガス、高分子、またはこれらの任意の組み合わせを有するものである。
【請求項32】
請求項8記載の方法において、前記構造パラメータχはZime/miと定義されるものであり、Ziは前記重イオン層内の重イオンの特定の電離状態、meは電子の質量、miは前記重イオン層内の前記重イオンの質量を表すものである。
【請求項33】
請求項32記載の方法において、前記構造パラメータχは、約10−6〜約10−3の範囲の値を有するものである。
【請求項34】
請求項33記載の方法において、前記構造パラメータχは、約10−5〜約10−4の範囲の値を有するものである。
【請求項35】
請求項16記載の標的において、前記構造パラメータχはZime/miと定義されるものであり、Ziは前記重イオン層内の重イオンの特定の電離状態、meは電子の質量、miは前記重イオン層内の前記重イオンの質量を表すものである。
【請求項36】
請求項35記載の方法において、前記構造パラメータχは、約10−6〜約10−3の範囲の値を有するものである。
【請求項37】
請求項36記載の方法において、前記構造パラメータχは、約10−5〜約10−4の範囲の値を有するものである。
【請求項38】
請求項24記載の標的において、前記構造パラメータχはZime/miと定義されるものであり、Ziは前記重イオン層内の重イオンの特定の電離状態、meは電子の質量、miは前記重イオン層内の前記重イオンの質量を表すものである。
【請求項39】
請求項38記載の方法において、前記構造パラメータχは、約10−6〜約10−3の範囲の値を有するものである。
【請求項40】
請求項39記載の方法において、前記構造パラメータχは、約10−5〜約10−4の範囲の値を有するものである。
【請求項41】
請求項1記載の方法において、前記最大の軽い陽イオンエネルギーは、約50MeV〜約250MeVの範囲である。
【請求項42】
請求項8記載の方法において、前記最大の軽い陽イオンエネルギーは、約50MeV〜約250MeVの範囲である。
【請求項43】
請求項16記載の標的において、前記最大の軽い陽イオンエネルギーは、約50MeV〜約250MeVの範囲である。
【請求項44】
請求項24記載の標的において、前記最大の軽い陽イオンエネルギーは、約50MeV〜約250MeVの範囲である。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図2a】
【図2b】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【公表番号】特表2008−525969(P2008−525969A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548542(P2007−548542)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/046838
【国際公開番号】WO2006/086084
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(500565663)
【氏名又は名称原語表記】FOX CHASE CANCER CENTER
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/046838
【国際公開番号】WO2006/086084
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(500565663)
【氏名又は名称原語表記】FOX CHASE CANCER CENTER
【Fターム(参考)】
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