説明

高分子化合物、発光材料及び発光素子

【課題】緑よりも短波長の発光波長を示す燐光発光性化合物を含む発光材料のマトリックスに使用できる共役系高分子及びそれらを含む発光材料を提供する
【解決手段】高分子と少なくとも1種類の燐光発光性化合物を含む発光性の組成物であって、該高分子の主たる繰り返し最小単位の電子共役連鎖係数Zが以下の範囲であることを特徴とする組成物
0<Z≦2.00 (1)
(ここで、電子共役連鎖係数Zは、繰り返し最小単位に含まれる共役電子数をnとした場合、繰り返し最小単位を結合させて得られるm量体について数mを1から3まで1ずつ変化させた時の各m量体における最低三重項励起エネルギーTに対し、関数T=T(1/n)を最小二乗法により線形近似した場合の傾きと定義する。ここで、共役電子数は、繰り返し最小単位の主鎖内に存在する共役電子のみを考慮するものとする。ただし、主たる繰り返し最小単位が複数認められる場合には、最小のZを用いる。)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子化合物、及び、高分子化合物を含む発光材料、及び、発光素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発光素子の発光層に用いる発光材料として、三重項励起状態からの発光を示す化合物(以下、燐光発光性化合物ということがある)を発光層に用いた素子は発光効率が高いことが知られている。燐光発光性化合物を発光層に用いる場合、通常は、該化合物にマトリックスを添加してなる組成物を発光材料として用いる。マトリックスとしては、塗布によって薄膜が形成できる点でポリビニルカルバゾールのような高分子が好適に使用できることが知られている(例えば特許文献1参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような素子は駆動電圧が高いという課題があった。一方で、ポリフルオレン等の共役系高分子化合物をマトリックスとして用いると、低い駆動電圧が実現できるが、このような共役系高分子化合物は、一般的に最低三重項励起エネルギーが小さいために、マトリックスとしての使用に適さないとされていた(例えば特許文献2参照)。実際、例えば、共役系高分子化合物であるポリフルオレンと燐光発光性化合物とからなる発光材料(非特許文献1)は、発光効率が極めて低いものであった。またこのような性能低下は一般に燐光発光性化合物からの発光波長が短くなるにつれて顕著になることが知られており、特に緑よりも短波長の発光波長を示す燐光発光性化合物に好適な共役系高分子化合物は知られていなかった。すなわち、本発明の目的は、緑よりも短波長の発光波長を示す燐光発光性化合物を含む発光材料のマトリックスに使用できる共役系高分子及びそれらを含む発光材料を提供することにある。
【0004】
【特許文献1】特開2002−50483号公報
【特許文献2】特開2002−241455号公報
【非特許文献1】APPLIED PHYSICS LETTERS、80,13,2308(2002)
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明者等は鋭意検討を重ねた結果、高分子の最低三重項励起エネルギーに関する特定の係数、とりわけ高分子の繰り返し単位の間の共役の程度を表す係数(電子共役連鎖係数又は共役連鎖係数)と発光性能の間に著しい相関を見出し、これら係数が特定の範囲にある高分子中で青色を含めた広い波長領域で発光する発光材料が得られることを見出し本発明に至った。
すなわち本発明は以下の通りである。
1.高分子と少なくとも1種類の燐光発光性化合物を含む発光性の組成物であって、該高分子の主たる繰り返し最小単位の電子共役連鎖係数Zが以下の範囲であることを特徴とする組成物
0<Z≦2.00 (1)
〔ここで、電子共役連鎖係数Zは、繰り返し最小単位に含まれる共役電子数をnとした場合、繰り返し最小単位を結合させて得られるm量体について数mを1から3まで1ずつ変化させた時の各m量体における最低三重項励起エネルギーTに対し、関数T=T(1/n)を最小二乗法により線形近似した場合の傾きと定義する。ここで、共役電子数は、繰り返し最小単位の主鎖内に存在する共役電子のみを考慮するものとする。ただし、主たる繰り返し最小単位が複数認められる場合には、最小のZを用いる。〕。
2.高分子と少なくとも1種類の燐光発光性化合物からなる発光性の組成物であって、該高分子の主たる繰り返し最小単位の電子共役連鎖係数Zが(1)の範囲である、1.記載の組成物。
3.高分子の主たる繰り返し最小単位が、主鎖開裂可能な単結合を2個以上連続して主鎖上に有しない事を特徴とする1.又は2.記載の組成物(ここで、主鎖開裂可能とは、該単結合を切断した場合に、該主鎖が開裂するものを示す。)。
4.高分子の最低三重項励起エネルギーTが、2.7eV以上である、1.〜3.のいずれか一項記載の組成物(高分子の最低三重項励起エネルギーTは、繰り返し最小単位を結合させて得られるm量体について数mを1から3まで1つ毎に変化させた時の各m量体における最低三重項励起エネルギーTに対し、関数T=T(1/n)を最小二乗法により線形近似した場合のnが∞における外挿値を用いる。)。
5.1.〜4.のいずれか一項記載の組成物であって、高分子の主たる繰り返し最小単位の電子共役連鎖係数Zが、0<Z≦2.00であり、かつ高分子の最低三重項励起エネルギーTが、2.8eV以上である、上記組成物。
6.1.〜4.のいずれか一項記載の組成物であって、高分子の主たる繰り返し最小単位の電子共役連鎖係数Zが、0<Z≦2.00であり、かつ高分子の最低三重項励起エネルギーTが、2.9eV以上である、上記組成物。
7.1.〜4.のいずれか一項記載の組成物であって、高分子の主たる繰り返し最小単位の電子共役連鎖係数Zが、0<Z≦2.00であり、かつ高分子の最低三重項励起エネルギーTが、3.0eV以上である、上記組成物。
8.1.〜4.のいずれか一項記載の組成物であって、高分子の最低三重項励起エネルギーT(eV)が、2.7≦T≦5.0である、上記組成物。
9.1種類の基本構成単位からなるセグメントを含む高分子であって、該基本構成単位の最低三重項励起エネルギーTM1が3.6eV≦TM1≦5.5eVであって、該セグメントの最低三重項励起エネルギーT、及び、該基本構成単位の以下に定義される共役連鎖係数Zが、2.7eV≦T≦5.0eV、かつ、0.00<Z≦0.50であることを特徴とする上記高分子と燐光発光性化合物から構成される、8.記載の組成物(ここで、基本構成単位の共役連鎖係数Zは、基本構成単位数mを1から3まで1ずつ変化させた時のm量体における最低三重項励起エネルギーTに対し、関数T=T(1/m)を最小二乗法により線形近似した場合の傾きと定義する。)。
10.9.記載の組成物であって、該組成物を構成する高分子に含まれるセグメントの基本構成単位に含まれる共役電子数nが、n≦6である、上記組成物。
11.1種類の基本構成単位からなるセグメントを含む高分子であって、該基本構成単位の最低三重項励起エネルギーTM1が3.2eV≦TM1<3.6eVであって、該セグメントの最低三重項励起エネルギーT、最低非占分子軌道エネルギーの絶対値ELUMO、及び、該基本構成単位の共役連鎖係数Zが、2.7eV≦T≦5.0eV、1.4eV<ELUMO≦5.0eV、かつ、0.00<Z≦0.25であることを特徴とする上記高分子と燐光発光性化合物から構成される、8.記載の組成物。
12.1種類の基本構成単位からなるセグメントを含む高分子であって、該基本構成単位の最低三重項励起エネルギーTM1が2.9eV≦TM1<3.2eVであって、該セグメントの最低三重項励起エネルギーT、最低非占分子軌道エネルギーの絶対値ELUMO、及び、該基本構成単位の共役連鎖係数Zが、2.7eV≦T≦5.0eV、1.4eV<ELUMO≦5.0eV、かつ、0.00<Z≦0.13であることを特徴とする上記高分子と燐光発光性化合物から構成される、8.記載の組成物。
13.少なくとも2種類の基本構成単位からなるセグメントを含む高分子であって、該セグメントの最低三重項励起エネルギーT、及び、最低非占分子軌道エネルギーの絶対値ELUMOが、2.7eV≦T≦5.0eV、及び、1.4eV<ELUMO≦5.0eVの条件を満たし、かつ、以下に定義される共役連鎖係数Zが、0.00<Z≦0.40の条件(ここで、共役連鎖係数Zは、該セグメントを構成する各基本構成単位の構成比と同じ基本構成単位構成比を有する最小単位を想定した場合、該最小単位の数mを1から3まで、1ずつ変化させた時の該最小単位のm量体における最低三重項励起エネルギーTに対し、関数T=T(1/m)を最小二乗法により線形近似した場合の傾きと定義する。)
を満たすことを特徴とする高分子と燐光発光性化合物から構成される、8.記載の組成物。
14.発光性化合物を部分構造として同一分子内に含む発光性高分子を含む発光性材料であって、主たる繰り返し最小単位の電子共役連鎖係数Zが1.〜8.のいずれか一項記載の範囲である高分子をさらに含むか、又は前記発光性高分子のZが1.〜8.のいずれか一項記載の範囲である発光性材料。
15.高分子の前記繰り返し最小単位が、芳香環、ヘテロ原子を含有する5員環以上の複素環、芳香族アミン、又は、下記式(1)で表される構造のいずれかを含む、1.〜14.のいずれか一項に記載の組成物(ここで、該芳香環上及び該複素環上に、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい。)
【化1】


(式中、P環及びQ環はそれぞれ独立に芳香環を示すが、P環は存在してもしなくてもよい。2つの結合手は、P環が存在する場合は、それぞれP環及び/又はQ環上に存在し、P環が存在しない場合は、それぞれYを含む5員環若しくは6員環上及び/又はQ環上に存在する。また、芳香環上及び/又はYを含む5員環若しくは6員環上にアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい。Yは、−O−、−S−、−Se−、−B(R)−、−Si(R)(R)−、−P(R)−、−PR(=O)−、−C(R)(R)−、−N(R)−、−C(R)(R10)−C(R11)(R12)−、−O−C(R13)(R14)−、−S−C(R15)(R16)−、−N−C(R17)(R18)−、−Si(R19)(R20)−C(R21)(R22)−、−Si(R23)(R24)−Si(R25)(R26)−、−C(R27)=C(R28)−、−N=C(R29)−、−Si(R30)=C(R31)−を表し、R〜R31はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、シリルオキシ基、置換シリルオキシ基、1価の複素環基又はハロゲン原子を表す。)。
16.高分子の前記繰り返し最小単位が、芳香環、ヘテロ原子を含有する5員環以上の複素環、芳香族アミン、又は、上記式(1)で表される構造から構成される、15.記載の組成物。
17.組成物に含まれる該燐光発光性化合物の最低三重項励起エネルギーをETTとした場合
ETT > T−0.2(eV)
である、1.〜16.のいずれか一項記載の組成物。
18.高分子と少なくとも1種類の燐光発光性化合物を含む発光性の組成物であって、該高分子の主たる繰り返し最小単位が下記式(2)で表されることを特徴とする上記組成物
【化2】


(ここで、Rは、アルキル基を表す。)。
19.高分子と少なくとも1種類の燐光発光性化合物を含む発光性の組成物であって、該高分子の主たる繰り返し最小単位が下記式(4)で表されることを特徴とする組成物
【化3】


(ここで、Rは、アルキル基を表し、Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、シリルオキシ基、置換シリルオキシ基、1価の複素環基又はハロゲン原子を表す。)。
20.高分子と少なくとも1種類の燐光発光性化合物を含む発光性の組成物であって、該高分子の主たる繰り返し最小単位が下記式(5)で表されることを特徴とする組成物
【化4】


(ここで、Rはアルキル基を表す。)。
21.1.〜20.のいずれか一項に記載の組成物を含有することを特徴とするインク組成物。
22.粘度が25℃において1〜100mPa・sである21.記載のインク組成物。
23.1.〜20.のいずれか一項に記載の組成物を含有することを特徴とする発光性薄膜。
24.1.〜20.のいずれか一項に記載の組成物を含有することを特徴とする有機半導体薄膜。
25.1.〜20.のいずれか一項に記載の組成物を含有することを特徴とする光電素子。
26.陽極及び陰極からなる電極間に、1.〜20.のいずれか一項に記載の組成物を含む層を有することを特徴とする光電素子。
27.陽極及び陰極からなる電極間に、さらに電荷輸送層又は電荷阻止層を含む26.記載の光電素子。
28.光電素子が発光素子である25.〜27.記載の光電素子。
29.28.に記載の発光素子を用いたことを特徴とする面状光源。
30.28.に記載の発光素子を用いたことを特徴とするセグメント表示装置。
31.28.に記載の発光素子を用いたことを特徴とするドットマトリックス表示装置。
32.28.に記載の発光素子をバックライトとすることを特徴とする液晶表示装置。
33.28.に記載の発光素子を用いたことを特徴とする照明。
【0006】
ここで、本発明における共役電子とは、一般的に有機化学においてπ共役電子と言われている電子のみであり、本発明においては、孤立電子は含まない。たとえば具体的には、ピロール、チオフェン、フランは構造一つ当たり4個の共役電子を有し、ベンゼンやピリジンは構造一つ当たり6個の共役電子を有し、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、ペンタセンはそれぞれ構造一つ当たり10個、14個、18個、22個の共役電子を有し、フルオレンやカルバゾールは構造一つ当たり12個の共役電子有し、トリフェニルアミンは構造一つ当たり18個の共役電子を有している。
【0007】
電子共役連鎖係数Zは、0<Z≦2.00であることが好ましく、0<Z≦2.00でかつ該高分子の最低三重項励起エネルギーT(以下、Tエネルギーともいう)が2.8eV以上であることがより好ましく、0<Z≦2.00でかつTが2.9eV以上であることがさらに好ましく、0<Z≦2.00でかつTが3.0eV以上であることが特に好ましい。
【0008】
ここで高分子の最低三重項励起エネルギーTは、繰り返し最小単位を結合させて得られるm量体について数mを1から3まで1つ毎に変化させた時の各m量体における最低三重項励起エネルギーTに対し、関数T=T(1/n)を最小二乗法により線形近似した場合のnが∞における外挿値を用いる。
【0009】
本発明における主たる繰り返し最小単位について説明する。主たる繰り返し最小単位とは、高分子中に見出される繰り返し単位のうち最も大きな重量分率を有する繰り返し単位であって、かつ同じ重量分率を有する繰り返し単位のなかで最小の質量を有するものを表す。重量分率として特に制限はないが、燐光発光の点では50%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましく、90%以上が特に好ましい。このような主たる繰り返し最小単位は一般的には、高分子の構造を詳細に解析することによっても見出せるが、一般的には特定の合成方法の場合は使用するモノマーの構造と合成方法の公知の性質によって定めることができる。
【0010】
また本発明は1種類の基本構成単位からなるセグメントを含む高分子であって、該基本構成単位の最低三重項励起エネルギーTM1が3.6eV≦TM1≦5.5eVであって、該セグメントの最低三重項励起エネルギーT、及び、該基本構成単位の以下に定義される共役連鎖係数Zが、2.7eV≦T≦5.0eV、かつ、0.00<Z≦0.50であることを特徴とする上記高分子と燐光発光性化合物から構成される組成物を提供する。
(ここで、基本構成単位の共役連鎖係数Zは、基本構成単位数mを1から3まで1ずつ変化させた時のm量体における最低三重項励起エネルギーTに対し、関数T=T(1/m)を最小二乗法により線形近似した場合の傾きと定義する。)
【0011】
高分子に含まれるセグメントの基本構成単位に含まれる共役電子数nは、n≦6であることが好ましい。
【0012】
また該基本構成単位の最低三重項励起エネルギーTM1が3.2eV≦TM1<3.6eVであって、該セグメントの最低三重項励起エネルギーT、最低非占分子軌道エネルギーの絶対値ELUMO、及び、該基本構成単位の以下に定義される共役連鎖係数Zが、2.7eV≦T≦5.0eV、1.4eV<ELUMO≦5.0eV、かつ、0.00<Z≦0.25であることが好ましい。
さらに該基本構成単位の最低三重項励起エネルギーTM1が2.9eV≦TM1<3.2eVであって、該セグメントの最低三重項励起エネルギーT、最低非占分子軌道エネルギーの絶対値ELUMO、及び、該基本構成単位の以下に定義される共役連鎖係数Zが、2.7eV≦T≦5.0eV、1.4eV<ELUMO≦5.0eV、かつ、0.00<Z≦0.13であることが好ましい。
【0013】
また本発明は少なくとも2種類の基本構成単位からなるセグメントを含む高分子であって、該セグメントの最低三重項励起エネルギーT、及び、最低非占分子軌道エネルギーの絶対値ELUMOが、2.7eV≦T≦5.0eV、及び、1.4eV<ELUMO≦5.0eVの条件を満たし、かつ、以下に定義される共役連鎖係数Zが、0.00<Z≦0.40の条件
(ここで、共役連鎖係数Zは、該セグメントを構成する各基本構成単位の構成比と同じ基本構成単位構成比を有する最小単位を想定した場合、該最小単位の数mを1から3まで、1ずつ変化させた時の該最小単位のm量体における最低三重項励起エネルギーTに対し、関数T=T(1/m)を最小二乗法により線形近似した場合の傾きと定義する。)
を満たすことを特徴とする高分子と燐光発光性化合物から構成される組成物を提供する。
【0014】
本発明の高分子に含まれるセグメントを構成する基本構成単位は以下のようにして特定することができる。
例えば、主鎖にアリーレン及び/又は2価の複素環を有するセグメントの場合について説明する。ここで、アリーレンには、ベンゼン環、縮合環をもつもの、独立したベンゼン環又は縮合環が2個直接に又はフルオレンに例示されるように渡環により結合したものが含まれる。2価の複素環とは、複素環化合物から水素原子2個を除いた残りの原子団をいう。ここで、複素環化合物とは、環式構造をもつ有機化合物のうち、環を構成する元素が炭素原子だけでなく、酸素、硫黄、窒素、リン、ホウ素などのヘテロ原子を環内に含むものをいう。
【0015】
1)セグメントの主鎖内に存在するアリーレン及び/又は2価の複素環同士を直接連結する単結合が存在する場合には、その全ての単結合の位置でセグメントを切断する。このようにして得られたそれぞれの部分を「構成単位」と呼ぶ。
2)上記構成単位のうち、主鎖部分に、−X−〔Xは、2価のヘテロ原子(−O−、−S−)、−(CO)−、−CR=CR−、−C≡C−等を表す。ここで、Rは置換基を表す。〕で示される基を含まない構成単位は、そのまま基本構成単位とする。
3)上記構成単位のうち、主鎖部分に、上記−X−で表される基を含む構成単位は、該−X−に属する2本の結合手の内どちらか1つの結合手で切断することにより生成される構造(分割単位構造)を基本構成単位とする。ただし、切断する結合手は、分割単位構造の種類を最少にするように選ぶこととする。
そうでない場合は、前記構成単位を基本構成単位とする。
【0016】
以下例を挙げて具体的に説明する。
〔例1〕セグメントが、
【化5】


で表される場合。(上記↑は切断位置を表す。以下同じ。)
【0017】
構成単位は、ベンゼンであり、ベンゼンは、主鎖部分に、上記−X−で表される基を含まないので、基本構成単位はベンゼンとなる。
【0018】
〔例2〕セグメントが、
【化6】


で表される場合。(上記↓は切断位置を表す。以下同じ。)
【0019】
構成単位は、ベンゼン、及び1,4−メトキシ−ベンゼンであり、ベンゼン、及び1,4−メトキシ−ベンゼンは、主鎖部分に、上記−X−で表される基を含まないので、基本構成単位は、ベンゼンと1,4−メトキシ−ベンゼンとなる。
【0020】
〔例3〕セグメントが、
【化7】


で表される場合。
【0021】
構成単位は、9,9’−ジオクチル−フルオレンとベンゼンであり、これらは、いずれも上記−X−で表される基を含まないので、9,9’−ジオクチル−フルオレンとベンゼンが基本構成単位となる。
【0022】
〔例4〕セグメントが、
【化8】


で表される場合。
【0023】
構成単位は、
【化9】


である。この構成単位には、上記−X−で表される基が含まれないので、基本構成単位は構成単位と同一である。
【0024】
〔例5〕セグメントが、
【化10】


で表される場合。(上記点線矢印は、切断が可能な位置を表す。)
【0025】
構成単位は上記セグメントと同一である。
【0026】
主鎖部分に、上記−X−で表される基に属する−O−を含むので、各−O−の2つある結合手のうち1つを選んで切断するが、上向きの点線矢印(又は、下向きの点線矢印)の位置で切断した場合、
【化11】


がすべて分割構造単位となり、分割構成単位の種類が最少となるため、該分割単位が基本構成単位となる。
【0027】
〔例6〕セグメントが、
【化12】


で表される場合。
【0028】
構成単位は上記セグメントと同一である。
【0029】
主鎖部分に、上記−X−で表される基に属する−O−を含むので、分割単位の種類が最少となるように切断位置を選ぶことにより、基本構成単位は、
【化13】


と、
【化14】


の2種類となる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の発光性の組成物は、緑〜青の波長の光を発光できる。したがって、本発明の高分子を含有する発光材料は、エレクトロルミネッセンス素子等の光電素子に用いることにより特性のより優れた素子を与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0032】
上記した最低三重項励起エネルギーや最低非占分子軌道エネルギーは、実測で決定する方法もあるが、本発明では、計算科学的手法により決定する。計算科学的手法としては、半経験的手法及び非経験的手法に基づいた分子軌道法や密度汎関数法等が知られている。
例えば、構造最適化や励起エネルギーを求めるには、Hartree−Fock(HF)法、又は密度汎関数法を用いてもよい。
【0033】
本発明においては、量子化学計算プログラムGaussian98又はGaussian03を用い、HF法により、繰り返し最小単位、セグメントを構成する基本構成単位、又は、各基本構成単位の構成比を満たす最小単位に対して、繰り返し最小単位、基本構成単位数又は最小単位数をmとし(但し、ここで計算に用いるmの値は、1から3までの整数である。)、繰り返し最小単位、基本構成単位又は最小単位のm量体を構造最適化した。その際、基底関数としては、6−31G*を用いた。また、m量体の最低非占分子軌道エネルギー、及び、最低三重項励起エネルギーについては、構造最適化後、上記と同一の基底を用い、B3P86レベルの時間依存密度汎関数法を用いた。
【0034】
また、(共役系)高分子の繰り返しユニット中に、例えば鎖長が長い側鎖等が含まれる場合は、計算対象とする化学構造の側鎖部分をより短い側鎖に簡略化して計算を行うことができる(例として、側鎖としてオクチル基を有する場合、結合位置に隣接しない側鎖についてはメチル基として計算し、結合位置に隣接する側鎖については、プロピル基として計算する。側鎖として、オクチルオキシ基を有する場合、メトキシ基として計算する)。
【0035】
繰り返し最小単位又は1種類の基本構成単位がn個連結したセグメント、すなわち1種の繰り返し最小単位又は基本構成単位からなるセグメントの最低三重項励起エネルギー(T)は、繰り返し最小単位数又は基本構成単位数をmとした場合のm量体におけるTエネルギー(T)を、m量体に含まれる共役電子数(n)を用いて、1/(n)の関数T=T(1/(n))とし、最小二乗法により線形近似した時の(1/(n))における該関数の外挿値を用いることができ、電子共役連鎖係数Zは、該線形近似直線の傾きとして定義される。また、繰り返し最小単位又は基本構成単位がm個連結したセグメントの最低非占分子軌道エネルギーも同様の手法により求められる。特に、(1/n)=0における最低三重項励起エネルギーの値、及び、最低非占分子軌道エネルギーの絶対値は、n=∞に相当し、任意のnに対する下限値を与える。ここで、最小二乗法により線形近似を行う場合や電子共役連鎖係数Zを定義する場合のmの値は、本発明においては1〜3の整数である。
【0036】
共役連鎖係数Zは以下のように求める。1種類の基本構成単位がn個連結したセグメント、すなわち1種の基本構成単位からなるセグメントの最低三重項励起エネルギー(T)は、基本構成単位数をmとした場合の該基本構成単位のm量体におけるTエネルギー(T)を1/mの関数T=T(1/m)とし、最小二乗法により線形近似した時の(1/n)における該関数の外挿値を用いることができ、共役連鎖係数Zは、該線形近似直線の傾きとして定義される。また、基本構成単位がn個連結したセグメントの最低非占分子軌道エネルギーも同様の手法により求められる。特に、(1/n)=0における最低三重項励起エネルギーの値、及び、最低非占分子軌道エネルギーの絶対値は、n=∞に相当し、任意のnに対する下限値を与える。ここで、最小二乗法により線形近似を行う場合や共役連鎖係数Zを定義する場合のmの値は、本発明においては1から3までの整数である。
【0037】
上記した電子共役連鎖係数Z及び共役連鎖係数Zは、1種類の基本構成単位からなるセグメントの場合、基本構成単位にある共役電子数nを用いることにより以下の式により変換が可能である。
=n
【0038】
少なくとも2種類の基本構成単位からなるセグメントの場合、該セグメントを構成する各基本構成単位の構成比を求めることができる。この構成比と同じ基本構成単位構成比を有する最小単位(即ち、各基本構成単位の構成比を満たす最小単位)を想定し、該セグメント中の該最小単位の数をmとすると、セグメントは該「最小単位」のm量体であると考えることができる。従って、少なくとも2種類の基本構成単位からなるセグメントの場合、該セグメントを構成する各基本構成単位の構成比を満たす最小単位の数をmとした時の該最小単位のm量体におけるTエネルギー(T)を1/mの関数T=T(1/m)とすれば、最小単位のn量体についてのTエネルギー(T)は、該関数を最小二乗法により線形近似した時の(1/n)における外挿値として求めることができる。また、共役連鎖係数Zは、該線形近似直線の傾きにより定義される。また、最小単位のn量体であるセグメントの最低非占分子軌道エネルギーについても同様の手法により求められる。ここで、最小二乗法により線形近似を行う場合や共役連鎖係数Zを定義する場合のmの値は1から3までの整数である。
【0039】
本発明の組成物に含まれる高分子は、燐光発光性化合物を部分構造として同一分子内に含む高分子であってもよい。
本発明の組成物に含まれる高分子に、燐光発光性化合物が部分構造として組み込まれている場合、高分子(A)の構造と、燐光発光性化合物(B)の構造とを同一分子内に有する高分子の例としては、
高分子(A)の主鎖に発光性化合物(B)の構造を有する高分子;
高分子(A)の末端に発光性化合物(B)の構造を有する高分子;
高分子(A)の側鎖に発光性化合物(B)の構造を有する高分子;
が挙げられる。
【0040】
燐光発光性化合物としては、三重項励起状態からの発光を示す化合物を用いる。
【0041】
三重項励起状態からの発光を示す金属錯体構造を有するものとしては、例えば、従来から低分子系のEL発光性材料として利用されてきたものが挙げられる。これらは、例えば、Nature,(1998),395,151、Appl.Phys.Lett.(1999),75(1),4、Proc.SPIE−Int.Soc.Opt.Eng.(2001),4105(Organic Light−Emitting Materials and DevicesIV),119、J.Am.Chem.Soc.,(2001),123,4304、Appl.Phys.Lett.,(1997),71(18),2596、Syn.Met.,(1998),94(1),103、Syn.Met.,(1999),99(2),1361、Adv.Mater.,(1999),11(10),852、Inorg.Chem.,(2003),42,8609、Inorg.Chem.,(2004),43,6513、Journal of the SID 11/1、161(2003)、WO2002/066552、WO2004/020504、WO2004/020448等に開示されている。中でも、金属錯体の最高占有分子軌道(HOMO)における、中心金属の最外殻d軌道の軌道係数の2乗の和が、全原子軌道係数の2乗の和において占める割合が1/3以上であることが、高効率を得る観点で好ましく、たとえば、中心金属が第6周期に属する遷移金属である、オルトメタル化錯体などが挙げられる。
【0042】
三重項発光錯体の中心金属としては、通常、原子番号50以上の原子で、該錯体にスピン−軌道相互作用があり、一重項状態と三重項状態間の項間交差を起こしうる金属であり、例えば、金、白金、イリジウム、オスミウム、レニウム、タングステン、ユーロピウム、テルビウム、ツリウム、ディスプロシウム、サマリウム、プラセオジウム、ガドリニウム、イットリビウム原子が好ましく、より好ましくは、金、白金、イリジウム、オスミウム、レニウム、タングステン原子であり、さらに好ましくは、金、白金、イリジウム、オスミウム、レニウム原子であり、もっとも好ましくは、金、白金、イリジウム、レニウムである。
【0043】
三重項発光錯体の配位子としては、例えば、8−キノリノール及びその誘導体、ベンゾキノリノール及びその誘導体、2−フェニル−ピリジン及びその誘導体などが挙げられる。
【0044】
発光効率の点では、三重項励起状態からの発光を示す化合物(燐光発光性化合物)の最低三重項励起エネルギーをETTとした場合、
ETT > T−0.2(eV)
であることが好ましい。
【0045】
本発明の組成物中における三重項励起状態からの発光を示す発光材料(燐光発光性化合物)の量は、組み合わせる高分子の種類や、最適化したい特性により異なるので、特に限定されないが、組成物全体量を100重量部としたとき、通常0.01〜80重量部、好ましくは0.1〜60重量部である、より好ましくは0.1〜30重量部、さらに好ましくは0.1〜10重量部、特に好ましくは0.1〜5重量部である。また、金属錯体を2種類以上含んでいてもよい。
【0046】
本発明の組成物に含まれる高分子は、該高分子が上記した電子共役連鎖係数Z又は共役連鎖係数Zがある特定の関係を満たす限り、特に限定されるものではないが、主たる繰り返し最小単位が主鎖開裂可能な単結合を2個以上連続して主鎖上に有しない共役系高分子を用いることが好ましい。ここで、主鎖開裂可能とは該単結合を切断した場合に、繰り返し最小単位の主鎖が開裂して、該主鎖が途切れるものを示す。
より具体的には、主鎖にアリーレン又は2価の複素環を有するものが好ましく、芳香環、ヘテロ原子を含有する5員環以上の複素環、芳香族アミン、又は、下記式(1)で表される構造のいずれかを含むことが好ましい。
【0047】
ここで、芳香環化合物基上、複素環化合物基上、又は芳香族アミン化合物基上に、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい。
【化15】

【0048】
ここで、P環及びQ環はそれぞれ独立に芳香環を示すが、P環は存在してもしなくてもよい。2つの結合手は、P環が存在する場合は、それぞれP環及び/又はQ環上に存在し、P環が存在しない場合は、それぞれYを含む5員環若しくは6員環上及び/又はQ環上に存在する。また、芳香環上及び/又はYを含む5員環若しくは6員環上にアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい。Yは、−O−、−S−、−Se−、−B(R)−、−Si(R)(R)−、−P(R)−、−PR(=O)−、−C(R)(R)−、−N(R)−、−C(R)(R10)−C(R11)(R12)−、−O−C(R13)(R14)−、−S−C(R15)(R16)−、−N−C(R17)(R18)−、−Si(R19)(R20)−C(R21)(R22)−、−Si(R23)(R24)−Si(R25)(R26)−、−C(R27)=C(R28)−、−N=C(R29)−、−Si(R30)=C(R31)−を表し、R〜R31はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、シリルオキシ基、置換シリルオキシ基、1価の複素環基又はハロゲン原子を表す。この中では、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、1価の複素環基が好ましく、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、1価の複素環基がより好ましく、アルキル基、アリール基が特に好ましい。
【0049】
芳香族アミンとしては、以下の式で表される構造が挙げられる。
【化16】


(式中、Ar、Ar、Ar及びArはそれぞれ独立にアリーレン基又は2価の複素環基を示す。Ar10、Ar11及びAr12はそれぞれ独立にアリール基又は1価の複素環基を示す。Ar、Ar、Ar、Ar、及びAr10は置換基を有していてもよい。x及びyはそれぞれ独立に0又は1を示し、0≦x+y≦1である。)
【0050】
上記式(1)で示される構造としては、下記式(1−1)、(1−2)又は(1−3)で示される構造:
【化17】


(式中、A環、B環、及びC環はそれぞれ独立に芳香環を示す。式(1−1)、(1−2)及び(1−3)は、それぞれ、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい。Yは前記と同じ意味を表す。);及び
【0051】
下記式(1−4)又は(1−5)で示される構造:
【化18】


(式中、D環、E環、F環及びG環はそれぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい芳香環を示す。Yは前記と同じ意味を表す。)
が挙げられる。
【0052】
上記式(1−4)又は(1−5)中、YはC原子、N原子、O原子、又はS原子であることが、高発光効率を得るという点で好ましい。
【0053】
上記式(1−1)、(1−2)、(1−3)、(1−4)、及び(1−5)式中、A環、B環、C環、D環、E環、F環及びG環はそれぞれ独立に芳香環を示す。該芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、ピレン環、フェナントレン環等の芳香族炭化水素環;ピリジン環、ビピリジン環、フェナントロリン環、キノリン環、イソキノリン環、チオフェン環、フラン環、ピロール環等の複素芳香環が挙げられる。
【0054】
本発明の組成物に含まれる高分子は、該高分子が上記した電子共役連鎖係数Z又は共役連鎖係数Zが前記の関係を満たす限り、特に限定されるものではないが、例えばこのような高分子の好ましい構造の一つには、繰り返し最小単位が、芳香環、ヘテロ原子を含有する5員環以上の複素環、芳香族アミン、又は、上記式(1)で表される構造から選ばれる構造のいずれかを含む高分子が挙げられる。特に限定されるものではないが、具体例としては、以下のような例が挙げられる。ここで、下式(3−1)〜(3−13)中、Rは置換基を表し、R1は水素原子または置換基を表す。R、R1の置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、イミン残基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、1価の複素環基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基アリールアルケニル基、アリールエチニル基、置換カルボキシル基又はシアノ基が例示される。複数個のR、R1は同一であっても異なっていてもよい。Rとしては、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、1価の複素環基が好ましい。
【化19】

【0055】
また、本発明における高分子として、さらに好ましい構造としては、例えば具体的には以下に示される構造が挙げられる。
【化20−1】


【化20−2】


【化20−3】

【0056】
本発明の組成物はさらに副成分を含んでもよい。例えば、本発明の高分子と、正孔輸送材料、電子輸送材料、及び、発光材料から選ばれる少なくとも1種類の材料を含む組成物として用いられてもよい。
【0057】
電荷輸送性材料としては、正孔輸送材料及び電子輸送材料が挙げられる。正孔輸送材料としては、芳香族アミン、カルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体など、これまで有機EL素子に正孔輸送材料として使われているようなものが挙げられ、電子輸送材料としては、同様にこれまで有機EL素子に電子輸送材料として使われているような、オキサジアゾール誘導体アントラキノジメタン若しくはその誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、ナフトキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン若しくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン若しくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、又は8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体が挙げられる。電荷輸送材料の低分子有機化合物としては、低分子有機EL素子に用いられるホスト化合物、電荷注入輸送化合物が挙げられ、具体的には、例えば「有機ELディスプレイ」(時任静士、安達千波矢、村田英幸 共著、オーム社)107頁、月刊ディスプレイ、vol9、No9、2003年26−30頁、特開2004−244400、特開2004−277377等に記載の化合物を挙げることができる。
【0058】
また、電荷輸送性材料としては高分子も用いることができる。高分子としては、非共役系高分子、共役系高分子が挙げられる。非共役系高分子としては、ポリビニルカルバゾールなどが挙げられる。共役系高分子としては、発光を著しく妨げなければ、1又は2記載の共役系高分子を含んでいてもよく、例えば、ポリフルオレン、ポリジベンゾチオフェン、ポリジベンゾフラン、ポリジベンゾシロールなどが挙げられる。
【0059】
本発明の組成物に用いる高分子のポリスチレン換算の数平均分子量は10〜10が好ましく、さらに好ましくは10〜10である。ポリスチレン換算の重量平均分子量は10〜10であり、好ましくは5×10〜5×10である。
【0060】
また、本発明の組成物は、電荷輸送性材料のほかに、発光材料を含有していてもよく、その発光材料としては、例えば、前記した発光性化合物と同じ化合物が例示される。
【0061】
本発明の組成物が、三重項励起状態からの発光を示す燐光性発光分子を含む場合、該組成物に含まれる高分子及び三重項励起状態からの発光を示す発光材料の最低三重項励起エネルギーをそれぞれETP及びETTとした場合、
ETT > ETP−0.2(eV) (4)
であることが好ましい。
【0062】
高分子と組み合わせて用いる三重項励起状態からの発光を示す発光材料としては、上記式(4)の関係を満たす化合物であれば、特に限定されるものではないが、金属錯体構造を有するものが好ましい。その具体例としては、前述したものが挙げられる。
【0063】
本発明のインク組成物は、本発明の高分子又は組成物を含有することを特徴とする。インク組成物としては、本発明の共役系高分子又は組成物から選ばれる1種類以上のものが含有されていればよく、それに加えて正孔輸送材料、電子輸送材料、発光材料、溶媒、安定剤などの添加剤を含んでいてもよい。
【0064】
該インク組成物中における本発明の共役系高分子又は組成物を含む固形物の割合は、溶媒を除いた組成物の全重量に対して通常は20wt%〜100wt%であり、好ましくは40wt%〜100wt%である。
【0065】
またインク組成物中に溶媒が含まれる場合の溶媒の割合は、組成物の全重量に対して1wt%〜99.9wt%であり、好ましくは60wt%〜99.5wt%であり、さらに好ましくは80wt%〜99.0wt%である。
【0066】
インク組成物の粘度は印刷法によって異なるが、インクジェットプリント法などインク組成物中が吐出装置を経由する場合には、吐出時の目づまりや飛行曲がりを防止するために、粘度が25℃において1〜20mPa・sの範囲であることが好ましい。
【0067】
本発明のインク組成物(以下、単に溶液又は本発明の溶液ともいう)は、本発明の高分子又は組成物の他に、粘度及び/又は表面張力を調節するための添加剤を含有していてもよい。該添加剤としては、粘度を高めるための高分子量の高分子化合物(増粘剤)や貧溶媒、粘度を下げるための低分子量の化合物、表面張力を下げるための界面活性剤などを適宜組み合わせて使用すればよい。
【0068】
前記の高分子量の高分子化合物(増粘剤)としては、本発明の共役系高分子又は組成物と同じ溶媒に可溶性で、発光や電荷輸送を阻害しないものであればよい。例えば、高分子量のポリスチレン、ポリメチルメタクリレートなどを用いることができる。重量平均分子量が50万以上が好ましく、100万以上がより好ましい。
【0069】
貧溶媒を増粘剤として用いることもできる。すなわち、溶液中の固形分に対する貧溶媒を少量添加することで、粘度を高めることができる。この目的で貧溶媒を添加する場合、溶液中の固形分が析出しない範囲で、溶媒の種類と添加量を選択すればよい。保存時の安定性も考慮すると、貧溶媒の量は、溶液全体に対して50wt%以下であることが好ましく、30wt%以下であることが更に好ましい。
【0070】
また、本発明の溶液は、保存安定性を改善するために、本発明の共役系高分子又は組成物の他に、酸化防止剤を含有していてもよい。酸化防止剤としては、本発明の共役系高分子又は組成物と同じ溶媒に可溶性で、発光や電荷輸送を阻害しないものであればよく、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などが例示される。
【0071】
溶液からの成膜に用いる溶媒としては、正孔輸送性材料を溶解又は均一に分散できるものが好ましい。該溶媒としてクロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−へプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール等の多価アルコール及びその誘導体、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等のアルコール系溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒が例示される。また、これらの有機溶媒は、単独で、又は複数組み合わせて用いることができる。上記溶媒のうち、ベンゼン環を少なくとも1個以上含む構造を有し、かつ融点が0℃以下、沸点が100℃以上である有機溶媒を1種類以上含むことが好ましい。
【0072】
溶媒の種類としては、有機溶媒への溶解性、成膜時の均一性、粘度特性等の観点から、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒が好ましく、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン、n−ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、s−ブチルベンゼン、アニソール、エトキシベンゼン、1−メチルナフタレン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロヘキシルベンゼン、ビシクロヘキシル、シクロヘキセニルシクロヘキサノン、n−ヘプチルシクロヘキサン、n−ヘキシルシクロヘキサン、2−プロピルシクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、2−ノナノン、2−デカノン、ジシクロヘキシルケトンが好ましく、キシレン、アニソール、シクロヘキシルベンゼン、ビシクロヘキシルのうち少なくとも1種類を含むことがより好ましい。
【0073】
溶液中の溶媒の種類は、成膜性の観点や素子特性等の観点から、2種類以上であることが好ましく、2〜3種類であることがより好ましく、2種類であることがさらに好ましい。
【0074】
溶液中に2種類の溶媒が含まれる場合、そのうちの1種類の溶媒は25℃において固体状態でもよい。成膜性の観点から、1種類の溶媒は沸点が180℃以上の溶媒であり、他の1種類の溶媒は沸点が180℃以下の溶媒であることが好ましく、1種類の溶媒は沸点が200℃以上の溶媒であり、他の1種類の溶媒は沸点が180℃以下の溶媒であることがより好ましい。また、組成物として高分子化合物を用いる場合は、粘度の観点から、2種類の溶媒ともに、60℃において1wt%以上の高分子化合物が溶解することが好ましく、2種類の溶媒のうちの1種類の溶媒には、25℃において1wt%以上の高分子化合物が溶解することが好ましい。
【0075】
溶液中に3種類の溶媒が含まれる場合、そのうちの1〜2種類の溶媒は25℃において固体状態でもよい。成膜性の観点から、3種類の溶媒のうちの少なくとも1種類の溶媒は沸点が180℃以上の溶媒であり、少なくとも1種類の溶媒は沸点が180℃以下の溶媒であることが好ましく、3種類の溶媒のうちの少なくとも1種類の溶媒は沸点が200℃以上300℃以下の溶媒であり、少なくとも1種類の溶媒は沸点が180℃以下の溶媒であることがより好ましい。また、粘度の観点から、3種類の溶媒のうちの2種類の溶媒には、60℃において1wt%以上の高分子化合物が溶解することが好ましく、3種類の溶媒のうちの1種類の溶媒には、25℃において1wt%以上の高分子化合物が溶解することが好ましい。
【0076】
溶液中に2種類以上の溶媒が含まれる場合、粘度及び成膜性の観点から、最も沸点が高い溶媒が、溶液中の全溶媒の重量の40〜90wt%であることが好ましく、50〜90wt%であることがより好ましく、65〜85wt%であることがさらに好ましい。
【0077】
本発明の溶液としては、粘度及び成膜性の観点から、アニソール及びビシクロヘキシルからなる溶液、アニソール及びシクロヘキシルベンゼンからなる溶液、キシレン及びビシクロヘキシルからなる溶液、キシレン及びシクロヘキシルベンゼンからなる溶液が好ましい。
【0078】
組成物として高分子化合物を用いる場合は、高分子化合物の溶媒への溶解性の観点から、溶媒の溶解度パラメータと、高分子化合物の溶解度パラメータとの差が10以下であることが好ましく、7以下であることがより好ましい。
【0079】
溶媒の溶解度パラメーターと高分子化合物の溶解度パラメーターは、「溶剤ハンドブック(講談社刊、1976年)」に記載の方法で求めることができる。
【0080】
本発明のインク組成物は、粘度が25℃において1〜100mPa・sであることが好ましい。
【0081】
なお、本発明における共役系高分子又は組成物は、発光性薄膜における発光材料として用いることができるだけでなく、有機半導体材料、光学材料、又はドーピングにより導電性材料として用いることもできる。
【0082】
次に、本発明の光電素子について説明する。本発明の光電素子は、陽極及び陰極からなる電極間に、本発明の金属錯体又は本発明の組成物を含む層を有することを特徴とし、例えば、発光素子、スイッチング素子、光電変換素子として用いることができる。該素子が発光素子の場合は、本発明の共役系高分子又は組成物を含む層が、発光層であることが好ましい。
【0083】
また、本発明の光電素子としては、陽極及び陰極からなる電極間に、さらに電荷輸送層又は電荷阻止層を含んでいてもよい。電荷輸送層とは、正孔輸送層又は電子輸送層を意味し、電荷阻止層とは、ホール阻止層又は電子阻止層を意味する。陰極と光電層との間に、電子輸送層又はホール阻止層を設けた発光素子、陽極と光電層との間に、正孔輸送層又は電子阻止層を設けた発光素子、陰極と光電層との間に、電子輸送層又はホール阻止層を設け、かつ陽極と光電層との間に、正孔輸送層又は電子阻止層を設けた発光素子等が挙げられる。ここで、電子輸送層とホール阻止層は、「有機ELのすべて」162頁(城戸淳二著、日本実業出版)に記載されているように、同じ機能を持ち、例えば電子輸送層とホール阻止層を構成する材料は同じものを用いることができ、材料の特性により、どちらかの機能がより強く反映される場合がある。正孔輸送層と電子阻止層も同様である。本発明の発光素子には、例えば特許文献(Journal of the SID 11/1,161−166,2003)記載の素子構造が例に挙げられる。
【0084】
また、本発明の光電素子としては、上記少なくとも一方の電極と光電層との間に該電極に隣接して導電性高分子を含む層を設けた発光素子;少なくとも一方の電極と光電層との間に該電極に隣接して平均膜厚2nm以下のバッファー層を設けた発光素子も挙げられる。
【0085】
具体的には、以下のa)〜d)の構造が例示される。
a)陽極/光電層/陰極
b)陽極/正孔輸送層/光電層/陰極
c)陽極/光電層/電子輸送層/陰極
d)陽極/正孔輸送層/光電層/電子輸送層/陰極
(ここで、/は各層が隣接して積層されていることを示す。以下同じ。)
【0086】
ここで、光電層とは、光電機能を有する層、すなわち発光性、導電性、光電変換機能を有する薄膜であり、正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する層であり、電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する層である。なお、電子輸送層と正孔輸送層を総称して電荷輸送層と呼ぶ。
【0087】
光電層、正孔輸送層、電子輸送層は、それぞれ独立に2層以上用いてもよい。
【0088】
また、電極に隣接して設けた電荷輸送層のうち、電極からの電荷注入効率を改善する機能を有し、素子の駆動電圧を下げる効果を有するものは、特に電荷注入層(正孔注入層、電子注入層)と一般に呼ばれることがある。
【0089】
また、電極との密着性向上や電極からの電荷注入の改善のために、電極に隣接して前記の電荷注入層又は膜厚2nm以下の絶縁層を設けてもよく、また、界面の密着性向上や混合の防止等のために電荷輸送層や光電層の界面に薄いバッファー層を挿入してもよい。
【0090】
さらに、電子を輸送し、かつ正孔を閉じ込めるために光電層との界面に正孔阻止層を挿入してもよい。
【0091】
積層する層の順番や数、及び各層の厚さについては、発光効率や素子寿命を勘案して適宜用いることができる。
【0092】
本発明において、電荷注入層(電子注入層、正孔注入層)を設けた発光素子としては、陰極に隣接して電荷注入層を設けた発光素子、陽極に隣接して電荷注入層を設けた発光素子が挙げられる。
【0093】
例えば、具体的には、以下のe)〜p)の構造が挙げられる。
e)陽極/電荷注入層/光電層/陰極
f)陽極/光電層/電荷注入層/陰極
g)陽極/電荷注入層/光電層/電荷注入層/陰極
h)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/光電層/陰極
i)陽極/正孔輸送層/光電層/電荷注入層/陰極
j)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/光電層/電荷注入層/陰極
k)陽極/電荷注入層/光電層/電荷輸送層/陰極
l)陽極/光電層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
m)陽極/電荷注入層/光電層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
n)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/光電層/電荷輸送層/陰極
o)陽極/正孔輸送層/光電層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
p)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/光電層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
【0094】
電荷注入層の具体的な例としては、導電性高分子を含む層、陽極と正孔輸送層との間に設けられ、陽極材料と正孔輸送層に含まれる正孔輸送材料との中間の値のイオン化ポテンシャルを有する材料を含む層、陰極と電子輸送層との間に設けられ、陰極材料と電子輸送層に含まれる電子輸送材料との中間の値の電子親和力を有する材料を含む層などが例示される。
【0095】
上記電荷注入層が導電性高分子を含む層の場合、該導電性高分子の電気伝導度は、10−5S/cm以上10S/cm以下であることが好ましく、発光画素間のリーク電流を小さくするためには、10−5S/cm以上10S/cm以下がより好ましく、10−5S/cm以上10S/cm以下がさらに好ましい。
【0096】
通常は該導電性高分子の電気伝導度を10−5S/cm以上10S/cm以下とするために、該導電性高分子に適量のイオンをドープする。
【0097】
ドープするイオンの種類は、正孔注入層であればアニオン、電子注入層であればカチオンである。アニオンの例としては、ポリスチレンスルホン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、樟脳スルホン酸イオンなどが例示され、カチオンの例としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオンなどが例示される。
【0098】
電荷注入層の膜厚としては、例えば1nm〜100nmであり、2nm〜50nmが好ましい。
【0099】
電荷注入層に用いる材料は、電極や隣接する層の材料との関係で適宜選択すればよく、ポリアニリン及びその誘導体、ポリアミノフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、芳香族アミン構造を主鎖又は側鎖に含む重合体などの導電性高分子、金属フタロシアニン(銅フタロシアニンなど)、カーボンなどが例示される。
【0100】
膜厚2nm以下の絶縁層は電荷注入を容易にする機能を有するものである。上記絶縁層の材料としては、金属フッ化物、金属酸化物、有機絶縁材料等が挙げられる。膜厚2nm以下の絶縁層を設けた発光素子としては、陰極に隣接して膜厚2nm以下の絶縁層を設けた発光素子、陽極に隣接して膜厚2nm以下の絶縁層を設けた発光素子が挙げられる。
【0101】
具体的には、例えば、以下のq)〜ab)の構造が挙げられる。
q)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/光電層/陰極
r)陽極/光電層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
s)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/光電層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
t)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/正孔輸送層/光電層/陰極
u)陽極/正孔輸送層/光電層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
v)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/正孔輸送層/光電層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
w)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/光電層/電子輸送層/陰極
x)陽極/光電層/電子輸送層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
y)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/光電層/電子輸送層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
z)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/正孔輸送層/光電層/電子輸送層/陰極
aa)陽極/正孔輸送層/光電層/電子輸送層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
ab)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/正孔輸送層/光電層/電子輸送層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
【0102】
正孔阻止層は、電子を輸送し、かつ、陽極から輸送された正孔を閉じ込める働きを有するものであり、光電層の陰極側の界面に設けられ、光電層のイオン化ポテンシャルよりも大きなイオン化ポテンシャルを有する材料、例えば、バソクプロイン、8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体などから構成される。
【0103】
正孔阻止層の膜厚としては、例えば1nm〜100nmであり、2nm〜50nmが好ましい。
【0104】
具体的には、例えば、以下のac)〜an)の構造が挙げられる。
ac)陽極/電荷注入層/光電層/正孔阻止層/陰極
ad)陽極/光電層/正孔阻止層/電荷注入層/陰極
ae)陽極/電荷注入層/光電層/正孔阻止層/電荷注入層/陰極
af)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/光電層/正孔阻止層/陰極
ag)陽極/正孔輸送層/光電層/正孔阻止層/電荷注入層/陰極
ah)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/光電層/正孔阻止層/電荷注入層/陰極
ai)陽極/電荷注入層/光電層/正孔阻止層/電荷輸送層/陰極
aj)陽極/光電層/正孔阻止層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
ak)陽極/電荷注入層/光電層/正孔阻止層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
al)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/光電層/正孔阻止層/電荷輸送層/陰極
am)陽極/正孔輸送層/光電層/正孔阻止層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
an)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/光電層/正孔阻止層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
【0105】
本発明の光電素子を作製する際に、電荷輸送材料を含めた光電材料を溶液から成膜する場合、この溶液を塗布後乾燥により溶媒を除去するだけでよく、また電荷輸送材料や発光材料を混合した場合においても同様な手法が適用でき、製造上非常に有利である。溶液からの成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法を用いることができる。また電荷輸送材料を含めた発光材料が比較的低分子の場合は、光電層を真空蒸着法を用いて製膜してもよい。
【0106】
本発明の発光素子においては、光電層、即ち発光層に本発明の光電材料以外の発光材料を混合して使用してもよい。また、本発明の光電素子においては、本発明以外の発光材料を含む発光層が、本発明の発光材料を含む光電層と積層されていてもよい。
【0107】
該発光材料としては、公知のものが使用できる。低分子化合物では、例えば、ナフタレン誘導体、アントラセン若しくはその誘導体、ペリレン若しくはその誘導体、ポリメチン系、キサンテン系、クマリン系、シアニン系などの色素類、8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン若しくはその誘導体、又はテトラフェニルブタジエン若しくはその誘導体などを用いることができる。
【0108】
具体的には、例えば特開昭57−51781号、同59−194393号公報に記載されているもの等、公知のものが使用可能である。
【0109】
本発明の光電素子が正孔輸送層を有する場合、使用される正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリアミノフェン若しくはその誘導体、ポリピロール若しくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、又はポリ(2,5−チエニレンビニレン)若しくはその誘導体などが例示される。
【0110】
具体的には、該正孔輸送材料として、特開昭63−70257号公報、同63−175860号公報、特開平2−135359号公報、同2−135361号公報、同2−209988号公報、同3−37992号公報、同3−152184号公報に記載されているもの等が例示される。
【0111】
これらの中で、正孔輸送層に用いる正孔輸送材料として、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミン化合物基を有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリアミノフェン若しくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、又はポリ(2,5−チエニレンビニレン)若しくはその誘導体等の高分子正孔輸送材料が好ましく、さらに好ましくはポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体である。低分子の正孔輸送材料の場合には、高分子バインダーに分散させて用いることが好ましい。
【0112】
ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体は、例えばビニルモノマーからカチオン重合又はラジカル重合によって得られる。
【0113】
ポリシラン若しくはその誘導体としては、ケミカル・レビュー(Chem.Rev.)第89巻、1359頁(1989年)、英国特許GB2300196号公開明細書に記載の化合物等が例示される。合成方法もこれらに記載の方法を用いることができるが、特にキッピング法が好適に用いられる。
【0114】
ポリシロキサン若しくはその誘導体は、シロキサン骨格構造には正孔輸送性がほとんどないので、側鎖又は主鎖に上記低分子正孔輸送材料の構造を有するものが好適に用いられる。特に正孔輸送性の芳香族アミンを側鎖又は主鎖に有するものが例示される。
【0115】
正孔輸送層の成膜の方法に制限はないが、低分子正孔輸送材料では、高分子バインダーとの混合溶液からの成膜による方法が例示される。また、高分子正孔輸送材料では、溶液からの成膜による方法が例示される。
【0116】
溶液からの成膜に用いる溶媒としては、正孔輸送材料を溶解させるものであれば特に制限はない。該溶媒として、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒が例示される。
【0117】
溶液からの成膜方法としては、溶液からのスピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法を用いることができる。
【0118】
混合する高分子バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収が強くないものが好適に用いられる。該高分子バインダーとして、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサン等が例示される。
【0119】
正孔輸送層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、該正孔輸送層の膜厚としては、例えば1nmから1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0120】
本発明の光電素子が電子輸送層を有する場合、使用される電子輸送材料としては公知のものが使用でき、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン若しくはその誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、ナフトキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン若しくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン若しくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、又は8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリン若しくはその誘導体、ポリキノキサリン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体等が例示される。
【0121】
具体的には、特開昭63−70257号公報、同63−175860号公報、特開平2−135359号公報、同2−135361号公報、同2−209988号公報、同3−37992号公報、同3−152184号公報に記載されているもの等が例示される。
【0122】
これらのうち、アミノキサジアゾール誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、又は8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリン若しくはその誘導体、ポリキノキサリン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体が好ましく、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ベンゾキノン、アントラキノン、トリス(8−キノリノール)アルミニウム、ポリキノリンがさらに好ましい。
【0123】
電子輸送層の成膜法としては特に制限はないが、低分子電子輸送材料では、粉末からの真空蒸着法、又は溶液若しくは溶融状態からの成膜による方法が、高分子電子輸送材料では溶液又は溶融状態からの成膜による方法がそれぞれ例示される。溶液又は溶融状態からの成膜時には、高分子バインダーを併用してもよい。
【0124】
溶液からの成膜に用いる溶媒としては、電子輸送材料及び/又は高分子バインダーを溶解させるものであれば特に制限はない。該溶媒として、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒が例示される。
【0125】
溶液又は溶融状態からの成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法を用いることができる。
【0126】
混合する高分子バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また、可視光に対する吸収が強くないものが好適に用いられる。該高分子バインダーとして、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリアミノフェン若しくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)若しくはその誘導体、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、又はポリシロキサンなどが例示される。
【0127】
電子輸送層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、該電子輸送層の膜厚としては、例えば1nmから1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0128】
本発明の光電素子を形成する基板は、電極を形成し、該光電素子の各層を形成する際に変化しないものであればよく、例えばガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコン基板などが例示される。不透明な基板の場合には、反対の電極が透明又は半透明であることが好ましい。
【0129】
通常、陽極及び陰極からなる電極のうち少なくとも一方が透明又は半透明であり、陽極側が透明又は半透明であることが好ましい。
該陽極の材料としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等が用いられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等からなる導電性ガラスを用いて作成された膜(NESAなど)、金、白金、銀、銅等が用いられ、ITO、インジウム・亜鉛・オキサイド、酸化スズが好ましい。作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。また、該陽極として、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリアミノフェン若しくはその誘導体などの有機の透明導電膜を用いてもよい。
【0130】
陽極の膜厚は、光の透過性と電気伝導度とを考慮して、適宜選択することができるが、例えば10nmから10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0131】
また、陽極上に、電荷注入を容易にするために、フタロシアニン誘導体、導電性高分子、カーボンなどからなる層、又は金属酸化物や金属フッ化物、有機絶縁材料等からなる平均膜厚2nm以下の層を設けてもよい。
【0132】
本発明の発光素子で用いる陰極の材料としては、仕事関数の小さい材料が好ましい。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウムなどの金属、又はそれらのうち2つ以上の合金、若しくはそれらのうち1つ以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうち1つ以上との合金、又はグラファイト若しくはグラファイト層間化合物等が用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金などが挙げられる。陰極を2層以上の積層構造としてもよい。
【0133】
陰極の膜厚は、電気伝導度や耐久性を考慮して、適宜選択することができるが、例えば10nmから10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0134】
陰極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、また金属薄膜を熱圧着するラミネート法等が用いられる。また、陰極と有機物層との間に、導電性高分子からなる層、又は金属酸化物や金属フッ化物、有機絶縁材料等からなる平均膜厚2nm以下の層を設けてもよく、陰極作製後、該発光素子を保護する保護層を装着していてもよい。該発光素子を長期安定的に用いるためには、素子を外部から保護するために、保護層及び/又は保護カバーを装着することが好ましい。
【0135】
該保護層としては、高分子化合物、金属酸化物、金属フッ化物、金属ホウ化物などを用いることができる。また、保護カバーとしては、ガラス板、表面に低透水率処理を施したプラスチック板などを用いることができ、該カバーを熱効果樹脂や光硬化樹脂で素子基板と貼り合わせて密閉する方法が好適に用いられる。スペーサーを用いて空間を維持すれば、素子が傷付くのを防ぐことが容易である。該空間に窒素やアルゴンのような不活性なガスを封入すれば、陰極の酸化を防止することができ、さらに酸化バリウム等の乾燥剤を該空間内に設置することにより製造工程で吸着した水分が素子にダメージを与えるのを抑制することが容易となる。これらのうち、いずれか1つ以上の方策をとることが好ましい。
【0136】
本発明の発光素子は、面状光源、セグメント表示装置、ドットマトリックス、液晶表示装置のバックライト又は照明に用いることができる。
【0137】
本発明の発光素子を用いて面状の発光を得るためには、面状の陽極と陰極が重なり合うように配置すればよい。また、パターン状の発光を得るためには、前記面状の発光素子の表面にパターン状の窓を設けたマスクを設置する方法、非発光部の有機物層を極端に厚く形成し実質的に非発光とする方法、陽極又は陰極のいずれか一方、又は両方の電極をパターン状に形成する方法がある。これらのいずれかの方法でパターンを形成し、いくつかの電極を独立にON/OFFできるように配置することにより、数字や文字、簡単な記号などを表示できるセグメントタイプの表示素子が得られる。更に、ドットマトリックス素子とするためには、陽極と陰極をともにストライプ状に形成して直交するように配置すればよい。複数の種類の発光色の異なる発光材料を塗り分ける方法や、カラーフィルター又は発光変換フィルターを用いる方法により、部分カラー表示、マルチカラー表示が可能となる。ドットマトリックス素子は、パッシブ駆動も可能であるし、TFTなどと組み合わせてアクティブ駆動してもよい。これらの表示素子は、コンピュータ、テレビ、携帯端末、携帯電話、カーナビゲーション、ビデオカメラのビューファインダーなどの表示装置として用いることができる。
【0138】
さらに、前記面状の発光素子は、自発光薄型であり、液晶表示装置のバックライト用の面状光源、又は面状の照明用光源として好適に用いることができる。また、フレキシブルな基板を用いれば、曲面状の光源や表示装置としても使用できる。
【0139】
次に本発明の別の様態として、光電素子について説明する。
【0140】
光電素子としては、例えば光電変換素子があり、少なくとも一方が透明又は半透明な二組の電極間に本発明の金属錯体又は組成物を含む層を挟持させた素子や、基板上に製膜した本発明の高分子化合物又は高分子組成物を含む層上に形成した櫛型電極を有する素子が例示される。特性を向上するために、フラーレンやカーボンナノチューブ等を混合してもよい。
【0141】
光電変換素子の製造方法としては、特許第3146296号公報に記載の方法が例示される。具体的には、第一の電極を有する基板上に高分子薄膜を形成し、その上に第二の電極を形成する方法、基板上に形成した一組の櫛型電極の上に高分子薄膜を形成する方法が例示される。第一又は第二の電極のうち一方が透明又は半透明である。
【0142】
高分子薄膜の形成方法やフラーレンやカーボンナノチューブを混合する方法については特に制限はないが、発光素子で例示したものが好適に利用できる。
【実施例】
【0143】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0144】
なお、下記実施例において、フォトルミネッセンス測定は、堀場製作所社製のFluorologまたは(株)オプテル社製 有機EL発光特性評価装置IES−150を用い、励起波長は350nmにて測定した。また、ポリスチレン換算の数平均分子量は、テトラヒドロフランを溶媒として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC:HLC−8220GPC、東ソー製若しくはSCL−10A、島津製作所製)により求めた。
【0145】
(合成例1)
化合物M−2の合成
【化21】


アルゴン雰囲気下、500ml−三つ口フラスコ中で、化合物M−1(16.11g,35mmol)、ピナコレートジボラン(12.83g,84mmol)、PdCl(dppf)(1.7g,2.1mmol)、酢酸カリウム(20.6g,210mmol)、及びジオキサン(200ml)を混合し、11時間還流させた。反応後室温まで冷却し、セライトろ過を行った後、濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:トルエン=1:1)を3回かけることで化合物M−2を得た(3.76g,19%)。
H−NMR;δ0.88(6H,t),1.34(12H,s),1.12−1.55(24H,m),2.55(6H,t),2.81(4H,t),7.52(2H,s).
化合物M−1はMacromol.Phys.,1997,198,3827−3843.記載の方法で合成した。
【0146】
(合成例2)
化合物M−3の合成
【化22】


アルゴン雰囲気下、500ml−三つ口フラスコ中で、化合物M−2(4.44g,8.0mmol)、p−ブロモヨードベンゼン(6.79g,24mmol)、Pd(PPh(550mg,0.48mmol)、水酸化カリウム(6.73g、90mmol)、テトラブチルアンモニウムブロマイド(1.29mg,4.0mmol)、トルエン(200ml)、及び水(100ml)を混合し、18時間、40℃に加温した。反応終了後室温まで冷却し、有機層を水(100ml×2)で洗浄した後、濃縮乾固した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:ヘキサン=1:1)で精製した後、有機層を濃縮乾固し昇華を行うことにより原料のp−ブロモヨードベンゼンを取り除いた。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製することにより目的物M−3を得た(2.8g,57%)。
LC−MS(APCI法);m/z 611.2(〔M+H〕).
【0147】
(実施例1)
高分子化合物(P−1)の合成
不活性雰囲気下、化合物M−3(0.800g)、及び2,2’−ビピリジル(0.551g)を、あらかじめアルゴンでバブリングした脱水テトラヒドロフラン45mLに溶解し、次に、ビス(1、5−シクロオクタジエン)ニッケル(0){Ni(COD)}(0.970g)を加えて攪拌した。この溶液を60℃まで昇温後、3時間反応させた。
反応液を室温まで冷却し、25%アンモニア水2mL/メタノール48mL/イオン交換水50mL混合溶液中に滴下して1時間攪拌した後、析出した沈殿をろ過して減圧乾燥した。つづいて、この沈殿をトルエン20mlに溶解させ、溶液にラヂオライト0.08gを加えて30分攪拌し、不溶解物を濾過した後、濾液をアルミナカラムを通して精製し、次に4%アンモニア水40mLを加え、2時間攪拌した後に水層を除去した。さらに有機層にイオン交換水約40mLを加え1時間攪拌した後、水層を除去した。その後、有機層をメタノール70mlに注加して0.5時間攪拌した。析出した沈殿をろ過して減圧乾燥することにより、高分子化合物P−1を0.050g得た。
また、ポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量は、それぞれMn=2.1x10、Mw=3.5x10であった。
【化23】

【0148】
上記高分子化合物(P−1)における電子共役連鎖係数Zは、0.17であった。n=∞における外挿値である最低三重項励起エネルギーT(1/n=0)及び最低非占分子軌道エネルギーの絶対値ELUMO(1/n=0)は、T(1/n=0)=3.3eV、及び、ELUMO(1/n=0)=1.5eVであった。
【0149】
計算は、発明の詳細な説明に記載してある手法で実施した。具体的には、高分子化合物(P−1)における下記繰り返し最小単位(M−3a)を(M−3b)と簡略化し、HF法により構造最適化を行った。その際、基底関数としては、6−31G*を用いた。その後、同一の基底を用い、B3P86レベルの時間依存密度汎関数法により、最低非占分子軌道エネルギー、及び、最低三重項励起エネルギーを算出した。化学構造を簡略化したことの妥当性は、特開2005−126686記載の方法で、最低三重項励起エネルギー及び最低非占分子軌道エネルギーに対するアルキル側鎖長依存性が小さいことにより確認した。
【化24】

【0150】
(実施例2)
上記高分子化合物(P−1)に、下記燐光発光性化合物(T−1)を2wt%添加した混合物の、0.8wt%トルエン溶液を調製した。石英基板に上記トルエン溶液を用いてスピンコートにより1500rpmの回転速度で成膜して素子を作製した。
これに、400nmの光を入射し、発光スペクトルを測定したところ、480nm付近にピークを持つ、下記燐光発光性化合物(T−1)からの青色発光を観測した。
【0151】
(実施例3)
高分子化合物(P−2)の合成
不活性雰囲気下、化合物M−1(0.934g)及び化合物M−4(1.061g)をあらかじめアルゴンでバブリングした脱水トルエン22mLに溶解した。次に反応マスを45℃まで昇温し、酢酸パラジウム(1.0mg)及びリン配位子(8mg)を加え、5分間撹拌し、塩基を7.6ml加え、114℃で24時間加熱した。反応マスに、次いでブロモベンゼン(0.345g)を加え114℃で1時間撹拌した後、65℃に冷却しフェニルホウ酸(0.268g)を加え、再度114℃で1時間撹拌した。反応混合物を冷却し、メタノール(889ml)に注ぎ込むことで、高分子化合物(P−2)を得た。
また、ポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量は、それぞれMn=2.5x10、Mw=7.0x10であった。
高分子化合物(P−2)は、特表2005−506439号公報記載の方法により製造した。
【化25】

【0152】
上記高分子化合物(P−2)における共役連鎖係数Zは、0.07であり、電子共役連鎖係数Zは、1.34であった。n=∞における外挿値である最低三重項励起エネルギーT(1/n=0)及び最低非占分子軌道エネルギーの絶対値ELUMO(1/n=0)は、T(1/n=0)=3.1eV、及び、ELUMO(1/n=0)=1.5eVであった。なお計算対象とした高分子化合物(P−2)を構成する最小単位、及び繰り返し最小単位は(M−5)のように簡略化した。
【化26】

【0153】
(実施例4)
上記高分子化合物(P−2)に、下記燐光発光性化合物(T−2)を5wt%添加した混合物の、1.2wt%トルエン溶液を調製した。スパッタ法により150nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板に、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸の溶液(バイエル社、BaytronP)を用いてスピンコートにより50nmの厚みで成膜し、ホットプレート上で200℃で10分間乾燥した。得られた膜の上に、次に、上記調製したトルエン溶液を用いてスピンコートにより700rpmの回転速度で成膜した。膜厚は約90nmであった。さらに、これを減圧下80℃で1時間乾燥した後、陰極バッファー層として、LiFを約4nm、陰極として、カルシウムを約5nm、次いでアルミニウムを約80nm蒸着して、EL素子を作製した。なお、真空度が、1×10−4Pa以下に到達したのち、金属の蒸着を開始した。
得られた素子に電圧を引加することにより、505nmにピークを有する緑色のEL発光が得られた。該素子の最大発光効率は2.5cd/Aであった。
上記高分子化合物(P−2)に、燐光発光性化合物T−2を2wt%添加した混合物の、0.8wt%トルエン溶液を調製した。この溶液を石英基板上にスピンコートにて塗布し、フォトルミネッセンス量子収率を測定したところ、量子収率は、43.1%であった。
【0154】
(燐光発光性化合物)
燐光発光性化合物(T−1)は、アメリカンダイソース社から入手し、燐光発光性化合物(T−2)は、Journal of American Chemical Society,Vol.107,1431−1432、(1985)に記載の方法に準じて合成した。
【化27】

【0155】
(比較例1)
下記高分子化合物(R1)に、上記燐光発光性化合物(T−2)を5wt%添加した混合物の、0.8wt%トルエン溶液を調製し、実施例2と同様に素子を作製した。得られた素子に電圧を印加することにより、530nmにピークを有するEL発光が得られたが、該素子の最大発光効率は0.06cd/Aと極めて低いものであった。
下記高分子化合物(R1)に、燐光発光性化合物T−2を2wt%添加した混合物の、0.8wt%トルエン溶液を調製した。この溶液を石英基板上にスピンコートにて塗布し、フォトルミネッセンス量子収率を測定したところ、量子収率は、5.4%と低い値であった。
なお、高分子化合物(R1)はUS6512083号公報記載の方法で合成した。
【0156】
高分子化合物(R1):下記の繰り返し単位から実質的になるホモポリマー
【化28】

【0157】
上記高分子化合物(R1)における共役連鎖係数Zは、0.61であり、電子共役連鎖係数Zは7.37であった。n=∞における外挿値である最低三重項励起エネルギーT(1/n=0)及び最低非占分子軌道エネルギーの絶対値ELUMO(1/n=0)は、T(1/n=0)=2.6eV、及び、ELUMO(1/n=0)=2.1eVであった。なお計算対象とした高分子化合物(R1)を構成する最小単位、及び繰り返し最小単位は、(M−6)のように簡略化した。
【化29】

【0158】
(実施例5)
1,4−ジヘキシル−2,5−ボロン酸ピナコールエステルの合成
300ml四つ口フラスコに、1,4−ジヘキシル2,5−ジブロモベンゼン8.08g(20.0mmol)、ビス(ピナコレート)ジボロン12.19g(48.0mmol)、及び酢酸カリウム11.78g(120.0mmol)を仕込み、アルゴン置換を行った。脱水1,4−ジオキサン100mlを仕込み、アルゴンで脱気した。[1,1’−ビス(ジフェニルフォスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)0.98g(1.2mmol)を仕込み、更にアルゴンで脱気した。6時間加熱還流し、こげ茶色のスラリーとなった。トルエン、イオン交換水を加え、分液し、有機層をイオン交換水で洗浄した。無水硫酸ナトリウム、及び活性炭を加え、セライトをプレコートした漏斗で濾過した。濾液を濃縮し、こげ茶色の結晶11.94gを得た。n−ヘキサンで再結晶し、メタノールで結晶を洗浄した。得られた結晶を減圧乾燥し、4.23gの白色針状結晶を得た。収率42.4%。
H−NMR(300MHz/CDCl):
δ0.95(t、6H)、1.39〜1.42(bd、36H)、1.62(m、4H)、2.88(t、4H)、7.59(bd、2H)
LC/MS(ESI posi KCl添加):[M+K]573
【0159】
高分子化合物(P−3)の合成
反応管に、9,9−ジ(4−(2−エトキシエトキシ)フェニル)−2,7−ジブロモフルオレン0.4984g(1.00mmol)、1,4−ジヘキシル−2,5−ボロン酸ピナコールエステル0.6481g(0.99mmol)、及びAliquat336(Aldrich製)0.147g(0.36mmol)を仕込み、窒素置換した。トルエン8.5mlを仕込んだ。加熱、昇温し、trans−ジクロロ−ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)1.4mg(0.002mmol)、及び2M炭酸ナトリウム水溶液2.1mlを仕込んだ。反応の進行をGPCで確認し、1,4−ジヘキシル−2,5−ボロン酸ピナコールエステル0.02g(0.04mmol)を追加した。10時間加熱還流した。4−tert−ブチルフェニルボロン酸0.05g(0.28mmol)、及びトルエン2mlを仕込み、更に4時間加熱、還流した。水層を除去し、有機層にジエチルジチオカルバミン酸3水和物0.6g/水6mlを加え、80℃で2時間加熱した。水層を除去し、水、3%酢酸水、水で洗浄し、有機層を濃縮後、メタノールで再沈殿した。得られた共重合体を濾過、減圧乾燥後、トルエンに溶解し、アルミナ、シリカゲルのカラムに通し、トルエンで洗浄した。有機層をメタノールで再沈殿し、共重合体を得た。得られた共重合体を濾過、減圧乾燥後、トルエンに溶解し、メタノールで再沈殿し、共重合体を得た。更に、得られた共重合体を濾過、減圧乾燥し、0.32gの共重合体(高分子化合物P−3)を得た。高分子化合物P−3のポリスチレン換算の平均分子量及び重量平均分子量は、それぞれMn:3.4x10、Mw:5.0x10であった(
移動相:テトラヒドロフラン)。
【化30】

【0160】
上記高分子化合物(P−3)における共役連鎖係数Zは、0.10であり、電子共役連鎖係数Zは、1.86であった。n=∞における外挿値である最低三重項励起エネルギーT(1/n=0)及び最低非占分子軌道エネルギーの絶対値ELUMO(1/n=0)は、T(1/n=0)=2.99eV、及び、ELUMO(1/n=0)=1.6eVであった。なお計算対象とした高分子化合物(P−3)を構成する最小単位、及び最小繰り返し単位は(M−7)のように簡略化した。
【化31】

【0161】
上記高分子化合物(P−3)に、燐光発光性化合物(T−2)を5wt%混合した混合物の、1.6wt%トルエン溶液を調製し、実施例2と同様に素子を作製した。MI063溶液のスピンコート回転数は2100rpmであった。得られた素子に電圧を引加することにより、510nmにピークを有する緑色のEL発光が得られた。該素子の最大発光効率は5.0cd/Aであった。
上記高分子化合物(P−3)に、燐光発光性化合物T−2を2wt%添加した混合物の、0.8wt%トルエン溶液を調製した。この溶液を石英基板上にスピンコートにて塗布し、フォトルミネッセンス量子収率を測定したところ、量子収率は、35.1%であった。
【0162】
(実施例6)
高分子化合物(P−4)の合成
不活性雰囲気下、1,4−ジヘキシル2,5−ジブロモベンゼン(0.400g)及び1,4−ジヘキシル−2,5−ボロン酸ピナコールエステル(0.498g)をあらかじめアルゴンでバブリングした脱水トルエン7.7mLに溶解した。次に反応マスを80℃まで昇温し、酢酸パラジウム(0.45mg)及びリン配位子(7mg)を加え、加熱、還流し、塩基を2.1ml加え、更に7時間加熱、還流した。反応マスに、4−t−ブチルフェニルホウ酸(50mg)を加え、更に3時間撹拌した。反応混合物を冷却し、メタノール(155ml)に注ぎ込むことで、高分子化合物(P−4)を得た。
また、ポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量は、それぞれMn=3.2x10、Mw=5.6x10であった。
高分子化合物(P−4)は、特表2005−506439号公報記載の方法により製造した。
【化32】

【0163】
上記高分子化合物(P−4)における共役連鎖係数Zは、0.16であり、電子共役連鎖係数Zeは、0.94であった。n=∞における外挿値である最低三重項励起エネルギーT(1/n=0)及び最低非占分子軌道エネルギーの絶対値ELUMO(1/n=0)は、T(1/n=0)=3.61eV、及び、ELUMO(1/n=0)=0.84eVであった。なお計算対象とした高分子化合物(P−4)を構成する最小単位、及び最小繰り返し単位は(M−8)のように簡略化した。
【化33】

【0164】
(実施例7)
上記高分子(P−4)に、燐光発光性化合物(T−1)を2wt%添加した混合物の、0.2wt%クロロホルム溶液を調製した。
この溶液を石英基板上にスピンコートにて塗布した。
上記基板を用い、フォトルミネッセンス測定したところ、480nmに最大ピークをもつ燐光発光性化合物(T−1)からの発光が観測された。
また、上記高分子(P−4)に燐光発光性化合物(T−2)を2wt%添加した混合物の1wt%クロロホルム溶液を調製した。この溶液を1cmの面積の石英基板上に0.1ml滴下して風乾し、塗膜を形成した。上記基板を用い、463nmの励起波長にてフォトルミネッセンス測定したところ、507nmに最大ピークをもつ(T−2)からの発光が観測され、その507nmにおける強度は、実施例3で合成した(P−2)で同様の測定を行った場合の約16倍であった。
【0165】
(実施例8)
化合物M−10の合成
【化34】


1−アミノ−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン2.94g(20mmol)を300ml四つ口フラスコに仕込み、Ar置換を行った。Ar雰囲気下、クロロホルム 20mlを仕込み、氷浴で冷却した。冷却下、テトラn−ブチルアンモニウムトリブロミド9.84g(20.4mmol)をクロロホルム50mlに溶かした溶液を約1時間半かけて滴下した。反応マスは、黄緑色のスラリーとなった。氷浴下で1時間保温した。冷却下、5%Na水溶液50mlを滴下した。次いで、10%NaOH水溶液、イオン交換水で洗浄、分液した。無水芒硝で脱水後、濾過、濃縮し、7.43gの薄褐色オイルを得た。トルエン50mlで希釈し、イオン交換水で洗浄、分液した。無水芒硝で脱水後、濾過、濃縮し、3.88gの褐色オイルを得た。
シリカゲルカラム精製(溶出液:トルエン)を行い、褐色オイル1.18gを得た。H−NMR、LC/MSから1−アミノ−4−ブロモ−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレンの生成を確認した。
H−NMR(300MHz/CDCl):
δ1.79(s、4H)、2.43(s、2H)、2.71(s、2H)、3.56(s、2H)、6.42(d、H)、7.19(d、H)
LC/MS(APPI posi):[M]226
【0166】
50mlナスフラスコに1−アミノ−4−ブロモ−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン0.90g(4mmol)、48%HBF水溶液3.86g(20mmol)を仕込んだ。氷浴で冷却し、NaNO0.32g(4.6mmol)をイオン交換水1mlで溶解した液を冷却し、滴下した。30分間0℃で保温した後、得られたジアゾ化マスを吸引濾過し、ジアゾ化物を5%HBF水溶液、氷冷したイオン交換水で洗浄した。100mlナスフラスコにCuBr1.12g(5mmol)、ジメチルスルホキシド10mlを仕込み、室温で、強撹拌し、そこに、先のジアゾ化合物を添加した。室温で30分間撹拌し、イオン交換水を加え、更に撹拌した。有機層を分液し、無水芒硝で脱水後、濾過、濃縮し、0.90gの赤褐色オイルを得た。カラム精製(溶出液:n−ヘキサン)を行い、0.66gの透明オイルを得た。H−NMR、LC/MSから化合物M−10の生成を確認した。
H−NMR(300MHz/CDCl):
δ1.80(s、4H)、2.74(s、4H)、7.26(s、2H)
GC/MS(EI−MS):[M]288
【0167】
高分子化合物(P−6)の合成
不活性雰囲気下、化合物M−10(0.289g)及び化合物M−4(0.530g)をあらかじめアルゴンでバブリングした脱水トルエン8.5mLに溶解した。次に反応マスを80℃まで昇温し、酢酸パラジウム(0.67mg)及びリン配位子(7.4mg)を加え、加熱、還流し、塩基を2.7ml加え、更に8時間加熱、還流した。反応マスに、フェニルホウ酸(12mg)を加え、更に3時間撹拌した。反応混合物を冷却し、メタノール(155ml)に注ぎ込むことで、高分子化合物(P−6)を得た。
また、ポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量は、それぞれMn=5.2x10、Mw=1.1x10であった。
高分子化合物(P−6)は、特表2005−506439号公報記載の方法により製造した。
【化35】

【0168】
上記高分子化合物(P−6)における共役連鎖係数Zは、0.07であり、電子共役連鎖係数Zは、1.18であった。n=∞における外挿値である最低三重項励起エネルギーT(1/n=0)及び最低非占分子軌道エネルギーの絶対値ELUMO(1/n=0)は、T(1/n=0)=3.06eV、及び、ELUMO(1/n=0)=1.56eVであった。なお計算対象とした高分子化合物(P−6)を構成する最小単位、及び最小繰り返し単位は(M−11)のように簡略化した。
【化36】

【0169】
上記高分子化合物(P−6)に、燐光発光性化合物T−2を2wt%添加した混合物の、0.8wt%トルエン溶液を調製した。
この溶液を石英基板上にスピンコートにて塗布し、フォトルミネッセンス量子収率を測定したところ、510nmに最大ピークをもつ燐光発光性化合物T−2からの強い発光が観測された。
【0170】
(実施例9)
下記高分子化合物(P−7)における共役連鎖係数Zは、0.11であり、電子共役連鎖係数Zは、0.68であった。n=∞における外挿値である最低三重項励起エネルギーT(1/n=0)及び最低非占分子軌道エネルギーの絶対値ELUMO(1/n=0)は、T(1/n=0)=3.64eV、及び、ELUMO(1/n=0)=0.62eVであった。なお計算対象とした高分子化合物(P−7)を構成する最小単位、及び最小繰り返し単位には、下記(M−12)を用いた。
【化37】

【0171】
(実施例10)
下記高分子化合物(P−8)における共役連鎖係数Zは、0.21であり、電子共役連鎖係数Zは、1.28であった。n=∞における外挿値である最低三重項励起エネルギーT(1/n=0)及び最低非占分子軌道エネルギーの絶対値ELUMO(1/n=0)は、T(1/n=0)=3.54eV、及び、ELUMO(1/n=0)=1.04eVであった。なお計算対象とした高分子化合物(P−8)を構成する最小単位、及び最小繰り返し単位には、下記(M−13)を用いた。
【化38】

【0172】
(合成例10)
2−(9−Bromo−7,7−dioctyl−7H−benzo[c]fluoren−5−yl)−4,4,5,5−tetramethyl−[1,3,2]dioxaborolane(M−14)の合成
不活性雰囲気下、5,9−Dibromo−7,7−dioctyl−7H−benzo[c]fluorene(M−15)70.00g(0.117mol)を脱水したテトラヒドロフラン1170mL、および脱水したジエチルエーテル1170mLに溶解させて得られた溶液に、−70℃にて73mLのn−ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.6mol/L)を30分かけて滴下し、さらに−70℃にて50分攪拌した。ついで、−78℃にて2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランを10分かけて滴下し、さらに−78℃にて1時間攪拌した。該溶液に室温にて塩酸水溶液を15分かけて滴下し、有機層から水層を除去した。前記有機層に、蒸留水1170mLを加え攪拌した後に水層を除去し、5%炭酸水素ナトリウム水溶液1170mLを加え攪拌した後に水層を除去し、蒸留水1170mLを加え攪拌した後に水層を除去し、濃縮乾固して油状物を得た。該油状生成物をテトラヒドロフランに溶解し、メタノールを加えて析出した固体を濾過、乾燥した。さらに、該固体をテトラヒドロフランとメタノールから再結晶を2回実施し、目的とする2−(9−Bromo−7,7−dioctyl−7H−benzo[c]fluoren−5−yl)−4,4,5,5−tetramethyl−[1,3,2]dioxaborolane(M−14)を57.7gを得た(収率76%)。
H NMR(CDCl,299.4MHz,rt):d 0.50(br,4H),0.80(t,6H,J=7.3Hz),0.90−1.28(m,24H),1.45(s,12H),1.93−2.19(m,4H),7.50−7.67(m,4H),8.03(s,1H),8.19(d,1H,J=9.0Hz),8.67(d,1H,J=8.4Hz),8.92(d,1H,J=8.3Hz).
LC−MS(APPI):m/z=644(M+・
(NMR)
装置:バリアン社製INOVA300核磁気共鳴装置
測定溶媒:重水素化クロロホルム
サンプル濃度:約1重量%
測定温度:25℃
【化39】

【0173】
(合成例11)
高分子化合物(P−11)の合成
不活性雰囲気下、前記(M−14)1.08g(1.67mmol)をトルエン37mLに溶解させ、酢酸パラジウム1mg、トリス(o−メトキシフェニル)ホスフィン7mg、30%炭酸ビス(テトラエチルアンモニウム)水溶液7.5mLを加え、115℃にて20時間攪拌した。次いで、4−メチルブロモベンゼン0.16gを加え115℃にて2時間攪拌し、4−t−ブチルフェニルホウ酸0.16gを加え115℃にて12時間攪拌を行った。次いで、ジエチルジチアカルバミン酸ナトリウム水溶液を加え65℃で8時間撹拌した。冷却後、水層を有機層から除去し、該有機層を2規定塩酸水溶液37mlで2回、10%酢酸ナトリウム水溶液37mlで2回、水37mlで6回洗浄し、得られたトルエン溶液をメタノール740mlに滴下し、撹拌した後、得られた固体をろ取し乾燥させた。該固体をトルエンに溶解させて得られた溶液をメタノール中に攪拌しながら滴下し析出した固体を濾過、乾燥する操作を2回繰り返し、高分子化合物(P−9)を0.63g得た。高分子化合物(P−9)のポリスチレン換算の数平均分子量は、8.4×10であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は2.8×10であった。
ここで、数平均分子量および重量平均分子量については、GPC(島津製作所製:LC−10Avp)によりポリスチレン換算の数平均分子量および重量平均分子量を求めた。測定する重合体は、約0.5wt%の濃度になるようテトラヒドロフランに溶解させ、GPCに50μL注入した。GPCの移動相はテトラヒドロフランを用い、0.6mL/minの流速で流した。カラムは、TSKgel SuperHM−H(東ソー製)2本とTSKgel SuperH2000(東ソー製)1本を直列に繋げた。検出器には示差屈折率検出器(島津製作所製:RID−10A)を用いた。
【化40】

【0174】
(比較例2)
上記高分子化合物(P−9)における共役連鎖係数Zは、0.15であり、電子共役連鎖係数Zは、2.46であった。n=∞における外挿値である最低三重項励起エネルギーT(1/n=0)及び最低非占分子軌道エネルギーの絶対値ELUMO(1/n=0)は、T(1/n=0)=2.42eV、及び、ELUMO(1/n=0)=2.13eVであった。なお計算対象とした高分子化合物(P−9)を構成する最小単位、及び最小繰り返し単位には、下記(M−16)を用いた。
【化41】

【0175】
上記高分子化合物(P−9)に、燐光発光性化合物T−2を2wt%添加した混合物の、0.8wt%トルエン溶液を調製した。
この溶液を石英基板上にスピンコートにて塗布し、フォトルミネッセンス量子収率を測定したところ、量子収率は、3.8%と低い値であった。
【産業上の利用可能性】
【0176】
本発明の発光性の組成物は、緑〜青の波長の光を発光できる。したがって、本発明の共役系高分子を含有する発光材料は、エレクトロルミネッセンス素子等の光電素子に用いることにより特性のより優れた素子を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】本発明に従う実施例、及び比較例における電子共役連鎖係数ZとPL量子収率(PLQY)(%)の相関を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子と少なくとも1種類の燐光発光性化合物を含む発光性の組成物であって、該高分子の主たる繰り返し最小単位の電子共役連鎖係数Zが以下の範囲であることを特徴とする組成物
0<Z≦2.00 (1)
(ここで、電子共役連鎖係数Zは、繰り返し最小単位に含まれる共役電子数をnとした場合、繰り返し最小単位を結合させて得られるm量体について数mを1から3まで1ずつ変化させた時の各m量体における最低三重項励起エネルギーTに対し、関数T=T(1/n)を最小二乗法により線形近似した場合の傾きと定義する。ここで、共役電子数は、繰り返し最小単位の主鎖内に存在する共役電子のみを考慮するものとする。ただし、主たる繰り返し最小単位が複数認められる場合には、最小のZを用いる。)。
【請求項2】
高分子と少なくとも1種類の燐光発光性化合物からなる発光性の組成物であって、該高分子の主たる繰り返し最小単位の電子共役連鎖係数Zが(1)の範囲である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
高分子の主たる繰り返し最小単位が、主鎖開裂可能な単結合を2個以上連続して主鎖上に有しない事を特徴とする請求項1、又は2記載の組成物(ここで、主鎖開裂可能とは、該単結合を切断した場合に、該主鎖が開裂するものを示す。)。
【請求項4】
高分子の最低三重項励起エネルギーTが、2.7eV以上である、請求項1〜3のいずれか一項記載の組成物
(ここで、高分子の最低三重項励起エネルギーTは、繰り返し最小単位を結合させて得られるm量体について数mを1から3まで1つ毎に変化させた時の各m量体における最低三重項励起エネルギーTに対し、関数T=T(1/n)を最小二乗法により線形近似した場合のnが∞における外挿値を用いる。)。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項記載の組成物であって、高分子の主たる繰り返し最小単位の電子共役連鎖係数Zが、0<Z≦2.00であり、かつ高分子の最低三重項励起エネルギーTが、2.8eV以上である、上記組成物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項記載の組成物であって、高分子の主たる繰り返し最小単位の電子共役連鎖係数Zが、0<Z≦2.00であり、かつ高分子の最低三重項励起エネルギーTが、2.9eV以上である、上記組成物。
【請求項7】
請求項1〜4いずれか一項記載の組成物であって、高分子の主たる繰り返し最小単位の電子共役連鎖係数Zが、0<Z≦2.00であり、かつ高分子の最低三重項励起エネルギーTが、3.0eV以上である、上記組成物。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか一項記載の組成物であって、高分子の最低三重項励起エネルギーT(eV)が、2.7≦T≦5.0である、上記組成物。
【請求項9】
1種類の基本構成単位からなるセグメントを含む高分子であって、該基本構成単位の最低三重項励起エネルギーTM1が3.6eV≦TM1≦5.5eVであって、該セグメントの最低三重項励起エネルギーT、及び、該基本構成単位の以下に定義される共役連鎖係数Zが、2.7eV≦T≦5.0eV、かつ、0.00<Z≦0.50であることを特徴とする上記高分子と燐光発光性化合物から構成される、請求項8記載の組成物
(ここで、基本構成単位の共役連鎖係数Zは、基本構成単位数mを1から3まで1ずつ変化させた時のm量体における最低三重項励起エネルギーTに対し、関数T=T(1/m)を最小二乗法により線形近似した場合の傾きと定義する。)。
【請求項10】
請求項9記載の組成物であって、該組成物を構成する高分子に含まれるセグメントの基本構成単位に含まれる共役電子数nが、n≦6である、上記組成物。
【請求項11】
1種類の基本構成単位からなるセグメントを含む高分子であって、該基本構成単位の最低三重項励起エネルギーTM1が3.2eV≦TM1<3.6eVであって、該セグメントの最低三重項励起エネルギーT、最低非占分子軌道エネルギーの絶対値ELUMO、及び、該基本構成単位の共役連鎖係数Zが、2.7eV≦T≦5.0eV、1.4eV<ELUMO≦5.0eV、かつ、0.00<Z≦0.25であることを特徴とする上記高分子と燐光発光性化合物から構成される、請求項8記載の組成物。
【請求項12】
1種類の基本構成単位からなるセグメントを含む高分子であって、該基本構成単位の最低三重項励起エネルギーTM1が2.9eV≦TM1<3.2eVであって、該セグメントの最低三重項励起エネルギーT、最低非占分子軌道エネルギーの絶対値ELUMO、及び、該基本構成単位の共役連鎖係数Zが、2.7eV≦T≦5.0eV、1.4eV<ELUMO≦5.0eV、かつ、0.00<Z≦0.13であることを特徴とする上記高分子と燐光発光性化合物から構成される、請求項8記載の組成物。
【請求項13】
少なくとも2種類の基本構成単位からなるセグメントを含む高分子であって、該セグメントの最低三重項励起エネルギーT、及び、最低非占分子軌道エネルギーの絶対値ELUMOが、2.7eV≦T≦5.0eV、及び、1.4eV<ELUMO≦5.0eVの条件を満たし、かつ、以下に定義される共役連鎖係数Zが、0.00<Z≦0.40の条件
(ここで、共役連鎖係数Zは、該セグメントを構成する各基本構成単位の構成比と同じ基本構成単位構成比を有する最小単位を想定した場合、該最小単位の数mを1から3まで、1ずつ変化させた時の該最小単位のm量体における最低三重項励起エネルギーTに対し、関数T=T(1/m)を最小二乗法により線形近似した場合の傾きと定義する。)
を満たすことを特徴とする高分子と燐光発光性化合物から構成される、請求項8記載の組成物。
【請求項14】
発光性化合物を部分構造として同一分子内に含む発光性高分子を含む発光性材料であって、主たる繰り返し最小単位の電子共役連鎖係数Zが請求項1〜8のいずれか一項記載の範囲である高分子をさらに含むか、又は前記発光性高分子のZが請求項1〜8のいずれか一項記載の範囲である発光性材料。
【請求項15】
高分子の前記繰り返し最小単位が、芳香環、ヘテロ原子を含有する5員環以上の複素環、芳香族アミン、又は、下記式(1)で表される構造のいずれかを含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の組成物(ここで、該芳香環上及び該複素環上に、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい。)
【化1】


(式中、P環及びQ環はそれぞれ独立に芳香環を示すが、P環は存在してもしなくてもよい。2つの結合手は、P環が存在する場合は、それぞれP環及び/又はQ環上に存在し、P環が存在しない場合は、それぞれYを含む5員環若しくは6員環上及び/又はQ環上に存在する。また、芳香環上及び/又はYを含む5員環若しくは6員環上にアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい。Yは、−O−、−S−、−Se−、−B(R)−、−Si(R)(R)−、−P(R)−、−PR(=O)−、−C(R)(R)−、−N(R)−、−C(R)(R10)−C(R11)(R12)−、−O−C(R13)(R14)−、−S−C(R15)(R16)−、−N−C(R17)(R18)−、−Si(R19)(R20)−C(R21)(R22)−、−Si(R23)(R24)−Si(R25)(R26)−、−C(R27)=C(R28)−、−N=C(R29)−、−Si(R30)=C(R31)−を表し、R〜R31はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、シリルオキシ基、置換シリルオキシ基、1価の複素環基又はハロゲン原子を表す。)。
【請求項16】
高分子の前記繰り返し最小単位が、芳香環、ヘテロ原子を含有する5員環以上の複素環、芳香族アミン、又は、上記式(1)で表される構造から構成される、請求項15記載の組成物。
【請求項17】
組成物に含まれる燐光発光性化合物の最低三重項励起エネルギーをETTとした場合
ETT > T−0.2(eV)
である、請求項1〜16のいずれか一項記載の組成物。
【請求項18】
高分子と少なくとも1種類の燐光発光性化合物を含む発光性の組成物であって、該高分子の主たる繰り返し最小単位が下記式(2)で表されることを特徴とする上記組成物
【化2】


(ここで、Rは、アルキル基を表す。)。
【請求項19】
高分子と少なくとも1種類の燐光発光性化合物を含む発光性の組成物であって、該高分子の主たる繰り返し最小単位が下記式(4)で表されることを特徴とする組成物
【化3】


(ここで、Rは、アルキル基を表し、Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、シリルオキシ基、置換シリルオキシ基、1価の複素環基又はハロゲン原子を表す。)。
【請求項20】
高分子と少なくとも1種類の燐光発光性化合物を含む発光性の組成物であって、該高分子の主たる繰り返し最小単位が下記式(5)で表されることを特徴とする組成物
【化4】


(ここで、Rはアルキル基を表す。)。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか一項に記載の組成物を含有することを特徴とするインク組成物。
【請求項22】
粘度が25℃において1〜100mPa・sである請求項21記載のインク組成物。
【請求項23】
請求項1〜20のいずれか一項に記載の組成物を含有することを特徴とする発光性薄膜。
【請求項24】
請求項1〜20のいずれか一項に記載の組成物を含有することを特徴とする有機半導体薄膜。
【請求項25】
請求項1〜20のいずれか一項に記載の組成物を含有することを特徴とする光電素子。
【請求項26】
陽極及び陰極からなる電極間に、請求項1〜20のいずれか一項に記載の組成物を含む層を有することを特徴とする光電素子。
【請求項27】
陽極及び陰極からなる電極間に、さらに電荷輸送層又は電荷阻止層を含む請求項26記載の光電素子。
【請求項28】
光電素子が発光素子である請求項25〜27記載の光電素子。
【請求項29】
請求項28に記載の発光素子を用いたことを特徴とする面状光源。
【請求項30】
請求項28に記載の発光素子を用いたことを特徴とするセグメント表示装置。
【請求項31】
請求項28に記載の発光素子を用いたことを特徴とするドットマトリックス表示装置。
【請求項32】
請求項28に記載の発光素子をバックライトとすることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項33】
請求項28に記載の発光素子を用いたことを特徴とする照明。

【図1】
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【公開番号】特開2007−106990(P2007−106990A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−247861(P2006−247861)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】