説明

高分子化合物、該高分子化合物を架橋させてなる網目状高分子化合物、有機電界発光素子用組成物、有機電界発光素子、有機ELディスプレイ及び有機EL照明

【課題】 本発明は、正孔輸送能が高く、電気化学安定性に優れ、湿式成膜法での成膜に適した高分子化合物を提供することを課題とする。本発明はまた、電流効率が高く、駆動電圧が低く、更に駆動寿命が長い有機電界発光素子を提供することを課題とする。
【解決手段】 架橋性基を有する高分子化合物において、繰り返し単位中に含まれるアリールアミン部位から、少なくとも一つの単結合を介して架橋性基を有することを特徴とする高分子化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式成膜法による成膜が可能な架橋性基を有する高分子化合物と、該高分子化合物を架橋反応させて得られる網目状高分子化合物と、該高分子化合物を含有する有機電界発光素子用組成物と、網目状高分子化合物を含有する層を有する、電流効率が高く、駆動安定性に優れた有機電界発光素子、並びにこの素子を備えた有機ELディスプレイ及び有機EL照明に存する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機薄膜を用いた電界発光素子(有機電界発光素子)の開発が行われている。有機電界発光素子における有機薄膜の形成方法としては、真空蒸着法と湿式成膜法が挙げられる。
真空蒸着法は積層化が容易であるため、陽極及び/又は陰極からの電荷注入の改善、励起子の発光層封じ込めが容易であるという利点を有する。湿式成膜法は真空プロセスが要らず、大面積化が容易で、1つの層(塗布液)に様々な機能をもった複数の材料を混合して入れることが容易である等の利点がある。
【0003】
しかしながら、湿式成膜法は積層化が困難であるため、真空蒸着法による素子に比べて駆動安定性に劣り、一部を除いて実用レベルに至っていないのが現状である。特に、湿式成膜法での積層化は、有機溶剤と水系溶剤を使用するなどして二層の積層は可能であるが、三層以上の積層化は困難であった。
このような積層化における問題点を解決するために、特許文献1では、下記の繰り返し単位(III-1)及び(III-2)を含む架橋性基を有する高分子化合物が提案され、架橋性基が反応することによって有機溶剤に不溶にする積層化方法が開示されている。
【0004】
【化1】

【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の高分子化合物は、フルオレン環の9−位に架橋性基を有しているため、電気化学的安定性、特に還元(電子)に対する耐久性に乏しく、特許
文献1に記載の高分子化合物を用いた有機電界発光素子の駆動安定性は不十分であると考えられる。
また、特許文献2及び3では、各々下記式で表される繰り返し単位を有する高分子化合物が開示されているが、これらの化合物を用いて素子を作製した場合は、平坦な膜が得られなかったり、また得られる素子の駆動寿命が短いといった課題があった。
【0006】
【化2】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2004−505169号公報
【特許文献2】国際公開第2008/038747号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2005/053056号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、正孔輸送能が高く、電気化学安定性に優れ、湿式成膜法での成膜に適した高分子化合物を提供することを課題とする。
本発明はまた、電流効率が高く、駆動電圧が低く、更に駆動寿命が長い有機電界発光素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、下記の特定の繰り返し単位を含む高分子化合物が、高い電気化学的安定性、及び、高い正孔輸送能を有する積層化が容易な湿式成膜法に適した化合物であることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
本発明は、下記式(I)で表される繰り返し単位を含むことを特徴とする、高分子化合物(以下、「本発明の高分子化合物(i)」と称する)に存する。
【0010】
【化3】

(式中、R及びRは、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい芳香族炭化
水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R及びRは互いに結合して環を形成してもよく、
nは0〜3の整数を表し、
Ar及びArは、各々独立に、直接結合、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
Ar〜Arは、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
【0011】
Tは架橋性基を含む基を表す。
但し、Ar、Ar、及びArが、フルオレン環である場合は、置換基として架橋性基を含む基を有さない。)
本発明はまた、下記式(II)で表される繰り返し単位を含むことを特徴とする、高分子化合物(以下、「本発明の高分子化合物(ii)」と称する)に存する。
【0012】
【化4】

(式中、pは0〜3の整数を表し、
Ar21及びAr22は、各々独立に、直接結合、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
Ar23〜Ar25は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
は下記式(IV)で表される基を含む基を表す。
【0013】
但し、Ar21及びAr22のいずれもが、直接結合であることはない。
更に、Ar21、Ar22、及びAr24が、フルオレン環である場合は、置換基として架橋性基を含む基を有さない。)
【0014】
【化5】

(式(IV)中のベンゾシクロブテン環は、置換基を有していてもよい。また、置換基同士が互いに結合して環を形成していてもよい。)
また、本発明は、網目状高分子化合物、有機電界発光素子用組成物、有機電界発光素子、並びに有機ELディスプレイ及び有機EL照明に存する。
【0015】
以下、「本発明の高分子化合物」とした場合は、「本発明の高分子化合物(i)」及び「本発明の高分子化合物(ii)」の両方を指すものとする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の高分子化合物は、正孔輸送能が高く、溶剤に対する十分な溶解性を有し、成膜時の表面平坦性が高められる。このため、本発明の高分子化合物を架橋して得られる網目状高分子化合物を含有する層(以下、「架橋層」と称する場合がある)を有する有機電界発光素子は、低い電圧で駆動可能であり、高い発光効率を有し、耐熱性が高く、駆動寿命が長い。
【0017】
さらに、本発明の高分子化合物は、優れた電気化学的安定性、成膜性、電荷輸送性、発光特性、耐熱性から、素子の層構成に合わせて、正孔注入材料、正孔輸送材料、発光材料、ホスト材料、電子注入材料、又は電子輸送材料などとしても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の有機電界発光素子の構造の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に特定されない
<1.高分子化合物(i)>
本発明の高分子化合物(i)は、下記式(I)で表される繰り返し単位を含むことを特徴とする、高分子化合物である。
【0020】
【化6】

(式中、R及びRは、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R及びRは互いに結合して環を形成してもよく、
nは0〜3の整数を表し、
Ar及びArは、各々独立に、直接結合、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
Ar〜Arは、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
Tは架橋性基を含む基を表す。
但し、Ar、Ar、及びArが、フルオレン環である場合は、置換基として架橋性基を含む基を有さない。)
【0021】
[1−1.構造上の特徴]
本発明の高分子化合物(i)は、置換基として1分子中に少なくとも一つの架橋性基を含む基を有するため、湿式成膜法により形成した膜を穏和な条件で有機溶剤に不溶とすることが可能である。
【0022】
ここで、主鎖にあるフルオレン環は、HOMO(highest occupied molecular orbital)及びLUMO(lowest unoccupied molecular orbital)が広がって電荷輸送に強く関
与する。
ここで、本発明の高分子化合物(i)は、主鎖にあるフルオレン環に架橋性基を含む基を有していないため、電気化学的安定性、特に耐還元安定性に優れる。また、アリールアミン部位から、少なくとも一つの単結合を介して架橋性基を有するため耐酸化性にも優れる。
【0023】
[1−2.Ar〜Ar
式(I)中、Ar及びArは、各々独立して、直接結合、置換基を有していてもよ
い芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、Ar〜Arは、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
【0024】
置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などの、6員環の単環又は2〜5縮合環由来の基が挙げられる。
置換基を有していてもよい芳香族複素環基としては、例えばフラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環由来の基が挙げられる。
【0025】
有機溶剤に対する溶解性、及び耐熱性の点から、Ar〜Arは、各々独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、ピレン環、チオフェン環、ピリジン環、フルオレン環からなる群より選ばれる環由来の基が好ましい。
また、Ar〜Arとしては、前記群から選ばれる1種又は2種以上の環を直接結合、又は―CH=CH―基により連結した2価の基も好ましく、ビフェニレン基及びターフェニレン基、がさらに好ましい。
Ar〜Arにおける芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が後述の架橋性基以外に有していてもよい置換基としては、特に制限はないが、例えば、下記[置換基群Z]から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0026】
[置換基群Z]
メチル基、エチル基等の好ましくは炭素数1〜24、更に好ましくは炭素数1〜12のアルキル基;
ビニル基等の好ましくは炭素数2〜24、更に好ましくは炭素数2〜12のアルケニル基;
エチニル基等の好ましくは炭素数2〜24、更に好ましくは炭素数2〜12のアルキニル基;
メトキシ基、エトキシ基等の好ましくは炭素数1〜24、更に好ましくは炭素数1〜12のアルコキシ基;
フェノキシ基、ナフトキシ基、ピリジルオキシ基等の好ましくは炭素数4〜36、更に好ましくは炭素数5〜24のアリールオキシ基;
メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の好ましくは炭素数2〜24、更に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基;
ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の好ましくは炭素数2〜24、更に好ましくは炭素数2〜12のジアルキルアミノ基;
ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、N−カルバゾリル基等の好ましくは炭素数10〜36、更に好ましくは炭素数12〜24のジアリールアミノ基;
フェニルメチルアミノ基等の好ましくは炭素数6〜36、更に好ましくは炭素数7〜24のアリールアルキルアミノ基;
【0027】
アセチル基、ベンゾイル基等の好ましくは炭素数2〜24、好ましくは炭素数2〜12
のアシル基;
フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;
トリフルオロメチル基等の好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜6のハロアルキル基;
メチルチオ基、エチルチオ基等の好ましくは炭素数1〜24、更に好ましくは炭素数1〜12のアルキルチオ基;
フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ピリジルチオ基等の好ましくは炭素数4〜36、更に好ましくは炭素数5〜24のアリールチオ基;
トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等の好ましくは炭素数2〜36、更に好ましくは炭素数3〜24のシリル基;
トリメチルシロキシ基、トリフェニルシロキシ基等の好ましくは炭素数2〜36、更に好ましくは炭素数3〜24のシロキシ基;
シアノ基;
フェニル基、ナフチル基等の好ましくは炭素数6〜36、更に好ましくは炭素数6〜24の芳香族炭化水素基;
チエニル基、ピリジル基等の好ましくは炭素数3〜36、更に好ましくは炭素数4〜24の芳香族複素環基
上記各置換基は、さらに置換基を有していてもよく、その例としては前記置換基群Zに例示した基が挙げられる。
【0028】
Ar〜Arにおける芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が後述の架橋性基以外に有してもよい置換基の分子量としては、さらに置換した基を含めて500以下が好ましく、250以下がさらに好ましい。
有機溶媒に対する溶解性が向上する点で、Ar〜Arにおける芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、各々独立に、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数1〜12のアルコキシ基が好ましい。
【0029】
なお、nが2以上である場合、前記式(I)で表される繰り返し単位は、2個以上のAr及びArを有することになる。その場合、Ar同士及びAr同士は、各々、同じでもよく、異なっていてもよい。さらに、Ar同士、Ar同士は、各々互いに直接又は連結基を介して結合して環状構造を形成していてもよい。
【0030】
[1−3.架橋性基]
式(I)中のTは、架橋性基を含む基である。つまり、本発明の高分子化合物(i)は、置換基として1分子中に少なくとも1つの架橋性基を含む基を有する。ここで、架橋性基とは、熱及び/又は活性エネルギー線の照射により近傍に位置するほかの分子の同一又は異なる基と反応して、新規な化学結合を生成する基のことをいう。
【0031】
中でも、架橋性基としては、架橋しやすいという点から、下記<架橋性基群T’>から選ばれる。
<架橋性基群T’>
【0032】
【化7】

【0033】
(式中、R21〜R25は、各々独立に、水素原子又はアルキル基を表す。Ar41は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
尚、ベンゾシクロブテン環は、置換基を有していてもよい。
置換基同士が環を形成してもよい。)
架橋性基としてはエポキシ基、オキセタン基などの環状エーテル基、ビニルエーテル基などのカチオン重合性基が、反応性が高く有機溶剤に対する架橋が容易な点で好ましい。中でも、カチオン重合の速度を制御しやすい点でオキセタン基が特に好ましく、カチオン重合の際に素子の劣化をまねくおそれのあるヒドロキシル基が生成しにくい点でビニルエーテル基が好ましい。
【0034】
架橋性基としてはシンナモイル基などアリールビニルカルボニル基、ベンゾシクロブテン環由来の基などの環化付加反応する基が、電気化学的安定性をさらに向上させる点で好ましい。
分子内において、架橋性基は分子内の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基に直接結合してもよいが、−O−基、−C(=O)−基又は(置換基を有していてもよい)−CH−基から選ばれる基を任意の順番で1〜30個連結してなる2価の基を介して、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基に結合することが好ましい。これら2価の基を介する架橋性基、すなわち、架橋性基を含む基の具体例は以下の<架橋性基を含む基群T’’>に示す通りであるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<架橋性基を含む基群T’’>
【0035】
【化8】

【0036】
【化9】

【0037】
【化10】

【0038】
[1−4.架橋性基の位置について]
本発明の高分子化合物(i)は、Arに、置換基として架橋性基を含む基Tを有する。
本発明の高分子化合物(i)が、Tの他に架橋性基を有する場合、繰り返し単位にあってもよく、また繰り返し単位以外の部分にあってもよい。但し、後述するR及びRは架橋性基を有さない。
【0039】
架橋性基を含む基がAr以外にある場合、架橋性基の還元劣化が起こりにくい点で、Ar、Ar、Ar、及びArのいずれかにあるのが好ましい。但し、Ar、Ar、及びArがフルオレン環である場合は、置換基として架橋性基を含む基を有さない。前記位置に、架橋性基を含む場合、フルオレン環にある場合より、還元劣化しにくくなるからである。
また、未反応架橋性基数を低減させる点で、架橋性基はTのみに含まれるのが好ましい。
【0040】
[1−5.架橋性基を含む割合]
本発明の高分子化合物(i)が有する架橋性基の数の平均値は、好ましくは1分子中1以上、より好ましくは2以上、また好ましくは200以下、より好ましくは100以下である。
また、本発明の高分子化合物(i)が有する架橋性基の数は、分子量1000あたりの数で表すことができる。
本発明の高分子化合物(i)が有する架橋性基の数を、分子量1000あたりの数で表した場合、分子量1000あたり、通常3.0個以下、好ましくは2.0個以下、さらに好ましくは1.0以下、また通常0.01以上、好ましくは0.05以上である。
【0041】
この上限値を上回ると、クラックによって平坦な膜が得られなかったり、また、架橋密度が大きくなりすぎたりして、架橋層中に未反応の架橋性基が増えて、得られる素子の寿命に影響を及ぼすおそれがある。一方、この下限値を下回ると、有機溶剤に対する不溶性が不十分となり、湿式成膜法で多層積層構造が形成できないおそれがある。
ここで、本発明の高分子化合物(i)における、分子量1000あたりの架橋性基の数は、該高分子化合物から末端基を除いて、合成時の仕込みモノマーのモル比と、構造式から算出する。
【0042】
例えば、後述の合成例35で合成した目的ポリマー3の場合で説明する。
【0043】
【化11】

目的物35において、末端基を除いた繰り返し単位の分子量は平均468.9であり、また架橋性基は、1繰り返し単位当たり平均0.2個である。これを単純比例により計算すると、分子量1000あたりの架橋性基の数は、0.426個と算出される。
【0044】
[1−6.R及びRについて]
及びRは、各々独立に、水素原子、架橋性基以外の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、架橋性基以外の置換基を有していてもよい芳香族複素環基又は架橋性基
以外の置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R及びRは互いに結合して環を形成してもよい。
【0045】
置換基を有していてもよいアルキル基としては、好ましくは炭素数1から8の直鎖又は分岐のアルキル基であり、例えばメチル、エチル、n−プロピル、2−プロピル、n−ブチル、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2-エチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基などが挙げられる。
置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、及び置換基を有していてもよい芳香族複素環基としては、前記[1−2.Ar〜Ar]の項に記載のものが挙げられる。好ましい例も同様である。
【0046】
また、R及びRが、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、又はアルキル基である場合、有していてもよい置換としては、前記[置換基群Z]の項に記載のものが挙げられる。好ましい例も同様である。
また、R及びRが、互いに結合して環を形成している場合の、フルオレン環を含む好ましい具体例を、以下<具体例>に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<具体例>
【0047】
【化12】

【0048】
中でも、電気化学的安定性の点から、S−1、S−2、S−5及びS−9が好ましく、耐熱性の点からS−5がさらに好ましく、架橋前の有機溶剤に対する溶解性が高い点からS−1及びS−2が特に好ましい。
[1−7.nについて]
式(I)におけるnは、0〜3の整数を表す。
【0049】
nは0であることが、高分子化合物の有機溶剤に対する溶解性及び成膜性が高められる点で好ましい。nは1〜3であることが、高分子化合物の正孔輸送能が向上する点で好ましい。
[1−8.分子量]
本発明の高分子化合物(i)の重量平均分子量(Mw)は、通常3,000,000以下、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下であり、また通常1,000以上、好ましくは2,500以上、より好ましくは5,000以上である。
【0050】
また、本発明の高分子化合物(i)の数平均分子量(Mn)は、通常3000以上、好ましくは6000以上であり、通常1000000以下、好ましくは500000以下である。重量平均分子量又は数平均分子量がこの範囲の下限値を下回ると、架橋層の有機溶剤に対する不溶性が低減して、積層できなくなる可能性があり、ガラス転移温度が低下して耐熱性が損なわれる可能性がある。また、この範囲の上限値を上回ると架橋前においても有機溶剤に溶解せずに、平坦な膜が得られない可能性がある。
【0051】
さらに、本発明の高分子化合物(i)における分散度(Mw/Mn)は、通常3.5以下、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.0以下である。高分子化合物(i)の分散度がこの範囲の上限値を上回ると精製が困難となったり、有機溶剤に対する溶解性が低下したり、電荷輸送能が低下したりする可能性がある。なお、分散度は、理想的には1.0である。
【0052】
通常、この重量平均分子量はSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)測定により決定される。SEC測定では高分子量成分ほど溶出時間が短く、低分子量成分ほど溶出時間が長くなるが、分子量既知のポリスチレン(標準試料)の溶出時間から算出した校正曲線を用いて、サンプルの溶出時間を分子量に換算することによって、重量平均分子量が算出される。
[1−9.更に有される繰り返し単位 ]
本発明の高分子化合物は(i)、架橋性基の数を調整することで、未反応架橋性基の数を低減して、得られる素子の駆動寿命を向上できる点で、下記式(I’)で表される繰り返し単位を含むことを好ましい。
【0053】
【化13】

(式中、R11及びR12は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R11及びR12は互いに結合して環を形成してもよく、
mは0〜3の整数を表し、
Ar11及びAr12は、各々独立に、直接結合、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
Ar13〜及びAr15は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
但し、R11及びR12、並びにAr11〜Ar15は、置換基として、架橋性基を含む基は有さない。)
【0054】
(1−9−1.Ar11〜Ar15について)
Ar11及びAr12は、各々独立に、直接結合、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
Ar13〜Ar15は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
Ar11〜Ar15における置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、及び置換基を有していてもよい芳香族複素環基の具体例は、前記[1−2.Ar〜Ar]の項で記載のものと同様である。また、好ましい例も同様である。但し、Ar11〜Ar15は、置換基として架橋性基を含む基を有さない。
【0055】
(1−9−2.R11及びR12について)
式中、R11及びR12は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基又は置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
【0056】
11及びR12の、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、及び置換基を有していてもよいアルキル基の具体例は、前記[1−6.R及びRについて]の項に記載したものと同様である。好ましい例も同様である。
【0057】
(1−9−3.mについて)
mは0〜3の整数を表す。
上記mは、[1−7.nについて] の項に記載のnと同様である。好ましい例も同様
である。
[1−10.繰り返し単位の割合]
本発明の高分子化合物(i)が、式(I’)で表される繰り返し単位を有する場合、式(I)で表される繰り返し単位に対する式(I’)で表される繰り返し単位の割合{式(I’)で表される繰り返し単位/式(I)で表される繰り返し単位}は、仕込みモル比で、通常0.01倍モル以上、好ましくは50モル倍以上、さらに好ましくは80モル倍以上、また通常100モル倍以下、好ましくは50モル倍以下である。
【0058】
上記範囲内であると、高分子化合物の正孔輸送能及び還元耐性に優れる点で好ましい。また、得られる素子の駆動電圧が低く、また駆動寿命が向上する点で好ましい。
さらに、本発明の高分子化合物(i)が、式(I)で表される繰り返し単位及び式(I’)で表される繰り返し単位以外の、繰り返し単位を有する場合、式(I)で表される繰り返し単位及び式(I’)で表される繰り返し単位の含有量は、合計で通常10モル%以上、好ましくは50モル%以上、更に好ましくは80モル%以上である。
上記範囲内であると、高分子化合物の正孔輸送能及び還元耐性に優れる点で好ましい。また、得られる素子の駆動電圧が低く、また駆動寿命が向上する点で好ましい。
【0059】
[1−11.物性など]
本発明の高分子化合物(i)のガラス転移温度は、通常50℃以上、80℃以上、より好ましくは100℃以上、また 、通常300℃以下である。
上記範囲内であると、高分子化合物の耐熱性が優れ、得られる素子の駆動寿命が向上する点で好ましい。
また、本発明の高分子化合物(i)のイオン化ポテンシャルは、通常4.5eV以上、好ましくは4.8eV以上、また、通常6.0eV以下、好ましくは5.7eV以下である。
上記範囲内であると、高分子化合物の電荷注入輸送能が優れ、得られる素子の駆動電圧が低下するため好ましい。
【0060】
[1−12.具体例]
式(I)で表される繰り返し単位の好ましい具体例を、以下<式(I)で表される繰り返し単位群C>に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<式(I)で表される繰り返し単位群C>
【0061】
【化14】

【0062】
【化15】

【0063】
式(I’)で表される繰り返し単位の好ましい具体例を、以下<式(I’)で表される繰り返し単位群D>に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<式(I’)で表される繰り返し単位群D>
【0064】
【化16】

【0065】
【化17】

【0066】
本発明の高分子化合物(i)に含まれていてもよい、式(I)で表される繰り返し単位及び式(I’)で表される繰り返し単位以外の、繰り返し単位としては、後述の<4.合成例>の項で記載の、以下に表される繰り返し単位の、Ara及びArcが、トリアリールアミン構造を含まない2価の基であればよい。
【0067】
【化18】

本発明の高分子化合物(i)に含まれていてもよい、式(I)で表される繰り返し単位及び式(I’)で表される繰り返し単位以外の、繰り返し単位の好ましい具体例を、以下<その他の繰り返し単位群E>に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<その他の繰り返し単位群E>
【0068】
【化19】

【0069】
【化20】

【0070】
<2.高分子化合物(ii)>
本発明の高分子化合物(ii)は、下記式(II)で表される繰り返し単位を含むことを特徴とする、高分子化合物である。
【0071】
【化21】

【0072】
(式中、pは0〜3の整数を表し、
Ar21及びAr22は、各々独立に、直接結合、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
Ar23〜Ar25は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
【0073】
は下記式(IV)で表される基を含む基を表す。
但し、Ar21及びAr22のいずれもが、直接結合であることはない。
更に、Ar21、Ar22、及びAr24が、フルオレン環である場合は、置換基として架橋性基を含む基を有さない。)
【0074】
【化22】

(式(IV)中のベンゾシクロブテン環は、置換基を有していてもよい。また、置換基同士が互いに結合して環を形成していてもよい。)
【0075】
[2−1.構造上の特徴]
式(IV)で表される基は、架橋後の構造が特に安定である。その為、本発明の高分子化合物(ii)は架橋することで、有機溶剤に対する溶解性を十分に低下させることが可能である。
【0076】
さらに、アリールアミン部位から、少なくとも一つの単結合を介して、式(IV)で表される基を有する。そのため、アリールアミンの窒素原子にある孤立電子が式(IV)で表される基に流れにくくなり、式(IV)で表される基の電気的安定性に優れるため好ましい。また、高分子化合物が凝集しにくくなるため、凝集に伴う高分子化合物の電荷輸送能の低下が起こりにくいため好ましい。
【0077】
[2−2.Ar21〜Ar25について]
Ar21及びAr22は、各々独立に、直接結合、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
Ar23〜Ar25は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
【0078】
Ar21〜Ar25における置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、及び置換基を有していてもよい芳香族複素環基の具体例は、前記[1−2.Ar〜Ar]の項で記載のものと同様である。また、好ましい例も同様である。
[2−3.式(IV)で表される基]
式(II)中のTは、下記式(IV)で表される基を含む基である。つまり、本発明の高分子化合物(ii)は、1分子中に少なくとも一つの下記式(IV)で表される基を含む基を置換基として有する。
【0079】
【化23】

【0080】
(式(IV)中のベンゾシクロブテン環は、置換基を有していてもよい。また、置換基同士が、互いに結合して環を形成してもよい。)
上記式(IV)中のベンゾシクロブテン環が有していてもよい置換基としては、前記[
置換基群Z]の項に記載のものが挙げられる。好ましい例も同様であり、最も好ましくは
無置換である。
【0081】
本発明の高分子化合物(ii)は、式(IV)で表される基が−O−基、−C(=O)−基又は(置換基を有していてもよい)−CH−基から選ばれる基を任意の順番で1〜30個連結してなる2価の基を介して、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基に結合すること、つまり、Tが式(IV)で表される基を含む基であることが好ましい。これは、式(IV)中のベンゾシクロブテン環の酸化還元安定性が優れるためである。
【0082】
[2−4.式(IV)で表される基を有する位置について]
本発明の高分子化合物(ii)は、Tとして式(IV)で表される基を含む基を有する。
式(IV)を含む基であるTが、Ar23に結合することで、他の位置に結合した場合よりも、式(IV)の酸化還元安定性に優れ、また凝集しにくい点で好ましい。
本発明の高分子化合物(ii)が、Tの他に式(IV)で表される基を含む基を有する場合、該基は、繰り返し単位にあってもよく、また繰り返し単位以外の部分にあってもよい。
式(IV)で表される基を含む基が、Ar23以外にある場合、式(IV)で表される基の還元劣化が起こりにくい点で、Ar21、Ar22、Ar24、及びAr25のいずれかにあるのが好ましい。但し、Ar21、Ar22、及びAr24がフルオレン環である場合は、置換基として架橋性基を含む基を有さない。
【0083】
[2−5.式(IV)で表される基を含む割合]
本発明の高分子化合物(ii)が有する、式(IV)で表される基の割合は、前記[1−5.架橋性基を含む割合]の項において、架橋性基を、式(IV)で表される基とした場合と同様である。また、好ましい範囲も同様である。
【0084】
[2−6.pの説明]
前記式(II)におけるpは、0〜3の整数を表す。
上記pは、[1−7.nについて] の項に記載のnと同様である。好ましい例も同様
である。
[2−7.さらに含まれる繰り返し単位]
本発明の高分子化合物(ii)は、さらに、下記式(II’)で表される繰り返し単位を含むことが好ましい。
【0085】
【化24】

(式(II’)中、qは0〜3の整数を表し、
Ar31及びAr32は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基又は直接結合を表し、
Ar33、Ar34及びAr35は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
【0086】
但し、Ar31及びAr32のいずれもが、直接結合であることはない。
また、Ar31〜Ar35は、置換基として、式(IV)で表される基を有さない。
更に、Ar31、Ar32、及びAr34が、フルオレン環である場合は、置換基として架橋性基を含む基を有さない。)
【0087】
(2−5−1.Ar31〜Ar35について)
Ar31及びAr32は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基又は直接結合を表し、
Ar33〜Ar35は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
【0088】
Ar31〜Ar35における置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、及び置換基を有していてもよい芳香族複素環基の具体例は、前記[1−2.Ar〜Ar]の項で記載のものと同様である。また、好ましい例も同様である。
但し、Ar31〜Ar35は、置換基として式(IV)で表される基を含まない。
更に、Ar31、Ar32、及びAr34が、フルオレン環である場合は、置換基として架橋性基を含む基を有さない。
【0089】
(2−5−2.qについて)
式(II’)におけるqは0〜3の整数を表す。
上記qは、[1−7.nについて] の項に記載のnと同様である。好ましい例も同様で
ある。
[2−6.繰り返し単位の割合]
本発明の高分子化合物(ii)が、式(II’)で表される繰り返し単位を有する場合、式(II)で表される繰り返し単位に対する式(II’)で表される繰り返し単位の割合{式(II’)で表される繰り返し単位/式(II)で表される繰り返し単位}は、前記[1−10.繰り返し単位の割合]の項で記載のものと同様である。つまり、式(I)で表される繰り返し単位を、式(II)で表される繰り返し単位に、式(I’)で表される繰り返し単位を、式(II’)で表される繰り返し単位に置き換えた場合と同様である。また、好ましい態様も同様である。
本発明の高分子化合物(ii)は、式(II)で表される繰り返し単位及び式(II’)で表される繰り返し単位以外の、繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0090】
[2−7.物性など]
本発明の高分子化合物(ii)の物性は、前記[1−10.物性など]の項に記載のものと同様である。また、好ましい態様も同様である。
[2−8.具体例]
式(II)で表される繰り返し単位の好ましい具体例を、以下<式(II)で表される繰り返し単位群F>に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<式(II)で表される繰り返し単位群F>
【0091】
【化25】

【0092】
【化26】

【0093】
また、前記<式(I)で表される繰り返し単位群C>の項で記載した具体例のうち、式(IV)で表される基を有する繰り返し単位も、式(II)で表される繰り返し単位の好ましい具体例として挙げられる。
式(II’)で表される繰り返し単位の好ましい具体例を、以下<式(II’)で表される繰り返し単位群G>に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<式(II’)で表される繰り返し単位群G>
【0094】
【化27】

【0095】
【化28】

【0096】
また、前記<式(I’)で表される繰り返し単位群D>の項に記載した具体例のうち、式(II’)で表される繰り返し単位に該当するものは、式(II’)で表される繰り返し単位群の好ましい具体例として挙げられる。
【0097】
本発明の高分子化合物(ii)に含まれていてもよい、式(II)で表される繰り返し単位及び式(II’)で表される繰り返し単位以外の、繰り返し単位としては、後述の<4.合成例>の項で記載の、以下に表される繰り返し単位の、Ara及びArcが、トリアリールアミン構造を含まない2価の基であればよい。
【0098】
【化29】

本発明の高分子化合物(ii)に含まれていてもよい、式(II)で表される繰り返し単位及び式(II’)で表される繰り返し単位以外の、繰り返し単位の好ましい具体例を、以下<その他の繰り返し単位群H>に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<その他の繰り返し単位群H>
【0099】
【化30】

【0100】
<3.特に好ましい高分子化合物>
本発明の高分子化合物は、下記の繰り返し単位群Aより選ばれる少なくとも一つの繰り返し単位、及び下記の繰り返し単位群Bより選ばれる少なくとも一つの繰り返し単位を有する高分子化合物であることが特に好ましい。
<繰り返し単位A>
【0101】
【化31】

【0102】
<繰り返し単位B>
【0103】
【化32】

【0104】
<4.合成法>
本発明の高分子化合物は、目的とする化合物の構造に応じて原料を選択し、公知の手法を用いて合成することができる。
本発明の高分子化合物は、下記式のように一般式(Va)で表されるハロゲン化物と、一般式(Vb)で表される二級アミン化合物又は一般式(Vc)であらわされるホウ素化合物とを、炭酸カリウム、tert-ブトキシナトリウム、トリエチルアミン等の塩基存在下
、逐次重合することで得られる。必要に応じて、銅やパラジウム錯体等の遷移金属触媒を用いることも出来る。
【0105】
つまり、本発明の高分子化合物は、式(Va)と式(Vb)とをN−Ar結合を形成する反応(例えば、Buchwald-Hartwigカップリング、Ullmannカップリングなど)により、
また、式(Va)と式(Vc)とをAr−Ar結合を形成する反応(例えば、Suzukiカップリングなど)によって、それぞれ逐次重合させることによって得られる。
【0106】
【化33】

【0107】
(式中、Xはハロゲン原子又は、CFSOO−基のようなスルホン酸エステル基を示し、Arは置換基を有してもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有してもよい芳香族複素環基を示し、
R’はヒドロキシ基又は互いに結合して環を形成してもよいアルコキシ基を示し、Ara
、Arb、及びArは各々独立に置換基を有してもよい2価の芳香族炭化水素基又は置
換基を有してもよい2価の芳香族複素環基を示す。)
但し、本発明の高分子化合物(i)を合成する場合は、Ar又はAr、並びにAr又はAr、の少なくとも1つは下記式(VI)で表される2価の基を含む。
【0108】
【化34】

(式中、R51、及びR52は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R51、及びR52は互いに結合して環を形成してもよい。)
51及びR52は、前記[1−6.R及びRについて]の項におけるR及びRと同様である。好ましい態様も同様である。
【0109】
Ar及びArは、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。上記合成方法の場合、Ar及びArの好ましい具体例としては、後述の<置換基を有していてもよい2価の基群A>、<置換
基を有していてもよい2価の基群B>、及び<置換基を有していてもよい2価の基群C>が挙げられる。
【0110】
また、Arは、式(Vb)で好ましい具体例を挙げており、具体的には後述の<具体例群D>及び<具体例群E>が挙げられる。
本発明の高分子化合物は、適宜Ar、Ar及び式(Vb)の選択を行って、本発明の高分子化合物を合成することができる。
例えば、本発明の高分子化合物(i)を合成する場合は、高分子化合物中に、式(VI)で表される2価の基及び架橋性基を含む基が含まれる様に適宜Ar、Ar及び式(Vb)の選択を行って、本発明の高分子化合物(i)を合成する。
【0111】
Ar及びArの少なくとも一つは、式(VI)で表される2価の基を有するとは、例えば、Ar又はArが後述の<置換基を有していてもよい2価の基群A>から選ばれる基であることを意味する。
同様に、Ar及びArの少なくとも一つは、架橋性基を有するとは、例えば、Ar又はArが後述の<置換基を有していてもよい2価の基群B>から選ばれる基であることを意味する。
【0112】
これより、例えば、Arが<置換基を有していてもよい2価の基群A>から選ばれる基であり、Arが<置換基を有していてもよい2価の基群B>から選ばれる基であることにより、本発明の高分子化合物(i)を合成できる。
Arと式(Vb)の場合も同様である。
また、本発明の高分子化合物(ii)を合成する場合は、高分子化合物中に、式(IV)で表される基が含まれる様に適宜Ar、Ar、及び式(Vb)の選択を行って、本発明の高分子化合物(ii)を合成する。
【0113】
Ar及びArの少なくとも一つは、式(IV)で表される基を有するとは、例えば、Ar又はArが後述の<置換基を有していてもよい2価の基群B>に記載の具体例において、式(IV)で表される基を有する基であることを意味する。
Arと式(Vb)の場合も同様である。
以下に、Ara、及びArが、前記式(VI)で表される2価の基を含み、架橋性基
を含む基有さない場合の好ましい具体例を以下<置換基を有していてもよい2価の基群A>に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0114】
<置換基を有していてもよい2価の基群A>
【0115】
【化35】

【0116】
以下に、Ara及びArが、前記式(VI)で表される2価の基を有さず、架橋性基
を含む基を有する場合の好ましい具体例を、以下<置換基を有していてもよい2価の基群B>に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<置換基を有していてもよい2価の基群B>
【0117】
【化36】

【0118】
以下に、Ara、及びArが、前記式(VI)で表される2価の基を有さず、架橋性
基を含む基を有さない場合の好ましい具体例を以下<置換基を有していてもよい2価の基群C>示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<置換基を有していてもよい2価の基群C>
【0119】
【化37】

【0120】
以下に、式(Vb)の、前記式(VI)で表される2価の基を有さず、架橋性基を含む基を有する好ましい具体例を以下<具体例群D>に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<具体例群D>
【0121】
【化38】

【0122】
以下に、式(Vb)の、前記式(VI)で表される2価の基を有さず、かつ架橋性基を含む基を有さない場合の、好ましい具体例を<具体例群E>示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<具体例群E>
【0123】
【化39】

【0124】
【化40】

【0125】
化合物の精製方法としては、「分離精製技術ハンドブック」(1993年、(財)日本化学会編)、「化学変換法による微量成分及び難精製物質の高度分離」(1988年、(株)アイ ピー シー発行)、あるいは「実験化学講座(第4版)1」(1990年、(財)日本化学会編)の「分離と精製」の項に記載の方法をはじめとし、公知の技術を利用可能である。具体的には、抽出(懸濁洗浄、煮沸洗浄、超音波洗浄、酸塩基洗浄を含む)、吸着、吸蔵、融解、晶析(溶剤からの再結晶、再沈殿を含む)、蒸留(常圧蒸留、減圧蒸留)、蒸発、昇華(常圧昇華、減圧昇華)、イオン交換、透析、濾過、限外濾過、逆浸透、圧浸透、帯域溶解、電気泳動、遠心分離、浮上分離、沈降分離、磁気分離、各種クロマトグラフィー(形状分類:カラム、ペーパー、薄層、キャピラリー、移動相分類:ガス
、液体、ミセル、超臨界流体。分離機構:吸着、分配、イオン交換、分子ふるい、キレート、ゲル濾過、排除、アフィニティー)などが挙げられる。
【0126】
生成物の確認や純度の分析方法としては、ガスクロマトグラフ(GC)、高速液体クロマトグラフ(HPLC)、高速アミノ酸分析計(高分子化合物)、キャピラリー電気泳動測定(CE)、サイズ排除クロマトグラフ(SEC)、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)、交差分別クロマトグラフ(CFC)、質量分析(MS、LC/MS,GC/MS,MS/MS)、核磁気共鳴装置(NMR(1HNMR,13CNMR))、フーリエ変換赤外分光高度計(FT−IR)、紫外可視近赤外分光高度計(UV.VIS,NIR)、電子スピン共鳴装置(ESR)、透過型電子顕微鏡(TEM−EDX)電子線マイクロアナライザー(EPMA)、金属元素分析(イオンクロマトグラフ、誘導結合プラズマ−発光分光(ICP−AES)原子吸光分析(AAS)、蛍光X線分析装置(XRF))、非金属元素分析、微量成分分析(ICP−MS,GF−AAS,GD−MS)等を必要に応じ、適用可能である。
【0127】
<5.高分子化合物の用途>
本発明の高分子化合物は、電荷輸送材料として用いられることが好ましく、特に有機電界発光素子材料として用いられることが好ましい。有機電界発光素子材料として用いられる場合は、有機電界発素子における正孔注入層及び/又は正孔輸送層の電荷輸送材料として用いることが好ましい。
また、有機電界発光素子を簡便に製造できることから、本発明の高分子化合物は、湿式成膜法で形成される有機層に用いることが好ましい。
【0128】
<6.網目状高分子化合物>
本発明の高分子化合物は、下記<7.有機電界発光素子用組成物>[成膜方法]の項で記載のように、加熱及び/又は光などの活性エネルギー照射により、架橋反応を起こし、網目状高分子化合物を形成することができる。網目状高分子化合物を含む層は、下記詳述の正孔注入層及び/又は正孔輸送層であることが好ましい。
本発明の網目状高分子化合物の架橋率は、下記[6−1.架橋率の測定方法]の項で記載の方法で測定した場合で、通常70%以上、好ましくは80%以上、また通常120%以下、好ましくは110%以下である。上記範囲内であると、網目状高分子化合物を含有する層と、該層上に湿式成膜法で形成された層とが混合せず、得られる素子の特性に影響しない点で好ましい。
【0129】
[6−1.架橋率の測定方法]
本発明における架橋率は、以下の方法にて膜厚L1及びL2を各々測定し、L2/L1を算出した値である。
[6−1−1.成膜方法、及び膜厚L1の測定方法]
25mm×37.5mmサイズのガラス基板を超純水で洗浄し、乾燥窒素で乾燥して、UV/オゾン洗浄を行う。
測定サンプル(通常、測定する化合物の固形分濃度が1重量%となるように調製された溶液)を前記ガラス基板にスピンコートして膜を形成する。
スピンコート条件は、下記の通りである。
【0130】
[スピンコート条件]
気温:23℃
相対湿度: 60%
スピナ回転数: 1500rpm
スピナ回転時間:30秒とした。
【0131】
塗布後、80℃、1分加熱乾燥を行い、次いで、230℃にて、60分間加熱乾燥する。得られた膜を約1mm幅で掻き取り、膜厚計(テンコールP−15、ケーエルエーテンコール社製)で膜厚L1(nm)を測定する。
【0132】
[6−1−2.膜厚L2の測定方法]
膜厚L1測定後の基板をスピナにセットし、測定サンプルに用いた溶剤と同様の溶剤を膜厚測定した箇所に垂らし、10秒後に、上記の<スピンコート条件>と同様にスピンコートを行う。続いて再び同じ箇所の膜厚L2(nm)を測定し、架橋率L2/L1を算出する。
<7.有機電界発光素子用組成物>
本発明の有機電界発光素子用組成物は、本発明の高分子化合物を少なくとも1種含む組成物である。
【0133】
本発明の有機電界発光素子用組成物は、陽極と陰極の間に配置された有機層を有する有機電界発光素子において、通常、該有機層を湿式成膜法により形成する際の塗布液として用いられる。本発明の有機電界発光素子用組成物は、該有機層のうち、正孔輸送層を形成するために用いられることが好ましい。
なお、ここでは、有機電界発光素子における陽極−発光層間の層が1つの場合には、これを「正孔輸送層」と称し、2つ以上の場合は、陽極に接している層を「正孔注入層」、それ以外の層を総称して「正孔輸送層」と称す。また、陽極−発光層間に設けられた層を総称して「正孔注入・輸送層」と称する場合がある。
【0134】
本発明の有機電界発光素子用組成物は、本発明の高分子化合物を含有することを特徴とするが、通常、さらに溶剤を含有する。
該溶剤は、本発明の高分子化合物を溶解するものが好ましく、通常、高分子化合物を常温で0.05重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上溶解する溶剤である。
【0135】
なお、本発明の有機電界発光素子用組成物は、本発明の高分子化合物の1種のみを含むものであってもよく、2種以上を含むものであってもよい。
本発明の有機電界発光素子用組成物は、本発明の高分子化合物を通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上、また、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下含有する。
また、上記組成物は、各種添加物等の添加剤を含んでいてもよい。この場合は、溶剤としては、本発明の高分子化合物と添加剤の双方を0.05重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上溶解する溶剤を使用することが好ましい。
【0136】
本発明の有機電界発光素子用組成物に含まれる、本発明の高分子化合物の架橋反応を促進する添加物としては、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシムエステル化合物、アゾ化合物、オニウム塩などの重合開始剤や重合促進剤、縮合多環炭化水素、ポルフィリン化合物、ジアリールケトン化合物などの光増感剤等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0137】
本発明の有機電界発光素子用組成物は、正孔注入層を形成するために用いる場合、形成した層の抵抗値を低下する点で、さらに電子受容性化合物を含有することが好ましい。
電子受容性化合物としては、酸化力を有し、上述の正孔輸送性化合物から一電子受容する能力を有する化合物が好ましい。具体的には、電子親和力が4eV以上である化合物が好ましく、5eV以上の化合物である化合物がさらに好ましい。
【0138】
電子受容性化合物の例としては、例えば、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート等の有機基の置換したオニウム塩、塩化鉄(III)(特開平11−251067号公報)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム等の高原子価の無機化合物、テトラシアノエチレン等のシアノ化合物、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(特開2003−31365号公報)等の芳香族ホウ素化合物、フラーレン誘導体、ヨウ素等が挙げられる。
【0139】
上記の化合物のうち、強い酸化力を有する点で、有機基の置換したオニウム塩、高原子価の無機化合物等が好ましい。また、種々の溶剤に対する溶解性が高く湿式成膜法で膜を形成するのに適用可能である点で、有機基の置換したオニウム塩、シアノ化合物、芳香族ホウ素化合物等が好ましい。
電子受容性化合物として好適な有機基の置換したオニウム塩、シアノ化合物、芳香族ホウ素化合物の具体例としては、国際公開第2005/089024号パンフレットに記載のものが挙げられ、その好ましい例も同様である。例えば、下記構造式で表わされる化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0140】
【化41】

【0141】
なお、電子受容性化合物は1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
本発明の有機電界発光素子用組成物に含有される溶剤としては、特に制限されるものではないが、本発明の高分子化合物を溶解させる必要があることから、好ましくは、トルエン、キシレン、メチシレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族化合物;1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等の含ハロゲン溶剤;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル、1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル等のエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル等の脂肪族エステル;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸イソプロピル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等のエステル系溶剤等の有機溶剤が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0142】
本発明の有機電界発光素子用組成物に含有される溶剤の組成物中の濃度は、通常10重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。
なお、水分は有機電界発光素子の性能劣化、中でも特に連続駆動時の輝度低下を促進する可能性があることが広く知られており、塗膜中に残留する水分をできる限り低減するために、これらの溶剤の中でも、25℃における水の溶解度が1重量%以下であるものが好
ましく、0.1重量%以下である溶剤がより好ましい。
【0143】
本発明の有機電界発光素子用組成物に含有される溶剤として、20℃における表面張力が40dyn/cm未満、好ましくは36dyn/cm以下、より好ましくは33dyn/cm以下である溶剤が挙げられる。
即ち、本発明における架橋層を湿式成膜法により形成する場合、下地との親和性が重要である。膜質の均一性は有機電界発光素子の発光の均一性、安定性に大きく影響するため、湿式成膜法に用いる塗布液には、よりレベリング性が高く均一な塗膜を形成しうるように表面張力が低いことが求められる。このような溶剤を使用することにより、本発明における架橋層を均一に形成することができる。
【0144】
このような低表面張力の溶剤の具体例としては、前述したトルエン、キシレン、メチシレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族系溶剤、安息香酸エチル等のエステル系溶剤、アニソール等のエーテル系溶剤、トリフルオロメトキシアニソール、ペンタフルオロメトキシベンゼン、3−(トリフルオロメチル)アニソール、エチル(ペンタフルオロベンゾエート)等が挙げられる。
【0145】
これらの溶剤の組成物中の濃度は、通常10重量%以上、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上である。
本発明の有機電界発光素子用組成物に含有される溶剤としてはまた、25℃における蒸気圧が10mmHg以下、好ましくは5mmHg以下で、通常0.1mmHg以上の溶剤が挙げられる。このような溶剤を使用することにより、有機電界発光素子を湿式成膜法により製造するプロセスに好適な、また、本発明の高分子化合物の性質に適した組成物を調製することができる。このような溶剤の具体例としては、前述したトルエン、キシレン、メチシレン等の芳香族系溶剤、エーテル系溶剤及びエステル系溶剤が挙げられる。これらの溶剤の組成物中の濃度は、通常10重量%以上、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上である。
【0146】
本発明の有機電界発光素子用組成物に含有される溶剤として、25℃における蒸気圧が2mmHg以上、好ましくは3mmHg以上、より好ましくは4mmHg以上(但し、上限は好ましくは10mmHg以下である。)である溶剤と、25℃における蒸気圧が2mmHg未満、好ましくは1mmHg以下、より好ましくは0.5mmHg以下である溶剤との混合溶剤が挙げられる。このような混合溶剤を使用することにより、湿式成膜法により本発明の高分子化合物、更には電子受容性化合物を含む均質な層を形成することができる。このような混合溶剤の組成物中の濃度は、通常10重量%以上、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上である。
【0147】
有機電界発光素子は、有機化合物からなる層を多数積層して形成するため、膜質が均一であることが非常に重要である。湿式成膜法で層形成する場合、その材料や、下地の性質によって、スピンコート法、スプレー法などの塗布法や、インクジェット法、スクリーン法などの印刷法等の成膜方法が採用できる。例えばスプレー法は、凹凸のある面への均一な膜形成に有効であるため、パターニングされた電極や画素間の隔壁による凹凸が残る面に、有機化合物からなる層を設ける場合に、好ましい。スプレー法による塗布の場合、ノズルから塗布面へ噴射された塗布液の液滴はできる限り小さい方が、均一な膜質が得られるため好ましい。そのためには、塗布液に蒸気圧の高い溶剤を混合し、塗布雰囲気中において噴射後の塗布液滴から溶剤の一部が揮発することにより、基板に付着する直前に細かい液滴が生成する状態が好ましい。また、より均一な膜質を得るためには、塗布直後に基板上に生成した液膜がレベリングする時間を確保することが必要で、この目的を達成するためにはより乾燥の遅い溶剤、すなわち蒸気圧の低い溶剤をある程度含有させる手法が用いられる。
【0148】
具体例としては、25℃における蒸気圧が2mmHg以上10mmHg以下である溶剤としては、例えば、キシレン、アニソール、シクロヘキサノン、トルエン等の有機溶剤が挙げられる。25℃における蒸気圧が2mmHg未満である溶剤としては、安息香酸エチル、安息香酸メチル、テトラリン、フェネトール等が挙げられる。
混合溶剤の比率は、25℃における蒸気圧が2mmHg以上である溶剤が、混合溶剤総量中、5重量%以上、好ましくは25重量%以上、但し50重量%未満であり、25℃における蒸気圧が2mmHg未満である溶剤が、混合溶剤総量中、30重量%以上、好ましくは50重量%以上、特に好ましくは75重量%以上、但し、95重量%未満である。
【0149】
なお、有機電界発光素子は、多数の有機化合物からなる層を積層して形成するため、各層がいずれも均一な層であることが要求される。湿式成膜法で層形成する場合、層形成用の溶液(組成物)に水分が混入することにより、塗膜に水分が混入して膜の均一性が損なわれるおそれがあるため、溶液中の水分含有量はできるだけ少ない方が好ましい。具体的には、有機電界発光素子組成物中に含まれる水分量は、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下、さらに好ましくは0.05重量%以下である。
【0150】
また、有機電界発光素子は、陰極等の水分により著しく劣化する材料が多く使用されているため、素子の劣化の観点からも、水分の存在は好ましくない。溶液中の水分量を低減する方法としては、例えば、窒素ガスシール、乾燥剤の使用、溶剤を予め脱水する、水の溶解度が低い溶剤を使用する等が挙げられる。なかでも、水の溶解度が低い溶剤を使用する場合は、塗布工程中に、溶液塗膜が大気中の水分を吸収して白化する現象を防ぐことができるため好ましい。
【0151】
この様な観点からは、本発明の有機電界発光素子用組成物は、例えば25℃における水の溶解度が1重量%以下(好ましくは0.1重量%以下)である溶剤を、該組成物中10重量%以上含有することが好ましい。なお、上記溶解度条件を満たす溶剤が30重量%以上であればより好ましく、50重量%以上であれば特に好ましい。
なお、本発明の有機電界発光素子用組成物に含有される溶剤として、前述した溶剤以外にも、必要に応じて、各種の他の溶剤を含んでいてもよい。このような他の溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等がある。
また、本発明の有機電界発光素子用組成物は、レベリング剤や消泡剤等の塗布性改良剤などの各種添加剤を含んでいてもよい。
【0152】
[成膜方法]
前述の如く、有機電界発光素子は、多数の有機化合物からなる層を積層して形成するため、膜質が均一であることが非常に重要である。湿式成膜法で層形成する場合、その材料や、下地の性質によって、スピンコート法、スプレー法などの塗布法や、インクジェット法、スクリーン法などの印刷法等の成膜方法が採用できる。
【0153】
湿式成膜法を用いる場合、本発明の高分子化合物及び必要に応じて用いられるその他の成分(電子受容性化合物、架橋反応を促進する添加物や塗布性改良剤等)を、適切な溶剤に溶解させ、上記有機電界発光素子用組成物を調製する。この組成物を、スピンコート法やディップコート法等の手法により、形成する層の下層に該当する層上に塗布し、乾燥した後、架橋することにより、本発明における架橋層を形成する。
【0154】
本発明の高分子化合物を架橋反応させ、網目状高分子化合物とする場合に、通常加熱を行う。
加熱の手法は特に限定されないが、例としては加熱乾燥等が挙げられる。加熱乾燥の場
合の条件としては、通常120℃以上、好ましくは400℃以下に本発明の有機電界発光素子用組成物を用いて形成された層を加熱する。
【0155】
加熱時間としては、通常1分以上、好ましくは24時間以下である。加熱手段としては特に限定されないが、形成された層を有する積層体をホットプレート上に載せたり、オーブン内で加熱するなどの手段が用いられる。例えば、ホットプレート上で120℃以上、1分間以上加熱する等の条件を用いることができる。
加熱の手法は特に限定されないが、加熱乾燥の場合の条件としては、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは150℃以上、また通常400℃以下、好ましくは350℃以下、より好ましくは300℃以下に、有機電界発光素子用組成物を用いて形成された層を加熱する。加熱時間としては、通常1分以上、好ましくは24時間以下である。加熱手段としては特に限定されないが、形成された層を有する積層体をホットプレート上に載せたり、オーブン内で加熱するなどの手段が用いられる。例えば、ホットプレート上で120℃以上、1分間以上加熱する等の条件を用いることができる。
【0156】
光などの活性エネルギー照射による場合には、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、赤外ランプ等の紫外・可視・赤外光源を直接用いて照射する方法、あるいは前述の光源を内蔵するマスクアライナ、コンベア型光照射装置を用いて照射する方法などが挙げられる。光以外の活性エネルギー照射では、例えばマグネトロンにより発生させたマイクロ波を照射する装置、いわゆる電子レンジを用いて照射する方法が挙げられる。
照射時間としては、架橋反応が充分に起こるために必要な条件を設定することが好ましいが、通常、0.1秒以上、好ましくは10時間以下照射される。
【0157】
加熱及び光などの活性エネルギー照射は、それぞれ単独、あるいは組み合わせて行ってもよい。組み合わせる場合、実施する順序は特に限定されない。
加熱及び光などの活性エネルギー照射は、実施後に層に含有する水分及び/又は表面に吸着する水分の量を低減するために、窒素ガス雰囲気等の水分を含まない雰囲気で行うことが好ましい。同様の目的で、加熱及び/又は光などの活性エネルギー照射を組み合わせて行う場合には、少なくとも発光層の形成直前の工程を窒素ガス雰囲気等の水分を含まない雰囲気で行うことが特に好ましい。
【0158】
<8.有機電界発光素子>
本発明の有機電界発光素子は、基板上に、陽極、陰極、及び該陽極と該陰極の間に配置された有機層を有する有機電界発光素子において、該有機層が、本発明の網目状高分子化合物を含有する層(以下、「架橋層」と称する場合がある)である有機電界発光素子である。
さらに、本発明の有機電界発光素子は、本発明における架橋層が、正孔注入層及び/又は正孔輸送層であることが好ましい。
【0159】
本発明の架橋層は、本発明の有機電界発光素子用組成物を用いて湿式成膜法にて形成されることが好ましい。
また、該正孔輸送層の陰極側には、湿式成膜法で形成される発光層を有することが好ましく、さらに、該正孔輸送層の陽極側には、湿式成膜法で形成される正孔注入層を有することが好ましい。すなわち、本発明の有機電界発光素子は、正孔注入層、正孔輸送層及び発光層の全てが湿式成膜法で形成されることが好ましい。特にこの湿式成膜法で形成される発光層は低分子材料からなる層であることが好ましい。
【0160】
図1は、本発明の有機電界発光素子の構造の一例を模式的に示す断面図である。図1に示す有機電界発光素子は、基板の上に、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層,電子注入層及び陰極を、この順に積層して構成される。この構成の場合、通常は正
孔輸送層が上述の本発明の有機化合物含有層に該当することになる。
【0161】
[1]基板
基板は有機電界発光素子の支持体となるものであり、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシートなどが用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホンなどの透明な合成樹脂の板が好ましい。合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意する必要がある。基板のガスバリア性が小さすぎると、基板を通過した外気により有機電界発光素子が劣化することがあるので好ましくない。このため、合成樹脂基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。
【0162】
[2]陽極
陽極は、後述する発光層側の層(正孔注入層又は発光層など)への正孔注入の役割を果たすものである。この陽極は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウム及び/又はスズの酸化物などの金属酸化物、ヨウ化銅などのハロゲン化金属、カーボンブラック、或いは、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子などにより構成される。陽極の形成は通常、スパッタリング法、真空蒸着法などにより行われることが多い。また、銀などの金属微粒子、ヨウ化銅などの微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末などの場合には、適当なバインダー樹脂溶液に分散し、基板上に塗布することにより陽極を形成することもできる。更に、導電性高分子の場合は、電解重合により直接基板上に薄膜を形成したり、基板上に導電性高分子を塗布して陽極を形成することもできる(Applied
Physics Letters,1992年,Vol.60,pp.2711参照)。陽極は異なる物質で積層して形
成することも可能である。
【0163】
陽極の厚みは、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常60%以上、好ましくは80%以上とすることが望ましく、この場合、厚みは、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下の範囲である。不透明でよい場合、陽極は基板と同一でもよい。また、更には上記の陽極の上に異なる導電材料を積層することも可能である。
【0164】
なお、陽極に付着した不純物を除去し、イオン化ポテンシャルを調整して正孔注入性を向上させることを目的として、陽極表面を紫外線(UV)/オゾン処理したり、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ処理することが好ましい。
【0165】
[3]正孔注入層
陽極の上には、正孔注入層が形成される。
正孔注入層は、陽極の陰極側に隣接する層へ正孔を輸送する層である。
なお、本発明の有機電界発光素子は、正孔注入層を省いた構成であってもよい。
正孔注入層は、正孔輸送性化合物を含むことが好ましく、正孔輸送性化合物と電子受容性化合物とを含むことがより好ましい。更には、正孔注入層中にカチオンラジカル化合物を含むことが好ましく、カチオンラジカル化合物と正孔輸送性化合物とを含むことが特に好ましい。
【0166】
正孔注入層は、必要に応じて、バインダー樹脂や塗布性改良剤を含んでもよい。なお、バインダー樹脂は、電荷のトラップとして作用し難いものが好ましい。
また、正孔注入層は、電子受容性化合物のみを湿式成膜法によって陽極上に成膜し、その上から直接、電荷輸送材料組成物を塗布、積層することも可能である。この場合、電荷輸送材料組成物の一部が電子受容性化合物と相互作用することによって、正孔注入性に優れた層が形成される。
【0167】
(正孔輸送性化合物)
上記の正孔輸送性化合物としては、4.5eV〜6.0eVのイオン化ポテンシャルを有する化合物が好ましい。ただし、湿式成膜法に用いる場合には、湿式成膜法に用いる溶剤への溶解性が高い方が好ましい。
正孔輸送性化合物としては、成膜性に優れ、高い電荷輸送能を有する点から、本発明の高分子化合物であることが好ましい。つまり、本発明の有機電界発光素子用組成物を用いて層を形成することが好ましい。
本発明の高分子化合物以外の化合物を正孔輸送性化合物として用いる場合、正孔輸送性化合物の例としては、芳香族アミン化合物、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ポリチオフェン誘導体等が挙げられる。中でも非晶質性、可視光の透過率の点から、芳香族アミン化合物が好ましい。
【0168】
芳香族アミン化合物の種類は特に制限されず、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよいが、表面平滑化効果の点から、重量平均分子量が1000以上、及び1000000以下の高分子化合物(繰り返し単位が連なる重合型炭化水素化合物)が好ましい。
芳香族三級アミン高分子化合物の好ましい例としては、下記式(1)で表わされる繰り返し単位を有する高分子化合物も挙げることができる。
【0169】
【化42】

【0170】
(上記式(1)中、Arb1及びArb2は、各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表わす。Arb3〜A
b5は、各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有
していてもよい芳香族複素環基を表わす。Zbは、下記の連結基群の中から選ばれる連結
基を表わす。また、Arb1〜Arb5のうち、同一のN原子に結合する二つの基は互いに結合して環を形成してもよい。)
【0171】
【化43】

【0172】
(上記各式中、Arb6〜Arb16は、各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環由来の1価又は2価の基を表
わす。Rb5及びRb6は、各々独立して、水素原子又は任意の置換基を表わす。)
Arb1〜Arb16としては、任意の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環由来の1価又は2価の基が適用可能である。これらの基は各々同一であっても、互いに異なって い

もよい。また、これらの基は、更に任意の置換基を有していてもよい。
【0173】
一般式(1)で表される繰り返し単位を有する芳香族三級アミン高分子化合物の具体例としては、国際公開第2005/089024号パンフレットに記載の化合物が挙げられる。
正孔注入層の材料として用いられる正孔輸送性化合物は、このような化合物のうち何れか1種を単独で含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。
2種以上の正孔輸送性化合物を含有する場合、その組み合わせは任意であるが、芳香族三級アミン高分子化合物1種又は2種以上と、その他の正孔輸送性化合物1種又は2種以上とを併用するのが好ましい。
【0174】
(電子受容性化合物)
電子受容性化合物としては、前記<7.有機電界発光素子用組成物>の項に記載のものと同様である。また、好ましい具体例も同様である。
(カチオンラジカル化合物)
カチオンラジカル化合物としては、正孔輸送性化合物から一電子取り除いた化学種であるカチオンラジカルと、対アニオンとからなるイオン化合物が好ましい。但し、カチオンラジカルが正孔輸送性の高分子化合物由来である場合、カチオンラジカルは高分子化合物の繰り返し単位から一電子取り除いた構造となる。
【0175】
カチオンラジカルとしては、正孔輸送性化合物として前述した化合物から一電子取り除いた化学種であることが好ましい。正孔輸送性化合物として好ましい化合物から一電子取り除いた化学種であることが、非晶質性、可視光の透過率、耐熱性、及び溶解性などの点から好適である。
ここで、カチオンラジカル化合物は、前述の正孔輸送性化合物と電子受容性化合物を混合することにより生成させることができる。即ち、前述の正孔輸送性化合物と電子受容性化合物とを混合することにより、正孔輸送性化合物から電子受容性化合物へと電子移動が起こり、正孔輸送性化合物のカチオンラジカルと対アニオンとからなるカチオンイオン化合物が生成する。
【0176】
PEDOT/PSS(Adv.Mater.,2000年,12巻,481頁)やエメラルジン塩酸塩(J.Phys.Chem.,1990年,94巻,7716頁)等の高分子化合物由来のカチオンラジカル化合物は、酸化重合(脱水素重合)することによっても生成する。
ここでいう酸化重合は、モノマーを酸性溶液中で、ペルオキソ二硫酸塩等を用いて化学的に、又は、電気化学的に酸化するものである。この酸化重合(脱水素重合)の場合、モノマーが酸化されることにより高分子化されるとともに、酸性溶液由来のアニオンを対アニオンとする、高分子の繰り返し単位から一電子取り除かれたカチオンラジカルが生成する。
【0177】
正孔注入層は、湿式成膜法でも、真空蒸着法などの乾式成膜法でも形成することができる。成膜性が優れる点で、湿式成膜法で形成されるのが好ましい。
正孔注入層の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下の範囲である。
なお、正孔注入層における電子受容性化合物の正孔輸送性化合物に対する含有量は、通常0.1モル%以上、好ましくは1モル%以上である。但し、通常100モル%以下、好
ましくは40モル%以下である。
【0178】
(その他の構成材料)
正孔注入層の材料としては、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述の正孔輸送性化合物や電子受容性化合物に加えて、さらに、その他の成分を含有させてもよい。その他の成分の例としては、各種の発光材料、電子輸送性化合物、バインダー樹脂、塗布性改良剤などが挙げられる。なお、その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0179】
(溶剤)
湿式成膜法に用いる正孔注入層形成用組成物の溶剤のうち少なくとも1種は、上述の正孔注入層の構成材料を溶解しうる化合物であることが好ましい。また、この溶剤の沸点は通常110℃以上、好ましくは140℃以上、中でも200℃以上、通常400℃以下、中でも300℃以下であることが好ましい。溶剤の沸点が低すぎると、乾燥速度が速すぎ、膜質が悪化する可能性がある。また、溶剤の沸点が高すぎると乾燥工程の温度を高くする必要があり、他の層や基板に悪影響を与える可能性がある。
【0180】
溶剤として例えば、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、アミド系溶剤などが挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル、等が挙げられる。
【0181】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル、等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、3−イロプロピルビフェニル、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、メチルナフタレン等が挙げられる。
アミド系溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、等が挙げられる。
【0182】
その他、ジメチルスルホキシド、等も用いることができる。
これらの溶剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
【0183】
(成膜方法)
正孔注入層形成用組成物を調製後、この組成物を湿式成膜により、正孔注入層の下層に該当する層(通常は、陽極)上に塗布し、乾燥することにより正孔注入層を形成する。
成膜工程における温度は、組成物中に結晶が生じることによる膜の欠損を防ぐため、10℃以上が好ましく、50℃以下が好ましい。
成膜工程における相対湿度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.01ppm以上、通常80%以下である。
塗布後、通常加熱等により正孔注入層形成用組成物の膜を乾燥させる。乾燥させる方法としては、通常、加熱工程が行なわれる。加熱工程において使用する加熱手段の例を挙げると、クリーンオーブン、ホットプレート、赤外線、ハロゲンヒーター、マイクロ波照射などが挙げられる。中でも、膜全体に均等に熱を与えるためには、クリーンオーブン及び
ホットプレートが好ましい。
【0184】
加熱工程における加熱温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り、正孔注入層形成用組成物に用いた溶剤の沸点以上の温度で加熱することが好ましい。また、正孔注入層形成用組成物に用いた溶剤が2種類以上含まれている混合溶剤の場合、少なくとも1種類がその溶剤の沸点以上の温度で加熱されるのが好ましい。溶剤の沸点上昇を考慮すると、加熱工程においては、好ましくは120℃以上、好ましくは410℃以下で加熱することが好ましい。
【0185】
加熱工程において、加熱温度が正孔注入層形成用組成物の溶剤の沸点以上が好ましい。また、加熱時間は、塗布膜の十分な架橋が起こらなければ限定されないが、好ましくは10秒以上、通常180分以下である。加熱時間が長すぎると他の層の成分が拡散する傾向があり、短すぎると正孔注入層が不均質になる傾向がある。加熱は2回にわけて行ってもよい。
【0186】
<真空蒸着法による正孔注入層の形成>
真空蒸着により正孔注入層を形成する場合には、正孔注入層の構成材料(前述の正孔輸送性化合物、電子受容性化合物等)の1種又は2種以上を真空容器内に設置されたるつぼに入れ(2種以上の材料を用いる場合は各々のるつぼに入れ)、真空容器内を適当な真空ポンプで10−4Pa程度まで排気した後、るつぼを加熱して(2種以上の材料を用いる場合は各々のるつぼを加熱して)、蒸発量を制御して蒸発させ(2種以上の材料を用いる場合は各々独立に蒸発量を制御して蒸発させ)、るつぼと向き合って置かれた基板の陽極上に正孔注入層を形成させる。なお、2種以上の材料を用いる場合は、それらの混合物をるつぼに入れ、加熱、蒸発させて正孔注入層を形成することもできる。
【0187】
蒸着時の真空度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.1×10−6Torr(0.13×10−4Pa)以上、通常9.0×10−6Torr(12.0×10−4Pa)以下である。蒸着速度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.1Å/秒以上、通常5.0Å/秒以下である。蒸着時の成膜温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、好ましくは10℃以上で、好ましくは50℃以下で行われる。
正孔注入層の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下の範囲である。
【0188】
[4]正孔輸送層
正孔輸送層は、正孔注入層がある場合には正孔注入層の上に、正孔注入層が無い場合には陽極の上に形成することができる。また、本発明の有機電界発光素子は、正孔輸送層を省いた構成であってもよい。
正孔輸送層を形成する材料としては、正孔輸送能が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送することができる材料であることが好ましい。そのために、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光の光に対して透明性が高く、正孔移動度が大きく、安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくいことが好ましい。また、多くの場合、発光層に接するため、発光層からの発光を消光したり、発光層との間でエキサイプレックスを形成して効率を低下させたりしないことが好ましい。
【0189】
正孔輸送性化合物としては、上記の点から、特に、本発明の高分子化合物であることが好ましい。本発明の高分子化合物以外の化合物を正孔輸送性化合物として用いる場合、従来、正孔輸送層の構成材料として用いられている材料を用いることができる。従来用いられている材料としては、例えば、前述の正孔注入層に使用される正孔輸送性化合物として例示したものが挙げられる。また、4,4'−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニ
ルアミノ]ビフェニルで代表わされる2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(特開平5−234681号公報)、4,4’,4’’−トリス(1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物(J.Lumin.,72−74巻、985頁、1997年)、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン化合物(Chem.Commun.,2175頁、1996年)、2,2',7,7'−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−9,9'−スピロビフルオレン等のスピロ化合物(Synth.Metals,9
1巻、209頁、1997年)、4,4'−N,N'−ジカルバゾールビフェニルなどのカルバゾール誘導体などが挙げられる。また、例えばポリビニルカルバゾール、ポリビニルトリフェニルアミン(特開平7−53953号公報)、テトラフェニルベンジジンを含有するポリアリーレンエーテルサルホン(Polym.Adv.Tech.,7巻、33頁、1996年)等が挙げられる。
【0190】
湿式成膜で正孔輸送層を形成する場合は、上記正孔注入層の形成と同様にして、正孔輸送層形成用組成物を調製した後、塗布後、加熱乾燥させる。
正孔輸送層形成用組成物には、上述の正孔輸送性化合物の他、溶剤を含有する。用いる溶剤は上記正孔注入層形成用組成物に用いたものと同様である。また、塗布条件、加熱乾燥条件等も正孔注入層の形成の場合と同様である。
【0191】
真空蒸着により正孔輸送層を形成する場合もまた、その成膜条件等は上記正孔注入層の形成の場合と同様である。
正孔輸送層は、上記正孔輸送性化合物の他、各種の発光材料、電子輸送性化合物、バインダー樹脂、塗布性改良剤などを含有していてもよい。
正孔輸送層はまた、架橋性化合物を架橋して形成される層であってもよい。架橋性化合物は、架橋性基を有する化合物であって、架橋することにより網目状高分子化合物を形成する。
【0192】
この架橋性基の例を挙げると、オキセタン基、エポキシ基などの環状エーテル基;ビニル基、トリフルオロビニル基、スチリル基、アクリル基、メタクリロイル基、シンナモイル基等の不飽和二重結合を含む基;ベンゾシクロブテン環由来の基などが挙げられる。
架橋性化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマーのいずれであってもよい。架橋性化合物は1種のみを有していてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で有していてもよい。
【0193】
架橋性化合物としては、架橋性基を有する正孔輸送性化合物を用いることが好ましい。正孔輸送性化合物の例を挙げると、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、カルバゾール誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体等の含窒素芳香族化合物誘導体;トリフェニルアミン誘導体;シロール誘導体;オリゴチオフェン誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが挙げられる。その中でも、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、カルバゾール誘導体等の含窒素芳香族誘導体;トリフェニルアミン誘導体、シロール誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが好ましく、特に、トリフェニルアミン誘導体がより好ましい。
【0194】
架橋性化合物を架橋して正孔輸送層を形成するには、通常、架橋性化合物を溶剤に溶解又は分散した正孔輸送層形成用組成物を調製して、湿式成膜により塗布して架橋させる。
正孔輸送層形成用組成物には、架橋性化合物の他、架橋反応を促進する添加物を含んでいてもよい。架橋反応を促進する添加物の例を挙げると、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシムエステル化合物、アゾ化合物、オニウム塩等の重合開始剤及び重合促進剤;縮合多環炭化水素、ポルフィリン化合物
、ジアリールケトン化合物等の光増感剤;などが挙げられる。
【0195】
また、さらに、レベリング剤、消泡剤等の塗布性改良剤;電子受容性化合物;バインダー樹脂;などを含有していてもよい。
正孔輸送層形成用組成物は、架橋性化合物を通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下含有する。
【0196】
このような濃度で架橋性化合物を含む正孔輸送層形成用組成物を下層(通常は正孔注入層)上に成膜後、加熱及び/又は光などの活性エネルギー照射により、架橋性化合物を架橋させて網目状高分子化合物にする。
塗布時の温度、湿度などの条件、並びに塗布後の加熱条件は、前記<7.有機電界発光素子>[成膜方法]の項に記載の方法と同様である。また、好ましい態様も同様である。
正孔輸送層の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下の範囲である。
【0197】
[5]発光層
発光層は、正孔輸送層が有る場合には正孔輸送層の上に、正孔輸送層が無くて正孔注入層が有る場合には正孔注入層の上に、正孔輸送層と正孔注入層が無い場合には陽極の上に形成される。
発光層は前述の正孔注入層や正孔輸送層、及び後述する正孔阻止層や電子輸送層等とは独立した層であってもよいが、独立した発光層を形成せず、正孔輸送層や電子輸送層など他の有機層が発光層の役割を担ってもよい。
発光層は、電界を与えられた電極間において、陽極から直接に、又は正孔注入層や正孔輸送層等を通じて注入された正孔と、陰極から直接に、又は陰極バッファ層や電子輸送層や正孔阻止層等を通じて注入された電子との再結合により励起されて、主たる発光源となる層である。
【0198】
発光層は、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意の方法で形成することができるが、例えば、湿式成膜法又は真空蒸着法により陽極上に形成される。ただし、大面積の発光素子を製造する場合には、湿式成膜法の方が好ましい。湿式成膜法、及び真空蒸着法の方法は、正孔注入層と同様の方法を用いて行なうことができる。
発光層は、少なくとも、発光の性質を有する材料(発光材料)を含有するとともに、好ましくは、正孔輸送の性質を有する材料(正孔輸送材料)、或いは、電子輸送の性質を有する材料(電子輸送材料)とを含有する。更に、発光層は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、その他の成分を含有していてもよい。これらの材料としては、後述のように湿式成膜法で発光層を形成する観点から、何れも低分子系の材料を使用することが好ましい。
【0199】
発光材料としては、任意の公知の材料を適用可能である。例えば、蛍光発光材料であってもよく、燐光発光材料であってもよいが、内部量子効率の観点から、好ましくは燐光発光材料である。
なお、溶剤への溶解性を向上させる目的で、発光材料の分子の対称性や剛性を低下させたり、或いはアルキル基などの親油性置換基を導入したりすることも、重要である。
以下、発光材料のうち蛍光色素の例を挙げるが、蛍光色素は以下の例示物に限定されるものではない。
【0200】
青色発光を与える蛍光発光材料(青色蛍光色素)としては、例えば、ナフタレン、クリセン、ペリレン、ピレン、アントラセン、クマリン、p−ビス(2−フェニルエテニル)ベンゼン及びそれらの誘導体等が挙げられる。
緑色発光を与える蛍光色素(緑色蛍光色素)としては、例えば、キナクリドン誘導体、
クマリン誘導体、Al(CNO)などのアルミニウム錯体等が挙げられる。
【0201】
黄色発光を与える蛍光発光材料(黄色蛍光色素)としては、例えば、ルブレン、ペリミドン誘導体等が挙げられる。
赤色発光を与える蛍光発光材料(赤色蛍光色素)としては、例えば、DCM(4−(dicyanomethylene)−2−methyl−6−(p−dimethylaminostyryl)−4H−pyran)系化合物、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、アザベンゾチオキサンテン等が挙げられる。
【0202】
燐光発光材料として、具体的には、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム、トリス(2−フェニルピリジン)ルテニウム、トリス(2−フェニルピリジン)パラジウム、ビス(2−フェニルピリジン)白金、トリス(2−フェニルピリジン)オスミウム、トリス(2−フェニルピリジン)レニウム、オクタエチル白金ポルフィリン、オクタフェニル白金ポルフィリン、オクタエチルパラジウムポルフィリン、オクタフェニルパラジウムポルフィリン等が挙げられる。
【0203】
高分子系の発光材料としては、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)-co-(4,4’−(N
−(4−sec−ブチルフェニル))ジフェニルアミン)]、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)-co-(1,4−ベンゾ−2{2,1’−3}−トリアゾール)]などのポリフルオレン系材料、ポリ[2−メトキシ−5−(2−ヘチルヘキシル
オキシ)−1,4−フェニレンビニレン]などのポリフェニレンビニレン系材料が挙げられる。
【0204】
また、本発明の高分子化合物を発光材料として用いることもできる。
発光材料として用いる化合物の分子量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常10000以下、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3000以下、また、通常100以上、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、更に好ましくは400以上の範囲である。発光材料の分子量が小さ過ぎると、耐熱性が著しく低下したり、ガス発生の原因となったり、膜を形成した際の膜質の低下を招いたり、あるいはマイグレーションなどによる有機電界発光素子のモルフォロジー変化を来したりする場合がある。一方、発光材料の分子量が大き過ぎると、有機化合物の精製が困難となってしまったり、溶剤に溶解させる際に時間を要したりする傾向がある。
【0205】
なお、上述した発光材料は、いずれか1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
発光層における発光材料の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、好ましくは0.05重量%以上、好ましくは35重量%以下である。発光材料が少なすぎると発光ムラを生じる可能性があり、多すぎると電流効率が低下する可能性がある。なお、2種以上の発光材料を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
【0206】
低分子系の正孔輸送材料の例としては、前述の正孔輸送層の正孔輸送材料として例示した各種の化合物の他、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルに代表される、2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(特開平5−234681号公報)、4,4’,4” −トリ
ス(1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物(Journal of Luminescence,1997年,Vol.72-74,pp.985)、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン化合物(Chemical Communications,1996
年,pp.2175)、2,2’,7,7’−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−9, 9’−スピロビフルオレン等のスピロ化合物(Synthetic Metals,1997年,Vol.91,pp.209)
等が挙げられる。
【0207】
低分子系の電子輸送材料の例としては、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール(BND)や、2,5−ビス(6’−(2’,2”−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロール(PyPySPyPy)や、バソフェナントロリン(BPhen)や、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP、バソクプロイン)、2−(4−ビフェニリル)−5−(p−ターシャルブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(tBu−PBD)や、4,4’−ビス(9−カルバゾール)−ビフェニル(CBP)、9,10-ジ-(2-ナフチル)アントラセン(ADN)等がある。
【0208】
これら正孔輸送材料や電子輸送材料は発光層においてホスト材料として使用されることが好ましい。ホスト材料の具体例としては、特開2007−067383号公報、特開2007−88433号公報、特開2007−110093号公報に記載のものが挙げられ、その好適例も同様である。
【0209】
発光層の形成法としては、湿式成膜法、真空蒸着法が挙げられるが、上述したように、均質で欠陥がない薄膜を容易に得られる点や、形成のための時間が短くて済む点、更には、本発明の有機化合物による正孔輸送層の架橋の効果を享受できる点から、湿式成膜法が好ましい。湿式成膜法により発光層を形成する場合、上述の材料を適切な溶剤に溶解させて塗布溶液を調製し、それを上述の形成後の正孔輸送層の上に塗布・成膜し、乾燥して溶剤を除去することにより形成する。その形成方法としては、前記正孔輸送層の形成方法と同様である。
発光層の膜厚は、通常3nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常300nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。
【0210】
[6]正孔阻止層
発光層5と後述の電子注入層8との間に、正孔阻止層6を設けてもよい。正孔阻止層6は、発光層5の上に、発光層5の陰極9側の界面に接するように積層される層である。
この正孔阻止層6は、陽極2から移動してくる正孔を陰極9に到達するのを阻止する役割と、陰極9から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送する役割とを有する。
正孔阻止層6を構成する材料に求められる物性としては、電子移動度が高く正孔移動度が低いこと、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いことが挙げられる。このような条件を満たす正孔阻止層の材料としては、例えば、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(トリフェニルシラノラト)アルミニウム等の混合配位子錯体、ビス(2−メチル−8−キノラト)アルミニウム−μ−オキソ−ビス−(2−メチル−8−キノリラト)アルミニウム二核金属錯体等の金属錯体、ジスチリルビフェニル誘導体等のスチリル化合物(特開平11−242996号公報)、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール誘導体(特開平7−41759号公報)、バソクプロイン等のフェナントロリン誘導体(特開平10−79297号公報)などが挙げられる。更に、国際公開第2005−022962号パンフレットに記載の2,4,6位が置換されたピリジン環を少なくとも1個有する化合物も、正孔阻止層6の材料として好ましい。
【0211】
なお、正孔阻止層6の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
正孔阻止層6の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法
で形成できる。
正孔阻止層6の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.3nm以上、好ましくは0.5nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。
【0212】
[7]電子輸送層
電子輸送層は素子の電流効率をさらに向上させることを目的として、発光層と電子注入層との間に設けられる。
電子輸送層は、電界を与えられた電極間において陰極から注入された電子を効率よく発光層の方向に輸送することができる化合物より形成される。電子輸送層に用いられる電子輸送性化合物としては、陰極又は電子注入層からの電子注入効率が高く、かつ、高い電子移動度を有し注入された電子を効率よく輸送することができる化合物であることが必要である。
【0213】
このような条件を満たす材料としては、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体(特開昭59−194393号公報)、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3−又は5−ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン(米国特許第5,645,948号明細書)、キノキサリン化合物(特開平6−207169号公報)、フェナントロリン誘導体(特開平5−331459号公報)、2−t−ブチル−9,10−N,N’−ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛などが挙げられる。
【0214】
電子輸送層の膜厚は、通常下限は1nm、好ましくは5nm程度であり、上限は通常300nm、好ましくは100nm程度である。
電子輸送層は、前記と同様にして湿式成膜法、或いは真空蒸着法により正孔阻止層上に積層することにより形成される。通常は、真空蒸着法が用いられる。
【0215】
[8]電子注入層
電子注入層は、陰極から注入された電子を効率よく、電子輸送層又は発光層へ注入する役割を果たす。
電子注入を効率よく行うには、電子注入層を形成する材料は、仕事関数の低い金属が好ましい。例としては、ナトリウムやセシウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウムなどのアルカリ土類金属等が用いられる。その膜厚は通常0.1nm以上、5nm以下が好ましい。
更に、後述するバソフェナントロリン等の含窒素複素環化合物や8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体に代表される有機電子輸送材料に、ナトリウム、カリウム、セシウム、リチウム、ルビジウム等のアルカリ金属をドープする(特開平10−270171号公報、特開2002−100478号公報、特開2002−100482号公報などに記載)ことにより、電子注入・輸送性が向上し優れた膜質を両立させることが可能となるため好ましい。この場合の膜厚は通常、5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常200nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。
【0216】
電子注入層は、湿式成膜法或いは真空蒸着法により、発光層又はその上の正孔阻止層上に積層することにより形成される。
湿式成膜法の場合の詳細は、正孔注入層及び発光層の場合と同様である。
一方、真空蒸着法の場合には、真空容器内に設置されたるつぼ又は金属ボートに蒸着源を入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10−4Pa程度にまで排気した後、るつぼ又は金属ボートを加熱して蒸発させ、るつぼ又は金属ボートと向き合って置かれた基板上の
発光層、正孔阻止層又は電子輸送層上に電子注入層を形成する。
【0217】
電子注入層としてのアルカリ金属の蒸着は、クロム酸アルカリ金属と還元剤をニクロムに充填したアルカリ金属ディスペンサーを用いて行う。このディスペンサーを真空容器内で加熱することにより、クロム酸アルカリ金属が還元されてアルカリ金属が蒸発される。有機電子輸送材料とアルカリ金属とを共蒸着する場合は、有機電子輸送材料を真空容器内に設置されたるつぼに入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10−4Pa程度にまで排気した後、各々のるつぼ及びディスペンサーを同時に加熱して蒸発させ、るつぼ及びディスペンサーと向き合って置かれた基板上に電子注入層を形成する。
このとき、電子注入層の膜厚方向において均一に共蒸着されるが、膜厚方向において濃度分布があっても構わない。
【0218】
[9]陰極
陰極は、発光層側の層(電子注入層又は発光層など)に電子を注入する役割を果たす。陰極の材料としては、前記の陽極に使用される材料を用いることが可能であるが、効率よく電子注入を行うには、仕事関数の低い金属が好ましく、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属又はそれらの合金が用いられる。具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数合金電極が挙げられる。
【0219】
陰極の膜厚は通常、陽極と同様である。
低仕事関数金属から成る陰極を保護する目的で、この上に更に、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層すると、素子の安定性が増すので好ましい。この目的のために、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。
[10]その他
以上、図1に示す層構成の有機電界発光素子を例に説明してきたが、本発明の有機電界発光素子は、その趣旨を逸脱しない範囲において、別の構成を有していてもよい。例えば、その性能を損なわない限り、陽極と陰極との間に、上記説明にある層の他に任意の層を有していてもよく、また、任意の層が省略されていてもよい。
【0220】
なお、本発明においては、正孔輸送層に本発明の高分子化合物を使用することにより、正孔注入層、正孔輸送層及び発光層を全て湿式成膜法により積層形成することができる。これにより、大面積のディスプレイを製造することが可能となる。
なお、図1とは逆の構造、即ち、基板上に陰極、電子注入層、発光層、正孔注入層、陽極の順に積層することも可能であり、既述したように少なくとも一方が透明性の高い2枚の基板の間に本発明の有機電界発光素子を設けることも可能である。
【0221】
さらには、図1に示す層構成を複数段重ねた構造(発光ユニットを複数積層させた構造)とすることも可能である。その際には段間(発光ユニット間)の界面層(陽極がITO、陰極がAlの場合はその2層)の代わりに、例えばV25等を電荷発生層(CGL)として用いると段間の障壁が少なくなり、電流効率・駆動電圧の観点からより好ましい。
本発明は、有機電界発光素子が、単一の素子、アレイ状に配置された構造からなる素子、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構造のいずれにおいても適用することができる。
【0222】
<有機ELディスプレイ及び有機EL照明>
本発明の有機ELディスプレイ及び有機EL照明は、上述のような本発明の有機電界発光素子を用いたものである。本発明の有機ELディスプレイ及び有機EL照明の型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
【0223】
例えば、「有機ELディスプレイ」(オーム社、平成16年8月20日発行、時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載されているような方法で、本発明の有機ELディスプレイ及び有機EL照明を形成することができる。
【実施例】
【0224】
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明はその要旨を逸脱しない限り任意に変更して実施できる。なお、以下の説明においては、特に断らない限り、dbaはジベンジリデンアセトンを表し、tBuはt−ブチル基を表し、THFはテトラヒドロフランを表し、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、iPrはi−プロピル基を表し、Phはフェニル基を表し、Acはアセチル基を表し、DMSOはジメチルスルホキシドを表し、TBABはテトラブチルアンモニウムブロマイドを表し、DMEはジメトキシエタンを表し、TfOは無水トリフルオロメタンスルホン酸を表し、DMFはジメチルフォルムアミドを表し、dppfは1,1’−ジフェニルホスフィノフェロセンを表し、NBSはN−ブロモスクシンイミドを表す。
【0225】
[合成例]
以下に、本発明の高分子化合物の合成例を示す。
[モノマーの合成]
(合成例1)
【0226】
【化44】

【0227】
化合物1(10.0g)、化合物2(16.3g)、ジメチルスルホキシド80mlに、水酸化カリウムを加え、室温で6時間攪拌した。反応液に酢酸エチル(100ml)及び水(100ml)を加え攪拌後、分液し、水層を酢酸エチル(100ml×2回)で抽出し、有機層を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。さらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル=10/1)で精製することにより、目的物1(13.3g)を得
た。
(合成例2)
【0228】
【化45】

【0229】
窒素気流中、目的物1(3.0g)、化合物3(1.44g)、ナトリウム−tert−ブトキシド(1.13g)、トルエン(50ml)を、60℃に加熱下、30分間撹拌
し、トリス(ジベンジリデン)ジパラジウム(0)クロロホルム錯体(0.09g)及びトリ−tert−ブチルホスフィン(0.07g)を加え、加熱還流下、3時間撹拌した。室温まで放冷した後、反応液にトルエン(100ml)及び水(100ml)を加え攪拌後、分液し、水層をトルエン(100ml×2回)で抽出し、有機層を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。さらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル=10/1)で精製することにより、目的物2(3.4g)を得た。
(合成例3)
【0230】
【化46】

【0231】
窒素気流中、−5℃で目的物2(3.4g)及びDMF100mlに、NBSを30mlDMFに溶かして滴下し、この温度で2時間攪拌した。反応液に酢酸エチル(100ml)及び水(100ml)を加え攪拌後、分液し、水層を酢酸エチル(100ml×2回)で抽出し、有機層を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。さらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル=10/1)で精製することにより、目的物3(2.3g)を得た。
(合成例4)
【0232】
【化47】

【0233】
窒素気流中、ピレン(10.11g)、ジメトキシエタン(400ml)を加えて氷浴で0℃に冷却しながら撹拌し、ジメトキシエタン50mlに溶解させた臭素(15.18g)を滴下し、室温まで昇温して8時間撹拌させた後、一晩放置した。析出した結晶を濾取し、エタノール懸洗を行い、トルエンにより再結晶することによって、目的物4(1,6−ジブロモピレン及び1,8−ジブロモピレンの混合物)(5.8g)を得た。
【0234】
1H NMR(CDCl,400MHz)
1,8−ジブロモピレン
δ8.53(s,2H)、8.28(d,2H, J=8.40)、8.05(d,2 H,J=8.00)、8.04(s,2H)
1,6−ジブロモピレン
δ8.47(d,2H,J=9.60)、8.27(d,2H,J=8.40)、8.13(d,2H,J=9.20)、8.06(d,2H,J=8.40)
(合成例5)
【0235】
【化48】

【0236】
反応容器内にフッ化カリウム(23.01g)を仕込み、減圧下、加熱乾燥と窒素置換とを繰り返して系内を窒素雰囲気とした。3−ニトロフェニルボロン酸(6.68g)、4−ブロモ−ベンゾシクロブテン(7.32g)、及び脱水テトラヒドロフラン(50ml)を仕込み、撹拌した。そこへ、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.21g)を加え、さらに系内を十分に窒素置換して、室温でトリ−t−ブチルホスフィン(0.47g)を加え、添加終了後、そのまま1時間攪拌させた。反応終了後、反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を2回水洗し、硫酸ナトリウムを加え脱水乾燥し、濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)にて精製し、目的物5(8.21g)を得た。
(合成例6)
【0237】
【化49】

【0238】
目的物5(8.11g)、テトラヒドロフラン36ml、エタノール36ml、及び10%Pd/C(1.15g)を仕込み、70℃で加熱撹拌した。そこへヒドラジン一水和物(10.81g)をゆっくり滴下した。2時間反応後、放冷し、反応液をセライトでろ過して濾液を濃縮した。この濾液に酢酸エチルを加え、水で洗浄し、有機層を濃縮した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)にて精製することにより、目的物6(4.90g)を得た。
(合成例7)
【0239】
【化50】

【0240】
2−ニトロフルオレン(25.0g)、1−ブロモヘキサン(58.61g)、テトラブチルアンモニウムブロマイド(7.63g)、及びジメチルスルホキシド(220ml)を仕込み、17M水酸化ナトリウム水溶液(35ml)をゆっくり滴下し、室温で3時間反応させた。反応液に、酢酸エチル(200ml)及び水(100ml)を加え攪拌後
、分液し、水層を酢酸エチルで抽出し、有機層を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製することにより、目的物7(44.0g)を得た。
(合成例8)
【0241】
【化51】

【0242】
目的物7(44.0g)、テトラヒドロフラン(120ml)、及びエタノール(120ml)に10%Pd/C(8.6g)を加え、50℃で加熱攪拌した。そこへ、ヒドラジン一水和物(58.0g)をゆっくり滴下し、この温度で3時間反応した。反応液を放冷し、セライトによる減圧濾過し、ろ液を濃縮して残渣をメタノールを添加し、晶出した結晶を濾取して乾燥することにより、目的物8(34.9g)を得た。
(合成例9)
【0243】
【化52】

【0244】
窒素を通じた200mL4つ口フラスコにジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)(212mg、0.03等量)、及びヨウ化銅(104mg、0.02等量)を入れ、これにあらかじめ窒素をバブリングして脱気したジオキサン75mLを入れて攪拌した。この液にトリ−t−ブチルホスフィン(331mg、0.06等量)を添加して15分、室温で攪拌した。この溶液にジ−i−プロピルアミン(3.31g、1.2等量)、4−ブロモベンゾシクロブテン5.00g(1.0等量)、及び1,7−オクタジイン20.3g(7.0等量)を加えて室温下9時間反応させた。得られた反応混合物を400Paの減圧下、バス温60℃で軽沸分を留去した後、飽和食塩水50mL、1N塩酸5mLを添加し、酢酸エチル(30mL)で3回抽出し、得られた酢酸エチル層を飽和食塩水(30mL)で2回洗浄した。酢酸エチル層を濃縮すると粗成生物(7.7g)が得られた。この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶剤:n−ヘキサン/酢酸エチル混合溶剤)にて精製することにより2.78g(48.9%収率、ガスクロマトグラフィーで分析した純度95.4%)の目的物9を無色の油状物として得た。
(合成例10)
【0245】
【化53】

【0246】
窒素を通じた100mL4つ口フラスコにm−ヨウ化ニトロベンゼン(3.64g、1.1等量)、炭酸カリウム(5.06g、2.75等量)、ヨウ化銅(111mg、0.044等量)、トリフェニルホスフィン307mg(0.088等量)、5%Pd/C623mg(Pdとして0.022等量)を入れ、これにあらかじめ窒素をバブリングして脱気したジメトキシエタン/水=1/1(体積比)の混合溶剤を95mL入れて室温下、1時間攪拌した。この液に目的物9(2.77g、1.0等量)をジメトキシエタン2mLに溶解させた溶液を添加し、70℃のバス(内温63℃)で7時間加熱反応した。得られた反応混合物は、セライトを通してろ過した後、エバポレーターで濃縮、1N塩酸25mLを添加して酢酸エチル(30mL)で3回抽出、得られた酢酸エチル層を飽和食塩水(20mL)で3回洗浄した。酢酸エチル層を濃縮して得られた粗生成物を酢酸エチル−n−ヘキサンの混合溶剤から再結晶して2.50g(57.1%収率、液体クロマトグラフィーで分析した純度99.5%)の目的物10をごく薄い黄色の針状結晶として得た。
(合成例11)
【0247】
【化54】

【0248】
100mLナスフラスコに目的物10(2.31g)、テトラヒドロフラン15mL、及びエタノール15mLを添加して溶解させた。この溶液に水素化触媒としてラネーニッケル1.07g(日興リカ社製、R−200)を添加、水素で3回置換後、水素下、室温で35時間反応させた。反応液を、セライトを通してろ過、濃縮して2.8gの粗生成物を得た。この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶剤:n−ヘキサン/酢酸エチル混合溶剤)にて精製することにより1.72g(80.1%収率、液体クロマトグラフィーで分析した純度99.1%)の目的物11を白色の針状結晶として得た。
(合成例12)
【0249】
【化55】

【0250】
窒素気流中、3−ブロモスチレン(5.0g)、3−ニトロフェニルボロン酸(5.5g)、トルエン:エタノール(80ml:40ml)、及び2M炭酸ナトリウム水溶液(20ml)を仕込み、60℃に加熱下、30分間撹拌して脱気した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.95g)を加え、6時間還流した。室温まで放冷した後、反応液に塩化メチレン(100ml)及び水(100ml)を加え攪拌後、分液し、水層を塩化メチレンで抽出し、有機層を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/塩化メチレン)で精製することにより、目的物12(5.5g)を得た。
(合成例13)
【0251】
【化56】

【0252】
窒素気流中、目的物12(2.5g)、酢酸(60ml)、エタノール(60ml)、1N塩酸(2ml)、水(8ml)及び還元鉄(12.4g)を仕込み、1時間加熱還流した。室温で反応液を濾過し、酢酸エチル(100ml)及び水(100ml)を加え攪拌後、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液で中和し、分液し、水層を酢酸エチルで抽出し、有機層を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル)で精製することにより、目的物13(2.1g)を得た。
(合成例14)
【0253】
【化57】

【0254】
窒素気流中、1,2−ジブロモベンゼン(21.0g)、3−メトキシフェニルボロン酸(29.9g)、トルエン:エタノール(147ml:147ml)、及び2M炭酸ナトリウム水溶液(295ml)を仕込み、60℃に加熱下、30分間撹拌して脱気した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(6.17g)を加え、6時間還流した。室温まで放冷した後、水を加え攪拌後、分液し、水層をトルエンで抽出し、有機層を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/塩化メチレン)で精製することにより、中間体1(15.5g)を得た。
【0255】
中間体1(15.5g)を塩化メチレン(70ml)に溶解させ、濃硫酸(1.4g)を添加した。塩化鉄(21.6g)を少量ずつゆっくりと加えた。7時間、反応後、塩化メチレン(100ml)を加え、冷メタノールに添加し、析出している結晶を濾別した。粗結晶を塩化メチレン(250ml)に溶解させ、1N塩酸(100ml)にて洗浄し、有機層をセライト濾過したのちに濃縮し、メタノールで懸洗して中間体2(7.41g)を得た。
【0256】
中間体2(7.41g)を塩化メチレン(110ml)に溶解させ、氷冷下、三臭化ホウ素(1M塩化メチレン溶液:65ml)を加えて、3時間攪拌した。反応液に水を加えて酢酸エチルで抽出し、有機層を水洗、硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。析出した結晶を塩化メチレン/酢酸エチル(5/1)溶液にて懸洗し、中間体3(6.58g)を得た。
【0257】
中間体3(6.58g)に塩化メチレン(130ml)を加え、無水トリフルオロメタンスルホン酸(17.8g)を添加した。さらにピリジン(4.4g)をゆっくりと加え、室温にて5時間反応した。析出している結晶を濾別し、水洗、メタノール懸洗、塩化メチレン/メタノール(1/9)懸洗2回を行い、中間体4(5.9g)を得た。
窒素気流中、中間体4(3.88g)、4−ニトロフェニルボロン酸(2.72g)、トルエン:エタノール(48ml:48ml)、及び2M炭酸ナトリウム水溶液(24ml)を仕込み、40℃に加熱下、30分間撹拌して脱気した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.53g)を加え、6時間還流した。室温まで放冷した後、水を加え攪拌後、析出している結晶を濾別した。さらに酢酸エチルで懸洗することにより、中間体5(2.35g)を得た。
【0258】
中間体5(2.35g)をN,N−ジメチルホルムアミド(195ml)に溶解させ、5%Pd/C(1.06g)を仕込み、水素で系内を置換後、水素下、70℃で4時間反応させた。反応液を窒素置換後、セライト濾過し、濾液を約30mlまで濃縮し、メタノールに添加した。さらに水を添加して晶出した結晶を濾別することにより、目的物14(1.03g)を得た。
(合成例15)
【0259】
【化58】

【0260】
目的物14(1.82g)、2−ブロモ−9,9−ジヘキシルフルオレン(3.7g)、及びtert−ブトキシナトリウム(0.94g)、及びトルエン(25ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、50℃まで加温した(溶液A)。
一方、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.09g)のトルエン4ml溶液に、ジフェニルホスフィノフェロセン(0.20g)を加え、50℃まで加温した(溶液B)。
【0261】
窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、5時間、加熱還流反応した。原料が消失したことを確認し、テトラヒドロフランを加えてセライト濾過し、濾液を濃縮し、シリカゲルカ
ラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル)にて精製し、得られた粗結晶をn−ヘキサン、メタノールにて懸洗して、目的物15(1.34g)を得た。
(合成例16)
【0262】
【化59】

【0263】
目的物15(0.50g)、3−(3−ブロモフェニル)ベンゾシクロブテン(0.63g)、tert−ブトキシナトリウム(0.26g)、及びトルエン(15ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、50℃まで加温した(溶液A)。
一方、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.02g)のトルエン1ml溶液に、ジフェニルホスフィノフェロセン(0.05g)を加え、50℃まで加温した(溶液B)。
【0264】
窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、6時間、加熱還流反応した。原料が消失したことを確認し、テトラヒドロフランを加えてセライト濾過し、濾液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル)にて精製することにより、目的物16(0.12g)を得た。
(合成例17)
【0265】
【化60】

【0266】
窒素気流中、目的物12(2.8g)、4−ブロモベンゾシクロブテン(3.65g)、炭酸カリウム(2.73g)、(n−CBr(2.67g)、脱水DMF(76ml)、及びパラジウム触媒 Pd(diphenylClNOH)Cl15.1mgを130℃8時間反応後、室温で反応液に酢酸エチル(100ml)及び水(100ml)を加え攪拌後、分液し、水層を酢酸エチル(100ml)で2回抽出し、有機層を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。さらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル=10/1)で精製することにより、目的物17(trans、1.7g、LC:98%)を得た。
(合成例18)
【0267】
【化61】

【0268】
窒素気流中、目的物17(1.6g)、酢酸(30ml)、エタノール(30ml)、塩酸(1N、1ml)、水(4ml)及び還元鉄(5.5g)を2時間還流した。室温で反応液を濾過し、酢酸エチル(100ml)及び水(100ml)を加え攪拌後、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液で中和し、分液し、水層を酢酸エチル(50ml)で2回抽出し、有機層を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。さらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル=3/1)で精製することにより、目的物18(1.3g)を得た。
(合成例19)
【0269】
【化62】

【0270】
反応容器内に3−ブロモフェニルボロン酸(10.0g)、m−ジヨードベンゼン(8.21g)、炭酸ナトリウム(15.83g)、トルエン(150mL)、エタノール(150mL)、水(75mL)を仕込み、減圧脱気を行った後、窒素雰囲気下、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1.726g)を加えた。80℃で約4.5時間攪拌した後、室温まで放冷した。反応液に水を加え、酢酸エチル−ヘキサン混合溶剤で抽出後、得られた有機層を濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)にて精製し、目的物19(7.39g)を得た。
(合成例20)
【0271】
【化63】

【0272】
窒素雰囲気下、p−ジブロモベンゼン(50g)、THF(740mL)を仕込み、−78℃に冷却した。1.55Mのn−ブチルリチウムヘキサン溶液(125.7mL)を
約40分かけて滴下した。さらに約1時間攪拌した後、アントラキノン(15.44g)を加えた。さらに約3時間攪拌後、約1時間かけて室温まで昇温した。さらに約3.5時間撹拌した後、水(100mL)を加え、THFを減圧留去した。酢酸エチルで抽出し、有機層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥、ろ過、濃縮した。得られた粗生成物を、塩化メチレン−ヘキサン混合溶剤で懸濁洗浄した後、次いでメタノールで懸濁洗浄することにより、目的物20(25.8g)を得た。
(合成例21)
【0273】
【化64】

【0274】
窒素雰囲気下、目的物20(25.7g)、酢酸(400mL)、及び亜鉛粉末(27.4g)を仕込み、加熱還流した。8時間後、酢酸(190mL)を追加し、さらに約8時間加熱還流した。室温まで放冷し、水(400mL)を加え、ろ取、水洗した。得られた固体を塩化メチレン(2.5L)に懸濁し、不溶物をろ別し、ろ液を濃縮した。得られた粗生成物を塩化メチレン(3L)に溶解させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン)で精製した後、塩化メチレンで懸濁洗浄、次いでクロロホルム懸濁洗浄を行うことにより、目的物21(10.7g)を得た。
(合成例22)
【0275】
【化65】

【0276】
窒素雰囲気下、m−ジブロモベンゼン(25g)、THF(370mL)を仕込み、−78℃に冷却した。1.6Mのn−ブチルリチウムヘキサン溶液(61mL)を約10分かけて滴下した。さらに約1時間攪拌した後、アントラキノン(7.72g)を加えた。さらに約1時間攪拌後、約1時間かけて室温まで昇温した。さらに約3.5時間撹拌した後、水(150mL)を加え、THFを減圧留去した。酢酸エチルで抽出し、有機層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥、ろ過、濃縮した。得られた粗生成物を、塩化メチレン−ヘキサン混合溶剤で懸濁洗浄することにより、目的物22(17.4g)を得た。
(合成例23)
【0277】
【化66】

【0278】
窒素雰囲気下、目的物22(17.4g)、酢酸(242mL)、及び亜鉛粉末(18.6g)を仕込み、加熱還流した。10.5時間後、室温まで放冷し、水(250mL)を加え、ろ取、水洗した。得られた固体を塩化メチレン(500mL)に懸濁し、不溶物をろ別し、ろ液を濃縮し、ヘキサンで懸濁洗浄した。得られた粗生成物を塩化メチレン(200mL)に溶解させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン)に供した。得られた固体を1,2−ジメトキシエタン(102mL)に加熱還流下で完全に溶解させ、ゆっくりと室温まで冷却し、析出した固体をろ取することにより、目的物23(3.7g)を得た。
(合成例24)
【0279】
【化67】

【0280】
反応容器内に1,3,5−トリブロモベンゼン(22g)、3−ビフェニルボロン酸(4.95g)、トルエン(110ml)、及びエタノール(100ml)を仕込み窒素バブリングを10分行い脱気を行った。別の容器に炭酸ナトリウム(7.9g)と水(38ml)を加え攪拌しながら、窒素バブリングにより脱気を行った。この水溶液を反応容器に加え、すぐにテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(866mg)を加えて昇温し加熱還流を行った。反応終了後、反応液に水を加え、トルエンで抽出した。得られた有機層に硫酸ナトリウムを加え脱水乾燥し、濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ジクロロメタン)にて精製し、目的物24(7.51g)を得た。
(合成例25)
【0281】
【化68】

【0282】
目的物24(7.0g)、ビス(ピナコラト)ジボロン(11.68g)酢酸カリウム(9.71g)、ジメチルフォルムアミド(100ml)を加え窒素バブリングをしながら攪拌を開始した。15分後、窒素バブリングをフローに変え、PdCl(dppf)・CHCl(660mg)を加え80℃まで昇温した。反応終了後放冷し、ジクロロメタンと水により抽出洗浄を行い、硫酸ナトリウムにより乾燥後濃縮した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)にて精製することにより、目的物25(10g)を得た。
(合成例26)
【0283】
【化69】

【0284】
反応容器内に目的物25(5.8g)、4−ブロモヨードベンゼン(7.5g)、トルエン(72ml)、及びエタノール(72ml)を仕込み窒素バブリングを10分行い脱気を行った。別の容器に炭酸ナトリウム(7.6g)と水(36ml)を加え攪拌しながら、窒素バブリングにより脱気を行った。この水溶液を反応容器に加え、すぐにテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1.0g)を加えて昇温し加熱還流を行った。反応終了後、反応液に水を加え、ジクロロメタンで抽出した。得られた有機層に硫酸ナトリウムを加え脱水乾燥し、濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)にて精製し、目的物26(3.9g)を得た。
(合成例27)
【0285】
【化70】

【0286】
反応容器内にトルエン(100ml)、エタノール(50ml)、4−ブロモフェニルボロン酸(9.99g)、1,3−ジヨードベンゼン(8.41g)、炭酸ナトリウム(8.41g)、及び水35mlを仕込み、窒素を吹き込み系内を十分に窒素雰囲気として、撹拌した。そこへ、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.884g)を加えて昇温し、7時間加熱還流させた。
【0287】
反応終了後、反応液に水を加えトルエンで抽出した。得られた有機層を2回水洗し、硫酸ナトリウムを加え脱水乾燥し、濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/トルエン)にて精製し、目的物27(3.54g)を得た。
(合成例28)
【0288】
【化71】

【0289】
反応容器内に9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジボロン酸(3.0g、7.1mmol)、4−ブロモヨードベンゼン(4.42g、15.6mmol)、トルエン(45ml)、エタノール(45ml)を仕込み、減圧下、窒素置換を繰り返し系内を窒素雰囲気とした。さらに系内を十分に窒素置換して、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.54g、0.5mmol)を添加し、脱気処理をした炭酸ナトリウム(4.52g、43mmol)の水溶液(22ml)を添加し、6時間反応させた。反応終了後、反応液に水を加え、トルエンで抽出した。得られた有機層を2回水洗し、硫酸ナトリウムを加え脱水乾燥し、濃縮した。粗生成物をn−ヘキサンで洗浄し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/塩化メチレン)にて精製し、さらに塩化メチレン/メタノール懸洗を行い、目的物28(3.15g)を得た。
(合成例29)
【0290】
【化72】

【0291】
窒素雰囲気下の反応容器中にジクロロメタン(200ml)を加え、N−フェニルカルバゾール(2.29g)とビス(ピリジン)ヨードニウムテトラフロロボラート(7.76g)を溶解させた。次に、氷冷下でトリフロロメタンスルホン酸(1.75ml)を滴下投入し、徐々に室温まで上げながら一昼夜攪拌した。反応終了後、反応液に0.5Mチオ硫酸ナトリウム水溶液を加え、ジクロロメタンで抽出した。得られた有機層を水洗し、硫酸ナトリウムを加え脱水乾燥し、濃縮した。粗生成物のジクロロメタン溶液にメタノールを加えて再沈殿させ、メタノール還流条件で沈殿物を洗浄し、目的物29(4.00g
)を得た。
(合成例30)
【0292】
【化73】

【0293】
目的物29(4.00g)、p−ブロモフェニルボロン酸(3.05g)、トルエン(30ml)、エタノール(15ml)、及び2.6M炭酸ナトリウム水溶液(20ml)を加え、超音波洗浄器で振動を与えながら真空脱気し、窒素で系内を置換した。そこへ、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.27g)を加え75℃で3時間加熱撹拌した。反応終了後、反応液に水を加え、ジクロロメタンで抽出した。得られた有機層を硫酸ナトリウムを加え脱水乾燥し、濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/ジクロロメタン)にて単離し、熱ジメトキシエタンからの再結晶精製により目的物30(2.25g)を得た。
(合成例31)
【0294】
【化74】

【0295】
窒素雰囲気下の反応容器中にジエチルエーテル(100ml)を加え、3,3’−ジブロモ−1,1’−ビフェニル(9.00g)を溶解させ、−78℃に冷却した。そこへ1.6M n−ブチルリチウム ヘキサン溶液(40ml)を15分かけて滴下投入し、−78℃で1時間攪拌した後、0℃まで昇温して更に2時間攪拌した。一方、窒素雰囲気下でホウ酸トリメチル(33ml)をジエチルエーテル(160ml)に溶かし−78℃に冷却した溶液を別の容器で調製し、そこへ上述の混合液を45分かけて滴下投入し、液温度を徐々に室温に戻しながら4時間攪拌した。反応終了後、0℃で反応液に3N塩酸(144ml)を徐々に加え、室温で4時間攪拌後、白色沈殿を3Gガラスロートで回収した。水とジエチルエーテルで洗浄後乾燥し、目的物31(3.16g)を得た。
(合成例32)
【0296】
【化75】

【0297】
目的物31(2.85g)、p−ヨードブロモベンゼン(6.68g)、トルエン(40ml)、エタノール(20ml)、及び2.6M炭酸ナトリウム水溶液(30ml)を加え、超音波洗浄器で振動を与えながら真空脱気し、窒素で系内を置換した。そこへ、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.41g)を加え75℃で6時間加熱撹拌した。反応終了後、反応液に水とトルエンを加え、トルエン層を0.1N塩酸と水で洗浄し、硫酸ナトリウムを加え脱水乾燥し、濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/クロロホルム)にて単離し、目的物32(3.01g)を得た。
[高分子化合物の合成]
(合成例33)
【0298】
【化76】

【0299】
窒素気流中、化合物4(2.512g)、目的物3(0.302g)、化合物5(1.033g)、目的物4(0.792g、1,8−ジブロモピレン:1,6−ジブロモピレン=37:63)、トルエン(40ml)の溶液に、20%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(20ml)を加え、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.058g)を加えて、加熱還流下、8時間攪拌した。放冷後、エタノールに反応液を添加し、析出した租ポリマー1を濾取、乾燥した。窒素気流中、租ポリマー1、ブロモベンゼン(0.140g)、トルエン(100ml)の溶液に、20%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(50ml)を加え、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.058g)を加えて、加熱還流下、2.5時間攪拌した。続いて、フェニルボロン酸(0.610g)を加え、加熱還流下、6時間攪拌した。放冷後、トルエン及び水を加え、有機層を50mlになるまで濃縮後、エタノールを添加し、析出した粗ポリマーを濾取、乾燥した後、トルエン及びテトラヒドロフランを展開溶剤としたシリカゲルカラムによって精製し、テトラヒドロフラン溶液からエタノールに再沈殿、濾取、乾燥することによって、目的ポリマー1(2.20g)を得た。
【0300】
重量平均分子量(Mw)=26,000
数平均分子量(Mn)=13,000
分散度(Mw/Mn)=2.0
(合成例34)
【0301】
【化77】

【0302】
アニリン(1.98g、21.3mmol)、合成例6で得られた目的物6(0.22g、1.1mmol)、2,7−ジブロモ−9,9−ジヘキシルフルオレン(5.52g、11.2mmol)、及びtert−ブトキシナトリウム(6.90g、71.8mmol)、トルエン(51ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、50℃まで加温した(溶液A)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.23g、0.2mmol)のトルエン15ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.37g、1.8mmol)を加え、50℃まで加温した(溶液B)。窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、1時間、加熱還流反応した。原料が消失したことを確認し、4,4’−ジブロモビフェニル(3.29g、10.5mmol)を追添加した。1時間加熱還流した後、重合が始まったことが確認できたので、さらに、4,4’−ジブロモビフェニル(0.07g、0.2mmol)を1時間おきに計3回(計0.21g)追添加した。
4,4’−ジブロモビフェニルを全量添加後、さらに30分間加熱還流し、反応液を放冷して、反応液をエタノール水溶液(エタノール300ml+水50ml)中に滴下し、粗ポリマー2を晶出させた。
【0303】
得られた粗ポリマー2をトルエン140mlに溶解させ、ブロモベンゼン(0.70g、4.5mmol)、tert−ブトキシナトリウム(3.45g、35.9mmol)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、50℃まで加温した(溶液C)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.11g、0.1mmol)のトルエン8ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.19g、0.9mmol)を加え、50℃まで加温した(溶液D)。窒素気流中、溶液Cに溶液Dを添加し、2時間、加熱還流反応した。この反応液に、N,N−ジフェニルアミン(3.80g、22.5mmol)のトルエン(2ml)溶液を添加し、さらに、6時間、加熱還流反応した。反応液を放冷し、エタノール水溶液(エタノール300ml+50ml)中に滴下し、末端残基をキャップした粗ポリマー2を得た。
【0304】
この末端残基をキャップした粗ポリマー2をトルエンに溶解し、アセトンに再沈殿し、析出したポリマーを濾別した。得られたポリマーをトルエンに溶解させ、希塩酸にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿した。濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより2回精製し、目的ポリマー2を得た(1.38g)。
重量平均分子量(Mw)=67850
数平均分子量(Mn)=35400
分散度(Mw/Mn)=1.92
(合成例35)
【0305】
【化78】

【0306】
合成例8で得られた目的物8(3.64g、10.4mmol)、合成例6で得られた目的物6(0.51g、2.6mmol)、4,4’−ジブロモビフェニル(2.03g、13mmol)、tert−ブトキシナトリウム(2.88g、30.0mmol)、及びトルエン(20ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、50℃まで加温した(溶液A)。
【0307】
一方、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.148g、0.0143mmol)のトルエン15ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.210g、0.104mmol)を加え、50℃まで加温した(溶液B)。
窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、1時間、加熱還流反応した。原料が消失したことを確認し、4,4’−ジブロモビフェニル(1.91g、6.1mmol)を追添加した。1時間加熱還流した後、重合が始まったことが確認できたので、さらに、4,4’−ジブロモビフェニル(0.041g、0.13mmol)を追添加し、さらに1時間加熱還流反応させた。反応液を放冷して、反応液をメタノール200ml中に滴下し、粗ポリマー3を晶出させた。
【0308】
得られた粗ポリマー3をトルエン200mlに溶解させ、ブロモベンゼン(2.04g、13mmol)、tert−ブトキシナトリウム(1.50g、16mmol)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、50℃まで加温した(溶液C)。
一方、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.108g、10.4 mmol)のトルエン10ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.026g、13mmol)を加え、50℃まで加温した(溶液D)。
【0309】
窒素気流中、溶液Cに溶液Dを添加し、2時間、加熱還流反応した。この反応液に、N,N−ジフェニルアミン(3.82g、22.6mmol)のトルエン(2ml)溶液を添加し、さらに、8時間、加熱還流反応した。反応液を放冷し、メタノールに滴下し、エンドキャップした粗ポリマー3を得た。
このエンドキャップした粗ポリマー3をトルエンに溶解し、アセトンに再沈殿し、析出したポリマーを濾別した。得られたポリマーをトルエンに溶解させ、希塩酸にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿した。濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的ポリマー3を得た(1.01g)。なお、目的ポリマー3の重量平
均分子量及び数平均分子量を測定したところ、以下の通りであった。
【0310】
重量平均分子量(Mw)=43300
数平均分子量(Mn)=26400
分散度(Mw/Mn)=1.64
(合成例36〜41)
合成例35の合成法に従い、モノマー体(即ち、目的物6、目的物8及び4,4’−ジブロモビフェニル)を下記表1の化合物に変え、目的ポリマー4〜9を得た。得られた目的ポリマーについても表1にまとめた。
【0311】
【化79】

【0312】
【表1】

【0313】
(合成例42)
【0314】
【化80】

【0315】
合成例8で得られた目的物8(7.5g、21.5mmol)、合成例6で得られた目的物6(0.22g、1.1mmol)、4,4’−ジブロモスチルベン(3.82g、11.3mmol)、tert−ブトキシナトリウム(6.95g、72.3mmol)、及びトルエン(120ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、50℃まで加温した(溶液A)。
一方、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.06g、0.06mmol)のトルエン5ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.33g、0.45mmol)を加え、50℃まで加温した(溶液B)。
【0316】
窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、3時間、加熱還流反応した。原料が消失したことを確認し、4,4’−ジブロモビフェニル(3.31g、10.6mmol)を追添加した。1.5時間加熱還流した後、重合が始まったことが確認できたので、さらに、4,4’−ジブロモビフェニル(0.07g、0.2mmol)を1.5時間おきに計3回追添加した。4,4’−ジブロモビフェニルを全量添加後、さらに1時間加熱還流し、反応液を放冷して、反応液をエタノール300ml中に滴下し、粗ポリマー10を晶出させた。
【0317】
得られた粗ポリマー10をトルエン180mlに溶解させ、ブロモベンゼン(0.71g、4.5mmol)、tert−ブトキシナトリウム(3.5g、36.4mmol)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、50℃まで加温した(溶液C)。
一方、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.12g、0.1mmol)のトルエン10ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.18g、0.9mmol)を加え、50℃まで加温した(溶液D)。
【0318】
窒素気流中、溶液Cに溶液Dを添加し、2時間、加熱還流反応した。この反応液に、N,N−ジフェニルアミン(3.82g、22.6mmol)のトルエン(2ml)溶液を添加し、さらに、8時間、加熱還流反応した。反応液を放冷し、エタノール/水(250ml/50ml)溶液に滴下し、エンドキャップした粗ポリマー10を得た。
このエンドキャップした粗ポリマー10をトルエンに溶解し、アセトンに再沈殿し、析出したポリマーを濾別した。得られたポリマーをトルエンに溶解させ、希塩酸にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿した。濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的ポリマー10を得た(0.9g)。なお、目的ポリマー10の重量平均分子量及び数平均分子量を測定したところ、以下の通りであった。
【0319】
重量平均分子量(Mw)=60000
数平均分子量(Mn)=27000
分散度(Mw/Mn)=2.2
(合成例43〜47)
合成例42の合成法に従い、モノマー体を下記表−2の化合物に変え、アリールアミンポリマーとして目的ポリマー11〜15を得た。得られた目的ポリマーについても表2にまとめた。
【0320】
【化81】

【0321】
【表2】

【0322】
(合成例48〜58)
合成例35、42の合成法と同様に、下記反応式のような各種モノマー体を、下記反応式及び表3に従い、各種アリールアミンポリマー目的物16〜26を得た。得られたポリマーについて表3にまとめた。
【0323】
【化82】

【0324】
【表3】

【0325】
(合成例59)
合成例35、42の合成法と同様に、下記反応式のような各種モノマー体を、下記反応式及び表4に従い、アリールアミンポリマー目的物27を得た。得られたポリマーについて表4にまとめた。
【0326】
【化83】

【0327】
【表4】

【0328】
(合成例60〜64)
合成例35、42の合成法と同様に、下記反応式のような各種モノマー体を、下記反応式及び表5に従い、目的ポリマー28〜32を得た。得られたポリマーについて表5にまとめた。
【0329】
【化84】

【0330】
【表5】

【0331】
[比較例用ポリマーの合成]
(比較合成例1)
【0332】
【化85】

【0333】
窒素気流中、化合物4(3.26g)、化合物6(0.45g)、目的物4(1.530g、1,8−ジブロモピレン:1,6−ジブロモピレン=33:67)、化合物5(1.34g)のトルエン(59ml)の溶液に、20%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(11ml)を加え、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.075g)を加えて、加熱還流下、6時間撹拌した。放冷後、メタノールに反応液を添加し、析出した粗ポリマーを濾取、乾燥した。窒素気流中、得られた粗ポリマー、ブロモベンゼン(0.20g)、トルエン(100ml)の溶液に、20%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(24ml)を加え、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.451g)を加えて、加熱還流下、2時間撹拌した。続いて、フェニルボロン酸(1.80g)を加え、加熱還流下、6時間撹拌した。放冷後、エタノールに反応液を添加し、析出した粗ポリマーを濾取、乾燥した後、トルエン及びテトラヒドロフランを展開溶剤としたシリカゲルカラムによって精製し、テトラヒドロフラン溶液からエタノールに再沈殿、濾取、乾燥することによって、比較ポリマー1(1.45g)を得た。
【0334】
重量平均分子量(Mw)=22,000
数平均分子量(Mn)=14,000
(比較合成例2)
【0335】
【化86】

【0336】
窒素気流中、化合物1(10.0g)、ビス(ピナコラート)ジボラン(10.8g)、酢酸カリウム(10.13g)、ジメチルスルホキシド(150ml)を仕込み、60℃に加熱してから30分間撹拌し、(ビスジフェニルホスフィノフェロセン)ジクロロパラジウム錯体(0.74g)を加え、80℃で6時間反応した。反応後、室温まで放冷し、反応液にトルエン(100ml)及び水(120ml)を加え攪拌後、分液し、水層をトルエンで抽出し、有機層を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。得られた粗
生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル)で精製することにより、目的物33(7.9g)を得た。
【0337】
【化87】

【0338】
窒素気流中、目的物33(7.9g)、3−ブロモアニリン(3.47g)、トルエン:エタノール(60ml:30ml)、2M炭酸ナトリウム水溶液(20ml)を仕込み
、60℃に加熱下、30分間撹拌して系内を脱気して、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.7g)を加え、6時間還流した。室温まで放冷した後、反応液にトルエン(100ml)及び水(120ml)を加え攪拌後、分液し、水層をトルエンで抽出し、有機層を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル)で精製することにより、目的物34(3.8g)を得た。
【0339】
【化88】

【0340】
4−n−オクチルアニリン(2.285g、11.13mmol)、合成例9で得られた目的物9(0.2g、0.59mmol)、4,4’−ジブロモビフェニル(1.83g、5.86mmol)、及びtert−ブトキシナトリウム(3.6g、37.49mmol)、トルエン(20ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、50℃まで加温した(溶液A)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.12g、0.12mmol)のトルエン10ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン
(0.189g、0.94mmol)を加え、50℃まで加温した(溶液B)。窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、1時間、加熱還流反応した。原料が消失したことを確認し、4,4’−ジブロモビフェニル(1.72g、5.51mmol)を追添加した。1時間加熱還流した後、重合が始まったことが確認できたので、さらに、4,4’−ジブロモビフェニル(0.036g、0.12mmol)を40分おきに計3回(計0.11g)追添加した。4,4’−ジブロモビフェニルを全量添加後、さらに1時間加熱還流し、反応液を放冷して、反応液をエタノール300ml中に滴下し、比較粗ポリマー2を晶出させた。
【0341】
得られた比較粗ポリマー2をトルエン110mlに溶解させ、ブロモベンゼン(0.39g、2.48mmol)、tert−ブトキシナトリウム(3.8g、39.74mmol)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、50℃まで加温した(溶液C)。トリス(
ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.13g、0.12mmo
l)のトルエン10ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.2g、0.99mmol)を加え、50℃まで加温した(溶液D)。窒素気流中、溶液Cに溶液Dを添加し、2時間、加熱還流反応した。この反応液に、N,N−ジフェニルアミン(2.1g、12.4mmol)のトルエン(2ml)溶液を添加し、さらに、6時間、加熱還流反応した。反応液を放冷し、エタノール/水(250ml/50ml)溶液に滴下し、末端残基をキャップした比較粗ポリマー2を得た。
【0342】
この末端残基をキャップした比較粗ポリマー2をトルエンに溶解し、アセトンに再沈殿し、析出したポリマーを濾別した。得られたポリマーをトルエンに溶解させ、希塩酸にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿した。濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、比較ポリマー2を得た(0.84g)。
重量平均分子量(Mw)=51600
数平均分子量(Mn)=26500
分散度(Mw/Mn)=1.95
(比較合成例3)
【0343】
【化89】

【0344】
化合物7(10.09g)、化合物6(2.08g)、2,7−ジブロモ−9,9−ジヘキシルフルオレン(12.85g)、及びtert-ブトキシナトリウム(9.23g)、
トルエン(70ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液A)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.16g)
のトルエン5ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.24g)を加え、60℃まで加温した(溶液B)。窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、1時間、加熱還流反応した。2,7−ジブロモ−9,9−ジヘキシルフルオレン(0.15g)を30分おきに計3回追添加した。さらに1時間加熱還流し、反応液を放冷して、反応液をエタノール中に滴下し、比較粗ポリマー3を晶出させた。
【0345】
得られた比較粗ポリマー3をトルエン290mlに溶解させ、ブロモベンゼン(0.94g)、tert−ブトキシナトリウム(4.32g)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液C)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム
クロロホルム錯体(0.16g)のトルエン10ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.24g)を加え、60℃まで加温した(溶液D)。窒素気流中、溶液Cに溶液Dを添加し、2時間、加熱還流反応した。この反応液に、N,N−ジフェニルアミン(5.08g)のトルエン(10ml)溶液を添加し、さらに、4時間、加熱還流反応した。反応液を放冷し、エタノール中に滴下し、末端残基をキャップした比較粗ポリマー3を得た。
この末端残基をキャップした比較粗ポリマー3をトルエンに溶解し、アセトンに再沈殿し、析出したポリマーを濾別した。得られたポリマーをトルエンに溶解させ、希塩酸にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿した。濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、比較ポリマー3を得た(11.27g)。
【0346】
重量平均分子量(Mw)=47500
数平均分子量(Mn)=23700
分散度(Mw/Mn)=2.00
(比較合成例4)
【0347】
【化90】

【0348】
窒素気流中、化合物4(3.57g)、化合物5(2.61g)、化合物8(0.61g)のトルエン(50ml)の溶液に、20%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(25ml)を加え、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.06g)を加えて、加熱還流下、4時間撹拌した。放冷後、エタノールに反応液を添加し、析出した粗ポリマーを濾取、乾燥した。窒素気流中、得られた粗ポリマー、ブロモベンゼン(0.22g)、トルエン(100ml)の溶液に、20%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(40ml)を加え、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.06g)を加えて、加熱還流下、2時間撹拌した。続いて、フェニルボロン酸(0.87g)を加え、加熱還流下、6時間撹拌した。放冷後、エタノールに反応液を添加し、析出した比較粗ポリマー4を濾取、乾燥した後、トルエン及びテトラヒドロフランを展開溶剤としたシリカゲルカラムによって精製し、テトラヒドロフラン溶液
からエタノールに再沈殿、濾取、乾燥することによって、比較ポリマー4(2.80g)を得た。
【0349】
重量平均分子量(Mw)=41400
数平均分子量(Mn)=22600
分散度(Mw/Mn)=1.83
【0350】
[有機電界発光素子の作成]
(実施例1)
図1に示す有機電界発光素子を作製した。
ガラス基板1上にインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を120nmの厚さに堆積したもの(三容真空社製、スパッタ成膜品)を、通常のフォトリソグラフィー技術と塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプにパターニングして陽極2を形成した。パターン形成したITO基板を、界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純水による水洗、超純水による超音波洗浄、超純水による水洗の順で洗浄後、圧縮空気で乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
【0351】
まず、下記構造式(P1)で表される正孔輸送能高分子材料(重量平均分子量:26500,数平均分子量:12000)、下記構造式(A1)で表される4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート及び安息香酸エチルを含有する正孔注入層形成用塗布液を調製した。この塗布液を下記条件で陽極2上にスピンコートにより成膜して、膜厚30nmの正孔注入層3を得た。
【0352】
【化91】

【0353】
<正孔注入層形成用塗布液>
溶剤 安息香酸エチル
塗布液濃度 P1:2.0重量%
A1:0.8重量%
<正孔注入層3の成膜条件>
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 30秒
スピンコート雰囲気 大気中
加熱条件 大気中 230℃ 3時間
引き続き、下記構造式(H1)で表される本発明の高分子化合物(i)(合成例33で得られた目的ポリマー1)を含有する有機電界発光素子用組成物を調製し、下記の条件でスピンコートにより塗布して、加熱により架橋させることにより膜厚22nmの正孔輸送層4を形成した。
【0354】
【化92】

【0355】
<正孔輸送層形成用塗布液>
溶剤 トルエン
固形分濃度 0.4重量%
<正孔輸送層4の成膜条件>
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 30秒
スピンコート雰囲気 窒素中
加熱条件 窒素中、230℃、1時間
ここで、正孔注入層3及び正孔輸送層4を成膜した基板を真空蒸着装置内に移し、油回転ポンプにより装置の粗排気を行った後、装置内の真空度が1.3×10-4Pa以下に
なるまでクライオポンプを用いて排気した後、下記構造式(E4)で表される化合物と以下に示すイリジウム錯体(D2)を真空蒸着法にて成膜し、発光層5を得た。(E4)の蒸着速度は0.5Å/秒、イリジウム錯体(D2)の蒸着速度は0.03Å/秒に制御して膜厚32nmの膜の発光層5を形成した。
【0356】
【化93】

【0357】
次に、以下の構造式で表される化合物(E3)を真空蒸着法によって積層し正孔阻止層6を得た。蒸着速度を0.7〜1.2Å/秒の範囲で制御し、発光層5の上に積層して膜厚10nmの膜の正孔阻止層6を形成した。
【0358】
【化94】

【0359】
続いて、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウムを加熱して蒸着を行い、電子輸送層7を成膜した。この時、蒸着速度は0.7〜1.3Å/秒の範囲で制御し、膜厚30nmの膜を正孔阻止層6の上に積層して電子輸送層7を形成した。
ここで、電子輸送層7までの蒸着を行った素子を一度前記真空蒸着装置内より大気中に取り出して、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極2のITOストライプとは直交するように素子に密着させて、別の真空蒸着装置内に設置して有機層と同様にして装置内の真空度が1.3×10−4Pa以下になるまで排気した。
【0360】
電子注入層8として、先ずフッ化リチウム(LiF)を、モリブデンボートを用いて、蒸着速度0.08〜0.13Å/秒の範囲で制御し、0.5nmの膜厚で電子輸送層7の上に成膜した。次に、陰極9としてアルミニウムを同様にモリブデンボートにより加熱して、蒸着速度0.5〜6.0Å/秒の範囲で制御して膜厚80nmのアルミニウム層を形成した。以上の2層の蒸着時の基板温度は室温に保持した。
【0361】
引き続き、素子が保管中に大気中の水分等で劣化することを防ぐため、以下に記載の方法で封止処理を行った。
真空蒸着装置に連結された窒素グローブボックス中で、23mm×23mmサイズのガラス板の外周部に、約1mmの幅で光硬化性樹脂30Y−437(スリーボンド社製)を塗布し、中央部に水分ゲッターシート(ダイニック社製)を設置した。この上に、陰極形成を終了した基板を、蒸着された面が乾燥剤シートと対向するように貼り合わせた。その後、光硬化性樹脂が塗布された領域のみに紫外光を照射し、樹脂を硬化させた。
【0362】
以上の様にして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子が得られた。この素子の発光特性は以下の通りである。
輝度/電流:17.2[cd/A]@100cd/m
電圧:5.5[V]@100cd/m
電流効率:9.7[lm/W]@100cd/m
素子の発光スペクトルの極大波長は516nmであり、イリジウム錯体(D2)からのものと同定された。色度はCIE(x,y)=(0.311,0.622)であった。
【0363】
この素子の発光特性及び駆動寿命を表1に表す。駆動寿命は初期輝度2500cd/m、室温駆動での輝度半減時間を示す。
表6に示すが如く、本発明の高分子化合物を用いて形成された有機電界発光素子は、駆動電圧が低く、電流効率が高く、さらに駆動寿命が長いことがわかる。
【0364】
(比較例1)
実施例1において正孔輸送層4を形成するにあたり、前記構造式(H1)で表される本発明の高分子化合物(i)を、下記構造式(H2)で表される高分子化合物(比較合成例1で合成された比較ポリマー1)に変更して形成した他は、実施例1と同様にして図1に示す有機電界発光素子を作製した。尚、正孔輸送層の膜厚は、20nmであった。
【0365】
【化95】

【0366】
以上の様にして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子が得られた。この素子の発光特性は以下の通りである。
輝度/電流:18.5[cd/A]@100cd/m
電圧:6.1[V]@100cd/m
電流効率:9.5[lm/W]@100cd/m
素子の発光スペクトルの極大波長は516nmであり、イリジウム錯体(D2)からのものと同定された。色度はCIE(x,y)=(0.311,0.622)であった。
【0367】
得られた有機電界発光素子の初期輝度を2500cd/m、室温駆動での輝度半減時間を示す。
【0368】
【表6】

【0369】
(実施例2)
実施例1において正孔輸送層4を形成するにあたり、前記構造式(H1)で表される本発明の高分子化合物(i)を、下記構造式(H3)で表される本発明の高分子化合物(合成例64で合成された目的ポリマー32)に変更して形成した他は、実施例1と同様にして図1に示す有機電界発光素子を作製した。尚、正孔輸送層の膜厚は、20nmであった。
【0370】
【化96】

【0371】
得られた素子の発光特性は以下の通りである。
輝度/電流:13.4[cd/A]@100cd/m
電圧:5.3[V]@100cd/m
電流効率:7.9[lm/W]@100cd/m
(比較例2)
実施例1において正孔輸送層4を形成するにあたり、前記構造式(H1)で表される本発明の高分子化合物(i)を、下記構造式(H4)で表される高分子化合物(比較合成例9で合成された比較ポリマー9)に変更して形成した他は、実施例1と同様にして図1に示す有機電界発光素子を作製した。尚、正孔輸送層の膜厚は、20nmであった。
【0372】
【化97】

【0373】
得られた素子の発光特性は以下の通りである。
輝度/電流:17.1[cd/A]@100cd/m
電圧:5.5[V]@100cd/m
電流効率:9.7[lm/W]@100cd/m
【0374】
実施例2及び比較例2において得られた有機電界発光素子の100cd/mにおける電圧、電流効率、及び初期輝度を2,500cd/mとした時の駆動寿命を比較例2の値で規格化したものを表7に示す。
【0375】
【表7】

【0376】
表7に示すが如く、本発明の高分子化合物を用いて作製した有機電界発光素子は、駆動電圧が低く、また駆動寿命が長いことが分かる。
【0377】
(実施例3)
実施例2において、発光層5を下記のようにして形成したほかは、実施例2と同様にして有機電界発光素子を形成した。
【0378】
下記構造式(E5)で表される化合物、及び下記構造式(D3)で表される化合物を含有する有機電界発光素子用組成物を調製し、下記の条件でスピンコートにより成膜を行い、加熱することで膜厚40nmの発光層5を形成した。
【0379】
【化98】

【0380】
<発光層層形成用塗布液>
溶剤 トルエン
塗布液濃度 (E5)0.80重量%
(D3)0.08重量%
<発光層の成膜条件>
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 30秒
スピンコート雰囲気 窒素中
加熱条件 130℃、1時間、減圧下(0.1MPa)
得られた素子の発光特性は以下の通りである。
【0381】
輝度/電流:4.3[cd/A]@1,000cd/m
電圧:8.1[V]@1,000cd/m
(実施例4)
実施例3において正孔輸送層4を形成するにあたり、前記構造式(H3)で表される本発明の高分子化合物を、下記構造式(H5)で表される本発明の高分子化合物(合成例34で合成された目的ポリマー2)に変更して形成した他は、実施例3と同様にして図1に示す有機電界発光素子を作製した。尚、正孔輸送層の膜厚は、20nmであった。
【0382】
【化99】

【0383】
得られた素子の発光特性は以下の通りである。
輝度/電流:2.7[cd/A]@1,000cd/m
電圧:6.6[V]@1,000cd/m
【0384】
(実施例5)
実施例3において正孔輸送層4を形成するにあたり、前記構造式(H3)で表される本発明の高分子化合物を、下記構造式(H6)で表される本発明の高分子化合物(ii)(合成例44で合成された目的ポリマー12)に変更して形成した他は、実施例3と同様にして図1に示す有機電界発光素子を作製した。尚、正孔輸送層の膜厚は、20nmであった。
【0385】
【化100】

得られた素子の発光特性は以下の通りである。
輝度/電流:3.9[cd/A]@1,000cd/m
電圧:6.9[V]@1,000cd/m
【0386】
(実施例6)
実施例3において正孔輸送層4を形成するにあたり、前記構造式(H3)で表される本発明の高分子化合物を、下記構造式(H7)で表される本発明の高分子化合物(ii)(合成例56で合成された目的ポリマー24)に変更して形成した他は、実施例3と同様にして図1に示す有機電界発光素子を作製した。尚、正孔輸送層の膜厚は、20nmであった。
【0387】
【化101】

得られた素子の発光特性は以下の通りである。
輝度/電流:4.0[cd/A]@1,000cd/m
電圧:7.7[V]@1,000cd/m
【0388】
(実施例7)
実施例3において正孔輸送層4を形成するにあたり、前記構造式(H3)で表される本発明の高分子化合物を、下記構造式(H8)で表される本発明の高分子化合物(ii)(合成例63で合成された目的ポリマー31)に変更して形成した他は、実施例3と同様にして図1に示す有機電界発光素子を作製した。尚、正孔輸送層の膜厚は、20nmであった。
【0389】
【化102】

【0390】
得られた素子の発光特性は以下の通りである。
輝度/電流:3.7[cd/A]@1,000cd/m
電圧:8.1[V]@1,000cd/m
【0391】
(実施例8)
実施例3において正孔輸送層4を形成するにあたり、前記構造式(H3)で表される本発明の高分子化合物を、下記構造式(H9)で表される本発明の高分子化合物(ii)(合成例40で合成された目的ポリマー8)に変更して形成した他は、実施例3と同様にして図1に示す有機電界発光素子を作製した。尚、正孔輸送層の膜厚は、20nmであった。
【0392】
【化103】

【0393】
得られた素子の発光特性は以下の通りである。
輝度/電流:3.8[cd/A]@1,000cd/m
電圧:7.2[V]@1,000cd/m
【0394】
(比較例3)
実施例3において正孔輸送層4を形成するにあたり、前記構造式(H3)で表される本発明の高分子化合物を、下記構造式(H10)で表される高分子化合物(比較合成例3で合成された比較ポリマー3に変更して形成した他は、実施例3と同様にして図1に示す有機電界発光素子を作製した。尚、正孔輸送層の膜厚は、20nmであった。
【0395】
【化104】

【0396】
得られた素子の発光特性は以下の通りである。
輝度/電流:2.9[cd/A]@1,000cd/m
電圧:8.5[V]@1,000cd/m
実施例3〜8、及び比較例3において得られた有機電界発光素子の1,000cd/mにおける電圧、電流効率、及び初期輝度を1,000cd/mとした時の駆動寿命を比較例3の値で規格化したものを表8に示す。
【0397】
【表8】

【0398】
表8に示すが如く、本発明の高分子化合物を用いて形成した有機電界発光素子は、駆動電圧が低く、電流効率が高く、更に駆動寿命が長い。
【0399】
(実施例9)
正孔輸送層4、発光層5を、下記の様にして形成したほかは、実施例3と同様にして有機電界発光素子を形成した。
(正孔輸送層4の形成)
実施例3において正孔輸送層4を形成するにあたり、前記構造式(H3)で表される本発明の高分子化合物を、下記構造式(H11)で表される本発明の高分子化合物(ii)(合成例61で合成された目的ポリマー29)に変更して形成した他は、実施例3と同様にして膜厚20nmの正孔輸送層を形成した。
【0400】
【化105】

【0401】
(発光層の形成)
実施例3において発光層5を形成するにあたり、前記式(E5)で表される化合物を、下記構造式(E6)で表される化合物に、また、発光層形成様塗布液の組成を以下に変更した他は、実施例3と同様に形成して膜厚47nmで発光層5を得た。
【0402】
【化106】

【0403】
<発光層形成用塗布液>
溶剤 シクロヘキシルベンゼン
塗布液濃度 E6:2.30重量%
D3:0.23重量%
以上の様にして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子が得られた。この素子の発光特性は以下の通りである。
【0404】
輝度/電流:2.5[cd/A]@100cd/m
素子の発光スペクトルの極大波長は464nmであり、化合物(D1)からのものと同定された。色度はCIE(x,y)=(0.142,0.161)であった。
(比較例4)
実施例9において正孔輸送層4を形成するにあたり、前記構造式(H11)で表される
本発明の高分子化合物(ii)を、下記構造式(H12)で表される高分子化合物(比較合成例2で合成された比較ポリマー2)に変更して形成した他は、実施例9と同様にして図1に示す有機電界発光素子を作製した。尚、正孔輸送層の膜厚は、20nmであった。
【0405】
【化107】

【0406】
得られた2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子の発光特性は以下の通りである。
輝度/電流:2.1[cd/A]@100cd/m
素子の発光スペクトルの極大波長は464nmであり、化合物(D1)からのものと同定された。色度はCIE(x,y)=(0.143,0.173)であった。
実施例9、及び比較例4において得られた有機電界発光素子の100cd/mにおける電流効率を表9に示す。
【0407】
【表9】

【0408】
表9に示すが如く、本発明の高分子化合物を用いて形成した素子は、電流効率が高いことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0409】
本発明の高分子化合物は、有機EL光素子が使用される各種の分野、例えば、フラットパネル・ディスプレイ(例えばOAコンピュータ用や壁掛けテレビ)や面発光体としての特徴を生かした光源(例えば、複写機の光源、液晶ディスプレイや計器類のバックライト光源)、表示板、標識灯等の分野において、好適に使用することが出来る。
また、本発明の高分子化合物は、本質的に優れた耐酸化還元安定性を有することから、有機電界発光素子に限らず、電子写真感光体や有機太陽電池など有機デバイス全般に有用である。
【符号の説明】
【0410】
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 正孔阻止層
7 電子輸送層
8 電子注入層
9 陰極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(II)で表される繰り返し単位を含むことを特徴とする高分子化合物。
【化1】

(式中、pは0〜3の整数を表し、
Ar21及びAr22は、各々独立に、直接結合、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
Ar23〜Ar25は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
は下記式(IV)で表される基を含む基を表す。
但し、Ar21及びAr22のいずれもが、直接結合であることはない。
更に、Ar21、Ar22、及びAr24が、フルオレン環である場合は、置換基として架橋性基を含む基を有さない。)
【化2】

(式(IV)中のベンゾシクロブテン環は、置換基を有していてもよい。又、置換基同士が互いに結合して環を形成していてもよい。)
【請求項2】
更に、下記式(II’)で表される繰り返し単位を含むことを特徴とする請求項1に記載の高分子化合物。
【化3】

(式(II’)中、qは0〜3の整数を表し、
Ar31及びAr32は、各々独立に、直接結合、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
Ar33〜Ar35は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
但し、Ar31及びAr32のいずれもが、直接結合であることはない。
又、Ar31〜Ar35は、置換基として、式(IV)で表される基を含む基を有さない。
更に、Ar31、Ar32、及びAr34が、フルオレン環である場合は、置換基として架橋性基を含む基を有さない。)
【請求項3】
請求項1又は2に記載の高分子化合物を架橋させて得られることを特徴とする網目状高分子化合物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の高分子化合物を含有することを特徴とする有機電界発光素子用組成物。
【請求項5】
基板上に、陽極、陰極、及び該陽極と該陰極の間に有機層を有する有機電界発光素子において、該有機層が、請求項3に記載の網目状高分子化合物を含有する層を有することを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項6】
前記網目状高分子化合物を含有する層が、正孔注入層又は正孔輸送層であることを特徴とする請求項5に記載の有機電界発光素子。
【請求項7】
前記有機層が、正孔注入層、正孔輸送層及び発光層を有し、該正孔注入層、該正孔輸送層及び該発光層の全てが湿式成膜法により形成されることを特徴とする請求項5又は6に記載の有機電界発光素子。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項に記載の有機電界発光素子を備えたことを特徴とする有機ELディスプレイ。
【請求項9】
請求項5〜7のいずれか1項に記載の有機電界発光素子を備えたことを特徴とする有機EL照明。
【請求項10】
下記の繰り返し単位群Aより選ばれる少なくとも一つの繰り返し単位、及び下記の繰り返し単位群Bより選ばれる少なくとも一つの繰り返し単位を有することを特徴とする高分子化合物。
<繰り返し単位群A>
【化4】

<繰り返し単位群B>
【化5】


【図1】
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【公開番号】特開2011−52229(P2011−52229A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267410(P2010−267410)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【分割の表示】特願2009−90537(P2009−90537)の分割
【原出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】