説明

高分子化合物及びそれを用いた高分子発光素子

【課題】発光材料として有用な、強い蛍光強度を有する新規な高分子化合物、該高分子化合物を用いた高分子発光素子を提供する。
【解決手段】下記式(1):


(式中、R1〜R8は、水素原子又は置換基を表す。)で表される繰り返し単位と、下記式(70):


〔式中、C環及びD環は、芳香環を表す。C環及びD環は、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、アリール基ほかからなる群から選ばれる置換基を有していてもよい。Eは、O又はSである。〕で表される繰り返し単位とを有する高分子化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子化合物及び該高分子化合物を用いた高分子発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子量の発光材料は、発光素子の発光層に用いる材料等として有用であることから、種々検討されている。その具体例として、ポリ(p−フェニレン)(非特許文献1)、ポリ(m−フェニレン)(非特許文献2)、さらに、ポリ(p−ビフェニレン)等の重合体(非特許文献3)が開示されている。
【0003】
【非特許文献1】Makromol. Chem. 191, 1991-2003 (1990)
【非特許文献2】Polymer Preprints, 44(1), 1035-1036 (2003)
【非特許文献3】Polymer Preprints, 34(1), 1009-1010 (1993)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これらの化合物は、蛍光強度が未だ十分なものではなかった。
【0005】
本発明の目的は、発光材料として有用な、強い蛍光強度を有する新規な高分子化合物、及び該高分子化合物を用いた高分子発光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記式(1):

(式中、R1〜R8はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。)
で表される繰り返し単位と、下記式(70):

〔式中、C環及びD環は、それぞれ独立に、芳香環を表す。C環及びD環は、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アリールアミノ基、1価の複素環基、アシル基、アシルオキシ基、置換カルボキシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい。置換基が複数存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。Eは、O又はSである。〕
で表される繰り返し単位とを有する高分子化合物を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の高分子化合物は、発光材料として有用で、強い蛍光強度を有する。また、薄膜、有機トランジスタ、太陽電池等に有用である。該高分子化合物を用いた高分子発光素子は高性能であるので、面状光源、表示装置等に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明について、詳説する。なお、本明細書中の繰り返し単位を表す式において、括弧を付ける場合と付けない場合があるが、いずれも同義である。
<高分子化合物>
・式(1)で表される繰り返し単位
本発明の高分子化合物は、前記式(1)で表される繰り返し単位と、前記式(70)で表される繰り返し単位とを有し、ポリスチレン換算の数平均分子量が103〜108であるものである。前記式(1)で表される繰り返し単位、前記式(70)で表される繰り返し単位は、それぞれ、一種のみ含んでいても二種以上含んでいてもよい。
【0009】
−R1〜R8で表される置換基−
前記式(1)中、R1〜R8で表される置換基は、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アリールアミノ基、1価の複素環基、アシル基、アシルオキシ基、置換カルボキシル基又はシアノ基である。これらの基は、置換基を有していてもよい。
【0010】
前記アルキル基は、直鎖、分岐又は環状のいずれでもよく、炭素数は通常1〜20程度であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ラウリル基等が挙げられ、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基が好ましい。
【0011】
前記アルコキシ基は、直鎖、分岐又は環状のいずれでもよく、炭素数は通常1〜20程度であり、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基等が挙げられ、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基が好ましい。
【0012】
前記アルキルチオ基は、直鎖、分岐又は環状のいずれでもよく、炭素数は通常1〜20程度であり、具体的には、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、i−プロピルチオ基、ブチルチオ基、i−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、ラウリルチオ基等が挙げられ、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、デシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基が好ましい。
【0013】
前記アルキルシリル基は、直鎖、分岐又は環状のいずれでもよく、炭素数は通常1〜60程度であり、具体的には、メチルシリル基、エチルシリル基、プロピルシリル基、i−プロピルシリル基、ブチルシリル基、i−ブチルシリル基、t−ブチルシリル基、ペンチルシリル基、ヘキシルシリル基、シクロヘキシルシリル基、ヘプチルシリル基、オクチルシリル基、2−エチルヘキシルシリル基、ノニルシリル基、デシルシリル基、3,7−ジメチルオクチルシリル基、ラウリルシリル基、トリメチルシリル基、エチルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、i−プロピルジメチルシリル基、ブチルジメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基、ヘプチルジメチルシリル基、オクチルジメチルシリル基、2−エチルヘキシル−ジメチルシリル基、ノニルジメチルシリル基、デシルジメチルシリル基、3,7−ジメチルオクチル−ジメチルシリル基、ラウリルジメチルシリル基等が挙げられ、ペンチルシリル基、ヘキシルシリル基、オクチルシリル基、2−エチルヘキシルシリル基、デシルシリル基、3,7−ジメチルオクチルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基、オクチルジメチルシリル基、2−エチルヘキシル−ジメチルシリル基、デシルジメチルシリル基、3,7−ジメチルオクチル−ジメチルシリル基が好ましい。
【0014】
前記アルキルアミノ基は、直鎖、分岐又は環状のいずれでもよく、モノアルキルアミノ基でもジアルキルアミノ基でもよく、炭素数は通常1〜40程度であり、具体的には、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、i−プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、i−ブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、3,7−ジメチルオクチルアミノ基、ラウリルアミノ基等が挙げられ、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、オクチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、デシルアミノ基、3,7−ジメチルオクチルアミノ基が好ましい。
【0015】
前記アリール基は、炭素数は通常6〜60程度である。該アリール基の具体例としては、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよい1−ナフチル基、置換基を有していてもよい2−ナフチル基等が挙げられる。前記置換基を有していてもよいフェニル基の置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アリールアミノ基、1価の複素環基、アシル基、アシルオキシ基、置換カルボキシル基、シアノ基等が挙げられる。置換基が複数存在する場合は、それらは同一であってもよいし、異なっていてもよい。置換基を有していてもよいフェニル基が置換基を有する場合、該置換基の数は、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜3、特に好ましくは1である。
【0016】
前記置換基を有していてもよいフェニル基が置換基を有し、該置換基がアルキル基である場合、該置換基を有するフェニル基としては、フェニル環上に置換基として炭素数1〜12のアルキル基が導入されたフェニル基(以下、「C1〜C12アルキルフェニル基」という。「C1〜C12アルキル」は、アルキル部分の炭素数が1〜12であることを示す。以下、同様である。)が好ましい。
1〜C12アルキルフェニル基としては、例えば、メチル置換フェニル基、エチル置換フェニル基、プロピル置換フェニル基、i−プロピル置換フェニル基、ブチル置換フェニル基、i−ブチル置換フェニル基、t−ブチル置換フェニル基、ペンチル置換フェニル基、ヘキシル置換フェニル基、シクロヘキシル置換フェニル基、ヘプチル置換フェニル基、オクチル置換フェニル基、2−エチルヘキシル置換フェニル基、ノニル置換フェニル基、デシル置換フェニル基、3,7−ジメチルオクチル置換フェニル基、ラウリル置換フェニル基、トリフルオロメチル置換フェニル基、ペンタフルオロエチル置換フェニル基、パーフルオロブチル置換フェニル基、パーフルオロヘキシル置換フェニル基、パーフルオロオクチル置換フェニル基等が挙げられ、中でも、高分子化合物の溶媒への溶解性の観点からは、ブチル置換フェニル基、i−ブチル置換フェニル基、t−ブチル置換フェニル基、ヘキシル置換フェニル基、ヘプチル置換フェニル基、オクチル置換フェニル基、2−エチルヘキシル置換フェニル基、ノニル置換フェニル基、デシル置換フェニル基、3,7−ジメチルオクチル置換フェニル基が好ましい。これらのC1〜C12アルキルフェニル基は、さらに置換基を有していてもよい。
【0017】
前記置換基を有していてもよいフェニル基が置換基を有し、該置換基がアルコキシ基である場合、該置換基を有するフェニル基としては、フェニル環上に置換基として炭素数1〜12のアルコキシ基が導入されたフェニル基(以下、「C1〜C12アルコキシフェニル基」という。「C1〜C12アルコキシ」は、アルコキシ部分の炭素数が1〜12であることを示す。以下、同様である。)が好ましい。
1〜C12アルコキシフェニル基としては、例えば、メトキシ置換フェニル基、エトキシ置換フェニル基、プロピルオキシ置換フェニル基、i−プロピルオキシ置換フェニル基、ブトキシ置換フェニル基、i−ブトキシ置換フェニル基、t−ブトキシ置換フェニル基、ペンチルオキシ置換フェニル基、ヘキシルオキシ置換フェニル基、シクロヘキシルオキシ置換フェニル基、ヘプチルオキシ置換フェニル基、オクチルオキシ置換フェニル基、2−エチルヘキシルオキシ置換フェニル基、ノニルオキシ置換フェニル基、デシルオキシ置換フェニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシ置換フェニル基、ラウリルオキシ置換フェニル基、トリフルオロメトキシ置換フェニル基、ペンタフルオロエトキシ置換フェニル基、パーフルオロブトキシ置換フェニル基、パーフルオロヘキシルオキシ置換フェニル基、パーフルオロオクチルオキシ置換フェニル基、メトキシメチルオキシ置換フェニル基、2−メトキシエチルオキシ置換フェニル基等が挙げられ、中でも、高分子化合物の溶媒への溶解性の観点からは、ブトキシ置換フェニル基、i−ブトキシ置換フェニル基、t−ブトキシ置換フェニル基、ペンチルオキシ置換フェニル基、ヘキシルオキシ置換フェニル基、ヘプチルオキシ置換フェニル基、オクチルオキシ置換フェニル基、2−エチルヘキシルオキシ置換フェニル基、ノニルオキシ置換フェニル基、デシルオキシ置換フェニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシ置換フェニル基、ラウリルオキシ置換フェニル基が好ましい。これらのC1〜C12アルコキシフェニル基は、さらに置換基を有していてもよい。
【0018】
前記置換基を有していてもよいフェニル基が置換基を有し、該置換基がアシル基である場合、該置換基を有するフェニル基としては、炭素数が2〜30、好ましくは2〜15のアシル基で置換されたフェニル基が挙げられ、具体的には、アセチル置換フェニル基、プロピオニル置換フェニル基、ブチリル置換フェニル基、イソブチリル置換フェニル基、ピバロイル置換フェニル基、トリフルオロアセチル置換フェニル基等が挙げられる。
【0019】
前記置換基を有していてもよいフェニル基が置換基を有し、該置換基がアシルオキシ基である場合、該置換基を有するフェニル基としては、炭素数が2〜30、好ましくは2〜15のアシルオキシ基が挙げられ、具体的には、アセトキシ置換フェニル基、プロピオニルオキシ置換フェニル基、ブチリルオキシ置換フェニル基、イソブチリルオキシ置換フェニル基、ピバロイルオキシ置換フェニル基、トリフルオロアセチルオキシ置換フェニル基等が挙げられる。
【0020】
前記置換基を有していてもよいフェニル基が置換基を有し、該置換基が置換カルボキシル基である場合、該置換基を有するフェニル基としては、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基又は1価の複素環基で置換されたカルボキシル基(その炭素数は、通常、2〜30程度、好ましくは2〜15程度である)を置換基として有するフェニル基が挙げられ、合成の容易さの観点からは、アルキル基で置換されたカルボキシル基を置換基として有するフェニル基が好ましい。該置換基を有するフェニル基の具体例としては、メトキシカルボニル置換フェニル基、エトキシカルボニル置換フェニル基、プロポキシカルボニル置換フェニル基、i−プロポキシカルボニル置換フェニル基、ブトキシカルボニル置換フェニル基、i−ブトキシカルボニル置換フェニル基、t−ブトキシカルボニル置換フェニル基、ペンチルオキシカルボニル置換フェニル基、ヘキシロキシカルボニル置換フェニル基、シクロヘキシロキシカルボニル置換フェニル基、ヘプチルオキシカルボニル置換フェニル基、オクチルオキシカルボニル置換フェニル基、2−エチルヘキシロキシカルボニル置換フェニル基、ノニルオキシカルボニル置換フェニル基、デシロキシカルボニル置換フェニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシカルボニル置換フェニル基、ドデシルオキシカルボニル置換フェニル基、トリフルオロメトキシカルボニル置換フェニル基、ペンタフルオロエトキシカルボニル置換フェニル基、パーフルオロブトキシカルボニル置換フェニル基、パーフルオロヘキシルオキシカルボニル置換フェニル基、パーフルオロオクチルオキシカルボニル置換フェニル基、フェノキシカルボニル置換フェニル基等が挙げられる。
【0021】
前記アリールオキシ基は、炭素数は通常6〜60程度であり、具体的には、フェノキシ基、C1〜C12アルコキシフェノキシ基、C1〜C12アルキルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基等が例示され、C1〜C12アルコキシフェノキシ基、C1〜C12アルキルフェノキシ基が好ましい。
【0022】
前記アリールアルキル基は、炭素数は通常7〜60程度であり、具体的には、フェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキル基、1−ナフチル−C1〜C12アルキル基、2−ナフチル−C1〜C12アルキル基等が例示され、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキル基が好ましい。
【0023】
前記アリールアルコキシ基は、炭素数は通常7〜60程度であり、具体的には、フェニル−C1〜C12アルコキシ基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルコキシ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルコキシ基、1−ナフチル−C1〜C12アルコキシ基、2−ナフチル−C1〜C12アルコキシ基等が例示され、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルコキシ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルコキシ基が好ましい。
【0024】
前記アリールアルケニル基は、炭素数は通常8〜60程度であり、具体的には、フェニル−C2〜C12アルケニル基(「C2〜C12アルケニル」は、アルケニル部分の炭素数が2〜12であることを示す。以下も同様である。)、C1〜C12アルコキシフェニル−C2〜C12アルケニル基、C1〜C12アルキルフェニル−C2〜C12アルケニル基、1−ナフチル−C2〜C12アルケニル基、2−ナフチル−C2〜C12アルケニル基等が例示され、C1〜C12アルコキシフェニル−C2〜C12アルケニル基、C1〜C12アルキルフェニル−C2〜C12アルケニル基が好ましい。
【0025】
前記アリールアルキニル基としては、炭素数は通常8〜60程度であり、具体的には、フェニル−C2〜C12アルキニル基、C1〜C12アルコキシフェニル−C2〜C12アルキニル基、C1〜C12アルキルフェニル−C2〜C12アルキニル基、1−ナフチル−C2〜C12アルキニル基、2−ナフチル−C2〜C12アルキニル基等が例示され、C1〜C12アルコキシフェニル−C2〜C12アルキニル基、C1〜C12アルキルフェニル−C2〜C12アルキニル基が好ましい。
【0026】
前記アリールアミノ基は、炭素数は通常6〜60程度であり、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、C1〜C12アルコキシフェニルアミノ基、ジ(C1〜C12アルコキシフェニル)アミノ基、ジ(C1〜C12アルキルフェニル)アミノ基、1−ナフチルアミノ基、2−ナフチルアミノ基等が例示され、C1〜C12アルキルフェニルアミノ基、ジ(C1〜C12アルキルフェニル)アミノ基が好ましい。
【0027】
前記1価の複素環基は、炭素数は通常4〜60程度であり、具体的には、チエニル基、C1〜C12アルキルチエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、C1〜C12アルキルピリジル基等が例示され、チエニル基、C1〜C12アルキルチエニル基、ピリジル基、C1〜C12アルキルピリジル基が好ましい。1価の複素環基とは、複素環式化合物から水素原子1個を除いた残りの原子団をいう。
【0028】
前記アシル基は、炭素数が通常2〜30程度、好ましくは炭素数2〜15程度である。該アシル基の具体例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基、ペンタフルオロベンゾイル基等が挙げられる。
【0029】
前記アシルオキシ基は、炭素数が通常2〜30程度、好ましくは炭素数2〜15程度である。該アシルオキシ基の具体例としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、トリフルオロアセチルオキシ基、ペンタフルオロベンゾイルオキシ基等が挙げられる。
【0030】
前記置換カルボキシル基としては、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基又は1価の複素環基で置換されたカルボキシル基が挙げられ、炭素数が通常2〜30程度、好ましくは炭素数2〜15程度である。該置換カルボキシル基の具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、i−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシロキシカルボニル基、シクロヘキシロキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシロキシカルボニル基、ノニルオキシカルボニル基、デシロキシカルボニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、ペンタフルオロエトキシカルボニル基、パーフルオロブトキシカルボニル基、パーフルオロヘキシルオキシカルボニル基、パーフルオロオクチルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基、ピリジルオキシカルボニル基等が挙げられる。なお、これらの基は置換基を有していてもよい。置換カルボキシル基の炭素数には、該置換基の炭素数は含まれない。
【0031】
前記置換基がアルキル鎖を含む基の場合は、該アルキル鎖は、ヘテロ原子又はヘテロ原子を含む基で中断されていてもよい。ヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が例示される。ヘテロ原子又はヘテロ原子を含む基としては、例えば、以下の基が挙げられる。

(式中、R’は独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜60のアリール基、又は炭素数4〜60の1価の複素環基を表す。)
【0032】
前記式中、R’で表されるアルキル基、アリール基、1価の複素環基は、前記R1〜R8で表される置換基として説明し例示したものと同じである。
【0033】
前記式(1)で表される繰り返し単位としては、高分子化合物の合成の容易さの観点から、下記式(8):

(式中、R17及びR18は、それぞれ独立に置換基を表す。)
で表されるものが好ましく、該式(8)中のR17、R18が、それぞれ独立に、アルキル基又はアルコキシ基であるものがより好ましく、R17、R18が共にアルキル基であるもの又は共にアルコキシ基であるものがさらに好ましい。
【0034】
前記式(8)中、R17、R18で表される置換基は、前記R1〜R8で表される置換基として説明し例示したものと同じである。
【0035】
・前記式(70)で表される繰り返し単位
前記式(70)中、C環及びD環は、それぞれ独立に、芳香環を表す。C環及びD環は、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アリールアミノ基、1価の複素環基、アシル基、アシルオキシ基、置換カルボキシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい。置換基が複数存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。Eは、O又はSである。
【0036】
前記式(70)中、C環及びD環で表される芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、ピレン環、フェナントレン環等の芳香族炭化水素環;ピリジン環、ビピリジン環、フェナントロリン環、キノリン環、イソキノリン環、チオフェン環、フラン環、ピロール環等の複素芳香環が挙げられるが、高分子化合物の合成の容易さからは、ベンゼン環が好ましい。
【0037】
C環及びD環が前記置換基を有する場合には、高分子化合物の合成の容易さや、高分子化合物の溶解性の観点から、アルキル基、アルコキシ基が好ましい。さらに、置換基が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。前記置換基は、前記式(1)中、R1〜R8で表される置換基として説明し例示したものと同じである。
【0038】
前記式(70)で表される繰り返し単位としては、例えば、下記式(2a)〜(2d):

(式中、XはO又はSを表し、Raは置換基を表し、mは独立に0〜5の整数を表し、nは独立に0〜3の整数を表す。Raが複数存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。)
のいずれかで表されるものが挙げられる。
【0039】
aで表される置換基は、R1〜R8で表される置換基として説明し例示したものと同じである。また、高分子化合物の溶解性の観点から、mは1〜3の整数が好ましく、nは1又は2が好ましい。
【0040】
前記式(2a)で表される繰り返し単位は、下記式(2E):

〔式中、Yは、O又はSを表す。Rj及びRkは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基又はアリール基を表す。〕
で表されるものであることが、高分子化合物の合成の容易さや高分子化合物の蛍光強度の観点から好ましい。
【0041】
前記式(2E)中、Rj及びRkは、高分子化合物の合成の容易さからは、同一のもの(即ち、両方とも、水素原子、アルキル基、アルコキシ基又はアリール基)であることが好ましく、アルコキシ基であることが好ましい。Rj及びRkで表されるアルキル基、アリール基は、前記式(1)中、R1〜R8で表される置換基として説明し例示したものと同じである。また、Rj及びRkで表されるアルコキシ基としては、高分子化合物の溶解性や蛍光強度の観点から、ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基が好ましく、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基がさらに好ましい。
【0042】
前記式(70)で表される繰り返し単位としては、例えば、

(式中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アリールアミノ基、1価の複素環基、アシル基、アシルオキシ基、置換カルボキシル基又はシアノ基を表す。)
等が挙げられ、高分子化合物の耐熱性や高分子量化の観点からは、

(式中、Rは前記と同じ意味を有する。)
が好ましい。
【0043】
前記式において、1つの構造式中に複数のRを有しているが、それらは同一であっても異なっていてもよい。前記式中、Rで表される基は、前記R1〜R8で表される置換基として説明し例示したものと同じである。
【0044】
・その他の繰り返し単位
本発明の高分子化合物は、エレクトロルミネッセンス素子の電荷の注入の容易さや発光効率の観点から、さらに、前記式(1)で表される繰り返し単位でも前記式(70)で表される繰り返し単位でもない下記式(2):

(式中、Ar1は、前記式(70)で表されない2価の複素環基、又は2価の芳香族アミン基を表す。これらの基は、置換基を有していてもよい。)
で表される繰り返し単位を有していてもよい。この繰り返し単位は、一種のみ含んでいても二種以上含んでいてもよい。
【0045】
前記式(2)中、Ar1は、前記式(70)で表されない2価の複素環基、又は2価の芳香族アミン基を表す。これらの基は、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アリールアミノ基、1価の複素環基、アシル基、アシルオキシ基、置換カルボキシル基等の置換基を有していてもよい。Ar1が複数の置換基を有する場合、それらは同一であってもよいし、それぞれ異なっていてもよい。
【0046】
前記式(2)において、2価の複素環基とは、複素環式化合物から水素原子2個を除いた残りの原子団をいい、炭素数は通常4〜60程度である。炭素数には置換基の炭素数は含まない。複素環式化合物とは、環式構造をもつ有機化合物のうち、環を構成する元素が炭素原子だけでなく、酸素、硫黄、窒素、リン、ホウ素等のヘテロ原子を環内に含むものをいう。2価の複素環基としては、2価の芳香族複素環基が好ましい。
【0047】
2価の複素環基としては、例えば、以下のものが挙げられる。これらの中でも、高分子発光素子の電荷の注入の容易さや発光効率の観点からは、ヘテロ原子として、窒素、酸素を含むフェノキサジン−ジイル基(下式L)、ヘテロ原子として窒素、硫黄を含むフェノチアジン−ジイル基(下式M)が好ましい。
【0048】
ヘテロ原子として、窒素を含む基;ジアザフェニレン基(下式45〜48)、キノリンジイル基(下式49〜63)、キノキサリンジイル基(下式64〜68)、アクリジンジイル基(下式69〜72)、ビピリジルジイル基(下式73〜75)、フェナントロリンジイル基(下式76〜78)等。
【0049】
ヘテロ原子として、けい素、窒素、酸素、硫黄、セレン等を含む5員環複素環基:(下式94〜98)等。
【0050】
ヘテロ原子として、けい素、窒素、酸素、硫黄、セレン等を含む5員環縮合複素環基:(下式99〜108)等。
【0051】
ヘテロ原子として、硫黄等を含む5員環複素環基でそのヘテロ原子のα位で結合し2量体やオリゴマーになっている基:(下式109〜110)等。
【0052】
ヘテロ原子として、けい素、窒素、酸素、硫黄、セレン等を含む5員環複素環基でそのヘテロ原子のα位でフェニル基に結合している基:(下式111〜117)等。
【0053】
ヘテロ原子として、窒素、酸素を含むフェノキサジン−ジイル基(下式L)、ヘテロ原子として窒素、硫黄を含むフェノチアジン−ジイル基(下式M)等。















(上式45〜78、式94〜108、式110〜117、L、M中、Rは、前記と同じ意味を有する。)
【0054】
前記式(2)において、2価の芳香族アミン基とは、芳香族アミンから水素原子2個を除いた残りの原子団をいい、炭素数は通常4〜60程度である。炭素数には置換基の炭素数は含まない。2価の芳香族アミン基としては、例えば、下記一般式(3)で表される基が挙げられる。

(式中、Ar5及びAr7はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリーレン基、一般式(4)で表される基、又は一般式(5)で表される基を表す。Ar6は、置換基を有していてもよいアリール基、一般式(6)で表される基又は一般式(7)で表される基を表す。また、Ar5とAr6の間、Ar5とAr7の間、又はAr6とAr7の間に環を形成していてもよい。

(式中、Ar8及びAr9は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。R7及びR8は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、1価の複素環基又はシアノ基を表す。lは、0又は1である。)

(式中、Ar10及びAr11は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。Ar12は、置換基を有していてもよいアリール基を表す。また、Ar10とAr12の間、Ar10とAr11の間、又はAr11とAr12の間に環を形成していてもよい。)

(式中、Ar13は、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。Ar16及びAr17は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリール基を表す。また、Ar13とAr16の間、Ar13とAr17の間、又はAr16とAr17の間に環を形成していてもよい。)

(式中、Ar14は、置換基を有していてもよいアリーレン基を示す。Ar15は、置換基を有していてもよいアリール基を表す。R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、1価の複素環基又はシアノ基を表す。rは0又は1である。)
【0055】
上記式中、Ar5、Ar7、Ar8、Ar9、Ar10、Ar11、Ar13、Ar14で表されるアリーレン基は、炭素数が、通常、6〜60のものであり、その具体例としては、フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセニレン基、ビフェニレン基、トリフェニレン基、フルオレン−ジイル基、スチルベンジイル基などが挙げられる。高分子化合物の合成の容易さからは、フェニレン基であることが好ましい。
【0056】
上記式中、Ar6、Ar12、Ar15、Ar16、Ar17で表されるアリール基は、炭素数が、通常、6〜60のものであり、その具体例としては、フェニル基、C1〜C12アルコキシフェニル基、C1〜C12アルキルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられる。高分子化合物の合成の容易さからは、フェニレン基であることが好ましい。
【0057】
上記式中、R7、R8、R11、R12で表されるアルキル基、アリール基、1価の複素環基は、前記R1〜R8で表される置換基として説明し例示したものと同じである。
【0058】
上記式中のAr5〜Ar17は、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アリールアミノ基、1価の複素環基、シアノ基等の置換基を有していてもよい。
【0059】
2価の芳香族アミン基として、具体的には、以下の基が例示される。



(上記式118〜122中、Rは、前記と同じ意味を有する。)
【0060】
前記式(2)で表される繰り返し単位の具体例としては、下記式で表されるもの等が挙げられる。



(式中、Rは前記と同じ意味を有する。)
【0061】
本発明の高分子化合物の具体例としては、前記式(1)で表される繰り返し単位である

と、前記式(70)で表される繰り返し単位である

とを、それぞれ1種類以上の組み合わせて有するものが挙げられる。さらに、前記式(1)で表される繰り返し単位である

と、前記式(70)で表される繰り返し単位である

と、前記式(2)で表される繰り返し単位である

とを、それぞれ1種類以上の組み合わせて有するものが挙げられる。
【0062】
本発明の高分子化合物において、前記式(1)で表される繰り返し単位の割合(合計)は、通常、該高分子化合物が有する全繰り返し単位の0.1〜90モル%であり、耐熱性の観点からは、該高分子化合物が有する全繰り返し単位の1〜50モル%であることが好ましい。
【0063】
本発明の高分子化合物において、前記式(70)で表される繰り返し単位の割合(合計)は、通常、該高分子化合物が有する全繰り返し単位の10〜99.9モル%であり、蛍光強度の観点からは、該高分子化合物が有する全繰り返し単位の50〜90モル%であることが好ましい。
【0064】
本発明の高分子化合物において、前記式(1)で表される繰り返し単位及び前記式(70)で表される繰り返し単位、さらに、前記式(2)で表される繰り返し単位を有する場合、前記式(2)で表される繰り返し単位の割合は、通常、該高分子化合物が有する全繰り返し単位の2〜50モル%であり、高分子発光素子の電荷の注入の容易さや発光効率の観点からは、該高分子化合物が有する全繰り返し単位の5〜50モル%であることが好ましい。
【0065】
本発明の高分子化合物のポリスチレン換算の数平均分子量は、通常、1.0×103〜1.0×108であり、好ましくは2.0×103〜1.0×107である。このポリスチレン換算の数平均分子量が1.0×103未満である場合には、強靭な薄膜が得られ難く、1.0×108を超える場合には、溶解性が低下し、薄膜の作製が困難である。また、ポリスチレン換算の重量平均分子量は、通常、1.1×103〜1.1×108であり、好ましくは2.2×103〜1.1×107である。
【0066】
・その他
本発明の高分子化合物において、前記式(1)で表される繰り返し単位、前記式(70)で表される繰り返し単位、及び前記式(2)で表される繰り返し単位は、同じ繰り返し単位同士、相違する繰り返し単位同士が、それぞれ直接結合していても、ビニレン基等を介して結合していてもよい。
【0067】
本発明の高分子化合物の末端基は、重合活性基がそのまま残っていると、素子の作製に用いたときに得られる素子の発光特性や寿命が低下する可能性があるので、安定な基で保護されていてもよい。主鎖の共役構造と連続した共役結合を有しているものが好ましく、また、例えば、ビニレン基を介してアリール基又は複素環基と結合している構造であってもよい。具体的には、特開平9-45478号公報の化10に記載の置換基等が例示される。
【0068】
本発明の高分子化合物は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、又は交互共重合体であってもよいし、それらの中間的な構造を有する高分子、例えば、ブロック性を帯びたランダム共重合体であってもよい。蛍光の量子収率の高い高分子化合物を得る観点からは完全なランダム共重合体よりブロック性を帯びたランダム共重合体やブロック共重合体又はグラフト共重合体が好ましい。主鎖に枝分かれがあり、末端部が3つ以上ある場合やデンドリマーも含まれる。
【0069】
本発明の高分子化合物に対する良溶媒としては、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、n−ブチルベンゼン等が例示される。高分子化合物の構造や分子量にもよるが、通常はこれらの溶媒に0.1重量%以上溶解させることができる。
【0070】
<高分子化合物の製造方法>
次に、本発明の高分子化合物の製造方法について説明する。
【0071】
本発明の高分子化合物の製造方法としては、該当するモノマーからSuzukiカップリング反応により重合する方法、Grignard反応により重合する方法、Ni(0)触媒により重合する方法、FeCl3等の酸化剤により重合する方法、電気化学的に酸化重合する方法、適当な脱離基を有する中間体高分子の分解による方法等が例示される。
【0072】
これらのうち、Suzukiカップリング反応により重合する方法、Grignard反応により重合する方法、Ni(0)触媒により重合する方法が、構造制御がしやすいので好ましい。
【0073】
具体的には、モノマーとなる、反応性置換基を複数有する化合物を、必要に応じて、有機溶媒に溶解し、例えば、適当な触媒を用い、有機溶媒の融点以上沸点以下で、反応させることができる。
【0074】
有機溶媒は、用いる化合物や反応によっても異なる。一般に副反応を抑制するために、用いる溶媒は十分に脱酸素処理を施し、不活性雰囲気下で反応を進行させることが好ましい。また、同様に脱水処理を行うことが好ましい(但し、Suzukiカップリング反応のような水との2相系での反応の場合にはその限りではない。)。
【0075】
反応させるために適宜アルカリや適当な触媒を添加する。これらは用いる反応に応じて選択すればよい。該アルカリ又は触媒は、反応に用いる溶媒に十分に溶解するものが好ましい。アルカリ又は触媒を混合する方法としては、反応液をアルゴンや窒素等の不活性雰囲気下で攪拌しながらゆっくりとアルカリ又は触媒の溶液を添加するか、逆にアルカリ又は触媒の溶液に反応液をゆっくりと添加する方法が例示される。
【0076】
より具体的に、反応条件について述べる。
【0077】
Suzukiカップリング反応の場合は、触媒として、例えば、パラジウム[テトラキス(トリフェニルホスフィン)]、パラジウムアセテート類等を用い、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化バリウム等の無機塩基、トリエチルアミン等の有機塩基、フッ化セシウム等の無機塩をモノマーに対して当量以上、好ましくは1〜20当量、より好ましくは1〜10当量加えて反応させる。溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等が例示される。塩基は、水溶液として加え、2相系で反応させてもよい(なお、2相系で反応させる場合は、必要に応じて、第4級アンモニウム塩等の相間移動触媒を加えてもよい)。溶媒にもよるが50〜160℃程度の温度が好適に用いられる。溶媒の沸点近くまで昇温し、還流させてもよい。反応時間は0.1〜200時間程度であり、好ましくは0.5〜50時間程度である。なお、反応は、アルゴンガスや窒素ガス等の不活性雰囲気下、触媒が失活しない条件で行う。
【0078】
Grignard反応の場合は、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒中でハロゲン化物と金属Mgとを反応させてGrignard試薬溶液とし、これと別に用意したモノマー溶液とを混合し、ニッケル触媒又はパラジウム触媒を過剰反応に注意しながら添加した後に昇温して還流させながら反応させる方法が例示される。Grignard試薬はモノマーに対して当量以上、好ましくは1〜1.5当量、より好ましくは1〜1.2当量用いる。これら以外の方法で重合する場合も、公知の方法に従って反応させることができる。なお、反応は、アルゴンガスや窒素ガス等の不活性雰囲気下で行う。
【0079】
ゼロ価ニッケル錯体を用いる場合は、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒中でハロゲン化物をゼロ価ニッケル錯体を用いて反応させる方法が例示される。ゼロ価のニッケル錯体としては、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)、(エチレン)ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル等が例示され、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)が好ましい。この場合、中性配位子を添加することが、高分子化合物の収率向上、高分子量化の観点から好ましい。
【0080】
ここに、中性配位子とは、アニオンやカチオンを有していない配位子であり、2,2’−ビピリジル、1,10−フェナントロリン、メチレンビスオキサゾリン、N,N’−テトラメチルエチレンジアミン等の含窒素配位子;トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェノキシホスフィン等の第三ホスフィン配位子等が例示され、汎用性、安価の点で含窒素配位子が好ましく、2,2’−ビピリジルが高反応性、高収率の点で特に好ましい。特に、重合体の高分子量化の点から、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)を含む系に中性配位子として2,2’−ビピリジルを加えた系が好ましい。
【0081】
ゼロ価のニッケル錯体の使用量は、重合反応を阻害しない程度ならば、特に限定されないが、あまりにも少ないと重合反応時間が長くなり、また、あまりにも多過ぎると、後処理が困難になることから、通常、モノマー1モルに対して0.1モル以上、好ましくは1モル以上である。使用量が過少であると、分子量が小さい傾向にある。上限は限定的されないが、量が多すぎると後処理が困難になる傾向にあるため、5.0モル以下であることが好ましい。
【0082】
また、中性配位子を使用する場合には、その使用量は、通常、ゼロ価のニッケル錯体1モルに対して、0.5〜10モル程度であり、コストパフォーマンス(高収率かつ安価な投入量)の観点から0.9〜1.1モルが好ましい。これら以外の方法で重合する場合も、公知の方法に従って反応させることができる。なお、反応は、アルゴンガスや窒素ガス等の不活性雰囲気下、触媒が失活しない条件で行う。
【0083】
本発明の高分子化合物を高分子発光素子の発光材料として用いる場合、その純度が発光特性に影響を与えるため、重合前のモノマーを蒸留、昇華精製、再結晶等の方法で精製した後に重合することが好ましく、また合成後、再沈精製、クロマトグラフィーによる分別等の純化処理をすることが好ましい。
【0084】
<液状組成物>
本発明の液状組成物は、高分子発光素子等の発光素子や有機トランジスタの作製に有用である。液状組成物は、前記高分子化合物と溶媒とを含んでなるものである。本明細書において、「液状組成物」とは、素子作製時において液状であるものを意味し、典型的には、常圧(即ち、1気圧)、25℃において液状のものを意味する。また、液状組成物は、一般的には、インク、インク組成物、溶液等と呼ばれることがある。
【0085】
本発明の液状組成物は、前記高分子化合物以外に、低分子発光材料、正孔輸送材料、電子輸送材料、安定剤(酸化防止剤等)、粘度及び/又は表面張力を調節するための添加剤等を含んでいてもよい。これらの任意成分は、各々、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0086】
本発明の液状組成物が含有してもよい低分子発光材料としては、例えば、ナフタレン誘導体、アントラセン、アントラセン誘導体、ペリレン、ペリレン誘導体、ポリメチン系色素、キサンテン系色素、クマリン系色素、シアニン系色素、8−ヒドロキシキノリンの金属錯体を配位子として有する金属錯体、8−ヒドロキシキノリン誘導体を配位子として有する金属錯体、その他の発光性金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン、テトラフェニルシクロペンタジエン誘導体、テトラフェニルシクロブタジエン、テトラフェニルシクロブタジエン誘導体、スチルベン系、含ケイ素芳香族系、オキサゾール系、フロキサン系、チアゾール系、テトラアリールメタン系、チアジアゾール系、ピラゾール系、メタシクロファン系、アセチレン系等の低分子化合物の発光材料が挙げられる。具体的には、例えば、特開昭57-51781号公報、特開昭59-194393号公報等に記載されているもの、公知のものが挙げられる。
【0087】
さらに、前記低分子発光材料としては、三重項励起状態からの発光を示す金属錯体(三重項発光錯体:通常、中心金属と配位子とを含んでなる錯体であって、例えば、燐光発光や、この燐光発光に加えて蛍光発光が観測される錯体や、三重項励起状態からの発光を示す錯体の部分構造が高分子化合物の側鎖、主鎖、末端にある高分子錯体化合物を含む。)を用いることができる。前記三重項発光錯体は、例えば、Nature, (1998), 395, 151、Appl. Phys. Lett. (1999), 75(1), 4、Proc. SPIE-Int. Soc. Opt. Eng. (2001), 4105(Organic Light-Emitting Materials and DevicesIV), 119、J. Am. Chem. Soc., (2001), 123, 4304、Appl. Phys. Lett., (1997), 71(18), 2596、Syn. Met., (1998), 94(1), 103、Syn. Met., (1999), 99(2), 1361、Adv. Mater., (1999), 11(10), 852等に開示されている。
【0088】
前記三重項発光錯体の中心金属は、通常、原子番号50以上のものであり、該錯体にスピン−軌道相互作用があり、一重項状態と三重項状態間の項間交差を起こしうる金属である。前記中心金属としては、例えば、レニウム、イリジウム、オスミウム、スカンジウム、イットリウム、白金、金、及びランタノイド類のユーロピウム、テルビウム、ツリウム、ディスプロシウム、サマリウム、プラセオジウム、ガドリニウム、タングステン等が挙げられ、レニウム、イリジウム、白金、金、ユーロピウムが好ましく、レニウム、イリジウム、白金、金がより好ましく、イリジウムが特に好ましい。
【0089】
前記三重項発光錯体の配位子としては、例えば、8−キノリノール及びその誘導体、ベンゾキノリノール及びその誘導体、2−フェニル−ピリジン及びその誘導体、2−フェニル−ベンゾチアゾール及びその誘導体、2−フェニル−ベンゾオキサゾール及びその誘導体、ポルフィリン及びその誘導体等が挙げられる。
【0090】
前記三重項発光錯体の具体例としては、以下のもの(PL−1〜PL−37)が挙げられる。
【0091】

【0092】

【0093】

【0094】

【0095】

【0096】

【0097】

【0098】

【0099】

【0100】

【0101】

【0102】

【0103】

【0104】

【0105】

【0106】

【0107】

【0108】

【0109】

【0110】

【0111】

【0112】

【0113】

【0114】

【0115】

【0116】

【0117】

【0118】

【0119】

【0120】

【0121】

【0122】

【0123】

【0124】

【0125】

【0126】

【0127】

【0128】
ここで、Rは、前記と同じ意味を有するが、好ましくは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アリールアミノ基、1価の複素環基、シアノ基であり、溶媒への溶解性を高める観点からは、アルキル基、アルコキシ基がより好ましい。複数存在するRは、同一であっても異なっていてもよい。
【0129】
前記三重項発光錯体としては、下記式:

で表される金属錯体が特に好ましい
【0130】
本発明の液状組成物が含有してもよい正孔輸送材料としては、例えば、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体等が挙げられる。
【0131】
本発明の液状組成物が含有してもよい電子輸送材料としては、例えば、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体等が挙げられる。
【0132】
本発明の液状組成物が含有してもよい安定剤としては、例えば、酸化防止剤が挙げられる。この酸化防止剤としては、発光や電荷輸送を阻害しないものであればよく、組成物が溶媒を含む場合には、通常、該溶媒に可溶性のものであり、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられる。この酸化防止剤を用いることにより、前記高分子化合物、溶媒の保存安定性を改善し得る。
【0133】
本発明の液状組成物が含有してもよい粘度及び/又は表面張力を調節するための添加剤としては、例えば、粘度を高めるための高分子量の化合物(増粘剤)や貧溶媒、粘度を下げるための低分子量の化合物、表面張力を下げるための界面活性剤等を適宜組み合わせて使用すればよい。
【0134】
前記の高分子量の化合物としては、発光や電荷輸送を阻害しないものであればよく、通常、液状組成物の溶媒に可溶性のものである。高分子量の化合物としては、例えば、高分子量のポリスチレン、高分子量のポリメチルメタクリレート等を用いることができる。前記の高分子量の化合物のポリスチレン換算の重量平均分子量は50万以上が好ましく、100万以上がより好ましい。また、貧溶媒を増粘剤として用いることもできる。
【0135】
本発明の液状組成物が正孔輸送材料を含有する場合には、該液状組成物中の正孔輸送材料の割合は、通常、1重量%〜80重量%であり、好ましくは5重量%〜60重量%である。本発明の液状組成物が電子輸送材料を含有する場合には、該液状組成物中の電子輸送材料の割合は、通常、1重量%〜80重量%であり、好ましくは5重量%〜60重量%である。
【0136】
高分子発光素子の作製の際に、この液状組成物を用いて成膜する場合、該液状組成物を塗布した後、乾燥により溶媒を除去するだけでよく、また電荷輸送材料や発光材料を混合した場合においても同様な手法が適用できるので、製造上非常に有利である。なお、乾燥の際には、50〜150℃程度に加温した状態で乾燥してもよく、また、10-3Pa程度に減圧して乾燥させてもよい。
【0137】
液状組成物を用いた成膜には、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法を用いることができる。
【0138】
液状組成物中の溶媒の割合は、該液状組成物の全重量に対して、通常、1重量%〜99.9重量%であり、好ましくは60重量%〜99.9重量%であり、さらに好ましく90重量%〜99.8重量%である。液状組成物の粘度は印刷法によって異なるが、25℃において0.5〜500mPa・sの範囲が好ましく、インクジェットプリント法等、液状組成物が吐出装置を経由するものの場合には、吐出時の目づまりや飛行曲がりを防止するために粘度が25℃において0.5〜20mPa・sの範囲であることが好ましい。
【0139】
液状組成物に含まれる溶媒としては、該液状組成物中の該溶媒以外の成分を溶解又は分散できるものが好ましい。該溶媒としては、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−へプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルベンゾエート、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール等の多価アルコール及びその誘導体、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等のアルコール系溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒が例示される。また、これらの溶媒は、1種単独で用いても複数組み合わせて用いてもよい。前記溶媒のうち、ベンゼン環を少なくとも1個以上含む構造を有し、かつ融点が0℃以下、沸点が100℃以上である有機溶媒を1種類以上含むことが、粘度、成膜性等の観点から好ましい。
【0140】
溶媒の種類としては、液状組成物中の溶媒以外の成分の有機溶媒への溶解性、成膜時の均一性、粘度特性等の観点から、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒が好ましく、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メシチレン、n−プロピルベンゼン、i−プロピルベンゼン、n−ブチルベンゼン、i−ブチルベンゼン、s−ブチルベンゼン、アニソール、エトキシベンゼン、1−メチルナフタレン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロヘキシルベンゼン、ビシクロヘキシル、シクロヘキセニルシクロヘキサノン、n−ヘプチルシクロヘキサン、n−ヘキシルシクロヘキサン、メチルベンゾエート、2−プロピルシクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、2−ノナノン、2−デカノン、ジシクロヘキシルケトンが好ましく、キシレン、アニソール、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン、ビシクロヘキシルメチルベンゾエートのうち少なくとも1種類を含むことがより好ましい。
【0141】
液状組成物に含まれる溶媒の種類は、成膜性の観点や素子特性等の観点から、2種類以上であることが好ましく、2〜3種類であることがより好ましく、2種類であることがさらに好ましい。
【0142】
液状組成物に2種類の溶媒が含まれる場合、そのうちの1種類の溶媒は25℃において固体状態でもよい。成膜性の観点から、1種類の溶媒は沸点が180℃以上のものであり、他の1種類の溶媒は沸点が180℃未満のものであることが好ましく、1種類の溶媒は沸点が200℃以上のものであり、他の1種類の溶媒は沸点が180℃未満のものであることがより好ましい。また、粘度の観点から、60℃において、液状組成物から溶媒を除いた成分の0.2重量%以上が溶媒に溶解することが好ましく、2種類の溶媒のうちの1種類の溶媒には、25℃において、液状組成物から溶媒を除いた成分の0.2重量%以上が溶解することが好ましい。
【0143】
液状組成物に3種類の溶媒が含まれる場合、そのうちの1〜2種類の溶媒は25℃において固体状態でもよい。成膜性の観点から、3種類の溶媒のうちの少なくとも1種類の溶媒は沸点が180℃以上の溶媒であり、少なくとも1種類の溶媒は沸点が180℃未満の溶媒であることが好ましく、3種類の溶媒のうちの少なくとも1種類の溶媒は沸点が200℃以上300℃以下の溶媒であり、少なくとも1種類の溶媒は沸点が180℃未満の溶媒であることがより好ましい。また、粘度の観点から、3種類の溶媒のうちの2種類の溶媒には、60℃において、液状組成物から溶媒を除いた成分の0.2重量%以上が溶媒に溶解することが好ましく、3種類の溶媒のうちの1種類の溶媒には、25℃において、液状組成物から溶媒を除いた成分の0.2重量%以上が溶媒に溶解することが好ましい。
【0144】
液状組成物に2種類以上の溶媒が含まれる場合、粘度及び成膜性の観点から、最も沸点が高い溶媒が、液状組成物に含まれる全溶媒の重量の40〜90重量%であることが好ましく、50〜90重量%であることがより好ましく、65〜85重量%であることがさらに好ましい。
【0145】
<用途>
本発明の高分子化合物は、発光材料として用いることができるだけでなく、薄膜、有機半導体材料、有機トランジスタ、光学材料、太陽電池又はドーピングにより導電性材料として用いることもできる。
【0146】
−薄膜−
本発明の薄膜について説明する。この薄膜は、前記高分子化合物を用いてなるものである。薄膜の種類としては、発光性薄膜、導電性薄膜、有機半導体薄膜等が例示される。
【0147】
発光性薄膜は、素子の輝度や発光電圧等の観点から、発光の量子収率が50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。
【0148】
導電性薄膜は、表面抵抗が1KΩ/□以下であることが好ましい。薄膜に、ルイス酸、イオン性化合物等をドープすることにより、電気伝導度を高めることができる。表面抵抗が100Ω/□以下であることがより好ましく、10Ω/□以下であることがさらに好ましい。
【0149】
有機半導体薄膜は、電子移動度又は正孔移動度のいずれか大きいほうが、好ましくは10-5cm2/V/秒以上であり、より好ましくは10-3cm2/V/秒以上であり、さらに好ましくは10-1cm2/V/秒以上である。また、有機半導体薄膜を用いて、有機トランジスタを作製することができる。具体的には、SiO2等の絶縁膜とゲート電極とを形成したSi基板上に有機半導体薄膜を形成し、Au等でソース電極とドレイン電極を形成することにより、有機トランジスタとすることができる。
【0150】
−有機トランジスタ(高分子電界効果トランジスタ)−
次に、有機トランジスタの一態様である高分子電界効果トランジスタを説明する。
【0151】
本発明の高分子化合物は、高分子電界効果トランジスタの材料として、中でも活性層の材料として好適に用いることができる。高分子電界効果トランジスタの構造としては、通常は、ソース電極及びドレイン電極が高分子からなる活性層に接して設けられており、さらに活性層に接した絶縁層を挟んでゲート電極が設けられていればよい。
【0152】
高分子電界効果トランジスタは、通常は支持基板上に形成される。支持基板としては電界効果トランジスタとしての特性を阻害しなければ材質は特に制限されないが、ガラス基板やフレキシブルなフィルム基板やプラスチック基板も用いることができる。
【0153】
高分子電界効果トランジスタは、公知の方法、例えば、特開平5-110069号公報に記載の方法により製造することができる。
【0154】
活性層を形成する際に、有機溶媒可溶性の高分子化合物を用いることが製造上非常に有利であり好ましい。有機溶媒可溶性の高分子化合物を溶媒に溶解させてなる溶液からの成膜には、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法等の塗布法を用いることができる。
【0155】
高分子電界効果トランジスタを作製後、封止してなる封止高分子電界効果トランジスタが好ましい。これにより、高分子電界効果トランジスタが、大気から遮断され、高分子電界効果トランジスタの特性の低下を抑えることができる。
【0156】
封止する方法としては、紫外線(UV)硬化樹脂、熱硬化樹脂や無機のSiONx膜等でカバーする方法、ガラス板やフィルムをUV硬化樹脂、熱硬化樹脂等で張り合わせる方法等が挙げられる。大気との遮断を効果的に行うため高分子電界効果トランジスタを作製後、封止するまでの工程を大気に曝すことなく(例えば、乾燥した窒素雰囲気中、真空中等で)行うことが好ましい。
【0157】
−有機太陽電池−
次に、有機太陽電池について説明する。有機太陽電池の一態様である有機光電変換素子で、光起電力効果を利用する固体光電変換素子を説明する。
【0158】
本発明の高分子化合物は、有機光電変換素子の材料として、中でも有機半導体と金属との界面を利用するショットキー障壁型素子の有機半導体層として、また、有機半導体と無機半導体あるいは有機半導体どうしの界面を利用するpnへテロ接合型素子の有機半導体層として、好適に用いることができる。
【0159】
さらに、ドナー・アクセプターの接触面積を増大させたバルクヘテロ接合型素子における電子供与性高分子、電子受容性高分子として、また、高分子・低分子複合系を用いる有機光電変換素子、例えば、電子受容体としてフラーレン誘導体を分散したバルクヘテロ接合型有機光電変換素子の電子供与性共役系高分子(分散支持体)として、好適に用いることができる。
【0160】
有機光電変換素子の構造としては、例えば、pnへテロ接合型素子では、オーム性電極、例えば、ITO上に、p型半導体層を形成し、さらに、n型半導体層を積層し、その上にオーム性電極が設けられていればよい。
【0161】
有機光電変換素子は、通常は支持基板上に形成される。支持基板としては有機光電変換素子としての特性を阻害しなければ材質は特に制限されないが、ガラス基板やフレキシブルなフィルム基板やプラスチック基板も用いることができる。
【0162】
有機光電変換素子は、公知の方法、例えば、Synth.Met.,102,982(1999)に記載の方法やScience,270,1789(1995)に記載の方法により製造することができる。
【0163】
<高分子発光素子>
次に、本発明の高分子発光素子について説明する。
【0164】
本発明の高分子発光素子は、陽極及び陰極からなる電極と、該電極間に設けられ前記高分子化合物を含む発光層とを有するものである。
【0165】
また、本発明の高分子発光素子としては、(1)陰極と発光層との間に電子輸送層を設けた高分子発光素子、(2)陽極と発光層との間に正孔輸送層を設けた高分子発光素子、(3)陰極と発光層との間に電子輸送層を設け、かつ陽極と発光層との間に正孔輸送層を設けた高分子発光素子等が挙げられる。
【0166】
より具体的には、以下のa)〜d)の構造が例示される。
a)陽極/発光層/陰極
b)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
c)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
d)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(ここで、/は各層が隣接して積層されていることを示す。以下同じ。)
【0167】
ここで、発光層とは、発光する機能を有する層であり、正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する層であり、電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する層である。なお、電子輸送層と正孔輸送層を総称して電荷輸送層と呼ぶ。発光層、正孔輸送層、電子輸送層は、それぞれ独立に2層以上用いてもよい。
【0168】
発光層の成膜の方法に制限はないが、溶液からの成膜による方法が例示される。
【0169】
溶液からの成膜には、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法を用いることができる。
【0170】
高分子発光素子作製の際に、本発明の高分子化合物を用いることにより、溶液から成膜する場合、この溶液を塗布後乾燥により溶媒を除去するだけでよく、また電荷輸送材料や発光材料を混合した場合においても同様な手法が適用でき、製造上非常に有利である。
【0171】
発光層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、例えば、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0172】
本発明の高分子発光素子においては、発光層に上記高分子化合物以外の発光材料を混合して使用してもよい。また、本発明の高分子発光素子においては、上記高分子化合物以外の発光材料を含む発光層が、上記高分子化合物を含む発光層と積層されていてもよい。
【0173】
前記高分子化合物以外の発光材料としては、公知のものが使用できる。低分子化合物では、例えば、ナフタレン誘導体、アントラセン及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体、ポリメチン系、キサンテン系、クマリン系、シアニン系等の色素類、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン及びその誘導体、テトラフェニルブタジエン及びその誘導体等を用いることができる。具体的には、例えば、特開昭57-51781号、同59-194393号公報に記載されているもの、前記三重項励起状態からの発光を示す金属錯体等、公知のものが使用可能である。
【0174】
本発明の高分子発光素子が正孔輸送層を有する場合、使用される正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体等が例示される。具体的には、該正孔輸送材料として、特開昭63-70257号公報、同63-175860号公報、特開平2-135359号公報、同2-135361号公報、同2-209988号公報、同3-37992号公報、同3-152184号公報に記載されているもの等が例示される。
【0175】
これらの中で、正孔輸送層に用いる正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミン化合物基を有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体等の高分子正孔輸送材料が好ましく、さらに好ましくはポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体である。低分子の正孔輸送材料の場合には、高分子バインダーに分散させて用いることが好ましい。
【0176】
ポリビニルカルバゾール及びその誘導体は、例えば、ビニルモノマーからカチオン重合又はラジカル重合によって得られる。
【0177】
ポリシラン及びその誘導体としては、ケミカル・レビュー(Chem.Rev.)第89巻、1359頁(1989年)、英国特許GB2300196号公開明細書に記載の化合物等が例示される。合成方法もこれらに記載の方法を用いることができるが、特にキッピング法が好適に用いられる。
【0178】
ポリシロキサン誘導体は、シロキサン骨格構造には正孔輸送性がほとんどないので、側鎖又は主鎖に上記低分子正孔輸送材料の構造を有するものが好適に用いられる。特に正孔輸送性の芳香族アミンを側鎖又は主鎖に有するものが例示される。
【0179】
正孔輸送層の成膜の方法に制限はないが、低分子正孔輸送材料では、高分子バインダーとの混合溶液からの成膜による方法が例示される。また、高分子正孔輸送材料では、溶液からの成膜による方法が例示される。
【0180】
溶液からの成膜に用いる溶媒としては、正孔輸送材料を溶解させるものであれば特に制限はない。該溶媒として、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒が例示される。
【0181】
溶液からの成膜には、溶液からのスピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法を用いることができる。
【0182】
混合する高分子バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収が強くないものが好適に用いられる。該高分子バインダーとして、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサン等が例示される。
【0183】
正孔輸送層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、該正孔輸送層の膜厚としては、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0184】
本発明の高分子発光素子が電子輸送層を有する場合、使用される電子輸送材料としては公知のものが使用でき、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体等が例示される。具体的には、特開昭63-70257号公報、同63-175860号公報、特開平2-135359号公報、同2-135361号公報、同2-209988号公報、同3-37992号公報、同3-152184号公報に記載されているもの等が例示される。
【0185】
これらのうち、オキサジアゾール誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体が好ましく、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ベンゾキノン、アントラキノン、トリス(8−キノリノール)アルミニウム、ポリキノリンがさらに好ましい。
【0186】
電子輸送層の成膜法としては特に制限はないが、低分子電子輸送材料では、粉末からの真空蒸着法、溶液又は溶融状態からの成膜による方法が、高分子電子輸送材料では溶液又は溶融状態からの成膜による方法がそれぞれ例示される。溶液又は溶融状態からの成膜時には、高分子バインダーを併用してもよい。
【0187】
溶液からの成膜に用いる溶媒としては、電子輸送材料及び/又は高分子バインダーを溶解させるものであれば特に制限はない。該溶媒として、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒が例示される。
【0188】
溶液又は溶融状態からの成膜には、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法を用いることができる。
【0189】
混合する高分子バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また、可視光に対する吸収が強くないものが好適に用いられる。該高分子バインダーとしては、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサン等が例示される。
【0190】
電子輸送層の膜厚は、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、該電子輸送層の膜厚は、例えば、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0191】
また、電極に隣接して設けた電荷輸送層のうち、電極からの電荷注入効率を改善する機能を有し、素子の駆動電圧を下げる効果を有するものは、特に電荷注入層(正孔注入層、電子注入層)と一般に呼ばれることがある。
【0192】
さらに電極との密着性向上や電極からの電荷注入の改善のために、電極に隣接して前記の電荷注入層又は絶縁層を設けてもよく、また、界面の密着性向上や混合の防止等のために電荷輸送層や発光層の界面に薄いバッファー層を挿入してもよい。
【0193】
積層する層の順番や数、及び各層の厚さについては、発光効率や素子寿命を勘案して適宜選択すればよい。
【0194】
本発明において、電荷注入層(電子注入層、正孔注入層)を設けた高分子発光素子としては、陰極に隣接して電荷注入層を設けた高分子発光素子、陽極に隣接して電荷注入層を設けた高分子発光素子が挙げられる。
【0195】
例えば、具体的には、以下のe)〜p)の構造が挙げられる。
e)陽極/電荷注入層/発光層/陰極
f)陽極/発光層/電荷注入層/陰極
g)陽極/電荷注入層/発光層/電荷注入層/陰極
h)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
i)陽極/正孔輸送層/発光層/電荷注入層/陰極
j)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電荷注入層/陰極
k)陽極/電荷注入層/発光層/電荷輸送層/陰極
l)陽極/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
m)陽極/電荷注入層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
n)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電荷輸送層/陰極
o)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
p)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
【0196】
電荷注入層の具体的な例としては、導電性高分子を含む層、陽極と正孔輸送層との間に設けられ、陽極材料と正孔輸送層に含まれる正孔輸送材料との中間の値のイオン化ポテンシャルを有する材料を含む層、陰極と電子輸送層との間に設けられ、陰極材料と電子輸送層に含まれる電子輸送材料との中間の値の電子親和力を有する材料を含む層等が例示される。
【0197】
上記電荷注入層が導電性高分子を含む層の場合、該導電性高分子の電気伝導度は、10-5S/cm以上103S/cm以下であることが好ましく、発光画素間のリーク電流を小さくするためには、10-5S/cm以上102S/cm以下がより好ましく、10-5S/cm以上101S/cm以下がさらに好ましい。通常は該導電性高分子の電気伝導度を10-5S/cm以上103S/cm以下とするために、該導電性高分子に適量のイオンをドープする。
【0198】
ドープするイオンの種類は、正孔注入層であればアニオン、電子注入層であればカチオンである。アニオンの例としては、ポリスチレンスルホン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、樟脳スルホン酸イオン等が挙げられ、カチオンの例としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン等が挙げられる。
【0199】
電荷注入層の膜厚は、例えば、1nm〜100nmであり、2nm〜50nmが好ましい。
【0200】
電荷注入層に用いる材料は、電極や隣接する層の材料との関係で適宜選択すればよく、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、芳香族アミン構造を主鎖又は側鎖に含む重合体等の導電性高分子、金属フタロシアニン(銅フタロシアニン等)、カーボン等が例示される。
【0201】
絶縁層は、電荷注入を容易にする機能を有するものである。この絶縁層の平均厚さは、通常、0.1〜20nmであり、好ましくは0.5〜10nm、より好ましくは1〜5nmである。絶縁層の材料としては、金属フッ化物、金属酸化物、有機絶縁材料等が挙げられる。絶縁層を設けた高分子発光素子としては、陰極に隣接して絶縁層を設けた高分子発光素子、陽極に隣接して絶縁層を設けた高分子発光素子が挙げられる。
【0202】
具体的には、例えば、以下のq)〜ab)の構造が挙げられる。
q)陽極/絶縁層/発光層/陰極
r)陽極/発光層/絶縁層/陰極
s)陽極/絶縁層/発光層/絶縁層/陰極
t)陽極/絶縁層/正孔輸送層/発光層/陰極
u)陽極/正孔輸送層/発光層/絶縁層/陰極
v)陽極/絶縁層/正孔輸送層/発光層/絶縁層/陰極
w)陽極/絶縁層/発光層/電子輸送層/陰極
x)陽極/発光層/電子輸送層/絶縁層/陰極
y)陽極/絶縁層/発光層/電子輸送層/絶縁層/陰極
z)陽極/絶縁層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
aa)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/絶縁層/陰極
ab)陽極/絶縁層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/絶縁層/陰極
【0203】
本発明の高分子発光素子を形成する基板は、電極を形成し、有機物の層を形成する際に変化しないものであればよく、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコン等の基板が挙げられる。不透明な基板の場合には、反対の電極が透明又は半透明であることが好ましい。
【0204】
本発明において、通常は、陽極及び陰極からなる電極の少なくとも一方が透明又は半透明であり、陽極側が透明又は半透明であることが好ましい。
【0205】
陽極の材料としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等が用いられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等からなる導電性ガラスを用いて作成された膜(NESA等)や、金、白金、銀、銅等が用いられ、ITO、インジウム・亜鉛・オキサイド、酸化スズが好ましい。作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。また、該陽極として、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等の有機の透明導電膜を用いてもよい。
【0206】
陽極の膜厚は、光の透過性と電気伝導度とを考慮して、適宜選択することができるが、例えば、10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0207】
また、陽極上に、電荷注入を容易にするために、フタロシアニン誘導体、導電性高分子、カーボン等からなる層、あるいは金属酸化物や金属フッ化物、有機絶縁材料等からなる層を設けてもよい。
【0208】
陰極の材料としては、仕事関数の小さい材料が好ましい。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、及びそれらのうち2つ以上の合金、あるいはそれらのうち1つ以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうち1つ以上との合金、グラファイト又はグラファイト層間化合物等が用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金等が挙げられる。陰極を2層以上の積層構造としてもよい。
【0209】
陰極の膜厚は、電気伝導度や耐久性を考慮して、適宜選択することができるが、例えば、10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0210】
陰極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、また金属薄膜を熱圧着するラミネート法等が用いられる。また、陰極と有機物層との間に、導電性高分子からなる層、あるいは金属酸化物や金属フッ化物、有機絶縁材料等からなる層を設けてもよく、陰極作製後、該高分子発光素子を保護する保護層を装着していてもよい。該高分子発光素子を長期安定的に用いるためには、素子を外部から保護するために、保護層及び/又は保護カバーを装着することが好ましい。
【0211】
該保護層としては、樹脂、金属酸化物、金属フッ化物、金属ホウ化物等を用いることができる。また、保護カバーとしては、ガラス板、表面に低透水率処理を施したプラスチック板等を用いることができ、該カバーを熱硬化樹脂や光硬化樹脂で素子基板と貼り合わせて密閉する方法が好適に用いられる。スペーサーを用いて空間を維持すれば、素子がキズつくのを防ぐことが容易である。該空間に窒素やアルゴンのような不活性なガスを封入すれば、陰極の酸化を防止することができ、さらに酸化バリウム等の乾燥剤を該空間内に設置することにより製造工程で吸着した水分が素子にタメージを与えるのを抑制することが容易となる。これらのうち、いずれか1つ以上の方策をとることが好ましい。
【0212】
本発明の高分子発光素子は面状光源、セグメント表示装置、ドットマトリックス表示装置、液晶表示装置(例えば、バックライト等)等の表示装置等に用いることができる。
【0213】
本発明の高分子発光素子を用いて面状の発光を得るためには、面状の陽極と陰極が重なり合うように配置すればよい。また、パターン状の発光を得るためには、前記面状の発光素子の表面にパターン状の窓を設けたマスクを設置する方法、非発光部の有機物層を極端に厚く形成し実質的に非発光とする方法、陽極若しくは陰極のいずれか一方、又は両方の電極をパターン状に形成する方法がある。これらのいずれかの方法でパターンを形成し、いくつかの電極を独立にOn/OFFできるように配置することにより、数字や文字、簡単な記号等を表示できるセグメントタイプの表示素子が得られる。更に、ドットマトリックス素子とするためには、陽極と陰極をともにストライプ状に形成して直交するように配置すればよい。複数の種類の発光色の異なる高分子化合物を塗り分ける方法や、カラーフィルター又は蛍光変換フィルターを用いる方法により、部分カラー表示、マルチカラー表示が可能となる。ドットマトリックス素子は、パッシブ駆動も可能であるし、TFT等と組み合わせてアクティブ駆動してもよい。これらの表示素子は、コンピュータ、テレビ、携帯端末、携帯電話、カーナビゲーション、ビデオカメラのビューファインダー等の表示装置として用いることができる。
【0214】
さらに、前記面状の発光素子は、自発光薄型であり、液晶表示装置のバックライト用の面状光源、又は面状の照明用光源として好適に用いることができる。また、フレキシブルな基板を用いれば、曲面状の光源や表示装置としても使用できる。
【実施例】
【0215】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。本実施例において、数平均分子量、重量平均分子量は、テトラヒドロフランを溶媒として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量を求めた。
【0216】
<合成例1>(4,4’−ジオクチルオキシビフェニルの合成)
4,4’−ジヒドロキシビフェニル 56gを、エタノール 500gに溶解した。この溶液に、水酸化カリウム 40gを加え(分割添加)、反応させた。次に、この溶液を昇温し、70℃で、1−ブロムオクタン 128gを滴下した。滴下後、引き続き70℃で7時間反応させた。なお、反応は、窒素ガス雰囲気下で行った。
反応後、この反応溶液を冷却した後、生成した沈殿を、ろ過し、回収した。次に、この沈殿を、メタノール 500mlで洗浄した。次に、この沈殿をメタノール 500ml/イオン交換水 300ml混合溶媒で洗浄し、さらに、アセトン 500ml/イオン交換水 300ml混合溶媒で洗浄した。この沈殿を減圧乾燥して、下記構造式:

で表される4,4’−ジオクチルオキシビフェニル 105gを得た。
【0217】
<合成例2>(3,3’−ジブロム−4,4’−ジオクチルオキシビフェニル合成)
4,4’−ジオクチルオキシビフェニル 20.5gをクロロホルム 650gに溶解した。この溶液に、臭素 16.8gを、反応温度が30℃以上にならないように注意しながら滴下した。滴下後、引き続き、室温で45時間反応した。反応後、反応液にチオ硫酸ナトリウム水溶液を加え、未反応臭素を処理した。次に、この溶液を静置し、分液したクロロホルム溶液を回収した。このクロロホルム溶液を、イオン交換水で3回洗浄した後、ろ過して、不溶物を除去した。次に、得られたクロロホルム溶液を、アルミナカラムに通し、精製した。次に、得られた溶液から、減圧下、溶媒を留去し、粗生成物を得た。この粗生成物を、トルエン100g/メタノール85g混合溶媒を用いて、再結晶精製した。得られた沈殿を減圧乾燥して、下記構造式:

で表される3,3’−ジブロム−4,4’−ジオクチルオキシビフェニル 20gを得た。
【0218】
<実施例1>(高分子化合物1の合成)
下記構造式:

で表される単量体(1) 0.61gと3,3’−ジブロム−4,4’−ジオクチルオキシビフェニル 0.28gと2,2’−ビピリジル 0.70gとを反応容器に仕込んだ後、反応系内を窒素ガスで置換した。これに、あらかじめアルゴンガスでバブリングして脱気したテトラヒドロフラン(脱水溶媒)70gを加えた。次に、この混合溶液に、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)1.24gを加え、室温で10分間攪拌した後、60℃で5時間反応した。なお、反応は、窒素ガス雰囲気下で行った。
【0219】
反応後、この反応溶液を室温まで冷却した後、この溶液に、メタノール40ml/イオン交換水40ml混合溶液を注ぎ込み、約1時間攪拌した。次に、生成した沈殿をろ過し、回収した。この沈殿を減圧乾燥した後、トルエンに溶解した。このトルエン溶液をろ過し、不溶物を除去した後、このトルエン溶液を、アルミナカラムに通し、精製した。次に、このトルエン溶液を、1規定塩酸水溶液で洗浄した後、静置し、分液したトルエン溶液を回収した。次に、このトルエン溶液を、約5重量%アンモニア水で洗浄した後、静置し、分液したトルエン溶液を回収した。次に、このトルエン溶液をイオン交換水で洗浄した後、静置し、分液したトルエン溶液を回収した。次に、このトルエン溶液を、メタノール中に注ぎ込み、再沈した。
【0220】
次に、再沈により生成した沈殿をろ過し、回収した。この沈殿を減圧乾燥して、重合体0.29gを得た。この重合体を高分子化合物1と呼ぶ。高分子化合物1のポリスチレン換算の数平均分子量は1.1×104であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は3.9×104であった。
【0221】
仕込みから推定される高分子化合物1に含まれる繰り返し単位の構造を下記に示す。
(なお、仕込みから推定される高分子化合物1に含まれる繰り返し単位のモル比は、C/D=7/3である。)
C D

【0222】
<比較例1>(高分子化合物2の合成)
前記単量体(1) 0.61gと3,3’−ジオクチルオキシ−4,4’−ジブロムビフェニル 0.26gと2,2’−ビピリジル0.66gとを反応容器に仕込んだ後、反応系内を窒素ガスで置換した。これに、あらかじめアルゴンガスでバブリングして脱気したテトラヒドロフラン(脱水溶媒)70gを加えた。次に、この混合溶液に、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)1.15gを加え、室温で10分間攪拌した後、60℃で3時間反応した。なお、反応は、窒素ガス雰囲気下で行った。
【0223】
反応後、この反応溶液を室温まで冷却した後、この溶液に、メタノール40ml/イオン交換水40ml混合溶液を注ぎ込み、約1時間攪拌した。次に、生成した沈殿をろ過し、回収した。この沈殿を減圧乾燥した後、トルエンに溶解した。このトルエン溶液をろ過し、不溶物を除去した後、このトルエン溶液を、アルミナカラムに通し、精製した。次に、このトルエン溶液を、1規定塩酸水溶液で洗浄した後、静置し、分液したトルエン溶液を回収した。次に、このトルエン溶液を、約5重量%アンモニア水で洗浄した後、静置し、分液したトルエン溶液を回収した。次に、このトルエン溶液をイオン交換水で洗浄した後、静置し、分液したトルエン溶液を回収した。次に、このトルエン溶液を、メタノール中に注ぎ込み、再沈した。
【0224】
次に、再沈により生成した沈殿をろ過し、回収した。この沈殿を減圧乾燥して、重合体0.07gを得た。この重合体を高分子化合物2と呼ぶ。高分子化合物2のポリスチレン換算の数平均分子量は1.6×104であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は3.5×104であった。
【0225】
仕込みから推定される高分子化合物2に含まれる繰り返し単位の構造を下記に示す。
(なお、仕込みから推定される高分子化合物2に含まれる繰り返し単位のモル比は、K/L=7/3である。)
K L

【0226】
<実施例2>(高分子化合物3の合成)
下記構造式:

で表される単量体(2) 0.54gと、下記構造式:

で表される単量体(3) 0.31gと3,3’−ジブロム−4,4’−ジオクチルオキシビフェニル 0.085gと2,2’−ビピリジル 0.63gとを反応容器に仕込んだ後、反応系内を窒素ガスで置換した。これに、あらかじめアルゴンガスでバブリングして脱気したテトラヒドロフラン(脱水溶媒)60gを加えた。次に、この混合溶液に、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)1.11gを加え、室温で10分間攪拌した後、室温で20時間反応した。なお、反応は、窒素ガス雰囲気下で行った。
【0227】
反応後、この溶液に、メタノール40ml/イオン交換水40ml混合溶液を注ぎ込み、約1時間攪拌した。次に、生成した沈殿をろ過し、回収した。この沈殿を減圧乾燥した後、トルエンに溶解した。このトルエン溶液をろ過し、不溶物を除去した後、このトルエン溶液を、5重量%酢酸水溶液で洗浄した後、静置し、分液したトルエン溶液を回収した。次に、このトルエン溶液を、約5重量%アンモニア水で洗浄した後、静置し、分液したトルエン溶液を回収した。次に、このトルエン溶液をイオン交換水で洗浄した後、静置し、分液したトルエン溶液を回収した。次に、このトルエン溶液をアルミナカラムに通して精製した。次に、得られたトルエン溶液をメタノール中に注ぎ込み、再沈した。
【0228】
次に、再沈により生成した沈殿をろ過し、回収した。この沈殿を減圧乾燥して、重合体0.2gを得た。この重合体を高分子化合物3と呼ぶ。高分子化合物3のポリスチレン換算の数平均分子量は2.0×104であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は1.1×105であった。
【0229】
仕込みから推定される高分子化合物3に含まれる繰り返し単位の構造を下記に示す。
(なお、仕込みから推定される高分子化合物3に含まれる繰り返し単位のモル比は、M/N/O=6/3/1である。)
M N O

【0230】
<比較例2>(高分子化合物4の合成)
単量体(2) 0.54gと単量体(3) 0.31gと3,3’−ジオクチルオキシ−4,4’−ジブロムビフェニル 0.085gと2,2’−ビピリジル 0.63gとを反応容器に仕込んだ後、反応系内を窒素ガスで置換した。これに、あらかじめアルゴンガスでバブリングして脱気したテトラヒドロフラン(脱水溶媒)60gを加えた。次に、この混合溶液に、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)1.11gを加え、室温で10分間攪拌した後、室温で20時間反応した。なお、反応は、窒素ガス雰囲気下で行った。
【0231】
反応後、この溶液に、メタノール40ml/イオン交換水40ml混合溶液を注ぎ込み、約1時間攪拌した。次に、生成した沈殿をろ過し、回収した。この沈殿を減圧乾燥した後、トルエンに溶解した。このトルエン溶液をろ過し、不溶物を除去した後、このトルエン溶液を、5重量%酢酸水溶液で洗浄した後、静置し、分液したトルエン溶液を回収した。次に、このトルエン溶液を、約5重量%アンモニア水で洗浄した後、静置し、分液したトルエン溶液を回収した。次に、このトルエン溶液をイオン交換水で洗浄した後、静置し、分液したトルエン溶液を回収した。次に、このトルエン溶液を、アルミナカラムに通し、精製した。次に、このトルエン溶液を、メタノール中に注ぎ込み、再沈した。
【0232】
次に、再沈により生成した沈殿をろ過し、回収した。この沈殿を減圧乾燥して、重合体0.24gを得た。この重合体を高分子化合物4と呼ぶ。高分子化合物4のポリスチレン換算の数平均分子量は2.1×104であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は6.3×104であった。
【0233】
仕込みから推定される高分子化合物4に含まれる繰り返し単位の構造を下記に示す。
(なお、仕込みから推定される高分子化合物4に含まれる繰り返し単位のモル比は、P/Q/R=6/3/1である。)
P Q R

【0234】
<実施例3>(高分子化合物5の合成)
単量体(1) 0.52gと、下記構造式:

で表される単量体(4) 0.21gと3,3’−ジブロム−4,4’−ジオクチルオキシビフェニル 0.085gと2,2’−ビピリジル 0.63gとを反応容器に仕込んだ後、反応系内を窒素ガスで置換した。これに、あらかじめアルゴンガスでバブリングして脱気したテトラヒドロフラン(脱水溶媒)60gを加えた。次に、この混合溶液に、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)1.11gを加え、室温で10分間攪拌した後、室温で21時間反応した。なお、反応は、窒素ガス雰囲気下で行った。
【0235】
反応後、この溶液に、メタノール40ml/イオン交換水40ml混合溶液を注ぎ込み、約1時間攪拌した。次に、生成した沈殿をろ過し、回収した。この沈殿を減圧乾燥した後、トルエンに溶解した。このトルエン溶液をろ過し、不溶物を除去した後、このトルエン溶液を、5重量%酢酸水溶液で洗浄した後、静置し、分液したトルエン溶液を回収した。次に、このトルエン溶液を、4重量%アンモニア水で洗浄した後、静置し、分液したトルエン溶液を回収した。次に、このトルエン溶液をイオン交換水で洗浄した後、静置し、分液し、トルエン溶液を回収した。次に、このトルエン溶液を、アルミナカラムに通し、精製した。次に、このトルエン溶液を、メタノール中に注ぎ込み、再沈した。
【0236】
次に、再沈により生成した沈殿をろ過し、回収した。この沈殿を減圧乾燥して、重合体0.25gを得た。この重合体を高分子化合物5と呼ぶ。高分子化合物5のポリスチレン換算の数平均分子量は1.5×104であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は5.4×104であった。
【0237】
仕込みから推定される高分子化合物5に含まれる繰り返し単位の構造を下記に示す。
(なお、仕込みから推定される高分子化合物5に含まれる繰り返し単位のモル比は、S/T/U=6/3/1である。)
S T U

【0238】
<比較例3>(高分子化合物6の合成)
単量体(1) 0.52gと単量体(4) 0.21gと3,3’−ジオクチルオキシ−4,4’−ジブロムビフェニル 0.085gと2,2’−ビピリジル 0.63gとを反応容器に仕込んだ後、反応系内を窒素ガスで置換した。これに、あらかじめアルゴンガスでバブリングして脱気したテトラヒドロフラン(脱水溶媒)60gを加えた。次に、この混合溶液に、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)1.11gを加え、室温で10分間攪拌した後、室温で21時間反応した。なお、反応は、窒素ガス雰囲気下で行った。
【0239】
反応後、この溶液に、メタノール40ml/イオン交換水40ml混合溶液を注ぎ込み、約1時間攪拌した。次に、生成した沈殿をろ過し、回収した。この沈殿を減圧乾燥した後、トルエンに溶解した。このトルエン溶液をろ過し、不溶物を除去した後、このトルエン溶液を、5重量%酢酸水溶液で洗浄した後、静置し、分液したトルエン溶液を回収した。次に、このトルエン溶液を、4重量%アンモニア水で洗浄した後、静置し、分液したトルエン溶液を回収した。次に、このトルエン溶液をイオン交換水で洗浄した後、静置し、分液したトルエン溶液を回収した。次に、このトルエン溶液を、アルミナカラムに通し、精製した。次に、このトルエン溶液を、メタノール中に注ぎ込み、再沈した。
【0240】
次に、再沈により生成した沈殿をろ過し、回収した。この沈殿を減圧乾燥して、重合体0.24gを得た。この重合体を高分子化合物6と呼ぶ。高分子化合物6のポリスチレン換算の数平均分子量は1.6×104であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は4.0×104であった。
【0241】
仕込みから推定される高分子化合物6に含まれる繰り返し単位の構造を下記に示す。
(なお、仕込みから推定される高分子化合物6に含まれる繰り返し単位のモル比は、V/W/X=6/3/1である。)
V W X

【0242】
<比較例4>(高分子化合物7の合成)
下記構造式:

で表される単量体(5) 0.37gと3,3’−ジブロム−4,4’−ジオクチルオキシビフェニル 0.28gと2,2’−ビピリジル 0.66gとを反応容器に仕込んだ後、反応系内を窒素ガスで置換した。これに、あらかじめアルゴンガスでバブリングして脱気したテトラヒドロフラン(脱水溶媒)60gを加えた。次に、この混合溶液に、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)1.15gを加え、室温で20時間反応した。なお、反応は、窒素ガス雰囲気下で行った。
【0243】
反応後、この溶液に、メタノール40ml/イオン交換水40ml混合溶液を注ぎ込み、約1時間攪拌した。次に、この溶液から、減圧下、溶媒を留去した。生成した沈殿にトルエンを加え、攪拌し、溶解した。このトルエン溶液をろ過し、不溶物を除去した後、得られたトルエン溶液を、約5重量%の酢酸水溶液で洗浄した後、静置し、分液したトルエン溶液を回収した。次に、得られたトルエン溶液を、4重量%アンモニア水で洗浄した後、静置し、分液したトルエン溶液を回収した。次に、得られたトルエン溶液をイオン交換水で洗浄した後、静置し、分液したトルエン溶液を回収した。次に、得られたトルエン溶液を、アルミナカラムに通し、精製した。次に、得られたトルエン溶液を減圧濃縮した後、これに、メタノールを加え、再沈し、生成した沈殿を回収した。
【0244】
次に、この沈殿をメタノールで洗浄した後、減圧乾燥して、重合体0.01gを得た。この重合体を高分子化合物7と呼ぶ。高分子化合物7のポリスチレン換算の数平均分子量は6.5×103であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は1.6×104であった。
【0245】
仕込みから推定される高分子化合物7に含まれる繰り返し単位の構造を下記に示す。
(なお、仕込みから推定される高分子化合物7に含まれる繰り返し単位のモル比は、A/B=7/3である。)
A B

【0246】
<比較例5>(高分子化合物8の合成)
下記構造式:

で表される単量体(6) 0.43gと3,3’−ジブロム−4,4’−ジオクチルオキシビフェニル 0.28gと2,2’−ビピリジル 0.66gとを反応容器に仕込んだ後、反応系内を窒素ガスで置換した。これに、あらかじめアルゴンガスでバブリングして脱気したテトラヒドロフラン(脱水溶媒)60gを加えた。次に、この混合溶液に、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)1.15gを加え、室温で20時間反応した。なお、反応は、窒素ガス雰囲気下で行った。
【0247】
反応後、この溶液に、メタノール40ml/イオン交換水40ml混合溶液を注ぎ込み、約1時間攪拌した。次に、この溶液から、減圧下、溶媒を留去した。生成した沈殿にトルエンを加え、攪拌し、溶解した。このトルエン溶液をろ過し、不溶物を除去した後、得られたトルエン溶液を、約5重量%の酢酸水溶液で洗浄した後、静置し、分液したトルエン溶液を回収した。次に、得られたトルエン溶液を、4重量%アンモニア水で洗浄した後、静置し、分液したトルエン溶液を回収した。次に、得られたトルエン溶液をイオン交換水で洗浄した後、静置し、分液したトルエン溶液を回収した。次に、得られたトルエン溶液を、アルミナカラムに通し、精製した。次に、このトルエン溶液を減圧濃縮した後、これに、メタノールを加え、再沈し、生成した沈殿を回収した。
【0248】
次に、この沈殿をメタノールで洗浄した後、減圧乾燥して、重合体0.17gを得た。この重合体を高分子化合物8と呼ぶ。高分子化合物8のポリスチレン換算の数平均分子量は5.4×103であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は8.7×103であった。
【0249】
仕込みから推定される高分子化合物8に含まれる繰り返し単位の構造を下記に示す。
(なお、仕込みから推定される高分子化合物8に含まれる繰り返し単位のモル比は、E/F=7/3である。)
E F

【0250】
<比較例6>(高分子化合物9の合成)
上記単量体(6) 0.37gと上記単量体(3) 0.31gと3,3’−ジブロム−4,4’−ジオクチルオキシビフェニル 0.085gと2,2’−ビピリジル 0.66gとを反応容器に仕込んだ後、反応系内を窒素ガスで置換した。これに、あらかじめアルゴンガスでバブリングして脱気したテトラヒドロフラン(脱水溶媒)60gを加えた。次に、この混合溶液に、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)1.15gを加え、室温で20時間反応した。なお、反応は、窒素ガス雰囲気下で行った。
【0251】
反応後、この溶液に、メタノール40ml/イオン交換水40ml混合溶液を注ぎ込み、約1時間攪拌した。次に、この溶液から、減圧下、溶媒を留去した。生成した沈殿にトルエンを加え、攪拌し、溶解した。このトルエン溶液をろ過し、不溶物を除去した後、得られたトルエン溶液を、約5重量%の酢酸水溶液で洗浄した後、静置し、分液したトルエン溶液を回収した。次に、得られたトルエン溶液を、4重量%アンモニア水で洗浄した後、静置し、分液したトルエン溶液を回収した。次に、得られたトルエン溶液をイオン交換水で洗浄した後、静置し、分液したトルエン溶液を回収した。次に、得られたトルエン溶液を、アルミナカラムに通し、精製した。次に、得られたトルエン溶液を減圧濃縮した後、これに、メタノールを加え、再沈し、生成した沈殿を回収した。
【0252】
次に、この沈殿をメタノールで洗浄した後、減圧乾燥して、重合体0.21gを得た。この重合体を高分子化合物9と呼ぶ。高分子化合物9のポリスチレン換算の数平均分子量は8.3×103であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は1.6×104であった。
【0253】
仕込みから推定される高分子化合物9に含まれる繰り返し単位の構造を下記に示す。
(なお、仕込みから推定される高分子化合物9に含まれる繰り返し単位のモル比は、G/H/I=6/3/1である。)
G H I

【0254】
<評価方法>(高分子化合物の蛍光特性評価)
高分子化合物の0.8重量%トルエン溶液を石英板上にスピンコートして高分子化合物の薄膜を作製した。この薄膜の蛍光スペクトルを蛍光分光光度計(JOBINYVON-SPEX社製、商品名:Fluorolog)を用い、励起波長350nmで測定した。薄膜での相対的な蛍光強度を得るために、水のラマン線の強度を標準に、波数プロットした蛍光スペクトルをスペクトル測定範囲で積分して、分光光度計(Varian社製、商品名:Cary5E)を用いて測定した、励起波長での吸光度で割り付けた値を求めた。
【0255】
高分子化合物1〜6の蛍光ピーク波長と蛍光強度の測定結果を表1に示す。高分子化合物1(実施例)は、高分子化合物2(比較例)よりも、強い蛍光を示すものと認められる。高分子化合物3(実施例)は、高分子化合物4(比較例)よりも強い蛍光を示すものと認められる。高分子化合物5(実施例)は、高分子化合物6(比較例)よりも強い蛍光を示すものと認められる。高分子化合物1(実施例)は、高分子化合物7、8(比較例)よりも、強い蛍光を示すものと認められる。高分子化合物3(実施例)は、高分子化合物9(比較例)よりも強い蛍光を示すものと認められる。
【0256】
【表1】

【0257】
<実施例4>(素子の作成及び評価)
高分子化合物1をキシレンに溶解し、ポリマー濃度1.0重量%のキシレン溶液Aを調製した。
スパッタ法により150nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板上に、ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(Bayer製、商品名:BaytronP CH8000)の懸濁液を0.2μmメンブランフィルターで濾過した液を用いて、スピンコートにより60nmの厚みで薄膜を形成し、ホットプレート上で200℃、10分間乾燥した。
次に、キシレン溶液Aを用いて、スピンコートにより600rpmの回転速度で成膜した。成膜後の膜厚は約70nmであった。さらに、これを減圧下80℃で1時間乾燥した後、陰極としてバリウムを約5nm、次いで、アルミニウムを約80nm蒸着してEL素子を作製した。なお、真空度が1×10-4Pa以下に到達した後に金属の蒸着を開始した。
前記EL素子に電圧を印加することにより、この素子から435nmにピークを有するEL発光が得られた。EL発光の強度は電流密度にほぼ比例していた。また、該素子は4.3Vから発光が開始し、最大発光効率は0.82cd/Aであった。得られた結果を表2に示す。
【0258】
<比較例7>
高分子化合物2をキシレンに溶解し、ポリマー濃度1.0重量%のキシレン溶液Bを調製した。実施例4において、キシレン溶液Aに代えてキシレン溶液Bを用いた以外は、実施例4と同様にして、EL素子を作製した。なお、キシレン溶液Bを用いた成膜後の膜厚保は約72nmであった。
前記EL素子に電圧を印加することにより、この素子から450nmにピークを有するEL発光が得られた。EL発光の強度は電流密度にほぼ比例していた。また、該素子は4.7Vから発光が開始し、最大発光効率は0.70cd/Aであった。得られた結果を表2に示す。
【0259】
<実施例5>
高分子化合物1に、下記構造式:

で表される化合物S1を5重量%添加した混合物の、1.3重量%キシレン溶液Cを調製した。
スパッタ法により150nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板に、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸の溶液(バイエル社、商品名:Baytron)を用いてスピンコートにより50nmの厚みで成膜し、ホットプレート上で200℃で10分間乾燥した。
次に、キシレン溶液Cを用いてスピンコートにより800rpmの回転速度で成膜した。膜厚は約63nmであった。これを窒素ガス雰囲気下130℃で1時間乾燥した後、陰極としてバリウムを約5nm、次いでアルミニウムを約80nm蒸着して、EL素子を作製した。なお、真空度が、1×10-4Pa以下に到達した後に金属の蒸着を開始した。
前記EL素子に電圧を引加することにより、この素子から510nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は5.65Vから発光が開始し、 8.4Vで100cd/m2の発光を示し、最大発光効率は1.8cd/Aであった。得られた結果を表2に示す。
【0260】
<比較例8>
高分子化合物2に、前記化合物S1を5重量%添加した混合物の、1.3重量%キシレン溶液Dを調製した。
スパッタ法により150nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板に、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸の溶液(バイエル社、商品名:Baytron)を用いてスピンコートにより50nmの厚みで成膜し、ホットプレート上で200℃で10分間乾燥した。
次に、キシレン溶液Dを用いてスピンコートにより800rpmの回転速度で成膜した。膜厚は約67nmであった。これを窒素ガス雰囲気下130℃で1時間乾燥した後、陰極としてバリウムを約5nm、次いでアルミニウムを約80nm蒸着して、EL素子を作製した。なお、真空度が、1×10-4Pa以下に到達した後に金属の蒸着を開始した。
前記EL素子に電圧を引加することにより、この素子から520nmにピークを有するEL発光が得られた。該素子は 6.7Vから発光が開始し、9.8Vで100cd/m2の発光を示し、最大発光効率は0.64cd/Aであった。得られた結果を表2に示す。
【0261】
<比較例9>(高分子化合物10の合成)
下記構造式:

で表される単量体(10) 0.58gと3,3’−ジブロム−4,4’−ジオクチルオキシビフェニル 0.26gと2,2’−ビピリジル 0.66gとを反応容器に仕込んだ後、反応系内を窒素ガスで置換した。これに、あらかじめアルゴンガスでバブリングして脱気したテトラヒドロフラン(脱水溶媒)70gを加えた。次に、この混合溶液に、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)1.15gを加え、室温で10分間攪拌した後、60℃で3時間反応した。なお、反応は、窒素ガス雰囲気下で行った。
【0262】
反応後、この反応溶液を室温まで冷却した後、この溶液に、メタノール60ml/イオン交換水60ml混合溶液を注ぎ込み、約1時間攪拌した。次に、生成した沈殿をろ過し、回収した。この沈殿を減圧乾燥した後、トルエンに溶解した。このトルエン溶液をろ過し、不溶物を除去した後、このトルエン溶液を、1規定塩酸水溶液で洗浄した後、静置し、分液したトルエン溶液を回収した。次に、このトルエン溶液を、約5重量%アンモニア水で洗浄した後、静置し、分液したトルエン溶液を回収した。次に、このトルエン溶液をイオン交換水で洗浄した後、静置し、分液したトルエン溶液を回収した。次に、このトルエン溶液を、メタノール中に注ぎ込み、再沈した。
【0263】
次に、再沈により生成した沈殿をろ過し、回収した。この沈殿を減圧乾燥して、重合体0.17gを得た。この重合体を高分子化合物10と呼ぶ。高分子化合物10のポリスチレン換算の数平均分子量は1.3×104であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は5.3×104であった。
【0264】
仕込みから推定される高分子化合物10に含まれる繰り返し単位の構造を下記に示す。
(なお、仕込みから推定される高分子化合物10に含まれる繰り返し単位のモル比は、C’/D’=7/3である。)
C’ D’

【0265】
<比較例10>(高分子化合物10の素子作成および評価)
高分子化合物10に、前記化合物S1を5重量%添加した混合物の1.0重量%キシレン溶液Eを調製した。
スパッタ法により150nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板に、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸の溶液(バイエル社、商品名:Baytron)を用いてスピンコートにより50nmの厚みで成膜し、ホットプレート上で200℃で10分間乾燥した。
次に、キシレン溶液Eを用いてスピンコートにより800rpmの回転速度で成膜した。膜厚は約77nmであった。これを窒素ガス雰囲気下130℃で1時間乾燥した後、陰極としてバリウムを約5nm、次いでアルミニウムを約80nm蒸着して、EL素子を作製した。なお、真空度が、1×10-4Pa以下に到達した後に金属の蒸着を開始した。
前記EL素子に電圧を引加することにより、この素子から510nmにピークを有するEL発光が得られたものの、高分子化合物10に由来する強い発光が観測された。該素子は 6.8Vから発光が開始し、13Vで100cd/m2の発光を示し、最大発光効率は0.05cd/Aであった。得られた結果を表2に示す。
【0266】
【表2】

【0267】
本発明の高分子化合物である高分子化合物1を用いて作製された素子は、本発明の高分子化合物ではない高分子化合物2、10を用いて作製した素子よりも、高い発光効率を示すことが認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):

(式中、R1〜R8はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。)
で表される繰り返し単位と、下記式(70):

〔式中、C環及びD環は、それぞれ独立に、芳香環を表す。C環及びD環は、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アリールアミノ基、1価の複素環基、アシル基、アシルオキシ基、置換カルボキシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい。置換基が複数存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。Eは、O又はSである。〕
で表される繰り返し単位とを有する高分子化合物。
【請求項2】
前記式(1)で表される繰り返し単位が、下記式(8):

(式中、R17及びR18は、それぞれ独立に置換基を表す。)
で表されるものである請求項1に記載の高分子化合物。
【請求項3】
前記R17及びR18が、それぞれ独立に、アルキル基又はアルコキシ基である請求項2に記載の高分子化合物。
【請求項4】
前記式(70)で表される繰り返し単位が、下記式(2a)〜(2d):

(式中、XはO又はSを表し、Raは置換基を表し、mは独立に0〜5の整数を表し、nは独立に0〜3の整数を表す。Raが複数存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。)
のいずれかで表される請求項1〜3のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【請求項5】
前記式(2a)で表される繰り返し単位が、下記式(2E):

〔式中、Yは、O又はSを表す。Rj及びRkは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基又はアリール基を表す。〕
で表されるものである請求項4に記載の高分子化合物。
【請求項6】
前記式(1)で表される繰り返し単位が前記式(8)で表される繰り返し単位であり、前記式(70)で表される繰り返し単位が前記式(2E)で表される繰り返し単位である請求項5に記載の高分子化合物。
【請求項7】
さらに、下記式(2):

(式中、Ar1は、前記式(70)で表されない2価の複素環基、又は2価の芳香族アミン基を表す。これらの基は、置換基を有していてもよい。)
で表される繰り返し単位を有する請求項1〜6のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【請求項8】
ポリスチレン換算の数平均分子量が1.0×103〜1.0×108である請求項1〜7のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【請求項9】
陽極及び陰極からなる電極と、該電極間に設けられ請求項1〜8のいずれか一項に記載の高分子化合物を含む発光層とを有する高分子発光素子。
【請求項10】
請求項9に記載の高分子発光素子を含む面状光源。
【請求項11】
請求項9に記載の高分子発光素子を含む表示装置。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の高分子化合物と溶媒とを含む液状組成物。
【請求項13】
さらに、低分子蛍光材料を含む請求項12に記載の液状組成物。
【請求項14】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の高分子化合物を含む薄膜。
【請求項15】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の高分子化合物を含む有機トランジスタ。
【請求項16】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の高分子化合物を含む太陽電池。

【公開番号】特開2008−95074(P2008−95074A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215727(P2007−215727)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】