説明

高分子発光材料および有機発光素子

【課題】発光効率が高く成膜特性が良好で、大面積化、量産化に適した高分子材料およびこれを用いた有機発光素子を提供する。
【解決手段】芳香環上に式(2)で示される重合性二重結合を有する重合性化合物を、(共)重合することにより得られる高分子材料であって、重合性化合物の一つが式(1)


〔式中R〜Rの一つは式(2)で示される基〕で示されるイリジウム錯体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギーによって発光し、平面表示パネルおよびこれに用いられるバックライトや照明光源、電子写真、光デバイス光源、標示板等に利用可能な有機発光素子およびこれに用いられる高分子発光材料に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子は電極間に挟まれた有機薄層に通電することによって発光する素子であり、低消費電力で高輝度が得られることに加えて電圧印加に対する応答速度が速い特徴から、表示素子や照明光源などへの応用が期待されている。1987年にコダック社のタン(C.W.Tang)らは真空蒸着法を用いて有機蛍光化合物分子を積層することにより、高輝度な発光を示す有機発光素子を最初に報告した(Appl. Phys. Lett., 51巻, 913頁, 1987年:非特許文献1)。それ以来、材料開発、素子構造の改良が急速に進み、近年ではカーオーディオや携帯電話の表示パネルとして有機発光素子が実用化されているが、素子の用途をさらに拡大するためには発光効率や耐久性の向上のほか、素子の大面積化や量産に向けた材料を開発することが必要である。
【0003】
発光効率を向上させる方法として有機重金属錯体化合物を用いた燐光発光材料が提案されている。これまでの有機発光素子で用いられてきた発光材料は蛍光材料であり、これは励起一重項状態から基底状態への遷移過程において光エネルギーを放出する。しかし、電気的励起における励起一重項状態と励起三重項状態の励起子の生成比が1:3であることから、蛍光発光材料を用いた有機発光素子における発光の内部量子効率は25%が上限である(月刊ディスプレイ,1998年10月号別冊「有機ELディスプレイ」,58頁:非特許文献2)。これに対し、M.A.Baldoらは励起三重項状態から燐光発光するイリジウム錯体を用いることにより7.5%の外部量子効率が得られることを見出した。これは外部取り出し効率が約20%と見積もられていることを考慮すると内部量子効率37.5%に相当し、蛍光発光材料を利用した場合の上限である25%という値を上回ることが可能なことを示した(Appl. Phys. Lett., 75巻, 4頁, 1999年:非特許文献3)。
【0004】
また、有機発光素子の有機層を成膜する方法としてはこれまで真空蒸着法が用いられてきたが、この方法は真空設備を必要とすること、大面積になるほど有機薄膜を均一の厚さに成膜することが困難になることなどの問題点を有しており、必ずしも大面積素子の量産に適した方法とは言えない。一方、塗布による成膜技術として開発されているスピンコート法やインクジェット法、印刷法は常圧下での成膜が可能な上、有機発光素子の大面積化や量産性に優れている。これらの塗布法による成膜には相分離や偏析を起こす可能性のある低分子化合物を用いることができないので、結晶化しない高分子発光材料の開発が必要であった。
【0005】
そこで発光効率が高く成膜性に優れた発光材料として、燐光発光性のイリジウム錯体構造が主鎖あるいは側鎖の一部に含まれる高分子材料の開発が検討されている。例えば特開2003−73480公報(特許文献1)と特開2003−73479公報(特許文献2)にはそれぞれπ共役高分子であるポリアリーレンの主鎖および側鎖にイリジウム錯体が結合した高分子発光材料およびそれらを用いた発光素子が開示されている。しかし、π共役高分子の燐光エネルギーすなわち励起三重項状態と基底状態のエネルギー差は多くの場合小さいため、イリジウム錯体が結合したπ共役高分子発光材料は緑色など比較的高エネルギーの可視光を発光することができない上、高分子のπ共役系に由来する燐光の発光量子収率は低く、このような燐光発光材料を用いても高効率な有機発光素子を得ることはできない。また、π共役高分子の有機溶媒に対する溶解性は低く、有機発光素子の作製に必要な塗布溶液の調製が困難であるなどの問題も有しており、溶解性が高く燐光エネルギーの大きなポリエチレン主鎖にイリジウム錯体を結合した燐光発光性高分子材料の開発が望まれている。
【0006】
ポリエチレン主鎖にイリジウム錯体が結合した高分子材料としては、例えば特開2003−119179公報(特許文献3)に、キャリア輸送性材料と燐光発光性イリジウム錯体との共重合体が開示されている。これらの高分子においてイリジウム錯体(トリス(2−(2−ピリジル)フェニル)イリジウム)はエステルなどのオキシカルボニル基を介して主鎖に結合しているが、イリジウム錯体の配位子に結合した酸素原子などのヘテロ原子は非ヘテロ原子と比較して錯体の発光特性に大きな影響を与え、燐光エネルギーの変化や発光量子収率の低下の原因となる。従って高分子有機発光素子を高性能化するためには、イリジウム錯体と高分子主鎖とを結合する結合基にヘテロ原子が含まれていない高分子材料を開発する必要があった。
【0007】
このような高分子として特開2002−293830公報(特許文献4)にポリビニルカルバゾールの一部がイリジウム錯体に置換されたものが開示されている。この高分子はカルバゾール側鎖が部分的にイリジウム錯体の配位子となるフェニルピリジンで置換されたポリビニルカルバゾールをイリジウム錯体前駆体と反応させることによって合成されている。しかしこの合成法では高分子側鎖であるフェニルピリジンのイリジウムへのシクロメタル化反応が効率的に起こらないことやイリジウムによる高分子架橋反応が起こることなど反応の制御が困難であるために、得られる高分子の発光や成膜性などの特性は期待される構造の高分子に対して必ずしも十分な性能が発揮されているとは言えない。従って高分子発光材料はイリジウム錯体を含む重合性化合物を重合または共重合することによって合成されたものであることが望ましいが、このような高分子についてこれまで開示されていない。
【0008】
【非特許文献1】Appl. Phys. Lett., 51巻, 913頁, 1987年
【非特許文献2】月刊ディスプレイ,1998年10月号別冊「有機ELディスプレイ」,58頁
【非特許文献3】Appl. Phys. Lett., 75巻, 4頁, 1999年
【特許文献1】特開2003−073480公報
【特許文献2】特開2003−073479公報
【特許文献3】特開2003−119179公報
【特許文献4】特開2002−293830公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のようにこれまで燐光発光性のイリジウム錯体が主鎖または側鎖構造の一部として結合した高分子発光材料は、燐光の発光量子収率が低く、また溶媒に対する溶解性や成膜性が良くない問題があった。従ってこれらの材料を用いて作製した有機発光素子の発光効率は低く、定電流駆動時における輝度半減時間も短かった。本発明はこれらの問題を解決し、発光効率が高く良好な成膜特性を有する燐光発光性高分子材料を提供し、この高分子材料を用いることにより有機発光素子をさらに高効率化および長寿命化すること課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は重合性の炭化水素基で置換されたイリジウム錯体を含む重合性化合物を重合して得られる高分子材料を用いることにより、前記課題を解決した。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の高分子発光材料、有機発光素子、画像表示装置および面発光光源に関する。
1.式(2)
【化1】

〔式中、R25は水素原子または炭素数1〜5の鎖状アルキル基を表わす。〕
で示される重合性二重結合が芳香環を形成する炭素原子の一つに結合している置換基を有する重合性化合物一種以上を(共)重合することにより得られる高分子発光材料であって、重合性化合物の少なくとも一つが下記式(1)
【化2】

〔式中、R1〜R24はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数1〜10のアルキル基によって置換されていてもよいアミノ基、炭素数1〜10のアルコキシ基またはシリル基を表わす。ただし、R2〜R7のうちの一つは、前記式(2)で示される重合性二重結合、前記式(2)で示される重合性二重結合が環構成炭素原子に結合した芳香環基、及び前記式(2)で示される重合性二重結合を有する前記芳香環基で置換されたヘテロ原子を含まない炭化水素基から選ばれる重合性置換基を表わす。〕
で示されるイリジウム錯体からなることを特徴とする高分子発光材料。
2.式(1)において、R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、R16、R17、R20、R21およびR24が水素原子である前記1に記載の高分子発光材料。
3.重合性置換基が、ビニル基または式(3)
【化3】

〔式中、nは0〜10の整数を表わす。〕
で示される基である前記1に記載の高分子発光材料。
4.少なくとも一つのキャリア輸送性重合性化合物と式(1)で示される重合性イリジウム錯体との共重合物である前記1乃至3のいずれか1項に記載の高分子発光材料。
5.キャリア輸送性重合性化合物が正孔輸送性である前記4に記載の高分子発光材料。
6.式(4)
【化4】

で示される重合性化合物と式(1)で示される重合性イリジウム錯体を含む二種類以上の重合性化合物を共重合して得られる前記1乃至5のいずれか1項に記載の高分子発光材料。
7.キャリア輸送性重合性化合物が電子輸送性である前記4に記載の高分子発光材料。
8.式(5)
【化5】

で示される重合性化合物と式(1)で示される重合性イリジウム錯体を含む二種類以上の重合性化合物を共重合して得られる前記1乃至7のいずれか1項に記載の高分子発光材料。
9.式(1)で示される重合性イリジウム錯体と正孔輸送性重合性化合物と電子輸送性重合性化合物を含む重合性化合物の共重合物である前記4に記載の高分子発光材料。
10.式(1)で示される重合性イリジウム錯体と式(4)で示される正孔輸送性化合物と式(5)で示される電子輸送性化合物を含む3種類以上の重合性化合物を共重合して得られる前記9に記載の高分子発光材料。
11.式(1)で示される重合性イリジウム錯体を重合して得られる前記1に記載の高分子発光材料。
12.一対の電極間に、前記1乃至11のいずれか1項に記載の少なくとも一つの高分子発光材料を用いた発光層を含む一層または複数層の有機層が挟持されてなる有機発光素子。
13.前記12に記載の有機発光素子を用いた面発光光源。
14.前記12に記載の有機発光素子を用いた画像表示装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明における燐光発光性イリジウム錯体が結合した高分子発光材料を用いることにより発光効率と耐久性に優れた有機発光素子が得られるほか、塗布成膜法による大面積素子が容易に作製可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。
本発明の高分子発光材料は、少なくとも式(1)で示されるイリジウム錯体を含む重合性化合物を重合するか共重合して得られる。
【0014】
【化6】

〔式中、R1〜R24はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数1〜10のアルキル基によって置換されていてもよいアミノ基、炭素数1〜10のアルコキシ基またはシリル基を表わす。ただし、R2〜R7のうちの一つは、前記式(2)で示される重合性二重結合、前記式(2)で示される重合性二重結合が環構成炭素原子に結合した芳香環基、及び前記式(2)で示される重合性二重結合を有する前記芳香環基で置換されたヘテロ原子を含まない炭化水素基から選ばれる重合性置換基を表わす。〕
【0015】
【化7】

〔式中、R25は水素原子または炭素数1〜5の鎖状アルキル基を表す。〕
式(2)で示される重合性二重結合は、その重合性の観点からベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環などの芳香環に結合している。芳香環はイリジウムに結合したフェニルピリジン環であってもよい。また、R25は、メチル基、エチル基、プロピル基などの直鎖状アルキル基が好ましい。
【0016】
式(2)で示される重合性二重結合は、イリジウムに結合したフェニルピリジン環に直接結合していてもよいが、式(2)で示される重合性二重結合を含む重合性置換基としてフェニルピリジン環に結合していてもよい。
前記重合性置換基としては、式(2)で示される重合性二重結合のほかに、式(2)の重合性二重結合が環構成炭素原子に結合した芳香環基、及び式(2)の重合性二重結合を有する前記芳香環基で置換された炭化水素基がある。この芳香環基及び炭化水素基にはヘテロ原子を含まないことが好ましく、芳香環基としてはフェニル基、ナフチル基などが好ましく、炭化水素基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましい。
さらに好ましい重合性置換基としては、ビニル基または式(3)
【化8】

〔式中、nは0〜10の整数を表わす。〕
で示される基が挙げられる。
【0017】
重合性置換基にヘテロ原子が含まれ、特にイリジウムに配位したフェニルピリジン環と重合性置換基が該ヘテロ原子で結合している場合には、高分子発光材料の発光効率が著しく低下し、これを用いて作製した有機発光素子の寿命も短い。
【0018】
重合性置換基の好ましい具体例としては下記式(E−1)〜(E−11)に示すような構造を挙げることができる。
【0019】
【化9】

【0020】
これらの重合性置換基は前記式(1)におけるR2〜R7の位置に結合していることが好ましく、R2、R3、R6およびR7の位置に結合していることがより好ましい。
【0021】
前記式(1)における置換基R1〜R24は高分子発光材料の発光効率、発光色、発光寿命、発光強度、溶解性、ガラス転位温度、一次構造、二次構造などに大きな影響を与える。これらの置換基のうち重合性置換基以外の基としては、例えば水素原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子等)、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等)、炭素数6〜10のアリール基(フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基等)、炭素数1〜10のアルキル基によって置換されていてもよいアミノ基(アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基等)、炭素数1〜10のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、デシルオキシ基等)、シリル基(トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基等)を挙げることができる。中でも好ましい基としては水素原子、フッ素原子、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、トリル基、ジメチルアミノ基、炭素数1〜4のアルコキシ基であり、水素原子、フッ素原子、t−ブチル基、ジメチルアミノ基およびメトキシ基が特に好ましい。また、これらの置換基のうち、同一配位子内で隣り合う置換基同士は互いに一箇所以上で結合して縮合環を形成していてもよい。
【0022】
本発明の高分子発光材料は、式(1)で示される重合性イリジウム錯体を重合したものでも、芳香環を形成する炭素原子の一つに結合し、式(2)で示される重合性二重結合を重合性官能基として有する重合性化合物と式(1)で示される重合性イリジウム錯体とを共重合したものでもよい。また共重合体は式(1)で示される二種類以上の重合性イリジウム錯体を用いて得られたものでもよい。式(2)で示される置換基を有する2以上の重合性化合物の共重合体の場合は、各化合物中の式(2)のR25は、各々同一でも異なっていてもよい。
【0023】
重合性イリジウム錯体と共重合するイリジウム錯体以外の重合性化合物としてはキャリア輸送性を有するものであることが好ましい。代表例としては下記式(E−12)〜(E−17)に示す正孔輸送性化合物や下記式(E−18)〜(E−25)に示す電子輸送性化合物を挙げることができる。これらの代表例化合物の重合性置換基はいずれも上記式(E−1)の構造のものを示しているが、(E−1)の置換基を前記式(E−2)〜(E−11)に示した構造の重合性置換基に置き換えたものであってもよい。
【0024】
【化10】

【化11】

【0025】
本発明における重合性化合物の重合方法は、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、付加重合のいずれでもよいが、ラジカル重合が好ましい。また、重合体の分子量は重量平均分子量で1,000〜2,000,000が好ましく、5,000〜1,000,000がより好ましい。ここでの分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法を用いて測定されるポリスチレン換算分子量である。
【0026】
本発明の共重合体におけるモノマーの配列は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体のいずれでもよい。イリジウム錯体とキャリア輸送性化合物の共重合体におけるイリジウム錯体構造の繰り返し単位数をm、キャリア輸送性化合物構造の繰り返し単位数をnとしたとき(m、nは1以上の整数)、全繰り返し単位数に対するイリジウム錯体構造の繰り返し単位数の割合、すなわちm/(m+n)の値は0.001〜0.5が好ましく、0.001〜0.2がより好ましい。
【0027】
前記式(2)で示される重合性置換基は下記スキーム−1に従って臭化アリールマグネシウムとメチルケトン化合物との反応生成物から脱水することによって容易に得られるものであり、置換基R25の構造は特に限定されないが、重合反応における立体障害が小さい水素原子または炭素数1〜5の直鎖状アルキル基が好ましく、水素原子およびメチル基が特に好ましい。
【0028】
【化12】

【0029】
図1は本発明の有機発光素子構成の一例を示す断面図である。透明基板(1)上に設けた陽極(2)と陰極(6)の間に正孔輸送層(3)、発光層(4)、電子輸送層(5)を順次設けたものである。また、本発明の有機発光素子構成は図1の例のみに限定されず、陽極(2)と陰極(6)の間に順次、1)正孔輸送層/発光層、2)発光層/電子輸送層のいずれかを設けたものでもよく、さらには3)正孔輸送材料、発光材料、電子輸送材料を含む層、4)正孔輸送材料、発光材料を含む層、5)発光材料、電子輸送材料を含む層、6)発光材料の単独層のいずれかの層を一層設けるだけでもよい。また、図1の例は発光層が1層であるが、2つ以上の発光層が積層されたものでもよい。
【0030】
本発明の有機発光素子における発光層は、本発明の高分子発光材料を含む層であるが、発光層のキャリア輸送性を補う目的で正孔輸送材料や電子輸送材料が含まれていてもよい。これらのキャリア輸送材料として低分子化合物だけでなく高分子化合物も用いることができる。
【0031】
前記の正孔輸送層を形成する正孔輸送材料または発光層中に混合して用いる正孔輸送材料としては、TPD(N,N’−ジメチル−N,N’−(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’ジアミン)、α−NPD(4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル)、m−MTDATA(4、4’,4’’−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン)などの低分子トリフェニルアミン誘導体や、ポリビニルカルバゾール、前記トリフェニルアミン誘導体に重合性官能基を導入して高分子化したもの、例えば特開平8−157575号公報に開示されているトリフェニルアミン骨格の高分子化合物など既知の正孔輸送材料が使用でき、さらにポリパラフェニレンビニレン、ポリジアルキルフルオレンなどの蛍光発光性高分子材料も使用できる。これらの正孔輸送材料は単独でも用いられるが、異なる正孔輸送材料と混合または積層して用いてもよい。正孔輸送層の厚さは正孔輸送層の導電率にもよるので一概に限定はできないが、1nm〜5μmが好ましく、5nm〜1μmがより好ましく、10nm〜500nmがさらに好ましい。
【0032】
前記の電子輸送層を形成する電子輸送材料または発光層中に混合して用いる電子輸送材料としては、Alq3(アルミニウムトリスキノリノレート)などのキノリノール誘導体金属錯体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリアジン誘導体、トリアリールボラン誘導体などの低分子材料や、上記の低分子電子輸送性化合物に重合性官能基を導入して高分子化したもの、例えば特開平10−1665号公報に開示されているポリPBDなどの既知の電子輸送材料が使用できる。これらの電子輸送材料は単独でも用いられるが、異なる電子輸送材料と混合または積層して用いてもよい。電子輸送層の厚さは、電子輸送層の導電率にもよるので一概に限定はできないが、1nm〜5μmが好ましく、5nm〜1μmがより好ましく、10nm〜500nmがさらに好ましい。
【0033】
上記の各層に用いられる発光材料、正孔輸送材料および電子輸送材料はそれぞれ単独で各層を形成するほかに、機能の異なる材料を混合してもよい。また、高分子材料をバインダとして各層を形成することもできる。この目的に使用される高分子材料としては、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイドなどを例示できる。
【0034】
また、発光層の陰極側に隣接して、ホールが発光層を通過することを抑え、発光層内で電子と効率よく再結合させる目的で、ホール・ブロック層が設けられていてもよい。これにはトリアゾール誘導体やオキサジアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体などの既知の材料が用いられる。
【0035】
上記の各層に用いられる発光材料、正孔輸送材料および電子輸送材料の成膜方法は、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、インクジェット法、スピンコート法、印刷法、スプレー法、ディスペンサー法などを用いることができる。低分子化合物の場合は主として抵抗加熱蒸着および電子ビーム蒸着が用いられ、高分子材料の場合は主にインクジェット法、スピンコート法、印刷法が用いられることが多い。
【0036】
本発明における有機発光素子の陽極材料としては、ITO(酸化インジウムスズ)、酸化錫、酸化亜鉛、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンなどの導電性高分子などの既知の透明導電材料が使用できる。この透明導電材料による電極の表面抵抗は1〜50Ω/□(オーム/スクエアー)が好ましい。これらの陽極材料の成膜方法としては、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、化学反応法、コーティング法などを用いることができる。陽極の厚さは50〜300nmが好ましい。
【0037】
また、陽極とホール輸送層または陽極に隣接して積層される有機層の間に、ホール注入に対する注入障壁を緩和する目的でバッファ層が挿入されていてもよい。これには銅フタロシアニン、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PSS)の混合体などの既知の材料が用いられる。
【0038】
本発明の有機発光素子における陰極材料としては、Li、Na、K、Csなどのアルカリ金属、Mg、Ca、Baなどのアルカリ土類金属、Al、MgAg合金、AlLiやAlCaなどのAlとアルカリ金属の合金などの既知の陰極材料が使用できる。これらの陰極材料の成膜方法としては、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などを用いることができる。陰極の厚さは10nm〜1μmが好ましく、50〜500nmがさらに好ましい。但し、陰極としてアルカリ金属やアルカリ土類金属などの活性の高い金属を使用する場合には、陰極の厚さとして0.1〜100nmが好ましく、0.5〜50nmがさらに好ましい。また、この場合には、これらの陰極金属を保護する目的で、この上にさらに大気に対して安定な金属層が積層される。この目的で、Al、Ag、Au、Pt、Cu、Ni、Crなどの金属が用いられる。その厚さとしては10nm〜1μmが好ましく、50〜500nmがさらに好ましい。
【0039】
陰極と、電子輸送層または陰極に隣接して積層される有機層との間に、電子注入効率を向上させる目的で、厚さ0.1〜10nmの絶縁層を挿入してもよい。絶縁層としては、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム、酸化マグネシウム、アルミナなどの既知の陰極材料が使用できる。
【0040】
本発明における有機発光素子の基板としては、発光材料の発光波長に対して透明な絶縁性基板が使用でき、ガラスのほか、PET(ポリエチレンテレフタレート)やポリカーボネートを始めとする透明プラスチックなどの既知の材料が使用できる。
【0041】
本発明の有機発光素子は、既知の方法でマトリックス方式またはセグメント方式による画素を構成することができる。また、画素を形成せずにバックライトとして用いることもできる。
【実施例】
【0042】
以下に本発明について代表的な例を示し、さらに具体的に説明する。なお、これらは説明のための単なる例示であって、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
【0043】
下記の例において分析に使用した装置は以下の通りである。試薬類は特に断らない限り、市販品(特級)を精製することなく使用した。
1)1H−NMR、13C−NMR
日本電子(株)製 JMN EX270、
270MHz 溶媒:重クロロホルム。
2)GPC測定(分子量測定)
カラム:Shodex KF−G+KF804L+KF802+KF801、
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)、
温度 :40℃、
検出器:RI(Shodex RI−71)。
3)元素分析装置
LECO社製 CHNS―932型。
4)ICP元素分析
(株)島津製作所製 ICPS 8000。
5)質量分析(FAB−MS)
日本電子(株)製 AutomassII。
【0044】
実施例1(a)〜(h)および比較例1(a)〜(h):重合性イリジウム錯体の合成
実施例1(a):重合性化合物(1−1(a))の合成
【化13】

塩化イリジウム(III)三水和物10.0g(28mmol)に2−エトキシエタノール150ml、水50mlおよび2−フェニルピリジン9.0g(58mmol)を加えて窒素気流中で12時間加熱還流した。得られた反応液を室温まで放冷後、生じた沈殿をグラスフィルターでろ取した。沈殿をメタノールで洗浄し、減圧乾燥することによってイリジウム錯体(A)を13.5g(13mmol)得た(収率89%)。
得られたイリジウム錯体(A)5.00g(4.7mmol)と4−(2−ピリジル)ベンズアルデヒド1.71g(9.3mmol)の混合物に500mlのトルエンを加えて室温で5分間撹拌した。次にトリフルオロメタンスルホン酸銀2.40g(9.3mmol)を加えて窒素気流中で3時間加熱還流した。得られた反応液を室温まで放冷後、セライトでろ過し、減圧下において溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム/酢酸エチル=19/1)で精製し、ジクロロメタン−メタノール混合溶液から再結晶することにより、イリジウム錯体(B)を0.95g(1.4mmol)得た(収率15%)。
次に臭化メチルトリフェニルホスホニウム199mg(0.56mmol)を10mlのTHFに溶解し、0℃においてn−ブチルリチウム(1.6Mヘキサン溶液)0.40ml(0.64mmol)を加えた。0℃で30分間撹拌後、得られたイリジウム錯体(B)248mg(0.36mmol)を加えて室温で2時間撹拌した。得られた反応液に希塩酸を加え、クロロホルムで有機物を抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下において溶媒を留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム/ヘキサン=2/1)で精製し、ジクロロメタン−メタノール混合溶液から再結晶することによって重合性化合物1−1(a)を100mg(0.15mmol)得た(収率50%)。
1H NMR: 7.79 (m, 3 H), 7.46 (m, 9 H), 6.90 (m, 11 H), 6.55 (dd, 1 H), 5.44 (d, 1 H), 5.00 (d, 1 H). FAB-MS: 681 (M+). 元素分析値 Calcd for C35H26IrN3: C, 61.75; H, 3.85; N, 6.17. Found: C, 61.91; H, 3.55; N, 6.02。
【0045】
比較例1(a):重合性比較化合物1−2(a)の合成
【化14】

4−メトキシフェニルボロン酸10.0g(66mmol)を50mlの1,2−ジメトキシエタンに溶解し、2−ブロモピリジン10.4g(66mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.75g(0.65mmol)、炭酸カリウム25g(180mmol)の50ml水溶液を加えて窒素気流中で3時間加熱還流した。得られた反応液を室温まで放冷後、100mlの水と100mlの酢酸エチルを加えて振とうし、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム/酢酸エチル=19/1)で精製することによって化合物(C)を10.3g(56mmol)得た(収率84%)。
得られた化合物(C)8.5g(46mmol)を濃塩酸中に溶解させ、密閉容器中130℃で4時間加熱撹拌した。得られた反応液を氷冷しながら炭酸水素ナトリウム水溶液で中和し、クロロホルムで有機物を抽出した。クロロホルム溶液を濃縮してヘキサンを加え、−20℃に冷却することによって化合物(D)の結晶を6.8g(40mmol)得た(収率86%)。
得られた化合物(D)500mg(2.9mmol)と実施例1(a)で合成したイリジウム錯体(A)1.50g(1.3mmol)およびトリフルオロメタンスルホン酸銀680mg(2.65mmol)の混合物に500mlのトルエンを加えて、窒素気流下で3時間加熱還流した。得られた反応液を室温まで放冷後、セライトでろ過し、減圧下において溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム/酢酸エチル=9/1)で精製し、ジクロロメタン−メタノール混合溶液から再結晶することにより、イリジウム錯体(E)を610mg(0.91mmol)得た(収率35%)。
得られたイリジウム錯体(E)500mg(0.75mmol)と炭酸カリウム300mg(2.2mmol)に100mlのアセトンを加え、さらに塩化4−ビニルベンジル300mg(2.0mmol)を加えて窒素気流下で24時間加熱還流した。得られた反応混合物をグラスフィルターでろ過し、ろ液を減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム/酢酸エチル=19/1)で精製し、ジクロロメタン−メタノール混合溶液から再結晶することにより、重合性化合物1−2(a)を390mg(0.50mmol)得た(収率66%)。
1H NMR: 7.80 (m, 3 H), 7.64 (m, 11 H), 7.20 (d, 2 H), 6.95 (m, 11 H), 6.59 (dd, 1 H), 5.40 (d, 1 H), 4.90 (d, 1 H), 4.51 (s, 2 H). FAB-MS: 787 (M+). 元素分析値 Calcd for C42H43IrN3O: C, 64.10; H, 4.10; N, 5.34. Found: C, 64.38; H, 3.96; N, 5.29。
【0046】
実施例1(b):重合性化合物1−1(b)の合成
【化15】

窒素雰囲気の反応容器内にマグネシウム480mg(20mmol)を秤り取り、10mlのTHFを加えた。これに、4−メトキシフェニルボロン酸の代わりに4−ブロモフェニルボロン酸を用い、化合物(C)の合成と同じ方法で合成した2−(4−ブロモフェニル)ピリジン4.0g(17mmol)の40mlTHF溶液を1時間かけて滴下した。滴下後さらに室温で1時間撹拌し、氷冷しながらアセトン3.0g(52mmol)の20mlTHF溶液を滴下した。室温で1時間撹拌後、得られた反応液に500mlの水を加えた。酢酸エチルで有機物を抽出し、水および飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムを加えて乾燥した。この溶液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム/酢酸エチル=1/1)で精製することによって化合物(F)を2.1g(9.8mmol)得た(収率58%)。
次に2−フェニルピリジンの替わりに2−(4−tert−ブチルフェニル)ピリジン(4−メトキシフェニルボロン酸の代わりに4−tert−ブチルフェニルボロン酸を用い、化合物(C)の合成と同じ方法で合成した)を用い、イリジウム錯体(A)の合成と同じ方法で合成したイリジウム錯体(G)500mg(0.30mmol)と、得られた化合物(F)150mg(0.70mmol)およびトリフルオロメタンスルホン酸銀170mg(0.66mmol)の混合物に50mlのトルエンを加えて、窒素気流下で3時間加熱還流した。得られた反応液を室温まで放冷後、セライトでろ過し、減圧下において溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム)で精製し、ジクロロメタン−メタノール混合溶液から再結晶することにより、重合性化合物1−1(b)を220mg(0.27mmol)得た(収率45%)。
1H NMR: 7.80 (m, 3 H), 7.55 (m, 9 H), 6.90 (m, 9 H), 5.17 (s, 1 H), 4.86 (s, 1 H), 1.91 (s, 3 H), 1.10 (s, 18 H). FAB-MS: 807 (M+). 元素分析値 Calcd for C44H44IrN3: C, 65.48; H, 5.50; N, 5.21. Found: C, 65.87; H, 5.41; N, 5.06。
【0047】
比較例1(b):重合性比較化合物1−2(b)の合成
【化16】

イリジウム錯体(A)の代わりにイリジウム錯体(G)を用い、イリジウム錯体(E)の合成と同じ方法で合成したイリジウム錯体(H)500mg(0.64mmol)を30mlのジクロロメタンに溶解し、塩化メタクリロイル80mg(0.77mmol)の5mlジクロロメタン溶液を滴下し、室温で1時間撹拌した。続いて減圧下において溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム)で精製し、ジクロロメタン−メタノール混合溶液から再結晶することにより、重合性化合物1−2(b)を460mg(0.54mmol)得た(収率84%)。
1H NMR: 7.85 (m, 3 H), 7.52 (m, 9 H), 7.01 (m, 9 H), 6.04 (s, 1 H), 5.51 (s, 1 H), 1.87 (s, 3 H), 1.10 (s, 9 H), 1.06 (s, 9 H). FAB-MS: 851 (M+). 元素分析値 Calcd for C45H44IrN3O2: C, 63.51; H, 5.21; N, 4.94. Found: C, 63.67; H, 5.17; N, 4.88。
【0048】
実施例1(c):重合性化合物1−1(c)の合成
【化17】

窒素雰囲気の反応容器内にマグネシウム1.42g(58mmol)を秤り取り、50mlのジエチルエーテルを加えた。これに、塩化4−ビニルベンジル8.92g(58mmol)の100mlジエチルエーテル溶液を2時間かけて滴下した。滴下後さらに室温で1時間撹拌し、氷冷しながら4−(2−ピリジル)ベンズアルデヒド10.1g(55mmol)の100mlジエチルエーテル溶液を滴下した。室温で1時間撹拌後、得られた反応液に500mlの水を加えた。有機層を水および飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムを加えて乾燥し、減圧で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム/酢酸エチル=2/1)で精製することによって化合物(I)を12.5g(41mmol)得た(収率75%)。
得られた化合物(I)1.49g(4.9mmol)に30mlのジメチルスルホキシドと20mlの無水酢酸を加えて溶解し、室温で12時間撹拌した。得られた反応液に0℃でアンモニア水を加えて生じた沈殿を水洗、減圧乾燥した。得られた固体をジクロロメタン−メタノール混合溶液中から再結晶することにより、化合物(J)を1.33g(4.4mmol)得た(収率91%)。
得られた化合物(J)7.0g(23mmol)と炭酸カリウム30.3g(220mmol)の混合物にジエチレングリコール700ml、ヒドラジン一水和物11.4g(230mmol)を順次加え、120℃で2.5時間加熱撹拌した。続いて200℃で加熱して留出物を除いた後、室温まで放冷した。得られた反応混合物に水を加えて生じた沈殿を水洗、減圧乾燥した。この固体をクロロホルムに溶解し、クロロホルム/酢酸エチル=1/1混合溶媒を用いてシリカゲル層に通した。得られた溶液を減圧乾固し、残渣をヘキサンから再結晶することにより、化合物(K)を4.5g(16mmol)得た(収率68%)。
次に2−フェニルピリジンの替わりに2−(4−フルオロフェニル)ピリジン(4−メトキシフェニルボロン酸の代わりに4−フルオロフェニルボロン酸を用い、化合物(C)の合成と同じ方法で合成した)を用い、イリジウム錯体(A)の合成と同じ方法で合成したイリジウム錯体(L)500mg(0.44mmol)と、得られた化合物(K)300mg(1.05mmol)およびトリフルオロメタンスルホン酸銀250mg(0.97mmol)の混合物に50mlのトルエンを加えて、窒素気流下で3時間加熱還流した。得られた反応液を室温まで放冷後、セライトでろ過し、減圧下において溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム/ヘキサン=2/1)で精製し、ジクロロメタン−メタノール混合溶液から再結晶することにより、重合性化合物1−1(c)を80mg(0.097mmol)得た(収率11%)。
1H NMR: 7.85 (m, 3 H), 7.58 (m, 9 H), 7.22 (m, 3 H), 7.0 6.6 (m, 11 H), 5.67 (d, 1 H), 5.16 (d, 1 H), 2.71 (m, 4 H). FAB-MS: 823 (M+). 元素分析値 Calcd for C43H34F2IrN3: C, 62.76; H, 4.16; N, 5.11. Found: C, 63.02; H, 4.09; N, 4.87。
【0049】
比較例1(c):重合性比較化合物1−2(c)の合成
【化18】

イリジウム錯体(A)の替わりにイリジウム錯体(L)を用い、イリジウム錯体(E)の合成と同じ方法で合成したイリジウム錯体(M)300mg(0.42mmol)と炭酸カリウム300mg(2.2mmol)に100mlのアセトンを加え、さらに塩化4−ビニルベンジル300mg(2.0mmol)を加えて窒素気流下で24時間加熱還流した。得られた反応混合物をグラスフィルターでろ過し、ろ液を減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム)で精製し、ジクロロメタン−メタノール混合溶液から再結晶することにより、重合性化合物1−2(c)を290mg(0.37mmol)得た(収率88%)。
1H NMR: 7.83 (m, 3 H), 7.59 (m, 11 H), 7.22 (d, 2 H), 6.96 (m, 9 H), 6.58 (dd, 1 H), 5.44 (d, 1 H), 4.87 (d, 1 H), 4.60 (s, 2 H). FAB-MS: 825 (M+). 元素分析値 Calcd for C42H32F2IrN3O: C, 61.15; H, 3.91; N, 5.09. Found: C, 61.00; H, 3.97; N, 5.44。
【0050】
実施例1(d):重合性化合物1−1(d)の合成
【化19】

2−フェニルピリジンの替わりに4−(ジメチルアミノ)−2−フェニルピリジン(4−メトキシフェニルボロン酸の代わりにフェニルボロン酸を用い、2−ブロモピリジンの替わりに2−ブロモ−4−(ジメチルアミノ)ピリジンを用い、化合物(C)の合成と同じ方法で合成した)を用い、イリジウム錯体(A)の合成と同じ方法で合成したイリジウム錯体(N)500mg(0.40mmol)と、化合物(K)170mg(0.85mmol)およびトリフルオロメタンスルホン酸銀210mg(0.82mmol)の混合物に50mlのトルエンを加えて、窒素気流下で3時間加熱還流した。得られた反応液を室温まで放冷後、セライトでろ過し、減圧下において溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム/酢酸エチル=1/1)で精製し、ジクロロメタン−ヘキサン混合溶液から再結晶することにより、重合性化合物1−1(d)を110mg(0.13mmol)得た(収率16%)。
1H NMR: 7.76 (m, 3 H), 7.63 (m, 9 H), 7.29 (m, 3 H), 7.1 6.6 (m, 11 H), 5.67 (d, 1 H), 5.16 (d, 1 H), 3.11 (s, 6 H), 3.05 (s, 6 H), 2.71 (m, 4 H). FAB-MS: 871 (M+). 元素分析値 Calcd for C47H44IrN5: C, 64.80; H, 5.09; N, 8.04. Found: C, 65.26; H, 4.99; N, 8.15。
【0051】
比較例1(d):重合性比較化合物1−2(d)の合成
【化20】

イリジウム錯体(A)の代わりにイリジウム錯体(N)を用い、イリジウム錯体(E)の合成と同じ方法で合成したイリジウム錯体(O)500mg(0.66mmol)を30mlのジクロロメタンに溶解し、塩化メタクリロイル100mg(0.96mmol)の5mlジクロロメタン溶液を滴下し、室温で1時間撹拌した。続いて減圧下において溶媒を留去して残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム/酢酸エチル=1/1)で精製し、ジクロロメタン−ヘキサン混合溶液から再結晶することにより、重合性化合物1−2(d)を400mg(0.48mmol)得た(収率73%)。
1H NMR: 7.85 (m, 3 H), 7.58 (m, 9 H), 7.22 (m, 3 H), 7.00 (m, 6 H), 6.15 (s, 1 H), 5.55 (s, 1 H), 3.11 (s, 6 H), 3.05 (s, 6 H), 1.93 (s, 3 H). FAB-MS: 825 (M+). 元素分析値 Calcd for C41H38IrN5O2: C, 59.69; H, 4.64; N, 8.49. Found: C, 60.02; H, 4.59; N, 8.17。
【0052】
実施例1(e):重合性化合物1−1(e)の合成
【化21】

窒素雰囲気の反応容器内にマグネシウム1.70g(70mmol)を秤り取り、50mlのジエチルエーテルを加えた。これに、塩化4−ビニルベンジル10.0g(66mmol)の100mlジエチルエーテル溶液を2時間かけて滴下した。滴下後さらに室温で1時間撹拌し、得られた溶液を氷冷しながら1,3−ジブロモプロパン13.3g(66mmol)とテトラクロロ銅(II)酸リチウム0.6mmolの100mlTHF溶液に滴下した。室温で6時間撹拌後、精製した沈殿をろ別し、減圧で溶媒を留去した。残渣を減圧下において蒸留精製することによって化合物(P)を11.5g(48mmol)得た(収率73%)。
窒素雰囲気の反応容器内にマグネシウム0.25g(10.3mmol)を秤り取り、これに得られた化合物(P)2.01g(8.4mmol)の10mlTHF溶液を30分間かけて滴下した。これを室温で2時間撹拌し、得られた溶液を氷冷しながら2−(3−ブロモフェニル)ピリジン(4−メトキシフェニルボロン酸の代わりに3−ブロモフェニルボロン酸を用い、化合物(C)の合成と同じ方法で合成した)0.70g(2.9mmol)とジクロロ(1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン)ニッケル100mg(0.18mmol)の10mlTHF溶液に滴下した。この混合物を室温で12時間撹拌後、100mlの水を加え、酢酸エチルで有機物を抽出した。得られた溶液を水および飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/クロロホルム=1/3)で精製することによって化合物(Q)を0.5g(1.6mmol)得た(収率55%)。
2−フェニルピリジンの替わりに化合物(C)を用い、イリジウム錯体(A)の合成と同じ方法で合成したイリジウム錯体(R)500mg(0.42mmol)と、得られた化合物(Q)280mg(0.89mmol)およびトリフルオロメタンスルホン酸銀230mg(0.90mmol)の混合物に50mlのトルエンを加えて、窒素気流下で3時間加熱還流した。得られた反応液を室温まで放冷後、セライトでろ過し、減圧下において溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム/ヘキサン=3:1)で精製し、ジクロロメタン−メタノール混合溶液から再結晶することにより、重合性化合物1−1(e)を40mg(0.046mmol)得た(収率5%)。
1H NMR: 7.85 (m, 3 H), 7.7 6.6 (m, 23 H), 5.67 (d, 1 H), 5.17 (d, 1 H), 3.89 (s, 3 H), 3.81 (s, 3 H), 2.57 (m, 4 H), 1.64 (m, 4 H). FAB-MS: 873 (M+). 元素分析値 Calcd for C47H42IrN3O2: C, 64.66; H, 4.85; N, 4.81. Found: C, 64.23; H, 4.91; N, 4.74。
【0053】
比較例1(e):重合性比較化合物1−2(e)の合成
【化22】

イリジウム錯体(A)の代わりにイリジウム錯体(R)を用い、イリジウム錯体(E)の合成と同じ方法で合成したイリジウム錯体(S)450mg(0.62mmol)と炭酸カリウム300mg(2.2mmol)に100mlのアセトンを加え、さらに塩化4−ビニルベンジル300mg(2.0mmol)を加えて窒素気流下で24時間加熱還流した。得られた反応混合物をグラスフィルターでろ過し、ろ液を減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム)で精製し、ジクロロメタン−メタノール混合溶液から再結晶することにより、重合性化合物1−2(e)を390mg(0.46mmol)得た(収率74%)。
1H NMR: 7.90 (m, 3 H), 7.60 (m, 11 H), 7.20 (d, 2 H), 6.95 (m, 9 H), 6.70 (dd, 1 H), 5.41 (d, 1 H), 4.95 (d, 1 H), 4.60 (s, 2 H), 4.02 (s, 3 H), 3.96 (s, 3 H). FAB-MS: 847 (M+). 元素分析値 Calcd for C44H36IrN3O3: C, 62.39; H, 4.28; N, 4.96. Found: C, 62.54; H, 4.11; N, 5.06。
【0054】
実施例1(f):重合性化合物1−1(f)の合成
【化23】

4−メトキシフェニルボロン酸の代わりに3−ブロモフェニルボロン酸を用い、化合物(C)の合成と同じ方法で合成した2−(3−ブロモフェニル)ピリジン3.0g(13mmol)と、4−ビニルフェニルボロン酸2.0g(14mmol)を30mlの1,2−ジメトキシエタンに溶解し、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム152mg(0.13mmol)、炭酸カリウム4.8g(34mmol)の20ml水溶液を加えて窒素気流中で3時間加熱還流した。得られた反応液を室温まで放冷後、100mlの水と100mlの酢酸エチルを加えて振とうし、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム)で精製することによって化合物(T)を2.5g(10mmol)得た(収率77%)。
2−フェニルピリジンの替わりに2−(3−ビフェニル)ピリジン(4−メトキシフェニルボロン酸の代わりに3−ビフェニルボロン酸を用い、化合物(C)の合成と同じ方法で合成した)を用い、イリジウム錯体(A)の合成と同じ方法で合成したイリジウム錯体(U)700mg(0.51mmol)と、得られた化合物(T)300mg(1.17mmol)およびトリフルオロメタンスルホン酸銀270mg(1.05mmol)の混合物に70mlのトルエンを加えて、窒素気流下で3時間加熱還流した。得られた反応液を室温まで放冷後、セライトでろ過し、減圧下において溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム)で精製し、ジクロロメタン−メタノール混合溶液から再結晶することにより、重合性化合物1−1(f)を70mg(0.077mmol)得た(収率8%)。
1H NMR: 7.85 (m, 3 H), 7.7 6.6 (m, 33 H), 5.83 (d, 1 H), 5.31 (d, 1 H). FAB-MS: 909 (M+). 元素分析値 Calcd for C53H38IrN3: C, 70.02; H, 4.21; N, 4.62. Found: C, 69.85; H, 4.26; N, 4.74。
【0055】
比較例1(f):重合性比較化合物1−2(f)の合成
【化24】

イリジウム錯体(A)の替わりにイリジウム錯体(U)を用い、イリジウム錯体(E)の合成と同じ方法で合成したイリジウム錯体(V)500mg(0.61mmol)を30mlのジクロロメタンに溶解し、塩化メタクリロイル100mg(0.96mmol)の5mlジクロロメタン溶液を滴下し、室温で1時間撹拌した。続いて減圧下において溶媒を留去して残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム/酢酸エチル=9/1)で精製し、ジクロロメタン−ヘキサン混合溶液から再結晶することにより、重合性化合物1−2(f)を430mg(0.48mmol)得た(収率79%)。
1H NMR: 7.80 (m, 3 H), 7.6 6.6 (m, 33 H), 6.15 (s, 1 H), 5.55 (s, 1 H), 1.93 (s, 3 H). FAB-MS: 891 (M+). 元素分析値 Calcd for C49H36IrN3O2: C, 66.05; H, 4.07; N, 4.72. Found: C, 66.39; H, 3.94; N, 4.66。
【0056】
実施例1(g):重合性化合物1−1(g)の合成
【化25】

1−クロロイソキノリン5.00g(33mmol)、4−アセチルフェニルボロン酸5.50g(34mmol)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム350mg(0.30mmol)を50mlの1,2−ジメトキシエタンに溶解し、炭酸カリウム12.3g(89mmol)の50ml水溶液を加えて窒素気流中で3時間加熱還流した。得られた反応液を室温まで放冷後、100mlの水と100mlの酢酸エチルを加えて振とうし、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム/酢酸エチル=19/1)で精製することによって化合物(Y)を7.25g(29mmol)得た(収率89%)。
得られた化合物(Y)5.03g(20mmol)を50mlのメタノールに溶解し、テトラヒドロホウ酸ナトリウム1.13g(30mmol)を数回に分けて加えて室温で3時間撹拌した。得られた反応液に30mlの水を加えて減圧下で濃縮し、生じた固体を水洗、減圧乾燥することによって化合物(Z)の結晶を4.81g(19mmol)得た(収率96%)。
次に2−ブロモピリジンの代わりに1−クロロイソキノリンを用い、イリジウム錯体(G)の合成と同じ方法で合成したイリジウム錯体(AA)610mg(0.41mmol)と、得られた化合物(Z)220mg(0.88mmol)およびトリフルオロメタンスルホン酸銀210mg(0.82mmol)の混合物に50mlのトルエンを加えて、窒素気流下で3時間加熱還流した。得られた反応液を室温まで放冷後、セライトでろ過し、減圧下において溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム)で精製し、ジクロロメタン−メタノール混合溶液から再結晶することにより、重合性化合物1−1(g)を160mg(0.17mmol)得た(収率21%)。
1H NMR: 9.8 6.9 (m, 28 H), 5.61 (d, 1 H), 5.25 (d, 1 H), 1.05 (s, 18 H). FAB-MS: 943 (M+). 元素分析値 Calcd for C55H48IrN3: C, 70.04; H, 5.13; N, 4.46. Found: C, 69.77; H, 5.26; N, 4.71。
【0057】
比較例1(g):重合性比較化合物1−2(g)の合成
【化26】

2−ブロモピリジンの代わりに1−クロロイソキノリンを用い、化合物(D)の合成と同じ方法で合成した化合物(AB)160mg(0.72mmol)と、イリジウム錯体(AA)505mg(0.34mmol)およびトリフルオロメタンスルホン酸銀180mg(0.70mmol)の混合物に50mlのトルエンを加えて、窒素気流下で3時間加熱還流した。得られた反応液を室温まで放冷後、セライトでろ過し、減圧下において溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム/酢酸エチル=9/1)で精製し、ジクロロメタン−メタノール混合溶液から再結晶することにより、イリジウム錯体(AC)を66mg(0.071mmol)得た(収率10%)。
得られたイリジウム錯体(AC)65mg(0.070mmol)を10mlのジクロロメタンに溶解し、塩化メタクリロイル20mg(0.19mmol)の5mlジクロロメタン溶液を滴下し、室温で3時間撹拌した。続いて減圧下において溶媒を留去して残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム/酢酸エチル=9/1)で精製し、ジクロロメタン−ヘキサン混合溶液から再結晶することにより、重合性化合物1−2(g)を50mg(0.050mmol)を得た(収率71%)。
1H NMR: 9.8 6.9 (m, 27 H), 6.20 (s, 1 H), 5.49 (s, 1 H), 1.95 (s, 3 H), 1.09 (s, 9 H), 1.07 (s, 9 H). FAB-MS: 1001 (M+). 元素分析値 Calcd for C57H50IrN3O2: C, 68.38; H, 5.03; N, 4.20. Found: C, 68.51; H, 5.00; N, 4.04。
【0058】
実施例1(h):重合性化合物1−1(h)の合成
【化27】

2−(4−tert−ブチルフェニル)ピリジンの代わりに3−(4−tert−ブチルフェニル)イソキノリン(2−ブロモピリジンの代わりに3−クロロイソキノリンを用い、2−(4−tert−ブチルフェニル)ピリジンの合成と同じ方法で合成した)を用い、イリジウム錯体(G)の合成と同じ方法で合成したイリジウム錯体(AD)583mg(0.39mmol)と、化合物(K)225mg(0.79mmol)およびトリフルオロメタンスルホン酸銀200mg(0.78mmol)の混合物に50mlのトルエンを加えて、窒素気流下で3時間加熱還流した。得られた反応液を室温まで放冷後、セライトでろ過し、減圧下において溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム)で精製し、ジクロロメタン−メタノール混合溶液から再結晶することにより、重合性化合物1−1(h)を138mg(0.13mmol)得た(収率17%)。
1H NMR: 8.9 6.8 (m, 32 H), 5.75 (d, 1 H), 5.33 (d, 1 H), 2.75 (m, 4 H), 1.08 (s, 9 H), 1.06 (s, 9 H). FAB-MS: 1047 (M+). 元素分析値 Calcd for C63H56IrN3: C, 72.25; H, 5.39; N, 4.01. Found: C, 72.08; H, 5.46; N, 4.33。
【0059】
比較例1(h):重合性比較化合物1−2(h)の合成
【化28】

イリジウム錯体(A)の代わりにイリジウム錯体(AD)を用い、イリジウム錯体(E)の合成と同じ方法で合成したイリジウム錯体(AE)111mg(0.13mmol)と炭酸カリウム200mg(1.4mmol)に15mlのアセトンを加え、さらに塩化4−ビニルベンジル200mg(1.3mmol)を加えて窒素気流下で24時間加熱還流した。得られた反応混合物をグラスフィルターでろ過し、ろ液を減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム)で精製し、ジクロロメタン−ヘキサン混合溶液から再結晶することにより、重合性化合物1−2(h)を85mg(0.085mmol)を得た(収率65%)。
1H NMR: 8.9 6.8 (m, 32 H), 5.52 (d, 1 H), 5.03 (d, 1 H), 4.37 (s, 2 H), 1.09 (s, 9 H), 1.06 (s, 9 H). FAB-MS: 1001 (M+). 元素分析値 Calcd for C58H54IrN3O: C, 69.57; H, 5.44; N, 4.20. Found: C, 69.39; H, 5.51; N, 4.34。
【0060】
実施例2(a)〜(h)および比較例2(a)〜(h):重合性イリジウム錯体と重合性化合物(W)および重合性化合物(X)との共重合体の合成
密閉容器に実施例1および比較例1で合成した重合性イリジウム錯体(実施例1−1(a)〜1−1(h)、比較例1−2(a)〜1−2(h))80mgと重合性化合物(W)460mg、重合性化合物(X)460mgを入れ、脱水トルエン(9.9ml)を加えた後、V−601(和光純薬工業(株)製)のトルエン溶液(0.1M、198μl)を加え、凍結脱気操作を5回繰り返した。真空のまま密閉し、60℃で60時間撹拌した。反応後、反応液をアセトン(500ml)中に滴下して沈殿を生じさせた。さらにトルエン−アセトンでの再沈殿精製を2回繰り返して精製した後、50℃で一晩真空乾燥し、目的とする共重合体(実施例2−1(a)〜2−1(h)、比較例2−2(a)〜2−2(h))を得た。得られた共重合体の回収率、ポリスチレン換算のGPC測定より見積もった重量平均分子量(Mw)、ICP分析および13C−NMR測定の結果より見積もった共重合体における共重合比を表1に示す。
【化29】

【化30】

【0061】
【表1】

【0062】
実施例3(a)〜(h)および比較例3(a)〜(h):有機発光素子の作製とEL発光特性評価
25mm角のガラス基板の一方の面に、陽極となる幅4mmの2本のITO電極がストライプ状に形成されたITO(酸化インジウム錫)付き基板(ニッポ電機(株)、Nippo Electric Co., LTD.)を用いて有機発光素子(実施例3−1(a)〜3−1(h)、比較例3−2(a)〜3−2(h))を作製した。はじめに、上記ITO付き基板のITO(陽極)上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)・ポリスチレンスルホン酸(バイエル(株)製、商品名「バイトロンP」)をスピンコート法により、回転数3500rpm、塗布時間40秒の条件で塗布した後、真空乾燥器で減圧下、60℃で2時間乾燥を行い、陽極バッファ層を形成した。得られた陽極バッファ層の膜厚は約50nmであった。次に、実施例2および比較例2で合成した高分子発光材料(実施例2−1(a)〜2−1(h)、比較例2−2(a)〜2−2(h))90mgを2910mgのトルエン(和光純薬工業(株)製、特級)に溶解し、得られた溶液を孔径0.2μmのフィルターでろ過して塗布溶液を調製した。続いて陽極バッファ層上に、調製した塗布溶液をスピンコート法により、回転数3000rpm、塗布時間30秒の条件で塗布し、室温(25℃)にて30分間乾燥することにより、発光層を形成した。得られた発光層の膜厚は約100nmであった。次に発光層を形成した基板を蒸着装置内に載置し、カルシウム、アルミニウムを重量比1:10の割合で共蒸着し、ストライプ状に配列された幅3mmの2本の陰極を陽極の延在方向に対して直交するように形成した。得られた陰極の膜厚は約50nmであった。最後に、アルゴン雰囲気中において、陽極と陰極とにリード線(配線)を取り付けて、縦4mm×横3mmの有機発光素子を4個作製した。(株)アドバンテスト製プログラマブル直流電圧/電流源 TR6143を用いて上記有機発光素子に電圧を印加して発光させ、その発光輝度を(株)トプコン製 輝度計 BM−8を用いて測定した。その結果得られた最大発光外部量子効率、最高輝度、初期輝度を100cd/m2とした場合の一定電流駆動時における輝度半減寿命を表2に示す。
【0063】
【表2】

表2から、本発明の重合性置換基が炭化水素のみによって構成されたイリジウム錯体を重合して得られる高分子発光材料(実施例2(a)〜(h))を用いた有機発光素子(実施例3(a)〜(h))は、重合性置換基にヘテロ原子として酸素原子を含むイリジウム錯体を重合して得られた高分子発光材料(比較例2(a)〜(h))を用いたそれぞれ対応する素子(比較例3(a)〜(h))に対して、高発光効率・長寿命かつ最高輝度が高いことが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の高分子発光材料は、発光効率が高く高輝度であることから、長寿命な有機発光素子が得られる。また塗布により素子が作製できることから素子の大面積化および量産化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の有機発光素子例の断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1 透明基板
2 陽極
3 ホール輸送層
4 発光層
5 電子輸送層
6 陰極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(2)
【化1】

〔式中、R25は水素原子または炭素数1〜5の鎖状アルキル基を表わす。〕
で示される重合性二重結合が芳香環を形成する炭素原子の一つに結合している置換基を有する重合性化合物一種以上を(共)重合することにより得られる高分子発光材料であって、重合性化合物の少なくとも一つが下記式(1)
【化2】

〔式中、R1〜R24はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数1〜10のアルキル基によって置換されていてもよいアミノ基、炭素数1〜10のアルコキシ基またはシリル基を表わす。ただし、R2〜R7のうちの一つは、前記式(2)で示される重合性二重結合、前記式(2)で示される重合性二重結合が環構成炭素原子に結合した芳香環基、及び前記式(2)で示される重合性二重結合を有する前記芳香環基で置換されたヘテロ原子を含まない炭化水素基から選ばれる重合性置換基を表わす。〕
で示されるイリジウム錯体からなることを特徴とする高分子発光材料。
【請求項2】
式(1)において、R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13、R16、R17、R20、R21およびR24が水素原子である請求項1に記載の高分子発光材料。
【請求項3】
重合性置換基が、ビニル基または式(3)
【化3】

〔式中、nは0〜10の整数を表わす。〕
で示される基である請求項1に記載の高分子発光材料。
【請求項4】
少なくとも一つのキャリア輸送性重合性化合物と式(1)で示される重合性イリジウム錯体との共重合物である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の高分子発光材料。
【請求項5】
キャリア輸送性重合性化合物が正孔輸送性である請求項4に記載の高分子発光材料。
【請求項6】
式(4)
【化4】

で示される重合性化合物と式(1)で示される重合性イリジウム錯体を含む二種類以上の重合性化合物を共重合して得られる請求項1乃至5のいずれか1項に記載の高分子発光材料。
【請求項7】
キャリア輸送性重合性化合物が電子輸送性である請求項4に記載の高分子発光材料。
【請求項8】
式(5)
【化5】

で示される重合性化合物と式(1)で示される重合性イリジウム錯体を含む二種類以上の重合性化合物を共重合して得られる請求項1乃至7のいずれか1項に記載の高分子発光材料。
【請求項9】
式(1)で示される重合性イリジウム錯体と正孔輸送性重合性化合物と電子輸送性重合性化合物を含む重合性化合物の共重合物である請求項4に記載の高分子発光材料。
【請求項10】
式(1)で示される重合性イリジウム錯体と式(4)で示される正孔輸送性化合物と式(5)で示される電子輸送性化合物を含む3種類以上の重合性化合物を共重合して得られる請求項9に記載の高分子発光材料。
【請求項11】
式(1)で示される重合性イリジウム錯体を重合して得られる請求項1に記載の高分子発光材料。
【請求項12】
一対の電極間に、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の少なくとも一つの高分子発光材料を用いた発光層を含む一層または複数層の有機層が挟持されてなる有機発光素子。
【請求項13】
請求項12に記載の有機発光素子を用いた面発光光源。
【請求項14】
請求項12に記載の有機発光素子を用いた画像表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−8996(P2006−8996A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−147456(P2005−147456)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】