説明

高周波信号放出装置

高周波信号放出装置が提供される。この放出装置は、ギガヘルツ(GHz)領域及びテラヘルツ(THz)領域内の信号を放出することができる。この装置は、例えば、曲げられた時にその電気的特性を変えることができる材料を含んで成るカンチレバーを利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は2004年11月20日出願の仮出願番号60/522,920に基づく優先権を主張するものである。又、本願は、2004年11月20日出願の仮出願番号60/522,921、2004年11月20日出願の仮出願番号60/522,922、2004年11月20日出願の仮出番号60/522,923、2004年11月20日出願の仮出願番号60/522,924、及び2004年11月20日出願の仮出願番号60/522,925に基づく優先権を主張する2005年6月20日出願の米国特許出願番号11/157,272の部分継続出願である。
【0002】
発明の分野
本発明は、高周波信号及びRF(無線周波数)信号を放出するように設計された装置又は装置群、より詳しくは、ギガヘルツ領域及びテラヘルツ領域におけるRF信号を放出するように設計された装置又は装置群である。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
マイクロ波スペクトルのギガヘルツ(GHz)領域及びテラヘルツ(THz)領域は、オリジナルの分子の破壊的なイオン化を伴わずに高分子共鳴を検出することができる領域として認識されてきた。特に興味深いのは、医療用センシングから生物兵器テロ警告センサーまでにわたる用途において、巨大分子の分子振動を刺激する能力である。これらの領域内の信号を発生するためのスキームは、主として、標準的又は新規な半導体材料の使用、又は特定の結晶におけるレーザー誘起共振によって発生されるRF放射の使用に依存してきた。高周波数用には、これらの装置は、量子井戸及び/又は量子ドットの形成を必要とするか、又は共振結晶が特定の形状に機械加工されていることを必要とする。これらのアプローチは、装置ごとに狭い周波数応答を提供し、或いはレーザー励起結晶バージョンでは、それらは結晶を刺激するために用いられるレーザーの周波数シフトを介して狭い帯域幅において調整され得る。
【0004】
従って、広帯域において作動することができ、又スペクトル分析のために必要な周波数調整(同調)を提供することができる放出装置(エミッター)が必要とされている。更に、通信及びネットワーク構築において用いることができるように設計された装置もまた必要とされている。
【発明の開示】
【0005】
発明の概要
RF放射の放出装置であって、該放出装置は次の構成を有する。即ち、カンチレバー(片持ち梁構造)がアンテナと電気的に接続されており、1つ以上のカンチレバーが電気信号によって駆動されてRF放出用の電気振動を生成し、上記カンチレバーは導電(性)層の間に圧電(性)フィルムを有するように構成されており、そして上記圧電フィルムに圧力が加えられた時に上記カンチレバーが駆動されて電気パルスを放出することができるように駆動電極が配置されている。或いは、上記カンチレバーの代わりに、上記圧電フィルムに圧力を加えることができる箱型構造又はその他の機械的構造(アーキテクチャ)を採用することができる。この放出装置は、MHz、GHz及びTHz領域内のRF信号を放出することができる。
【0006】
本発明の理解は、添付の図面と共に以下の本発明の好ましい実施形態の詳細な説明を検討することにより容易となるだろう。添付の図面において、同様の参照番号は同様の要素を指す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
発明の詳細な説明
本発明に関する図面及び説明は、本発明を明確に理解するのに適切な要素を説明するために簡略化してあり、一方、明確さを期すために、典型的な放出装置において見られる他の多くの要素を省略してあることを理解されたい。当業者は、本発明を実施するためには、他の要素及び/又は工程が望ましい且つ/或いは必要であると認識するかもしれない。しかしながら、そのような要素及び工程は斯界において周知であり、又本発明のより良い理解を促進することはないので、本明細書においては、そのような要素及び工程についての議論は省略する。本明細書の開示は、当業者に知られているそのような要素及び方法に対する変形及び修飾の全てを対象とする。
【0008】
本発明は、広帯域の周波数範囲にわたり稼動することができ、又周波数走査を提供することができ、これによってスペクトル分析のために必要な電子機器を簡略化することができる高周波放出装置を提供することができる。更に、本発明の装置は、多種多様な環境及び用途において用いるための種々のゲイン(利得)を有するように設計することができる。
【0009】
例えば微小電気機械システム(MEMS:microelectromechanical system)などの機械的に制御可能な膜を用いることができる。MEMSは、典型的には、電気的構成要素と機械的構成要素とを組み合わせた統合された微小装置又はシステムであり、集積回路加工技術を用いて作製され、又そのサイズはナノメートルからミリメートルの範囲に及ぶことがある。このようなシステムは、マイクロスケールで感知、制御及び発動することができ、そして個別に又は配列(アレイ)において機能してマクロスケールでの効果を生起することができる。
【0010】
MEMSは、ベース及びデフレクター(偏向器)を有していてよい。ベース(又は基板)及びデフレクターは、例えばInP、GaAs、SiN、Si、又はSiO2などの材料から作製することができる。MEMSは、このMEMSにエネルギーを適用することによってベースに対するデフレクターの長手方向の偏位(たわみ)を生じさせるようにして、作動することができる。ベースからのデフレクターの長手方向の移動(変位)は、MEMSに適用されるエネルギーに比例する。この放出技術には、多種多様なMEMS構造を適用することができる。ほんのわずかの選ばれた種類の構造のみが本明細書において詳しく説明されるが、例えば揺動アーム及び可撓性ダイヤフラムなどのその他の構造を、受信RF信号によって導電素子に与えられる電荷差に基づいて振動を変化させるように設計することができる。MEMSは、メカニカルアドバンテージ(機械的拡大率)を有する装置内に組み込むことができ、その結果、放出された信号のゲイン(増幅率)を増大させることができる。更に、持続波をつくるため、パルスの出力(電力)を増幅するため、又は放出されるパルスの波形を変えるために、複数のMEMSを順番に(連続して)利用することができる。磁気ひずみ(磁歪)材料などの代替材料を利用することによって、電場(電界)の代わりに磁場(磁界)を用いることができる。
【0011】
本発明の装置は、例えばシリコンなどの種々の材料の上に作製することができる。このタイプの放出装置を、特定の中心周波数を有する広い周波数範囲において使用するために作製することができるように、素子のサイズは可変であってよい。更に、このMEMS放出装置の出力レベルは、例えば、MEMS構造の圧電フィルムの寸法及び/又はサイズを変えることによって、増大させることができる。又、MEMSを特定のRF周波数において共振するように設計することで、特にその周波数において、放出される出力を増大することができる。好ましくは特定の遅延又は制御可能な遅延を伴ってMEMS間が直列に接続された複数のMEMS素子を用いることによって、これらのMEMS素子のアレイが、最初の素子によって放出された信号を増幅したり、最初のパルスに対して付加的な波形を加えたり、波形の形態を変えたり、又はその周波数を変えたりすることができる。
【0012】
好ましい一実施形態では、高周波信号の発生に適した特定の信号構造(アーキテクチャ)は、2つの矩形波信号を、それらを位相をずらして組み合わせるような方法にて結合するものである。その一例として、2つの矩形波は、同じ周波数とされ(これは必要条件ではないことに注意されたい)、又位相のずれが175度に設定される。これらの2つの信号が組み合わされると、結果として、オリジナルの波形の2倍の周波数にて発生する一連の非常に短いパルス(群)がもたらされる。これらのパルスはオリジナルの波形の各遷移端において発生し、又、2つの波形が相互に打ち消しあうことでこれらのパルスは組み合わせ(合成,結合)位相と180度位相位置との間の5度の期間に等しいパルス幅を有する。得られたパルスは、正の値と負の値との間を繰り返し、又発生信号の周期時間の半分で分離される。このようなパルス発生器を複数、相互にわずかに遅延させた状態で組み合わせることによって、持続する交流信号を、その信号を発生するために用いられた波形よりも有意に高い周波数にて形成することができる。例えば、現代のコンピュータクロックチップ及びデジタルタイミング制御を用いることで、チップあたり1GHz又はそれより高い駆動信号が得られる。DC(直流)オフセットを用いることによって、2個のこのようなPCクロック装置は1GHzの矩形波信号を供給することができる。しかしながら、このような最初の波形を発生するための方法としては多種多様な方法がある。このような駆動信号の開始は、例えば128ビットの精度で制御することができる。この方法では、この例において得られる高周波の発生は、4ピコ秒のパルス幅或いは0.25THzまでとなり得る。この構成の回路を複数用い、又クロックの開始タイミングを制御することによって、持続する信号をこのように高い周波数にて発生することができる。高周波の発生のためのこのアプローチの付加的な利点は、信号出力をより低い駆動周波数にて適用することができること、及び/又は、信号出力を類似した複数の回路のアレイからの信号(群)を組み合わせることによって適用することができることである。これによって、高周波を発生するために用いられる電気構成部品(群)を、相対的に低い周波数にて作動させて、それらのコスト及び電力制限を低減することが可能になる。
【0013】
これと同じ方法で、短い電気パルスを放出することのできるMEMS装置を用いることもできる。その1例は、それらの間に圧電フィルムを有する2個の導電フィルムで構成されたMEMSカンチレバーである。この構成では、圧電材料は、カンチレバーに圧力(応力)が加えられていない時には絶縁体として機能し、そしてカンチレバーが曲げられた(たわまされた)時には短いパルスを放出する。圧電フィルムは、いずれの方向においても、カンチレバーに圧力が加えられる度に毎回このパルスを放出するので、このパルスはMEMS構造の振動(発振)周波数の2倍にて発生する。圧電材料は、それに最初に圧力が加えられた時に一方の極性のパルスを放出し、その圧力が緩められた時にその反対の極性の第2のパルスを放出する。高周波パルスの矩形波又はタイミングパルス発生について先に説明したように、MEMS構造はある時間遅延をもって離隔された反対の極性のパルス(群)を発生するように設計することができる。或いは、その設計は、容量放電装置としてMEMS素子を用いるように設定することができ、この場合、最初の駆動信号は、カンチレバーがその駆動信号に対する自身の電界差を放電するのと同時に、圧電材料に圧力を加えさせ又パルスを発生させる。この場合、第2の反対側のパルスは、圧電材料が緩んでそのオリジナルの位置に戻った時に、遅延することなく発生することができ、これにより圧電性放電のタイミング幅で発生される高い周波数の完全な単パルス(モノパルス)を提供することができる。この場合も、先に説明したように、複数のこのタイプのMEMS素子を、持続する高周波放出を発生するために用いることができる。又、圧電性単パスルは完全に双方向性であるので、装置を横切って配置されたアンテナは、全変調を受信することになり、又RFエネルギーを放出することになる。その結果、MEMS装置は、能動RF回路素子として機能する。
【0014】
先に説明したように、圧電性MEMS装置は、完全に電荷が双方向性(二方向性)である単パスルを放出する構造とすることができる。その結果、一の圧電性MEMSによって発生され第2の圧電性MEMSに送られる信号は、その第2の圧電性MEMSが正しいタイミングで放電されるならば、増幅することができる。従って、正しいタイミングで直列に接続されたこれらの装置のアレイは、出力(電力)増幅器として用いることができる。この一連の素子(群)のタイミングを変えることによって、パルス形状を変えること及び制御することが可能である。急速に放電する能力を伴わずに駆動されるMEMS素子(群)を用いることで、このMEMS素子(群)のタイミングを、波形の幅を変えて、結果としてアレイの出力周波数を変えるように用いることができる。従って、駆動スキーム及びMEMS構造に応じて、出力(電力)を増幅したり、波形整形機能を実行したり、又はその出力周波数を変えたりするように、アレイを設計することができる。
【0015】
ホットエレクトロン(高温電子)移動又は容量性スイッチング(切り替え)を用いるという、付加的な技術を採用することができる。これは、MEMS構造がそのそばを通過することを許し、それによって電気的破壊又は電気的移動を引き起こす電極の構造を採用する。その電気的破壊又は電気的移動の時間周期は、MEMS素子の通過速度によって、又は特定の電位の放電若しくは通過によって制御される。この方法では、振動はMEMS装置によって起動(トリガー)される。このタイプの構造の一具体例は、一の回路によって振動駆動され、第2の回路によってある電位に帯電されるカンチレバーである。1つの電極を振動駆動を制御するために用い、又放電点電極として機能する第2の電極を用いることによって、MEMSは、それが十分に第2の電極(放電電極)の範囲内にある時にだけ放電するようになる。MEMS素子が放電距離を通過するので、移動素子と電極との間の電子の移動は時間的に制限される。電極の周辺に絶縁構造を配置し、又MEMS素子を特定の速度用に設計することによって、この放電期間のタイミングを正確に制御することができる。
【0016】
圧電性MEMSは、ダイオード(これはその絶縁破壊電位の近くに保持されている)内の電子トンネル層の絶縁破壊を引き起こすために用いることもできる。このようなMEMSは、トランジスタ上のゲートを活性化させるために用いることもでき、それによってそのトランジスタを開放して、それを横切って電流が流れることができるようにすることができる。これら両方の場合において、MEMS素子の構造は、このスイッチング事象が発生する時間を最小化するような方法で設計することができ、そして、ダイオード又はトランジスタの特性に基づいて、そのスイッチング時間を非常に短くすることができる。このような装置が高周波振動回路の一部である場合には、結果的にMEMSは振動の周波数及び発振器(オシレータ)のタイミングを制御する。
【0017】
本発明は、通信、コンピューティング(演算)、データネットワーク構築、生物脅威(bio-threat)センサー及び化学センサーなどの、MHz、GHz及びTHz領域の製品において用いるために、大量に、且つ、低コストで作製することができる放出装置(エミッター)を提供することもできる。本発明は、より低い周波数のRF信号を、より高い周波数に変換(アップコンバート)する能力を提供することができる。本発明は、アンテナ又は導波路に直接組み込んで、発信構造の一体部分にすることも可能である。
【0018】
図1を参照すると、2つの矩形波と、それらが180度とは等しくない量で互いに位相がずれるように組み合わされた時のそれらの相互作用とが示されている。
【0019】
当業者は、本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、本発明の多くの修飾及び変更を行うことが可能であることを認識するだろう。従って、本発明の修飾及び変更は、添付の請求項及びその均等の範囲内にある場合には、本発明の範囲内に含まれるものであることを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の好ましい実施形態に従う高周波信号を放出することができる装置の実施例を示す図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態に従う高周波信号を放出することができる装置の実施例を示す図である。
【図3】本発明の好ましい実施形態に従う高周波信号を放出することができる装置の実施例を示す図である。
【図4】本発明の好ましい実施形態に従う高周波信号を放出することができる装置の実施例を示す図である。
【図5】本発明の好ましい実施形態に従う高周波信号を放出することができる装置の実施例を示す図である。
【図6】本発明の好ましい実施形態に従う高周波信号を放出することができる装置の実施例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲げられた時にその電気的特性を変えることができる材料を含んで成るカンチレバーを有することを特徴とする高周波信号放出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−522492(P2008−522492A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543417(P2007−543417)
【出願日】平成17年11月21日(2005.11.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/042392
【国際公開番号】WO2006/055960
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(507162533)センテラ インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】