説明

高周波振動ホーン

【課題】超音波ホーン本体の結晶粒粗大化を防止し、ホーン全体の長寿命化及び振動特性に与える影響の極小化を図った高周波振動ホーンを提供する。
【解決手段】高周波振動ホーン10は、高周波電流の供給を受けた圧電素子2で発生した高周波振動の振幅を増幅する装置であり、圧電素子2で発生した高周波振動を伝達するホーン母材11と、ホーン母材11と着脱自在に取り付けられるねじ込みチップ12とを備え、ホーン母材11の高周波振動を外部へ送り出す側の端面S2にねじ込みチップ12を着脱自在に取り付けるためのチップ用ねじ穴13を設ける一方、このチップ用ねじ穴13にねじ込みチップ12を締結して、ねじ込みチップ12とホーン母材11とが一体化するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホーン先端に硬質材料をろう付けする度に生じ得る超音波ホーン本体の結晶粒粗大化を防止し、かつ、ホーン全体の振動特性に与える影響の極小化を図った高周波振動ホーンに関する。
【背景技術】
【0002】
高周波の一例である超音波を利用して各種の超音波デバイスが製造されている。超音波デバイスには、例えば、FeやTi等を主成分とした金属によって構成される超音波ホーンが使われており、超音波ホーンの先端部には、被処理物と接触する超音波放射面での摩耗に対する耐久性向上の観点から、セラミックスやいわゆる硬質材料が接合されている。
【0003】
高周波ホーンの一例としては、例えば、特開2000−70854号公報に記載されるような超音波ホーンが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記特許文献1によれば、超音波ホーン本体の材質は、FeまたはTiを主成分とした金属によって構成されており、ホーン本体と硬質材料は、ろう付け、拡散接合などによって接合すると記載されている。超音波ホーンの材質は、用途によってアルミ合金やステンレス、チタン合金などが使用されている。
【0005】
また、超音波ホーンは、発生周波数やホーン先端部の振幅値を発生させる為に、使用する材料は、ヤング率、引張強度、密度、縦波音速、疲労強度などを考慮して決められ、通常に使用される温度環境下、すなわち、室温の温度環境で最適な振動が得られるように設計されている。
【0006】
さらに、超音波ホーンの先端部にホーン本体とは異なる材質の接合金属にて、セラミックスや硬質材料を接合する際には、接合金属部分の空孔率を15%未満とした場合、超音波振動エネルギーの吸収が少なく、効率的な処理ができることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−70854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、超音波ホーンの先端部にろう付けや拡散接合にて硬質金属やセラミックス材料を接合するには、超音波ホーン全体を炉内で高温に長時間加熱し、硬質材料を接合しなければならない。超音波ホーン全体を炉内で長時間加熱すると、超音波ホーンの金属材料は、結晶粒が粗大化し、引張強度や疲労強度が低下する傾向になる。
【0009】
また、アルミ合金やチタン合金で熱処理や時効硬化によって引張強度を増している材料では、炉内で高温に加熱すると、折角、熱処理や時効硬化によって増した引張強度が喪失する場合があり、超音波ホーン全体を炉内で長時間加熱することは、超音波ホーンの振動特性の低下につながり、大きな課題であった。
【0010】
本発明は上述した事情を考慮してなされたものであり、炉内でホーンを高温・長時間加熱することにより生じる超音波ホーン本体の結晶粒粗大化を防止し、ホーン全体の長寿命化及び振動特性に与える影響の極小化を図った高周波振動ホーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る高周波振動ホーンは、上述した課題を解決するため、特許請求の範囲に記載したように、高周波電流の供給を受けた圧電素子で発生した高周波振動の振幅を増幅する高周波振動ホーンであって、前記圧電素子で発生した高周波振動を伝達するホーン母材と、前記ホーン母材と着脱自在に取り付けられるねじ込みチップとを備え、前記ホーン母材の前記高周波振動を外部へ送り出す側に前記ねじ込みチップを着脱自在に取り付けるためのチップ用ねじ穴を設ける一方、このねじ穴に前記ねじ込みチップを締結して、前記ねじ込みチップと前記ホーン母材とが一体化するように構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る高周波振動ホーンによれば、ホーン本体を、ホーン先端部となるねじ込みチップとホーン母材とのねじによる着脱可能な構成とし、セラミックスや硬質材料を接合するねじ込みチップのみを炉内で高温・長時間加熱し、ねじ込みチップを取り付けるホーン母材には、一切熱を加えないようにすることで、炉内でホーンを高温・長時間加熱することに起因する超音波ホーン本体の結晶粒粗大化を防止することができる。
【0013】
また、摩耗したセラミックスや硬質材料を新たに接合するにしても、ホーン母材には、一切熱が加わらないので、繰り返される炉内での高温・長時間加熱に起因するホーン母材の振動特性変化を極小化することができる。さらに、ホーン母材には、一切熱が加わらないので、熱処理や時効硬化によって増した引張強度が喪失することがなく、ホーン母材を従来よりも長寿命化できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る高周波振動ホーンを適用したピーニング装置の構成概略を示した概略図。
【図2】本発明に係る高周波振動ホーンの第1のねじ込みチップ(ねじ込みチップの一例)の構造を示した図であり、(a)は第1のねじ込みチップの正面図、(b)は(a)に示される矢印Aに沿う方向からの矢視図(第1のねじ込みチップの側面図)、(c)は、(a)に示される矢印Bに沿う方向からの矢視図(第1のねじ込みチップの底面図)である。
【図3】本発明に係る高周波振動ホーンの第2のねじ込みチップ(ねじ込みチップの一例)の構造を示した図であり、(a)は第2のねじ込みチップの正面図、(b)は(a)に示される矢印Cに沿う方向からの矢視図(第2のねじ込みチップの側面図)、(c)は(a)に示される矢印Dに沿う方向からの矢視図(第2のねじ込みチップの底面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る高周波振動ホーンの実施形態について、添付図面を参照して説明する。尚、本明細書中で記載される高周波とは、いわゆる、商用周波数と比較して高い周波数帯を意味し、より詳細には、14kHz(20kHz以上の超音波領域を含む)の帯域を意味する。
【0016】
[第1の実施形態]
図1は、本発明に係る高周波振動ホーン10を適用したピーニング装置1の構成概略を示した概略図である。
【0017】
図1に示されるピーニング装置1では、圧電素子2を第1のカラー3と第2のカラー4とで挟み、圧電素子2を第1のカラー3と第2のカラー4で挟んだ状態で高周波振動ホーン10の一端に取り付けボルト5等の締結具で強固に締結される。また、圧電素子2には、高周波電源装置6から電線7を介して高周波電流が供給される。すると、高周波電源装置6から供給された高周波電流によって、圧電素子2は、所定の周波数で高周波振動し、この高周波振動が、高周波振動ホーン10のホーン母材11に伝達される。
【0018】
ホーン母材11に伝達された高周波振動は、圧電素子2が締結された側(図1に示される上部側)の端面(受端面)から振動の伝達方向(図1に示される下部方向)に存在するホーン端面(送端面)S1で振幅が最大になるようにホーン母材11の材質及び形状が設計されている。図1に示される高周波振動ホーン10は、一例であり、段付一様断面ホーンと呼ばれる円筒形状をした単純固体形のホーンである。
【0019】
また、ホーン母材11の材料は、使用する高周波の周波数や振幅の大きさを考慮して、アルミ合金や、炭素鋼及びTi合金等の硬度の高い材料が適宜選択される。例えば、選択されるより具体的な材料としては、Ti−3Al−2.5V(Alを3%(質量%)、Vを2.5%(質量%)含むTi合金を意味する。以下、同様とする。)、Ti−6Al−4V及びTi−6Al−7Nbがある。特に、Ti−3Al−2.5V、Ti−6Al−4V及びTi−6Al−7Nbは、耐久性があり、より大きな振幅(例えば、60μm超の振幅)で使用する場合に好ましい。
【0020】
圧電素子2にて生成された高周波振動は、圧電素子2の側から高周波振動ホーン10のホーン端面S1の側へと伝達される。ホーン母材11の下部には、ねじ込みチップ12(後述する第1のねじ込みチップ12A及び第2のねじ込みチップ12Bを指す。以下、同様とする。)を着脱するためのチップ用ねじ穴13が形成されており、このチップ用ねじ穴13を介してホーン母材11にねじ込みチップ12を取り外し可能な状態の締め付けトルクで締結することによって、ホーン母材11とねじ込みチップ12とを着脱可能に一体化させた高周波振動ホーン10を実現することができる。尚、締結具合の調整やねじ穴破損防止等の観点から、ねじ込みチップ12のねじ部15及びチップ用ねじ穴13の少なくとも一方に樹脂等がコーティングされる場合もある。
【0021】
ねじ込みチップ12は、ホーン母材11と実質的に同一の材料で構成する。ねじ込みチップ12を、ホーン母材11と実質的に同一の材料で構成することで、ホーン母材11の振動がねじ込みチップ座面S2で反射及び減衰の発生を抑制することができる。ここで、実質的に同一の材料とは、組成物の割合が幾分相違していたとしても、材料の特性(特に、反射や減衰の特性)の同一性を維持している関係の材料をいう。
【0022】
また、ねじ込みチップ12は、ホーン母材11と実質的に同一の材料で形成されたねじ込みチップ母材であって、チップ用ねじ穴13と嵌め合いの関係になるねじ部15が設けられた第1のねじ込みチップ12の本体となる本体部16と、ねじ部15と対向する面にろう付け時に形成されるろう付け部17と、硬質材料をろう付け部17を介して本体部16と接合した硬質材料部18とを備えて構成される。
【0023】
ここで、ろう付けに使用する接合材料(ろう材)及び硬質材料は、超音波ホーン等で通常に使用される材料である。高周波振動ホーン10を適用する目的や用途を考慮して、ろう材は、例えば、Au、Ag、Cu、Pdやpb等から適宜選択され、硬質材料は、例えば、セラミックス、サーメット及びWCやTiC等の焼結合金から適宜選択される。
【0024】
高周波振動ホーン10は、図1に示されるように、高周波電源6から高周波電流の供給を受けた圧電素子2で発生した高周波振動を外部へ送り出す装置であって、圧電素子2で発生した高周波振動を伝達するホーン母材11と、ホーン母材11と着脱自在に取り付けられるねじ込みチップ12とを備え、ホーン母材11の高周波振動を外部へ送り出す(送端面)側にねじ込みチップ12を着脱自在に取り付けるためのチップ用ねじ穴13を設ける一方、このチップ用ねじ穴13にねじ込みチップ12を締結して、ねじ込みチップ12とホーン母材11とを一体化するように構成される。
【0025】
図2は、図1に示される高周波振動ホーン10のねじ込みチップ12の一例である第1のねじ込みチップ12Aの構造を示した図であり、図2(a)は、第1のねじ込みチップ12Aの正面図(図1に示される状態を正面図とし、ホーン端面S1を底面と称する。)、図2(b)は、図2(a)に示される矢印Aに沿う方向からの矢視図(第1のねじ込みチップ12Aの側面図)、図2(c)は、図2(a)に示される矢印Bに沿う方向からの矢視図(第1のねじ込みチップ12Aの底面図)である。尚、本明細書において単に図2と記載される箇所は、図2(a)〜図2(c)の全図面を指し示すものとする。
【0026】
図2によれば、第1のねじ込みチップ12Aは、上述したように、本体部16に硬質材料をろう材で接合して形成されており、ねじ部15が設けられた本体部16に、ろう付け部17を介して硬質材料部18が接合される。また、第1のねじ込みチップ12Aをホーン母材11に取り付けるためのレンチ用平坦面S3が設けられる。尚、図2(c)に示される符号R1はねじ込みチップ12Aの本体部16の外周(外径)面のうち、レンチ用平坦面S3を除いた曲面である。
【0027】
第1のねじ込みチップ12Aは、ホーン母材11にチップ用ねじ穴13を介して強固にネジ締結される。第1のねじ込みチップ12Aの本体部16の厚さ、すなわち、母材厚さtは、締結用レンチの厚さより大きい寸法で構成されており、レンチにて締結または、ホーン母材11から着脱する際に硬質材料部18及びろう付け部17に過大なトルクが加わってろう付け部17が損傷するのを防止する。第1のねじ込みチップ12Aのチップ用ねじ穴13と第1のねじ込みチップ12Aの母材厚さtの部分は、ホーン母材11と実質的に同一の材料で構成されており、ホーン母材11の振動特性に及ぼす影響を最小限にしている。
【0028】
上述のように構成された高周波振動ホーン10によれば、ねじ込みチップ座面(ホーン母材11の端面)S2に設けられたチップ用ねじ穴13にねじ込みチップ12を着脱自在に構成したことによって、硬質材料(硬質材料部18)を高周波振動ホーン10にろう付けする際に、ねじ込みチップ12のみを高温で長時間加熱して行えば良く、ホーン母材11は高温環境下に長時間晒さずに済むので、ホーン母材11を素材時の状態で維持することができる。この結果、ホーン母材11は、高温で長時間晒されることに起因する引張強度の喪失及び結晶粒の粗大化を防ぐことができ、高周波振動ホーン10(及びホーン母材11)の寿命を伸ばし(長寿命化し)、振動特性の変化を最小限に食い止める(極小化する)ことができる。
【0029】
また、本体部16に硬質材料を接合した硬質材料部18が摩耗した場合に、従来は、再度、ホーンに硬質材料をろう付けする必要があったが、高周波振動ホーン10では、ねじ込みチップ12を事前に用意しておけば、硬質材料部18が摩耗したねじ込みチップ12をホーン母材11から取り外して、新たなねじ込みチップ12を取り付けることによって、高周波振動ホーン10を容易に使用できる状況下におくことができる。
【0030】
さらに、高周波振動ホーン10での振幅を今まで使用していた値から変更して高周波振動ホーン10を使用する場合において、従来は、より耐久性の高い硬質材料が必要になる等の事情がある場合、別の高周波振動ホーンを使用することが必要であったが、高周波振動ホーン10では、使用する振幅に応じたねじ込みチップ12を事前に用意しておけば、ねじ込みチップ12を交換するだけで良く、一台の高周波振動ホーン10で簡単に複数の振幅に対応して使用することができる。
【0031】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る高周波振動ホーン10は、図1に示されるねじ込みチップ12が、図2に示される第1のねじ込みチップ12Aの代わりに、後述する図3に示される第2のねじ込みチップ12Bとなる点で相違するが、その他の箇所については実質的に相違しない。そこで、第2の実施形態では、第1のねじ込みチップ12Aと相違する第2のねじ込みチップ12Bを中心に説明し、実質的に相違しない他の構成要素については同じ符号を付して、説明を省略する。
【0032】
図3は、図1に示される高周波振動ホーン10のねじ込みチップ12の一例である第2のねじ込みチップ12Bの構造を示した図であり、図3(a)は、第2のねじ込みチップ12Bの正面図(図1に示される状態を正面図とし、ホーン端面S1を底面と称する。)、図3(b)は、図3(a)に示される矢印Cに沿う方向からの矢視図(第2のねじ込みチップ12Bの側面図)、図3(c)は、図3(a)に示される矢印Dに沿う方向からの矢視図(第2のねじ込みチップ12Bの底面図)である。尚、本明細書において単に図3と記載される箇所は、図3(a)〜図3(c)の全図面を指し示すものとする。
【0033】
図3によれば、第2のねじ込みチップ12Bは、図2に示される第1のねじ込みチップ12Aの本体部16、ろう付け部17及び硬質材料部18に設けられたレンチ用平坦面S3に対して、ろう付け部17及び硬質材料部18を、レンチ用平坦面S3からねじ部15の中心側(内径側)へレンチから逃がすための逃がし用平坦面S4を設けて構成されたものである。すなわち、第2のねじ込みチップ12Bは、図2に示される第1のねじ込みチップ12Aのろう付け部17及び硬質材料部18に設けられたレンチ平坦面S3を、レンチのトルクが加わらないようにする観点から、レンチ用平坦面S3よりもさらにねじ部15の内径側に逃がして配置した構成である。
【0034】
さらに換言すれば、第2のねじ込みチップ12Bのねじ部15を中心軸とする外周面がレンチ用平坦面S3と曲面R1とで形成される本体部16の段と、外周面がねじ部15の内径側に逃がして設けられた逃がし用平坦面S4と曲面R1とで形成されるろう付け部17及び硬質材料部18の段とを有する二段の段付構造として構成される。
【0035】
このように構成される第2のねじ込みチップ12Bの利点は、ねじ込みチップ母材厚さtが小さい場合、レンチ用平坦面S3の厚さが十分に確保できず、第2のねじ込みチップ12Bをホーン母材11に締結する際に所定のトルクで強固に締結できない場合が起こり得る。この場合であっても、ろう付け部17及び硬質材料部18に逃がし用平坦面S4が設けられており、第2のねじ込みチップ12Bの締結時にレンチがろう付け部17及び硬質材料部18と接触することがないので、ろう付け部17及び硬質材料部18に過大なトルクが加わるのを防止することができる。これによって、硬質材料部18が本体部16から剥離等して第2のねじ込みチップ12Bが破損する可能性を第1のねじ込みチップ12Aよりも低減することができる。
【0036】
尚、図3に示される第2のねじ込みチップ12Bでは、レンチ用平坦面S3と逃がし用平坦面S4とが平行面を形成しているが、レンチのトルクがろう付け部17及び硬質材料部18に加わらない状況であれば、必ずしも逃がし用平坦面S4はレンチ用平坦面S3と平行面の関係に無くても良いし、逃がし用平坦面S4は平坦面でなくても良い。
【0037】
以上、高周波振動ホーン10によれば、ねじ込みチップ座面(ホーン母材11の端面)S2に設けられたチップ用ねじ穴13にねじ込みチップ12を着脱自在に構成したことによって、硬質材料(硬質材料部18)を高周波振動ホーン10にろう付けする際に、ねじ込みチップ12のみを高温で長時間加熱して行えば良く、ホーン母材11は高温環境下に長時間晒さずに済むので、ホーン母材11を素材時の状態で維持することができる。この結果、ホーン母材11は、高温で長時間晒されることに起因する引張強度の喪失及び結晶粒の粗大化を防ぐことができ、高周波振動ホーン10(及びホーン母材11)を長寿命化して、振動特性の変化を極小化することができる。
【0038】
一方、高周波振動ホーン10は、硬質材料部18が摩耗した場合のメンテナンス面で従来よりも遥かに有益である。より詳細には。本体部16に硬質材料を接合した硬質材料部18が摩耗した場合、従来では、再度、ホーンに硬質材料をろう付けする必要があったが、高周波振動ホーン10では、ねじ込みチップ12を事前に用意しておけば、硬質材料部18が摩耗したねじ込みチップ12をホーン母材11から取り外して、新たなねじ込みチップ12を取り付けることによって、高周波振動ホーン10を容易に使用できる状況下におくことができる。
【0039】
さらに、高周波振動ホーン10での振幅を今まで使用していた値から変更して高周波振動ホーン10を使用する場合において、従来は、より耐久性の高い硬質材料が必要になる等の事情がある場合、別の高周波振動ホーンを使用することが必要であったが、高周波振動ホーン10では、使用する振幅に応じたねじ込みチップ12を事前に用意しておけば、ねじ込みチップ12を交換するだけで良く、一台の高周波振動ホーン10で簡単に複数の振幅に対応して使用することができる。
【0040】
また、レンチ用平坦面S3をねじ込みチップ12の本体部16の外周面に設けた第1のねじ込みチップ12A及び第2のねじ込みチップ12Bでは、ホーン母材11と第1のねじ込みチップ12A又は第2のねじ込みチップ12Bと着脱する際にレンチでのねじ締め及びねじ緩めを容易に行うことができる。
【0041】
さらに、第2のねじ込みチップ12Bでは、第2のねじ込みチップ12Bの締結時にレンチがろう付け部17及び硬質材料部18と接触することがないので、ろう付け部17及び硬質材料部18に過大なトルクが加わるのを防止することができる。これによって、硬質材料部18が本体部16から剥離等して第2のねじ込みチップ12Bが破損する可能性を第1のねじ込みチップ12Aよりも低減することができる。
【0042】
尚、本発明は上記の各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化しても良い。
【符号の説明】
【0043】
1 ピーニング装置
2 圧電素子
3 第1のカラー
4 第2のカラー
5 取り付けボルト
6 高周波電源
7 電線(ケーブル)
10 高周波振動ホーン
11 ホーン母材
12A,12B ねじ込みチップ
13 チップ用ねじ穴
15 ねじ部
16 本体部
17 ろう付け部
18 硬質材料部
S1 ホーン端面
S2 ねじ込みチップ座面
S3 レンチ用平坦面
S4 逃がし用平坦面
R1 曲面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波電流の供給を受けた圧電素子で発生した高周波振動の振幅を増幅する高周波振動ホーンであって、
前記圧電素子で発生した高周波振動を伝達するホーン母材と、
前記ホーン母材と着脱自在に取り付けられるねじ込みチップとを備え、
前記ホーン母材の前記高周波振動を外部へ送り出す側に前記ねじ込みチップを着脱自在に取り付けるためのチップ用ねじ穴を設ける一方、このねじ穴に前記ねじ込みチップを締結して、前記ねじ込みチップと前記ホーン母材とが一体化するように構成されることを特徴とする高周波振動ホーン。
【請求項2】
前記ねじ込みチップは、前記チップ用ねじ穴と嵌め合いの関係にあるねじ部が設けられたねじ込みチップ母材に硬質材料をろう付けして形成されることを特徴とする請求項1記載の高周波振動ホーン。
【請求項3】
前記ねじ込みチップ母材の材料は、前記ホーン母材と実質的に同じ材料で構成されたことを特徴とする請求項2記載の高周波振動ホーン。
【請求項4】
前記ねじ込みチップは、レンチ締結用の平坦面を設けたことを特徴とする請求項1記載の高周波振動ホーン。
【請求項5】
前記ねじ込みチップは、前記硬質材料及びろう付けした部分に設けられた前記レンチ用の平坦面を、前記レンチ用平坦面よりもさらに前記ねじ部の内径側に逃がして配置したことを特徴とする請求項4記載の高周波振動ホーン。
【請求項6】
前記ねじ込みチップは、前記ねじ込みチップのねじ部を中心軸とする外周面が前記レンチ用の平坦面を含む前記ねじ込みチップ母材の段と、前記ねじ込みチップのねじ部を中心軸とする外周面が前記レンチ用の平坦面から前記ねじ込みチップのねじ部の内径側へ逃がして配置された平坦面を含む前記硬質材料及びろう付けした部分の段とを有する二段の段付構造であることを特徴とする請求項4記載の高周波振動ホーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−259988(P2010−259988A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111755(P2009−111755)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【出願人】(390014568)東芝プラントシステム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】