説明

高周波解凍装置および解凍方法

【課題】常に均一かつ適正に冷凍食材に対して解凍処理を施すことができるようにする。
【解決手段】上部電極31および下部電極35に挟持された状態の冷凍食材Rに対し対向電極を介して高周波発振器50からの高周波を印加することにより誘電加熱で冷凍食材Rに解凍処理を施す高周波解凍装置10であり、最初に解凍に供される第1上部電極群用単位電極302は、その面積が冷凍食材Rの電極に対向した面の面積より小さく設定され、2番目に解凍に供される第2上部電極群用単位電極303は、第1上部電極群用単位電極302の面積より大きく設定され、3番目に解凍に供される第3上部電極群用単位電極304は、第2上部電極群用単位電極303の面積より大きく設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍加工処理された肉類や魚介類等の冷凍食材に対して高周波を印加することにより解凍処理を施す高周波解凍装置および解凍方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているような、冷凍食材に対して高周波を印加することにより解凍処理を施す高周波解凍装置が知られている。この高周波解凍装置は、一対の対向電極間に冷凍食材を挟持した状態で高周波発振器からの高周波電力が対向電極を介して冷凍食材に供給されるようになされており、対向電極によって挟持された冷凍食材は、高周波電力が供給されることによる誘電加熱によって解凍されるようになっている。
【特許文献1】特開平8−266257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1に記載されているような高周波解凍装置にあっては、冷凍食材を一対の対向電極で確実に覆って、加熱対象物内に均一化された電界が生じるようにしたものが採用されている。しかしながら、このような対向電極の場合、媒体の境界、すなわち冷凍食材の稜縁部に高周波のエネルギーが集中する傾向にあるため、この部分の温度が他の部分より加熱され易くなり、これによって冷凍食材が均等に解凍されなくなるという問題点が存在する。
【0004】
特に、冷凍食材が食肉である場合、脂身は誘電損失および導電率が高く高周波印加による誘電加熱の他にジュール熱も加わった状態で加熱されるため、かかる脂身が冷凍食肉の稜縁部に位置しているような場合には、解凍された食肉の稜縁部が煮えた状態になって商品価値を著しく低下させるという不都合が生じる。
【0005】
本発明は、かかる状況に鑑みなされたものであって、常に均一かつ適正に冷凍食材に対して解凍処理を施すことができる高周波解凍装置および解凍方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、所要の厚みに加工された冷凍食材に対し解凍部で高周波電力を印加して誘電加熱を行うことにより解凍処理を施す高周波解凍装置において、前記解凍部は、前記冷凍食材を挟持する電極板のうち少なくとも一方の電極板が前記冷凍食材の被挟持面の形状より小さい板面形状を有する第1の対向電極と、前記冷凍食材を挟持する電極板のうち少なくとも一方の電極板が前記小さい板面形状より大きな板面形状を有する第2の対向電極と、前記第1の対向電極を介して前記冷凍食材に高周波電力を供給した後に前記第2の対向電極を介して前記冷凍食材に高周波電力を供給する高周波供給部とを備えてなることを特徴とする高周波解凍装置である。
【0007】
また、請求項4記載の発明は、所要の厚みに加工された冷凍食材に対し解凍部で高周波電力を印加して誘電加熱を行うことにより解凍処理を施す高周波解凍方法において、前記被解凍食材を、少なくとも一方の電極板が前記冷凍食材の被挟持面の形状より小さい板面形状を有する第1の対向電極の間に挟持して高周波電力を印加し、引き続き少なくとも一方の電極板が前記小さい板面形状より大きな板面形状を有する第2の対向電極の間に挟持して高周波電力を印加することを特徴とする高周波解凍方法である。
【0008】
請求項1および2記載の発明において「所要の厚みに加工された冷凍食材」とは、当該冷凍食品の製造工程においてある程度のバラツキが存在する状態で目標値としての所要の厚み寸法になるように加工された冷凍食材のことである。従って、その表面に多少の凹凸や隆起あるいは陥没が存在するようなものであっても、「所要の厚みに加工された冷凍食材」の範囲に含まれる。
【0009】
請求項1および4記載の発明の構成によれば、解凍部に供給された冷凍食材は、第1の対向電極間に挟持された状態で高周波供給部からの高周波電力が供給されることによりまず第1段階の誘電加熱による解凍処理が施され、引き続き第2の対向電極に挟持された状態で高周波印加による第2段階の誘電加熱による解凍処理が施される。
【0010】
加工された冷凍食材は、予め所定の寸法サイズの略直方体、乃至は円柱体状等の所要厚みを有する立体形状に形成されているものであり、かかる冷凍食材を挟持する第1の対向電極は、電極板のうち少なくとも一方の電極板が冷凍食材の被挟持面の形状より小さい板面形状に設定されているため、解凍処理の初期において冷凍食材の稜縁部は、高周波のエネルギーの集中が回避されて高周波加熱が他の部位に比して低いレベルで解凍処理される。従って、解凍処理の初期において冷凍食材の稜縁部が過加熱されて解凍状態が不均一になるという不都合が解消される。
【0011】
ついで第2段階の解凍処理に供される第2の対向電極は、電極板のうち少なくとも一方の電極板が第1の対向電極の板面形状より大きな板面形状を備えているため、冷凍食材の稜縁部が対向電極によって略乃至は確実に覆われ、これによって第1の対向電極で十分に解凍されなかった冷凍食材の稜縁部が高周波エネルギーの集中も加わって他の部位より加熱され易くなる。従って、冷凍食材は、高周波加熱による解凍処理が完了した状態で解凍温度に大きなバラツキがない状態で均一に解凍される。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記高周波供給部は、前記第1および第2の対向電極への印加電力量が略同一に設定されていることを前記高周波供給部は、前記第1および第2の対向電極への供給電力量が略同一に設定されていることを特徴とするものである。
【0013】
かかる構成によれば、冷凍食材は、第1および第2の対向電極により同一の高周波印加条件で誘電加熱が施され、均等な解凍処理が実現する。また、高周波供給源の制御乃至管理が簡単になる。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記高周波供給部は、前記第2の対向電極への供給電力レベルが、第1の対向電極への供給電力レベルより低く設定されていることを特徴とするものである。
【0015】
かかる構成によれば、第1の対向電極による解凍処理から第2の対向電極による解凍処理に移ることにより、解凍状態の進行に応じて冷凍食材に供給される電力のレベルが低くなっていくため、解凍処理の進行に伴う稜縁部の温度上昇が急激となるような不都合が回避されるばかりか、解凍処理の進行に応じた冷凍食材内での伝熱作用が効果を発揮し、より均一な解凍処理が実現する。
【発明の効果】
【0016】
請求項1および4記載の発明によれば、第1の対向電極において冷凍食材の稜縁部が過加熱されて解凍状態が不均一になるという不都合を解消することができ、かつ、第2の対向電極において第1の対向電極で十分に解凍されなかった冷凍食材の稜縁部を効果的に加熱するので、結果として冷凍食材を解凍温度に大きなバラツキがない状態で均一に解凍することができる。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、冷凍食材は、第1および第2の対向電極により同一の高周波印加条件で誘電加熱が施され、これによって均等な解凍処理が実現するようにした上で、高周波供給源の制御乃至管理を簡単なものにすることができる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、第1の対向電極による解凍処理から第2の対向電極による解凍処理に移ることにより、解凍状態の進行に応じて冷凍食材に供給される電力のレベルが低くなっていくため、解凍処理の進行に伴う稜縁部の温度上昇が急激となるような不都合が回避されるばかりか、解凍処理の進行に応じた冷凍食材内での伝熱作用が効果を発揮し、より均一な解凍処理を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、本発明に係る高周波解凍装置の一実施形態を示す斜視図である。また、図2は、図1に示す高周波解凍装置のA−A線断面図であり、図3は、図1に示す高周波解凍装置のB−B線断面図である。なお、これらの図において、X−X方向を幅方向(左右方向)、Y−Y方向を前後方向といい、特に−X方向を左方、+X方向を右方、−Y方向を前方、+Y方向を後方という。
【0020】
図1に示すように、高周波解凍装置10は、前後方向に長尺の箱形を呈した装置本体11内に冷凍食材Rを当該装置本体11の後端から前端に向けて搬送する搬送機構(搬送手段)20と、この搬送機構20によって搬送される冷凍食材Rに対して高周波を印加するべく上下で対向配置された対向電極30と、これらの対向電極30の内の上方に配設されたもの(後述の第1〜第3上部電極群32,33,34)を昇降させる昇降機構40と、前記装置本体11の天板111上に配設された高周波発振器(高周波供給部)50とを備えた基本構成を有している。
【0021】
なお、本発明に係る解凍部は、前記搬送機構20と、前記対向電極30と、前記高周波発振器50とを備えて構成されている。
【0022】
前記装置本体11は、その下部から下方へ向けて突設された幅方向一対の前後方向に延びる、前記搬送機構20を支持するための支持フレーム12を有している。各支持フレーム12は、前後長が装置本体11のそれより若干長めに設定され、それぞれ長手方向の全長に亘って等ピッチで下方へ向けて突設された複数本の支柱13を有している。また、装置本体11の後方壁112には下縁部から上方に向かって切り欠かれることによって形成された、冷凍食材Rを装置本体11内へ搬入するための搬入口14が設けられているとともに、装置本体11の前方壁113には搬入口14と同様に形成された冷凍食材Rを装置本体11内から外部へ搬出するための搬出口15が設けられている。
【0023】
前記搬入口14および搬出口15には、昇降することによって開閉可能に構成された仕切り板16と、当該仕切り板16を昇降させて搬入出口14,15を開閉するための開閉手段17とがそれぞれ設けられている。前記開閉手段17は、後方壁112および前方壁113の上方位置に縦置きでそれぞれ付設された幅方向一対の開閉エアーシリンダ171と、各開閉エアーシリンダ171から下方に向けて進退可能に突設されたピストンロッド172とを備えている。そして、各ピストンロッド172の下端部は仕切り板16に連結され、ピストンロッド172が開閉エアーシリンダ171に対して昇降することによって搬入出口14,15が開閉されるようになっている。
【0024】
また、装置本体11内には、適所にマイクロコンピュータからなる制御装置70が設けられているとともに、装置本体11内の外壁面の適所には、高周波解凍装置10の運転条件を入力操作するための操作盤76が設けられ、前記制御装置70は、この操作盤76から入力された操業情報に基づいて運転条件を設定し、この運転条件に応じた制御信号を関連機器に出力し、これによる関連機器の駆動によって高周波解凍装置10が適正に操業されるようになっている。
【0025】
前記搬送機構20は、図2に示すように、前記一対の支持フレーム12の前端位置間に架設された駆動ローラ軸211回りに同心で一体回転可能に軸支された駆動ローラ21と、同後端位置間に架設された従動ローラ軸221回りに同心で回転自在に軸支された従動ローラ22と、これら駆動ローラ21および従動ローラ22間に張設された搬送ベルト23と、前記駆動ローラ21の下方の棚板上に配設された、当該駆動ローラ21に駆動力を伝達する駆動モータ24と、この駆動モータ24の駆動軸241に同心で一体回転可能に外嵌された駆動プーリ242および前記駆動ローラ21間に張設される駆動ベルト25とを備えて構成されている。そして、上流側工程から送り込まれた冷凍食材Rは、作業ロボット等の所定の受け渡し手段によって搬送ベルト23の上流端(後端)上面に載置され、仕切り板16の上昇により搬入口14が開放された状態で、駆動モータ24の駆動による搬送ベルト23の周回で装置本体11内へ搬入されるようになっている。
【0026】
前記駆動モータ24は、搬入出口14,15の開閉および対向電極30の後述する第1〜第3上部電極群32,33,34の昇降に同期して間欠的に駆動されるようになされている。具体的には、上流工程から供給された冷凍食材Rは、搬入出口14,15が開放され、かつ、第1〜第3上部電極群32,33,34が上昇された状態で駆動モータ24の駆動により装置本体11内の解凍空間Vへ搬入されるとともに、すでに解凍処理が完了した冷凍食材Rが玉突き式に解凍空間Vから外部へ搬出されるようになっている。
【0027】
そして、解凍空間V内に搬入された冷凍食材Rは、間欠的に駆動モータ24が停止されたときのみ当該冷凍食材Rの上面から5mm〜10mm離間した位置まで下降した上部電極31を介して高周波発振器50からの高周波が印加されて解凍処理が施されるようになっている。すなわち、冷凍食材Rは、解凍空間V内において、駆動モータ24の間欠的な駆動によって間欠的に移動され、停止している間に高周波の印加処理が施されるようになされているのである。
【0028】
因みに、下降した上部電極31が冷凍食材Rの上面から所定距離だけ離間した状態とされるのは、冷凍食材Rの厚み寸法にはバラツキが存在するためである。すなわち、上部電極31が冷凍食材Rの上面と当接するようにした場合、前記バラツキによって上部電極31は冷凍食材Rの上面の一部にしか当接せず、これによって冷凍食材Rにおける上部電極31と当接した部分のみにエネルギーが集中してその部分が過加熱されるという不都合が発生するのである。かかる不都合の発生を防止するべく、本発明においては、冷凍食材Rの厚み寸法のバラツキの範囲以上に上部電極31を冷凍食材Rの上面から離間させているのである。なお、本実施形態においては、離間距離を5mm〜10mmの範囲に設定しているが、本発明は、離間距離が5mm〜10mmであることに限定されるものではなく、状況に応じて適宜適切な離間距離が設定される。
【0029】
前記対向電極30は、搬送ベルト23の往きベルトを挟んでその上部に設けられた高周波が印加される上部電極31と、その下部に設けられた下部電極35とを備えている。下部電極35は、幅寸法が搬送ベルト23の幅寸法と略同一に設定されているとともに、長さ寸法が搬送ベルト23の長さ寸法(前後寸法)より若干短めに設定された前後方向に長尺の1枚物の電極板によって形成されているのに対し、前記上部電極31は、上流側(後方側)から下流側に向けて順次形成された、それぞれ複数の単位電極301を有してなる第1上部電極群32、第2上部電極群33および第3上部電極群34を備えて形成されている。
【0030】
前記単位電極301は、平面視で矩形状を呈し、四隅がいずれも円弧状に形成され、これによって冷凍食材Rに単位電極301を介して高周波電力が印加された状態で当該単位電極301の四隅にエネルギーが集中してこの部分が部分的に過加熱されるのを防止するようになされている。因みに、単位電極301の隅部が角になっていた場合には、この角の部分にエネルギーが集中し、冷凍食材Rにおけるこの角部に対向した部分が過加熱されるのである。
【0031】
前記第1上部電極群32と前記下部電極35とで本発明に係る第1の対向電極が形成されているとともに、前記第2上部電極群33と前記下部電極35とで本発明に係る第2の対向電極が形成されている。
【0032】
そして、第1上部電極群32と下部電極35との間における搬送ベルト23上に第1解凍空間V1が形成され、第2上部電極群33と下部電極35との間における搬送ベルト23上に第2解凍空間V2が形成され、第3上部電極群34と下部電極35との間における下部電極35上に第3解凍空間V3が形成されている。第1解凍空間V1と第2解凍空間V2との間、および第2解凍空間V2と第3解凍空間V3との間には、冷凍食材Rに対して高周波が印加されない養生空間が形成されている。
【0033】
本実施形態においては搬送ベルト23の往きベルト上面の空間(すなわち解凍空間V)が、図3に示すように、仮想の線(図3に二点鎖線で表示)によって幅方向に3等分されているとともに、前後方向に23等分されている。前記第1上部電極群32は、仮想線によって区切られた上流側の9個の升目に対応して9個の単位電極301が配設されることによって形成され、また、前記第2上部電極群33は、第1上部電極群32の下流側における2列で6個分の升目を除いてその直ぐ下流側の6列で18個の単位電極301によって形成され、さらに、前記第3上部電極群34は、第2上部電極群33の下流側における2列で6個分の升目を除いてその直ぐ下流側の10列で30個の単位電極301によって形成されている。
【0034】
そして、上流側の工程から順次送り込まれた冷凍食材Rは、1列3個が搬送ベルト23の上流端に供給され、所定の時間ピッチで間欠的に周回する搬送ベルト23によって解凍空間V内へ導入され、これと同期した上部電極31の昇降によってまず第1上部電極群32における単位電極301と下部電極35との間に挟持された状態で高周波が印加される。1列3個の冷凍食材Rは、第1上部電極群32において搬送ベルト23の間欠周回により3回の高周波印加が施される。
【0035】
ついで、第1上部電極群32において所定の時間ピッチで3回の高周波印加処理が施された1列3個の冷凍食材Rは、2回分の時間ピッチによる養生処理(高周波が印加されずに冷凍食材R内部での熱伝導によって温度の均一化が図られる処理)が施された後、第2上部電極群33において所定の時間ピッチで6回の高周波印加処理が施される。
【0036】
ついで、第2上部電極群33において所定の時間ピッチで6回の高周波印加処理が施された1列3個の冷凍食材Rは、前記同様の2回分の時間ピッチによる養生処理が施された後、第3上部電極群34において所定の時間ピッチで10回の高周波印加処理が施されて解凍処理が完了する。解凍処理が完了した冷凍食材Rは、1列3個ずつが解凍空間Vから外部へ搬出されることになる。
【0037】
前記昇降機構40は、上部電極31を昇降動作させるものであり、下面に複数の単位電極301が装着される金属製の電極支持板41と、この電極支持板41を昇降させる複数のシリンダ装置42とを備えて構成されている。前記電極支持板41は、絶縁材料である硬質の合成樹脂材料によって矩形状に形成され、第1上部電極群32用のものと第2上部電極群33用のものと、第3上部電極群34用のものとの3種類が採用されている。
【0038】
第1上部電極群32用の電極支持板41は、3行3列に配設された9個の単位電極301を覆い得るように寸法設定されているとともに、第2上部電極群33用の電極支持板41は、3行6列に配設された18個の単位電極301を覆い得るように寸法設定され、さらに第3上部電極群34用の電極支持板41は、3行10列に配設された30個の単位電極301を覆い得るように寸法設定されている。
【0039】
前記シリンダ装置42は、縦置きで設けられた昇降エアーシリンダ421と、この昇降エアーシリンダ421から下方に向けて進退可能の突設されたピストンロッド422とからなっている。前記昇降エアーシリンダ421は、装置本体11内を上下で分けるように設けられた棚板114上に縦置きで固定され、ピストンロッド422がこの棚板114を貫通して下方へ向けて突設されている。そして、ピストンロッド422の下端部が電極支持板41に接続されることにより、シリンダ装置42の駆動によるピストンロッド422の昇降エアーシリンダ421に対する進退で電極支持板41が下降したり上昇したりするようになっている。
【0040】
かかるシリンダ装置42は、本実施形態においては、第1上部電極群32用のものとして4本が採用されているとともに、第2上部電極群33用のものとして6本が採用され、さらに第3上部電極群34用のものとして10本が採用されている。
【0041】
そして、冷凍食材Rに高周波を印加するに際しては、ピストンロッド422を下降させるべきシリンダ装置42の駆動による電極支持板41を介した上部電極31の下降によって当該冷凍食材Rを上部電極31(単位電極301)と、搬送ベルト23を介して下部電極35との間に位置させる一方、解凍空間V内で冷凍食材Rを搬送するに際しては、ピストンロッド422を上昇させるべきシリンダ装置42の駆動による電極支持板41を介した上部電極31の上昇によって上部電極31の冷凍食材Rからの離間距離を大きくするようになされている。因みに冷凍食材Rを移動させるときに上部電極31を上昇させるのは、万が一冷凍食材Rが上部電極31と干渉することを避けるためであるが、冷凍食材Rの寸法精度がよくてその上面に凹凸がほとんど存在しないような場合には、上部電極31を昇降させずに予め設定された上部電極31の所定の高さ位置を維持させるようにしてもよい。
【0042】
このように構成された昇降機構40の昇降エアーシリンダ421および上記開閉手段17の開閉エアーシリンダ171に対し、駆動用の圧搾空気を供給するための圧縮ポンプや圧縮空気を貯留する圧力容器等を備えてなる圧搾空気源60が高周波解凍装置10の近傍に設けられている。この圧搾空気源60からの圧搾空気は、第1エアー配管61を通し、かつ、第1弁装置611を介して一対の開閉エアーシリンダ171へ供給されるとともに、第2エアー配管62を通し、かつ、第2弁装置621介して全ての昇降エアーシリンダ421へ供給されるようになっている。
【0043】
なお図面では、第1エアー配管61および第2エアー配管62を簡略化して示しているが、実際はシリンダ(開閉エアーシリンダ171および昇降エアーシリンダ421)の両端部に向かうように複数本が配管されているとともに、エアー抜きのための配管や各種の切換えバルブ類も設けられているが、これらは慣用技術であるため図示を省略している。これについては第2エアー配管62についても同様である。
【0044】
また、第1弁装置611および第2弁装置621についても、複数の制御弁が採用され、各制御弁が他の制御弁と連係しながら開閉動作を行うことによって仕切り板16の開閉動作および上部電極31の昇降動作が制御されるようになされているが、これらについても慣用技術であるため図示を省略している。
【0045】
前記高周波発振器50は、本実施形態においては、第1上部電極群32用の第1発振器51と、第2上部電極群33用の第2発振器52と、第3上部電極群34用の第3発振器53との3台が採用されている。本実施形態においては、第1〜第3発振器51,52,53は同一仕様(すなわち同一出力)のものが採用されているが、本発明は、第1〜第3発振器51,52,53が全て同一出力のものを採用することに限定されるものではなく、それぞれ異なる出力のものを採用してもよい。
【0046】
これらの第1〜第3発振器51,52,53へは、商用電源からの電力が所定の電源装置54を介して供給されるようになっており、かかる電力が供給された第1発振器51は、第1上部電極群32の各単位電極301に対して高周波電圧を印加し、第2発振器52は第2上部電極群33の各単位電極301に対して高周波を印加し、第3発振器53は第3上部電極群34の単位電極301に対し高周波電圧を印加するようになされている。
【0047】
従って、第1上部電極群32には9個の単位電極301が存在するため、1台の高周波発振器50の出力をQkWとした場合、各単位電極301に供給される電力は、Q/9kWになる。これに対し第2上部電極群33には18個の単位電極301が存在するため、第2上部電極群33において各単位電極301に供給される電力は、Q/18となる。また、最後の第3上部電極群34には30個の単位電極301が存在するため、第3上部電極群34において各単位電極301に供給される電力は、Q/30になる。
【0048】
このことは、第2上部電極群33において1個の単位電極301に供給される電力量が第1上部電極群32における同電力量の1/2((Q/18)÷(Q/9))であることを示し、第3上部電極群34において1個の単位電極301に供給される電力量は、第1上部電極群32における同電力量の略1/3((Q/30)÷(Q/9))であることを示す。
【0049】
このようになされているのは、冷凍食材Rに対する高周波印加による解凍処理の進行に従って、冷凍食材Rが過加熱されることを防止し、これによって冷凍食材Rの内部の温度分布が不均一になることを防止するためである。
【0050】
図4は、第1〜第3上部電極群32,33,34のそれぞれに使用される単位電極301の平面視の寸法を説明するためにこれらを並記した平面図であり、(イ)は、第1上部電極群用単位電極302を、(ロ)は、第2上部電極群用単位電極303を、(ハ)は、第3上部電極群用単位電極304をそれぞれ示している。なお、(ニ)は、比較のための参考図である。また、(イ)〜(ニ)に添えられた添え字の「a」は、平面図であることを示し、同添え字の「b」は、側面図であることを示している。
【0051】
本発明においては、図4に示すように、第1上部電極群32に採用されている単位電極301(第1上部電極群用単位電極302)(図4の(イ))は、3種類の単位電極301の内で平面視の大きさが最も小さく寸法設定され、第2上部電極群33に採用されている単位電極301(第2上部電極群用単位電極303)(図4の(ロ))は、3種類の内で中間の大きさに寸法設定され、第3上部電極群34に採用されている単位電極301(第3上部電極群用単位電極304)(図4の(ハ))は、3種類の内で最も小さく寸法設定されている。なお、図4の(ニ)には、参考のために、比較例として単位電極305が冷凍食材Rより大きい場合を示している。
【0052】
本実施形態においては、縦(左右寸法)、横(前後寸法)、高さ(厚み寸法)の寸法が「530mm×360mm×170mm」のブロック状の冷凍食材Rを対象とし、第1上部電極群用単位電極302は、縦×横寸法が「370mm×250mm」に設定され、これによって第1上部電極群用単位電極302が冷凍食材Rの上面から所定距離離間して対向した状態で、図4の(イ)に示すように、ブロック状の冷凍食材Rの上部の稜縁部の非常に多くの量が第1上部電極群用単位電極302から外方に向けてはみ出した状態になっている。
【0053】
これに対し、第2上部電極群用単位電極303は、縦×横寸法が「420mm×280mm」に設定され、これによって第2上部電極群用単位電極303が冷凍食材Rに対し上方から所定の間隔で対向した状態において、図4の(ロ)に示すように、ブロック状の冷凍食材Rの上部の稜縁部の第1上部電極群用単位電極302からのはみ出し量が第1上部電極群用単位電極302の場合より少なくなっている。
【0054】
さらに、第3上部電極群用単位電極304においては、縦×横寸法が「480mm×320mm」に設定され、第3上部電極群用単位電極304が冷凍食材Rに対し上方から所定の間隔で対向した状態において、図4の(ハ)に示すように、ブロック状の冷凍食材Rの稜縁部のはみ出し量は、極めて少ないものになっている。
【0055】
このようにされるのは、以下の理由による。すなわち、冷凍食材Rが第1上部電極群32によって高周波解凍が施される解凍処理の初期においては、高周波発振器50から大量のエネルギーを冷凍食材Rに供給して迅速に解凍処理を施すことが全体的な解凍処理の効率化を図る上で有効であるが、このようにすると、冷凍食材Rの稜縁部に、図4の(ニ)−「b」に示すように、高周波のエネルギーが集中し、これによって冷凍食材Rの稜縁部が過加熱されてしまい、均一な温度分布で冷凍食材Rを解凍することができなくなる。
【0056】
そして、冷凍食材Rが冷凍職肉の場合には、ブロック状の冷凍食肉の稜縁部に存在する誘電損失および導電率の高い脂身が誘電加熱およびジュール加熱され易く、この部分がいわゆる煮えた状態になってしまい、これによって解凍品の商品価値が大幅に低下してしまうという不都合が生じるのである。
【0057】
これに対し本発明においては、単位電極301は、図3の(イ)〜(ハ)−「a」に示すように、冷凍食材Rに与えるエネルギー量が最も多い第1上部電極群用単位電極302の面積が最小に設定され、冷凍食材Rに与えるエネルギー量が2番目である第2上部電極群用単位電極303が第1上部電極群用単位電極302より若干大きめに設定され、冷凍食材Rに与えるエネルギー量が最も小さく設定された最後の第3上部電極群用単位電極304が最も大きく設定されている。
【0058】
従って、冷凍食材Rが第1解凍空間V1に搬入され、下部電極35を介して下部電極35と第1上部電極群用単位電極302との間に挟持された状態においては、図4の(イ)−「b」に示すように、第1上部電極群用単位電極302と下部電極35との間に供給されるエネルギー(便宜的に点線で示している)は、冷凍食材Rの上部の稜縁部を大きく外れて流れるため、解凍初期ということで冷凍食材Rへ向けてたとえ多くのエネルギーが供給されても、冷凍食材Rの稜縁部が過加熱されることを確実に防止することができる。
【0059】
因みに、上流側の工程から略−20℃で受け渡された冷凍食材Rは、第1解凍空間V1において略−10℃にまで昇温される。
【0060】
ついで、第1解凍空間V1における解凍処理が完了し、第2解凍空間V2へ送り込まれた冷凍食材Rは、略−20℃であったものが略−10℃にまで昇温されているため、冷凍食材Rに対して与えられる単位時間当たりのエネルギー量は、第1解凍空間V1の場合の略1/2に減少され、緩やかに時間をかけた(第1解凍空間V1の場合の略2倍)解凍処理が冷凍食材Rに施される。
【0061】
従って、第2解凍空間V2においては、冷凍食材Rは、第1解凍空間V1における第1上部電極群用単位電極302より若干平面寸法が大きい第2上部電極群用単位電極303によって高周波が印加されるが、冷凍食材Rの稜縁部へのエネルギーの集中は程度の高いものにはなっていないため、稜縁部の過加熱が抑えられるばかりか、むしろ第1解凍空間V1で加熱されていなかった状態が解消されて稜縁部に対しても解凍処理が実行される。
【0062】
因みに、第1解凍空間V1から略−10℃で受け渡された冷凍食材Rは、第2解凍空間V2において略−5℃にまで昇温される。
【0063】
そして、第2解凍空間V2における解凍処理が完了し、第3解凍空間V3へ送り込まれた冷凍食材Rは、冷凍食材Rに対して与えられる単位時間当たりのエネルギー量が第1解凍空間V1の場合の略1/3に減少され、さらに緩やかに時間をかけた(第1解凍空間V1の場合の略3倍)解凍処理が冷凍食材Rに施される。
【0064】
従って、第3解凍空間V3においては、冷凍食材Rは、第2解凍空間V2における第2上部電極群用単位電極303より相当平面寸法が大きい、冷凍食材Rのそれと略同等の第3上部電極群用単位電極304によって高周波が印加されるが、高周波のエネルギーが相当低くなっているため、以後は、冷凍食材Rに対する時間をかけた均一加熱が行われることになる。
【0065】
因みに、第2解凍空間V2から略−5℃で受け渡された冷凍食材Rは、第3解凍空間V3において略−3℃にまで昇温され、この状態で解凍処理が終了する。
【0066】
図5は、高周波解凍装置10の運転制御の一実施形態を説明するためのブロック図である。高周波解凍装置10の運転を制御するために、装置本体11(図1)内の適所には、マイクロコンピュータからなる制御装置70が設けられている。この制御装置70は、図5に示すように、演算処理装置であるCPU(central processing unit)71と、このCPU71に付設された記憶装置であるROM(read only memory)72およびRAM(random access memory)73とを備えた基本構成を有している。
【0067】
前記ROM72は、読み取り専用の記憶装置であり、制御装置70を機能させるプログラムや不変データ等が記憶されている。これに対しRAM73は、制御動作において用いられるデータを一時的に書き込んだり読み出したりする領域として使用されるものである。
【0068】
前記CPU71は、前記操作盤76から入力された操業情報に基づいて運転条件を設定する運転条件設定部711と、この運転条件設定部711からの指令信号に基づいて高周波発振器50、駆動モータ24並びに第1および第2弁装置611,621へ制御信号を出力する制御信号出力部712とを備えて構成されている。
【0069】
図6は、操作盤76の一実施形態を示す外面図である。図6に示すように、操作盤76は、扁平な直方体状の筐体761の図5における右縁中央部に設けられた電源スイッチ762を有しているとともに、上部に表示手段としてのLCD(liquid crystal display)763が設けられ、その直下位置に各種の数値データを入力するためのテンキー764が設けられている。さらに、テンキー764の直下位置には、各種の運転情報を入力するための運転情報入力キー765が設けられている。
【0070】
前記電源スイッチ762を押釦することにより、制御装置70が立ち上げられるとともに、当該制御装置70の制御によって高周波解凍装置10の必要個所(高周波発振器50や駆動モータ24等)に電源装置54(図2)から所定の電力が供給されるようになっている。
【0071】
前記LCD763には、運転情報入力キー765やテンキー764からの入力情報が表示されるとともに、制御に関する運転条件設定部711からの出力情報等も表示されるようになっている。オペレータは、このLCD763を視認することによって、現に入力した情報をチェックしたり、高周波解凍装置10の運転状況等を確認したりすることができる。
【0072】
前記運転情報入力キー765は、少なくとも冷凍食材Rの種類を入力するための食品種類キー7651と、冷凍食材Rの立体寸法(縦寸法×横寸法×高さ寸法)を入力するための食品寸法キー7652と、冷凍食材Rの解凍処理数量を入力するための数量キー7653と、冷凍食材Rの重量を入力するための重量キー7654とが存在する。
【0073】
そして、冷凍食材Rの種類を入力するに際しては、食品種類キー7651が押釦され、LCD763に「冷凍食材の種類をテンキーから入力してください。」と表示された後、予めコード化された、食品の種類を示す数字を入力するようになされている。また、冷凍食材Rの立体寸法の入力については、食品寸法キー7652を押釦した後にテンキー764から縦、横、高さの数値を入力するようになされている。また、解凍処理を施すべき冷凍食材Rの数量については、数量キー7653を押釦し引き続きテンキー764から数量を入力するようになされている。さらに、冷凍食材Rの重量については、重量キー7654を押釦したあとテンキー764から重量を入力するようになされている。
【0074】
なお、前記のようなテンキー764を利用した入力方向に加えて、解凍するべき食品の種類毎に品目キー(例えば、牛肉:Aキー、豚肉:Bキー、鳥肉:Cキー)を設置し、いずれかの品目キーを押釦するだけで、その品目の寸法や重量などが自動的に入力されるようにしてもよい。このようにすることができるのは、冷凍食材Rは、その種類によって定格化された寸法や重量を備えているため、それらを予め後述する制御装置70に記憶させておけば、一々寸法や重量などをテンキー764から入力する面倒さから解放され、高周波解凍装置10の運転に係る作業性を向上させることができる。
【0075】
かかる運転情報入力キー765からの入力操作をサポートするために、前記ROM72には、例えば冷凍食材Rの種類とコード番号との対応付けがなされた食品コード対応表が記憶されており、食品種類キー7651が横行されると、この対応表が呼び出されてLCD763に表示されるようになっている。従って、オペレータは、LCD763に表示された食品コード対応表を参照しながらテンキー764からの入力操作を容易に行うことができる。
【0076】
前記運転条件設定部711は、操作盤76からの入力情報に基づいて高周波解凍装置10の運転条件を設定するものであり、具体的には、食品種類キー7651およびテンキー764の押釦操作で冷凍食材Rの種類が入力されると、これに基づき高周波発振器50の出力を設定するともに、食品寸法キー7652およびテンキー764の押釦操作で冷凍食材Rの立体寸法が入力されると、これに基づき上部電極31の高さレベルを設定するようになされている。運転条件設定部711で設定された運転条件は、制御信号を出力させるための指令信号として制御信号出力部712へ向けて出力される。
【0077】
そして、かかる運転条件設定部711による運転条件設定のために、ROM72には、冷凍食材Rの種類および冷凍食材Rの立体寸法と、高周波発振器50からの高周波出力および間欠駆動する搬送ベルト23の時間ピッチとを対応付けた食品種類テーブル721が記憶されている。運転条件設定部711は、運転情報入力キー765およびテンキー764からの入力情報を基に食品種類テーブル721を参照して高周波発振器50の出力値および間欠駆動する搬送ベルト23の時間ピッチを設定するようになっている。
【0078】
これに対し、数量キー7653およびテンキー764からの入力情報(すなわち解凍処理を行うべき冷凍食材Rの設定数量)は、その種類の冷凍食材Rの処理が完了するまで一時的にRAM73に記憶される。このRAM73に記憶された設定数量を基に処理数量の管理が行われる。かかる数量管理を行うために、装置本体11の下流端には、解凍処理が施された冷凍食材Rの個数を検出するための個数センサ74が設けられているとともに、RAM73には累計個数記憶部731が設けられ、個数センサ74が解凍処理の完了した冷凍食材Rを検出する度にその数量が累計個数記憶部731に記憶されている数量に加算されるようになっている。
【0079】
そして、運転条件設定部711は、個数センサ74が冷凍食材Rを検出する都度、累計個数記憶部731に累積された個数と、設定個数とを比較し、累積個数が設定個数に到達した時点で、解凍処理を停止させるべき指令信号を制御信号出力部712へ向けて出力するようになっている。
【0080】
そして、運転条件設定部711が設定した運転条件は、LCD763に表示出力されるようになっており、これによってオペレータは、設定された運転条件が正しいか否かを確認することができるようになっている。
【0081】
前記制御信号出力部712は、運転条件設定部711からの指令信号に基づき高周波発振器50、駆動モータ24、第1弁装置611および第2弁装置621へ制御信号を出力し、これによる高周波発振器50および駆動モータ24の適正な駆動、並びに第1および第2弁装置611,621の適正な弁操作によって高周波解凍装置10を具体的に運転制御するものである。
【0082】
かかる制御信号出力部712は、運転条件設定部711からの指令信号に基づき冷凍食材Rの種類や立体寸法に応じた適正な出力で高周波を発信させる制御信号を高周波発振器50へ向けて出力するとともに、冷凍食材Rの種類や立体寸法に応じた所定の時間ピッチで搬送ベルト23を間欠的に周回させる制御信号を駆動モータ24へ向けて出力するようになっている。
【0083】
さらに制御信号出力部712は、第1弁装置611へ向け搬送ベルト23の間欠的な周回に応じて開閉エアーシリンダ171の駆動により搬入出口14,15を開閉させるべき制御信号を出力するとともに、第2弁装置621へ向け搬送ベルト23の間欠的な周回に応じて昇降エアーシリンダ421の駆動により上部電極31を昇降させる制御信号を出力するようになっている。
【0084】
かかる制御信号出力部712からの各種の制御信号の出力は、互いに連係した状態で行われるようになっている。従って、高周波解凍装置10の運転が開始されると、まず、搬送ベルト23が停止し、かつ、上部電極31が上方位置に位置設定された状態で開閉エアーシリンダ171の駆動により搬入出口14,15が開放され、この状態で上流側の工程からの冷凍食材Rが搬送ベルト23の上流端に幅方向に3個並置され、引き続き駆動モータ24の駆動による搬送ベルト23の1ピッチの周回で3個の冷凍食材Rは搬入口14を介して第1解凍空間V1内に搬入され、ついで搬入出口14,15が閉止された状態で上部電極31が昇降エアーシリンダ421の駆動で冷凍食材Rの寸法に応じて所定の高さレベルの下方位置に位置設定され、これによって3個の冷凍食材Rは、第1上部電極群32の第1上部電極群用単位電極302と下部電極35とに挟持された状態にある。
【0085】
このとき、つぎの3個の冷凍食材Rが搬送ベルト23の上流端に載置される。この状態で、第1発振器51からの高周波が所定時間第1上部電極群32に供給され、これによる高周波印加で最初の3個の冷凍食材Rに第1解凍空間V1での解凍処理が実行される。ついで、冷凍食材Rに対する所定時間の高周波印加が完了すると、搬入出口14,15が開放され、同時に上部電極31が上方位置へ向けて上昇され、この状態での搬送ベルト23の1ピッチの周回でつぎの3個の冷凍食材Rが第1解凍空間V1内に搬入され、引き続き上記と同様の操作が実行される。これにより新たな3個の冷凍食材Rに対する解凍処理が開始されるとともに、最初の3個の冷凍食材Rは、第1解凍空間V1内で1ピッチ分前進した位置で解凍処理が施されることになる。
【0086】
このような操作が繰り返されることにより、搬送ベルト23の間欠的な周回に応じて冷凍食材Rが順次3個ずつ装置本体11の解凍空間V内に搬入されていくとともに、解凍空間Vに搬入された冷凍食材Rは、第1解凍空間V1で所定時間毎の3回の解凍処理が施され、所定時間毎の2回の養生処理が施された後、第2解凍空間V2において第2上部電極群用単位電極303からの高周波印加による所定時間毎の6回の解凍処理が施され、引き続き所定時間毎の2回の養生処理が施された後、第3解凍空間V3において第3上部電極群用単位電極304からの高周波印加による所定時間毎の10回の解凍処理が施され、搬出口15を介して外部に搬出されるようになっている。
【0087】
以上詳述したように、本実施形態に係る高周波解凍装置10は、平板状の対向電極間である上部電極31および下部電極35に挟持された状態の冷凍食材Rに対し対向電極を介して高周波発振器50からの高周波を印加することにより誘電加熱で冷凍食材Rに解凍処理を施すものであり、順番に冷凍食材Rの解凍に供される複数組(上記の実施形態においては、第1上部電極群32と下部電極35、第2上部電極群33と下部電極35および第3上部電極群34と下部電極35との3組)の板状の対向電極を有し、最初に解凍に供される第1上部電極群32の第1上部電極群用単位電極302は、その面積が冷凍食材Rの電極に対向した面の面積より小さく設定され、2番目に解凍に供される第2上部電極群33の第2上部電極群用単位電極303は、第1上部電極群用単位電極302の面積より大きく設定され、3番目に解凍に供される第3上部電極群34の第3上部電極群用単位電極304は、第2上部電極群用単位電極303の面積より大きく設定されている。
【0088】
そして、かかる構成によれば、上部電極31は、最上流側の第1上部電極群32に使用される単位電極301(第1上部電極群用単位電極302)が冷凍食材Rの面積より小さく設定されていることにより、解凍処理の初期において冷凍食材Rの稜縁部は、高周波のエネルギーの透過が回避されるため、高周波加熱されることがなく、冷凍食材Rの内部のみを解凍することができる。従って、解凍処理の初期において冷凍食材Rの稜縁部が過加熱されて温度分布が不均一になり、これによって解凍不良になるという不都合を解消することができる。
【0089】
そして、2組目以降の上部電極31(第2上部電極群用単位電極303および第3上部電極群用単位電極304)については、その面積が先の電極の面積より順次大きくなるように設定されるため、対向電極間での高周波解凍処理の回を重ねる毎に冷凍食材Rの稜縁部が電極によって覆われる度合いが増していき、これによって順次高周波加熱され易くなっていく。
【0090】
従って、採用する対向電極の組数および対向電極の対向面積の増加を状況に応じて適切に設定することにより、冷凍食材Rを解凍温度に大きなバラツキがない均一な状態で解凍することができる。
【0091】
また、解凍に供される高周波のエネルギー量は、第1上部電極群32から第2上部電極群33を介し第3上部電極群34に向けて順番に小さくなるように設定されているため、冷凍食材Rの温度の上昇に応じて冷凍食材Rに供給されるエネルギー量が解凍状態の進行に応じて小さくなっていき、これによって解凍処理の進行に伴って温度が急激に上昇するような不都合が回避されるばかりか、解凍処理の進行に応じて冷凍食材R内での伝熱作用が効果を発揮し、より均一な解凍処理を実現することができる。
【0092】
また、上記の実施形態においては、駆動ローラ21および従動ローラ22間に張設されて周回することにより冷凍食材Rを搬送する搬送ベルト23が設けられ、冷凍食材Rをこの搬送ベルト23で搬送しながら当該冷凍食材Rに高周波を印加することにより解凍処理を施すようにしているため、冷凍食材Rに対する解凍処理を連続的に施すことが可能になり、冷凍食材Rに対する解凍処理を工業的規模で効率的に行うことができる。
【0093】
そして、高周波発振器50は、同一出力のものが複数(上記の実施形態おいては上流側から下流側に向かって第1〜第3発振器51,52,53の3台)用いられ、下流側に向かうに従い第1〜第3発振器51,52,53からの高周波が印加される単位電極301の面積を大きくしていく一方、その大きさに応じて1台の高周波発振器50から印加される単位電極301の数を増加させているため、下流側にむかうに従い、1枚の単位電極301に印加されるエネルギー量が少なくなっていき、これによって対向面積が増加するに従って部分的な過加熱を防止するべく冷凍食材Rに与えるエネルギー量を少なくしていくという事項を同一出力の高周波発振器50を複数台採用することで達成することができ、異なる出力のものを複数採用する場合に比較し、運転制御を含めた全体的な構成が簡単になるため、設備コストの低減化に貢献することができる。
【0094】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下の内容をも包含するものである。
【0095】
(1)上記の実施形態においては、高周波発振器50として第1〜第3発振器51,52,53の3台が採用されているが、本発明は、高周波発振器50が3台であることに限定されるものではなく、状況に応じて3台未満であってもよいし、4台以上採用してもよい。
【0096】
(2)上記の実施形態においては、上部電極31は、第1〜第3上部電極群32,33,34に3分割されているが、本発明は、上部電極31が3分割されることに限定されるものではなく、2分割であってもよいし、4分割以上に分割してもよい。
【0097】
(3)上記の実施形態においては、アース側の電極である下部電極35が非常に大きく寸法設定されているが、本発明は、下部電極35を大きく寸法設定することに限定されるものではなく、下部電極35の方を冷凍食材Rより小さく寸法設定する一方、上部電極31の方を冷凍食材Rより大きく寸法設定してもよいし、上部電極31および下部電極35の双方の大きさを冷凍食材Rより小さく寸法設定してもよい。
【0098】
(4)上記の実施形態おいては、冷凍食材Rを搬送ベルト23の周回によって搬送しながら高周波印加によって解凍処理を施すようにしているが、こうする代わりに例えばロボットアームの作動で冷凍食材Rを上部電極31と下部電極35との間に装填していくような方式を採用してもよい。
【0099】
(5)上記の実施形態においては、冷凍食材Rは、搬送ベルト23によって搬送されつつ、面積が順次大きくなるように設定された第1上部電極群用単位電極302、第2上部電極群用単位電極303および第3上部電極群用単位電極304からの高周波電力を順次印加されるようになされているが、こうする代わりに冷凍食材Rを下部電極35に載置したまま移動させないようにし、この静止状態の冷凍食材Rに対して小さい上部電極から順番に大きい上部電極に取り換えていくような冷凍食材静止方式を採用してもよい。
【0100】
図9は、冷凍食材静止方式の第1実施形態の高周波解凍装置10′を示す斜視説明図であり、(イ)は、第1上部電極311のみが所定の間隔で冷凍食材Rに対向された状態、(ロ)は、第1上部電極311および第2上部電極312が所定の間隔で冷凍食材Rに対向された状態、(ハ)は、第1上部電極311、第2上部電極312および第3上部電極313が所定の間隔で冷凍食材Rに対向された状態をそれぞれ示している。
【0101】
図9に示すように、冷凍食材静止方式の第1実施形態の高周波解凍装置10′にあっては、上部電極31′として略楕円状を呈した第1上部電極311と、内周縁面がこの第1上部電極311の外周縁面に摺接状態で第1上部電極311に外嵌される環状を呈した第2上部電極312と、内周縁面がこの第2上部電極312の外周縁面に摺接状態で第2上部電極312に外嵌される環状を呈した第3上部電極313とを備えて構成されている。
【0102】
前記第3上部電極313の外周縁面の内側の面積は、冷凍食材Rの上面の面積より若干小さめに設定されている。
【0103】
また、これら第1〜第3上部電極311,312,313を昇降させるためのシリンダ装置43が設けられている。このシリンダ装置43は、第1上部電極311用の第1シリンダ装置431と、第2上部電極312用の第2シリンダ装置432と、第3上部電極313用の第3シリンダ装置433とからなっている。
【0104】
そして、冷凍食材Rに解凍処理を施すに際しては、まず、図9の(イ)に示すように、第1シリンダ装置431の駆動で第1上部電極311を下降させ、所定の間隔でこの第1上部電極311を冷凍食材Rの上面と対向させ、この状態での第1上部電極311を介した高周波印加で第1段階の解凍処理を施す。
【0105】
ついで、第1段階の解凍処理において所定の時間が経過すると、第2シリンダ装置432の駆動で第2上部電極312が降される。そうすると、図9の(ロ)に示すように、冷凍食材Rの上面は、所定の間隔を介して第1上部電極311および第2上部電極312に対向した状態になる。この状態で冷凍食材Rに第1〜第2上部電極311,312を介して冷凍食材Rに高周波を印加する第2段階の解凍処理が実行される。
【0106】
そして所定時間に亘る第2段階の解凍処理が完了すると、最後に、第3シリンダ装置433の駆動で第3上部電極313が下降させられ、これによって冷凍食材Rは、第1〜第3上部電極311,312,313に対向された状態になる。この状態で冷凍食材Rに対し第3段階の解凍処理である第1〜第3上部電極311,312,313を介した所定時間に亘る高周波印加が実行される。
【0107】
かかる構成の冷凍食材静止方式の第1実施形態に係る高周波解凍装置10′によれば、下部電極35に対する着脱を除いて冷凍食材Rを移動させる必要がないため、その分設備コストの低減化に貢献することができる。
【0108】
図10は、冷凍食材静止方式の第2実施形態の高周波解凍装置10″を示す斜視説明図であり、(イ)は、第1上部電極314のみが所定の間隔で冷凍食材Rに対向された状態、(ロ)は、第1上部電極314および第2上部電極315が所定の間隔で冷凍食材Rに対向された状態をそれぞれ示している。
【0109】
図9に示すように、第2実施形態の対向電極30″における上部電極31″は、折り畳み式のものが採用されている。かかる上部電極31″は、図10の(ロ)に示すように、矩形状を呈した第1上部電極314と、この第3上部電極群341の各辺部に折り畳み可能に付設された第2上部電極315とからなっている。
【0110】
前記第2上部電極315は、第1上部電極314の互いに対応した縁部にそれぞれ所定の蝶板部材を介して接続された一対の第1板片316と、第1上部電極314の残りの互いに対向した縁部にそれぞれ所定の蝶板部材を介して接続された一対の第2板片317と、これら各第2板片317の互いに対向した縁部に所定の蝶板部材を介してそれぞれ接続された各一対の第3板片318とを備えて構成されている。
【0111】
そして、第1〜第3板片316,317,318は、それぞれ折り畳まれた状態で、図10の(イ)に示すように、互いに重なり合って第1上部電極314上に収納されるとともに、展開されることによって、図10の(ロ)に示すように、第1上部電極314より一回り大きい平面視で矩形状の上部電極31″が形成されるように寸法設定されている。
【0112】
かかる上部電極31″の昇降操作は、第1上部電極314の中央部に装着されたシリンダ装置44の駆動によって行われる。
【0113】
かかる構成の上部電極31″によれば、第1段階の解凍処理において、第2上部電極315を折り畳むことにより、上部電極31″の面積は、図10の(イ)に示すように、第1上部電極314の面積と同一になっている。そして、第2段階の冷凍処理においては、第2上部電極315の第1〜第3板片316,317,318がそれぞれ展開されることにより、上部電極31は、図10の(ロ)に示すように、第1上部電極314より一回り大きくなっている。なお、第1〜第3板片316,317,318の展開操作および折り畳み操作は手作業で行われる。
【0114】
かかる構成の上部電極31″によれば、構造が極めて単純であるため、さらに設備コストの低減化に貢献することができる。また、小規模な解凍処理に適している。
【0115】
因みに、冷凍食材静止方式のものも含めた状態で本発明に係る高周波解凍装置を定義すると、以下のようになる。
【0116】
所要の厚みに加工された冷凍食材に対し解凍部で高周波電力を印加して誘電加熱を行うことにより解凍処理を施す高周波解凍装置であって、前記被解凍食材を挟持して高周波電力を最初に印加する、少なくとも一方の電極板が前記冷凍食材の被挟持面の形状より小さい板面形状を備えた第1の対向電極と、引き続き前記被解凍食材を挟持して高周波電力を印加する、少なくとも一方の電極板が前記小さい板面形状より大きな板面形状を有する第2の対向電極とを備えていることを特徴とする高周波解凍装置。
【実施例1】
【0117】
本発明に係る高周波解凍装置10の効果を確認するために、冷凍食材Rとして冷凍牛肉のブロックを試料R1(図7)として採用し、この試料R1に対し3段階に分けた解凍処理の試験を実施した(実施例)。試料R1のサイズは、縦寸法530mm×横寸法360mm×厚み寸法170mmであり、重量は略25kgであった。また、試料R1の温度を測定したところ、表層部(表面から深さ10mmのところ)は−18.5℃〜−19.5℃(平均略−19.0℃)であり、中心部(表面から深さ80mmのところ)は−19.0℃〜−20.0℃(平均略−19.5℃)であった。
【0118】
まず、第1段階の解凍処理においては、図7の(イ)に示すように、縦寸法370mm×横寸法250mmの電極板31aを採用し、試料R1の平面寸法より大きい電極板35aの上に試料R1を載置した後に電極板31aを当該試料R1の中央部に被せ、出力を100W/kg試料 に設定した高周波発振器50からの高周波を10分間印加した。試料R1に印加されたエネルギー量は1000W分/kgであった。
【0119】
ついで、第2段階の解凍処理においては、図7の(ロ)に示すように、第1段階のものより大きい縦寸法420mm×横寸法280mmの電極板31bを採用し、第1段階のものと同じ電極板35aの上に第1段階で誘電加熱された試料R1を載置した後に電極板31bを当該試料R1の中央部に被せ、出力を80W/kg試料 に設定した高周波発振器50からの高周波を12分間印加した。試料R1に印加されたエネルギー量は960W分/kgであった。
【0120】
最後の第3段階の解凍処理においては、図7の(ハ)に示すように、第2段階のものよりさらに大きい縦寸法480mm×横寸法320mmの電極板31cを採用し、第1段階のものと同じ電極板35aの上に第2段階で誘電加熱された試料R1を載置した後に電極板31cを当該試料R1の中央部に被せ、出力を60W/kg試料 に設定した高周波発振器50からの高周波を10分間印加した。試料R1に印加されたエネルギー量は600W分/kgであった。
【0121】
この実施例の試験では、結局、3段階で試料R1の冷凍牛肉に対し2560W分/kgのエネルギーが印加されたことになる。
【0122】
ついで、実施例と比較するための比較例として実施例と同一の条件で調製された試料R1を用いて3種類の比較試験を実施した。
【0123】
まず、比較例1においては、図8の(イ)に示すように、電極板35aの上に試料R1を載置してからその上面を試料R1より相当大きい縦寸法1000mm×横寸法800mmに設定された電極板31dで覆い、高周波発振器50からの出力50W/kgの高周波をこの電極を介して試料R1に50分間印加した。比較例1における試料R1に対するエネルギーの印加量は、2500W分/kgとなる。
【0124】
ついで、比較例2においては、図8の(ロ)に示すように、電極板31aとして縦寸法370mm×横寸法250mmに設定された、試料R1より小さいもの(図7の(イ)に示すものと同一寸法のもの)を用い、比較例1と同一の試料R1に対し高周波発振器50からの出力を80W/kgに設定した上で高周波を30分間印加した。比較例2における試料R1に対するエネルギーの印加量は、2400W分/kgであった。
【0125】
最後の比較例3においては、図8の(ロ)に示す比較例2のものと同一サイズの電極板31aを用い、同一の試料R1に対して2段階の解凍処理を施した。まず、1段階目においては、出力130W/kgで10分間高周波の印加を施し、引き続き第2段階目において出力80W/kgで12分間高周波の印加を行った。比較例3における試料R1に対するエネルギーの印加量は、2260W分/kgであった。
【0126】
これら実施例および比較例における試験条件および試験結果は、表1に示すとおりである。また、試験結果としての試料R1の温度分布(解凍処理が終了した直後に測定した温度分布)は、図11に示すとおりである。因みに、図11は、解凍処理が完了した直後の試料R1の温度分布を数値で示す説明図であり、(イ)は、実施例の温度分布、(ロ)は、比較例1の温度分布、(ハ)は、比較例2の温度分布、(ニ)は、比較例3の温度分布をそれぞれ示している。因みに、(イ)〜(ニ)に添えられた添え字の「a」は、表層の温度分布を示し、添え字の「b」は、上下方向の中央部の温度分布を示す。
【0127】
【表1】

【0128】
まず、表1に示すように、実施例および比較例において、同一の条件で調製された試料R1に対し、2260W分/kg〜2560W分/kgの略同一量のエネルギーが投入され(因みに実施例では2560W分/kgと最大であり、均一加熱では不利な条件になっている)ている。そして、実施例においては、解凍処理が完了した時点での表層部分の平均温度は−3.6℃、バラツキ(1σ)は、0.55℃であり、中央部分の平均温度は−4.2℃、バラツキ(1σ)は、表層部分と同一の0.55℃と極めてバラツキの小さい均等な温度分布になっているのが判る。
【0129】
これに対し、比較例1では、表層部分の平均温度は−0.9℃、バラツキ(1σ)は7.80℃であり、中央部分の平均温度は−0.1℃、バラツキ(1σ)は、10.52℃と極めてバラツキが大きい不均一な温度分布になっているとともに、試料R1の表層の稜縁部分の一部は5.5℃〜31.8℃(図11の(ロ)−「a」参照)、同中央部の一部は+43.7℃(図11の(ロ)−「b」参照)と極めて高温になっているが、これは電極板31dが試料R1をはみ出す程に大きいものであったことから、試料R1の稜縁部にエネルギーが集中し、これによってこれらの部分が局部的に過加熱されたことによると考えられる。
【0130】
ついで、比較例2では、表層部分の平均温度は−4.5℃、バラツキ(1σ)は2.27℃であり、中央部分の平均温度は−5.9℃、バラツキ(1σ)は、2.48℃となっており、電極板を試料R1より小さくしたことから、表層の稜縁部の過加熱は抑えられ、むしろ中央部より低くなっているのが判る。これは、最後まで稜縁部へのエネルギーの投入が抑えられたためであると考えられる。
【0131】
そこで、比較例3では、高周波の印加を2段階に分け、第1段階で出力130W/kgと、非常に多くのエネルギーを試料R1に投与し、これによって稜縁部の温度を上昇させることを図ったものである。表層部分の平均温度は−3.7℃、バラツキ(1σ)は3.50℃であり、中央部分の平均温度は−6.2℃、バラツキ(1σ)は1.86℃となっているが、第2段階の高周波印加においても電極のサイズが小さいままとされたことから、中央部が異常に高温になっている(図11の(ニ)参照)。
【0132】
これに対し、実施例では、高周波の印加を3段階に分け、段階が進む毎に高周波発振器50の出力を低くしていく一方、電極板のサイズを順次大きくなるようにしているため、試料R1に対する均一加熱を実現させた上で、試料R1の稜縁部の温度も適正な温度(図11の(イ)−「a」参照)にし得ることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】本発明に係る高周波解凍装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す高周波解凍装置のA−A線断面図である。
【図3】図1に示す高周波解凍装置のB−B線断面図である。
【図4】第1〜第3上部電極群のそれぞれに使用される単位電極の平面視の寸法を説明するためにこれらを並記した平面図であり、(イ)は、第1上部電極群用単位電極を、(ロ)は、第2上部電極群用単位電極を、(ハ)は、第3上部電極群用単位電極をそれぞれ示している。なお、(ニ)は、比較のための参考図である。
【図5】高周波解凍装置の運転制御の一実施形態を説明するためのブロック図である。
【図6】操作盤の一実施形態を示す外面図である。
【図7】実施例における高周波印加による解凍処理を説明するための斜視説明図であり、(イ)は、第1段階の高周波印加処理、(ロ)は、第2段階の高周波印加処理、(ハ)は、第3段階の高周波印加処理をそれぞれ示している。
【図8】比較例における高周波印加による解凍処理を説明するための斜視説明図であり、(イ)は、比較例1の高周波印加処理、(ロ)は、比較例2および3の高周波印加処理をそれぞれ示している。
【図9】冷凍食材静止方式の第1実施形態の高周波解凍装置を示す斜視説明図であり、(イ)は、第1上部電極のみが所定の間隔で冷凍食材に対向された状態、(ロ)は、第1上部電極および第2上部電極が所定の間隔で冷凍食材に対向された状態、(ハ)は、第1上部電極、第2上部電極および第3上部電極が所定の間隔で冷凍食材に対向された状態をそれぞれ示している。
【図10】冷凍食材静止方式の第2実施形態の高周波解凍装置を示す斜視説明図であり、(イ)は、第1上部電極のみが所定の間隔で冷凍食材に対向された状態、(ロ)は、第1上部電極および第2上部電極が所定の間隔で冷凍食材に対向された状態をそれぞれ示している。
【図11】解凍処理が完了した直後の試料の温度分布を数値で示す説明図であり、(イ)は、実施例の温度分布、(ロ)は、比較例1の温度分布、(ハ)は、比較例2の温度分布、(ニ)は、比較例3の温度分布をそれぞれ示している。なお、(イ)〜(ニ)に添えられた添え字の「a」は、表層の温度分布を示し、添え字の「b」は、上下方向の中央部の温度分布を示す。
【符号の説明】
【0134】
10,10′,10″ 高周波解凍装置
11 装置本体 111 天板
112 後方壁 113 前方壁
114 棚板 12 支持フレーム
13 支柱 14 搬入口
15 搬出口 16 仕切り板
17 開閉手段 171 開閉エアーシリンダ
172 ピストンロッド 20 搬送機構
21 駆動ローラ 211 駆動ローラ軸
22 従動ローラ 221 従動ローラ軸
23 搬送ベルト 24 駆動モータ
241 駆動軸 242 駆動プーリ
25 駆動ベルト 30対向電極
301 単位電極 302 第1上部電極群用単位電極
303 第2上部電極群用単位電極
304 第3上部電極群用単位電極
305 単位電極 31,31a,31b,31c,31d 上部電極
31′ 上部電極 311 第1上部電極
312 第2上部電極 313 第3上部電極
31″ 上部電極 314 第1上部電極
315 第2上部電極 316 第1板片
317 第2板片 318 第3板片
32 第1上部電極群 33 第2上部電極群
34 第3上部電極群 35,35a 下部電極
40 昇降機構 41 電極支持板
42 シリンダ装置 421 昇降エアーシリンダ
422 ピストンロッド 43 シリンダ装置
431 第1シリンダ装置 432 第2シリンダ装置
433 第3シリンダ装置 434 シリンダ装置
50 高周波発振器(高周波供給部)
51 第1発振器 52 第2発振器
53 第3発振器 54 電源装置
60 圧搾空気源 61 エアー配管
611 第1弁装置 62 エアー配管
621 第2弁装置 70 制御装置
71 CPU 711 運転条件設定部
712 制御信号出力部 72 ROM
721 食品種類テーブル 73 RAM
731 累計個数記憶部 74 個数センサ
76 操作盤 761 筐体
762 電源スイッチ 763 LCD
764 テンキー 765 運転情報入力キー
7651 食品種類キー 7652 食品寸法キー
7653 数量キー R 冷凍食材
V 解凍空間 V1 第1解凍空間
V2 第2解凍空間 V3 第3解凍空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所要の厚みに加工された冷凍食材に対し解凍部で高周波電力を印加して誘電加熱を行うことにより解凍処理を施す高周波解凍装置において、
前記解凍部は、前記冷凍食材を挟持する電極板のうち少なくとも一方の電極板が前記冷凍食材の被挟持面の形状より小さい板面形状を有する第1の対向電極と、前記冷凍食材を挟持する電極板のうち少なくとも一方の電極板が前記小さい板面形状より大きな板面形状を有する第2の対向電極と、前記第1の対向電極を介して前記冷凍食材に高周波電力を供給した後に前記第2の対向電極を介して前記冷凍食材に高周波電力を供給する高周波供給部とを備えてなることを特徴とする高周波解凍装置。
【請求項2】
前記高周波供給部は、前記第1および第2の対向電極への印加電力量が略同一に設定されていることを特徴とする請求項1記載の高周波解凍装置。
【請求項3】
前記高周波供給部は、前記第2の対向電極への印加電力レベルが、第1の対向電極への印加電力レベルより低く設定されていることを特徴とする請求項1または2記載の高周波解凍装置。
【請求項4】
所要の厚みに加工された冷凍食材に対し解凍部で高周波電力を印加して誘電加熱を行うことにより解凍処理を施す高周波解凍方法において、
前記被解凍食材を、少なくとも一方の電極板が前記冷凍食材の被挟持面の形状より小さい板面形状を有する第1の対向電極の間に挟持して高周波電力を印加し、引き続き少なくとも一方の電極板が前記小さい板面形状より大きな板面形状を有する第2の対向電極の間に挟持して高周波電力を印加することを特徴とする高周波解凍方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−166952(P2007−166952A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−367639(P2005−367639)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(390024394)山本ビニター株式会社 (16)
【Fターム(参考)】