説明

高周波誘導加熱装置

【課題】効率的な通電加熱を行うことができる高周波誘導加熱装置を提供する。
【解決手段】誘導加熱部に高周波電流を印加することにより、誘導加熱部内を搬送される加熱対象物を加熱する高周波誘導加熱装置において、互いに所定に間隔を空けて配置されるとともに軸心周りに回転することにより当接して載置した加熱対象物を搬送する第1の通電ロールと第2の通電ロールとよりなる一対の通電ロールと、第1の通電ロールと第2の通電ロールとを配線を介して接続する銅板と、第1の通電ロールと第2の通電ロールとの間に設けられるとともに、加熱対象物が内部空間内を搬送されるように配設された誘導加熱部としての誘導パイプと、誘導パイプに高周波電流を印加する高周波電源と、誘導パイプと高周波電源とを接続する高周波ブスバーとを有し、高周波ブスバーは、銅板の近傍に設けられるとともに、銅板と所定の長さだけ平行となるように配設されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波誘導加熱装置に関し、さらに詳細には、銅線、ステンレス鋼線あるいは鉄線などの細線の線材を加熱する際に用いて好適な高周波誘導加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、磁性金属などの磁性を有する加熱対象物を加熱する際には、例えば、高周波を利用した誘導加熱により加熱する加熱方法が知られている。
【0003】
ところが、こうした誘導加熱による加熱においては、銅やアルミなどの非磁性かつ低抵抗率の金属を加熱し難く、当該金属を加熱するには、加熱コイルに流れる電流の周波数を高くし、加熱コイルの巻き数を増やなければならず、専用の装置を用意しなければならなかった。
【0004】
また、誘導加熱による加熱においては、発振周波数によって加熱対象物の表面に発生する渦電流の浸透深さの影響により、当該渦電流の打ち消し合いが生じるため、加熱対象物が磁性を有する素材で構成されていても、細線の線材や薄板など形状の場合には加熱できないことがあった。
【0005】

こうした点を解決する高周波誘導加熱手段として、例えば、図1に示す構成を備えた高周波誘導加熱装置が知られている。
【0006】
即ち、図1には従来の高周波誘導加熱装置の一例の説明図が示されているが、この高周波誘導加熱装置10は、互いに所定に間隔を空けて配置されるとともに軸心周りに回転することにより上面に当接して載置した加熱対象物12を搬送する通電ロール16L、16Rと、通電ロール16Rと配線13aにより接続されるとともに通電ロール16Lと配線13bにより接続された銅板14と、通電ロール16L、16Rの間に設けられるとともに加熱対象物12が内部空間内を搬送されるように配設された誘導加熱部としての加熱コイル18と、加熱コイル18に高周波電流を印加する高周波電源22と、加熱コイル18と高周波電源22とを接続する高周波ブスバー20とを有して構成されている。
【0007】

以上の構成において、高周波誘導加熱装置10により加熱対象物12を加熱するには、まず、高周波電源22により高周波ブスバー20を介して加熱コイル18に高周波電流を印加すると、加熱コイル18には矢印A方向に高周波電流が流れる。
【0008】
こうして加熱コイル18に矢印A方向に高周波電流が流れると、加熱コイル18内において加熱対象物12に矢印B方向の軸電流が誘導され、誘導された軸電流は、加熱対象物12から通電ロール16R、配線13a、銅板14、配線13b、通電ロール16Lを通って再び加熱対象物12に流れ込む。
【0009】
つまり、加熱コイル18内の加熱対象物12において誘導された軸電流は、加熱対象物12、通電ロール16R、配線13a、銅板14、配線13b、通電ロール16Lで形成される閉回路内を流れることになり、こうした閉回路を流れる軸電流によって、加熱対象物12が通電加熱により加熱されることになる。
【0010】
即ち、高周波誘導加熱装置10においては、加熱コイル18内における誘導加熱による加熱と、通電ロール16L、16R間における通電加熱による加熱とにより加熱対象物12を加熱することができる。
【0011】

従って、高周波誘導加熱装置10によれば、加熱対象物12が非磁性や低抵抗率の金属であったり、磁性を有する素材で構成された細線の線材であったとしても、通電加熱による加熱によって、加熱対象物12を加熱することができるものであった。
【0012】

しかしながら、こうした高周波誘導加熱装置10においては、加熱コイル18内の加熱対象物12において誘導される軸電流が小さいため、通電加熱による加熱効率が低いという問題点が指摘されていた。
【0013】

なお、本願出願人が特許出願のときに知っている先行技術は、文献公知発明に係る発明ではないため、本願明細書に記載すべき先行技術文献情報はない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、従来の高周波誘導加熱装置を示す概略構成説明図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施の形態による高周波誘導加熱装置を示す概略構成説明図である。
【図3】図3は、本発明の第2の実施の形態による高周波誘導加熱装置を示す概略構成説明図である。
【図4】図4(a)(b)は、誘導パイプの変形例を示す概略構成説明図である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記したような従来の技術の有する種々の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、効率的な通電加熱を行うことのできる高周波誘導加熱装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、誘導加熱部に高周波電流を印加することにより、上記誘導加熱部内を搬送される加熱対象物を加熱する高周波誘導加熱装置において、互いに所定に間隔を空けて配置されるとともに軸心周りに回転することにより当接して載置した加熱対象物を搬送する第1の通電ロールと第2の通電ロールとよりなる一対の通電ロールと、上記第1の通電ロールと上記第2の通電ロールとを配線を介して接続する銅板と、上記第1の通電ロールと上記第2の通電ロールとの間に設けられるとともに、上記加熱対象物が内部空間内を搬送されるように配設された誘導加熱部としての誘導パイプと、上記誘導パイプに高周波電流を印加する高周波電源と、上記誘導パイプと上記高周波電源とを接続する高周波ブスバーとを有し、上記高周波ブスバーは、上記銅板の近傍に設けられるとともに、上記銅板と所定の長さだけ平行となるように配設されるようにしたものである。
【0017】
また、本発明は、上記した発明において、上記誘導パイプは、略円筒形状であるようにしたものである。
【0018】
また、本発明は、上記した発明において、上記誘導パイプは、側面にスリット部が形成されているようにしたものである。
【0019】
また、本発明は、上記した発明において、上記誘導パイプの外周にフェライトリングを設けるようにしたものである。
【0020】
また、本発明は、誘導加熱部に高周波電流を印加することにより、上記誘導加熱部内を搬送される加熱対象物を加熱する高周波誘導加熱装置において、互いに所定に間隔を空けて配置されるとともに軸心周りに回転することにより当接して載置した加熱対象物を搬送する通電ロールとロールとよりなり、上記通電ロールから搬送された上記加熱対象物を上記ロールで折り返して再び上記通電ロールのロール軸へ搬送されるようにする一対のロール対と、上記通電ロールから上記ロールへと搬送される上記加熱対象物が、内部空間内を搬送されるように配置された第1の誘導パイプと、上記ロールから上記通電ロールのロール軸へと搬送される上記加熱対象物が、内部空間内を搬送されるように配置された第2の誘導パイプと、上記第1の誘導パイプと上記第2の誘導パイプとに高周波電流を印加する高周波電源と、上記第1の誘導パイプと上記第2の誘導パイプを接続するとともに、上記第1の誘導パイプと上記第2の誘導パイプとを上記高周波電源に接続する高周波ブスバーとを有するようにしたものである。
【0021】
また、本発明は、上記した発明において、上記第1の誘導パイプおよび上記第2の誘導パイプの少なくともどちらか一方は、略円筒形状であるようにしたものである。
【0022】
また、本発明は、上記した発明において、上記第1の誘導パイプおよび上記第2の誘導パイプの少なくともどちらか一方は、側面にスリット部が形成されているようにしたものである。
【0023】
また、本発明は、上記した発明において、上記第1の誘導パイプおよび上記第2の誘導パイプの少なくともどちらか一方に、外周にフェライトリングを設けるようにしたものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、以上説明したように構成されているので、効率的な通電加熱を行うことができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明による高周波誘導加熱装置の実施の形態の一例を詳細に説明するものとする。
【0026】
なお、以下の説明においては、図1を参照しながら説明した従来の高周波誘導加熱装置と同一または相当する構成については、上記において用いた符号と同一の符号を用いて示すことにより、その詳細な構成ならびに作用効果の説明は適宜に省略することとする。
【0027】

まず、図2を参照しながら、本発明による高周波誘導加熱装置の第1の実施の形態について説明する。
【0028】
図2には、本発明の第1の実施の形態による高周波誘導加熱装置の概略構成説明図が示されており、この図2に示す高周波誘導加熱装置30は、配線13a、13bと銅板14とにより連結される通電ロール16L、16Rの間に、高周波ブスバー20により高周波電源22と接続された誘導加熱部を設けるように構成されている。
【0029】
ここで、高周波誘導加熱装置30においては、誘導加熱部として誘導パイプ32を用い、高周波電源22と誘導パイプ32とを接続する高周波ブスバー20の一部が銅板14の近傍に平行して配置されており、この点において、高周波誘導加熱装置10とは異なっている。
【0030】

より詳細には、誘導パイプ32は、略円筒形状の非磁性金属により構成されており、例えば、銅パイプが用いられる。
【0031】
また、誘導パイプ32は、誘導パイプ32の内部空間内を搬送される線材などの加熱対象物12と接することのない径を有し、通電ロール16L、16Rに接することのない長さを有して構成されている。
【0032】
なお、こうした誘導パイプ32は、径が小さく、長さが長いほど、誘導パイプ32の内部空間内を搬送される加熱対象物12に誘導される軸電流が多くなるものである。
【0033】
従って、最良の誘導パイプ32の径や長さなどは、加熱対象物12の形状や通電ロール16Lと通電ロール16Rとの設置距離などによるため、例えば、試作実験などを行って、実験的に求めることができる。実用的には、例えば、径20mm程度、長さ1000mm程度とすることができる。
【0034】

また、高周波ブスバー20は、回路構成において最短に配置されることが好ましく、リターン銅板12の近傍に平行に配置される部分はより長い方が好ましい。
【0035】

以上の構成において、高周波誘導加熱装置30により加熱対象物12を加熱するには、まず、高周波電源22により高周波ブスバー20を介して誘導パイプ32に高周波電流を印加すると、誘導パイプ32には矢印C方向に高周波電流が流れる。
【0036】
こうして誘導パイプ32に矢印C方向に高周波電流が流れると、誘導パイプ32内において加熱対象物12に矢印D方向の軸電流が誘導され、誘導された軸電流は、加熱対象物12から通電ロール16R、配線13a、銅板14、配線13b、通電ロール16Lを通って再び加熱対象物12に流れ込む。
【0037】
つまり、誘導パイプ32内の加熱対象物12において誘導された軸電流は、加熱対象物12、通電ロール16R、配線13a、銅板14、配線13b、通電ロール16Lで形成される閉回路内を流れることになり、こうした閉回路を流れる軸電流によって、加熱対象物12が通電加熱により加熱されることとなる。
【0038】

このとき、誘導パイプ32内において加熱対象物12に誘導された軸電流は、銅板14を流れる際に高周波ブスバー20の一部が銅板14の近傍に平行に設けられているために、こうした銅板14における高周波ブスバー20の近傍に平行に設けられている部分においても軸電流が誘導されることとなり、上記した閉回路を流れて加熱対象物12に流れる。
【0039】
即ち、加熱対象物12においては、誘導パイプ32内の加熱対象物12と、銅板14における高周波ブスバー20の近傍に平行に設けられている部分において軸電流が誘導されることになる。
【0040】
また、誘導加熱部においては、加熱対象物12と平行に形成される部分が大きいものほど誘導加熱部の内部空間内を搬送される加熱対象物12により多くの軸電流を生じることができるため、誘導パイプ32では、加熱コイル18に比べてより多くの軸電流を誘導することができることとなる。
【0041】
つまり、高周波誘導加熱装置30においては、より多くの軸電流を誘導することのできる誘導加熱部を用い、誘導加熱部以外の部分においても軸電流を誘導するようにしたため、効率的に通電加熱による加熱を行うことができるようになる。
【0042】

このように、高周波誘導加熱装置30においては、従来の技術による高周波誘導加熱装置10に比べてより効率的な通電加熱による加熱を行うことができ、こうした通電加熱による加熱と誘導加熱による加熱とによって、加熱対象物12を加熱することができる。
【0043】
従って、高周波誘導加熱装置30によれば、加熱対象物12が非磁性や低抵抗率の金属であったり細線の線材であったとしても、従来の技術による高周波誘導加熱装置10に比べて、より効率的に加熱対象物12を通電加熱によって加熱することができる。
【0044】

次に、図3を参照しながら、本発明による高周波誘導加熱装置の第2の実施の形態について説明する。
【0045】
なお、以下の説明においては、図2を参照しながら説明した本発明による高周波誘導加熱装置の第1の実施の形態と同一または相当する構成については、上記において用いた符号と同一の符号を用いることにより、その構成ならびに作用の詳細な説明は適宜に省略することとする。
【0046】

図3には、本発明の第2の実施の形態による高周波誘導加熱装置の概略構成説明図が示されており、この図3に示す高周波誘導加熱装置40は、上面に当接して加熱対象物12が載置される通電ロール42と、通電ロール42と所定の間隔を空けて配設され、上面に当接して加熱対象物12が載置されるとともに軸心が通電ロール42の軸心と平行になるようにして設けられたロール44と、通電ロール42およびロール44の間に設けられるとともに加熱対象物12が内部空間内を搬送されるように配設された誘導加熱部としての誘導パイプ32−1、32−2と、誘導パイプ32−1、32−2を互いに接続する高周波ブスバー20−2と、誘導パイプ32−1、32−2をそれぞれ高周波電源22と接続する高周波ブスバー20−1、20−3とを有して構成されている。
【0047】

より詳細には、通電ロール42とロール44とが軸心周りに回転することにより、通電ロール42の上面およびロール44の上面に当接して載置された加熱対象物12が搬送される。
【0048】
即ち、加熱対象物12は、通電ロール42とロール44とが軸心周りに回転することにより、通電ロール42からロール44へと搬送され、ロール44において折り返されてロール44から通電ロール42の軸42aへと搬送される。
【0049】
つまり、加熱対象物12は、通電ロール42およびロール44の上方側を搬送されるとともに、ロール44において折り返されて、通電ロール42およびロール44の下方側を搬送されることとなり、通電ロール42およびロール44の間において異なる2方向に搬送されることとなる。
【0050】
このとき、加熱対象物12は、通電ロール42において電気的にショートした状態となっている。このため、通電ロール42においては通電ブラシが不要となる。
【0051】

また、誘導パイプ32−1、32−2は、その内部空間内に加熱対象物12が通過するように配置されており、より詳細には、誘導パイプ32−2は通電ロール42およびロール44の下方側を搬送される加熱対象物12が内部空間を通過するように配置され、誘導パイプ32−1は通電ロール42およびロール44の上方側を搬送される加熱対象物12が内部空間内を通過するように配置される。
【0052】
そして、誘導パイプ32−2は一方の端部を通電ロール42側に向け、他方の端部をロール44側に向けて配置されており、当該一方の端部において高周波ブスバー20−1により高周波電源22と接続されている。
【0053】
また、誘導パイプ32−1もまた、一方の端部を通電ロール42側に向け、他方の端部をロール44側に向けて配置されており、当該一方の端部において高周波ブスバー20−3により高周波電源22と接続されている。
【0054】
そして、誘導パイプ32−2と誘導パイプ32−1とは、互いに他方の端部において高周波ブスバー20−2により接続されている。
【0055】

以上の構成において、高周波誘導加熱装置40により加熱対象物12を加熱するには、まず、高周波電源22より高周波ブスバー20−1を介して誘導パイプ32−2に高周波電流を印加すると、誘導パイプ32−2に印加された高周波電流は高周波ブスバー20−2を介して誘導パイプ32−1に印加される。
【0056】
つまり、誘導パイプ32−2には矢印E方向に高周波電流が流れ、誘導パイプ32−1には矢印F方向に高周波電流が流れる。
【0057】
こうして、高周波電源22から誘導パイプ32−1、32−2に高周波電流が流されると、誘導パイプ32−2内において通電ロール42およびロール44の下方側を搬送される加熱対象物12に矢印G方向の軸電流が誘導され、また、誘導加熱装置32−1内において上方側を搬送される加熱対象物12に矢印H方向の軸電流が誘導される。
【0058】
そして、誘導パイプ32−2内において誘導された矢印G方向の軸電流は、通電ロール42およびロール44の下方側を搬送される加熱対象物12からロール軸42a、通電ロール42、通電ロール42およびロール44の上方側を搬送される加熱対象物12、ロール44を通って再び通電ロール42およびロール44の下方側を搬送される加熱対象物12に流れ込む。
【0059】
また、誘導パイプ32−1内において誘導された矢印Hの軸電流は、通電ロール42およびロール44の上方側を搬送される加熱対象物12からロール44、通電ロール42およびロール44の下方側を搬送される加熱対象物12、ロール軸42a、通電ロール42を通って再び通電ロール42およびロール44の上方側を搬送される加熱対象物12に流れ込む。
【0060】
即ち、誘導パイプ32−2内の加熱対象物12において誘導された軸電流および誘導パイプ32−1内の加熱対象物12において誘導された軸電流は、通電ロール42およびロール44の下方側を搬送される加熱対象物12、ロール軸42a、通電ロール42、通電ロール42およびロール44の上方側を搬送される加熱対象物12、ロール44で形成される閉回路内を流れることになり、こうした閉回路を流れる軸電流によって、加熱対象物12が通電加熱により加熱されることとなる。
【0061】

このとき、通電ロール42およびロール44の間を搬送される加熱対象物12においては、誘導パイプ32−1で誘導された軸電流と誘導パイプ32−2で誘導された軸電流とが上記した閉回路内を流れることとなる。
【0062】
また、誘導パイプ32−1、32−2は、加熱コイル18に比べより多くの軸電流を誘導することができる。
【0063】
つまり、高周波誘導加熱装置40においては、より多くの軸電流を誘導することができる誘導加熱部を用い、異なる2方向で搬送される加熱対象物12のそれぞれの搬送方向において当該誘導加熱部を設けて軸電流を誘導するようにしたことにより、効率よい通電加熱による加熱を行うことができるようになる。
【0064】

このように、高周波誘導加熱装置40においては、従来の技術による高周波誘導加熱装置10に比べて、より効率的な通電加熱による加熱を行うことができ、こうした通電加熱による加熱と誘導加熱による加熱によって、加熱対象物12を加熱することができる。
【0065】
従って、高周波誘導加熱装置40によれば、加熱対象物12が非磁性や低抵抗率の金属であったり細線の線材であったとしても、従来の技術の高周波誘導加熱装置10に比べてより効率的に加熱対象物12を通電加熱によって加熱することができる。
【0066】

以上において説明したように、高周波誘導加熱装置30においては、誘導加熱部として誘導パイプ32を用いるとともに、高周波ブスバー20の一部を銅板14の近傍において平行に設けることにより、誘導パイプ32内の加熱対象物12において軸電流が誘導されるとともに、銅板14の近傍において平行に設けられた高周波ブスバー20においても軸電流が誘導されることとなる。
【0067】
そして、高周波誘導加熱装置30においては、通電ロール16R、配線13a、銅板14、配線13b、通電ロール16Lで閉回路を形成しているため、加熱対象物12に誘導された軸電流と高周波ブスバー20において誘導された軸電流とが閉回路中を流れることとなり、通電ロール16L、16R間を搬送される加熱対象物12には多くの軸電流が流れることとなる。
【0068】
また、高周波誘導加熱装置40においては、誘導加熱部として誘導パイプ32−1、32−2を用いるとともに、加熱対象物12が通電ロール42およびロール44の上方側を搬送されるとともに、ロール44において折り返されて通電ロール42およびロール44の下方側を搬送され、通電ロール42およびロール44の上方側を搬送される加熱対象物12が誘導パイプ32−1の内部空間を通過し、通電ロール42およびロール44の下方側を搬送される加熱対象物12が誘導パイプ32−2の内部空間を通過するようにすることで、誘導パイプ32−1、32−2において加熱対象物12に軸電流が誘導されることとなる。
【0069】
そして、高周波誘導加熱装置40においては、通電ロール42およびロール44の下方側を搬送される加熱対象物12、ロール軸42a、通電ロール42、通電ロール42およびロール44の上方側を搬送される加熱対象物12、ロール44で閉回路を形成しているため、誘導パイプ32−1内を搬送される加熱対象物12と誘導パイプ32−2内を搬送される加熱対象物12に誘導された軸電流とが閉回路中を流れることとなり、通電ロール42およびロール44の間を搬送される加熱対象物12に多くの軸電流が流れることとなる。
【0070】

つまり、高周波誘導加熱装置30および高周波誘導加熱装置40においては、従来の技術の高周波誘導加熱装置10と比べてより多くの軸電流が流れることとなるため、加熱対象物12が非磁性や低抵抗率の金属であったり、細線の線材であったとしてもより効率的な通電加熱によって加熱対象物12を加熱することができる。
【0071】

なお、上記した実施の形態は、以下の(1)乃至(3)に示すように変形することができるものである。
【0072】
(1)上記した実施の形態においては、誘導加熱部として略円筒形状の誘導パイプ32、32−1、32−2を設けるようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。
【0073】
即ち、本発明の第1の実施の形態による高周波誘導加熱装置30および本発明の第2の実施の形態による高周波誘導加熱装置40は、図4(a)に示すように、誘導加熱部として側面にスリット部36aが設けられた略円筒形状の誘導パイプ36を設けるようにしてもよい。
【0074】
誘導加熱部として図4(a)に示す誘導パイプ36を設けるようにすると、加熱対象物12が細線の線材である場合などには、スリット部36aを利用して細線の線材である加熱対象物12を挿入することができ、誘導パイプ36の設置を容易に行うことができるようになる。
【0075】
(2)上記した実施の形態においては、誘導加熱部として誘導パイプのみを設けるようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。
【0076】
即ち、本発明の第1の実施の形態による高周波誘導加熱装置30および本発明の第2の実施の形態による高周波誘導加熱装置40において、図4(b)に示すように、誘導加熱部として設けられた誘導パイプ32、32−1、32−2の外周に、さらに、フェライトリング38を設けるようにしてもよい。
【0077】
図4(b)に示すように、誘導パイプ32、32−1、32−2の外周にフェライトリング38を設けることにより、誘導パイプ32、32−1、32−2の内部空間内を搬送される加熱対象物12に誘導される軸電流をより多く誘導することができるようになる。
【0078】
(3)上記した実施の形態ならびに上記した(1)乃至(2)に示す変形例は、適宜に組み合わせるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、細線の線材などを加熱する高周波誘導加熱装置として利用して好適なものである。
【符号の説明】
【0080】
10、30、40 高周波誘導加熱装置
12 加熱対象物
14 銅板
13a、13b 配線
16L、16R、42 通電ロール
18 加熱コイル
20、20−1、20−2、20−3 高周波ブスバー
32、32−1、32−2、36 誘導パイプ
38 フェライトリング
44 ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導加熱部に高周波電流を印加することにより、前記誘導加熱部内を搬送される加熱対象物を加熱する高周波誘導加熱装置において、
互いに所定に間隔を空けて配置されるとともに軸心周りに回転することにより当接して載置した加熱対象物を搬送する第1の通電ロールと第2の通電ロールとよりなる一対の通電ロールと、
前記第1の通電ロールと前記第2の通電ロールとを配線を介して接続する銅板と、
前記第1の通電ロールと前記第2の通電ロールとの間に設けられるとともに、前記加熱対象物が内部空間内を搬送されるように配設された誘導加熱部としての誘導パイプと、
前記誘導パイプに高周波電流を印加する高周波電源と、
前記誘導パイプと前記高周波電源とを接続する高周波ブスバーと
を有し、
前記高周波ブスバーは、前記銅板の近傍に設けられるとともに、前記銅板と所定の長さだけ平行となるように配設される
ことを特徴とする高周波誘導加熱装置。
【請求項2】
請求項1に記載の高周波誘導加熱装置において、
前記誘導パイプは、略円筒形状である
ことを特徴とする高周波誘導加熱装置。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか1項に記載の高周波誘導加熱装置において、
前記誘導パイプは、側面にスリット部が形成されている
ことを特徴とする高周波誘導加熱装置。
【請求項4】
請求項1、2または3のいずれか1項に記載の高周波誘導加熱装置において、
前記誘導パイプの外周にフェライトリングを設ける
ことを特徴とする高周波誘導加熱装置。
【請求項5】
誘導加熱部に高周波電流を印加することにより、前記誘導加熱部内を搬送される加熱対象物を加熱する高周波誘導加熱装置において、
互いに所定の間隔を空けて配置されるとともに軸心周りに回転することにより当接して載置した加熱対象物を搬送する通電ロールとロールよりなり、前記通電ロールから搬送された前記加熱対象物を前記ロールで折り返して再び前記通電ロールのロール軸へ搬送されるようにする一対のロール対と、
前記通電ロールから前記ロールへと搬送される前記加熱対象物が、内部空間内を搬送されるように配置された第1の誘導パイプと、
前記ロールから前記通電ロールのロール軸へと搬送される前記加熱対象物が、内部空間内を搬送されるように配置された第2の誘導パイプと、
前記第1の誘導パイプと前記第2の誘導パイプとに高周波電流を印加する高周波電源と、
前記第1の誘導パイプと前記第2の誘導パイプを接続するとともに、前記第1の誘導パイプと前記第2の誘導パイプとを前記高周波電源に接続する高周波ブスバーと
を有することを特徴とする高周波誘導加熱装置。
【請求項6】
請求項5に記載の高周波誘導加熱装置において、
前記第1の誘導パイプおよび前記第2の誘導パイプの少なくともどちらか一方は、略円筒形状である
ことを特徴とする高周波誘導加熱装置。
【請求項7】
請求項5または6のいずれか1項に記載の高周波誘導加熱装置において、
前記第1の誘導パイプおよび前記第2の誘導パイプの少なくともどちらか一方は、側面にスリット部が形成されている
ことを特徴とする高周波誘導加熱装置。
【請求項8】
請求項5、6または7のいずれか1項に記載の高周波誘導加熱装置において、
前記第1の誘導パイプおよび前記第2の誘導パイプの少なくともどちらか一方に、外周にフェライトリングを設ける
ことを特徴とする高周波誘導加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−244763(P2010−244763A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90353(P2009−90353)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(000219004)島田理化工業株式会社 (205)
【Fターム(参考)】