説明

高固形分装填条件下での制御された構造の材料の連続製造方法

本発明は、高固形分ローディング条件下での重合した制御構造材料の連続製造方法を開示する。該材料は撹拌されるプラグフローおよび温度制御条件下で製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撹拌型プラグフロー温度制御反応器で高固形分装填量の重合性モノマーを用いるポリマーの連続製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々なモノマー材料から様々なタイプのポリマーを製造することができ、形成される特定のタイプは、一般に、重合中に材料を接触させる際に従う手順に依存する。例えば、ランダムコポリマーは、共重合性モノマーの同時反応によって製造することができる。ブロックコポリマーは、異なるモノマーを逐次重合させることによって形成される。有用な部類のポリマーは、アニオン、カチオンおよびフリーラジカル法によって合成することができる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
制御された構造のポリマー(controlled architecture polymers)を連続的に製造することを可能にする方法を求める継続する要求が存在する。制御された構造とは、設計されたトポロジー(線状、分岐、星型、組合せネットワーク)、組成(ブロックコポリマー、ランダムコポリマー、ホモポリマー、グラフトコポリマー、テーパードまたはグラジエントコポリマー)、および/または官能性(末端、部位特異的、テレケリック、多官能性、マクロモノマー)を有するポリマーに関する。高モノマー濃度でまたは溶媒の欠如下で制御構造重合を行えることが特に重要である。高固形分での重合は、有益な経済的なおよび環境上の利点を与える。本発明はそのような要求に取り組むものである。
【0004】
本明細書で用いるところでは、「軸混合」とは、反応器中での流れの総体的方向に平行の方向での混合を意味する。
「ブロックコポリマー」とは、少なくとも2種の組成的に別個のセグメントを有するポリマー、例えば、ジ−ブロックコポリマー、トリ−ブロックコポリマー、ランダムブロックコポリマー、および星型分岐ブロックコポリマーを意味する。
「分岐剤」とは、その添加が星型分岐ポリマーの形成をもたらす、多官能性のアニオン重合性モノマーまたは多官能性の失活剤(quenching agent)もしくはカップリング剤を意味する。
「連続の」とは、ポリマー生成物が反応器を出て行くのと同時に(そして、一般に、同じ速度で)反応体が同一反応器に入ることを意味する。
「ジ−ブロックコポリマー」または「トリ−ブロックコポリマー」とは、隣接モノマー単位がすべて(転移点を除いて)同じモノマーの単位であるポリマーを意味し、例えば、−ABは、組成的に異なるAブロックとBブロックとよりなるジ−ブロックコポリマーであり、ABAは、Aブロックは互いに組成的に同じものであるが、Bブロックとは異なるトリ−ブロックコポリマーであり、そしてABCは、それぞれが組成的に異なるA、BおよびCブロックよりなるトリ−ブロックコポリマーである。
「高固形分ローディング」とは、初期の反応体および/または反応生成物が50重量%を上回る固形分〜100重量%の上限固形分を含む溶液に関する。
「リビングアニオン重合」とは、一般に、連鎖停止または連鎖移動なしにアニオン機構によって進行する連鎖重合を意味する。(この主題のより完全な論議については、エッチ・エル・シー(H.L.Hsieh)、アール・ピー・クァーク(R.P.Quirk)著、アニオン重合の原理および応用(Anionic Polymerization Principles and Applications)、ニューヨーク州ニューヨーク、マーセル・デッカー(Marcel Dekkar)、1996年、72−127ページを参照されたい。)
「リビング・エンド」とは、ポリマー鎖の末端に停止反応なしで存在する、重合可能な反応性部位を意味する。
「オリゴマー」とは、たった数モノマー単位よりなるポリマー分子(例えば、二量体、三量体、四量体)を意味する。
「プラグ」とは、反応混合物の三次元スライスを意味する。
「プラグフロー反応器(PFR)」とは、軸混合なしに理想的に動作する(チャールス・ジー・ヒル(Charles G.Hill)著、化学工学速度論および反応器デザイン入門(An Introduction to Chemical Engineering Kinetics and Reactor Design)、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(J.Wiley and Sons)、1977年、251ページを参照されたい)または材料が軸方向に移動するにつれてそれらが消費される際に濃度に何の半径方向の変動も示さない(エッチ・スコット・フォッグラー(H.Scott Fogler)著、化学反応工学の要素(Elements of Chemical Reaction Engineering)、プレンティス・ホール(Prentice Hall)、1999年を参照されたい)反応器を意味する。
「多分散性」とは、数平均分子量で割られた重量平均分子量を意味し、多分散性は多分散性指数(PDI)で報告される。
「半径方向の混合」とは、反応器における流れの総体的方向に垂直の方向での混合を意味する。
「ランダムブロックコポリマー」とは、少なくとも1つのブロックが少なくとも2種のモノマー単位のランダム配列を含む少なくとも2種の相異なるブロックを有するコポリマーを意味する。
「反応ゾーン」とは、反応の大部分が起こる反応器または反応器システムの部分を意味する。
「滞留時間」とは、反応混合物の理論プラグが反応器を完全に通過するために必要な時間を意味する。
「セグメント」とは、特定のモノマーまたは分岐剤の添加によって形成されたポリマーのブロックに関する。
「星型分岐(starbranched)ポリマー」は、単一の分岐または接合点によって各鎖の一端で連結された幾つかの直鎖よりなるポリマーを意味する(エッチ・エル・シー、アール・ピー・クァーク著、アニオン重合の原理および応用、ニューヨーク州ニューヨーク、マーセル・デッカー、1996年、333−368ページを参照されたい)。
「星型分岐ブロックポリマー」または「多重分岐(hyper−branched)ブロックコポリマー」とは、また放射状ブロックコポリマーとしても知られる、単一の分岐または接合点によって各鎖の一端で連結された幾つかの線状ブロック鎖よりなるポリマーを意味する(エッチ・エル・シー、アール・ピー・クァーク著、アニオン重合の原理および応用、ニューヨーク州ニューヨーク、マーセル・デッカー、1996年、333−368ページを参照されたい)。
「温度感受性モノマー」とは、反応温度が上がるにつれて、同じまたは異なるポリマー鎖上の、カルボニル基のような反応性部位とリビング末端との有意な副反応を受けやすいモノマーを意味する。
「温度プロファイル」とは、反応混合物プラグが反応器を通って移動するにつれて経時的に当該反応混合物プラグが体験する温度を意味する。
【0005】
本発明の少なくとも1つの実施形態の利点は、高固形分で構造を制御する能力がさらなる便利さおよび有利な環境配慮を提供することである。
【0006】
本発明の少なくとも1つの実施形態の利点は、副反応が最小限に抑えられるような程度に反応混合物の温度を制御できることである。これは、温度感受性モノマーが使用される時に特に有利である。
【0007】
本発明の少なくとも1つの実施形態の別の利点は、反応混合物に加えられる開始剤の量を制御することによって、生じるポリマーの平均分子量をうまく制御できることである。
【0008】
本発明の少なくとも1つの実施形態の別の利点は、様々なポリマー構造を具体的な用途に好適であるように調整できるおよび合成できることである。
【0009】
本発明の少なくとも1つの実施形態の別の利点は、温度を制御する能力が反応物質を溶液に維持することを可能にし、それが所望の反応を促進することである。
【0010】
本発明の少なくとも1つの実施形態の他の利点は、それが制御された反応速度論、最適反応混合物粘度およびポリマー溶解度を可能にすることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
高固形分ローディングは典型的には(モノマーのグラム数)/(モノマーのグラム数+溶媒のグラム数+開始剤のグラム数)として概算され、典型的には(ポリマー)/(ポリマー+溶液)として求められる。伝統的に、高固形分ローディング条件下での重合は押出機中で行われる。しかしながら、これらの条件下で押出機を用いることには幾つかの不利な点が存在する。例えば、押出機は典型的には限定された伝熱能力を有するので、引火性モノマーの高固形分ローディングでの作業は困難であり得る。反応システムが熱を保持する場合、引火性モノマーは発火するまたは分解するかもしれない。さらに、反応器汚れ(reactor fouling)をもたらす、材料がフライトおよび混合要素中に保持される可能性が高いために、押出機中でプラグフローを達成することは困難である。反応器汚れは、ホットスポットおよび増加した汚れをもたらす不満足な伝熱をもたらす熱シンクの欠如のために、高いモノマー濃度で重大な問題になる。
【0012】
大きな温度勾配は、押出機では生み出すことは困難であるが、本発明に好適な反応器でのそれらのような多数の独立した温度制御されるゾーンを有するシステムでは達成することができる。例えば、温度制御された管型反応器では、(例えば、アニオンまたはフリーラジカル化学を用いる重合に付随した発熱を制御するために)最初の反応ゾーンを−80℃ほどの低い温度に冷却する一方で、(例えば、ポリマー溶解性を誘発し、ポリマー汚れを避けることによって処理能力を増やすために)それに続く反応ゾーンを220℃ほどの高い温度に加熱することが可能である。本発明は、生み出される有機材料の構造が反応器中の温度または温度プロファイル、モノマー対開始剤のモル比、およびモノマー添加順序をはじめとする多数の要因によって制御することを可能にする。これらの要因は、最終の重合した有機材料の分子量、多分散性および構造に影響を及ぼす。
【0013】
得られるポリマー材料の平均分子量はモノマー対開始剤比を制御することによって定まる。この比はそれぞれのモノマーおよび開始剤流量を制御することによって定まる。狭い分子量分布は、反応混合物の温度を制御することによって得ることができる。高温の回避は、様々な分子量平均を有するポリマー鎖をもたらし得る望まれない副反応を最小限にする。
【0014】
多分散性は、温度感受性モノマーが存在する時に特に、反応混合物の反応速度論および副反応の最小化によって影響を受け得る。反応器の各ゾーンでの最適温度の維持は、反応速度論に正の影響を及ぼし得る。最適温度の維持はまた、溶液粘度および反応体の溶解性に有利に影響を及ぼし得る。
【0015】
重合した有機材料の構造はモノマー添加の順序によって決定される。たった1つのモノマータイプが使用された時には、ホモポリマーが形成され、2つ以上のモノマータイプが同時に導入された時にはランダムコポリマーが形成され、2つ以上のモノマータイプが逐次導入された時にはセグメント化ブロックコポリマーが形成される。
【0016】
本発明の方法にとって、反応器の温度プロファイルが長期にわたって制御できること、および反応混合物が反応器のすみずみまで比較的プラグフロー方式で押し進められることが好ましい。これは、反応混合物が反応器のある所与の場所で、前のおよび次の反応混合物部分が同じ場所を通り過ぎる時にそれらが遭遇するものと同じ反応条件にさらされることを可能にする。
【0017】
温度制御の維持および本質的にプラグフロー方式での反応混合物の移動は、行われつつある反応のタイプの発熱性によって複雑になることがある。極性モノマーを含む幾つかの重合法は、副反応と溶液中の材料のミセルとしての凝集に関連した秩序化(ordering)現象とによって複雑になることがある。この秩序化現象は、ブロックまたは末端官能性構造が溶媒によって希釈される時より高固形分でさらにより広く行き渡るようになる。ミセル形成は、好適な極性溶媒の存在によってなくすことができる。
【0018】
ブロックおよびホモポリマー・システムは、不満足な混合および不満足な熱散逸または伝熱の結果として現れる、鎖−鎖カップリングのような副反応のために高固形分で回分または半回分条件下で、多くの場合、ゲルを形成する。一般に、良好な混合能力を欠く回分システムでは、粘度問題のために、ブロック構造体を形成する確率は、固形分が高くなればなるほど低下する。ホモポリマー混入物質も、これらの不満足に混合されるシステムをもたらす。
【0019】
星型分岐ポリマーは、いったん形成されるとより低い溶液および溶融粘度を典型的には示すが、ゲル化事象に非常に敏感である。例えば、リビングアニオンポリマー鎖が二官能性モノマーによってカップリングされる収束的な(convergant)星型ポリマーの合成中に、不十分な混合および伝熱が提供されない場合には鎖−鎖カップリングおよびゲルが生じ得る。
【0020】
極性の側鎖および末端基官能性を有するポリマーは、商業的応用性の点からも特に重要である。官能基を含有するポリマーはかなりの商業的応用性を有することができ、分散剤、ブレンド相溶化剤、界面活性剤、表面改質剤、コロイド安定化剤、しみ除去剤、封入剤、結合剤、粘度調整剤、および(場合によっては)アイオノマーの前駆体としての用途がある。この分野での重要な合成ターゲットは、それらの高い極性および水混和性のために、カルボン酸、ヒドロキシル、アミンまたはチオール・セグメントを含有するポリマーである。
【0021】
これらの材料は、水素結合のために高固形分条件下で合成および処理することが非常に困難であり得る。アルコール、カルボン酸、アミンまたはチオール官能基を含有するポリマーは、分子間および分子内水素結合のために、分子量が増えるにつれて高い粘度を示す。
【0022】
本発明は、材料を処理するおよび水素結合による凝集のような粘度問題を克服するのに役立つための激しい混合を提供するので、上記重合に関連した問題の多くを克服する。またそれは一連の反応ゾーンの温度制御を可能にし、その結果、発熱を制御するために1ゾーンを冷却することができ、次に、必要ならば、例えば、高分子量材料のような水素結合した材料および高濃度で組み込まれるコ−モノマーの溶解性を向上するために、別のゾーンを加熱することができる。
【0023】
適切な混合および温度制御は、例えば、同様な平均分子量を有するおよび温度制御なしに得られたものより狭い多分散性指数(PDI)を有する同じ材料を再現する能力を増進する。好ましくは本発明のポリマーのPDIは3未満、より好ましくは2未満、最も好ましくは1.5未満である。
【0024】
好適なプラグフロー温度制御反応器の1つとして撹拌管型反応器(STR)がある。反応混合物が半径方向の混合で本質的にプラグフロー方式で進むことができる任意のタイプの反応器、または反応器の組合せも好適である。押出機との組合せをはじめとする、STRの組合せも好適であろう。選ばれる反応器のタイプにかかわらず、反応器の温度または温度プロファイルは、時間t1で反応ゾーン内のある特定の場所(すなわち、重合の大部分が起こる反応システムの部分)での反応混合物のプラグが幾つかの他の時間t2で当該同じ場所での反応混合物の別のプラグと本質的に同じ温度または温度プロファイルを有するであろう程度に好ましくは制御可能である。反応ゾーンは反応器の2つ以上の温度制御されたゾーンを含むことができる。STRは、反応混合物の本質的にプラグフローを提供することができ、良好な温度制御を達成できるように配置構成することができ、それ故、ポリマー生成物の平均分子量を目標値近くに留まらせる、すなわち、狭い多分散性範囲を持たせるのに有用である。
【0025】
図1について言及すると、反応システム10には、反応混合物配送システム20、任意の熱交換器30、反応器40、任意の揮発分除去機構50、出口60、および残りの溶媒が該システムによってリサイクルされるのを可能にする任意のリサイクル流れ70が含まれる。反応混合物配送システム20は成分フィード供給装置12a〜12g、精製装置14a〜14e、およびポンプ16a〜16gを含む。これらの要素を組み合わせ、制御する方式は、説明した本方法によって製造されるポリマーの平均分子量分布の制御を経時的に一貫して提供するのを助ける。生じたポリマーの多分散性を最小にすることができる。3未満、好ましくは2未満、最も好ましくは1.5未満の多分散性指数を達成することができる。反応システムは副反応を制限する制御された温度を提供することに加えて良好な混合状態を提供するので、これらの低い多分散性を達成することができる。モノマー−ポリマー転化率は典型的には90%より大きく、99%および100%までも達成することができる。従って、生じた重合材料(固形分ローディング)は通常、95%よりも大きいオーダーであり得るモノマーの重量パーセント濃度に匹敵する。
【0026】
A.反応混合物
好適な出発モノマー原料としては、様々なトポロジー(線状、分岐、星型、星型分岐、組合せネットワーク)、組成(ジ−、トリ−、およびマルチ−ブロックコポリマー、ランダムブロックコポリマー、ランダムコポリマー、ホモポリマー、グラフトコポリマー、テーパードまたはグラジエントコポリマー、星型分岐ホモ−、ランダム、およびブロックコポリマー)、および/または官能性(末端、部位特異的、テレケリック、多官能性、マクロモノマー)を有するポリマーである制御された構造の材料(CAM)を製造するために使用できるものが挙げられる。
【0027】
本発明は、段階成長重合、具体的には伝統的なまたはリビング/制御フリーラジカル、基移動、カチオンまたはリビングアニオン重合によるポリマーの合成を可能にする。最も工業的に適切な方法は、伝統的なまたはリビング/制御フリーラジカルおよびリビングアニオン重合である。
【0028】
ポリマーの具体的なフリーラジカル製造法としては、原子移動ラジカル重合(ATRP)、可逆的付加−切断連鎖移動重合(RAFT)、およびニトロキシル−またはニトロキシド−(安定フリーラジカル(SFR))または永続性ラジカル媒介重合が挙げられる。これらの制御法はすべて、成長中のラジカル化学種と様々な休止状態化学種との間の動的平衡を利用することによって行われる(ケイ・マチジャゼフスキー(K.Matyjaszewski)編、制御/リビングラジカル重合(Controlled/Living Radical Polymerization)、米国化学会(ACS)シンポジウム・シリーズ768、2000年を参照されたい)。
【0029】
好適な出発原料としては、アニオン重合性モノマー(シー(Hsieh)ら著、アニオン重合の原理および実用化(Anionic Polymerization:Principles and Practical Applications)、第5章および第23章、ニューヨーク、マーセル・デッカー、1996年を参照されたい)およびフリーラジカル重合性モノマー(オディアン(Odian)著、重合の原理(Principles of Polymerization)、第3版、第3章、ニューヨーク、ワイリー−インターサイエンス(Wiley−Interscience)、1991年)のような、末端不飽和炭素−炭素結合を持ったものが挙げられる。
【0030】
他の好適なモノマーとしては、多数の反応部位を有するものが挙げられる。例えば、幾つかのモノマーは少なくとも2つのアニオン重合性またはフリーラジカル重合性部位を有してもよい。このタイプのモノマーは分岐ポリマーを生み出す。このタイプのモノマーは好ましくは所与の反応混合物の10モルパーセント未満を占める。なぜなら、より大量の使用は分岐に加えて高度の架橋をもたらす傾向があるからである。別の好適なモノマーは、少なくとも1つのアニオン重合性部位に加えてアニオン重合性ではない少なくとも1つの官能基を有するものである。
【0031】
本発明の温度制御の特徴は、温度感受性ポリマーの製造に本発明を有用なものにする。温度感受性ポリマーの例には、長期間にわたる高温で分解するポリマーシステムだけでなく、ポリ(スチレン)、ポリ(ジエン)、ポリ((メタ)アクリレート)、およびそれらの混合物も挙げられる。
【0032】
B.精製および反応器への配送
本発明によるポリマー材料の製造システムは図1で例示される。図が示すように、最初にモノマーおよび溶媒はポンプ16a〜16eによってフィード供給装置12a〜12eの1つもしくはそれ以上から精製装置14a〜14eへ、そして次に反応器40へ送り込まれる。ほとんどの場合には、開始剤および失活剤は、例えば、精製装置14を通さずにポンプ16fおよび16gによって、それぞれ、フィード供給装置12fおよび12gから反応器40に直接フィードすることができる。開始剤は空気に敏感であり得るので、開始剤供給へ空気を導入し得る過度の処理を避けるために、開始剤を反応器に直接フィードすることが望ましいであろう。混入物質の存在は厳密にはそれらの機能に影響を及ぼすはずがないので、失活剤は典型的には精製される必要はない。ポンプの数およびシステムの配置、例えば、精製装置が必要とされるか否かは、使用中のモノマーの数およびタイプに依存するであろう。開始剤として使用できるアルキルリチウム試薬等の反応混合物中に存在し得る幾つかの成分は、とりわけ、H2OおよびO2をはじめとする様々な不活性化化学種に周知のように敏感である。それ故、敏感な試薬が使用される時には、かかる不活性化化学種をモノマー、溶媒、および任意の添加剤から除去するまたは排除するよう注意しなければならない。この除去は、精製装置14a〜14eによって行われる。
【0033】
好ましい精製方法としては、不活性ガス(例えば、N2)でのモノマーのスパージングおよびモノマーと開始剤溶液に使用される予定の任意の溶媒との組合せ流れを1つもしくはそれ以上の精製カラムに通すことが挙げられる。かかるカラムには、溶解した不活性化化学種を選択的に除去する粒子が充填される。例えば、分子篩および様々な乾燥剤はH2Oを除去することができ、一方、活性化銅はそれと接触する流体からO2を除去することができる。当業者は、それを成し遂げる多数の方法だけでなく、反応混合物成分からのH2OおよびO2の除去の重要性をも知っている。低い水および酸素濃度(すなわち、10ppm未満)はほとんど何の開始剤または「リビング」ポリマー鎖も不活性化されない。重合抑制剤は、当該技術で知られているように、塩基性アルミナ(Al23)クロマトグラフ材料での処理によってモノマーから除去することができる。開始剤、モノマー、および溶媒は次に反応器40の入口で混合され、または別個の入口を通って導入され、反応器40の入口端から下流のあるポイントで混合される。
【0034】
最初に、反応混合物の構成成分(典型的にはモノマー、溶媒、および開始剤)は成分フィード供給装置、例えば、モノマー/溶媒混合物用の12b、12c、および12dならびに開始剤用の12fから、それぞれ、ポンプ16b、16c、16d、および16fによって押し進められる。他のモノマー、分岐剤、官能性失活剤(Afn)、失活剤(An)および溶媒は、モノマーの最初の装入場所からさらに下流のあるポイントで反応器40に加えることができる。例えば、追加の溶媒およびモノマーは、それぞれ、ポンプ16aおよび16eによって成分フィード供給装置12aおよび12eから加えられてもよい。フィード供給体は、システムに存在する場合には、相当する精製装置14を通過するであろう。
【0035】
圧力フィード(すなわち、制御バルブ付きの加圧タンク)を各成分のために用いることができるが、成分は好ましくはポンプ機構によって押し進められる。ポンプシールがフィード供給装置12a〜12gからの酸素、水、および他の開始剤不活性化物質を排除するのに十分である限り、広範な種類のポンプデザインが本発明で有用であり得る。潜在的に有用なポンプの例としては、ギアポンプ、ダイアフラムポンプ、遠心ポンプ、ピストンポンプ、および蠕動ポンプが挙げられる。
【0036】
ある開始剤システムは、スラリー(すなわち、溶媒中の小粒子の懸濁)の形で反応器40に配送される。例えば、ブチルリチウムは、使用のためにジエンおよびビニル芳香族モノマーとシクロヘキサン中で混合することができる。かかるスラリー開始剤システムは、注意が払われない場合にはフィード供給装置12f中におよびポンプ16f中に沈殿し得る。開始剤システムをフィード供給装置12f中で十分に混合された状態に保持するための機構が好ましい。かかる機構の例としては多数の撹拌機翼およびポンプ周りのループが挙げられる。さらに、かかる開始剤システムは、スラリーを容易に取り扱うことができるポンプ16fによって反応器40に押し進めることができる。好適なポンプの例としては、蠕動ポンプおよびダイアフラムポンプが挙げられる。反応混合物成分を12a〜12gから反応器40に移すために用いられる管材料は、高圧を取り扱うことができ、かつ、使用中の開始剤を不活性化し得る物質、例えば、水および酸素を実質的に排除することができなければならない。有用な管材料としては、ステンレススチール、ポリプロピレン、ポリエチレン、およびポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。蠕動ポンプがポンプ16a〜16gの1つとして用いられる場合、管材料は好ましくはフルオロエラストマーである。
【0037】
ポンプ16a〜16gが反応混合物成分を反応器40に押し進める速度は、反応混合物の反応器40中の滞留時間が所望の長さまたはその近くであるように調節することができる。0.94、2、3.33、4、10および20リットル(L)の容量を有するSTRに典型的な滞留時間は、5分ほどの短い時間から約300分間以下、より典型的には約10分間〜約50分間、さらにより典型的には約20分間〜約40分間の範囲であり、最も典型的には約30分間である。より短い滞留時間は、切り替え(すなわち、使用中のモノマー、溶媒または開始剤のタイプ、モノマーの比、開始剤の量、目標平均分子量などの変更)中により少ない廃棄物およびプロセス条件変更への実質的に減少した応答時間をもたらすことができる。もちろん、フィード速度および反応混合物成分濃度は、反応器タイプおよび所望の重合度で変わり得る。
【0038】
C.反応器
反応器40は、反応混合物の温度制御を可能にするだけでなく、50重量%より上の固形分ローディングを有する反応混合物の本質的にプラグフローをも可能にする任意のタイプの反応器または反応器デザインであり得る。反応器は好ましくは多数の下流フィード流れ注入ポイントを有する。STRが好ましい。STRの反応経路に沿った多数のポイントで試薬を追加する能力は、STRをポリマーの末端基構造を特異的に機能化するのに好適なものにする。好ましくは、反応器は4つもしくはそれ以上の独立して温度制御されるゾーンを有する。ただ一つの温度制御されるゾーンを持った反応器が用いられてもよいが、約4より少ないゾーンが用いられる場合、生じた有機材料の分子量多分散性は所望のものより広くなる傾向がある。上記にもかかわらず、ホモポリマーが製造される場合、反応器は好ましくは少なくとも2つの独立して温度制御されるゾーンを有する。
【0039】
本発明の方法で用いられる前に、反応器40はスイートニングされてもよい。一般にスイートニングは、反応器40を開始剤の希薄溶液で満たし、例えば、約24時間放置することによって成し遂げられる。その後、ガススパージおよび好適な無水溶媒を使用してスイートニング混合物を除去することができる。
【0040】
反応混合物の構成成分は、ポンプ16a〜16gによって生み出された圧力によって精製装置14および開始剤フィード貯蔵装置12gから反応器40に配送することができる。反応器40に達する前に、反応混合物成分は場合により熱交換器30を通過することができる。
【0041】
反応器40へ導入される前の反応混合物の構成成分の温度より上または下の温度で反応器40が運転されることになっている場合、任意の熱交換器30が用いられる。例えば、反応器40の第1セクションが50℃の温度にまたはその近くに維持される場合、反応混合物は好ましくは反応器40の第1セクションに50℃でまたはその近くで入る。反応混合物の構成成分が個別に室温近くに(例えば、おおよそ25℃)に維持されている場合、任意の熱交換器30は、組み合わされた反応混合物の構成成分の温度を反応器40の第1セクションの温度近くに上げる予熱器であり得る。典型的には、モノマーは最初には反応器に入る前は室温である。
【0042】
反応器40は、反応器40およびその内容物から除熱するまたはそれらを加熱するための手段として役立つ、循環する伝熱流体(例えば、水、スチーム、液体窒素など)を含有するジャケットによって取り囲むことができる。特に低反応温度(例えば、−78℃)を達成するために、伝熱流体は該反応温度で比較的低い粘度に留まるべきである。例えば、パーフルオロエーテルは非常に低い温度で特に有効である。温度制御に役立つべき、その近くを通る反応混合物の温度を測定するための温度感知デバイス(例えば、温度計および/または熱電対)が反応器40中へ伸びることができる。温度感知デバイスの出力に基づいて、ジャケットに含まれる伝熱流体の温度および循環速度を手動でまたは自動的に(例えば、コンピューター制御機構によって)調節することができる。
【0043】
さらに、反応器40の少なくとも一部分はシュラウドによって取り囲むことができる。反応器40の外側とシュラウドとの間に、反応システム10中にまたはその近くに存在するかもしれない任意の引火性または可燃性物質の発火を効果的に防ぐ環境が維持される。かかるシュラウド(およびそれによって可能にされる環境)の使用は、汎用電気装置(例えば、標準ヒーターおよびモーター)が反応システム10の中でまたはそれと共に用いられることを可能にする。かかる汎用装置は、多くの場合、より高い安全性格付けの装置がそうであるよりも、所望の温度プロファイルを維持するまたは反応混合物の本質的にプラグフロー移動を生み出すことを助長する。シュラウドで囲われた反応器は、その記載が参照により本明細書に援用される、米国特許第5,814,278号明細書および同第5,882,604号明細書にもっと十分に記載されている。
【0044】
反応器40をセクションに分割し、各セクションの温度を個別に制御することによって、反応混合物が温度プロファイルに遭遇するようにさせることができる。例えば、反応器40の各セクションは同じ(またはほぼ同じ)設定温度に維持することができ、こうして反応混合物が安定した温度プロファイルに遭遇することを確実にする。これは、各セクションの周りに別個のジャケットを有する、または各セクションの温度を独立して制御するためのある他の手段を有することによって行うことができる。周期的温度プロファイルもまた可能である。あるいはまた、反応器40の一連の各セクションは、前のセクションより高い(または低い)温度に維持することができ、こうして反応混合物が上昇する(または低下する)温度プロファイルに遭遇することを確実にする。
【0045】
ゾーンが維持される温度は、使用中の原材料および所望の反応に依存するであろう。各セクションの温度を制御する目的は、反応混合物の温度が所望の反応をもたらし、望ましくない副反応を助長しないであろう温度にあることを確実にすることにある。反応器が十分に長い場合、反応混合物温度は単一ジャケット付きゾーンで十分に制御することができるが、かかるシステムが特に効率的であるわけではない。
【0046】
必要ならば、進行中の重合の過程中に、1つもしくはそれ以上のセクションの温度を変更することによって温度プロファイルを変えることができる。温度プロファイルの変更は有機材料の分子量分布に影響を与える一方法であり、それに向けてモノマーの重合挙動は温度によって変わり得る。かかるモノマーにはメタクリレートおよびビニルピリジン系が含まれる。例えば、反応が発熱的である場合、様々な分子量のポリマーをもたらすことができる副反応は、反応混合物の温度を制御することによって制限することができる。典型的には、反応混合物の温度は、モノマーが加えられて重合が起こる時はいつでも上がるであろう。それ故、発熱反応は、第1モノマーが最初に反応器へフィードされた時に起こるかもしれない。別の発熱反応は、第1モノマーが部分的にまたは十分に転化され、混合物が最初の反応から冷えたかもしれない後で第2モノマーが添加された時に下流で起こるかもしれない。
【0047】
温度制御に加えて、反応器40の本質的な特徴は、その中に含まれた反応混合物を、本質的にプラグフロー方式で、反応器40のインプット端からそのアウトプット端まで押し進める能力である。「本質的にプラグフロー」とは、反応器40を通るその進路において反応混合物が遅れ得る渦および死点、ならびに反応混合物に反応器40を余りにも速く通過させる、反応器出口への短い回路が事実上存在しないことを意味する。これは、反応混合物の所与のセグメントがより早くかより遅くかのどちらかでそれを通って移動するセグメントとほぼ同じ速度プロファイルで反応器40の長さを下方へ進み続けることを意味する。反応混合物を反応器40を通して押し進める方式は、圧力フィードのような外部手段(例えば、ポンプ)によるか、または内部手段(例えば、押出機のスクリュー)によることができる。プラグフローは、横方向の混合手段(例えば、STRでの放射状櫂)によって支援することができる。反応混合物は、好ましくは50〜95重量パーセントのモノマー濃度を有し、より好ましくは60〜80重量%の濃度を有する。これらの濃度は、ポリマーが形成され、反応混合物の粘度を上げるにつれて反応混合物がより容易に下流に押し進められるのを可能にする。
【0048】
反応器40の好ましい実施形態は、連結されて管を形成する一連のシリンダーよりなってもよい撹拌管型反応器(STR)である。この管の中心を下方に、STRは、そこから放射状に広がる複数の櫂を有し管の主軸に沿って伸びるシャフトを有してもよい。(各シリンダーは先に記載されたようにジャケット付きであり得る。)外部駆動がシャフトを回転させるので、櫂は反応混合物を撹拌して伝熱を助ける。さらに、櫂は、ポンプおよび/または圧力ヘッドフィードシステムが管を通って反応混合物を押し進めるのを助けるようにデザインすることができる。STRのデザインは当業者には公知である。
【0049】
管は、用いられるシリンダーの数および半径に依存して1リットルの数分の1から数百リットルもしくはそれ以上の範囲の容積を有することができる。シリンダーは、ガラス、強化ガラス、様々なステンレススチール、ガラス内張りスチール、またはそれを通過する反応混合物と反応しない任意の他の材料製であることができ、潜在的な開始剤不活性化物質(例えば、大気O2およびH2O)を内部反応ゾーンから排除することができ、熱を伝えることができ、かつ、高圧に耐えることができる。好ましい材料には、316Lステンレススチールおよび低い膨張係数タイプのガラス(例えば、ニューヨーク州コーニングのコーニング・ガラス・ワークス(Corning Glass Works,Corning,NY)から入手可能なパイレックス(PYREX(商標))ガラス)が含まれる。シリンダーは、様々なタイプのガスケットおよびフランジによって接合することができる。管は水平であるまたはある角度に置かれ得るが、STR中の任意の不活性ガスが出口を通って抜け出せるように、管は好ましくはそのインプット端からそのアウトプット端へ上向きの角度に置かれる。
【0050】
シャフトは、様々な不活性金属、好ましくはステンレススチールから製造することができる。アルキルリチウムのような腐食性開始剤がSTRで使用されることになっている場合には、シャフトは好ましくは耐腐食性ステンレススチール(例えば、316Lステンレススチール)から製造される。
【0051】
シャフトが中空である場合、それは冷却することができる(必要ならば)。これは、それを通して水のような伝熱流体を流すことによって成し遂げることができる。
【0052】
STRを通って本質的にプラグフローを維持するのを助けるために、櫂およびシャフト上への反応混合物沈着を最小限に抑えるように櫂をデザインすることができる。沈着は多くの場合、普通は管の壁上にまたは櫂の下流面上に位置する、よどんだ領域に起こり、減少した伝熱およびSTRの閉塞をもたらし得る。これは、2−および4−ビニルピリジンを含む重合で特に重要である。なぜならば、これらの物質とスチレン系またはジエンモノマーとのブロック共重合は撹拌するのが困難であり得るまたは反応器壁上に沈殿し得る有機材料またはミセル材料を生み出すからである。STRは回分式反応器ほど頻繁に清浄化されないので(そして長期の連続運転が望ましいので)、沈着は滞留時間のロスをもたらし得る。STRから沈着を取り除かなければならないことは、生産時間のロスをもたらし得るし、STRへの溶媒の導入は将来の運転中に触媒を不活性化し得る。沈着およびそれから生じる問題は、適切な櫂デザインによって最小限にすることができる。
【0053】
櫂デザインの最適化は、STRの外端の方へより狭い壁隙間を提供することだけでなく、円筒形および/または流線形デザインの使用をも含み得る。(好ましいタイプの櫂配置の説明については実施例セクションを参照されたい。)柔軟な先端(例えば、ポリテトラフルオロエチレンのようなエラストマー製の)の櫂の使用は、管の壁をこするのに役立ち得る。あるいはまた、沈着は、櫂回転の方向を定期的に互い違いにすることによって最小限に抑えることができる。方向は数秒もしくは数分毎に(またはフレームが特定の反応混合物で沈着を最良に阻止するように思われるどんな時間でも)互い違いにすることができる。
【0054】
気体状のモノマーが使用される場合、STR管は、好ましくは、ガスモノマーの溶解度を確保するのに必要な高圧に耐えることができる非常に丈夫な材料(例えば、ステンレススチール)製である。
【0055】
反応器40のさらに別の好ましい実施形態は、STRのアウトプットが押出機のフロントエンドへポンプ送液される組合せシステムである。かかる組合せシステムは、STRを出る部分転化した反応混合物を取り入れ、さらなるアリコートのモノマーの添加によってまたは新たなモノマーの添加によって、押出機でのさらなる転化を可能にすることができる。押出機へフィードされつつある反応混合物は既にかなり粘稠(例えば、通常20,000〜数百万センチポーズ)であるので、加圧フィードの必要性は排除される。かかる組合せシステムでは、STRアウトプットは加熱されたライン、好ましくは非常に短いもの(例えば、約3フィート以下)によって押出機にフィードされる。
【0056】
STRおよびSTRと押出機との組合せを、反応器40の有用なデザインの例として説明した。それらは単に例示に過ぎない。実質的な差のない他のデザイン(例えば、本質的にプラグフローおよび50重量%より上のモノマー濃度の混合物の温度制御を可能にするもの)は、反応器40として用いられる場合、本発明の範囲内である。
【0057】
D.失活
STRが反応器40として単独で用いられる場合、失活溶液(quench solution)は、反応混合物が反応器40を出た直後にそれに加えられてもよい。これは、簡単なT−パイプ配置によって反応混合物と失活フィード(示されていない)とをブレンドすることによって成し遂げることができる。2つのフィードが完全に混合するように、組み合わされたフィードを別のミキサー(例えば、スタティックミキサー)へフィードすることができる。
【0058】
当業者は、様々な開始剤システムを失活させるために使用することができる広範な種類の材料を知っている。一般に使用される例としては、酸素、水、スチーム、アルコール、ケトン、エステル、アミン、ヒンダードフェノールなどが挙げられる。
【0059】
E.熱安定剤
ポリマーおよび/または反応混合物が高温で処理(例えば、反応混合物の高温揮発除去またはポリマーのホットメルトコーティング)されることになっている場合、反応混合物への熱安定剤の添加が好ましい。ヒンダードフェノールおよびホスファイトをはじめとする、様々な熱安定剤が当業界で広く使用されている。どの安定剤が使用されるとしても、それは好ましくはモノマーおよびポリマーに可溶であり、さもなければ、溶媒が配送機構として必要であろう。
【0060】
ヒンダードフェノールが失活剤として使用された場合には、別個の熱安定剤の添加は不必要であるかもしれない。
【0061】
F.揮発分除去
ポリマー生成物が純粋な形で(すなわち、モノマーと混ざらないで)使用される場合、未反応モノマーは任意の揮発分除去機構50によって反応混合物からストリッピングすることができる。様々な公知の揮発分除去方法が可能である。これらには、例えば、シリコーン内張りシート上での真空トレー乾燥、ワイプトフィルムおよび薄膜エバポレーター(ポリマーの平均分子量が余りにも高くない場合)、スチームストリッピング、紡糸口金を通した押出、および空気乾燥が含まれるが、それらに限定されない。
【0062】
好ましいタイプの揮発分除去機構50はディスコサーム(DISCOTHERM)B高粘度処理装置(マサチューセッツ州アクトンのリスト社(List AG;Acton,MA))である。クラウス−マッフェイ社(Krauss−Maffei Corp.)(ケンタッキー州フローレンス(Florence,KY))およびホソカワ−ベーペックス(Hosokawa−Bepex)(ミネソタ州ミネアポリス(Minneapolis,MN))のような他の製造業者が同様な処理装置を製造している。これらのタイプの処理装置は、失活された反応混合物の残りからポリマー生成物を分離するのに効率的であることが見いだされた。必要ならば、かかる処理装置は、低い温度を用いることができるように周囲圧未満に維持することができる。低い圧力の使用は、ポリマーの甚大な分解なしに非常に揮発性の高い成分の再捕捉を可能にする。
【0063】
反応混合物の残りの成分(すなわち、溶媒および使用された任意の失活溶液)は、廃棄処分するまたはリサイクルすることができる。後者の選択肢は、いったん凝縮したら、それらが互いに分離されることを必要とする。これは一般に蒸留によって行われ、従って、失活剤溶液のそれらとは著しく異なる沸点の溶媒の使用が好ましい。リサイクル溶媒は、反応器40へ再導入される前に精製装置14を通過する。
【0064】
G.ポリマーの収集
いったんポリマー生成物が反応混合物の残りから単離されたら、それは出口60から所望の容器に直接集めることができる。
【0065】
本発明の目的および利点は次の実施例によってさらに例示される。これらの実施例で列挙される、他の条件および詳細だけでなく、特定の原材料およびその量も本発明を不当に限定するために用いられるべきではない。
【実施例】
【0066】
試験方法
ゲル浸透クロマトグラフィーによる分子量および多分散性
サンプルの平均分子量および多分散性は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析によって測定した。おおよそ25mgのサンプルを10ミリリットル(mL)のテトラヒドロフラン(THF)に溶解して混合物を形成した。混合物を0.2ミクロンのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シリンジ・フィルターを用いて濾過した。次に、約150マイクロリットル(μL)の濾過した溶液を、ウォーターズ717オートサンプラー(Waters 717 Autosampler)およびウォーターズ590ポンプ(Pump)をも有するGPCシステムの一部であるプルゲル−混合(Plgel−Mixed)Bカラム(マサチューセッツ州アムハーストのポリマー・ラブス(Polymer Labs,Amherst,Massachusetts)から入手可能)へ注入した。このシステムを、室温で、おおよそ0.95mL/分の流量で移動するTHF溶出液で動作させた。濃度の変化を検出するためにアーマ(Erma)ERC−7525A屈折率検出器(Refractive Index Detector)を用いた。数平均分子量(Mn)および多分散性指数(PDI)計算は、6×102〜6×106の分子量範囲にある狭い多分散性ポリスチレン対照を使用する校正モードに基づいた。実際の計算はポリマー・ラブスから入手可能なカリバー(Caliber)ソフトウェアで行った。
【0067】
光散乱による分子量および多分散性
幾つかのサンプルの平均分子量および多分散性は、記載されるようなトリプル検出法によって測定した。サンプルは、おおよそ25mgのサンプルへの10mLのテトラヒドロフランの添加によって調製した。該溶液を0.2ミクロンPTFEシリンジ・フィルターを用いて濾過した。100マイクロリットルの各サンプル溶液を、40℃に維持された(エッペンドルフ・カラム・ヒーター(Eppendorf Column Heater))、3×プルゲル混合−B10ミクロンGPCカラムよりなるカラムセットへ注入した。用いた検出システムは、ポリマー溶液がカラムを通って溶出される時に濃度の差を測定するための島津(Shimadzu)RID−10A屈折率検出器と直列に連結された、入射するレーザー光(レーザーの波長=690nm、電力=30mW)に対して様々な角度で3つの光検出器を備えたワイアット・テクノロジー・ミニドーン・エオス(Wyatt Technology MiniDAWN EOS)マルチ−アングル・レーザー光散乱(Multi−Angle Laser Light Scattering)(MALLS)検出器であった。分子量計算はジム・フォルマリズム(Zimm Formalism)に基づいており、絶対分子量を計算するためにアストラ(Astra)(V4.73.04)ソフトウェア(ワイアット・テクノロジー社)を用いた。
【0068】
ブロック濃度
各ブロックの濃度は、核磁気共鳴(NMR)分光法分析によって測定した。サンプルを約10重量%の濃度へ重水素化クロロホルムに溶解し、カリフォルニア州パロアルトのバリアン(Varian,Palo Alto、California)から入手可能なユニティ500MHz NMR分光器(Unity 500MHz NMR Spectrometer)にセットした。ブロック濃度は特徴的なブロック成分スペクトルの相対面積から計算した。
【0069】
【表1】

【0070】
反応器の説明
3.33リットルガラスSTR
STRは、3.33Lの容量を有し、5つのジャケット付き(外殻−および−管)ガラスセクション(パイレックス(商標)・シリンダー)よりなった。管は4.13cmの内径および5.08インチの外径を有した。外殻は8.89cmの直径を有した。5セクションのうち、2つは長さ60.96cmであり、2つは長さ30.48cmであり、1つは長さ68.58cmであった。最長のものが最後で、これらを交互の短い−長い様式で配置した。セクションをステンレススチール連結ディスクで接合した。STRをステンレススチール・ディスクで両端にて閉鎖した。
【0071】
連結ディスクは、シリンダー・セクションの内部へ伸びる個別の温度感知デバイスを備えていた。これらの温度感知デバイスは、各セクション中の反応混合物の温度を監視し、ジャケット付きセクションを通って流れる伝熱流体の温度を変えることによってセットポイントへと上下に(必要に応じて)調節することを可能にする。
【0072】
シャフト位置合わせピンによってシリンダー軸に沿って吊された0.95cm直径ステンレススチール・シャフトが、接合されたシリンダーの中心を通って伸びていた。各櫂間おおよそ2.1cmで60の取り外し可能なステンレススチール櫂をシャフトに取り付けた。長方形櫂は厚さ3.2mm、幅1.91cm、および長さ3.81cmであった。用いた櫂配置は次の通り(セクション1に14の長方形櫂、セクション2に7の長方形櫂、セクション3に14の長方形櫂、セクション4に7の長方形櫂、およびセクション5に18の長方形櫂)であった。シャフトを2.2kW可変速モーターに取り付け、おおよそ150rpmで駆動させた。
【0073】
4リットルステンレススチールSTR
STRは、4Lの容量を有し、1つの316ステンレススチール入口セクション(長さ21.59cm×直径5.48cm)と、それぞれが6.03cmの外径、5.48cmの内径、および67.31cmと38.58cmとの交互の長さを持った4つの追加のステンレススチール・セクション(316SS)とよりなった。これらをステンレススチール締め具で接合した。STRをステンレススチール・ディスクで両端にて閉鎖し、シリンダー・セクションをステンレススチール製ジャケットで取り囲んだ。ジャケットは、シリンダー・セクションの内部へ伸びる個別の温度感知デバイスを備えていた。これらの温度感知デバイスは、各セクション中の反応混合物の温度が監視され、ジャケット付きセクションを通って流れる伝熱流体の温度を変えることによってセットポイントへと上下に(必要に応じて)調節されることを可能にする。
【0074】
シャフト位置合わせピンによってシリンダー軸に沿って吊された0.95cm直径ステンレススチール・シャフトが接合されたシリンダーの中心を通って伸びていた。各櫂間おおよそ1.9cmで59の取り外し可能なステンレススチール櫂をシャフトに取り付けた。長方形櫂は厚さ3.2mm、幅1.91cm、長さ3.81cmであった。用いた櫂配置は次の通り(入口セクションに5の長方形櫂、セクション1に10の長方形櫂、セクション2に17の長方形櫂、セクション3に10の長方形櫂、およびセクション4に17の長方形櫂)であった。
【0075】
モノマーの準備および取扱い
アニオン化学の例
実施例の反応体モノマーは、O2濃度が百万部当たり1部(ppm)未満になるまで窒素スパージングした。脱酸素したモノマーを塩基性アルミナ(Al23、アルドリッチ、ブロックマン(Brockmann)I、約150メッシュ)のカラム(l=50cm、d=2cm)を通してポンプ送液した。次に、精製モノマーを、最初のブロック用に使用する時には撹拌管型反応器(STR)の第1ゾーンに、または後のブロック形成用にはSTRのもっと後のゾーンに直接フィードした。反応溶媒(トルエン、シクロヘキサンまたは混合物のどれか)を分子篩ビーズ(アラバマ州チカソーのUOP(UOP,Chickasaw,Alabama)からゼオライト(Zeolite)3Aとして入手可能)を通してポンプ輸送し、STRに直接フィードした。THF共溶媒を使用したイソプレン−ベース実施例では、30分間窒素スパージングすることによってTHFもまた脱酸素し、3A分子篩ビーズ(ゼオライト3A、UOPとして入手可能)およびアルミナ(Al23、アルドリッチ、ブロックマンI、150メッシュとして入手可能)のカラムの両方を通してポンプ送液することによって精製した。次にTHF流れをSTRの第1または第2ゾーンに直接フィードした。実施例1については、sec−ブチルリチウム開始剤(シクロヘキサン中1.3モル濃度(M)sec−ブチルリチウム)を、前もって精製したシクロヘキサンの添加によって希釈した。実施例2および3については、1,1−ジフェニルヘキシルリチウムを使用した。各実施例について、開始剤はSTRの第1ゾーンに加えた。
【0076】
フリーラジカル化学の例
何の先行モノマー精製も行わなかったが、反応前にモノマーおよび開始剤を窒素で30分間スパージングした。
【0077】
実施例1
ポリ(スチレン−イソプレン)ブロックコポリマー
本実施例は、ジエンおよびスチレンブロックコポリマー材料(重要な部類の制御された構造の材料)を本発明によって高固形分ローディング・レベルで製造できることを例証する。
【0078】
開始剤スラリーを、2300gのシクロヘキサン中1.3Mのsec−ブチルリチウムを8000gの酸素なしシクロヘキサンと混合することによって調製し、室温で約30分間撹拌した。撹拌は層別および酸素汚染を防ぐために窒素下で行った。精製スチレンモノマー(往復ピストンポンプにより様々な速度で配送した、表1を参照されたい)および精製シクロヘキサン溶媒(往復ピストンポンプにより19〜20g/分の速度で配送した)を3.3リットルSTRのゾーン1へ通した。開始剤スラリーを蠕動ポンプによって24mL/分の速度でSTRのゾーン1へ導入した。本反応の固形分ローディングは表1に示すように変化させた。開始剤溶液がモノマーに接触し、発熱が起こった時に、透明から赤橙への色変化がゾーン1で観察された。ゾーン1の入口温度は53.8℃であった。ゾーン1のジャケット温度を20℃に調節することによってゾーン1の混合物を約27℃で一定に保持した。必要に応じてジャケット温度を調節することによって、STRの5セクションのそれぞれ中の混合物の温度を個別に、各反応器セクションの終わりで測定されるように#1=27℃、#2=37℃、#3=53℃、#4=53℃、および#5=45℃に維持した。
【0079】
材料は、反応経路に沿って撹拌櫂によって容易にされるSTRの第1ゾーンを通って流れた。重合は、ゾーン1の終わりまでに100%完了まで続き、それによって「リビング」ポリスチレン反応混合物ポリマーを形成した。ゾーン2の開始時に、様々な速度(往復ピストンポンプによる、表1を参照されたい)で精製イソプレンおよび精製THF(3g/分の速度で加圧供給した)を配送し、ポリスチレン−イソプレンブロックコポリマーの形成を示唆する赤から黄色への色変化と共に強い発熱をもたらした。STR中でのこれらの反応のためのすべてを含めた滞留時間は、成分流量(表1を参照されたい)に依存して19分間および28分間の間で変わった。
【0080】
各サンプルを光散乱によって数平均分子量(Mn)および多分散性指数(PDI)ならびに1H NMR分光法によってスチレン対イソプレンの相対ブロック濃度について試験した。各サンプルの%固形分は、既知量のポリマー溶液を真空オーブン中75℃で24時間乾燥することによって求めた。得られた乾燥ポリマー対溶液の出発質量の比を%固形分と定義する。結果を表1に示す。
【0081】
【表2】

【0082】
実施例2
ポリ(メタクリル酸2−エチルヘキシル)およびポリ(メタクリル酸2−エチルヘキシル−メタクリル酸t−ブチル)ブロックコポリマー
本実施例は、非常に高い固形分条件下でメタクリル酸ホモポリマーおよびブロックコポリマーを製造する能力を例示する。
【0083】
開始剤スラリーを、775.9mLのシクロヘキサン中1.3Mのsec−ブチルリチウムを4133gの酸素なしシクロヘキサンと混合することによって調製し、室温で約30分間撹拌した。この溶液に196gの1,1−ジフェニルエチレンを加え、それは1,1−ジフェニルヘキシルリチウムの赤色溶液の形成をもたらした。精製メタクリル酸2−エチルヘキシルモノマー(往復ピストンポンプにより89.3g/分の速度でポンプ輸送した)を3.3リットルSTRのゾーン1へフィードした。
【0084】
トリイソブチルアルミニウムの1.0M溶液(19.8g/分で加圧供給した)と共に、開始剤スラリーを蠕動ポンプによって35mL/分の速度でSTRのゾーン1へ導入した。開始剤溶液がモノマーに接触した時に発熱が起こった(約23℃)。STRの5セクションのそれぞれ中の反応混合物の温度を個別に#1=38.7℃、#2=29.3℃、#3=24.2℃、#4=27.3℃、および#5=15.4℃に維持した。
【0085】
材料は、反応経路に沿って撹拌櫂によって容易にされる5つのゾーンを通って流れた。重合は、ゾーン3の終わりまでに100%完了まで続き、生じた粘稠な溶液は反応器から流れ出て、個別のシリコーン内張り容器に集められた。これらの反応のための総滞留時間は約20分間であった。
【0086】
ブロックコポリマーを製造しようとする試みで、t−BMAを往復ピストンポンプにより8g/分の流量でSTRのゾーン5へ加え、反応器を通過させた。PEHMAおよびP(EHMA−t−BMA)のサンプルを様々な時間に採取した。各サンプルを、ゲル浸透クロマトグラフィーによって数平均分子量(Mn)および多分散性指数(PDI)について試験した。ポリマーの同一性と残留モノマーについての反応混合物の検査とは1H NMR分光法によって行った。結果を表2に示す。
【0087】
【表3】

【0088】
実施例3
ポリ(メタクリル酸2−エチルヘキシル)ホモポリマー、ポリ(メタクリル酸2−エチルヘキシル)星型分岐材料、ポリ(メタクリル酸2−エチルヘキシル−メタクリル酸t−ブチル)ブロックおよびランダムコポリマー
本実施例は、非常に高い固形分レベルでのホモ、ブロック、ランダムおよび星型ポリマーの製造を例示する。
【0089】
開始剤スラリーを、780mLのシクロヘキサン中1.3Mのsec−ブチルリチウムを8000gの酸素なしシクロヘキサンと混合することによって調製し、室温で約30分間撹拌した。この溶液に197gの1,1−ジフェニルエチレンを加え、それは1,1−ジフェニルヘキシルリチウムの赤色溶液の形成をもたらした。1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート(HDDMA)の1重量%溶液を、4000gの精製シクロヘキサンに40gのHDDMAを予め溶解することによって調製した。トリイソブチルアルミニウムの1.0M溶液(4.5g/分で加圧供給した)と共に、開始剤溶液を蠕動ポンプによって24mL/分の速度で3.3リットルSTRのゾーン1へ導入した。目標構造に依存して、精製メタクリル酸2−エチルヘキシル(EHMA)、メタクリル酸t−ブチル(t−BMA)およびHDDMA流れを往復ピストンポンプによって様々な速度でおよびSTRの様々な場所に配送した(表3を参照されたい)。
【0090】
【表4】

【0091】
各サンプルをゲル浸透クロマトグラフィーによって数平均分子量(Mn)および多分散性指数(PDI)について試験した。ポリマーの同一性と残留モノマーについての反応混合物の検査とは1H NMR分光法によって行った。結果を表4に示す。
【0092】
【表5】

【0093】
実施例4
35%o−キシレンでのポリ(アクリル酸イソオクチル−アクリル酸イソボルニル−メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)IOA:IBA:HEMAランダムコポリマー
本実施例は、このアプローチで官能基を含有するランダムポリマーを製造するためにフリーラジカル重合機構を本発明で用い得ることを例示する。ここで、重合は、温度および連鎖移動剤の濃度の制御によって95%より高い転化率まで行った。この反応についてのモノマー固形分ローディングは65重量%であった。
【0094】
開始剤溶液を、500gの過安息香酸t−ブチルを10,700gのO2なしo−キシレンと混合することによって調製し、室温で約30分間撹拌した。15808gのIOA、3952gのIBAおよび1040gのHEMAを窒素雰囲気下で混合し、混合物を30分間スパージングしてIOA:IBA:HEMAの溶液を調製した。IOA:IBA:HEMA混合物(往復ピストンポンプにより43.3g/分の速度でポンプ輸送した)を、外部熱交換器の通過によって68℃に予熱し、過安息香酸t−ブチル/o−キシレン流れ(往復ピストンポンプにより23.3g/分の速度でポンプ輸送した)を4リットルSTRのゾーン1へフィードした。STRの第1ゾーンを低圧スチームによって130℃に加熱し、発熱をもたらした。材料は、反応経路に沿って撹拌櫂によって容易にされる、プラグ状に最初の4つのゾーンを通って流れた。反応器を通ってのポリマーの移動を容易にするのを助けるために、ゾーン2および3を5psiのスチーム(約100〜105℃)で加熱した。STRの4セクションの終わりのそれぞれ中の反応混合物の温度は、#1=152℃、#2=141℃、#3=137℃、#4=113℃(反応器の圧力=1psi)であると測定された。この重合は非常に高い転化率まで続き、IOA:IBA:HEMAコポリマーを形成した。これらの反応のための最適化されていない総滞留時間はおおよそ60分間であった。
【0095】
材料を様々な時間間隔でサンプリングし、バルク材料を5ガロン容器に集めた。実施例をゲル浸透クロマトグラフィーによってMnおよびPDIについて、ならびに1H NMRによってEHA、AAおよびBAの相対組込みについて試験した。結果を表5に示す。
【0096】
【表6】

【0097】
実施例5
20%o−キシレンでのポリ(アクリル酸イソオクチル−アクリル酸イソボルニル−メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)IOA:IBA:HEMAコポリマー
本実施例は、このアプローチで官能基を含有するランダムポリマーを製造するためにフリーラジカル重合機構を本発明で用い得ることを例示する。重合は、温度および連鎖移動剤の濃度の制御によって95%より高い転化率まで行う。この反応についてのモノマー固形分ローディングは80重量%である。
【0098】
開始剤溶液を、361gの過安息香酸t−ブチルを3400gのO2なしo−キシレンと混合することによって調製し、室温で約30分間撹拌した。11433gのIOA、2858gのIBAおよび752gのHEMAを窒素雰囲気下で混合し、混合物を30分間スパージングしてIOA:IBA:HEMAの溶液を調製した。IOA:IBA:HEMA混合物(往復ピストンポンプにより80.1g/分の速度でポンプ輸送した)を、外部熱交換器の通過によって64℃に予熱し、過安息香酸t−ブチル/o−キシレン流れ(往復ピストンポンプにより20.0g/分の速度でポンプ輸送した)を4リットルSTRのゾーン1へフィードした。STRの第1ゾーンを低圧スチームによって130℃に加熱し、発熱をもたらした。材料は、反応経路に沿って撹拌櫂によって容易にされる、プラグ状に最初の4つのゾーンを通って流れた。反応器を通ってのポリマーの移動を容易にするのを助けるために、ゾーン2および3を5psiのスチーム(約100〜105℃)で加熱した。STRの4セクションの終わりのそれぞれ中の反応混合物の温度は、#1=172℃、#2=183℃、#3=145℃、#4=111℃であると測定された。これらの反応のための最適化されていない総滞留時間は約40分間であった。
【0099】
材料を様々な時間間隔でサンプリングし、バルク材料を5ガロン容器に集めた。代表的な実施例を1H NMR分光法によってEHA、AAおよびBAの相対組込みについて試験した。結果を表6に示す。
【0100】
【表7】

【0101】
実施例6
5%o−キシレンでのポリ(アクリル酸イソオクチル−アクリル酸イソボルニル−メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)IOA:IBA:HEMAコポリマー
本実施例は、このアプローチで官能基を含有するランダムポリマーを製造するためにフリーラジカル重合機構を本発明で用い得ることを例示する。重合は、温度および連鎖移動剤の濃度の制御によって95%より高い転化率まで行う。この反応についてのモノマー固形分ローディングは95重量%である。
【0102】
開始剤溶液を、500gの過安息香酸t−ブチルを596gのO2なしo−キシレンと混合することによって調製し、室温で約30分間撹拌した。15833gのIOA、3958gのIBAおよび1041gのHEMAを窒素雰囲気下で混合し、混合物を30分間スパージングしてIOA:IBA:HEMAの溶液を調製した。IOA:IBA:HEMA混合物(FMIにより95g/分の速度でポンプ輸送した)を、外部熱交換器の通過によって68℃に予熱し、過安息香酸t−ブチル/o−キシレン流れ(FMIにより5g/分の速度でポンプ送液される)を4リットルSTRのゾーン1へフィードした。STRの第1ゾーンを低圧スチームによって130℃に加熱し、発熱をもたらした。反応温度は外部手段によって制御しなかった。材料は、反応経路に沿って撹拌櫂によって容易にされる、プラグ状に最初の4つのゾーンを通って流れた。反応器を通ってのポリマーの移動を容易にするのを助けるために、ゾーン2および3を5psiのスチーム(約100〜105℃)で加熱した。STRの4セクションの終わりのそれぞれ中の反応混合物の温度は、#1=196℃、#2=153℃、#3=141℃、#4=119℃(反応器の圧力=2.2psi)であると測定された。これらの反応のための最適化されていない総滞留時間は約40分間であった。
【0103】
初期キシレン含有率の関数としてのこの一連の重合についての分析結果を表7に示す。
【0104】
【表8】

【0105】
本発明の範囲および精神から逸脱しない様々な修正および変更は当業者には明らかになるであろう。本発明は、本明細書で述べられた例示的な実施形態に不当にも限定されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の重合法を実施するために有用な例示的反応システムの略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)モノマー濃度が50重量%より上であるように少なくとも1種の重合性モノマー、開始剤システム、および任意の溶媒システムを含む反応混合物を、1つもしくはそれ以上の温度制御されたセクションを有するプラグフロー反応器中へ導入する工程と、
b)該反応混合物が該反応器を通って本質的にプラグフロー方式で移動するにつれて該モノマーを重合させる工程であって、それによって少なくとも90%のモノマーのポリマーへの転化が達成される工程と、
c)該重合した有機材料を排出する工程と
を含む目標構造を有する有機材料の連続製造法。
【請求項2】
前記生じたポリマーがオリゴマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1種のモノマーが温度感受性である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1種のモノマーが低分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ランダムコポリマーが形成されるように少なくとも2種のモノマーが前記反応器へ同時に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ランダムコポリマーを含む反応混合物に少なくとも1種の温度感受性モノマーを加える工程をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記温度感受性モノマーがビニルピリジンまたはメタクリル酸アルキルである、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記ビニルピリジンモノマーが2−ビニルピリジンまたは4−ビニルピリジンである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記温度感受性モノマーがビニルピリジンであり、かつ、前記開始剤がn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、フルオレニルリチウム、ナフチルリチウム、フェニルリチウム、およびp−トリルリチウムを含む群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記メタクリル酸アルキルモノマーがメタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソデシル、n−C1225、n−C1837、メタクリル酸アリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−(N−メチルパーフルオロブタンスルホンアミド)エチルおよびメタクリル酸グリシジルを含む群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記モノマーがメタクリル酸アルキルであり、かつ、前記開始剤がα−メチルスチレンリチウム、および1,1−ジフェニルヘキシルリチウムを含む群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記有機材料を工程c)の後に失活剤で失活させる工程をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記反応混合物が前記プラグフロー反応器を通って進み続けるにつれてブロックコポリマーが形成されるように1種もしくはそれ以上の重合性モノマーが該反応混合物に逐次加えられる1つもしくはそれ以上の工程を上記の工程b)とc)との間にさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記重合性モノマーの少なくとも1種が温度感受性である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1種のアニオン重合性モノマーが少なくとも2つのアニオン重合性部位を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1種のアニオン重合性モノマーがアニオン重合性部位に加えて少なくとも1つの官能性部位を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
c)の後に前記重合した有機材料を含有する反応混合物から溶媒を除去する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記反応器が2つもしくはそれ以上の温度制御されたセクションを有し、かつ、それぞれが−78℃〜220℃に維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記反応器が撹拌管型反応器である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記反応器が撹拌管型反応器と押出機との組合せである、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記モノマーがスチレン類、ジエン類、ビニルピリジン類、メタクリル酸アルキル、エポキシド類、オキシラン類、環状スルフィド類、ラクトン類、ラクチド類、環状カーボネート類、ラクタム類、シクロシロキサン類、アクリロニトリル、および[n]メタロセノファン、ならびにアニオン重合性極性モノマーを含む群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記システムのモノマーがスチレン、p−メチルスチレン、イソプレン、イソプレン誘導体、メタクリル酸イソデシル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、ビニルピリジン、ビニルピリジン誘導体、エチレンオキシド、ヘキサメチルトリシロキサン、およびブタジエンよりなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記システムのモノマーがビニル芳香族化合物、スチレン類、ジエン類、ビニルピリジン類、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、エチレン、ハロゲン化オレフィン、ビニルエステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルメタロセン類、N−ビニルピロリドン、およびN−ビニルカルバゾールよりなる群から選択される、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2006−511657(P2006−511657A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−564999(P2004−564999)
【出願日】平成15年11月17日(2003.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2003/036479
【国際公開番号】WO2004/060927
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】